JP3648890B2 - 印刷器具及び印刷方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写印刷により円管等の内面を簡便に印刷できる印刷器具及び印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、特開平6−275211号公報に、陰極線管のネック部に設けられる電子ビームのレンズ系を、円筒基体の内面に複数のグリッドを印刷形成することで構成することが開示されている。この場合の円筒基体のような円管の内面に印刷を施す従来の方法としては、ディスペンサー方式が良く知られており、同公報にも記載されている。このディスペンサー方式では、インクタンクに接続されたノズルを円管内面に挿入し、ノズルからインクを噴出させて円管内面に塗布する。また、ノズルに代えて多数の孔を有するパイプからインクを噴射するインクジェット方式も知られている。
【0003】
更に、同公報には、インクである導電ペーストを表面に載せたゴムローラーを円筒基体の内周面に沿って転動させることにより転写法で円筒基体の内面に導電パターンを印刷する方法も開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したディスペンサー方式は、基本的にパターンを1本1本描画するもので、描画時間が比較的長くかかるという欠点が有った。また、インクジェット方式でも同様であるが、円管内面に直接インクを噴射して描画するいわゆる直接描画方式では、上述の陰極線管用の円筒基体のような内径が小さい円管内面の微細なパターンを印刷する場合、ノズルやパイプの噴出孔として小さいものを用いる必要が有り、その噴出孔にインクが詰まり易いという問題が有った。
【0005】
上記公報に開示されているゴムローラーを用いた転写法による印刷の場合には、上述のような問題は生じない。しかしながら、このゴムローラーの転動による転写法では、比較的単純なパターンしか印刷することができないという問題が有った。
【0006】
そこで、本発明の目的は、円管等の内面に短時間で印刷を施すことができるとともに、内径が小さい円管等の内面の微細且つ比較的複雑なパターンをも簡便且つ確実に印刷することができる印刷器具及び印刷方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決する本発明の印刷器具は、加圧流体の吹き出し孔を外周面に有する保持部材と、前記保持部材の前記外周面を離間可能に被覆し、前記加圧流体の加圧により膨張し、前記加圧を解除した時に収縮して元の状態に復帰する転写パッドとを備え、前記吹き出し孔の位置において前記転写パッドの膜厚が相対的に小さいことを特徴とする印刷器具に係るものである。
【0008】
本発明の一態様では、前記保持部材が棒状であって、前記転写パッドの膜厚が前記保持部材の長手方向において変化している。
【0010】
本発明の一態様では、前記転写パッドの中央部の膜厚が両端部の膜厚よりも小さい。
【0011】
本発明の一態様では、前記転写パッドの一端部から他端部に向かって膜厚が小さくなる。
【0012】
本発明の一態様では、前記転写パッドの膜厚が連続的に変化している。
【0013】
本発明の一態様では、前記転写パッドの膜厚が段階的に変化している。
【0014】
本発明の一態様では、前記吹き出し孔が、前記保持部材の長手方向の1ヶ所の周りに設けられている。
【0015】
本発明の一態様では、前記吹き出し孔が、前記保持部材の長手方向の複数ヶ所の周りに設けられている。
【0016】
本発明の一態様では、前記保持部材の前記外周面が、前記転写パッドの膜厚の変化に対応する形状に構成されている。
【0017】
本発明の一態様では、前記転写パッドの外周面が実質的に同一円筒面内に存在する。
【0018】
また、本発明の印刷方法では、加圧流体の吹き出し孔を外周面に有する保持部材と、その保持部材の前記外周面を離間可能に被覆し、前記吹き出し孔の位置において膜厚が相対的に小さい転写パッドとを備えた印刷器具を被印刷面に対向させ、前記加圧流体の加圧により前記転写パッドを膨張させて前記被印刷面に接触させ、前記転写パッドの外周面に予め付着させたインクを前記被印刷面に転写する。
【0019】
本発明の一態様では、前記印刷面が曲面である。
【0020】
本発明の一態様では、前記保持部材が棒状であり、前記被印刷面が、被印刷体に設けられた穴の内面である。
【0021】
本発明の一態様では、前記転写パッドが、その中央部から両端部に順次連続的に前記穴の前記内面に接触する。
【0022】
本発明の一態様では、前記転写パッドが、その一端部から他端部に順次連続的に前記穴の前記内面に接触する。
【0023】
本発明の一態様では、円筒部品又は円筒部分の内周面に導電パターンを形成する際に適用する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を好ましい実施の形態に従い説明する。
【0025】
まず、図3及び図4を参照して、以下の実施の形態において例として用いる被印刷体(ワーク)について説明する。
【0026】
図3に示すように、本発明の実施の形態において例示する被印刷体(ワーク)は、既述した特開平6−275211号公報に開示されているように、陰極線管100のネック部に設けられる電子ビームの主レンズ系を構成する高抵抗管110である。なお、図3では、陰極線管100内の高抵抗管110以外の構成は図示省略した。
【0027】
図3及び図4に示すように、高抵抗管110は、例えば、アルミナ(Al2 O3 )中にTi、W、Cu等の酸化物を混合し焼結させて導電性を持たせた物質や導電性を持たせたフェライト、チタニア系セラミックス等からなり、高耐圧性を有する絶縁物を主成分とする。この高抵抗管110は、真円度の高い(例えば20μm以下)円筒形状に形成され、その両端部及び中央部に、例えば、RuO2 −ガラスペースト(商品名#9516、デュポン社製等)からなるリング状の電極膜111、112、113が塗布形成されている。また、電極膜111〜113の間にそれらと同じ材料からなるリング状の導電リング114が形成されている。ここで、電極膜111と113は、高抵抗管110の両端部から夫々外部に電気的に接続されて、電子ビームの主レンズ系の第3グリッド(G3 )と第5グリッド(G5 )を夫々構成する。また、電極膜112は、高抵抗管110の壁部に穿設された貫通孔(不図示)を通じて外部に電気的に接続され、電子ビームの主レンズ系の第4グリッド(G4 )を構成する。これらの電極膜111〜113の間に形成された導電リング114は、高抵抗管110の導電性内壁を通して電位が固定され、高抵抗管110内の径方向における電位の安定、電極膜111〜113間の電位勾配の緩和、電極膜111〜113間の電位の微調整による球面収差の低減、及び、電極膜111〜113間での電位の安定等の作用を示す。
【0028】
このように陰極線管の電子レンズの主レンズ系G3 〜G5 を高抵抗管110内に塗布形成した導電パターンで構成することにより、主レンズ系G3 〜G5 の同芯度が向上する。その結果、電子ビームの軸ずれを小さくでき、高画質の画像を実現できる。また、主レンズ系を構成する電極間の電位勾配が小さくなるので、電極間の放電を防止することができ、加えて、主レンズ系の球面収差を小さくすることができるので、ビームスポット径を小さくして解像度を向上させることができる。
【0029】
次に、上述した高抵抗管110の内面に電極膜111〜113及び導電リング114等の導電パターンを塗布形成するための本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
図1(a)に、本発明の第1の実施の形態による印刷器具の縦断面図を、図1(b)に、図1(a)のB−B線に沿った横断面図を夫々示す。また、図2に、印刷器具の外観斜視図を示す。
【0031】
印刷器具1は、金属やプラスチック等の硬質材料、例えば、ステンレススチールで構成されたほぼ円柱形をなす棒状保持部材2と、この棒状保持部材2の外周面に嵌装された天然ゴム、NBR、SBR等のゴム、例えば、シリコーンゴムで構成された転写パッド3と、この転写パッド3の両端部を棒状保持部材2に締め付けている、例えば、金属製の締結バンド4とを備えている。なお、この印刷器具の基本構成については、本願出願人が特願平8−146905号(平成8年6月10日出願)により既に提案している。
【0032】
図1(a)及び(b)に示すように、棒状保持部材2には、その中心軸に沿って空気導通路21が設けられ、この空気導通路21と連通して棒状保持部材2の長手方向ほぼ中央部の外周面4ヶ所に空気吹き出し孔22が設けられている。転写パッド3は、この棒状保持部材2の空気吹き出し孔22を閉塞して、常時は、そのゴム弾性により棒状保持部材2の外周面23に密着している。
【0033】
図2に示すように、棒状保持部材2は、その空気導通路21が設けられた側の端部が延長され、その延長部分24の先端部にロータリーエアジョイント25が設けられている。また、その延長部分24の途中に、この印刷器具1を不図示の駆動装置に回転可能に保持させるためのベアリング部26が設けられている。
【0034】
図1(a)に示すように、本実施の形態による転写パッド3は、その両端部から中央部に行くに従い膜厚が連続的に薄くなるように構成されている。例えば、被印刷体である高抵抗管110の内径aが12mmφ、転写パッド3の外径bが11mmφの時、転写パッド3の両端部での内径cは7mmφ(転写パッド3の膜厚t=2mm)、中央部での内径dは8.5mmφ(転写パッド3の膜厚t=1.25mm)に構成される。ちなみに、この時、空気導通路21の内径eは1.5mmφ、空気吹き出し孔22の内径fは0.5mmφである。
【0035】
このような転写パッド3は、例えば、図7に示すように、転写パッド3の内面形状に対応した内型124と外面形状に対応した外型125とにより、モールド成型で製造することができる。なお、転写パッド3の外面両端部には締結バンド4を収容するための凹部31が設けられているが、締結バンド4を締め付けた時に締結バンド4が転写パッド3の外面にめり込んで突出しないような場合には、凹部31を設ける必要は無い。
【0036】
一方、図1(a)に示すように、棒状保持部材2の外周面23は、上述した転写パッド3の膜厚の変化に対応してその中央部が膨出した形状に構成されている。これにより、転写パッド3の膜厚の変化が相殺され、図示の如く、転写パッド3の外面を1つの円筒面に構成することができる。そして、このように、転写パッド3の外面を1つの円筒面に構成することにより、図示の如く、後述する転写パターンを載せた転写パッド3の外面を被印刷体(ワーク)である高抵抗管110の内面に等間隔で近接配置することができる。その結果、ワーク内面への印刷ずれ等の無い正確な転写を行うことができる。
【0037】
次に、この印刷器具1を用いて、高抵抗管110(以下、「ワークW」と言う。)の内面に導電パターンを印刷する方法を説明する。
【0038】
まず、印刷器具1の締結バンド4で締め付けられていない転写パッド3の表面(以下、「有効印刷領域」と言うことがある。)に印刷用インクである導電ペースト(例えば、RuO2 −ガラスペースト:商品名#9516、デュポン社製)を所定のパターンで付着させる。このインクを付着させる方法については後述する。
【0039】
次に、図2及び図1(a)に示すように、内面を印刷するワークWの中に、ワークWの内面に転写パッド3が当たらないように棒状保持部材2の中心軸をワークWの管軸に合わせながら印刷すべき位置まで印刷器具1を挿入する。
【0040】
次に、図1(c)に示すように、棒状保持部材2の空気導通路21から、例えば、3〜5kg重/cm2の圧力で圧縮空気5を送り、空気吹き出し孔22から吹き出させる。これにより、棒状保持部材2の外周面23に密着していた転写パッド3の内面が空気吹き出し孔22の部分から加圧され、転写パッド3が膨張を開始する。この時、本実施の形態では、転写パッド3の膜厚を両端部から中央部に向けて連続的に薄くなるように構成しているので、転写パッド3は、膜厚の薄い中央部から膜厚の厚い両端部に向けて順次膨らみだす。そして、転写パッド3の外面は、その中央部から両端部に向かって順次ワークWの内面に圧着し、転写パッド3の外面に付着しているインクがワークWの内面に転写される。また、本実施の形態では、空気吹き出し孔22を棒状保持部材2の中央部にのみ設けているので、転写パッド3がより中央部から膨らみだし易い。
【0041】
このように、転写パッド3が中央部から両端部に向けて順次膨らんでワークWの内面に密着することにより、転写パッド3の外面とワークWの内面との間の空気が効率よく排出され、それらの間に気泡が残留することが確実に防止される。この結果、転写パッド3の外面とワークWの内面との間の密着不良に起因する印刷パターンの不良が無くなり、きれいで確実な印刷を行うことができる。
【0042】
上述の効果を確実に得るためには、転写パッド3の膜厚の変化量(=最大膜厚tmax /最小膜厚tmin )を133.3%(上述した中央部での内径dが8mmφに相当)以上とするのが好ましい。これよりも変化量が少ないと、転写パッド3の外面とワークWの内面との間に気泡の残留する場合が有り得る。一方、転写パッド3の機械的強度を考えると、膜厚の変化量の上限は200%(上述した中央部での内径dが9mmφに相当)とするのが好ましい。勿論、この上限は、転写パッドを構成する材料の機械的強度が許す限り、いくらでも大きくすることができる。
【0043】
図1(d)に、転写パッド3の外面の全面がワークWの内面に密着した状態を示す。この時、印刷器具1及びワークWのいずれかを回転させるようにしても良い。
【0044】
この後、棒状保持部材2への圧縮空気5の供給を止め、転写パッド3を収縮させて棒状保持部材2の外周面23に密着するように復帰させる。その後、印刷器具1をワークWから抜き出す。これにより、ワークWの内面には、転写パッド3の外面に付着していたインクのパターンが転写されて、例えば、図4に示すような導電ペーストのパターンがワークWである高抵抗管110の内面に塗布形成される。この後、例えば、高抵抗管110の内面に塗布された導電ペーストを850℃で10分間ベーキングし、印刷を完成する。
【0045】
次に、転写パッド3にインクを付着させる方法を説明する。
【0046】
図5に示すように、金属、ガラス、樹脂等で構成され、印刷パターンに対応したパターンの凹部61がエッチング等で形成された凹板60を用いる。この凹板60の凹部61にインク7を載せ、その後、例えば、ドクターで掻き取って、凹部61をインク7で充填するとともに、インク7表面を平らにする。次に、印刷器具1を、例えば、矢印Aの方向に凹板60上を転動させ、凹部61内のインク7を転写パッド3の外面に付着させる。これにより、所望パターンのインク7が転写パッド3の外面に付着する。
【0047】
なお、本例の場合、各凹部61のインク7が転写パッド3の外面の全周に渡って付着するワークWの軸に対称な印刷パターンを示しているが、本実施の形態の印刷器具1では、転写パッド3の外面に付着させたインクパターンがほぼそのままの形でワークWの内面に転写されるので、印刷パターンは、ワークWの軸に非対称なものでも可能であり、目的の印刷パターンに応じて凹部61のパターン形状を種々に変更することが可能である。即ち、本発明では、既述したようなゴムローラーを円管内面に転動させる転写法と比較して、かなり複雑なパターンでも正確に印刷が可能である。また、上述のような凹板60の代わりに、例えば、シリコン層と非シリコン層のインクの反発性の違いを利用した水無平板を用い、上述した凹板60を用いた方法とほぼ同様にして、転写パッド3の外面にインクを所定パターンで付着させることもできる。
【0048】
図6に、本実施の形態の印刷器具1を装備した印刷装置の例を示す。
【0049】
図示の如く、印刷装置は、ワークWを保持するVブロック50、このVブロック50を図中X−X′方向に移動させる機構(不図示)、印刷器具1、この印刷器具1を回転駆動する機構(不図示)、印刷器具1に圧縮空気を送る機構(不図示)、凹板60、この凹板60を図中Y−Y′方向に移動させる機構(不図示)、凹板60を図中Z−Z′方向に移動させる機構(不図示)、及び、凹板60の表面を掻き取るドクター62を備えている。
【0050】
例えば、スタート時は、凹板60が図示の位置よりも下方に在り、印刷器具1から離間している。そこで、まず、内面を印刷する円管型のワークWをVブロック50のV字溝51に固定する。これにより、ワークWの管軸と印刷器具1の中心軸とが同軸に配置されるようになっている。次に、不図示のローラー等によるインク供給装置により凹板60の凹部61にインクを充填し、更に、余分のインクをドクター62で掻き取る。しかる後、凹板60を上昇(図中Z′方向)させて、凹板60の上面と印刷器具1の転写パッド3とが互いに接触するようにする。次に、凹板60を図中Y′方向に移動させながら、印刷器具1を、凹板60の移動に同期させて回転させる。これにより、凹板60上のインクパターンが印刷器具1の転写パッド3外面に転写され、その外面に所定のパターンでインクが付着する。その後、凹板60を下降(図中Z方向)させ、印刷器具1から離間させる。次に、Vブロック50を図中X′方向に移動させ、相対的に印刷器具1をワークWの円孔内に挿入する。しかる後、図示省略したコンプレッサー等から圧縮空気5を印刷器具1に供給し、転写パッド3を膨張させる。これにより、転写パッド3の外面がワークWの内面に圧着し、その転写パッド3の外面に付着していたインクがワークWの内面に転写される。この後、例えば、図示省略したバルブを切り換える等により圧縮空気5の供給を止める。これにより、転写パッド3が収縮して元に戻り、転写パッド3の外面がワークWの内面から離間する。次に、Vブロック50を図中X方向に移動させて、相対的に印刷器具1をワークWから抜き出す。これにより、転写工程が完了する。この印刷装置において、例えば、転写が済んだワークWの取り外し、及び、新しいワークWの取り付け等を自動化することにより、高効率で転写印刷を行うことができる。
【0051】
以上に説明した本発明の第1の実施の形態によれば、簡単な操作でしかも1回の転写操作で非常に迅速に被印刷体(ワーク)Wの内面に転写印刷を行うことができる。また、印刷器具1はかなり細く構成することができるため、例えば、陰極線管の主レンズ系を構成するかなり小径の高抵抗管110の内面に導電パターンを印刷する場合にも好適に用い得る。更に、転写印刷であるため、ディスペンサーやインクジェット方式等の直接描画方式の場合のようにインク噴き出し孔にインクが詰まるという問題を生じない。
【0052】
なお、印刷膜厚を厚くしたい場合には、上述した1回の転写操作を繰り返すことにより、厚い膜厚の印刷も可能である。
【0053】
また、この第1の実施の形態では、転写パッド3の膜厚を両端部から中央部に向かって次第に薄くなるように構成して、転写パッド3が膨張する時に、その転写パッド3の外面が中央部から両端部に向かって順次被印刷体(ワーク)Wの内面に密着するようにしている。従って、転写パッド3の外面と被印刷体(ワーク)Wの内面との間の空気を効率良く排出することができ、それらの間に気泡が残留することを確実に防止することができる。この結果、パターン欠け等の印刷不良が無いきれいで確実な印刷を行うことができる。また、転写パッド3を膨張させるための圧縮空気の圧力を比較的低く設定することができ、その結果、転写パッド3に加わるストレスを軽減することができて、転写パッド3の寿命を長くすることができる。更に、転写パッド3を保持する棒状保持部材2の外周面23を、転写パッド3の膜厚の変化を相殺する形状に構成して、転写パッド3が収縮した状態の時にその転写パッド3の外面が1つの円筒面を構成するようにしているので、例えば、高抵抗管110等の被印刷体(ワーク)Wの円筒内面への転写精度を極めて高くすることができる。
【0054】
ちなみに、この本発明の第1の実施の形態による印刷器具1を用いて陰極線管用の高抵抗管110を製造した場合と、従来のディスペンサー方式で製造した場合を比較すると、スループットは、本発明の場合が1分/サイクル、従来の場合が7分/サイクルであった。また、製品歩留りは、本発明の場合が98%、従来の場合が80%であった。従って、本発明により、高効率で且つ正確な印刷の行われることが分かる。
【0055】
なお、上述した第1の実施の形態において、転写パッド3の有効印刷領域に比してワークWの長さが短い場合、そのワークWの両端部にワークWの内径とほぼ同じ内径の補助リングを配置しても良い。これにより、転写パッド3が膨張した時に、短いワークWと締結バンド4との間の領域で転写パッド3の膨張が進んで転写パッド3が破裂することを確実に防止することができる。但し、この第1の実施の形態では、転写パッド3の両端部の膜厚を相対的に大きくしているので、その両端部近傍部分は比較的膨張し難く、従って、転写パッド3の有効印刷領域とワークWの長さとの差がそれ程大きくない場合には、上述のような補助リングを用いなくても、転写パッド3の破裂は起こり難いという効果が有る。
【0056】
次に、図8を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、この第2の実施の形態において、上述した第1の実施形態と対応する部位には上述した第1の実施の形態と同一の符号を付す。
【0057】
図8に示すように、この第2の実施の形態では、転写パッド3の膜厚がその一端部から他端部に向かって連続的に変化するように構成されている。また、棒状保持部材2の外周面23は、その転写パッド3の膜厚の変化に対応した円錐面に構成されている。そして、これにより、転写パッド3の膜厚の変化が相殺され、転写パッド3の収縮時、その外面が1つの円筒面をなすように構成されている。更に、棒状保持部材2の外周面23には、転写パッド3の膜厚が薄い側の端部近傍の周囲4ヶ所に空気吹き出し孔22が設けられている。これ以外の構成は、上述した第1の実施の形態と同一であり、従って、その詳細な説明は省略する。
【0058】
次に、この第2の実施の形態による印刷器具1の動作を説明する。
【0059】
まず、図8(a)に示すように、転写パッド3の外面に所定パターンのインクを付着させた印刷器具1をワークWの円孔内に配置する。しかる後、図8(b)に示すように、棒状保持部材2の空気導通路21から圧縮空気5を送り、これを空気吹き出し孔22から吹き出させて、転写パッド3を膨張させる。この時、この第2の実施の形態では、空気吹き出し孔22が設けられた側の端部において転写パッド3の膜厚が相対的に薄く構成されているので、図示の如く、転写パッド3は、その膜厚が薄い側の端部から膨張を開始する。そして、図8(c)に示すように、転写パッド3は、その膜厚が薄い側の端部から膜厚が厚い側の端部に向かって順次膨張してワークWの内面に密着する。従って、転写パッド3の外面とワークWの内面との間の空気は、この膨張する転写パッド3に押し出されて確実に排出され、転写パッド3の外面とワークWの内面との間に気泡が残留することが確実に防止される。その結果、図8(d)に示すように、転写パッド3の外面はその全面に渡って確実にワークWの内面に密着し、ワークWの内面への確実な転写が行われる。
【0060】
従って、この第2の実施の形態でも、上述した第1の実施の形態と同様、パターン欠け等の印刷不良が無いきれいで確実な印刷を行うことができるという効果が得られる。また、転写パッド3を膨張させるための圧縮空気の圧力を比較的低く設定することができ、その結果、転写パッド3に加わるストレスを軽減することができて、転写パッド3の寿命を長くすることができるという効果も得られる。更に、転写パッド3を保持する棒状保持部材2の外周面23を、転写パッド3の膜厚の変化を相殺する形状に構成して、転写パッド3が収縮した状態の時にその転写パッド3の外面が1つの円筒面を構成するようにしているので、例えば、陰極線管用の高抵抗管等の被印刷体(ワーク)Wの円筒内面への転写精度を極めて高くすることができるという効果も得られる。
【0061】
なお、この第2の実施の形態において、転写パッド3の膜厚の変化量(=最大膜厚tmax /最小膜厚tmin )は、上述した第1の実施の形態と同様、133.3%以上200%以下とするのが好ましい。転写パッド3の膜厚の変化量が133.3%よりも少ないと、転写パッド3の外面とワークWの内面との間に気泡の残留する場合が有り得る。また、膜厚の変化量が200%を超えると、転写パッド3の機械的強度が弱くなって、転写パッド3が破損し易くなる虞が有る。
【0062】
また、この第2の実施の形態において、空気吹き出し孔22を設ける位置は、図示の例のように、転写パッド3の膜厚が薄い側の端部近傍であるのが、上述した転写パッド3の動作を確実に行わせる上で好ましいが、例えば、転写パッド3の膨張を比較的低圧で行わせるような場合等には、膜厚の変化の影響が強く現れるので、空気吹き出し孔22を転写パッド3の中央部近傍や、更には、反対側の膜厚の厚い側の端部近傍に設けることも可能である。更に、空気吹き出し孔22は、棒状保持部材2の長手方向(軸方向)の複数ヶ所の周りに設けても良い。
【0063】
図9に、本発明の第3の実施の形態を示す。この第3の実施の形態において、上述した第1の実施形態と対応する部位には上述した第1の実施の形態と同一の符号を付す。
【0064】
この第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同様の構成において、空気吹き出し孔22が、棒状保持部材2の長手方向(軸方向)の複数ヶ所(図示の例では5ヶ所)の周りに設けられている。これ以外の構成は、上述した第1の実施の形態と同じである。
【0065】
この第3の実施の形態の構成でも、転写パッド3は、その膜厚の薄い中央部から膜厚の厚い両端部に向かって順次膨張して行き、その中央部から両端部に向かって順次ワークWの内面に密着する。従って、上述した第1の実施の形態の場合と同様、転写パッド3の外面とワークWの内面との間の空気が、この膨張する転写パッド3に押し出されて確実に排出され、転写パッド3の外面とワークWの内面との間に気泡が残留することが確実に防止される。その結果、上述した第1の実施の形態と同様、パターン欠け等の印刷不良が無いきれいで確実な印刷を行うことができるという効果が得られる。
【0066】
また、この第3の実施の形態においては、転写パッド3の中央部から両端部に向かって空気吹き出し孔22の径を順次小さく又は大きくすること等により、転写パッド3の膨張の仕方を微調整することが可能である。
【0067】
図10に、本発明の第4の実施の形態による棒状保持部材2の構成を示す。この棒状保持部材2以外の構成は、上述した第1の実施の形態と同じである。
【0068】
この第4の実施の形態では、棒状保持部材2の外周面23に、空気吹き出し孔22と連続する溝27を設けている。これにより、図9に示す第3の実施の形態と同様、空気吹き出し孔22から吹き出した圧縮空気が転写パッド3の内面にほぼ均等に供給される。従って、上述した第3の実施の形態とほぼ同じ効果が得られる。しかも、この第4の実施の形態では、上述した第3の実施の形態と比較して、棒状保持部材2の加工が簡単である。更に、この第4の実施の形態では、上述した第3の実施の形態の場合よりも転写パッド3の中央部において強く圧縮空気が吹き出すので、転写パッド3がその中央部から順次膨張する仕方をより制御し易い。また、この第4の実施の形態でも、溝27の形状を、例えば、中央部から両端部に向けて順次幅を狭く又は広くしたり、深さを浅く又は深くしたりすること等により、転写パッド3の膨張の仕方を微調整することが可能である。
【0069】
図11に、本発明の第5の実施の形態を示す。この第5の実施の形態において、上述した第1の実施形態と対応する部位には上述した第1の実施の形態と同一の符号を付す。
【0070】
この第5の実施の形態では、転写パッド3の膜厚を連続的にではなく断続的に変化させている。即ち、転写パッド3の膜厚を、図示の如く、中央部と両端部との間で一様に連続的に変化させるのではなく、中央部と両端部との間の所定ヶ所で比較的急激に変化させている。そして、棒状保持部材2の外周面23は、この転写パッド3の膜厚の変化に対応してその変化を相殺する形状に構成されている。これ以外の構成は、上述した第1の実施の形態と同じである。
【0071】
この第5の実施の形態のように構成しても、転写パッド3は、その膜厚の薄い中央部から膜厚の厚い両端部に向かって順次膨張して行き、その中央部から両端部に向かって順次ワークWの内面に密着する。従って、上述した第1の実施の形態の場合と同様、転写パッド3の外面とワークWの内面との間の空気が、この膨張する転写パッド3に押し出されて確実に排出され、転写パッド3の外面とワークWの内面との間に気泡が残留することが確実に防止される。その結果、上述した第1の実施の形態と同様、パターン欠け等の印刷不良が無いきれいで確実な印刷を行うことができるという効果が得られる。
【0072】
この第5の実施の形態では、転写パッド3の膜厚を変化させる位置を変えることにより、転写パッド3の膨張の仕方を調整することが可能である。また、転写パッド3の膜厚を断続的に変化させる箇所と連続的に変化させる箇所を組み合わせて用いることも可能である。
【0073】
図12に、本発明の第6の実施の形態による転写パッド3の構成を示す。この第6の実施の形態では、上述した第5の実施の形態と同様の構成において、転写パッド3の膜厚の変化位置を複数ヶ所に設け、転写パッド3の膜厚を段階的に変化させている。なお、図示は省略したが、この転写パッド3を保持する棒状保持部材2の外周面23は、この転写パッド3の膜厚の変化に対応してその変化を相殺する形状に構成されている。これ以外の構成は、上述した第1の実施の形態と同じである。
【0074】
この第6の実施の形態では、上述した第5の実施の形態と比較して、より第1の実施の形態の場合に近い、転写パッド3の膨張の仕方を得ることができる。従って、上述した第1の実施の形態とほぼ同じ効果を得ることができる。しかも、この第6の実施の形態では、転写パッド3の膜厚を変化させる位置を種々に変えることにより、転写パッド3の膨張の仕方を微調整することが可能である。また、転写パッド3の膜厚を断続的に変化させる箇所と連続的に変化させる箇所を組み合わせて用いることも可能である。
【0075】
なお、この第6の実施の形態において、転写パッド3の膜厚を、上述した第2の実施の形態と対応するように、転写パッド3の一端部から他端部に向かって段階的に薄くなるようにしても良い。その場合には、上述した第2の実施の形態とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0076】
以上、本発明を好ましい実施の形態に従い説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施の形態では、転写パッド3を膨張させるために圧縮空気を用いたが、転写パッド3を膨張させるための加圧流体としては、空気以外のガスや油等の液体を用いることもできる。
【0077】
また、内面に印刷を施す被印刷体(ワーク)としては、上述の実施の形態で例示した陰極線管の電子レンズ系を構成する高抵抗管に限られず、例えば、VTR等のロータリートランスコイルやモーターのステーター若しくはローターのコイル等、種々の円筒部品の内面印刷に本発明は適用が可能である。
【0078】
また、本発明は、導電性のパターンを印刷する場合に限らず、絶縁性のパターンを印刷する場合にも適用が可能である。更に、本発明では、導電性のパターンと絶縁性のパターンを同時に印刷することも可能である。
【0079】
また、本発明は、円筒部品に限らず、被印刷体の円形の孔若しくは穴の内面を印刷する場合に適用が可能である。更に、被印刷体の孔若しくは穴の形状は真円でなくとも円に近ければ、それに対応した断面形状の本発明の印刷器具を用いることにより、簡便で精確な印刷が可能である。更に、本発明は、孔若しくは穴の内面に限らず、例えば、溝の内面のような曲面状の被印刷面に印刷を施す場合にも適用が可能である。
【0080】
【発明の効果】
本発明では、保持部材の外周面に設けた転写パッドを被印刷面に向けて膨張させ、その膨張した転写パッドを被印刷面に接触させて、その転写パッドの外面に予め付着させたインクを被印刷面に転写させるに際し、加圧流体の吹き出し孔の位置において転写パッドの膜厚を相対的に小さくして、転写パッドがその箇所から順次連続的に被印刷面に接触するようにしている。従って、転写パッドの外面と被印刷面との間の空気を効率良く排出することができ、それらの間に気泡の残留することが確実に防止される。この結果、パターン欠け等の印刷不良が無いきれいで確実な印刷を行うことができる。また、転写パッドを膨張させるための圧力を比較的低く設定することができ、その結果、転写パッドに加わるストレスを軽減することができて、転写パッドの寿命を長くすることができる。
【0081】
また、転写パッドを保持する保持部材の外周面を、転写パッドの膜厚の変化に対応してその変化を相殺する形状に構成し、転写パッドが収縮した状態の時にその転写パッドの外面が、例えば、1つの円筒面をなすように構成すれば、例えば、被印刷体の円筒内面への転写精度を極めて高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による印刷器具の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による印刷器具の外観斜視図である。
【図3】本発明の印刷器具により印刷されるワークとしての陰極線管用の高抵抗管を示す概略断面図である。
【図4】図3に示した高抵抗管の拡大断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態による印刷器具へのインクの供給方法を示す概略図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態による印刷器具を備えた印刷装置による印刷方法を示す概略図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態による印刷器具の転写パッドの製造方法を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による印刷器具の断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態による印刷器具の断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態による印刷器具の棒状保持部材の一部破断斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態による印刷器具の断面図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態による印刷器具の転写パッドの断面図である。
【符号の説明】
1…印刷器具、2…棒状保持部材、3…転写パッド、4…締結バンド、
5…圧縮空気、7…インク、21…空気導通路、22…空気吹き出し孔、
23…外周面、24…延長部分、25…ロータリーエアジョイント、
26…ベアリング部、50…Vブロック、51…V字溝、60…凹板、
61…凹部、62…ドクター、100…陰極線管、110…高抵抗管、
111〜113…電極膜、114…導電リング、W…ワーク
Claims (16)
- 加圧流体の吹き出し孔を外周面に有する保持部材と、
前記保持部材の前記外周面を離間可能に被覆し、前記加圧流体の加圧により膨張し、前記加圧を解除した時に収縮して元の状態に復帰する転写パッドとを備え、前記吹き出し孔の位置において前記転写パッドの膜厚が相対的に小さいことを特徴とする印刷器具。 - 前記保持部材が棒状であって、前記転写パッドの膜厚が前記保持部材の長手方向において変化している、請求項1に記載の印刷器具。
- 前記転写パッドの中央部の膜厚が両端部の膜厚よりも小さい、請求項1に記載の印刷器具。
- 前記転写パッドの一端部から他端部に向かって膜厚が小さくなる、請求項1に記載の印刷器具。
- 前記転写パッドの膜厚が連続的に変化している、請求項1に記載の印刷器具。
- 前記転写パッドの膜厚が段階的に変化している、請求項1に記載の印刷器具。
- 前記吹き出し孔が、前記保持部材の長手方向の1ヶ所の周りに設けられている、請求項1に記載の印刷器具。
- 前記吹き出し孔が、前記保持部材の長手方向の複数ヶ所の周りに設けられている、請求項1に記載の印刷器具。
- 前記保持部材の前記外周面が、前記転写パッドの膜厚の変化に対応する形状に構成されている、請求項1に記載の印刷器具。
- 前記転写パッドの外周面が実質的に同一円筒面内に存在する、請求項9に記載の印刷器具。
- 加圧流体の吹き出し孔を外周面に有する保持部材と、その保持部材の前記外周面を離間可能に被覆し、前記吹き出し孔の位置において膜厚が相対的に小さい転写パッドとを備えた印刷器具を被印刷面に対向させ、前記加圧流体の加圧により前記転写パッドを膨張させて前記被印刷面に接触させ、前記転写パッドの外周面に予め付着させたインクを前記被印刷面に転写する印刷方法。
- 前記被印刷面が曲面である、請求項11に記載の印刷方法。
- 前記保持部材が棒状であり、前記被印刷面が、被印刷体に設けられた穴の内面である、請求項12に記載の印刷方法。
- 前記転写パッドが、その中央部から両端部に順次連続的に前記穴の前記内面に接触する、請求項13に記載の印刷方法。
- 前記転写パッドが、その一端部から他端部に順次連続的に前記穴の前記内面に接触する、請求項13に記載の印刷方法。
- 円筒部品又は円筒部分の内周面に導電パターンを形成する際に適用する、請求項11に記載の印刷方法。
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