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JP3654693B2 - 加湿膜及びその製法 - Google Patents
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JP3654693B2 - 加湿膜及びその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は加湿器用加湿膜及びその製法に係る。
【0002】
【従来の技術】
居住空間の湿度コントロールの手段として一般に加湿器が使用されている。この加湿器としては、超音波方式、スプレー方式、自然蒸発方式等種々のものが実用化されているが、ランニングコストが低いこと、白粉の発生が無くて清潔であること等の理由から、疎水性の高分子多孔質膜を用いた膜式加湿器が近時注目を集めている。これは、疎水性の高分子多孔質膜の、水蒸気を透過させるが水を透過させないという特性を利用したもので、この多孔質膜を境界面として、一方の領域に水を設け、他方の領域に空気を送ることにより、この多孔質膜を経由して水蒸気を移動させ、空気側を加湿するものである。この膜式加湿器は、特開昭50−58852号公報、実開昭54−56963号公報、特開昭60−171337号公報、特開昭61−27434号公報等にその具体例が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記疎水性多孔質材料から成る加湿膜を用いた加湿器は、加湿用水に油性成分例えば配管工事等で用いられ切削油等が混入した場合、この油性成分が膜表面に付着した後膜内部に侵入し、加湿用水は、この侵入した部分から膜を透過し、漏れ出すようになる。また、長期間の使用により、加湿用水中に含まれる有機性、無機性の不純物がこの加湿膜の表面に付着し、この汚れにより加湿膜の撥水性が低下し、所定の耐水圧を維持出来なくなって加湿用水が漏れ出すようになる。このような加湿器からの水のリークは、加湿空気に水滴が混じり合い、室内を漏らすことになる。併せて、カルシウム等の成分を含んだ加湿用水が室内に飛散することとなり、飛散した水が乾燥すると、後に白粉が残り、白粉公害となる。
【0004】
このように、従来の加湿膜は耐切削油性、耐汚染性等に欠けるため、このような加湿膜を用いた加湿器を運転する場合は、加湿用水を前処理し、これらの不純物を除去する必要があったが、この前処理は、設備的にも大がかりとなり、コスト高となり実用的ではなかった。従って、切削油による汚染、加湿用水中の不純物による汚染が発生すると、加湿膜の全面交換が必要であった。
【0005】
以上の様な問題を解決するために、特開平5−18572号公報には、多孔質疎水性高分子材料に親水性樹脂の連続被膜を設けた加湿膜を用いることが提案されている。しかしながら、この加湿膜は、多孔質材料を無孔質としたもので、透湿度の低下は避けられず、加湿能力の低下は、装置の大型化につながっていた。また、この加湿膜は無孔質である為に通気性が無く、加湿器内に加湿用水を導入する際、空気を排除する為の手段が別途必要であるという煩わしさがあった。
【0006】
以上のことから、耐汚染性を有し、透湿度の大きい加湿膜の出現が望まれていた。
本出願人は、先に、多孔質高分子基材の骨格が撥水性及び撥油性を有する有機ポリマー、好ましくは繰り返し表われるペンダント基としてフッ素化有機側鎖を有する有機ポリマーで被覆され、かつ連続気孔を有する加湿器用加湿膜により、上記課題を解決することができることを開示した(特願平06─237689号明細書)。
【0007】
一方、テトラフルオロエチレンを含むフルオロポリマーは一般に他のポリマーより熱安定性、耐薬品性等に優れているので、テトラフルオロエチレンを上記の加湿器用加湿膜の気孔の被覆に使用することが望ましい。しかしながら、テトラフルオロエチレンを用いて1ミクロン未満の孔を有する多孔性基材を均質に被覆して連続気孔を残すには、テトラフルオロエチレンのマイクロエマルジョンを提供する必要がある。
【0008】
本発明は、多孔質基材の骨格にこのテトラフルオロエチレンを被覆した加湿器用加湿膜を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、テトラフルオロエチレンを出発モノマーとする水性シーディドマイクロエマルジョン重合方法を採用することにより、上記目的を達成することができることを見出してなされたものである。このマイクロエマルジョンの粒子の平均直径は1〜100nm (0.001〜0.1 μm) 、好ましくは1〜80nm(0.001 〜0.08μm) 、さらに好ましくは5〜50nm(0.001 〜0.05μm) である。
【0010】
こうして、本発明によれば、水蒸気を透過させるが水を透過させない特性を有している加湿器用加湿膜であって、多孔質高分子基材の骨格が疎水性及び疎油性を有するテトラフルオロエチレン共重合体で被覆され、前記テトラフルオロエチレン共重合体が、テトラフルオロエチレンと、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、ビニル、アリルおよびアルケンから選択されるモノマーとの共重合体であり、かつ連続気孔を有していることを特徴とする加湿器用加湿膜が提供される。本発明のもう1つの側面によれば、多孔質基材に、疎水性及び疎油性を有するテトラフルオロエチレン共重合体の粒子が存在しかつその粒子が0.01〜0.5μmの平均粒径を有する水性ラテックスを塗布した後、存在する水及び界面活性剤を除去してから、ポリマーを溶融させて基材骨格を被覆する工程を含むことを特徴とする加湿器用加湿膜の製法も提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる多孔質高分子基材は、基材の表面から裏面にかけて連通する多数の微細孔を有する高分子材料からなる。具体的には、耐熱性、耐腐食性を有するものが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂の多孔質体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル等の多孔質体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂の多孔質体等が使用出来るが、なかでもポリテトラフルオロエチレンを延伸処理して得られる多孔質材料は、フィブリルと呼ばれる小繊維とノードと呼ばれる結節から構成された独特の連通多孔質構造を有しており、本発明で用いる有機ポリマーの微細粒子を安定してその構造体に取り込むことが出来、撥水性、耐熱性、耐薬品性にも優れており、好ましい材料といえる。
【0012】
多孔質高分子材料の孔径としては、本発明の有機ポリマーの粒子が入り込むことが必要であり、通常0.01〜10μm、特に0.1〜1μmの平均孔径のものが好ましい。この孔径が大きすぎると、耐水圧の低下をもたらし良くない。空孔率は、5〜95%、特に60〜95%のものが好ましい。空孔率が小さすぎると透湿度が小さくなって加湿効率が低下する。また大きすぎると多孔質材料の強度が低下する。厚みについては5〜1000μm、特に30〜100μmのものが好ましく、厚すぎると、透湿度が低下し、逆にあまり薄いものでは強度的に問題がある。
【0013】
本発明の多孔質高分子基材の骨格を被覆するテトラフルオロエチレン共重合体は、疎水性及び疎油性を有するテトラフルオロエチレンを含む共重合体であり、具体的には、テトラフルオロエチレンと、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、ビニル、アリルおよびアルケンから選択されるモノマーとの2元又は3元以上の共重合体であり、特に、フルオロアクリレート/テトラフルオロエチレン共重合体、フルオロアクリレート/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体が好適である。このテトラフルオロエチレン共重合体は、疎水性、疎油性を有するので耐汚染性を有し、基材である多孔質高分子材料の撥水性および撥油性を増大させる働きがあり、かつ耐熱性、耐薬品性の点で優れているだけでなく、基材との密着性、特に基材として多孔質PTFEを用いた場合、基材と強固に結合することが判明した。
【0014】
テトラフルオロエチレンと共重合される代表的な他のモノマーとして次のものを挙げることができる。
アクリレート:アルキルアクリレート、フルオロアルキルアクリレート、クロロアルキルアクリレート、ブロモアルキルアクリレートなどで、炭素原子が25未満のもの。
【0015】
メタクリレート:アルキルメタクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、クロロアルキルメタクリレート、ブロモアルキルメタクリレートなどで、炭素原子が25未満のもの。
スチレン:スチレン、メチルスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなど。
【0016】
アクリロニトリル:アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど。
ビニル:酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテルなど。
アリル化合物:酢酸アリル、塩化アリル、臭化アリルなど。
アルケン:炭化水素、フルオロカーボン、クロロカーボン、ブロモカーボンで炭素原子が4以上20未満のもの、たとえばヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン、フルオロヘキセン、フルオロヘプテン、フルオロオクテン、フルオロデセンなど。
【0017】
具体的には、先に特願平06─237689号に開示した下記フルオロポリマーはいずれも共重合可能な不飽和基を含んでおり、好適な共重合モノマーである。式
【0018】
【化1】
Figure 0003654693
【0019】
(式中、nは3〜13の基数であり、RはH又はCH3 である)
のフルオロアルキルアクリレート及びフルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルアリールウレタン、例えば
【0020】
【化2】
Figure 0003654693
【0021】
フルオロアルキルアリルウレタン、例えば
【0022】
【化3】
Figure 0003654693
【0023】
フルオロアルキルマレイン酸エステル、例えば
【0024】
【化4】
Figure 0003654693
【0025】
フルオロアルキルウレタンアクリレート、フルオロアルキルアミド、フルオロアルキルスルホアミドアクリレート、などのモノマーを重合して得られるものが好適である。フッ素化アルキル部分は6〜16個の炭素原子を有することが好ましく、6〜12個の炭素原子を有することが最も好ましい。
さらに、共重合させる単量体としては、ポリテトラフルオロエチレン以外の、フルオロオレフィン、フルオロビニルエーテルなどの含フッ素モノマー、例えばパーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、あるいはカルボン酸基やスルホン酸基のような官能基を有するパーフルオロビニルエーテルなど、さらにフッ化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなども使用可能である。
【0026】
このようなテトラフルオロエチレン共重合体を、多孔質高分子基材に被覆するために、テトラフルオロエチレン共重合体のマイクロエマルジョンを作成する必要がある。これは水性シーディドマイクロエマルジョン重合方法により可能になり、この方法は次の工程を含む。
(1)重合可能不飽和モノマー液の水中マイクロエマルジョンを種(シード)として形成し;
(2)シーディドモノマーマイクロエマルジョンにラジカル重合開始剤を加えて重合反応を開始させてラジカル重合させ;
(3)テトラフルオロエチレン、またはテトラフルオロエチレンと他のモノマーを、工程(2)のマイクロエマルジョン重合の前または後に、気相から、マイクロエマルジョン系に導入する。
【0027】
テトラフルオロエチレンおよび他の気体状モノマーは重合に関与して、ポリマーの小さい粒子を形成する。
工程(1)で使用する液状の重合可能モノマーは、液体のラジカル重合可能な不飽和有機モノマーであればよく、ふっ素化されたものが好ましい。これは、重合温度が0〜150 ℃、好ましくは40〜100 ℃において水中油型マイクロエマルジョンを形成する。この液状重合可能モノマーのマイクロエマルジョンは、平均粒径が、1〜100nm (0.001〜0.1 μm)、好ましくは1〜80nm(0.001 〜0.08μm) 、最も好ましくは1〜50nmである。
【0028】
工程(2)において、マイクロエマルジョン重合を開始する前に、気体状モノマーを反応器の水性相に導入するとき、最終粒子は一般にランダムコポリマーを含む。他方、工程(1)からの液体モノマーを重合させた後に、気体状モノマーを導入するときは、気相から水性相に移された気体状モノマーが重合して、シーディドポリマー粒子の外面に沈着して、コアー/シェル型粒子構造を生じる。コアー/シェル型粒子は0.1 〜99重量%のポリマー・コアーと、1〜99.9重量%のポリマー・シェルを有し、シェルは気相からのモノマー単位、好ましくはテトラフルオロエチレン単位を含む。
【0029】
1つの面において、この方法は次の工程を含む。
(a)圧力反応器内で、マイクロエマルジョンを自発的に形成するのに十分なモノマー対表面界性剤の比および温度において、液体の重合可能エチレン型不飽和有機モノマーを、水中の表面活性剤と混合し、
(b)反応器に、気体のエチレン型不飽和ふっ素化有機モノマーを導入し、かつ(c)反応器に、ラジカル重合開始剤を加えてモノマーの反応を開始させる。
【0030】
1つの変型として、工程(c)を工程(b)の前に行い、他の変型として、工程(b)を、工程(c)の前に行う。
通常のフッ素化モノマーの水性エマルジョン重合で得られる重合物の粒子は、0.1〜10μm程度の粒径となり、サブミクロンの多孔構造を持つ基材を均一に被覆することは困難であるが、本発明では、有機ポリマーを平均粒径が0.01〜0.5μmの微細な粒子とすることにより、多孔質高分子材料の微細構造によく入り込み、この骨格組織に均一な厚みの被覆を形成するようにすることが出来る。
【0031】
液体モノマーはフルオロアクリレートまたはフルオロメタクリレートが好ましい。
成分の使用量は、モノマーが0.1 〜40重量%、好ましくは0.1 〜20重量%、表面活性剤が0.1 〜40重量%、好ましくは0.1 〜25重量%、残部は水である。
前記シーディドマイクロエマルジョンの重合を開始するために、モノマーマイクロエマルジョンの温度は、0〜150 ℃、好ましくは40〜100 ℃に調節する。重合開始剤は水溶性または油溶性のフリーラジカル重合開始剤、たとえば、過硫酸塩、アゾ開始剤、過酸化物、または紫外線もしくはガンマ線賦活によって発生する光開始剤である。誘導開始(initiation)も使用することができる。存在する開始剤の量は、液体モノマー含量に基づいて0.01〜20重量%とすることができる。助溶剤、たとえばアルコール、アミンまたは他の両親媒性分子、あるいは塩も、マイクロエマルジョンの形成を容易にするために使用することができる。開始剤の導入によって、モノマーの重合が開始する。
【0032】
気体モノマーは、開始剤の導入の前または後に導入することができる。もし前であれば、液体モノマーが重合し、気体モノマーおよび生成するポリマー生成物は多くの形態の粒子を含む。たとえば、粒子は液体モノマーのホモポリマー、または気体モノマーのホモポリマー、またはこれらの単位を有するランダム・コポリマーを、各モノマーの相対的な重合速度に依存して含むことができる。
【0033】
他方、もし液体モノマーの重合が開始した後に気体モノマーを導入すれば、重合可能な粒子はコアー/シェルの形態となる。コアーは液体モノマーのホモポリマーからなる。もし気体モノマーを加える前に、殆どすべての液体モノマーが重合するときは、気体ホモポリマーのシェルがコアーの周りに形成する。しかし、気体モノマーを加えるときに、すべての液体モノマーが重合していない場合は、液体および気体のモノマーのコポリマーが、コアーの周りにシェルを形成する。
【0034】
好ましくは、気体モノマーは、ラジカル重合開始剤によって重合可能な不飽和モノマーであり、少なくともテトラフルオロエチレンを含むが、他の気体モノマーは、ハロゲンを含むかまたは含まないオレフインとすることができる。たとえば、ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキルエチレン、クロロトリフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびブタジエンまたは、これらのいずれかの組み合わせである。気体モノマーはテトラフルオロエチレンまたはこれを含む混合物であるが、テトラフルオロエチレンと組み合わせるモノマーはふっ素化されたものが好ましい。勿論、気体モノマーは、使用する液体モノマーと同一でないであろう。
【0035】
液相と気相を十分に混合することが物質移動を促進するために重要である。重合温度は0〜150 ℃、好ましくは40〜100 ℃とすることができる。重合は加圧容器内で行い、重合圧力は200 〜200,000 kPa 、好ましくは200 〜20,000kPa である。重合は1〜500 分とするか、または少なくとも、液体モノマーの50%以上がポリマーに変換するまで行う。気相モノマーの使用量は、反応器内の圧力を測定して決定することができる。
【0036】
得られるポリマー粒子のラテックスは、平均粒径が1〜100nm 、好ましくは1〜80nm、もっとも好ましくは1〜50nmであり、ポリマーの平均分子量は、10,000を超え、好ましくは50,000を超える。小さい粒子のポリマー系は、大きな粒子を含む系より、多くの利点を有する。この系はコロイド分散液であって、通常は濁っておらず透明である。小さい粒子は、被膜の厚さを均一にし、かつ多孔性基材の良好な気体透過性を維持する。ポリマー鎖中のテトラフルオロエチレンまたは他のふっ素化モノマー単位は、ポリマーを適用する基材の熱安定性、疎水性および疎油性を増加させるのに有用である。
【0037】
こうして形成されたポリマーは、基材物質を分散液に浸漬するか、または基材に分散液を塗布するか、または分散液を基材に吹付けて、コロイド状分散液から直接適用することができる。
基材に被覆を行なった後、残っているすべての水、界面活性剤又は重合開始剤は熱風、赤外線、熱ロールなどを用いた加熱(例えば、150〜250℃)、水蒸気ストリッピング、真空蒸発など任意の便利な方法で除去することができる。
【0038】
さらに、多孔性高分子基材の孔を形成する内部構造中に残ったテトラフルオロエチレン共重合体粒子を溶融させることにより、多孔性基材の骨格をテトラフルオロエチレン共重合体で被覆することができる。上記水等の除去とこの溶融は同一処理で行なうことができる。
本発明では、多孔質高分子基材の骨格をテトラフルオロエチレン共重合体で被覆するとき、基材である多孔質高分子材料の連続した孔構造を維持するように調整する。従来の水性エマルジョン重合で得られるフッ素化ポリマーでは、その粒子の大きさから、この孔構造を閉塞することになるが、上記したように、本発明で用いるテトラフルオロエチレン共重合体は、平均粒径が0.01〜0.5μmの微細な粒子であるため、たとえ孔径が1μm 未満、さらには0.5μm 未満であっても、連続した孔構造の維持が可能であり、多孔質高分子材料の空孔率を著しく低下させることがない。そして、これにより、本発明の加湿膜は、撥水性、耐汚染性を有するだけでなく、大きい透湿度を保持することが出来る。
【0039】
こうして、本発明により提供される加湿膜は、多孔性高分子基材、好適には延伸多孔質PTFEの骨格を疎水性かつ疎油性のテトラフルオロエチレン共重合体で被覆しかつ連続気孔を維持しているので、多孔性高分子基材に耐汚染性を付与しながらなおかつその多孔膜の高い透湿性を保持することが可能である。
このような本発明の加湿膜は、シート状で、種々の形態で用いることが出来る。例えば、親水性を有する、不織布、織布、編布等の布帛の両側に本発明の加湿膜を積層することにより、一体三層構造の加湿用シートを形成することが出来る。この加湿用シートは、空気流路確保のために一定間隔をあけて、適宜の枚数が設けられる。この場合、加湿用水は、中間層の布帛により保持され、水蒸気は、両側に積層された加湿膜を介して、空気中に放出される。あるいは、本発明のシート状加湿膜を2枚重ね、端部を閉鎖して袋状とし、この内部に加湿用水を供給して袋状加湿膜としてもよい。この袋状加湿膜は、空気流路確保のために一定の間隔をおいて渦巻状に巻かれたり、プリーツ状に折り畳まれたりして設けられる。この場合も、加湿用水は、2枚の加湿膜を介して水蒸気として外部に放出される。
【0040】
また、本発明の加湿膜は、チューブ状に形成して用いることも出来る。例えば、押出機等によりチューブ状に成型された高分子材料を延伸処理等により多孔質化して基材とし、これに前記テトラフルオロエチレン共重合体の粒子を被覆することにより、本発明のチューブ状加湿膜を得ることが出来る。あるいは、テープ状の多孔質高分子材料を螺旋状にラッピングしたり、寿司巻き状にラッピングして、チューブ状に成形して基材とし、成形の前または後に前記有機ポリマーをこの基材の骨格組織に被覆するようにしてもよい。このチューブ状加湿膜は、空気流路または加湿用水の流路確保のために所定の間隔をおいて複数本設けられる。この場合、このチューブ状加湿膜は、その内部または外部に加湿用水を供給し、その反対側に空気を供給することにより、同様に加湿膜を介して水蒸気を移動させる。
【0041】
本発明の加湿膜には、任意に、織布、不織布、編布等の布帛を補強材として、加湿膜に積層することができる。これにより、加湿膜の強度の向上、加湿器製作時の加湿膜の取扱い性の向上等をはかることが出来る。
【0042】
【実施例】
以下の実施例において耐水圧、通気性、および透湿性を下記方法で測定した。
耐水圧
JIS L 1092 5.1項のB法に従った。また、切削油の耐圧試験もこれに準じた。
【0043】
通気性(ガーレー数)
JIS L 1096 6.27項のB法に準拠し、王研式透気度試験機により測定した。
透湿性
JIS L 1099 4.2項のB法(酢酸カリウム法)により測定した。
【0044】
(水性ラテックス調製例1)
テトラフルオロエチレン/フルオロアクリレート共重合体
2lの反応器に脱イオン水1000g、フルオロアクリレート・モノマー即ち
【0045】
【化5】
Figure 0003654693
【0046】
(Zonyl TA−N, duPont)50gおよびペルフルオロオクタン酸アンモニウム(Fluororad FC−143, 3M)90gを加えた。混合物は50℃において透明なマイクロエマルジョンであり、これを約1200rpm で攪拌した。次に反応器を真空とし、テトラフルオロエチレン・ガスで3回パージして、混合物の酸素含量を30ppm 未満とした。次に混合物の温度を上げて約75℃に保持し、テトラフルオロエチレン・ガスを反応器に導入して、反応器内の圧力を約1500kPa とした。水40gに溶解した過硫酸アンモニウム開始剤0.4 gを反応器にポンプ送入して反応を開始させた。反応は約42分間継続して終了させた。反応の終わりに、反応器内の圧力は約200kPaとなり、これは重合反応中に使用されたテトラフルオロエチレンの量が十分であることを示した。
【0047】
上記反応により形成されたコロイド状混合物は透明な分散液であり、固体ポリマー含量は約11.9重量%であった。ポリマーの平均粒径は約26nm(0.26μm) であった。熱重量分析の結果、ポリマーはフルオロアクリレートに富む部分が約40重量%、テトラフルオロエチレンに富む部分が約60重量%であった。これは、ポリマーの40重量%が温度250 〜460 ℃で分解し、この温度はポリフルオロアクリレートの典型的な分解温度であり、他方、ポリマーの60重量%が温度460 〜640 ℃で分解し、この温度はポリテトラフルオロエチレンの典型的な分解温度であることによる。示差走査熱量計でポリマーを分析した結果、3つの主要な吸熱ピークが138 ℃、219 ℃および324 ℃に現れた。
【0048】
(水性ラテックス調製例2)
テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンフルオロアクリレート/共重合体
2lの反応器に、脱イオン水1000g、フルオロアクリレート(Zonyl TA−N, duPont)70g、およびペルフルオロオクタン酸アンモニウム(Fluororad FC−143, 3M) 130gを加えた。混合物は50℃において透明なマイクロエマルジョンであり、これを約1200rpm で攪拌した。次に反応器を真空とし、テトラフルオロエチレン・ガスで3回パージして、混合物の酸素含量を30ppm 未満とした。次に混合物の温度を上げて、約90℃に保持した。反応器にテトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン・ガス混合物を導入して、反応器内の圧力を約1500kPa とした。このときテトラフルオロエチレン対ヘキサフルオロエチレンのモル比は約70:30であった。次に水40gに溶解した過硫酸アンモニウム0.4 gを反応器にポンプ送入して反応を開始させた。反応は約234 分間継続して、終了させた。反応の終わりに、反応器の圧力は約600kPaであった。
【0049】
上記反応で生成したコロイド混合物は、透明な分散液であり、固体ポリマーの含量は約8.4 重量%であった。ポリマーの平均粒径は約45nm(0.045 μm) であった。熱重量分析の結果、ポリマー粒子が約70重量%のフルオロアクリレートに富む部分と、約30重量%のテトラフルオロエチレンに富む部分を含むことを示した。これは、ポリフルオロアクリレートの典型的な分解温度である温度323 〜460 ℃で分解したポリマーが70重量%であり、ポリテトラフルオロエチレンの典型的な分解温度である温度460 〜710 ℃で分解したポリマーが30重量%であったことに基づく。示差走査熱量分析の結果、ポリマーは3つの主要な吸熱ピーク124 ℃, 235 ℃および305 ℃を示した。
【0050】
(水性ラテックス調製例3)
テトラフルオロエチレン/フルオロアクリレート共重合体(コア/シェル構造)
2lの反応器に、脱イオン水1000g、フルオロアクリレート(Zonyl TA−N, duPont)4g、およびペルフルオロオクタン酸アンモニウム(Fluororad FC−143, 3M)12gを加えた。この混合物は、50℃において透明なマイクロエマルジョンであり、攪拌速度約1200rpm で攪拌した。次に反応器を真空とし、テトラフルオロエチレン・ ガスで3回パージして、混合物中の酸素含量を30ppm 未満とした。次に混合物の温度を上げて約85℃に保持した。次に水40gに溶解した過硫酸アンモニウム0.2 gを反応器にポンプ送入して反応を開始させた。反応は約60分間継続した。大部分のフルオロアクリレートモノマーは重合して、極小のシードポリマー粒子を形成した。次にテトラフルオロエチレンを反応器に導入し、反応器内の圧力を約1800kPa とした。反応はテトラフルオロエチレンを重合に関与させながら継続し、反応器に絶えずテトラフルオロエチレンを供給して圧力を約1800kPa に保持した。テトラフルオロエチレンの反応時間は約45分で反応を終了させた。
【0051】
上記反応から生成したコロイド状混合物は半透明な(translucent semi-clear)分散液であり、固体ポリマーの含量は約10重量%であった。ポリマーの平均粒径は約76nm(0.076 μm) であり、ポリマー粒子はコアー/シェル構造を有して、コアーはポリフルオロアクリレートで、シェルはポリテトラフルオロエチレンであった。熱重量分析の結果、ポリマー粒子は、フルオロアクリレートに富む部分が約2重量%、テトラフルオロエチレンに富む部分が98重量%であった。これはポリマーの2重量%がポリフルオロアクリレートの典型的な分解温度である300 〜460 ℃で分解し、かつポリマーの98重量%がポリテトラフルオロエチレンの典型的な分解温度である460 〜760 ℃で分解したことに基づく。ポリマーを示差走査熱量分析した結果、主要な吸熱反応のピークは330 ℃を示した。
【0052】
(実施例1)
PTFE多孔質膜(厚さ50μm、空孔率80%、平均孔径0.2μm、ガーレー数10秒)を水性ラテックス調製例2で調製した水性ラテックスを蒸留水で3倍に希釈したものに浸漬し、余剰液体を滴下除去し、225℃のオーブン中に3分間置いた。この処理で水とフッ素化界面活性剤が除去されると共に、フッ素化ポリマーが溶融し流動した。得られた膜のガーレー数を測定すると11秒であり、連続気孔が維持していることが確認された。
【0053】
この処理膜の耐切削油性を上水道管用切削油(ミヤガワ50W)を用いた耐圧試験で評価した。また、同じく上記処理膜でたて10cm×よこ10cmの袋を作成し、袋中に水道水を連続的に供給しながら、60℃乾燥熱風を吹付け、袋内部の水を、膜を介して250cc/cm2 の量(50l)蒸発させた後、水中含有物が堆積した部分の膜の耐水性試験を実施した。
【0054】
比較のために、上記有機ポリマー被覆処理を行なわない上記と同じPTFE多孔質膜について、上記と同じ評価試験を行なった。
結果を下記表に示す。表にはこれらの膜の透湿性を測定した値も示す。
Figure 0003654693
(実施例2)
PTFE多孔体(厚さ50μm、空孔率80%、平均孔径0.2μm、ガーレー数10秒 耐水圧4kg/cm2 )の上にポリエステル製ニット(200デニール、200g/m2 )をラミネート加工し加湿膜としたもの(▲1▼)と、そのPTFE多孔体面上に親水性ポリウレタン(ハイボールFHP3000、W.R.Grace & Co. 製)を30μm厚さでコーティングして加湿膜としたもの(▲2▼)を作った。さらに▲1▼を水性ラテックス調製剤(調製例2)3倍希釈品で撥水処理し、加湿膜としたもの(▲3▼)を作り、それぞれの膜を、実施例1と同様の試験を行ない比較した。
【0055】
結果は下の通りであり、これからもわかる様に▲3▼の加湿膜は加湿膜としてより適したものである。
Figure 0003654693
(実施例3)
PTFE多孔体(厚さ50μm、空孔率80%、平均孔径0.2μm)の上にPP不織布(厚さ1.0μm、目付125g/m2 )を熱融着し、それを巾25mmにスリットした後、スパイラル状にラッピング加工し(熱処理により重合部の不織布を熱融着させた)、内径12mm、肉厚0.5mmの加湿用チューブ(▲4▼)を作った。この後水性ラテックス調整剤(調製例2)の蒸留水による3倍希釈品を多孔質部分に塗布、含浸し、225℃で乾燥し、チューブ状加湿膜(▲5▼)を作成した。このチューブ状加湿膜について実施例1に準じた試験を行ないその結果を下表に示した。この結果より、形状を変えても最適な加湿膜が得られた。
【0056】
Figure 0003654693
(実施例4)
実施例1で作製したフッ素化有機ポリマ処理PTFE膜の片面に、グラビアパターンロール(開孔率70%に設定)を用いて接着剤(ウレタン樹脂)を塗布し、この面にアクリルの不織布(厚さ3mm、目付50g/m)を合わせ、圧力3kg/cm2 、速度5m/分の条件でロール圧着を行った。その後、アクリル不織布の他の面にも同じ方法、条件で、同じ有機ポリマ処理PTFE膜を圧着した。この様に連続して3層一体構造とした加湿器用シートの透湿度は51000g/m2 ・24hrであった。
【0057】
(実施例5)
図1を参照すると、実施例4の如く調製した加湿用シート11は、幅46mm、長さ990mm、厚さ2.0mmで、その周縁部12がシールされている。また、一端部近くに直径6mmの注水口13が設けられている。このような加湿用シート25枚と、幅45mm、長さ945mm、ピッチ6.2mm、高さ2.5mmのポリエチレン製波板14の26枚、及び幅46mm、長さ46mm、厚さ3.0mmの塩化ビニル樹脂板15の26枚とを積層し、図1中の斜線部16に塩化ビニル系接着剤を塗布して接着した。樹脂板15にも注水口13を設けている。従って、注水口は最上段の樹脂板15から最下段の加湿用シート11までの貫通口を形成し、最下段の樹脂板15で閉鎖されている。
【0058】
図2にこうして積層した加湿用シート20を模式的に示す。
図3は、この積層品を取付枠(外寸1000mm×150mm×50mmの溶融亜鉛メッキ鋼板製)21中に収容し、かつチューブコネクター(外径8mm、内径6mm)22を取付け、加湿ユニットを完成した。
完成した加湿ユニットに上水を供給し、45℃で湿度20%の空気を風速1.5m/sec で送風して試験した。このとき加湿能力として1.5リットル/時が記録された。空気の圧力損失は7Pa以下であった。
【0059】
【発明の効果】
以上の様に、本発明によれば、切削油等の油性成分や、加湿用水中の有機性、無機性の不純物等に対して耐汚染性を有し、白粉公害の発生しないクリーンな加湿空気を供給する加湿膜を提供することが出来る。
本発明の加湿膜は、その構造が連続多孔質構造を維持していることから加湿器運転時に於ける加湿用水の導入も容易であり、加湿能力も優れたものである。しかも、本発明の加湿膜は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンをはじめとする多孔質高分子基材の骨格をテトラフルオロエチレン共重合体で被覆することにより、テトラフルオロエチレン共重合体は、多孔質高分子基材の骨格に強固に結合し、かつ撥水性、撥油性、耐汚染性と共に、耐熱性、耐薬品性その他の優れた特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加湿ユニット用の加湿用シートを積層する様子を示す。
【図2】図1の積層品を示す。
【図3】加湿ユニットの例を示す。
【符号の説明】
11…加湿用シート
12…注水口
14…スペーサ
15…樹脂板
21…取付枠

Claims (6)

  1. 水蒸気を透過させるが水を透過させない特性を有している加湿器用加湿膜であって、多孔質高分子基材の骨格が疎水性及び疎油性を有するテトラフルオロエチレン共重合体で被覆され、前記テトラフルオロエチレン共重合体が、テトラフルオロエチレンと、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、ビニル、アリルおよびアルケンから選択されるモノマーとの共重合体であり、かつ連続気孔を有していることを特徴とする加湿器用加湿膜。
  2. 前記テトラフルオロエチレン共重合体がフルオロアクリレート、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンの共重合体である請求項1記載の加湿膜。
  3. 前記多孔質高分子基材が延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンである請求項1又は2記載の加湿膜。
  4. 前記多孔質高分子基材の平均孔径が0.1〜1μm 、空孔率が60〜90%である請求項1,2又は3記載の加湿膜。
  5. 前記加湿膜に補強材が積層されている請求項1〜のいずれか1項に記載の加湿膜。
  6. 多孔質高分子基材に、テトラフルオロエチレンと、アクリレート、メタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、ビニル、アリルおよびアルケンから選択されるモノマーとの共重合体である疎水性及び疎油性を有するテトラフルオロエチレン共重合体の粒子が存在しかつその粒子が0.01〜0.5μmの平均粒径を有する水性ラテックスを塗布した後、存在する水及び界面活性剤を除去してから、前記共重合体を溶融させて基材骨格を被覆しかつ前記多孔質高分子基材に連続気孔を維持させる工程を含むことを特徴とする加湿器用加湿膜の製法。
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