JP3654591B2 - 特異結合分析方法および特異結合分析デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の分析対象物の定性分析または定量分析を行う特異結合分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、家庭内および地域での医療の充実、ならびに緊急性の高い臨床検査などの増加に伴い、臨床検査の専門家でなくとも、迅速簡便でかつ正確に計測が実施できる特異結合分析方法の開発が富みに望まれるようになってきた。
このような特異結合分析方法としては、抗原抗体反応を応用したイムノアッセイ、受容体を用いたレセプターアッセイ、および相補的核酸配列のハイブリダイゼーションを用いた核酸プローブアッセイなどの多くの方法が知られており、その特異性の高さから、臨床検査をはじめとする広い分野で汎用されている。
【0003】
さらに、イムノアッセイの1種であるクロマトグラフ分析法においては、例えば、特異結合物質が不溶化ないし固定化された多孔性担体または微粒子充填型担体からなるマトリクスに液状試料を接触させ、液状試料がマトリクスに沿って毛細管現象による浸透力によって流出する現象を利用することにより試料中の分析対象物の存否を分析する(例えば、日本国特許第2504923号、日本国特許第2667793号、特公平7−78503号、特開平10−73592号、および特開平8−240591号各公報)。
【0004】
具体的には、裸眼または光学的方法などにより任意に検知できる標識材によって標識された特異結合物質と、分析対象物とを特異結合反応させる。そして、分析対象物と特異結合反応した特異結合物質をマトリクス上に固定化された結合材に結合させ、マトリクス上に固定された標識量に応じて、最終的に試料中の分析対象物の存否を分析する。
このクロマトグラフ分析法は、マトリクスにおける担体の表面積が大きいため、多量の特異結合物質を不溶化させることができ、特異結合反応を引き起こしうる反応分子間の衝突頻度が液相中における反応の場合に比して大きいため、計測感度および計測時間の面から有利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のクロマトグラフ分析法では、プロゾーン現象と呼ばれる問題が存在する。プロゾーン現象とは、特異結合反応に由来する信号強度に対して分析対象物の濃度を一義的に決定することができない現象である。
具体的には、試料中に分析対象物が過剰に存在する場合、標識された特異結合物質と特異結合した分析対象物(標識材−特異結合物質−分析対象物の結合体)と、標識された特異結合物質と特異結合しなかった分析対象物単体とがマトリクス上に存在することとなる。
【0006】
そして、標識された特異結合物質と特異結合した分析対象物と、分析対象物単体とが、マトリクス上に固定化された結合材に対して競合して特異結合反応することとなる。そのため、結合材に分析対象物単体が結合されてしまい、標識された特異結合物質と特異結合した分析対象物が毛細管現象による浸透力によって流出されてしまう場合がある。これにより、結合材に結合される標識された特異結合物質の量が少なくなり、特異結合物質の特異結合反応に基づく信号強度と、試料中に含まれる分析対象物の量とが対応しなくなる。
【0007】
従って、試料中の分析対象物の量が過剰に存在する場合には、標識量から特定される分析対象物の量が異常に小さく計測されてしまい、試料中の分析対象物の存否を正確に把握できないケースが存在する。
これに対し、プロゾーン現象に影響されずに分析対象物を正確に計測するため、希釈した異なった濃度の試料を用いて複数回信号の強度を計測することにより、分析対象物が高濃度に存在するかを確認する方法が提案されている。しかし、複数個の反応容器を用いる必要があり、計測工程が煩雑となって分析装置の大型化および複雑化に起因することになる。
【0008】
そこで、本発明は、プロゾーン現象の影響がなく、試料中の分析対象物を、小型で簡易な計測装置によっても、正確に定性および定量計測することができる特異結合分析方法、および特異結合分析装置を提供することを目的とする。なかでも、本発明は、標識材−第1の特異結合物質−分析対象物の結合体を、第2の特異結合物質を固定した第1の検出部に固定し、当該第1の検出部での信号の強度に基づいて定量を行うため、特に低濃度域での測定精度が高い。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)検出可能な標識材により標識された第1の特異結合物質に分析対象物を含む試料を接触させ、第1の特異結合物質に前記分析対象物を結合させて標識材−第1の特異結合物質−分析対象物の結合体を得る工程、(B)第2の特異結合物質を固定した第1の検出部に前記試料を接触させ、第1の特異結合物質に結合しなかった過剰な分析対象物、および前記結合体を第2の特異結合物質に結合させて第1の検出部に固定する工程、(C)前記分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部に、前記試料を接触させ、前記結合体中の第1の特異結合物質を前記物質に結合させて前記結合体を第2の検出部に固定する工程、(D)第1の検出部および第2の検出部において得られる前記標識材に由来した信号1および信号2の強度をそれぞれ計測する工程、ならびに(E)前記信号1および信号2の強度に基づいて、前記試料中の分析対象物の濃度を求めて定性または定量を行う工程を有することを特徴とする特異結合分析方法に関する。
【0010】
前記工程(E)において、前記工程(D)で得られた信号1の強度に基づいて前記分析対象物の濃度を特定する際に、2つの互いに異なる濃度1および濃度2が導かれたとき、前記信号2の強度に基づいて濃度1および濃度2のいずれが真かを判定して前記分析対象物の濃度を決定するのが好ましい。
前記工程(D)で得られた信号2の強度に基づいてプロゾーン現象を判定するのが好ましい。
【0011】
第2の特異結合物質を固定した第1の検出部に工程(A)を経た前記試料を接触させ、第1の特異結合物質に結合しなかった過剰な分析対象物、および前記結合体を第2の特異結合物質に結合させて第1の検出部に固定する工程(B)を行い、ついで前記分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部に、工程(B)を経た前記試料を接触させ、前記結合体中の第1の特異結合物質を前記物質に結合させて前記結合体を第2の検出部に固定する工程(C)を行うのが好ましい。
【0012】
また、前記分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部に、工程(A)を経た前記試料を接触させ、前記結合体中の第1の特異結合物質を前記物質に結合させて前記結合体を第2の検出部に固定する工程(C)を行い、ついで第2の特異結合物質を固定した第1の検出部に工程(C)を経た前記試料を接触させ、第1の特異結合物質に結合しなかった過剰な分析対象物、および前記結合体を第2の特異結合物質に結合させて第1の検出部に固定する工程(B)を行うこともできる。
【0013】
また、あらかじめ工程(A)を行い、第1の検出部および第2の検出部をシート状クロマトグラフ用マトリクス上に設け、工程(A)を経た前記試料を第1の検出部および第2の検出部の上流側に滴下して、前記マトリクス内において毛細管現象による浸透力によって前記試料を第1の検出部および第2の検出部に移動させ、工程(B)〜(E)を行うのも好ましい。
【0014】
また、検出可能な標識材により標識された第1の特異結合物質を保持する保持部、第1の検出部および第2の検出部をシート状クロマトグラフ用マトリクス上に設け、前記試料を前記保持部またはその上流側に滴下し、前記マトリクス内において毛細管現象による浸透力によって前記試料を前記保持部、第1の検出部および第2の検出部に移動させ、工程(A)〜(E)を行うのも好ましい。
【0015】
前記標識材に由来した信号が、呈色、蛍光または発光を示す信号であるのが好ましい。
第1の特異結合物質および第2の特異結合物質のうち少なくとも一方が抗体であるのが好ましい。
前記標識材が、金属ゾル、染料ゾルもしくは蛍光物質を含む粒子、または着色ラテックス粒子であるのが好ましい。
【0016】
また、前記工程(D)において、前記信号1および信号2を前記分析対象物の移動方向に沿ってこの順で連続的に計測するのが好ましい。
前記工程(D)において、連続的に計測した信号1および信号2と前記分析対象物の移動方向の位置との関係を示す対応曲線を作成し、前記工程(E)において、前記対応曲線に基づいて定性または定量を行うのが好ましい。
前記工程(E)において、分析対象物の濃度が既知の試料から得られた定量情報と、前記工程(D)で得られた信号1および信号2とに基づいて前記分析対象物の定量を行うのが好ましい。
【0017】
さらに本発明は、シート状クロマトグラフ用マトリクスと、前記マトリクス上に設けられ特異結合物質を固定した第1の検出部と、前記マトリクス上に設けられ分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部とを具備し、分析対象物と特異結合物質を含む試料を、毛細管現象による浸透力によって第1の検出部および第2の検出部に移動させて特異結合反応を生じさせ、前記特異結合反応に由来した信号を検出することにより前記分析対象物を定性または定量することを特徴とする特異結合分析デバイスを提供する。
【0018】
さらに、前記デバイスは、前記マトリクス上において第1の検出部の上流側に設けられた保持部であって、検出可能な標識材により標識された特異結合物質を保持する保持部を具備し、前記試料を毛細管現象による浸透力によって前記保持部から第1の検出部および第2の検出部に移動させるのが好ましい。
【0019】
また、前記デバイスは、前記保持部に加えて、前記マトリクス上において前記保持部の上流側に設けられた試料点着部を具備し、前記試料を毛細管現象による浸透力によって前記試料点着部から前記保持部、第1の検出部および第2の検出部に移動させるのが好ましい。
【0020】
前記デバイスは、前記保持部を有さず、前記マトリクス上において第1の検出部の上流側に設けられた試料点着部を具備し、前記試料を毛細管現象による浸透力によって前記試料点着部から第1の検出部および第2の検出部に移動させるのも好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
まず、図面を参照しながら本発明に係る特異結合分析方法について説明する。図1は、本発明の特異結合分析方法に用いることのできる特異結合分析デバイスである試験ストリップの概略斜視図である。
試験ストリップ1はシート状の試験片であり、例えばクロマトグラフィー用試験片の面上に、分析対象物が含まれた試料が浸透展開し得る領域であるマトリクス2を有する。ストリップ1は、例えば毛細管現象により試料を浸透展開させることができるような多孔性担体または微粒子充填型担体からなる。
【0022】
また、マトリクス2上には、試料点着部3、保持部4、第1の検出部5および第2の検出部6が配置されている。試料点着部3は、マトリクス2に設けられた領域であり、ここに試料が点着される。保持部4は試料点着部3と第1の検出部5および第2の検出部6との間に配置され、点着された試料が流入する領域であって、標識材により標識された第1の特異結合物質が設けられる。第1の検出部5は、保持部4を経由して試料が流入する領域であり、結合材として第2の特異結合物質が固定化されている。第2の検出部6は、保持部4に続いて第1の検出部5を経由した試料が流入する領域であり、分析対象物またその類似物が固定化されている。
【0023】
ここで、本発明の特異結合分析方法に用いられる試料は、分析対象物が含まれると予測される液状の試料である。例えば、尿、血清、血漿、全血、唾液、涙液、髄液、および乳頭などからの分泌液などが挙げられる。また、粘液、体組織または細胞などの固形状、ゲル状またはゾル状物を、緩衝液、抽出液または溶解液などの液体に懸濁または溶解させて得られる試料であってもよい。
【0024】
また、本発明における分析対象物は、当該分析対象物と特異的に結合する特性を有する特異結合物質が存在するものであればよく、例えば、抗体や抗原として機能する各種蛋白質、ポリペプチド、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素およびインヒビターなどが挙げられる。さらに具体的には、α―フェトプロテイン、癌胎児性抗原(CEA)、CA125、CA19−9などの腫瘍マーカー、β2−ミクログロブリン(β2m)、フェリチンなどの各種蛋白質、糖蛋白質または複合糖脂質、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、ヒト絨毛性性線刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)などの各種ホルモン、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗原、HBc抗体、HCV抗体、HIV抗体などの各種ウィルス関連抗原およびウィルス関連抗体、各種アレルゲンおよびこれに対応するIgE抗体、麻薬性薬物、医療性薬物およびこれらの代謝産物、ウィルスおよび腫瘍関連ポリヌクレオチド配列の核酸などが挙げられる。
【0025】
本発明における特異結合物質は分析対象物に対して特異的に結合する物質であればよく、例えば、抗体、抗原、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒビターなどが挙げられる。
本発明において、標識材により標識された第1の特異結合物質と、第2の特異結合物質とを用い、標識された前記第1の特異結合物質と前記第2の特異結合物質とが分析対象物を介して結合し得ることが好ましい。そして特異性が高いという点で、第1の特異結合物質と第2の特異結合物質の少なくとも一つが抗体であることが望ましい。さらにはモノクローナル抗体が好ましい。
【0026】
なお、第1の特異結合物質と第2の特異結合物質とは、必ずしも同じものを用いることは必要とされない。また、分析対象物が同一のエピトープを複数有さない場合には、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質は、異なるエピトープに対してそれぞれ特異性を有するものを用いることが好ましい。もっとも、分析対象物が同一のエピトープを複数有する場合には同一の特異結合物質を用いてもよい。
【0027】
また、第2の検出部6に固定化する物質は、分析対象物そのものでも良く、また、その分析対象物と同様の挙動を示す類似物でもよい。すなわち、標識材により標識された第1の特異結合物質と結合する物質であればよい。例えば、第1の特異結合物質と結合する分析対象物のエピトープと同一のエピトープを有する物質でもよい。
【0028】
本発明において用いる標識材は、その存在を任意に検出できる物質である。例えば、自然状態にあるときに裸眼で見える直接標識、または光学フィルタの使用、もしくは紫外光などの刺激を加えて蛍光を促進する方法などの使用により容易に見える直接標識だけでなく、基質のような展開試薬を添加することにより、可視信号を検出し得る間接標識をも含む。
【0029】
直接標識としては、染料ゾル、金属ゾル、着色ラテックス粒子のような微細な着色粒子、および蛍光物質を含む粒子が挙げられる。間接標識としては、アルカリ性フォスファターゼ、ホースラディッシュぺルオキシターゼなどの酵素類が挙げられる。直接標識は、別の試薬を添加しなくても検出可能な信号を生成するために、分析結果を瞬時に得ることができ、さらに、丈夫で安定性があるため直接標識を用いる方がよい。
【0030】
以下においては、試料として尿を、試料に含まれる分析対象物としてhCGを、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質にhCGとのサンドイッチ反応に参加し得る抗hCGモノクローナル抗体を、標識材として金コロイドを用いた本発明の一実施の形態について説明する。
ここで金コロイドのような着色粒子を用いる場合、着色粒子が微細なため、標識を小さな区域または容積の中に集中させることが可能であり、第1の検出部5および第2の検出部6において第1の特異結合物質の標識材である金コロイドが寄与する反応に由来する信号を用いてhCGの定性および/または定量を正確に行うことができる。
【0031】
まず、定量分析または定性分析をする試料を試料点着部3に点着する。点着された試料は、マトリクス2を毛細管現象により、試料点着部3から浸透展開しながら、保持部4に至る。すなわち、検出可能な標識材により標識された第1の特異結合物質を保持する保持部に、分析対象物を含む試料を接触させ、第1の特異結合物質に前記分析対象物を結合させて標識材−第1の特異結合物質−分析対象物の結合体を得る(工程(A))。
マトリクス2は、上述のように、分析対象物および特異結合物質が展開される場であればよく、多孔性担体やゲル担体などが挙げられる。ここでは、ニトロセルロースを用いる場合について説明する。
【0032】
ニトロセルロースは、あらかじめ増感しなくても固有に蛋白質と結合する能力を有するため、紙のような他のマトリクス材料に比べて優れている。抗体のような特異結合物質を直接ニトロセルロースに塗布することで、確実に固定化することができ、特異結合物質の持つ特異結合能力の妨げとなるような化学処理を全く必要としない。例えばマトリクス材料が紙の場合は、抗体を固定化するのにCNBr、カルボニルジミダゾール、塩化トレシルなどを用いた化学結合を行うことが必要となる。
【0033】
さらに、ニトロセルロースはいろいろな大きさの気孔のものを入手することができるため、試料流量のような要件にあわせてマトリクス材料を選択することが容易になる。ニトロセルロースシートを用いる場合は、このシートの裏にプラスチックなどの材料からなるシート状の補強材などを張り合わせ(裏打ちし)て、取り扱い上の強度を大きくするのが望ましい。これは、補強材の上にニトロセルロースの薄膜を形成することによって容易に製造することができる。
【0034】
検出部に抗体を固定化した後、マトリクスをブロッキングし、マトリクスへの非特異吸着を低減させることが好ましい。ブロッキングは、蛋白質(例えば牛の血清アルブミンもしくは乳蛋白質など)、ポリビニルアルコール、エタノールアミン、またはこれらの組み合わせなどを用いて処理することで達成できる。
【0035】
保持部4には、分析対象物であるhCGと免疫学的な結合特性を有する第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体を設ける。抗hCGモノクローナル抗体は、標識材としての金コロイドによって標識化されている。
試料である尿に含まれる分析対象物hCGは保持部4に流入し、第1の特異結合物質と特異結合して、標識材−第1の特異結合物質−分析対象物の結合体が得られる。すなわち、分析対象物であるhCGには、抗hCGモノクローナル抗体を介して金コロイドが付与されることとなる。
【0036】
ここで、第1の特異結合物質は、乾燥状態で保持部4に設けられることが好ましい。例えば、ブロッキング後のマトリクスに第1の特異結合物質を含む試薬を塗布し、凍結乾燥処理を施して第1の特異結合物質を乾燥状態で保持部4に担持させる。これにより、保持部4が乾燥状態にあるときは、第1の特異結合物質は保持部4に保持され、液体試料がマトリクス2を浸透展開することにより、マトリクス2が湿潤されると、第1の特異結合物質は、マトリクス2上を自由に移動することができるようになる。
【0037】
ゆえに、分析対象物と第1の特異結合物質とが結合した状態を有する前記結合体を含む試料は、マトリクス2を浸透展開しながら、マトリクス2にある第1の検出部5および第2の検出部6に流入する。
第1の検出部5には、分析対象物hCGと結合し得る第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が実質的に固定化されている。例えば、マトリクスがニトロセルロースからなる場合、前記抗体を含む試薬を前記マトリクスに塗布することによって、前記抗体を当該マトリクスに物理的および化学的に吸着させ、固定化させることができる。この第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体は、湿潤された状態でも、移動しない。
第2の検出部6では、第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体と結合する分析対象物(hCG)またはその類似物が実質的に固定化されている。これも湿潤された状態で移動しない。
【0038】
なお、試料は、あらかじめ試験試薬ストリップ外で第1の特異結合物質と反応させた後に、試料点着部に点着してもよい。このストリップ外で試料と反応させる第1の特異結合物質は、標識材と結合していないものでもよく、さらに、マトリクス内の標識された第1の特異結合物質とは異なる信号を生成する標識材と結合しているものでもかまわない。ストリップ外で、標識された第1の特異結合物質と試料をあらかじめ反応させる場合、第1の特異結合物質を設けた保持部4をマトリクス2に配置しなくてもよい。
【0039】
第1の検出部5に至った試料中の分析対象物は、第2の特異結合物質と特異結合する。これにより、分析対象物は、第2の特異結合物質を介して第1の検出部5に固定されることとなる。すなわち、金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体は、分析対象物hCGを介して第1の検出部5に固定化された第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体と結合する。
これが、第2の特異結合物質を固定した第1の検出部に、工程(A)を経た前記試料を接触させ、第1の特異結合物質に結合しなかった過剰な分析対象物を第2の特異結合物質に結合させて第1の検出部に固定する工程(B)である。
【0040】
ここで、試料中のhCGが過剰に存在する場合、金コロイドで標識された抗hCGモノクローナル抗体と特異結合していないhCGと、金コロイドで抗hCGモノクローナル抗体と特異結合したhCGとが、第1の検出部5における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する。
その結果、単体のhCGが優先的に第1の検出部5に固定化された特異結合物質と反応して結合する。そして、第1の検出部5に結合される金コロイドで標識された抗hCGモノクローナル抗体の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、第1の検出部5で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなる。このように、過剰に存在する分析対象物により信号強度が分析対象物の量に応じて増加しなくなる現象を、上述のようにプロゾーン現象という。
【0041】
第2の検出部6に至った金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の内、さらに分析対象物hCGと結合できる第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体は、固定化された分析対象物hCGと特異結合して第2の検出部6に固定されることになる。すなわち、金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体は、分析対象物hCGを介して第2の検出部6に固定化される。
これが、前記分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部に、工程(B)を経た前記試料を接触させ、前記結合体中の第1の特異結合物質を前記物質に結合させて前記結合体を第2の検出部に固定する工程(C)である。
【0042】
ここで、試料が第1の検出部5および第2の検出部6を越えても、試料が引き続き流れるように展開されることが好ましい。そのためには、十分な試料を試料点着部3に点着し、第1の検出部5および第2の検出部6において、結合反応に参加しない余分な標識された第1の特異結合物質が、検出部を越えて続く試料の流れによって、第1の検出部5および第2の検出部6から洗い流されるようにする。このために、マトリクス2の試料が展開される末端部に吸収部を設けてもよい。吸収部の材料としては、分析対象物以外の試料を洗い流せるように十分な吸収能力を持つものであればよく、例えば、ガラス繊維濾紙GA200(東洋(株)製)が挙げられる。
【0043】
このように吸収部を設けると、試料の流れと共に未反応物が洗い流されるため、特異結合反応後、未反応物の分離操作を行うことなく特異結合反応に由来する信号を第1の検出部5および第2の検出部6で検出することができる。したがって、本発明の特異結合分析方法において、分析対象物と特異結合物質との特異結合反応に由来して得られた信号の強度の計測は、特異結合反応が行われる場の任意の箇所で行うことが可能だが、第1の検出部5および第2の検出部6、または第1の検出部5および第2の検出部6を含んだ領域で信号強度の分布状況を検知し、信号強度の分布状況から試料中の分析対象物を定性または定量することが好ましい。
【0044】
そうして、第1の検出部および第2の検出部において得られる前記標識材に由来した信号1および信号2の強度をそれぞれ計測する工程(D)、ならびに前記信号1および信号2の強度に基づいて、前記試料中の分析対象物の濃度を求めて定性または定量を行う工程(E)を行う。
あらかじめ既知の濃度の分析対象物を含む試料を用いた計測により得られた信号強度の分布状況分と濃度との対応関係を示す定量情報を作成しておき、この定量情報と分析で得られた信号強度の分布状況から、濃度を決定してもよい。
【0045】
図2は、本発明に係る特異結合分析方法において前記ストリップ1とともに用いる分析装置の構成を示す概略図である。この分析装置は、例えば第一の電極11、第二の電極12、計測開始検知器10、解析器9、光源7および光検出器8を備える。第一の電極11と第二の電極12は、試料点着部3の導電率を計測する電極である。計測開始検知器10は、導電率の変化から試料点着部3に試料が点着されたことを検知する機器で、検知信号を解析器9へ供給する。解析器9は、検知信号を受信した後、所定時間経過時に、ステージ13を制御して試験試薬ストリップ1全体をZ方向に走査させる。さらに、光源7を制御し、光検出器8の出力信号を解析する。光源7は、第1の検出部5および第2の検出部6に光を照射する機器である。光検出器8は、第1の検出部5および第2の検出部6からの反射光を検知する機器である。
【0046】
この分析装置の動作について説明する。まず、試料点着前に、乾燥状態における試料点着部3の導電率と、試料点着時の湿潤状態の試料点着部3の導電率を計測しておく。それにより得られた情報を計測開始情報として、計測開始検知器10に入力しておく。
そして、hCGを含む試料を試料点着部3に点着し、試料点着部3が乾燥状態から湿潤状態に変わると、第一の電極11と第二の電極12がモニタリングしている試料点着部の導電率が変化する。計測開始検知器10は、この導電率の変化と計測開始情報とを参照することにより、試料が、試料点着部3に点着されたことを検知することができる。
【0047】
試料点着部3への試料の点着は、分析装置内に試験試薬ストリップ1を装着した後に実施するのが好ましいが、試料を点着した試験試薬ストリップ1を分析装置に装着してもよい。
計測開始検知器10が試料の点着を検知すると、解析器9がステージ13を制御して、試験試薬ストリップ1をZ方向へ走査する。同時に、解析器9は光源7及び光検出器8を制御して、走査に伴う信号の強度の変化を計測して、図3および4に示すクロマトグラムを得る。
光源7は、第1の検出部5および第2の検出部6を含んだ領域へ所定の波長(例えば650nm)の光を照射し、その反射光を光検出器8は検知する。計測波長は第1の検出部5および第2の検出部6での試料や標識材の呈色に適した波長を選べばよい。
【0048】
ここで、信号としては標識材が寄与する反応によって生成し、検出可能なものであればよく、例えば、蛍光光度計で計測可能な蛍光、発光光度計で計測可能な発光、または第1の検出部5および第2の検出部6における目視判定および色差計で計測可能な呈色などであってもよい。この場合、第1の検出部5および第2の検出部6では反射された光、第1の検出部5および第2の検出部6において発生した蛍光または発光の強度などを検出することになる。
この信号の検知は、試験試薬ストリップ1と、光源7および光検出器8との位置関係を試料の浸透方向と平行即ちZ方向に相対的に変化させながら連続して実施される。試験試薬ストリップ1または光源7と光検出器8のどちらかを試料の浸透方向と平行に移動させてもよいし、両者共に移動させてもよい。
【0049】
光検出器8は、この信号を解析器9に送る。解析器9は、光検出器8からの信を解析することにより、信号の強度を計測する。解析器9は、計測された信号の強度と走査距離とからなる対応曲線、すなわちクロマトグラムを作成し、これを解析する。
図3および4は、それぞれ第1の検出部5および第2の検出部6近傍の信号強度の分布状況を解析して描いた対応曲線(クロマトグラム)の概略図である。このクロマトグラムは、試験試薬ストリップ1または光源7を走査させながらマトリクス2上に光源7から光を照射し、光検出器8が検出した反射光を解析器9で解析して描いたものである。このクロマトグラムは、縦軸が第1の検出部5および第2の検出部6近傍における信号の強度を、横軸が検出部の領域(試料点着部3からの走査距離)を表している。
【0050】
このクロマトグラムの高さHを、特異結合反応に基づく信号の強度として計測する。ここで、このクロマトグラムの面積Sを、特異結合反応に基づく信号の強度としてもよい。第1の検出部5および第2の検出部6のクロマトグラムの高さをそれぞれHsおよびHrとし、第1の検出部5および第2の検出部6のクロマトグラムの面積をそれぞれSsおよびSrと示している。
なお、ここでは試験試薬ストリップ1または光源7を走査させて第1の検出部5および第2の検出部6を含んだ領域での反射光を連続的に計測してクロマトグラムを得る。例えば、第1の検出部5および第2の検出部6を挟んで点着部3に近い上流とその反対側の下流の信号強度を直線で結び、第1の検出部5および第2の検出部6でのクロマトグラムの最高値の高さから直線の高さを差し引いて求めた距離をクロマトグラムの高さHとすること、また、クロマトグラムと直線との囲まれた領域の面積をクロマトグラムの面積Sとすることにより、第1の検出部5および第2の検出部6での信号強度からバックグラウンドに由来する信号強度を差し引いた特異結合反応に基づく信号強度を得ることができる。試料が全血などの着色しているものであっても、バックグラウンドや共雑物に由来する影響を受けることなく、試料中の分析対象物を定性または定量することができる。
【0051】
このとき、第1の検出部5および第2の検出部6以外のマトリクス2上の任意の箇所の信号強度をバックグラウンドに由来する強度であるとしてもよく、例えば、第1の検出部5および第2の検出部6近傍における信号強度のうち最小の値を選んでもよい。
バックグラウンドとは、分析対象物を含有していない試料が示す挙動のことである。例えば、第1の検出部5および第2の検出部6における特異結合物質等の非特異吸着や、呈色による信号を計測する場合の試料自身の呈色はバックグラウンドに影響し、計測精度を低下させている。そして、共雑物とは、試料中に含まれる分析対象物以外の物質であるが、特異結合分析方法で問題となる共雑物は、特異結合物質との結合反応において分析対象物と同様の挙動を示す物質(例えば、分析対象物の構造類縁物質等)や、分析対象物と結合する等して、分析対象物と特異結合物質との特異結合反応を妨害する物質などである。
解析器9は、メモリ(図示せず)に定量情報を有し、分析値であるHsおよびHr、またはSsおよびSrとこの定量情報を参照することにより、分析対象物の濃度を特定する。
以下に、図1に示すストリップおよび図2に示す分析装置を用いて行った実施例に基づいて本発明に係る特異結合分析方法について説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0052】
【実施例】
《実施例》
図1に示すストリップ1および図2に示す分析装置を用いて本発明の特異結合分析方法を行った。ここでは、解析器9で、HsおよびHrより分析対象物の濃度を特定した。
第1の検出部5に650nm波長の光を照射した場合の信号強度HsとhCG濃度との関係を示すグラフを図5に表した。hCG濃度が実質的にゼロである精度管理用のコントロール尿にhCGを添加したものを試料として用いた。各試料のhCG濃度は、0(IU/L)、10(IU/L)、30(IU/L)、50(IU/L)、100(IU/L)、300(IU/L)500(IU/L)、1000(IU/L)、1500(IU/L)、2000(IU/L)、3000(IU/L)、5000(IU/L)、7500(IU/L)または10000(IU/L)とし、各濃度において2または3回計測した。
【0053】
図5からわかるように、試料中のhCG濃度が低濃度の場合は、ほとんどの分析対象物が標識された第1の特異結合物質と結合し、第1の検出部5に固定化された第2の特異結合物質と結合した。したがって、第1の検出部5で検出される標識材の寄与する反応に由来する信号強度Hsは、濃度が増加すると増加した。試料中のhCG濃度が高濃度の場合には、標識された第1の特異結合物質と特異結合していない分析対象物が反応系に過剰に存在するため、標識された第1の特異結合物質と特異結合した分析対象物と、標識された第1の特異結合物質と特異結合していない分析対象物とが競合して第1の検出部5に固定化された第2の特異結合物質と特異結合反応する結果、第1の検出部5で検出される標識材の寄与する反応に由来する信号強度Hsは、濃度が増加すると低下した。
この図5の点線を検量線とすることで、分析対象物の濃度を特定することができた。すなわち、縦軸である信号強度Hsがある値を示したとき、この値を示す点線の横軸が濃度に相当した。例えば、信号強度Hsが5.0とすると、約1200(IU/L)と特定することができた。
【0054】
しかし、ここで、解析器9が、図5の点線を検量線として参照したとき特定される濃度が複数存在し、信号強度に対する分析対象物の濃度が一義的に定まらない場合があった。hCG濃度が6000(IU/L)以上を示す可能性がある場合、信号強度Hsが10の時、hCG濃度が約3500(IU/L)または約7600(IU/L)のいずれか区別がつかなかった。このような信号強度Hsに対する分析対象物の濃度が一義的に定まらない場合に、以下のように、第2の検出部6のクロマトグラムより信号強度Hrを同時に求め、このHrとHsを同時に解析して濃度を特定することができた。
【0055】
図6に、第2の検出部6に650nm波長の光を照射した場合の信号強度HrとhCG濃度との関係を表したグラフを示した。
hCG濃度が実質的にゼロである精度管理用のコントロール尿にhCGを添加したものを試料として用いた。各試料のhCG濃度は、0(IU/L)、10(IU/L)、30(IU/L)、50(IU/L)、100(IU/L)、300(IU/L)500(IU/L)、1000(IU/L)、1500(IU/L)、2000(IU/L)、3000(IU/L)、5000(IU/L)、7500(IU/L)または10000(IU/L)とし、各濃度で2または3回計測した。
【0056】
図6からわかるように、分析対象物と結合していない標識された第1の特異結合物質が第2の検出部6に固定化された分析対象物もしくは類似物と結合するため、標識材の寄与する反応に由来する信号強度Hrは、濃度が増加すると低下した。すなわち、濃度が低下し、分析対象物と結合していない標識された第1の特異結合物質が存在するときは、これらが第2の検出部6に固定化された分析対象物もしくは類似物と結合するため、標識材の寄与する反応に由来する信号強度Hrが発生した。しかし、濃度が高く大過剰の分析対象物が存在すると、実質的にすべての標識された第1の特異結合物質が分析対象物と結合しているため、第2の検出部6に到達しても、固定化された分析対象物もしくは類似物と結合することができず、洗い流されてしまうため、標識材の寄与する反応に由来する信号強度Hrは、実質的に発生しなかった。
【0057】
ここで、より厳密には、本実施例のように、第1の特異結合物質が抗体のように結合部位を複数有する場合(IgG抗体の場合は2個所)、これら各々の結合部位の結合状態が信号強度に反映した。すなわち、すべての結合部位が分析対象物で埋まっている第1の特異結合物質は、新たに分析対象物と結合できる確率が極めて低いため、第2の検出部6に固定化された分析対象物と結合する確率も、極めて低かった。しかし、一つでも分析対象物と結合可能な結合部位が、残留していれば、第2の検出部6に固定化された分析対象物と結合する確率は、残留結合部位の割合に応じて増加した。いずれにせよ、図6の点線に示した信号増加Hrは、分析対象物濃度が増加するに従って低下した。
【0058】
この図6の点線と図5の点線を定量情報とすることで、次のように分析対象物の濃度を特定することができた。
上述のように、図5の点線のみを参照したとき特定される濃度が複数存在し、信号強度に対する分析対象物の濃度が一義的に定まらない場合があった。例えば、hCG濃度が6000(IU/L)以上を示す可能性がある場合、信号強度Hsが10の時、hCG濃度が約3500(IU/L)または約7600(IU/L)のいずれであるかが区別できなかった。しかし、図6の点線をさらに参照することで、濃度を特定することができた。すなわち、図6の信号強度Hrが1.2であれば、点線より濃度は約3500(IU/L)となり、信号強度Hrが0.45であれば、点線より濃度は約7600(IU/L)であると確認できた。
このように、図5の信号強度Hsのみからでは、分析対象物の濃度が一義的に定まらない場合にも、第2の検出部6のクロマトグラムより信号強度Hrを求め、このHrおよびHs両者を併用して解析することで、濃度を特定することが可能であった。
【0059】
ここで、図6のHrのみから濃度を特定することも可能であったが、低濃度域における点線の濃度に対する傾きが小さいため、計測されたHrより、濃度を特定するときの精度が、図5のHsより濃度を特定するときより低下した。したがって、Hrは、Hsより導かれた2つの濃度のうち、どちらが真であるかのみを決定するのに活用して、濃度特定にはHsのみから活用することが好ましかった。
また、簡単のために、図6のHrが所定値以上の場合にのみ、図5のHsより濃度を特定することも可能であった。例えば、本実施例の場合、Hrが0.6以上のときのみ図5のHsより濃度を特定し、Hrが0.6以下の場合はプロゾーン現象が発生していると判定して、濃度は6000(IU/L)以上であると限定するのみで、濃度を特定しないと簡単であった。すなわち、Hrはプロゾーン判定にのみ活用すると簡単化に効果的であった。
【0060】
さらに、本実施例では、第2の検出部6が第1の検出部5より液体試料が展開していく方向(Z方向)の下流側に配置したが、このように配置することで、定量精度が向上した。なぜなら、抗体などのタンパク質が固定化されたマトリクス中を液体が通過すると、流れが乱れ、マトリクスの特定部分のみに液体試料が流れる現象が発生しやすくなり、下流側の検出部での結合度合いにむらが発生した。これにより再現性が低下した。マトリクスに固定化されたタンパク質による液体試料の流れの妨害は、空間的障害や、固定化密度むらによる親水性のむらなどにより発生した。濃度を特定、すなわち定量する第1の検出部5で発生する信号の再現性を確保することによって、定量精度を向上させることができたため、定量用検出部を上流側に配置することが好ましかった。
【0061】
以上のように、HsおよびHr両者を定量情報として解析することで、いわゆるプロゾーン現象の影響を受けることなく、濃度を特定することができた。
なお、本実施例では、HsおよびHrを活用した例を示したが、図3および4に示したSsおよびSrを同様に活用しても、同様の効果が得られた。すなわち、Ssで定量し、Srでプロゾーン判定を実施することができた。
以上、説明したように、本実施例による特異結合分析方法によれば、プロゾーン現象が生じている場合においても、簡易かつ迅速に、試料中の分析対象物の定性または定量を行うことができた。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、2箇所の検出部で発生した特異結合物質の特異結合反応に基づく信号強度の分析値と、分析対象物の濃度との対応を示した定量情報とを参照して試料中の分析対象物の量を特定するため、プロゾーン現象の影響を受けず、簡易かつ迅速に試料中の分析対象物の正確な定性または定量分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る特異結合分析方法に用いる試験試薬用のストリップの一実施の形態の概略斜視図である。
【図2】本発明に係る特異結合分析方法に用いる分析装置の一実施の形態の構成を示す概略図である。
【図3】図2に示す分析装置により検出したストリップ1の第1の検出部5の信号強度の分布状況を表す概略図である。
【図4】図2に示す分析装置により検出したストリップ1の第2の検出部6の信号強度の分布状況を表す概略図である。
【図5】第1の検出部5において650nm波長の光を照射した場合のhCG濃度と信号強度Hsとの関係を表すグラフである。
【図6】第2の検出部6において650nm波長の光を照射した場合のhCG濃度と信号強度Hrとの関係を表したグラフである。
【符号の説明】
1 ストリップ
2 マトリクス
3 試料点着部
4 保持部
5 第1の検出部
6 第2の検出部
7 光源
8 光検出器
9 解析器
10 計測開始検知器
11 第一の電極
12 第二の電極
Claims (17)
- (A)検出可能な標識材により標識された第1の特異結合物質に分析対象物を含む試料を接触させ、第1の特異結合物質に前記分析対象物を結合させて標識材−第1の特異結合物質−分析対象物の結合体を得る工程、
(B)第2の特異結合物質を固定した第1の検出部に前記試料を接触させ、第1の特異結合物質に結合しなかった過剰な分析対象物、および前記結合体を第2の特異結合物質に結合させて第1の検出部に固定する工程、
(C)前記分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部に、前記試料を接触させ、前記結合体中の第1の特異結合物質を前記物質に結合させて前記結合体を第2の検出部に固定する工程、
(D)第1の検出部および第2の検出部において得られる前記標識材に由来した信号1および信号2の強度をそれぞれ計測する工程、ならびに
(E)前記信号1および信号2の強度に基づいて、前記試料中の分析対象物の濃度を求めて定性または定量を行う工程を有することを特徴とする特異結合分析方法。 - 前記工程(E)において、前記工程(D)で得られた信号1の強度に基づいて前記分析対象物の濃度を特定する際に、2つの互いに異なる濃度1および濃度2が導かれたとき、前記信号2の強度に基づいて濃度1および濃度2のいずれが真かを判定して前記分析対象物の濃度を決定することを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。
- 前記工程(D)で得られた信号2の強度に基づいてプロゾーン現象を判定することを特徴とする請求項1または2記載の特異結合分析方法。
- 第2の特異結合物質を固定した第1の検出部に工程(A)を経た前記試料を接触させ、第1の特異結合物質に結合しなかった過剰な分析対象物、および前記結合体を第2の特異結合物質に結合させて第1の検出部に固定する工程(B)を行い、ついで
前記分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部に、工程(B)を経た前記試料を接触させ、前記結合体中の第1の特異結合物質を前記物質に結合させて前記結合体を第2の検出部に固定する工程(C)を行うことを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。 - 前記分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部に、工程(A)を経た前記試料を接触させ、前記結合体中の第1の特異結合物質を前記物質に結合させて前記結合体を第2の検出部に固定する工程(C)を行い、ついで
第2の特異結合物質を固定した第1の検出部に工程(C)を経た前記試料を接触させ、第1の特異結合物質に結合しなかった過剰な分析対象物、および前記結合体を第2の特異結合物質に結合させて第1の検出部に固定する工程(B)を行うことを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。 - あらかじめ工程(A)を行い、第1の検出部および第2の検出部をシート状クロマトグラフ用マトリクス上に設け、工程(A)を経た前記試料を第1の検出部および第2の検出部の上流側に滴下して、前記マトリクス内において毛細管現象による浸透力によって前記試料を第1の検出部および第2の検出部に移動させ、工程(B)〜(E)を行うことを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。
- 検出可能な標識材により標識された第1の特異結合物質を保持する保持部、第1の検出部および第2の検出部をシート状クロマトグラフ用マトリクス上に設け、前記試料を前記保持部またはその上流側に滴下し、前記マトリクス内において毛細管現象による浸透力によって前記試料を前記保持部、第1の検出部および第2の検出部に移動させ、工程(A)〜(E)を行うことを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。
- 前記標識材に由来した信号が、呈色、蛍光または発光を示す信号であることを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。
- 第1の特異結合物質および第2の特異結合物質のうち少なくとも一方が抗体であることを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。
- 前記標識材が、金属ゾル、染料ゾルもしくは蛍光物質を含む粒子、または着色ラテックス粒子であることを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。
- 前記工程(D)において、前記信号1および信号2を前記分析対象物の移動方向に沿ってこの順で連続的に計測することを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。
- 前記工程(D)において、連続的に計測した信号1および信号2と前記分析対象物の移動方向の位置との関係を示す対応曲線を作成し、前記工程(E)において、前記対応曲線に基づいて定性または定量を行うことを特徴とする請求項11記載の特異結合分析方法。
- 前記工程(E)において、分析対象物の濃度が既知の試料から得られた定量情報と、前記工程(D)で得られた信号1および信号2とに基づいて前記分析対象物の定量を行うことを特徴とする請求項1記載の特異結合分析方法。
- シート状クロマトグラフ用マトリクスと、前記マトリクス上に設けられ特異結合物質を固定した第1の検出部と、前記マトリクス上に設けられ分析対象物と同じまたは類似の物質を固定した第2の検出部とを具備し、
分析対象物と特異結合物質を含む試料を、毛細管現象による浸透力によって第1の検出部および第2の検出部に移動させて特異結合反応を生じさせ、前記特異結合反応に由来した信号を検出することにより前記分析対象物を定性または定量することを特徴とする特異結合分析デバイス。 - 前記マトリクス上において第1の検出部の上流側に設けられた保持部であって、検出可能な標識材により標識された特異結合物質を保持する保持部を具備し、
前記試料を毛細管現象による浸透力によって前記保持部から第1の検出部および第2の検出部に移動させることを特徴とする請求項14記載の特異結合分析デバイス。 - 前記マトリクス上において前記保持部の上流側に設けられた試料点着部を具備し、
前記試料を毛細管現象による浸透力によって前記試料点着部から前記保持部、第1の検出部および第2の検出部に移動させることを特徴とする請求項15記載の特異結合分析デバイス。 - 前記マトリクス上において第1の検出部の上流側に設けられた試料点着部を具備し、
前記試料を毛細管現象による浸透力によって前記試料点着部から第1の検出部および第2の検出部に移動させることを特徴とする請求項14記載の特異結合分析デバイス。
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