JP3646461B2 - 磁性ポリマー粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性ポリマー粒子およびその製造方法に関し、更に詳しくは、診断薬担体、細菌分離単体、細胞分離担体、核酸分離精製担体、蛋白分離精製担体、固定化酵素担体、ドラッグデリバリー担体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料などとして有用な磁性ポリマー粒子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁性ポリマーラテックスは、磁力を利用することによりラテックス粒子を容易に分離回収することができるなどの利点から、診断薬担体、細胞、蛋白または核酸の分離精製担体などとして、優れた取扱性が得られるものと期待されている。
また、乾燥や加熱することによって成膜する磁性ポリマーラテックスは、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料などの用途に適用することも期待される。
斯かる磁性ポリマーラテックスを構成する磁性ポリマー粒子の合成法としては、粒子内部に磁性体が存在するタイプの粒子を得る方法として、下記(1)〜(3)に示す方法が知られている。
【0003】
(1)磁化処理および親油化処理が施された超常磁性体ではない磁性体を重合性モノマーに分散させ、この重合性モノマーを懸濁重合して磁性ポリマー粒子を得る方法(特開昭59−221302号公報参照)。
【0004】
(2)親油化処理が施された磁性体をビニル芳香族モノマーを含む有機相に分散させ、この分散体を、ホモジナイザーを用いて水性相へ均質に分散させた後重合することにより、比較的小粒径の磁性ポリマー粒子を得る方法(特公平4−3088号公報参照)。
【0005】
(3)特定の官能基を有する多孔ポリマー粒子の存在下に鉄化合物を析出させ、この鉄化合物を酸化することで、当該多孔ポリマー粒子の内部に磁性体を導入し、2μm以上の大粒径かつ均一径の磁性ポリマー粒子を得る方法(特公平5−10808号公報)。
【0006】
しかしながら、上記(1)の方法では、超常磁性体ではない保磁力を有する磁性体を磁化処理するために、重合の際に分散粒子が凝集融着し、得られる磁性ポリマー粒子は、過大な粒径を有するものとなり、そのような磁性ポリマー粒子は、水性媒体中で沈降しやすいという問題がある。また、特定物質の吸着剤として用いる場合に、粒子の表面積が小さいために十分な量の目的物質を吸着することができないという問題もある。
また、上記(1)の方法を開示する特開昭59−221302号公報においては、スチレンを主体とする重合性モノマーが使用されている。然るに、スチレン系の重合体は、磁性体との親和性が低いために、重合反応系(モノマー)において良好に分散されていた磁性体が、重合後のポリマー粒子内部において分離凝集したり、ポリマー粒子表面に析出したりするという問題がある。
また、スチレンを主体とする重合性モノマーを用いて合成された磁性ポリマー粒子は、多量に導入された芳香環構造のために紫外線を吸収して蛍光発色する。この結果、当該磁性ポリマー粒子を生理活性物質の同定検知に使用する場合には、多くの制約が生じるという問題もある。
さらに、スチレンを主体とする重合性モノマーを用いて得られる磁性ポリマー粒子は、蛋白に対する吸着性が高く非特異吸着性が大きいため、当該磁性ポリマー粒子を用いた診断系ではバックグランドが大きいという問題がある。
【0007】
上記(2)の方法により得られる磁性ポリマー粒子は、粒子内部における磁性体の均一分散性に劣るものとなり、当該磁性体は、粒子表面近傍に局在化される。このため、磁性ポリマー粒子から鉄イオンが溶出したり、酸性条件下において磁性体が溶解流出したりして磁性ポリマー粒子としての特性が損なわれるという問題がある。
【0008】
上記(3)の方法は、磁性ポリマー粒子の製造工程が複雑であり、また、磁性体がポリマーによってカプセル化されていないため、鉄イオンが溶出するという問題がある。
【0009】
一方、ポリマー粒子エマルジョンの中で鉄化合物を析出させることにより、当該ポリマー粒子の表面をフェライト化する方法が開示されている(特開平3−115862号公報および特開平5−138009号公報参照)。しかしながら、この方法により得られる磁性ポリマー粒子は、粒子表面に磁性体が存在するために、鉄イオンの溶出が顕著に発生するという問題がある。
上記のような従来の合成法によって得られる磁性ポリマー粒子を、例えば診断薬担体として用いると、十分な感度が得られなかったり、非特異酵素反応を示して良好な実用性能が得られなかったりする。この理由は、磁性ポリマー粒子の粒子表面に磁性体が部分的に露出し、あるいは粒子表面と粒子内部に存在する磁性体との間にミクロパスが形成されているため、鉄イオンが外部に溶出して実用性能に悪影響を及ぼすからであると考えられる。
【0010】
鉄イオンの外部への溶出をある程度抑制するものとして、磁性体粒子を芯材として疎水性の架橋モノマーを水相中で重合することにより、磁性体粒子を内包した磁性ポリマー粒子を得る技術が開示されているが(特開平2−286729号公報参照)、この技術によっても、鉄イオンの溶出を十分に抑制することはできない。また、磁性ポリマー粒子の表面に、磁性体を含まないポリマーからなる被覆層を形成する技術が開示されているが(特公平5−16164号公報参照)、その具体的な方法は、界面重縮合法とスプレードライ噴霧法のみしか示されておらず適用範囲が限られている。
【0011】
また、乳化重合法によって磁性ポリマー粒子を合成する技術が開示されているが(特公平3−57921号公報)、乳化重合法によっては粒径の大きい粒子を合成することが困難であり、従って、磁気沈降性の良好な磁性ポリマー粒子を再現性よく得るには至っていない。
【0012】
以上のように、従来の合成法により得られる磁性ポリマー粒子は、鉄イオンの外部への溶出という問題を有するために、鉄イオンの溶出による影響を受けない用途・分野にしか適用することができないのが現状である。このため、磁性体の分散性に優れ、鉄イオンを外部に溶出させない磁性ポリマー粒子の開発が望まれている。
また、実用上の観点から、磁性ポリマー粒子が、水性媒体中で沈降しにくく、均質な分散状態を維持していることが必要である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、超常磁性体の均一分散性に優れた新規な磁性ポリマー粒子を提供することにある。本発明の第2の目的は、水性媒体中で沈降しにくい磁性ポリマー粒子を提供することにある。本発明の第3の目的は、磁気応答性に優れているとともに、磁性体に由来する鉄イオンが外部に溶出されにくく、種々の用途・分野に広く適用することのできる磁性ポリマー粒子を提供することにある。本発明の第4の目的は、生理活性物質に対して良好な結合性を有する磁性ポリマー粒子を提供することにある。本発明の第5の目的は、上記のような優れた特性を有する磁性ポリマー粒子を確実に製造することのできる方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁性ポリマー粒子は、(A)2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールアクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールメタクリレート、シクロヘキセンジアクリレート、シクロヘキセンジメタクリレート、並びに、シクロヘキシル基の水素原子の一部が炭素数1〜5のアルキル基により置換された置換シクロアルキルアクリレートおよび置換シクロアルキルメタクリレートから選ばれた、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位(以下「構造単位A」という)30〜99重量%、(B)不飽和カルボン酸に由来する構造単位(以下「構造単位B」という)1〜20重量%、並びに(C)前記アルキル(メタ)アクリレートおよび前記不飽和カルボン酸と共重合可能な芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下「構造単位C」という)0〜69重量%からなる共重合体(以下「特定重合体」という)100重量部に対して、超常磁性体1〜100重量部を含有してなり、数平均粒子径が0.02〜30μmであることを特徴とする。 また、(A)アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位30〜99重量%、(B)不飽和カルボン酸に由来する構造単位1〜20重量%、並びに(C)前記アルキル(メタ)アクリレートおよび前記不飽和カルボン酸と共重合可能なビニルモノマーに由来する構造単位0〜69重量%からなる共重合体100重量部に対して、超常磁性体1〜100重量部を含有してなり、数平均粒子径が0.02〜30μmである粒子にオリゴヌクレオチドまたは生理活性蛋白質を固定してなる磁性ポリマー粒子が好ましい。
【0015】
本発明の磁性ポリマー粒子の製造方法は、(A)2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールアクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールメタクリレート、シクロヘキセンジアクリレート、シクロヘキセンジメタクリレート、並びに、シクロヘキシル基の水素原子の一部が炭素数1〜5のアルキル基により置換された置換シクロアルキルアクリレートおよび置換シクロアルキルメタクリレートから選ばれた、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを30〜99重量%、
(B)不飽和カルボン酸を1〜20重量%、並びに
(C)前記アルキル(メタ)アクリレートおよび前記不飽和カルボン酸と共重合可能な芳香族ビニル化合物を0〜69重量%の割合で含有するモノマー中に超常磁性体を分散させてモノマー組成物を調製し、
このモノマー組成物を水性媒体中に分散させて懸濁液を得、
この懸濁液中において、前記モノマーを重合させることを特徴とする。
【0016】
【作用】
(1)超常磁性体は、ポリマー(特定重合体)中において均一に分散され、好適な粒子径の磁性ポリマー粒子を構成することができる。
(2)超常磁性体が分散されて構成される磁性ポリマー粒子は、その合成の際に、分散粒子の凝集融着が生じにくく、好適な粒子径を有するものとなる。従って、当該磁性ポリマー粒子は、水性媒体中で沈降されにくく、当該水性媒体中において均質な分散状態で存在することができる。
(3)本発明の磁性ポリマー粒子には、超常磁性体が特定の割合で含有されているので、優れた磁気応答性が発現されるとともに、当該超常磁性体に由来する金属イオンが外部に溶出することが防止される。
(4)特定の構造単位よりなる特定重合体は、本発明の磁性ポリマー粒子に、生理活性物質に対する良好な結合性を付与することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
<本発明の磁性ポリマー粒子>
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の磁性ポリマー粒子は、特定共重合体よりなる粒子中に超常磁性体が分散含有(内包)されて構成されている。
【0018】
<特定重合体>
本発明の磁性ポリマー粒子を構成する特定重合体は、前記構造単位Aと前記構造単位Bとを必須成分として含有し、前記構造単位Cを任意成分として含有する共重合体である。
【0019】
前記構造単位Aを構成するアルキル(メタ)アクリレート〔以下「単量体(A)」ともいう〕におけるアルキル基の炭素数は、通常4〜20とされ、好ましくは6〜18とされる。このアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状の何れのものであってもよい。
斯かる単量体(A)の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート;シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールアクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールメタクリレート、シクロヘキセンジアクリレート、シクロヘキセンジメタクリレート;メチル置換シクロヘキシルアクリレート、メチル置換シクロヘキシルメタクリレートなど「シクロヘキシル基」の水素原子の一部が炭素数1〜5のアルキル基により置換された置換シクロアルキルアクリレート、置換シクロアルキルメタクリレートなどが挙げられ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。
【0020】
特定重合体中における構造単位Aの含有割合は、通常30〜99重量%とされ、好ましくは50〜99重量%とされる。構造単位Aの含有割合が30重量%未満である場合には、重合安定性と磁性体の分散性が不良になるほか、得られる磁性ポリマー粒子の抗体等の生理活性蛋白質に対する吸着性が不良となり、非特異吸着現象が顕著になる。一方、構造単位Aの含有割合が99重量%を超える場合には、得られる共重合体の疎水性が過大となり、当該共重合体によるポリマー粒子の表面は、蛋白に対する物理的吸着性が小さくなると共に、蛋白、酵素、核酸など生理活性物質に対する化学結合性にも劣るものとなる。
【0021】
前記構造単位Bを構成する不飽和カルボン酸〔以下「単量体(B)」ともいう〕は、ラジカル重合性の不飽和結合およびカルボキシル基を分子中に有する重合性単量体である。斯かる単量体(B)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などを挙げることができる。
特定重合体中における構造単位Bの含有割合は、通常1〜20重量%とされ、好ましくは2〜15重量%とされる。構造単位Bの含有割合が1重量%未満である場合には、得られる共重合体の疎水性が過大となり、当該共重合体によるポリマー粒子の表面は、蛋白に対する物理的吸着性が小さくなると共に、蛋白、酵素、核酸など生理活性物質に対する化学結合性にも劣るものとなる。一方、構造単位Bの含有割合が20重量%を超える場合には、得られる共重合体の親水性が過大となり、当該共重合体によるポリマー粒子の表面は、蛋白に対する良好な結合性を得ることができない。
【0022】
前記構造単位Cを構成するビニルモノマー〔以下「単量体(C)」ともいう〕の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートなど、アルキル基の炭素数が1〜3であるアルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート化合物;ジビニルベンゼンなどの多官能芳香族ビニル化合物などの多官能ビニル化合物を挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜3であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。また、前記単量体(A)として2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのみを用いる場合には、単量体(C)として多官能ビニル化合物を用いることが好ましい。
【0023】
特定重合体中における構造単位Cの含有割合は、通常0〜69重量%とされる。なお、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位Cの含有割合は0〜49重量%であることが好ましく、更に好ましくは0〜20重量%とされる。
また、前記単量体(A)として2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのみを用いる場合において、好適に使用される多官能ビニル化合物に由来する構造単位Cの含有割合は0.5〜30重量%であることが好ましく、更に好ましくは1〜20重量%とされる。多官能ビニル化合物に由来する構造単位の割合が0.5重量%未満である場合には、得られる磁性ポリマー粒子が十分な硬度を有するものとならず、粒子の変形および粒子同士の融合を招くことがある。一方、多官能ビニル化合物に由来する構造単位の割合が30重量%を超える場合には、得られる磁性ポリマー粒子が脆くなって実用的な強度を有するものとならないことがある。
【0024】
本発明の磁性ポリマー粒子を構成する特定重合体の分子量(ポリスチレン換算の重量平均分子量)は、通常10,000以上とされ、好ましくは20,000〜1,000,000とされる。
【0025】
<超常磁性体>
本発明の磁性ポリマー粒子においては、粒子中に分散含有されている磁性体が「超常磁性体」である点に特徴を有するものであり、超常磁性体が含有されていることにより、良好な磁気吸引性を有しながら、磁気吸引を繰り返しても粒子には実質的に磁気履歴が残らず良好な再分散性を維持することができる。
なお、本発明での超常磁性体とは、磁性粒子に5000エールステッドの強い磁場をかけた後、ゼロ磁場に戻したときの磁化(残留磁化)が5000エールステッドの磁場のときの磁化(飽和磁化)の1/3以下である磁性体を言う。
本発明の磁性ポリマー粒子を構成する超常磁性体としては、例えば四三酸化鉄(Fe3 O4 )、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2 O3 )、各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、クロムなどの金属、コバルト、ニッケル、マンガンなどの合金を挙げることができ、これらのうち、四三酸化鉄およびフェライトが特に好ましい。
本発明の磁性ポリマー粒子を構成する超常磁性体の一次粒子の粒子径は、40〜300Åであることが好ましく、更に好ましくは50〜200Å、特に好ましくは60〜150Åとされる。超常磁性体の一次粒子の粒子径が40Å未満である場合には、当該超常磁性体を親油化処理するための処理剤(脂肪酸、シランカップリング剤、チタンカップリング剤)が多量に必要となり、過剰量の処理剤によって超常磁性体による良好な磁気応答性が損なわれることがある。一方、超常磁性体の一次粒子の粒子径が300Åを超える場合には、得られる磁性ポリマー粒子が磁化されたものとなり、当該磁性ポリマー粒子が相互に凝集して水性媒体中で沈降しやすくなる。なお、球状でない超常磁性体の一次粒子の粒子径としては、それぞれの超常磁性体の最長径と最短径との平均値をとるものとする。
【0026】
本発明の磁性ポリマー粒子を構成する超常磁性体の含有割合としては、特定重合体100重量部に対して、通常1〜100重量部とされ、好ましくは5〜80重量部、更に好ましくは10〜60重量部とされる。超常磁性体の含有割合が1重量部未満である場合には、得られる粒子が十分な磁気応答性を発現することができず、一方、超常磁性体の含有割合が100重量部を超える場合には、得られる磁性ポリマー粒子の粒子表面に超常磁性体が露出して金属イオンの溶出などの問題を招き、また、当該磁性ポリマー粒子が脆くなって実用的な強度を有するものとならない。
【0027】
本発明の磁性ポリマー粒子においては、▲1▼ 粒子内部を構成する特定重合体中に超常磁性体が均一に分散されていることが好ましく、さらに、▲2▼ 粒子表面および表面近傍に超常磁性体が殆ど存在していないことが好ましい。
ここに、粒子表面および表面近傍に超常磁性体が殆ど存在していないか否かの判定方法としては、磁性ポリマー粒子0.1gを、70℃に加熱された純水10ミリリットル中に2時間浸漬させた後、当該純水中に溶出した金属含有率を測定する。そして、この金属含有率が10ppm以下である場合に、前記磁性ポリマー粒子は「粒子表面および表面近傍に超常磁性体が殆ど存在していない状態である」と判定することができる。
【0028】
<磁性ポリマー粒子の数平均粒子径>
本発明の磁性ポリマー粒子の数平均粒子径は、通常0.02〜30μmとされ、好ましくは0.1〜20μm、更に好ましくは0.2〜15μm、特に好ましくは0.3〜10μmとされる。数平均粒子径が0.02μm未満である場合には、十分な磁気応答性を発現することができない。一方、数平均粒子径が30μmを超える場合には、当該磁性ポリマー粒子が水性媒体中で沈降しやすくなり、また、当該磁性ポリマー粒子は粒子表面積が小さいものとなり、特定物質の吸着剤としてこれを用いる場合に、十分な量の目的物質を吸着することができない。
【0029】
本発明の磁性ポリマー粒子は、水性媒体中で沈降しにくく、当該水性媒体中において均質な分散状態で存在することができる(以下、この特性を「静置安定性」という。)。従って、本発明の磁性ポリマー粒子は取扱性の観点からも優れている。
ここに、静置安定性の評価方法としては、磁性ポリマー粒子を水性媒体に分散させて固形分濃度が1重量%の磁性ポリマーラテックスを調製し、この磁性ポリマーラテックスを液相の高さが2cmになるよう容器内に収容し、磁性ポリマー粒子が均一に分散されるまで容器を振盪した後、10分間静置したときに、液面から液面下1cmに至る液相の上層部分の固形分濃度を測定する。そして、この固形分濃度が0.1重量%以上であれば静置安定性に優れているとされる。
本発明の磁性ポリマー粒子においては、この固形分濃度が、通常0.1重量%以上であり、好ましいものは0.3重量%以上、更に好ましいものは0.6重量%以上である。
【0030】
また、本発明の磁性ポリマー粒子は、その表面に、超常磁性体を含まないポリマーからなる層(以下「表面被覆層」ともいう)が形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、粒子内部に存在する超常磁性体による優れた取扱性が損なわれることなく、磁性ポリマー粒子からの鉄イオンの溶出を確実に防止することができる。ここで、表面被覆層の厚さは、使用する超常磁性体の最長径よりも大きいことが好ましく、例えば100Å以上とされる。
【0031】
<本発明の磁性ポリマー粒子の製造方法>
本発明の製造方法は、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキル(メタ)アクリレート〔前記単量体(A)〕を30重量%以上の割合で含有するモノマー中に超常磁性体を分散させてモノマー組成物を調製し、このモノマー組成物を水性媒体中に乳化分散(微粒子化)させて油滴分散体である懸濁液を得、この懸濁液中において、前記モノマーを重合させる点に特徴を有するものである。
上記のような方法によれば、本発明の磁性ポリマー粒子が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)を確実に製造することができる。
【0032】
本発明の製造方法においては、親油化処理が施された超常磁性体を好適に使用することができる。親油化処理が施されていない超常磁性体を使用して磁性ポリマー粒子を製造すると、当該超常磁性体が磁性ポリマー粒子の粒子表面近傍に偏在し、更には粒子表面に超常磁性体が露出して、鉄イオンの水性媒体への溶出を招くことがある。
超常磁性体を親油化処理する方法としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などの表面処理剤により処理する方法、超常磁性体に脂肪酸塩などを吸着させる方法など特に限定されるものではない。また、市販の磁性流体から分散媒を除去することにより得られる超常磁性体を使用することもできる。
【0033】
本発明の製造方法において、超常磁性体の分散媒として使用されるモノマーは、疎水性のモノマーである。
疎水性のモノマーを使用することにより、親油化処理が施された超常磁性体を当該モノマー中に均一に分散させることができる。そして、このようにして得られるモノマー組成物には、超常磁性体の凝集による粗大粒子などが生成されず、従って、当該モノマー組成物を、水性媒体中に均一に乳化分散させることが可能となる。
【0034】
ここに、この明細書において「疎水性のモノマー」とは、20℃における水への溶解度が0.1重量%未満であるモノマーをいうものとし、この溶解度が0.1重量%以上であるモノマーを、以下「親水性のモノマー」というものとする。
なお、超常磁性体の分散媒として使用されるモノマーが2種以上の混合物である場合は、そのうち60重量%以上が疎水性モノマーであれば当該混合モノマー中に親水性のモノマーが含有されていてもよい。
【0035】
ここに、分散媒の一部を構成する親水性のモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸〔前記単量体(B)〕、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0036】
モノマー組成物を水性媒体中に乳化分散させるために使用する分散機としては、従来公知の超音波分散機、高圧ホモジナイザーおよび高剪断速度の分散機などを使用することができる。
超音波分散機の形式は特に制限されるものではなく、例えば、ホーン型発振子を備えてなる分散機、プレート型発振子を備えてなる分散機、発振部に液を流通させる連続式の分散機などを例示することができる。また、高剪断速度の分散機としては、例えばホモミキサー、コロイドミル、ジェットホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを例示することができ、これらの分散機は、目的とする分散粒子径に応じて適宜選択することができる。
さらに、多孔膜または多孔フィルターを介してモノマー組成物を水性媒体中に押し出すことによって有モノマー組成物を水性媒体中に乳化分散させる膜乳化法、あるいはノズルから加圧、振動または高電圧等を加えてモノマー組成物を吐出するノズル法を採用することもできる。
【0037】
本発明の製造方法において、モノマー組成物の分散媒である水性媒体としては水を用いることが好ましい。
また、水性媒体中には、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、水溶性高分子、無機系懸濁保護剤などの界面活性剤、乳化剤または懸濁保護剤が添加されていてもよい。これらのうち、幅広い粒子径の粒子を得る場合に適用することができ、正負いずれの表面荷電の粒子も合成できるという点から部分ケン化ポリビニルアルコールが好ましい。
【0038】
本発明の磁性ポリマー粒子の製造方法において、モノマーを重合するための重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知のラジカル重合開始剤、例えば有機過酸化物、アゾ系開始剤、過硫酸塩系開始剤などを使用することができる。これらのうち、油溶性重合開始剤を使用することが好ましい。特に、疎水性モノマー中に超常磁性体を分散してモノマー組成物を調製する際に、油溶性重合開始剤を添加することが好ましく、これにより、超常磁性体を含有しないポリマー粒子の生成を防止することができる。
【0039】
モノマーの重合反応は無酸素雰囲気下において行うことが好ましい。反応温度は、使用する重合開始剤の分解温度によっても異なるが、例えばベンゾイルペルオキシドを用いる場合には75〜85℃で好適に重合反応を進行させることができる。
【0040】
本発明の製造法では、磁性ポリマー粒子の調製の後、重合の際に使用した界面活性剤または懸濁保護剤を除くために粒子の洗浄を行ってもよい。この際、水あるいはアルコール、アセトン等の水溶性溶剤を使用することが好ましく、これに少量の界面活性剤を添加することも好ましい。
また、必要であれば、重合した磁性ポリマー粒子を沈降分離、凝集分離、遠心分離、磁気分離等の手段で分級して目的とする粒子径、粒子径分布に調整することもできる。
【0041】
本発明の製造方法においては、得られる磁性ポリマー粒子からの超常磁性体の流出を確実に防止するために、下記の工程(a)〜(c)の何れかの工程を実施することが好ましい。
なお、下記の工程(a)〜(c)に供される本発明の磁性ポリマー粒子を以下において「改質前粒子」ともいう。
【0042】
工程(a):改質前粒子の存在下にビニル系のモノマーを重合させる工程。
工程(b):改質前粒子に鉄溶解剤を接触させ、当該粒子の表面近傍に存在している超常磁性体を溶出除去する工程。
工程(c):改質前粒子に、有機性塩基および/または水溶性溶剤を接触させる工程。
【0043】
<工程(a)>
この工程(a)は、改質前粒子の存在下にビニル系のモノマーを重合させる工程である。この工程(a)により、磁性ポリマー粒子の表面において、超常磁性体を含まない表面被覆層が重合形成される。そして、この工程(a)を経て得られる磁性ポリマー粒子(以下「表面改質粒子(a)」ともいう。)によれば、鉄系の超常磁性体の溶出が確実に抑制され、この結果、磁性ポリマー粒子としての性能の向上(用途の拡大)、性能の経時的安定性の向上(信頼性の向上)を図ることができる。
【0044】
工程(a)において使用されるビニル系のモノマーとしては、最終的に得られる磁性ポリマー粒子〔表面改質粒子(a)〕の用途などに応じて適宜選択することができ、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリレート化合物、不飽和カルボン酸などを好ましい化合物として挙げることができる。
また、表面改質粒子(a)の表面に存在する非磁性ポリマー成分(表面被覆層)を効率的に形成させる観点からは、前記ビニル系のモノマーとして、改質前粒子を構成するポリマー(特定共重合体)に吸収されにくいモノマー、例えば水溶性ビニルモノマーを使用することが好ましい。
【0045】
工程(a)におけるモノマーの使用量は、改質前粒子100重量部に対して、通常10〜1000重量部とされ、好ましくは20〜500重量部、更に好ましくは30〜200重量部とされる。モノマーの使用量が過少である場合には、超常磁性体の流出を抑制するために十分な表面被覆層を形成することが困難であり、一方、モノマーの使用量が過大である場合には、この工程終了後に、磁性を有しないポリマー粒子が生成されやすい。
【0046】
磁性ポリマー粒子(改質前粒子)の存在下にビニル系のモノマーを重合させるための具体的方法としては、特に限定されるものでないが、例えば、
(イ)改質前粒子にビニル系のモノマーを吸収させた後、改質前粒子内におけるモノマーを重合させるモノマー吸収重合法、
(ロ)改質前粒子が水中に分散されている磁性ポリマーラテックス中にビニル系のモノマーを連続的または間欠的に供給し、改質前粒子をシード粒子として前記モノマーを重合させるシード重合法、
(ハ)改質前粒子の粒子表面に吸着相を形成し、当該吸着相内においてビニル系のモノマーを重合させるカプセル重合法などを挙げることができる。
【0047】
これらの方法のうち、改質前粒子が小径の粒子であっても確実に表面被覆層を形成することができるという観点から、上記(イ)および上記(ロ)の方法が好ましい。
また、上記(ロ)の方法においては、改質前粒子を構成するポリマーを得るための重合反応が実質的に終了した後(具体的には、重合転化率が85%以上になった時点)で、当該重合反応系にビニル系のモノマーを添加して、当該モノマーの重合反応を継続させることが好ましい。
【0048】
<工程(b)>
この工程(b)は、改質前粒子に鉄溶解剤を接触させ、当該粒子の表面近傍に存在している超常磁性体を予め溶出除去する工程である。
ここに「鉄溶解剤」とは、改質前粒子を構成する鉄成分(超常磁性体)を溶解することができ、しかも、当該改質前粒子を構成するポリマーを実質的に溶解しない物質をいうものとする。
【0049】
また、改質前粒子に鉄溶解剤を接触させる方法としては、▲1▼ 当該改質前粒子に鉄溶解剤を直接接触させる方法、▲2▼ 改質前粒子が水中に分散されてなる分散体中において両者を接触させる方法、具体的には、改質前粒子が分散含有されてなる磁性ポリマーラテックス中に鉄溶解剤の水溶液を添加する方法などを挙げることができ、上記▲2▼の方法が好ましい。
【0050】
改質前粒子に鉄溶解剤を接触させることにより、改質前粒子の表面および表面近傍に存在する鉄成分が優先的に溶解除去される。そして、この工程(b)を経て得られる磁性ポリマー粒子(以下「表面改質粒子(b)」ともいう。)は、鉄系の超常磁性体の溶出量が実用上問題とならないレベルまで抑制され、この結果、磁性ポリマー粒子としての性能の向上(用途の拡大)、性能の経時的安定性の向上(信頼性の向上)を図ることができる。
【0051】
工程(b)に使用することのできる鉄溶解剤としては、無機酸、有機酸、鉄との錯形成剤を挙げることができる。
【0052】
ここに、鉄溶解剤として使用可能な無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などを例示することができる。
無機酸は、鉄成分の溶解速度が大きいため、鉄溶解剤として無機酸を使用する場合には、改質前粒子の表面および表面近傍だけでなく、粒子内部に含有されている超常磁性体まで溶解除去してしまうことがある。従って、鉄成分を必要以上に溶解除去させない(粒子内部の超常磁性体まで溶解させない)よう、当該無機酸の濃度、処理時間などを調整することにより、鉄成分の溶解量を制御することが好ましい。
【0053】
ここに、無機酸を使用する場合における鉄成分の好適な溶解除去量としては、改質前粒子中に含有されていた鉄成分(超常磁性体)の重量を「x」、表面改質粒子(b)中に含有されている鉄成分(超常磁性体)の重量を「y」とするとき、〔(x−y)/x〕の値が0.05〜0.6となる量であることが好ましい。この値が0.05未満である場合(溶出除去量が過少である場合)には、磁性ポリマー粒子の表面およびその近傍に残存する鉄成分(超常磁性体)が使用時において溶出し、生化学的な用途など、適用分野によっては十分な実用性能を有するものとならないことがある。一方、〔(x−y)/x〕の値が0.6を超える場合(溶出除去量が過大である場合)には、粒子内部の超常磁性体まで溶出され、磁気沈降速度が低下するなど、十分な磁気応答性を有するものとならないことがある。
【0054】
鉄溶解剤として無機酸を使用する場合における処理条件は、鉄成分の溶解除去量(x−y)を目安として、これを確保できるように選定される。好ましい処理条件は、鉄系超常磁性体や無機酸の種類によって異なるが、溶解除去量の制御の観点から、処理温度が0〜100℃、処理時間が0.5〜20時間とされる。
改質前粒子が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)中で、改質前粒子に硫酸を接触させる態様において、処理条件の好適な一例を示すと、水性媒体中における改質前粒子の濃度が4g/リットル、硫酸濃度が2規定、処理温度が25℃、処理時間が2時間とされる。また、処理後における磁性ポリマー粒子〔表面改質粒子(b)〕は、洗浄・再分散した後、当該表面改質粒子(b)の分散体にアルカリ性の化合物を添加して中和処理することが好ましい。
【0055】
鉄溶解剤として使用可能な有機酸としては、シュウ酸、クエン酸、クロロ酢酸、メルカプト酢酸、スルホサリチル酸などを例示することができ、これらのうち、メルカプト酢酸およびスルホサリチル酸が好ましい。
また、鉄溶解剤として使用可能な錯形成剤としては、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジンなどのチオシアン酸塩;2−メルカプトエタノール、ジチオグリセリン、ジチオトリメチロールプロパン、ジチオエリトリトールなどのメルカプト化合物;o−フェナントロリン、2,2’−ビピリジル、8−キノリノール、エチレンジアミン4酢酸などの窒素系錯形成剤などを例示することができる。これらのうち、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸グアニジン、2−メルカプトエタノール、ジチオエリトリトール、o−フェナントロリン、2,2’−ビピリジルが好ましい。
これらの鉄溶解剤は、単独で使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。この場合において、有機酸とチオシアン酸塩との組合せ、メルカプト化合物とチオシアン酸塩との組合せのように、タイプの異なる鉄溶解剤を併用することが好ましい。
【0056】
鉄溶解剤として使用される有機酸および錯形成剤は、改質前粒子の表面および表面近傍に存在する鉄成分を選択的に溶解除去することができる。
鉄溶解剤として有機酸を使用する場合における鉄成分の好適な溶解除去量としては、改質前粒子の表面および表面近傍に存在する超常磁性体の量などによって異なるが、表面および表面近傍に存在する超常磁性体の量が少ない場合において、当該改質前粒子中に含有されていた鉄成分(超常磁性体)の重量を「x」、表面改質粒子(b)中に含有されている鉄成分(超常磁性体)の重量を「z」とするとき、〔(x−z)/x〕の値が0.01〜0.4となる量であることが好ましい。
【0057】
有機酸および/または錯形成剤を使用する場合における処理条件としては、無機酸を使用する場合ほど厳密に制御する必要はない。
改質前粒子が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)中で、この改質前粒子に、チオシアン酸グアニジン(錯形成剤)および2−メルカプトエタノール(錯形成剤)を接触させる態様において、処理条件の好適な一例を示すと、水性媒体中における改質前粒子の濃度が50g/リットル、チオシアン酸グアニジンの濃度が1モル/リットル、2−メルカプトエタールの濃度が1重量%、処理温度が25℃、処理時間が12時間とされる。
【0058】
工程(b)を経て得られる表面改質粒子(b)において、粒子表面および表面近傍に残存する鉄系の超常磁性体の量は、可能な限り少ないことが好ましい。
具体的には、洗浄処理された表面改質粒子(b)0.1gを、70℃に加熱された純水10ミリリットル中に2時間浸漬させた後、当該純水中に溶出した金属含有率が10ppm以下であることが好ましく、更に好ましくは1ppm以下とされる。
【0059】
<工程(c)>
この工程(c)は、改質前粒子に、有機性塩基および/または水溶性溶剤を接触させる工程である。
【0060】
工程(c)に使用することのできる有機性塩基の具体例としては、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミンなどの有機アミン化合物を挙げることができる。
【0061】
工程(c)に使用することのできる水溶性溶剤は、25℃における水への溶解度が1重量%以上であって、ポリマーに親和性を有する有機溶剤である。かかる水溶性溶剤の具体例としては、アセトン、メルカプトエタノール、エリトリトール、ジチオエリトリトール、酢酸エチル、ブチルカルビトールアセテート、フェニルセロソルブなどを挙げることができる。
【0062】
この工程(c)においては、磁性ポリマー粒子(改質前粒子)の水性分散液に有機性塩基および/または水溶性溶剤を添加することにより行われる。
ここに、有機性塩基の使用量は、通常、改質前粒子の水性分散液の0.1〜20容量%とされる。また、水溶性溶剤の使用量は、通常、改質前粒子の水性分散液の1〜95容量%とされる。
また、水性分散液における改質前粒子の濃度は特に制限されるものではないが、0.1〜20重量%であることが好ましい。なお、改質前粒子が沈降する場合には、適度に攪拌しながら処理することが好ましい。
また、前記水性分散液のpHは、通常9以上とされ、好ましくは11以上とされる。処理温度としては特に制限はないが、50℃〜80℃程度であることが好ましい。処理時間も特に制限はないが、1〜40時間であることが好ましい。
【0063】
この工程(c)を経て得られる磁性ポリマー粒子(以下「表面改質粒子(c)」ともいう。)は表面荷電量の大きな粒子、具体的には、表面荷電量が0.05ミリ当量/g以上の粒子となる。ここに、「表面荷電量」は、電導度滴定により、磁性ポリマー粒子の表面に存在する酸を測定して得られる値であり、ミリ当量/g(磁性ポリマー粒子1g当たりの粒子表面に存在するカルボキシル基のミリ当量数)で表される。この測定法が記載されている文献としては「J.Electroanal.Chem.,Vol.37 P.161(1972)」を挙げることができる。
このように大きな表面荷電量を有する粒子は、カルボキシル基変性粒子として実用上問題なく使用することができる。
また、このような大きな表面荷電量を有する粒子は、粒子の使用において高い電解質濃度の分散媒でも分散安定性が良く、また粒子を沈降させた後の再分散性に優れるほか、粒子表面の官能基を利用して表面に核酸あるいは抗原・抗体、酵素等の生理活性物質等を化学結合させることができる。
所定の表面荷電量を得るための方法として、通常行われている方法をそのまま使用することができる。例えば、重含時に共重合できる酸モノマーを直接加える方法、共重合できるエステル系モノマーを加えて粒子形成した後に、加水分解して表面荷電を得る方法、又は、グルタルメタアクリレートのような反応性の高い官能基をもつ共重合可能なモノマーと共重合させても良い。
【0064】
本発明に係る磁性ポリマー粒子(本発明の磁性ポリマー粒子および本発明の方法により得られる磁性ポリマー粒子)は、診断薬担体、細菌分離単体、細胞分離担体、核酸分離精製担体、蛋白分離精製担体、固定化酵素担体、ドラッグデリバリー担体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料などとして好適に使用することができる。また、本発明に係る磁性ポリマー粒子には、DNAやRNAなどの核酸、抗原・抗体、酵素などの生理活性物質を容易に結合(化学的結合または物理的結合)させることができる。
【0065】
本発明の磁性ポリマー粒子表面に、オリゴヌクレオチドを固定化させることにより、核酸固定磁性ポリマー粒子を得ることができる。オリゴヌクレオチドの長さは10から100塩基、好ましくは15から70塩基である。必要に応じて、該固定化されるオリゴヌクレオチドは1本鎖DNAであっても良く、2本鎖DNAであっても良く、又はRNAであっても良い。このような核酸は、通常市販される核酸合成器を用いて調製することができる。
本発明において核酸を有する担体となる粒子へ固定する法は、例えば特開平7−75599号公報および特開平6−335380号公報で記述されている方法を適用することができる。
すなわち、具体的には、核酸プローブ1当量分と核酸プローブのハイブリッド形成部位と相補するDNA1当量分とをアニーリング緩衝液中で混合し、80℃で5分間加熱した後、徐々に室温に戻し、2本鎖を形成させる。この2本鎖のDNAをヒドロキシアパタイトカラムで精製した後に、脱水縮合剤と共に粒子の分散液に添加し、加熱することによって核酸プローブの固定化部位の塩基配列中のアミノ基と粒子表面のカルボキシル酸基とをアミド結合により固定することができる。
ここで、脱水縮合剤としては、例えば1─エチル─3─(N,N’−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド等のカルボジイミド類、N−エチル─5─フェニルイソキサゾリウム─3’─スルホネート、N−エトキシカルボニル─2─エトキシ─1,2─ジヒドロキノリン等の水溶性の脱水縮合剤が好ましいものとして挙げられるが、他に油溶性の脱水縮合剤も使用することができる。
粒子の使用量は、核酸プローブ1ミリモル当り、通常0.5〜500g、好ましくは5〜50gが適当である。核酸プローブの粒子への固定化反応は、通常pH3〜11程度の水性媒体中、4〜70℃において、5分ないし一夜行えばよい。
【0066】
次にこの粒子に固定化された核酸プローブ中のハイブリッド形成部位に結合した相補的な塩基配列を離脱させることによって、本発明の核酸プローブ粒子が得られる。この際、前記相補的な塩基配列の離脱は、熱またはアルカリ変性により行うことができ、さらに遠心分離、濾過等の手段によって相補的な塩基配列を除去することができる。
このように調製される核酸固定化磁性ポリマー粒子は、遺伝子診断をはじめ、遺伝子工学全般に使用することができる。具体的には、例えばオリゴdTを結合させた磁性ポリマー粒子を用いて、細胞溶解液から、直接メッセンジャRNAを回収することができる。又は、エイズウィルス核酸に相補性のある核酸配列を用いれば、生物検体から、エイズウィルスを回収し、DNAプローブ法、又はポリメラーゼチェーンリアクション法を用いて検出することができる。本発明の磁性ポリマー粒子の組成から、蛋白質の非特異的吸着が従来のスチレン系粒子に比べて著しく低いので、上記診断、研究目的に使用されるとき、バッググラウンドを低く抑えることが容易に実現し、よって、高感度な検出ができるので好ましい。また、酵素反応に於いても、酵素蛋白質の吸着による活性低下が少なく、従来の担体に比べて、高い効率の酵素反応が実現できる。
本発明の磁性ポリマー粒子に生理活性蛋白質を固定化させ、生理活性蛋白質を担持する蛋白質固定化磁性ポリマー粒子を調製することができる。上記生理活性蛋白質は一般的な生理活性を有する蛋白質、又はその複合体を含む。具体的に、例えば免疫グロブリン、各種酵素、アビジン蛋白質等が挙げられる。このような蛋白質を上記核酸固定と同様な方法で、磁性ポリマー粒子の表面に結合することができる。具体的に、蛋白質のアミノ基を利用して、粒子表面のカルボキシル基と反応させることができる。反応効率を高めるために、様々な工夫がなされるが、例えば、脱水縮合剤を先に粒子のカルボキシル基と反応させてから、蛋白質を加えて反応させても良い。
このように調製される抗体結合粒子、アビジン結合粒子、酵素結合粒子を診断分野、研究分野に利用することができる。特に本発明の磁性ポリマー粒子による蛋白質の物理吸着量が少ないため、バックグラウンドが極めて低い。従って、極く微量の測定対象も感度良く検出することができる
【0067】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下において、「部」は「重量部」を意味するものとする。
【0068】
<参考例1>
油性磁性流体「フェリコロイドHC50」〔タイホー工業(株)製〕にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、親油化処理された表面を有するフェライト系の超常磁性体(粒子径:0.01μm)を得た。
表1に示す処方に従って、前記超常磁性体40部に、シクロヘキシルメタクリレート75部、メタクリル酸5部、メチルメタクリレート20部およびベンゾイルペルオキシド(重合開始剤)3部を添加し、この系を混合攪拌することにより超常磁性体を均一に分散させてモノマー組成物を調製した。
一方、ポリビニルアルコール10部、ラウリル酸ナトリウム0.05部およびポリエチレンオキシドノニルフェニルエーテル0.1部を水1000部に溶解して水性媒体を調製した。
得られた水性媒体(水相)中に上記のモノマー組成物を添加し、この系を、ホモミキサーで予備撹拌した後、超音波分散機で分散処理することにより、平均粒子径が2μmの油滴(油相)が水性媒体に分散されてなる懸濁液(油滴分散体)を調製した。
次いで、得られた懸濁液を、容量2リットルの攪拌機付三つ口フラスコ内に仕込み、この系を75℃に昇温し、窒素雰囲気下において攪拌しながら5時間にわたって、油滴中のモノマーを重合(懸濁重合)させることにより、磁性ポリマー粒子が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)を調製した。
この磁性ポリマーラテックスに分散されている磁性ポリマー粒子〔以下、「磁性ポリマー粒子(1)」ともいう。〕は、磁石によって容易に吸引沈降させて回収することができ、また、回収された磁性ポリマー粒子(1)は、水中に容易に再分散できるものであった。そこで、蒸留水中で磁気沈降させることにより、磁性ポリマー粒子(1)を洗浄・精製する操作を3回にわたって行った。
【0069】
<実施例1>
表1に示す処方に従って、モノマー組成物における単量体組成を、シクロヘキシルアクリレート75部、メタクリル酸3部およびアクリル酸2部に変更したこと以外は参考例1と同様にして、モノマー組成物および懸濁液を調製し、懸濁重合を行うことにより、本発明の磁性ポリマー粒子〔以下、「磁性ポリマー粒子(2)」ともいう。〕が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)を調製した。
【0070】
<実施例2>
表1に示す処方に従って、モノマー組成物における単量体組成を、2−エチルヘキシルメタクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート50部、メタクリル酸5部およびスチレン35部に変更したこと以外は参考例1と同様にして、モノマー組成物および懸濁液を調製し、懸濁重合を行うことにより、本発明の磁性ポリマー粒子〔以下、「磁性ポリマー粒子(3)」ともいう。〕が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)を調製した。
【0071】
<比較例1>
表1に示す処方に従って、モノマー組成物における単量体組成を、メタクリル酸5部およびスチレン95部に変更したこと以外は参考例1と同様にして、モノマー組成物および懸濁液を調製し、懸濁重合を行うことにより、比較用の磁性ポリマー粒子〔以下、「磁性ポリマー粒子(C1)」ともいう。〕が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)を調製した。
【0072】
<比較例2>
表1に示す処方に従って、モノマー組成物における単量体組成を、2−エチルヘキシルメタクリレート10部、メタクリル酸5部、メチルメタクリレート10部およびスチレン75部に変更したこと以外は参考例1と同様にして、モノマー組成物および懸濁液を調製し、懸濁重合を行うことにより、比較用の磁性ポリマー粒子〔以下、「磁性ポリマー粒子(C2)」ともいう。〕が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)を調製した。
【0073】
参考例1並びに実施例1〜2および比較例1〜2によって得られた磁性ポリマーラテックスの各々について、重合転化率、固形分濃度および磁性ポリマー粒子中における超常磁性体の含有割合を測定した。また、下記に示す評価方法に従って、重合安定性、磁性ポリマー粒子における超常磁性体の分散性、静置安定性について評価し、下記に示す測定方法に従って、磁性ポリマー粒子の形状、数平均粒子径および変動係数を測定した。これらの結果を表1に併せて示す。
【0074】
(イ)重合安定性の評価:
重合反応終了後、反応生成物を200メッシュのステンレス金網を通過させ、金網上に残った凝集物の量が全固形分の10重量%未満である場合を「良好」、凝集物の量が全固形分の10重量%以上である場合を「不良」と判定した。
【0075】
(ロ)超常磁性体の分散性の評価:
酢酸ウラニルで染色した後、透過型電子顕微鏡により磁性ポリマー粒子における超常磁性体の分散状態を観察し、ポリマー粒子の内部全体に均一に分散し、またはポリマー粒子の中心部において均一に分散している場合を「良好」、ポリマー粒子の表面近傍の一部、または表面近傍の全部に局在化している場合を「不良」と判定した。
【0076】
(ハ)静置安定性の評価:
磁性ポリマーラテックスを希釈して固形分濃度(c0 )を1重量%に調整し、この希釈液を、液相の高さが2cmとなるよう容量20ミリリットルのサンプルビン内に収容し、磁性ポリマー粒子が均一に分散されるまで容器を振盪した後10分間静置し、液面から液面下1cmに至る上層部分のみを取り出して固形分濃度(c)を測定し、(c/c0 )×100で算出される値を静置安定指数(重量%)として求めた。
【0077】
(ニ)磁性ポリマー粒子の数平均粒子径および変動係数の測定:
酢酸ウラニルで染色した後、透過型電子顕微鏡による磁性ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、無作為に選んだ500個の磁性ポリマー粒子の粒子径を測定することにより、数平均粒子径およびその変動係数を求めた。
【0078】
<比較例3>
粒子径3000Åのマグネタイト微粒子「マグネタイトEPT500」〔戸田工業(株)製〕をオレイン酸ナトリウムにより親油化処理することにより強磁性体を調製した。表1に示す処方に従って、超常磁性体に代えて前記強磁性体を使用したこと以外は参考例1と同様にしてモノマー組成物および懸濁液を調製し、懸濁重合を行うことにより、比較用の磁性ポリマー粒子〔以下、「磁性ポリマー粒子(C3)」ともいう。〕が水性媒体中に分散されてなる分散体(磁性ポリマーラテックス)を調製した。
得られた磁性ポリマーラテックスについて、重合転化率、固形分濃度、磁性ポリマー粒子中における強磁性体の含有割合、重合安定性、磁性ポリマー粒子における強磁性体の分散性、静置安定性、磁性ポリマー粒子の形状、数平均粒子径および変動係数の結果を表1に併せて示す。
なお、比較例3の磁性粒子には残留磁化があり、磁気吸引で集めたあとの粒子は互いに吸引しあい再分散性が悪いものであった。
【0079】
【表1】
【0080】
<参考例2>
懸濁重合を開始してから3時間経過した後、反応系に、メチルメタクリレート19部と、メタクリル酸1部とを添加し、さらに5時間懸濁重合させたこと以外は参考例1と同様にして磁性ポリマー粒子の分散体(磁性ポリマーラテックス)を製造した。このようにして得られた磁性ポリマーラテックスの重合転化率は98重量%であり、磁性ポリマーラテックスを構成するこの例の磁性ポリマー粒子には、超常磁性体を含まない表面被覆層が形成されていた。
【0081】
<参考例3>
参考例1により得られた磁性ポリマーラテックス(1)100部を0.1規定の塩酸1000部に添加し、当該磁性ポリマー粒子(1)の表面近傍に存在する超常磁性体を溶出除去した。ここに処理時間は1時間とした。次いで、処理された磁性ポリマー粒子を磁気分離により洗浄して精製することにより、磁性ポリマー粒子の分散体(磁性ポリマーラテックス)を製造した。この磁性ポリマー粒子には、超常磁性体を含まない表面被覆層が形成されていた。
【0082】
<参考例4>
参考例1により得られた磁性ポリマーラテックス8.0g(固形分で1g)に、2規定の硫酸(鉄溶解剤)250ミリリットルを添加し、この系を25℃で3時間緩く攪拌することにより、改質前粒子〔磁性ポリマー粒子(1)〕の酸処理(表面近傍に存在する超常磁性体の溶出除去処理)を行った。
次いで、処理された磁性ポリマー粒子を磁気沈降させて分離回収し、回収された磁性ポリマー粒子を、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル「エマルゲン910」〔花王(株)製〕の水溶液(0.01重量%)200ミリリットルで2回洗浄し、10ミリリットルの蒸留水中に再分散させ、得られた分散体のpHを水酸化ナトリウム水溶液(0.5重量%)により7に調整した。このような操作により、表面近傍の超常磁性体が溶出除去された磁性ポリマー粒子〔表面改質粒子(b)〕0.75gの分散体(磁性ポリマーラテックス)を得た。
得られた表面改質粒子(b)において、熱天秤測定によるフェライト含量は22.5重量%であり、改質前粒子中に含有されていたフェライト(超常磁性体)の20重量%が溶解除去されたことになる。また、表面改質粒子(b)の平均粒子径は1.8μmであり、改質前粒子の粒子径と大差なかった。
さらに、本例で得られた磁性ポリマー粒子〔表面改質粒子(b)〕の分散体1g(固形分で0.1g)にイオン交換水を添加し、磁気沈降処理を2回行って表面改質粒子(b)を回収し、当該表面改質粒子(b)を十分水洗した。次いで、当該表面改質粒子(b)をイオン交換水10ミリリットル中に添加し、この系を70℃で24時間攪拌した。その後、この系の上澄み部分を採取して原子吸光分析により鉄濃度を測定したところ、鉄濃度は1ppm以下であり、このことから、表面改質粒子(b)の粒子表面および表面近傍に存在する超常磁性体の量は、きわめて少ないものであることが確認された。なお、比較のため、実施例1で得られた磁性ポリマー粒子(2)の分散体0.8g(固形分で0.1g)について同様の操作を行ったところ、上澄み部分における鉄濃度は73ppmであった。
【0083】
<参考例5>
参考例1により得られた磁性ポリマーラテックス0.8g(固形分で0.1g)に、1重量%のアンモニア水(有機性塩基)1gを添加した。なお、このときの系(磁性ポリマーラテックス)のpHは12.5であった。次いで、この系を60℃で10時間緩く振盪することにより、改質前粒子〔磁性ポリマー粒子(1)〕のアルカリ処理を行った。その後、この系を冷却し、0.5規定の硫酸で中和することによりpHを7.5に調整した。次いで、上記アルカリ処理が施された磁性ポリマー粒子〔表面改質粒子(c)〕に対して、純水による洗浄・再分散処理を4回行った。
このようにして得られた表面改質粒子(c)における超常磁性体の含有割合は28重量%、当該表面改質粒子(c)の平均粒子径は1.8μmであり、改質前粒子の含有割合および粒子径と大差なかった。また、当該表面改質粒子(c)の表面荷電量を測定したところ、0.125ミリ当量/gであり、磁性ポリマー粒子(1)の表面荷電量(0.002ミリ当量/g)と比較して大きな値を示すことが確認された。
【0084】
<参考例6〜14>
1重量%のアンモニア水に代えて、下記表2に示す有機性塩基または水溶性溶剤を使用したこと以外は、参考例5と同様にして改質前粒子〔磁性ポリマー粒子(1)〕を処理して表面改質粒子(c)を得た。なお、処理剤として水溶性溶剤のみを使用した例においては、0.5規定の水酸化ナトリウム水溶液によって系のpHを12に調整してから処理を行った。得られた表面改質粒子(c)の各々について、参考例5と同様にして測定した表面荷電量の値を表2に併せて示す。
【0085】
<実施例3>
実施例1により得られた磁性ポリマーラテックス0.8g(固形分で0.1g)を用い、処理剤としてアセトン1gを併用したこと以外は、参考例5と同様にして改質前粒子〔磁性ポリマー粒子(2):表面荷電量0.005ミリ当量/g〕を処理して表面改質粒子(c)を得た。このようにして得られた表面改質粒子(c)について、参考例5と同様にして測定した表面荷電量の値を表2に併せて示す。
【0086】
<実施例4>
実施例2により得られた磁性ポリマーラテックス0.8g(固形分で0.1g)を用い、処理剤としてアセトン1gを併用したこと以外は、参考例5と同様にして改質前粒子〔磁性ポリマー粒子(3):表面荷電量0.003ミリ当量/g〕を処理して表面改質粒子(c)を得た。このようにして得られた表面改質粒子(c)について、参考例5と同様にして測定した表面荷電量の値を表2に併せて示す。
【0087】
【表2】
【0088】
<試験例1>
下記のような試験を実施することにより、免疫診断薬担体粒子(酵素免疫法の担体)としての評価を行った。
参考例1、実施例1〜2、参考例2〜3、参考例5、参考例7、参考例12および比較例1〜3により得られた磁性ポリマーラテックスの各々を固形分換算で10mg採取し、採取した磁性ポリマーラテックスから磁性ポリマー粒子を磁気分離して、この磁性ポリマー粒子をリン酸生理食塩水緩衝液(pH7.5)1ml中に分散させた。次いで、この分散液に抗ヒトIgM抗体を200μg添加し、室温で1時間ゆるく振盪して粒子表面に前記抗体を吸着させることにより磁性ポリマー粒子を感作させた。なお、感作後の磁性ポリマー粒子を磁気分離し、分離後の上澄み液中に前記抗体が残存しているか否かについて、280nmにおける吸光度を測定することにより確認したところ、何れの上澄み液においても前記抗体の存在は認められず、従って、添加した全ての抗体が磁性ポリマー粒子に吸着されていることが確認された。
磁気分離された磁性ポリマー粒子(抗ヒトIgM抗体感作粒子)の各々に、0.5%の牛血清アルブミンと、0.1%のポリエチレングリコールとを含むリン酸生理食塩水緩衝液の溶液(pH7.5)1mlを添加し、バイブレータにより振動分散させた後、室温で30分間ゆるく振盪して、前記抗体が吸着されていない粒子表面をアルブミンでブロッキング処理することにより、係る酵素免疫法(EIA法)の診断薬粒子を調製した。
上記のようにして調製された診断薬粒子の各々を用いて下記の操作を行った。0ng/ml,50ng/ml,100ng/ml,500ng/mlの濃度でヒトIgM抗原を含むリン酸生理食塩水緩衝液100μlを調製し、それぞれについて、診断薬粒子を含む分散液20μlを添加して室温で30分間静置した。続いて、磁気分離した磁性ポリマー粒子にアセチルコリンエステラーゼを結合させた抗ヒトIgM抗体100μgを含む溶液を200μl添加し、バイブレータにより振動分散させた後25℃で1時間静置した。
次いで、アセチルコリンエステラーゼの基質である「Ellman’s試薬」(Cayman社製)を100μl添加し、室温で10分間ゆるく振盪して酵素反応発色させ、反応停止液である2規定の硫酸を50μl添加してから、412nmにおける吸光度を測定した。また、対照試験として、ヒトIgM抗原を含まないリン酸生理食塩水緩衝液100μlに、感作していない粒子を含む分散液20μlを添加して同様の操作を行って吸光度を測定した。これら結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
<試験例2>
試験例1と同様な方法で、抗ヒトIgMの代わりに、ストレプットアビジン(和光純薬社製)を結合させ、同様な方法で、反応後磁性ポリマー粒子を洗浄処理した。最終的に5重量%の分散液とした。ビオチン結合したアセチルコリンエステラーゼ溶液(1μg/ml)をストレプットアビジン結合磁性ポリマー粒子10μl(0.5mg)に対して、0μl、25μlまたは100μlを加えて、最終塩濃度が1MのNaCl溶液となるように5MのNaCl溶液を添加し、蒸留水で反応容量を0.5mlにした。10分間静置反応させた。次いで、試験例1と同様な方法で基質を加え、同様の条件で反応し、吸光度を測定した。結果を表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
<試験例3>
ヒト白血球の癌細胞であるK562細胞を1重量%牛胎児血清を含むPRM1−1640培地で培養した。培養懸濁液中における細胞の数が50万個/mLとなった時点で、この培養懸濁液1mLをサンプリングチューブに取り、500rpmで5分間遠心分離して細胞を回収した。回収した細胞に対しリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)1mLを添加した後、超音波処理により無細胞化した。
この無細胞化したK562細胞溶解液を、3本の遠心チューブ(容積2mL)に0.5mLずつ取り、10mMのリン酸緩衝液(pH5)によって2mLまで希釈した。次いで、遠心チューブの各々に、エイズウィルスDNAを組み込んで培養したヒト白血球(NY10株)から取ったHIV−1DNAを、それぞれ、0分子、10分子、50分子分添加した。ボルテックス後、遠心チューブの各々に、参考例1により得られたカチオン性の磁性ポリマー粒子が分散されてなる固形分濃度10重量%の分散体2μLを添加し、室温下、10rpmで5分間回転攪拌した。次いで、磁性ポリマー粒子を磁気分離し、分離された磁性ポリマー粒子の各々に、下記表5に示すPCR反応液を25μLずつ添加して、PCR反応を行った。
【0093】
【表5】
【0094】
上記表5中、「プライマー SK145A」の配列は、「5’CCCACAAGATTTAAACACCA 3’」であり、「プライマー SK451A」の配列は、「5’TGAAGGGTACTAGTAGTTCC 3’」であって、これらをDNA合成器「381A型」(アプライドバイオシステム社製)を用いて、メーカーマニュアルに従って合成した後、HPLCで精製品を得た。
なお、PCR反応は、「サーマルサイクラー モデルJP2000」(PERKIN ELMER CETUS社製)を用いて、(94℃×0.5分間,55℃×1.0分間,72℃×1.5分間)を30サイクルと、72℃×7分間のプログラムで増幅反応を行った。
上記1回目のPCR法による増幅反応の生成物を5μL取り、「プライマー
SK145A」に代えて「プライマー SK145」〔タカラ製〕を使用し、
「プライマー SK451A」に代えて「プライマー SK451」〔タカラ製〕を使用したこと以外は同様にしてNested PCR法の反応を行った。
PCR法およびNested PCR法の反応増幅産物を、2重量%のアガロースゲル「Agarose 1600」〔和光純薬製〕を用いてTBE緩衝液(50mMホウ酸からなる緩衝液,pH8.2)中でMupid型電気泳動装置で泳動させ、エチジウムブロマイド染色後に波長254nmの紫外線照射下で検出した。これらの結果を表6に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
表6に示す結果により、本発明の磁性ポリマー粒子を用いることにより、遠心分離の代わりに磁気分離を利用しDNAを回収することができるため、PCR法に利用できることがわかった。
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、超常磁性体の分散性に優れた新規な磁性ポリマー粒子を提供することができる。
本発明の磁性ポリマー粒子は、磁気応答性に優れていると共に、当該磁性ポリマー粒子の分散体(磁性ポリマーラテックス)において、磁性ポリマー粒子から水性媒体中に鉄イオンが溶出する問題を生じないので、この問題のために磁性ポリマーラテックスの適用が制限されていた各種の用途・技術分野においても好適に用いることができる。また、本発明の磁性ポリマー粒子は、水性媒体中で沈降しにくく、当該水性媒体中において均質な分散状態で存在することができる。
本発明の製造方法によれば、上記のような優れた特性を有する磁性ポリマー粒子およびその分散体を確実に製造することができる。
【0098】
本発明の磁性ポリマー粒子は、上記のような優れた特性により、磁気応答性の要求される種々の用途・分野に広く適用することができる。例えば、抗原、抗体、蛋白、核酸などを物理的乃至は化学的に吸着させることにより、診断薬として広い範囲に適用することができる。また、酵素免疫法の診断薬として用いる場合において、磁性ポリマー粒子からの鉄イオンの溶出に起因して生じる非特異発色が抑制されるので、診断薬としての実用性および信頼性がさらに高められている。また、磁性ポリマー粒子の粒子表面に超常磁性体が露出することがないので、静電特性、成膜性に優れ、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料としても有用である。
Claims (3)
- (A)2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールアクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールメタクリレート、シクロヘキセンジアクリレート、シクロヘキセンジメタクリレート、並びに、シクロヘキシル基の水素原子の一部が炭素数1〜5のアルキル基により置換された置換シクロアルキルアクリレートおよび置換シクロアルキルメタクリレートから選ばれた、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位30〜99重量%、
(B)不飽和カルボン酸に由来する構造単位1〜20重量%、並びに
(C)前記アルキル(メタ)アクリレートおよび前記不飽和カルボン酸と共重合可能な芳香族ビニル化合物に由来する構造単位0〜69重量%からなる共重合体100重量部に対して、超常磁性体1〜100重量部を含有してなり、
数平均粒子径が0.02〜30μmであることを特徴とする磁性ポリマー粒子。 - (A)2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールアクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールメタクリレート、シクロヘキセンジアクリレート、シクロヘキセンジメタクリレート、並びに、シクロヘキシル基の水素原子の一部が炭素数1〜5のアルキル基により置換された置換シクロアルキルアクリレートおよび置換シクロアルキルメタクリレートから選ばれた、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを30〜99重量%、
(B)不飽和カルボン酸を1〜20重量%、並びに
(C)前記アルキル(メタ)アクリレートおよび前記不飽和カルボン酸と共重合可能な芳香族ビニル化合物を0〜69重量%の割合で含有するモノマー中に超常磁性体を分散させてモノマー組成物を調製し、
このモノマー組成物を水性媒体中に分散させて懸濁液を得、
この懸濁液中において、前記モノマーを重合させることを特徴とする磁性ポリマー粒子の製造方法。 - (A)アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位30〜99重量%、
(B)不飽和カルボン酸に由来する構造単位1〜20重量%、並びに
(C)前記アルキル(メタ)アクリレートおよび前記不飽和カルボン酸と共重合可能なビニルモノマーに由来する構造単位0〜69重量%からなる共重合体100重量部に対して、超常磁性体1〜100重量部を含有してなり、数平均粒子径が0.02〜30μmである粒子にオリゴヌクレオチドまたは生理活性蛋白質を固定してなる磁性ポリマー粒子。
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