JP3656898B2 - 平面表示装置用Ag合金系反射膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(以下、FED)、エレクトロルミネッセンス(以下、EL)等の平面表示装置において、高い光学反射率と耐食性が要求される平面表示装置用Ag合金系反射膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置は、バックライトとして光源(ランプ)を内蔵し背面から照射することで高い表示品質を有する透過型液晶ディスプレイが一般的であった。しかし、透過型液晶ディスプレイはバックライトの消費電力が大きく、電池駆動の携帯情報端末としては使用時間が短くなると言う問題があった。このため、近年、外光を効率よく利用しバックライトを基本的に使用しない反射型液晶ディスプレイの開発が行われている。このような反射型ディスプレイに用いる反射膜には、金属の中でも可視光域の反射率の高い元素であるAlまたはAl合金薄膜が多く用いられてきた。
【0003】
また、近年、液晶ディスプレイの表示品質向上のため、その反射膜にはペーパーホワイトと呼ばれる高い反射と可視光域でフラットな反射特性が求められている。このため、Alより反射率の高いAgが注目されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のAl系反射膜の場合、液晶ディスプレイの製造工程中の加熱工程でヒロック等が発生したり、また粒成長により反射率が低下する問題がある。このため、上記ヒロックや粒成長の抑制のために、Alに遷移金属であるTi、Ta等の耐食性向上元素を添加するAl合金が用いられている。このAl合金により液晶ディスプレイ製造時の反射率低減は抑制できる。しかし、素材の反射率そのものが低下してしまう問題がある。
【0005】
一方、反射率の高いAg反射膜の場合、液晶ディスプレイ用の基板であるガラスやプラスチックに対しての密着性が低く、プロセス中に剥がれが生じるという問題がある。さらに、この密着性が低いことに起因し、ディスプレイの製造時の加熱工程等で膜が凝集し大幅に反射率が低下すると共に、抵抗値が増加してしまう。また、耐食性が低く、基板上に成膜した後、1日程度大気に放置しただけで変色し、黄色味を帯びた反射特性となる。そして、ディスプレイの製造時に使用する薬液により腐食され、大幅に反射率が低下してしまう問題があった。
【0006】
本発明の目的は、例えば反射型液晶ディスプレイ、FED等のような平面表示装置において要求される高い反射率とプロセス中での耐熱性、耐食性、そして基板への密着性を兼ね備えた平面表示装置用Ag合金系反射膜を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく、鋭意検討を行った結果、Agに、選択した元素を加えた反射膜とすることにより、本来Agの持つ高い反射率を低下させることなく耐熱性、耐食性を向上し、さらに基板への密着性も改善できることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyから選ばれる1種以上の元素を合計で0.2〜5at(原子)%、かつTi、V、Nb、Cr、Mo、Mnから選ばれる1種以上の元素を1〜10at%含み、残部Agおよび不可避的不純物からなる平面表示装置用Ag合金反射膜である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の平面表示装置用Ag合金系反射膜の最も重要な特徴は、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyから選ばれる1種以上の元素を0.2〜5at%含み、残部実質的にAgからなるところにある。
【0011】
通常、純Agを原料として反射膜を作製すると、膜としての反射率は高いものの、その反射膜を用いて製品(例えば液晶ディスプレイなど)を作製する際のプロセスにおいて反射率が低下してしまうという問題があることは、上述の通りである。そこで、本発明では、AgにCe、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyから選ばれる1種以上の元素を適量添加することにより、反射膜の反射率を低下させることなく、場合によっては純Agより反射率の向上が図れた反射膜とすることができる。
【0012】
また、例えば液晶ディスプレイ、有機ELといった製品の製造工程では、その反射膜を形成した後に何度かの加熱処理を伴う工程があり、その際の加熱工程でもAg反射膜は反射率が低下する。つまり、加熱による膜成長や凝集等が起こり膜表面はより凹凸のある形状となり、またボイドが発生する。そして、その加熱雰囲気によっては膜表面が変色し、これも反射率の低下する原因となる。この場合であっても、本発明の平面表示装置用Ag合金系反射膜は、Agに上述したCe、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyから選ばれる1種以上の元素を適量加えることにより、この加熱に伴う工程後でも高い反射率を維持する。
【0013】
上記本発明のCe、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyは、その添加・含有量を合計で0.2〜5at%とした。これは、0.2at%未満ではその含有による耐熱性の改善効果がなく、5at%を超えると十分な反射率を維持・確保できないためである。さらに高い耐熱性と95%以上の高い反射率を得るには1〜4at%の含有が望ましい。
【0014】
本発明の上記元素種の含有による反射率の維持または向上の理由は明確ではない。しかし、融点の比較的低いAgの場合、本発明の選定したCe、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyの添加元素はAgと化合物を形成し易く、粒界に析出することから、これがAg粒界腐食による酸化を防ぎ耐食性を向上させ、高い反射率を維持できるものと考えられる。
【0015】
また、粒界にAgの化合物が析出することにより加熱工程での粒成長や凝集が抑制されるため、耐熱性が向上する。そして、微細で平滑な表面の膜形態となるために反射率の低下を抑制できる。さらに、これら元素種の添加により膜応力が低減される効果と、凝集抑制の両方の効果により、密着性が改善されると考えられる。
【0016】
通常、スパッタ膜においては、その添加される元素は基地中に過飽和で固溶する。つまり、結晶格子間に添加元素が過飽和に侵入することから、その格子が乱れ、自由電子の動きが阻害されるために反射率が低下する。しかし、添加元素が粒界析出物を形成する本発明の場合、そのAg粒内はAg単独となり自由電子の動きも阻害されず、高い反射率を維持できる。
【0017】
本発明の平面表示装置用Ag合金系反射膜は、上記元素種の1種以上を必須として含んだ上で、さらには、Ti、V、Nb、Cr、Mo、Mnから選ばれる1種以上の元素を1〜10at%含んでいてもよい。これらの元素が含まれることにより、さらに耐食性が向上し、反射率の低下を抑制する。
【0018】
上述の通り、本発明のCe、Nd、Sm、Gd、Tb、DyはAgと化合物を形成し易く、その粒界に析出することで粒界腐食を抑制し、これが耐食性を向上させるものと考えられるが、例えばフラットディスプレイの製造工程において使用される酸等の薬液に対する耐食性を確保するには十分でない場合がある。本発明の選定するTi、V、Nb、Cr、Mo、Mnは強い耐酸性を有し、また上記Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyとは固溶し難いため、膜表面や粒界に析出し、Ag合金膜全体を保護するとして、これが大幅に耐食性を向上するものと考えられる。
【0019】
加えて、Ti、V、Nb、Cr、Mo、Mnはガラスやプラスティック基板との密着性が良く、本発明の平面表示装置用Ag合金系反射膜に添加することで基板との密着性を大幅に向上することが可能となる。
【0020】
Ti、V、Nb、Cr、Mo、Mnから選ばれる1種以上の元素の含有量は、1at%未満では耐食性改善効果が不十分であり、10at%を超えると耐食性は優れるが反射率が大幅に低下してしまう。このため、これらの元素の含有量は1〜10at%とすることが望ましい。好ましくは、1〜5at%である。
【0021】
本発明の平面表示装置用Ag合金系反射膜は、安定した反射率を得るために膜厚としては50〜300nmとすることが好ましい。50nm未満であると、膜の表面形態が変化し易く、さらに例えば平面表示装置に用いた場合に光が透過するために、反射率が低下する。一方、300nmを超える膜厚であると、反射率が大きく変化せず、膜を形成する際に時間が掛かる。
【0022】
また、本発明の平面表示装置用Ag合金系反射膜を形成する場合、例えばターゲットを用いたスパッタリングで形成する際に用いる基板として、ガラス基板、Siウェハーを用いることが好適ではあるが、スパッタリングで薄膜を形成できるものであればよく、例えば樹脂基板、金属基板でもよい。
【0023】
【実施例】
(実施例1)
Ag合金系反射膜の目標組成と実質的に同一となるようにターゲット材を作製し、機械加工により直径100mm、厚さ5mmのターゲットを作製した。そのターゲットを用いたスパッタリングにより、ガラス基板またはSiウェハー上に膜厚200nmのAg合金系反射膜を形成し、光学反射率計を用いてその反射率を測定した。
【0024】
さらに、所定製品としての製造工程を経た後での反射率を評価するために、上記作製したAg合金系反射膜を温度250℃の窒素ガス雰囲気で加熱処理後、再度反射率を測定した。その熱処理による反射率の変化も併せ、測定結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
純Ag膜(No.1)は、成膜時にて99%の反射率を有するが、加熱処理にて大幅に反射率が低下している。一方、AgにCe、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyから選ばれる1種以上の元素を含むAg合金膜は熱処理後の反射率の低下が抑制されており、その効果は0.2at%以上の添加量で明確となっている。しかし、その添加量が増加すると熱処理後の反射率の低下こそ少ないが、成膜時の反射率が低下し、5at%を超えると高い反射率が得難くなる。このため、本発明の上記含有量は合計で0.2〜5at%とする。また、95%以上の反射率を安定して得るに、その含有量は0.5〜3at%が望ましい。
【0027】
(実施例2)
形成した所定の組成を有するAg合金膜に実施例1と同条件の加熱処理を行ない、その反射率を測定した。そして、さらに温度80℃、湿度90%の環境に24h放置した際の反射率を測定した。その環境試験による反射率の変化も併せ、測定結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
純Ag膜(No.33)は、上記の環境試験にて大幅に反射率が低下している。また、AgにTi、Mn等のみを添加したAg合金膜(No.43〜48)の場合、上記の環境試験による反射率の低下こそ少ないが、反射率そのものが低いことがわかる。それらに対し、本発明のAg合金膜は、環境試験による耐食性の評価の上でも反射率の低下が少なく、高い反射率を維持できることがわかる。
【0030】
(実施例3)
以下のプロセス試験により耐食性の評価を行なった。実施例2に同組成のAg合金膜を形成して作製・熱処理した基板上に、東京応化製OFPR−800レジストをスピンコートにより形成した。次にフォトマスクを用いて紫外線でレジストを露光後、有機アルカリ現像液NMD−3で現像し、レジストパターンを作製、希塩酸に30秒間浸漬した後に浸漬部の反射率を再度測定した。そのプロセス試験による反射率の変化も併せ、測定結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
純Ag膜(No.33)は、上記のプロセス試験にて大幅に反射率が低下している。また、AgにTi、Mn等のみを添加したAg合金膜(No.43〜48)の場合、上記のプロセス試験による反射率の低下こそ少ないが、反射率そのものが低いことは述べた通りである。それらに対し、Agに所定量の希土類元素:Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyを添加した本発明のAg合金膜は、プロセス試験による反射率の低下こそあるも、それであっても90%以上の反射率を維持している。そして、さらに所定量の遷移金属:Ti、V、Nb、Cr、Mo、Mnを加えた本発明のAg合金膜は、プロセス試験後にて高い反射率を維持できることがわかる。
【0033】
(実施例4)
次に膜の密着性を評価する。実施例2に同組成のAg合金膜を形成して作製した基板にて、その膜の基板との密着性を測定した。具体的には、膜表面にスコッチテープを貼り付け、斜め45°方向にテープを引き剥がした際に基板上に残った面積を20cm2あたりの面積率にて表わし、密着力として評価した。結果を表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
純Ag膜(No.33)に比して、Agに所定量のCe、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyを添加した本発明のAg合金膜は大幅に密着性が改善されている。そして、所定量のTi、V、Nb、Cr、Mo、Mnをも加えた本発明のAg合金膜では、さらに優れた密着性が得られていることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
本発明であれば、高い反射率と耐環境性、耐薬品性、そして基板との密着性を改善したAg合金系反射膜を得ることが可能である。よって、携帯情報端末等に用いられる低消費電力が要求される反射型液晶ディスプレイ等の平面表示装置に有用であり、産業上の価値は高い。
Claims (2)
- Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyから選ばれる1種以上の元素を合計で0.2〜5at%、かつTi、V、Nb、Cr、Mo、Mnから選ばれる1種以上の元素を1〜10at%含み、残部Agおよび不可避的不純物からなることを特徴とする平面表示装置用Ag合金反射膜。
- ガラス基板またはSiウェハー上に形成された請求項1に記載の平面表示装置用Ag合金反射膜。
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