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JP3650085B2 - 燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法 - Google Patents
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JP3650085B2 - 燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燻煙成分を例えば水溶液に溶解し、切り身魚から中型魚であるブリ、かんぱち、更に大型魚種であるマグロ等の高品質、高鮮度の燻製冷凍品を実現できる魚類加工(並びに保存方法)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、マグロの肉質は、ブリ,その他の白身魚と違い、全身赤身魚(全筋肉中にミオグロビ蛋白色素が分散し、外観上全身赤身質である。)であり、赤い肉色のマグロはマイナス20℃程度の通常の冷凍保存状態に保管すると、メト化は時間経過と共に全身の肉質に及び、解凍後はほとんど褐色又は黒色に変わってしまう。栄養価や衛生面では食しても全く問題ないが、目で食べる食材である刺身材料としては不適となる。そのため陸揚げされたマグロの大半は、缶詰用として用いられてきた。
【0003】
1961年大洋漁業(現マルハ)から冷凍保管中のメト化の防止法としての特許(超低温保存法)が出された。当時業界の常識とされていた最低冷凍温度マイナス24℃付近で黒褐色にかわるものを更に温度を下げていきマイナス65℃以下まで下げると鮮赤色を長期に渡り保てることがわかったのである。これで冷凍のマグロを刺身で食べるための技術の基礎が確立された。しかし、マグロ肉の色調は極めてデリケートで変化が激しく、フィレー(ロイン)の加工形態としては、たとえマイナス60℃でも、これらの変化を長期間止めることは不可能であり、その為現在冷凍で保存されるマグロはほぼ全て、自然の保護膜である表皮に覆われたラウンド(丸物)の取り扱いである。
【0004】
そのため業界では、全体重量の三分の二に当る不可食部分の除去による輸送コストの削減が切望されていたが、前述の事情により実現できなかった。
【0005】
高価なマグロと日本人の刺身の色調へのこだわりから生まれた冷凍食品ではあるが、これほどの低温で食品を扱うためには、冷凍から冷凍保管期間を含め膨大な石油エネルギーを消費できることが前提であり、国内では、マグロのために超低温流通体制が、近年作られ、国内刺身マグロの多くはこのシステム化した流通体制で行なわれている。近年の環境保護、省エネルギーが叫ばれる中、学会や業界から、省エネルギーの観点から逆行しているとの意見も多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
古来よりの保存技術の一つである燻煙による燻製品は燻煙(気体)の状態での魚肉との接触吸着によってその効果を生じせしめるが、近年になり燻煙発生時に生成される木酢液を原料とした蒸留くん液が燻製品製造に利用されるようになった(便宜上、このような従来の着香を主目的とした蒸留液をくん液と記載し、本発明の燻煙成分を溶解した溶液を燻液とする。)。
【0007】
しかし一般的な評価として、燻煙処理の方がくん液処理と比べ評価が高く商品として好まれる。これは燻煙とくん液の成分が違う事に起因する。製造面から見た場合は、くん液処理が産業的に多く取り入れられている原因は、その取り扱いが容易であり、量産化に向く点である。
【0008】
燻煙の効果は、出願人による特開平8−294357号に述べたとおり多様の効果が期待できるのに対し、くん液の効果は主に着香の効果である。この原因としては燻煙成分には、固体、液体、気体などの成分が含まれるが、くん液(時に蒸留くん液)については、その大半は液体成分であり、特に燻煙の気体成分をほとんど有していないことに由来する。
【0009】
本来燻製の目的である保存性が発揮される場合はこの燻煙処理によりもたらされるものであり、くん液の主な使用目的は着香であり保存性にはあまり効果はない。
【0010】
即ち、燻煙処理品がくん液処理品より、保存性や商品価値として秀れているが、くん液はその使用上の貯蔵性、均一性,作業性,利便性に秀れているために、取り入れられているのが現状である。
【0011】
そこで、燻煙成分(気体,液体)をそのまま液体状態にできれば、液体(燻液)で燻煙処理に近い製品の製造が可能となり、難しい燻煙処理を行なわずに例えば簡単な漬込作業だけで燻煙処理に近い製品ができることとなる。
【0012】
本発明は、例えば出願人が開発した燻煙発生装置(特開平8−298925号)により発生させた燻煙を洗気筒などにより燻製品製造に不必要なすすやタール成分を除去した後、空気を絶ったあるいは空気が混入しない状態で、ミキサーまたは、接触筒により加圧状態で酸化防止剤、pH調整剤、調味料など必要添加物を溶解した水溶液あるいは溶解しない水溶液に燻煙成分を溶解し燻液とし、魚肉を浸すか、フィルターを通し固形物を除去した後、例えば出願人による特開平8−294357号の灌流液として用いることにより、燻煙成分や食品添加物を肉中に拡散させ燻製品を製造する魚類加工法を提供するものである。
【0013】
この技術により漬込み作業だけで、あるいは従来の出願人の灌流処理に燻煙処理を同時に行なうことが可能となり、その結果、マグロをラウンドのままか、あるいは可食部分のみを、マイナス60℃以下とせずともマイナス18℃の冷凍輸送で世界中の産地から日本に輸送することが可能となり、このような加工を施せばその冷凍、保存に必要な消費エネルギーはおよそ1/80まで減ずることが可能となり極めて大きな省エネルギーが期待できる。
【0014】
【課題を解決するための手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0015】
燻材を投入する投入部2と燻煙排出路7とから空気が流入しない構造の燻煙発生装置より発生させた燻煙を、空気を絶ったあるいは空気が流入しない状態ですすやタール成分などの不要物を除去し、水又は水溶液若しくは酸化防止剤,pH調整剤,調味料などの必要添加物を溶解した水溶液と常圧若しくは加圧状態により接触又はミキサーにより攪拌接触させて燻煙成分を溶解させて燻液を作成し、この燻液を魚類に付与して燻製品を製造することを特徴とする燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法に係るものである。
【0016】
また、前記燻液にスキンレス切身フィレーを浸して、燻液を付与したことを特徴とする請求項1記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法に係るものである。
【0017】
また、前記燻液を、灌流液として用い血管を介して肉中に拡散させて、燻液を付与したことを特徴とする請求項1記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法に係るものである。
【0018】
また、前記燻液をフィルターに通して微細固形物を除去した後、これを灌流液として用い、血管を介して肉中に拡散させて、燻液を付与したことを特徴とする請求項3記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法に係るものである。
【0019】
また、前記燻液を灌流液として用いて、マグロ,カジキなどのラウンド状態の大型魚肉中に燻煙成分を拡散させ燻製品を製造することを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法に係るものである。
【0020】
また、魚類の血管を介して血液を凝固させない成分を含む血液を流出させるための第一灌流液を圧入して血液を流出させた後、その後注入する灌流液として前記燻液を血管を介して肉中に拡散させて、燻煙成分を肉中に付与して燻製品を製造することを特徴とする請求項3〜のいずれか1項に記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法に係るものである。
【0021】
また、魚類の血管を介して血液を凝固させない成分を含む血液を流出させるための第一灌流液を圧入して血液を流出させた後、第二灌流液として、酸化防止や味覚改善などの目的に応じた成分を含めた前記燻液を血管を介して肉中に拡散させて燻煙成分を肉中に付与し燻製品を製造することを特徴とする請求項記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法に係るものである。
【0022】
また、前記燻液を付与した燻製品を凍結させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法に係るものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
好適と考える本発明の実施の形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいてその作用効果を示して簡単に説明する。
【0024】
本発明は、燻材を投入する投入部2と燻煙排出路7とから空気が流入しない構造の燻煙発生装置より発生させた燻煙を、空気を絶ったあるいは空気が流入しない状態ですすやタール成分などの不要物を除去し、水又は水溶液若しくは酸化防止剤,pH調整剤,調味料などの必要添加物を溶解した水溶液と常圧若しくは加圧状態により接触又はミキサーにより攪拌接触させて燻煙成分を溶解させて燻液を作成し、前記燻液にスキンレス切身フィレーを浸して、燻液を付与したり、前記燻液を、灌流液として用い血管を介して肉中に拡散させて、燻液を付与することで、燻製品を製造する。
【0025】
即ち、言わば燻煙(燻煙成分)を液体化することで、この液体(燻液)で燻煙処理に近い製品の製造を行ない、気体との接触による従来の難しい燻煙処理を行なわずに例えば簡単な漬込作業だけで燻煙処理に近い製品ができることとなる。しかも着香だけでなく、この燻液には液体・気体の燻煙成分が含まれているため、保存性など燻煙処理と同様の効果が発揮され、従来取り扱いが容易でなく、量産性に難点のあった燻煙処理を取り扱いが容易で量産性に秀れる燻液により行うことができることとなる。即ち、前述のように燻液により燻煙成分を与えて燻製品とするため、単に燻液に浸すだけで良く、また、例えば出願人による特開平8−294357号のように灌流液として使用して簡単に肉中に拡散できることとなる。
【0026】
例えば、魚類の血管を介して血液を凝固させない成分を含む血液を流出させるための第一灌流液を圧入して血液を流出させた後、第二灌流液として、前記燻液あるいは酸化防止や味覚改善などの目的に応じた成分を含めた前記燻液を血管を介して肉中に拡散させて燻煙成分を肉中に付与し燻製品を製造することも可能で、燻煙成分と共に食品添加物も肉中に簡単に効率良く十分に広く一様に拡散でき、灌流処理と燻煙処理とを同時に行え、極めて実用性に秀れている。
【0027】
また、これらの加工は、ラウンド状態でもフィレー(さく)の状態でも行える。
【0028】
また、これらの加工の後冷凍すれば、前記燻煙処理の効果によりマイナス60℃もの超冷凍としなくてもメト化は防止され、輸送コストを格段に下げることができ、また前述のようにラウンドでの輸送は強いられないから、輸送コストも一層下げられ、省エネにも秀れる。
【0029】
【実施例】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0030】
本実施例では、燻煙発生装置(特開平8−298925号)により発生させた燻煙を空気を絶った、あるいは空気が混入しない状態で洗気筒などにより燻製品製造に不必要なすすやタール成分を除去した後、酸化防止剤,pH調整剤,調味料など必要添加物を溶解した、あるいは溶解しない水溶液にミキサー又は常圧、あるいは加圧状態で接触筒により燻煙成分を溶解し燻液を生成する。この燻液を、第一実施例では、フィルターを通し微細固形物を除去した後、特開平8−294357号の灌流液として用いることにより、燻煙成分や食品添加物を肉中に拡散させ燻製品を製造する、即ち、燻液をフィルターを通し微細固形物を除去した後、灌流液として用いることにより、マグロ(黒マグロ,南インドマグロ,黄肌マグロ,目鉢マグロ)、カジキなどの大型魚のラウンド状態で燻煙成分や食品添加物を肉中に拡散させ燻製品を製造する。
【0031】
また、第二実施例では、燻液にスキンレス切身フィレーを浸し、燻製品を製造する、以下夫々の実施例について更に詳述する。
【0032】
1.灌流用装置(第一実施例)
(1) 全体の構成(図1)
清浄水に水溶性酸化防止剤、pH調整剤を溶解したタンクの吐き出し口と高圧ポ ンプの吸水口とを逆止弁を介して接続し、高圧ポンプの吐き出し口と接触筒の上部 とを接続し、このポンプによりタンク内の水管液は接触筒の上部から注入されるよ うに構成する。
【0033】
接触筒は、内部に接触材が封入してありポンプにより注入された水溶液はこの接 触材を伝って、接触筒の下部に集まる。
【0034】
一方、燻煙発生装置で生成された燻煙は、簡易フィルターを通し、すすやタール 分を取り除いた後、コンプレッサーにより接触筒の下部より圧入される。
【0035】
この接触筒内では、下部の水面が変動しないように水位調整用に液面調整圧力バ ルブが取り付けられている。更に、接触筒の上部には注入した燻煙の放出用の圧力 バルブが取り付けられ燻煙は作動時は注入と放出が常に行なわれ、燻煙の接触筒内 の燻煙組成濃度が一定になるようにしてある。
【0036】
これら接触筒内の圧力は水圧と気圧のバランスを任意に調整できるものである。
【0037】
接触筒からは、圧力調整用のバルブが取り付けられ接触筒内の圧力を調整すると ともに接触筒より水溶液は、フィルターハウジングに導かれ中に0.3μmの孔径 のフィルターを通し毛細血管の梗塞原因物質及び微生物の混入を防止する。
【0038】
以上を経た水溶液(燻液)は注入用のカテーテルに導かれ、活魚の動脈球に挿入さ れ、灌流処理を行なう。
【0039】
(2) 使用例
仮死状態の活魚を開腹し、心臓を露出後、わずかに灌流溶液が流れ出る状態のカ テーテルを心室より動脈球に挿入し、位置をクリップや鉗子で固定後静脈洞を切開 し、魚体重に適応した液量をバルブ調整によって行ない所定の時間で完了する。
【0040】
また、同構造の機器を特開平10−179016号(灌流装置)に組み込んで使用 することもできる。
【0041】
また、魚類の血管を介して血液を凝固させない成分を含む血液を流出させるため の第一灌流液を圧入して血液を流出させた後、その後注入する灌流液として前記燻 液を血管を介して肉中に拡散させても良い。
【0042】
また、この際、燻液内に前述のように予め酸化防止剤,pH調整剤,調味料など の必要添加物を溶解しておいても良いし、魚類の血管を介して血液を凝固させない 成分を含む血液を流出させるための第一灌流液を圧入して血液を流出させた後、第 二灌流液として酸化防止や味覚改善などの目的に応じた成分を含めた前記燻液を血 管を介して肉中に拡散させても良い。
【0043】
2.漬込用装置(第二実施例)
(1) 全体構成(図2)
清浄水に水溶性酸化防止剤、pH調整剤を溶解した漬込用タンクの吐き出し口か ら粗フィルター(孔径200μm程度)により粗塵を除去した後に精密ろ過用フィル ター(孔径0.3μm程度)を通過させ微生物除去を行なった後、高圧ポンプの吸水 口に逆止弁を介して接続し、吐き出し口は接触筒の上部に接続し、このポンプによ りタンク内の水管液は接触筒の上部から注入されるように構成する。
【0044】
接触筒は内部に接触材が封入してあり、ポンプにより注入された水溶液はこの接 触材を伝って、接触筒の下部に集まる。
【0045】
一方、燻煙発生装置で生成された燻煙は、簡易フィルターを通し、すすやタール 分を取り除いた後、コンプレッサーにより接触筒の下部より圧入される。
【0046】
この接触筒内では、下部の水面が変動しないように水位調整用に液面調整圧力バ ルブが取り付けられている。更に、接触筒の上部には注入した燻煙の放出用の圧力 バルブが取り付けられ燻煙は作動時は注入と放出が常に行なわれ、燻煙の接触筒内 の燻煙組成濃度が一定になるようにしてある。
【0047】
これら接触筒内の圧力は水圧と気圧のバランスを任意に調整できるものである。
【0048】
接触筒からは、圧力調整用のバルブが取り付けられ接触筒内の圧力を調整した後 、水溶液は、漬込用タンクに戻る。
【0049】
(2) 使用例
ポンプで燻煙溶解液(燻液)を循環させている漬込タンクにフィレー加工された 類を漬け込み所定時間で燻煙処理を終了する。
【0050】
3.製品への効果
本発明による処理方法は、従前の特開平10−179016号のぶり,かんぱちの みならず、マグロなどの大型魚にも更にフィレー加工された皮むき魚肉など、種類を 問わず応用が可能であり、その効果は下記の通りであった。
【0051】
(1) 試験ぶり(はまち)
試験区(燻煙溶解灌流処理)と対照区(無処理)との官能試験
冷蔵庫内の保存試験結果
経過
0日目
処理後解体ロインの肉質では、対照区と比較しやや試験区の赤身が明る い色調となる。
1日経過後
対照区は1日以内で退色が始まり、柔らかい味を感ずる(賞味限界)。
試験区の色調は変化無し、柔らか味をやや感ずる。
味覚、臭気は両区とも無し。
2日経過後
対照区は丸2日目で完全に褐色化、果実臭が強く感じられ、食すると柔 らか味と独特の粘りが口内に残る(賞味不能)。
試験区は色調、味覚は正常であるが、食感(硬さ)が低下(賞味可能)。
3日経過後
対照区の外観は前日同様であるが果実臭がより強くなる。
試験区は色調、味覚は前日と比べ低下柔らか味が更に増すが臭気は無し (賞味限界)。
【0052】
結果
試験区は対照区と比較して色調、硬さ、味覚ともに変化は遅延され賞味期限 の限界で1日は刺身商材として延長が可能である。以降商品価値が低下するが 、表面乾燥が促進され生ずる色調の変化が主体であり、対照区が1日でメト化 が促進されるのに対し、試験区は3日目でもメト化は生じていない。ブリ(は まち)独特の異味異臭の出現も大幅に遅れ、一連の加工処理効果が確認できた

【0053】
(2) 試験ぶり
上記0日目の対照区を急速凍結とし、従来品(特開平10−179016号によ る)との比較
【0054】
【表1】
Figure 0003650085
【0055】
結果
試験区、対照区ともに最良期間は解凍後丸1日であった。しかし、その変化 は穏やかで賞味期間はおよそ3日間に及ぶものと思われる。
従来燻煙処理法の色調と試験区の色調が異なるが、その原因は不明である。
【0056】
(3) 試験及び試験の結果ぶり
色調の変化は鮮魚の試験区が最も良好であり続いて冷凍品の試験区及び対照区と なっている。冷凍品は鮮魚と比べ凍結障害により水分の放出に差を生じていること が考えられる。
【0057】
しかし、色調におけるメト化率ではその差は歴然であり、燻製品は全て3日目で 20%前後であるのに対し鮮魚の対照区は80%以上とメト化(褐変化)が進み燻煙 の効果が顕著である。
【0058】
食味は鮮魚において主体成分はイノシン酸であることから、3日目で急激に低下 が進んでいる。また冷凍品においては解凍後1日半以降味覚の低下を起こしている 。この変化は、イノシン酸の生成、分解と燻煙加工処理とは直接関係のないつまり ATPの分解に関与するものではないものと思われる。しかし食感として試験区が 秀れた結果となるがその原因は不明である。
【0059】
鮮魚の着臭では対照区が早く、丸2日目に果実臭を生じている。これはブリの場 合、主に血合いを中心に生ずることから、微生物による発臭というよりは、酵素分 解による発臭と思われるが、一連の処理はこれら臭気の発生を防止する効果が高い 。
【0060】
尚、試験期間中の各試験区、対照区とも鮮度係数K値(%)は最終日でいずれも2 5%前後と鮮度は良好であった。
【0061】
マグロの燻煙溶液灌流処理品の冷蔵品、冷凍品の変化
活魚の本マグロに燻煙灌流処理を試み、ロインブロックの形態で、冷蔵庫保管 (空気接触状態及びブロックピース真空パック)試験を行い酸敗臭及び色調の変化 についても検討した。
【0062】
更に同マグロをロインブロックピースとしてマイナス18℃凍結し、30日後 解凍しその後変化を調べた。但し対照区なし。
【0063】
【表2】
Figure 0003650085
【0064】
評価1
従来より蓄養マグロ、養殖マグロなどは天然ものと比べ極めて脂質比率が高くその ため油やけ(酸化臭)が問題とされ、解体後3日目位から酸化臭が感じられるようにな る。
【0065】
今回の試験結果では、灌流処理後ラウンドで2日間かけて輸送し、解体して空気接 触が始まってから8日間は全く酸敗臭は生じなかった。また同時期を通じ果実臭、腐 敗臭も全く感じられなかった。更に、ブロックピース空気接触を絶った状態では、メ ト化の進行は試験期間では全く発生しなかった。
【0066】
空気接触による発色は解体後ほぼ1日で完全発色まで達したが、従来のマグロブロ ックではメト化は肉の中の中心部や、皮際からも発生していたが、今回の処理品は内 部からは全くメト化を生じない興味ある結果となった。
【0067】
評価2
緩慢凍結であるが、30日経過でも退色は進んでいるが鮮赤色を維持している。マ グロの色調はブリ類に比べ安定しているが、通常のマグロ凍結並びに保存温度により 極めて短期間にメト化を生ずる。試験2において味覚面で0,1日目でマグロの味覚 は濃厚で、その後に味抜けする現象は冷蔵試験のほぼ5日目に該当する。冷凍試験で は解凍後3日間はシャーレー内では目に見えて退色は進まなかった。3日目から臭気 が感じられるが、4日目に腐敗臭に変化していることから試験2の初期菌数が多いこ とが推測される。
【0068】
灌流処理後の冷凍品をマイナス18℃凍結保存し30日経過後で刺身材料として使 用できることが確認されたことにより、製造工程の改良により更に保存性を向上でき ると思われる。
【0069】
【表3】
Figure 0003650085
【0070】
結果
試験区は3日目以降の段階でも湿度を維持した保存ケース内であれば、充分商品価 値を維持しているものと思われる。色調のみを基準にすれば、空気接触状態で試験区 は3日以上商品価値を維持するのに対し、対照区は凍結状態ですでにメト化が進み、 解凍前で商品価値は失われている。また、臭気の発生についても、試験区は解凍後3 日以上にわたり臭気は感じられないのに対し、対照区は解凍後2日目以降で臭気を感 ずる。以上の結果燻液漬込効果は、色調のみならず、食味、食感の延長向上に効果が ある。
【0071】
試験結果のまとめ
以上の結果より、燻煙による燻液によって加工処理された各魚類は、色調面や味覚 面で秀れた保存性向上が期待できることが判明した。更にこれら一連の効果は、冷凍 保存中にもその効果は発揮される。また色調面の冷凍中の保存効果は、従来の製品と 同等であることが確認された。
【0072】
従って、燻煙処理の効果(燻煙を与える効果)としては、
特有の香気,風味の付与
食肉の発色及び肉色の安定化
脂肪の酸化防止作用
肉中の微生物の増加防止
肉の自己消化の促進
乾燥効果(水分活性の低下)
燻煙成分より抗菌性物質の浸透吸着
加熱殺菌効果(40℃以上に上昇の場合)
とされているが、本実施例の燻液を用いた加工によってこれと同様な効果が発揮され る。
【0073】
尚、本実施例で用いた燻煙発生装置(特開平8−298925号)について図3に基 づいて説明する。
【0074】
木屑などの燻材を投入する投入部2に投入部2から送り込まれた燻材を移送し得る 移送管路3を連設し、前記投入部2には投入部2から移送管路3内に外気が流入しに くくなる送り込みスクリュー4A又はロータなどの外気流入抑制機構4を設け、前記 移送管路3内に投入部2から送り込まれた燻材を撹拌しながら移送する送り込みスク リュー5Aなどの撹拌移送機構5を設けこの移送管路3に撹拌移送されている燻材を 温度制御して加熱する加熱部6を設け、移送管路3の終端に燻煙排出路7を連設する と共に、前記移送管路3終端より落下する固体分若しくは液体分を収容する収容部8 を設け、前記燻煙排出路7から燻煙を導出発生させるように構成している。
【0075】
また、前記燻煙排出路7に前記収容部8に向けて射出される水流若しくは水蒸気な どの噴射流を射出する排出路洗浄機構9を設け、前記燻煙排出路7から燻煙を導出発 生させるように構成している。
【0076】
この燻煙発生装置は、垂下導管2Aの上部にホッパー2Bを設けた投入部2とし、 この垂下導管2A内に外気流入抑制機構4としてモータ4Bで回転する送り込みスク リュー4Aを設け、この垂下導管2Aの下部に移送管路3を連設状態に横設している 。
【0077】
従って、ホッパー2Bに投入される燻材は送り込みスクリュー4Aにより移送管路 3内に送り込まれるが、単に垂下導管2Aを通って落下投入される構造でなく、送り 込みスクリュー4Aにより送り込まれるために移送管路3内に外気が流入しにくい構 造となる。
【0078】
この移送管路3内に撹拌移送機構5としてモータ5Bで回転する送り込みスクリュ ー5Aを設け、投入部2から送り込まれた燻材がこの送り込みスクリュー5Aにより 撹拌されながら側方の終端側へと移送されるように構成している。
【0079】
また、本実施例ではこの移送管路3の途中に加熱部6としてバンドヒーターを設け 、このヒーターを温度抑制するように構成している。
【0080】
従って、投入部2から空気が入り込まない密封構造の乾留方式となり、送り込まれ る燻材は適正な温度帯で数段階に夫々温度抑制された複数のバンドヒーターで加熱さ れ、燃焼することなく酸化物の少ない乾留された良質な燻煙が発生する。
【0081】
しかも、乾留方式でありながら、移送管路3の底を移送する燻材は送り込みスクリ ュー5Aにより撹拌されながら移送して加熱されるから、燻材は燃焼による熱源を有 さずも均一に適正温度に加熱されて熱分解し良質な燻煙が大量にして連続的に発生す る。
【0082】
この移送管路3の終端には燻煙排出路7がほぼ密閉状態にして外気が加熱部6へ流 入しないように連設されており、この下方底部には移送管路3の終端から落下する液 分(タール分)と固形分(炭)を収容する収容部8を設けている。本実施例ではこの 収容部8として水槽を設け、この水槽からオーバーフローする排液を分離ストレーナ 板10(パンチングメタル板)を伝わって粉体廃材14(主としてカーボン)を排槽11に 収容し、水分を溜槽12に収容するように構成している。
【0083】
また、前記燻煙排出路7の上部には排気導部7Aを設け、この排気導部7Aから分 岐して下方の収容槽13に導く排気導部7Bを設け、移送管路3内で発生した燻煙がこ の燻煙排出路7の排気導部7A,排気導部7Bを介して外部に排出されるように構成 している。
【0084】
本実施例は、この燻煙排出路7の排気導部7A,排気導部7Bに夫々収容部8,収 容槽13に向かって洗浄水を射出する排出路洗浄機構9を設け、排気導部7A,排気導 部7B内にタール分が付着したり、炭が付着して詰まらないように常時洗浄し良質な 燻煙が排出されるように構成している。
【0085】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成したから、言わば燻煙(燻煙成分)を液体化し、この燻液を魚類に付与することで、この液体(燻液)で燻煙処理に近い製品の製造を行なうため、難しい燻煙処理を行なわずに例えば簡単な漬込作業だけで燻煙処理に近い製品ができ、しかも着香だけでなく、この燻液には液体・気体の燻煙成分が含まれているため、保存性など燻煙処理と同様の効果が発揮されると共に、従来取り扱いが容易でなく、量産性に難点のあった燻煙処理を取り扱いが容易で量産性に秀れる燻液により行うことができ、その結果、例えばマグロをラウンドのままか、あるいは可食部分のみをマイナス60℃以下とせずともマイナス18℃の冷凍輸送で世界中の産地から日本に輸送することが可能であり、このような加工を施せばその冷凍、保存に必要な消費エネルギーはおよそ1/80まで減ずることが可能となるなど極めて大きな省エネルギーが期待できる画期的な燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法となる。
【0086】
また、請求項2記載の発明においては、一層簡単に燻製品を製造でき、また、請求項3記載の発明においては、例えば従来の出願人の灌流処理に燻煙処理を同時に行なうことが可能となるなど一層秀れた燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法なる。
【0087】
また、請求項6,7,8記載の発明においては、一層簡易な構成にして本発明の作用・効果を確実に発揮する極めて実用性に秀れたと燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第一実施例の概略構成説明図である。
【図2】 第二実施例の概略構成説明図である。
【図3】 本実施例の燻煙発生装置の概略構成説明図である。
【符号の説明】
投入部
燻煙排出路

Claims (8)

  1. 燻材を投入する投入部と燻煙排出路とから空気が流入しない構造の燻煙発生装置より発生させた燻煙を、空気を絶ったあるいは空気が流入しない状態ですすやタール成分などの不要物を除去し、水又は水溶液若しくは酸化防止剤,pH調整剤,調味料などの必要添加物を溶解した水溶液と常圧若しくは加圧状態により接触又はミキサーにより攪拌接触させて燻煙成分を溶解させて燻液を作成し、この燻液を魚類に付与して燻製品を製造することを特徴とする燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法。
  2. 前記燻液にスキンレス切身フィレーを浸して、燻液を付与したことを特徴とする請求項1記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法。
  3. 前記燻液を、灌流液として用い血管を介して肉中に拡散させて、燻液を付与したことを特徴とする請求項1記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法。
  4. 前記燻液をフィルターに通して微細固形物を除去した後、これを灌流液として用い、血管を介して肉中に拡散させて、燻液を付与したことを特徴とする請求項3記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法。
  5. 前記燻液を灌流液として用いて、マグロ,カジキなどのラウンド状態の大型魚肉中に燻煙成分を拡散させ燻製品を製造することを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法。
  6. 魚類の血管を介して血液を凝固させない成分を含む血液を流出させるための第一灌流液を圧入して血液を流出させた後、その後注入する灌流液として前記燻液を血管を介して肉中に拡散させて、燻煙成分を肉中に付与して燻製品を製造することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法。
  7. 魚類の血管を介して血液を凝固させない成分を含む血液を流出させるための第一灌流液を圧入して血液を流出させた後、第二灌流液として、酸化防止や味覚改善などの目的に応じた成分を含めた前記燻液を血管を介して肉中に拡散させて燻煙成分を肉中に付与し燻製品を製造することを特徴とする請求項6記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法。
  8. 前記燻液を付与した燻製品を凍結させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燻煙成分を溶解した燻液を用いた魚類加工方法。
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