JP3658097B2 - 磁性体付き樹脂成形体およびねじ駆動装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性体付き樹脂成形体の製造方法に係り、とくに脆性材料からなる筒状磁性体付きナットを用いたねじ駆動装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータを構成するナットとねじ軸との間で回転運動を直線運動に変換するものとして、図3に、その断面図を示すねじ駆動装置がある(実開平5−96605号公報)。図3において、1はケース、2は樹脂製のナットであり、ナット2の外周面に筒状磁性体5が一体的に取り付けられ、ケース1の内周面に固定子6が取付けられ、この両者によりナット2を回転駆動するモータ4を構成している。ナット2の両端部の外周面に、ケース1の内面とすベリ接触するラジアル軸受面7、7が形成されている。また、ナット2の中央部分に設けた段差の両端面には、ケース1の内側端面とすべり接触するスラスト軸受面8、8が形成されている。ナット2の内径には、ねじ山9が形成され、このねじ山9に、ねじ軸3のねじの谷10が螺合している。
【0003】
従来、このようなねじ駆動装置における筒状磁性体付きナットは、図4に示す方法で製造されていた。
ここで、磁性体付き樹脂成形体の製造装置の主要部は、図4(a)に示すように 2つの射出成形金型11、12(以下、単に金型と称す)からなる。この両者を衝合することにより、磁性体付き樹脂成形体の外形状に適合したキャビティ14が形成され、このキャビティ14に溶融樹脂を供給するためのスプルー15がキャビティ14に連通して金型に設けられている。
磁性体付き樹脂成形体の製造に際しては、まず、図4(b)に示すように一方の金型12のキャビティ14を開放した状態で、そのキャビティ14に回転子などとなる筒状磁性体5を内嵌したのち他方の金型11を衝合する。
つぎに、図4(c)に示すようにその状態でスプルー15を通じて溶融した樹脂26を圧送してキャビティ14内の筒状磁性体5の中空内部に注入・充填する。この樹脂26を硬化させることにより、図4(d)に示すように筒状磁性体5の中空内部に樹脂26を一体成形した磁性体付き樹脂成形体27を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、磁性体は、一般的に脆性材料からなる焼結体であり、その組成材料によってはヤング率の大きいものがある。ヤング率の大きい磁性体を用いて磁性体付き樹脂成形体を製造する場合、以下のような問題があった。
すなわち、磁性体の中空内部に樹脂成形体を射出成形により一体成形した場合、溶融樹脂の射出圧力により磁性体の円周方向に引っ張り応力が発生する。一方、磁性体を金型のキャビティに容易に挿入するためには、磁性体の外周面とキャビティの内壁面との摺り合わせを必要とし、磁性体外周面とキャビティの内壁面との間に隙間(クリアランス)を形成する必要がある。その結果、前述した相互作用、つまり磁性体の引っ張り特性で許容できない隙間が存在すると、その磁性体が破損することがある。
【0005】
本発明は、そのような問題に対処するためになされたもので、簡便な手段により、磁性体の破損を未然に防止し得る磁性体付き樹脂成形体およびねじ駆動装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁性体付き樹脂成形体の製造方法は、成形型のキャビティ内に筒状磁性体を配置する工程と、この筒状磁性体の中空部に空隙部を有して樹脂体を挿入配置する工程と、該空隙部に樹脂体の溶融粘度より低い溶融粘度を有する固着樹脂を充填し硬化する工程とを有することを特徴とする。
また、前述の第 3の工程が筒状磁性体の機械的強度よりも低い成形圧力で固着樹脂を充填し硬化する工程であることを特徴とする。
さらに、固着樹脂の充填、硬化は、射出成形法によることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るねじ駆動装置の製造方法は、ナットの外周に脆性材料からなるモータの回転子を設ける工程と、上記ナットをねじ軸と螺合させるとともに、上記モータの固定子が取り付けられたケースに回転自在に組み込む工程とからなるねじ駆動装置の製造方法であって、ナットの外周にモータの回転子を設ける工程が、成形型のキャビティ内に筒状磁性体を配置する工程と、筒状磁性体の中空部に空隙部を有して樹脂製ナットを挿入配置する工程と、空隙部に樹脂製ナットの溶融粘度より低い溶融粘度を有する固着樹脂を充填し硬化する工程とを有することを特徴とする。また、前述の固着樹脂を充填し硬化する工程が筒状磁性体の機械的強度よりも低い成形圧力で固着樹脂を充填し硬化する工程であることを特徴とする。さらに、固着樹脂の充填、硬化は、射出成形法によることを特徴とする。ここで、樹脂製ナットの溶融粘度とは、射出成形するときのシリンダーまたはノズルの温度において測定した粘度であり、その測定方法はとくに限定されない。また、筒状磁性体の機械的強度とは、固着樹脂の充填圧力に抗する強度をいう。
【0008】
本発明に係る磁性体付き樹脂成形体およびねじ駆動装置の製造方法は、金型のキャビティー内壁面と回転子との間に隙間を有していても、回転子が破損することや表面に傷付きが発生することなく、かつ、ナットの射出成形で成形圧力を低く設定する必要がないため、高精度なねじ山を形成することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る磁性体付き樹脂成形体の製造方法において、成形方法としては注型成形、反応成形、射出成形等、とくに限定することなく使用できるが、スプルー、ランナー等を回収、再利用でき、製品を効率的に生産することのできる射出成形法が好ましい。その射出成形法を一例として磁性体付き樹脂成形体の製造工程を図1により説明する。
【0010】
まず、製造装置の主要部は、図1(a)に示すように 2つの成形型11、12からなり、両者を衝合することにより磁性体付き樹脂成形体の外形状に適合したキャビティ14が形成され、そのキャビティ14の中心部には成形体の軸穴になるコアピン13が配置され、また溶融樹脂をキャビティ14に供給するためのスプルー15がキャビティ14に連通している。なお、成形型は、ゴム型、樹脂型、金型等、とくに限定なく使用できるが、好ましくは耐久性のよい金型がよく、さらに好ましくは生産性に優れた射出成形金型がよい。
【0011】
まず、一方の成形型12のキャビティ14を開放した状態で、そのキャビティ14に筒状磁性体5およびナット2などの樹脂体を筒状の空隙部を有して挿入したのち、図1(b)に示すように他方の型11を衝合する。他方の型11には、キャビティ14と連通するようにスプルー15が形成されている。
図1(c)に示すようにこの状態でスプルー15を通じて固着樹脂16を圧送してナット2などの樹脂体の外周面と筒状磁性体5の内壁面との間の筒状空間に注入・充填する。
その後、注入・充填された固着樹脂16を硬化後、一方の型11から他方の型12を離脱させてその一方の型12のキャビティ14を開口させ、エジェクトピン等の適宜の手段により図1(d)に示す磁性体付き樹脂成形体27を離型させる。このようにすれば、筒状磁性体5の円周方向に引張応力等が発生しても、その応力が筒状磁性体5の引っ張り特性で許容できる範囲になるので磁性体5が破損することはない。その結果、ヤング率の大きい磁性体5でも使用することが可能となる。
ここで、筒状磁性体5をモータの回転子と、樹脂体をナット2とし、固定子6が取り付けられたケース1に組み込むことによりねじ駆動装置を得ることができる。そのようなねじ駆動装置の一例を図2に示す。
【0012】
なお、図2に示すねじ駆動装置において、筒状磁性体5、たとえば回転子とナット2との間に、回転子の回り止め、抜け止めなどの手段は有していても省略していてもよい。回り止め、抜け止めなどの手段を有することにより、ナット2と回転子5との固着がより強固になるとともに、小型部材でもスペースを取ることなく固定することができる。一方、固着樹脂層の固着・接着性が十分であれば、回り止め、抜け止めなどの手段は省略してもよい。この場合、たとえば射出成形時に回転子に圧力がかかっても凹凸部を起点とした回転子の破損を防止することができ、回転子の機械的強度を低下させることがないので、この点からもこのような形状は有利でもある。
【0013】
本発明に好適な磁性体としては、ネオジム−鉄系焼結磁石などの希土類磁石、希土類・コバルト磁石やフェライト粉末またはハードフェライトからなるフェライト磁石やこれらのボンド系磁石等があり、具体的には、ネオジム−鉄系(Nd−Fe系)、ネオジム−鉄−ほう素系(Nd−Fe−B系)、サマリウム−コバルト系(Sm−Co系)、サマリウム−鉄−窒素系(Sm−Fe−N系)、サマリウム−鉄−コバルト−窒素系(Sm−Fe−Co−N系)等が挙げられ、いずれも脆性材料からなる。それらの物性としては、引張り強度が 5〜10kgf/mm2 程度で平均値で約 7〜8 kgf/mm2 程度、圧縮強度が約 5〜15kgf/mm2 程度で平均値で約 8〜13kgf/mm2 程度である。
【0014】
また、ナットなどの樹脂体の例としては、たとえば、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、芳香族系ポリアミド樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、芳香族系ポリエーテルエーテルケトン系樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のポリアリーレンサルファイド系樹脂、ポリシアノアリールエーテル系樹脂、芳香族系ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、射出成形可能な溶融フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂やアリル系不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、また、これら合成樹脂に各種配合剤を配合した樹脂組成物を挙げることができる。なお、芳香族系樹脂においては、全芳香族系樹脂であってもよい。
【0015】
これらの樹脂組成物の中で、とくに熱可塑性ポリイミド樹脂組成物が耐熱性、機械的強度、耐摩耗性および摺動特性に優れているため好ましい。また、他の樹脂を使用することもできる。たとえば、熱可塑性ポリイミド樹脂等の上述の樹脂群から選ばれる少なくとも 1種以上の機械的強度に優れた樹脂 50 〜 90 重量%と、必要ならばフェノール樹脂系または非フェノール樹脂系の原料を黒鉛化して得られる固定炭素量 97 %以上、 100%以下の黒鉛約 50 〜 10 重量%とからなる樹脂組成物に 100重量部に、また、別に必要ならばフッ素系樹脂約 1〜 20 重量部と、また粉末状のフェノール系樹脂硬化物約 5〜 30 重量部とを配合したものが好適である。
【0016】
黒鉛の固定炭素量が 97 %未満では、耐摩耗性、結晶化処理前後の成形品の収縮率ともに満足できる結果が得られない。また、黒鉛の配合量が約 50 重量%を超えると樹脂組成物の溶融粘度が高くなって射出成形が困難となり約 10 重量%未満では、耐摩耗性の改善効果が十分に得られない。さらに、フッ素系樹脂の配合量が約 5重量部未満の添加では、熱可塑性ポリイミド樹脂組成物に十分な摺動特性が付与されず、約 20 重量部を超えると熱可塑性ポリイミド樹脂本体の機械的強度が損なわれる。また、フェノール系樹脂硬化物の配合量が約 5重量部未満では、耐摩耗性の効果が得られず、約 30 重量部を超えると、組成物の溶融粘度が高くなって射出成形が困難となるばかりか、摩耗係数を低減できない。このことは、熱可塑性ポリイミド樹脂のみならず、前述の合成樹脂群から選ばれる少なくとも 1種以上の機械的強度に優れた樹脂についても同様である。
【0017】
このようなナット2部材は、溶融粘度が高く射出圧力を、たとえば 500〜2500kgf/cm2 ( 5〜25kgf/mm2 )、添加剤等の組成配合によっては、 800〜2000kgf/cm2 ( 8〜20kgf/mm2 )、組成物の種類によっては1000〜1600kgf/cm2 (10〜16kgf/mm2 )、保圧(射出保持圧力)を 500〜1000kgf/cm2 ( 5〜10kgf/mm2 )、組成物の種類によっては 700〜1000kgf/cm2 ( 7〜10kgf/mm2 )のように高い射出圧力条件により成形する。このような粘度の高い組成物を高い圧力下において成形することで、機械的強度、寸法精度に優れ、ボイドの少ないねじ成形体とすることができるため、ねじ山部の摩耗や折損のない樹脂製ナットを得ることができる。
【0018】
ここに用いられる熱可塑性ポリイミド樹脂は、分子構造の繰り返し単位中に、熱的特性、機械的強度等に優れたイミド基が芳香族基を取り囲みながらも、熱などのエネルギーが加えられることにより適度な溶融特性を示すエーテル結合部分を複数個有する構造のイミド系樹脂がよく、機械的特性、剛性、耐熱性、射出成形性を満足させるため、エーテル結合部を繰り返し単位中に 2個有する熱可塑性ポリイミド樹脂が好ましい。たとえば、芳香族エーテルジアミン類や芳香族エーテルジイソシアネート類等と、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の 1種以上の酸無水物またはその誘導体との反応により得られる樹脂を挙げることができる。
【0019】
具体的に、イミド基と芳香族基とを有する重合体の一例を(I)式に示す。
【化1】
(式中、Xは直結または炭素数 1〜 10 の炭化水素基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、カルボニル基、チオ基およびスルホン基からなる群より選ばれた基を表わし、R1 〜R4 は水素、低級アルキル基(炭素数 1〜5 )、低級アルコキシ基(炭素数 1〜5 )、塩素または臭素を表わし、互いに同じであっても異なっていてもよい。Yは炭素数 2以上の脂肪族基、環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、芳香族基が直接または架橋基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基からなる群から選ばれた 4価の基を表わす。)
【0020】
(I)式で示される熱可塑性ポリイミド樹脂は、たとえば、下記(II)式で示される芳香族エーテルジアミンと 1種以上の芳香族テトラカルボン酸二無水物の反応によって得られるポリアミド酸を脱水環化して得られる。
【化2】
(式中、Xは直結または炭素数 1〜 10 の炭化水素基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、カルボニル基、チオ基およびスルホン基からなる群より選ばれた基を表わし、R1 〜R4 は水素、低級アルキル基(炭素数 1〜5 )、低級アルコキシ基(炭素数 1〜5 )、塩素または臭素を表わし、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
【0021】
このような熱可塑性ポリイミド樹脂のうち、市販品としては(I)式におけるR1 〜R4 が全て水素である三井東圧化学社製の商品名オーラム(AURUM)などを挙げることができる。その化学式を(III)式に示す。
【化3】
このようなポリイミド系樹脂は、イミド基もしくは芳香族環の少なくとも 1種類以上を有する点で、機械的強度が高く、また、エーテル結合を適度に有するため、成形時に望ましい溶融粘度となるため生産性効率の優れた射出成形が可能となるため好ましいものと言える。
【0022】
熱可塑性ポリイミド樹脂組成物に配合される黒鉛の形態は薄片状、鱗片状、球状、棒状等その形状は問わないが、低摩擦係数、耐摩耗性などの摺動特性を重視するのであれば、球状のものが好ましく、一方、摺動特性と生産性、価格等とで、平均して総合的に優れるものを選ぶのであれば、薄片状、鱗片状であっても十分である。このような黒鉛としては、たとえば、ピッチ、コークス、タール、フラン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂等を原料として、約 800〜3000℃、原料によっては、約 1200 〜 2300 ℃の高温熱処理温度で焼成したものであればよい。熱処理温度が低すぎると、黒鉛の固定炭素量が十分に高くならず、一方、熱処理温度が高すぎると、黒鉛の昇華等などが発生して黒鉛の熱分解が急激に進行したり、また、そのような高温にするためのエネルギー効率等の点で無駄が生じたりするため好ましくない。
【0023】
このような黒鉛の平均粒径は、 5〜50μm 、好ましくは 5〜25μm のものが望ましい。平均粒径が大きすぎると、樹脂組成物中での分散不良の原因となり、摺動特性も満足できない。平均粒径が小さすぎると、凝集の原因となり、結果としてやはり分散不良となる。このような理由から、黒鉛の平均粒径は 5〜15μm であることがより好ましい。
【0024】
また、フッ素系樹脂としては、耐熱性、摺動性、射出金型からの離型性等に優れた四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのパーフルオロ系フッ素樹脂が好ましく、とくに四フッ化エチレン樹脂(PTFE)が好ましい。
【0025】
パーフルオロ系フッ素樹脂は、骨格である炭素の周囲を全てフッ素で囲まれたもの、もしくは微量の酸素を介して全てフッ素で取り囲まれているために安定しており、低摩擦係数、非粘着性、耐熱性、耐薬品性などの点で優れている。このような、フッ素系樹脂をナット樹脂組成物中に所定量配合することで、ナットに摺動性が付与され、たとえば射出成形からのナット部材のねじり抜き取り性が容易にもなり、また、少ない駆動力でナット2を回転、駆動することもでき、これにより筒状磁性体5たとえば回転子、固定子6をも小型化することができる。このように、ナット2もしくはねじ軸3のような摺動部材にフッ素系重合体を添加したり、また、塗布したりすることによって、効率よくねじを駆動、回転させることができる。
【0026】
上述のナットを形成する合成樹脂の溶融粘度よりも低い溶融粘度を有する合成樹脂で、固着樹脂層に使用できる合成樹脂の例としては、たとえば、ナットに前述の熱可塑性ポリイミド樹脂組成物を用いた場合は、612ナイロン、610ナイロン、46ナイロン、66ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、3ナイロン、6ナイロン、芳香族ナイロン、共重合ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから製造されるフェノキシ樹脂、内部可塑化ポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0027】
脆性材料からなる焼結体である筒状磁性体5たとえば回転子と、通常合成樹脂からなるナット2とを固着し一体化することのできる材料として、ナットを形成する合成樹脂の溶融粘度よりも低い溶融粘度を有する合成樹脂であることが好ましい。
なぜなら、固着樹脂16の溶融粘度がナット2の溶融粘度より低い合成樹脂であると、ナット2と回転子を射出成形によって固着層となる合成樹脂で一体化するときに、ナット2を形成する成形圧力より、低い成形圧力で射出することが可能なためである。ナット2の成形圧力より低い圧力で固着樹脂16となる合成樹脂を射出成形すれば、固着層で一体に形成されたナット2に寸法変化は生じず、回転子が破損することはないからである。
【0028】
具体的に固着樹脂について説明すると、このような固着樹脂は、たとえば、JIS K 7210に基ずく試験法、もしくは、これに準ずる測定法等により粘度を測定することもできるが、この方法に準じた射出成形時のシリンダーまたはノズルの温度において測定した粘度であってもよく、測定方法はいずれであってもよい。たとえば、溶融樹脂の剪断速度が102 〜104 sec-1、好ましくは103 〜104 sec-1のときに、溶融粘度が 50 〜200 Pa・s 、好ましくは、 100〜150 Pa・s のように比較的溶融粘度の低い樹脂材であれば、射出成形時に、大きな充填圧力をかけなくても、金型のキャビティ内へ樹脂が充填されやすい。
【0029】
このため、脆性な回転子と剛性のある樹脂製ナット2とを射出圧力をたとえば、 100〜1300kgf/cm2 ( 1〜13kgf/mm2 )、好ましくは 100〜800 kgf/cm2 ( 1〜8 kgf/mm2 )、より好ましくは 100〜500 kgf/cm2 ( 1〜5 kgf/mm2 )に設定し、保圧をたとえば、 100〜500 kgf/cm2 ( 1〜5 kgf/mm2 )、好ましくは 100〜 300kgf/cm2 ( 1〜3 kgf/mm2 )に設定して射出により固着しても回転子は破損されにくいことが考えられる。
なお、ナット2部材、筒状磁性体5たとえば回転子部材ともに共通して、前述の圧力が低すぎると、ボイド、ひけ等の発生原因となり、圧力が高すぎると、バリやクラッキング、クレージング等の発生原因となることが考えられる。
さらに、上記各々の圧力を回転子の引っ張り強度、もしくは圧縮強度よりも低い圧力下において射出成形することがより望ましいと考えられる。このようにして溶融粘度の低い固着用樹脂材にて回転子の機械的強度よりも低い圧力下において、固着樹脂層を射出により形成することにより、脆弱な回転子は成形圧力によって破損することなく、効率よく、一体成形体を形成することができるようになる。
【0030】
そのような固着樹脂材の一例としてポリアミド系樹脂で具体的に説明する。ポリアミド系樹脂は、分子構造中において、主鎖にアミド結合(−NHCO−)を含む線状重合体であり結晶性樹脂である。そのため、機械的特性に優れ、耐衝撃性もまたよい。そして−NHCO−により親水性を有するので吸水性はあるが、これにより耐衝撃性、柔軟性は増加する。そのような特性であるため、比較的脆性材料の回転子と剛直な樹脂材からなるナット2等を射出成形法によって固着しても、回転子にはクラックなどの破損は発生しずらいと考えられる。このような理由から、たとえば、標準品などで、伸びが 1〜 300%の固着樹脂、好ましくは 3〜200 %のポリアミド樹脂が好ましいと考えられる。伸び率が小さすぎると、柔軟性に期待できず、大きすぎると機械的強度、剛性が低下する。
【0031】
またこのようなアミド結合(−NHCO−)を主鎖に有する樹脂は吸水性があるので、寸法精度もそれと共に変化する。そのため、吸水率は少ないほうが、回転子とナット2とを長期間安定して固着固定する上で有利であり、たとえば標準品で吸水率が 0.1〜1 %、好ましくは 0.1〜0.5 %( 24 時間)であるものが好適である。
なお、前述の伸びは、たとえば、ASTM D638、前述の吸水率は、たとえば、ASTM D570により測定できるが、そのような測定方法に限定されるものではなく、いずれの測定法であってもよい。また、このような重合体によりなる成形体の表面硬度は比較的大きく、耐摩耗性があり、また、低摩耗係数で自己潤滑性も有するので、摺動特性も有しており、滑り軸受材などとしての摺動材としてもまた好適である。なお、摺動特性を向上させるため、固着樹脂材 100重量部あたり、前述のポリイミド系樹脂へ所定量添加する理由と同様に 1〜50重量部のフッ素系重合体や、また機械的強度を向上させる目的として、 1〜100 重量部、好ましくは 10 〜 50 重量部のガラス繊維等の強化繊維類等の少なくとも 1種類以上の充填材を固着樹脂組成物に添加、配合してもよい。
【0032】
ここで、強化繊維類の形態は、繊維径 0.1〜50μm 、繊維長 0.001〜10mm、好ましくは繊維径 1〜25μm 、繊維長 0.01 〜1 mmであればよい。繊維径、繊維長が細すぎたり、短すぎたりすると機械的強度が向上されにくく、一方、繊維径、繊維長が太すぎたり、長すぎたりすると相手摺動材の摩耗の進行が早くなると考えられるため好ましくない。
【0033】
以上の内容を満足するポリアミド系重合体として、たとえば式(IV)に示されるようなポリアミド612樹脂などを例示することができる。
【化4】
また、以上のようなポリアミド612樹脂としては、デュポン社製商品名、ザイテルFE5382等を挙げることができる。
【0034】
固着樹脂の層厚は、回転子とナットとを回転子の破損などを生じることなく一体成形することのできる厚さであればよい。その厚さは、たとえば 0.3〜5mm 、好ましくは 0.5〜3mm であればよい。層厚が薄すぎると、固着、接着性に期待できず、厚すぎるとねじ駆動装置を小型化できない。
【0035】
本発明に係るねじ駆動装置の製造方法にあっては、上述のナットのねじ山の表面あるいはねじ軸の表面に摩擦係数の小さいコーティング層を被覆することにより、摺動抵抗を小さく、かつ安定した摺動特性が得られる。好適なコーティング層としては、ポリフルオロアルキル重合体(PFAE)やフルオロポリエーテル重合体などの含フッ素重合体が好ましい。
ここで、ポリフルオロアルキル重合体とは、たとえば、CF3 (CF2 )7 −、H(CF2 )6 −、CF2 Cl (CF2 )11−、(CF3 )2 CF(CF2 )7 −、CF2 Cl (CF3 )CF(CF2 )7 −などのポリフルオロアルキル基を有する重合体であり、フルオロポリエーテル重合体は、一般式、−Cx F2x−O−(x は 1〜4 の整数)で示される単位を主要構造単位とし、数平均分子量が 1000 〜50000 の重合体である。このような含フッ素重合体は軸受材料に対して親和性の高い官能基、たとえばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフォン基、エステル基等を含有しているものが好ましい。
【0036】
具体的には、以下の式(V)に示すように、末端にイソシアネート基を有するパーフルオロ系ポリエーテル重合体(PFPE)がナット2などの基材と付着性に優れ、また、前述のフッ素系樹脂の添加と同様に、基材付着後のフルオロポリエーテル重合体の非粘着性や摺動特性に優れており、またこのような被覆層の形成は容易でもあり、摺動性、価格などに平均して総合的に優れるため好ましい。
【化5】
(式中、m、nは整数を表わす。)
このようなものとして、モンテフルロス社製商品名:フォンブリンZ−DISOC(数平均分子量約 2000 )などを挙げることができる。
【0037】
このような、含フッ素重合体を高フッ化有機溶媒に 0.1〜10重量%、効果的な薄層や、また液の歩留まり性、また価格等を考慮すれば 1〜5 重量%の濃度になるように希釈してナット2、もしくはねじ軸3のような、少なくとも一方の摺動部材に塗布する。塗布方法は、塗布液の歩留まりがよく効率的な浸漬塗布法(ディッピング)や、塗膜の厚みを精度よく形成できる霧化塗布法(スプレー)などを適宜選択することができる。
塗布後、自然乾燥もしくは生産性効率をあげるため、乾燥と薄層や基材の熱処理とを兼ねて、たとえば、50〜 350℃、好ましくは、50〜 280℃の温度で、 1〜 24 時間、好ましくは 1〜6 時間程度の加熱処理を施してもよい。このようにして、形成される塗布層の厚さは 0.001〜 30 μm 、好ましくは、0.01〜 10 μm の厚さであればよい。層の厚さが薄すぎると良好な摺動特性を長期間維持することが困難となり、厚すぎると、ナット2とねじ軸3との隙間寸法精度の管理が困難となり、円滑なねじの回転動作となりにくい。
【0038】
そしてまた、ねじ軸3は、鋼表面に錆等による腐食の防止、若しくは腐食を抑える点から非磁性のステンレス鋼、アルミニウム合金鋼等の非鉄金属系非磁性鋼で形成することが好ましい。非磁性鋼であると、磁性化されにくいので、回転子などの磁石類の影響を受けにくい。これは、磁性化されていないことによりS極、N極がなく回転子5のS極、N極との互いの吸引力や反発力の影響がないため、ねじが停止しているときでも磁気力による不要な回転動の発生防止にもつながる。また、ねじ回転時にステッピング的な回転とならずトルク変動が少なく、滑らかな一定回転の回転動作となるため、非磁性鋼が好ましい。
【0039】
そしてまた、本発明のねじ部形状は、図2に示すように、ナット2のねじ山の断面は半円径の形状で、これに対するねじ軸3のねじ谷10は、ナット2のねじ山に対して、対称に傾斜する二つの傾斜面で形成される。本発明に係るねじは、図2に示されるようなすべりねじであって、ねじ山9とねじ谷10がねじの進行方向に二点で線接触するようなねじに限らず、たとえば、ミニチュアねじ、メートル並目ねじ、メートル細目ねじ、ユニファイ並目ねじ、ユニファイ細目ねじ、29度台形ねじ、30度台形ねじ(メートル台形ねじ)等の台形ねじや、また、丸形ねじ、テイ型ねじ、ノコ型ねじ、三角ねじ、角ねじなどの角形ねじであったり、また、一条ねじ、もしくは複数条の数条ねじであってもよく、あらゆるねじ形状に適用することができる。
【0040】
【実施例】
実施例および比較例で使用した材料を一括して以下に示す。
(1)回転子:ネオジウムー鉄系焼結磁石(引張り強度 7.6kgf/mm2 、圧縮強度 11 kgf/mm2 )
(2)ナット:熱可塑性ポリイミド樹脂(三井東圧化学社製商品名、オーラム#450、射出成形温度約 400〜430 ℃、 420℃における溶融粘度 300〜500 Pa・s 、射出圧力 1500 kgf/cm2 、保圧 1500 から 800kgf/cm2 の間で調整) 65 重量%に、黒鉛 20 重量%、フッ素系樹脂 3重量%、フェノール系樹脂硬化物 12 重量部からなる熱可塑性ポリイミド樹脂組成物
(3)ナット被覆層:フルオロポリエーテル重合体、モンテフルロス社製商品名、フォンブリンZ一DISOC
(4)固着樹脂層:612ナイロン樹脂、デュポン社製商品名、ザイテルFE5382(ガラス繊維 33 重量%混入)、射出成形温度約 230〜290 ℃、 250℃における溶融粘度 70 〜180 Pa・s 、固着層の厚さ約 0.4〜1 mm。
(5)ねじ軸:非磁性ステンレス鋼
上述の材料を用いてねじ駆動装置を作製した。なお、比較例1は固着樹脂にナットと同一の熱可塑性ポリイミド樹脂を用いる以外は実施例1と同一の方法で、また、比較例2は図4に示す従来方法によりねじ駆動装置を作製した。
【0041】
ねじ駆動装置に用いられる磁性体付き樹脂成形体の作製方法を図1を援用して説明する。
射出成形金型11、12を準備し、一方の成形型12のキャビティ14を開放した状態で、そのキャビティ14に筒状磁性体5となるネオジウムー鉄系焼結磁石およびナット2となる熱可塑性ポリイミド樹脂組成物からなる樹脂体を筒状の空隙部を有して挿入したのち、他方の型11を衝合した(図1(b))。
つぎに、スプルー15を通じて固着樹脂16を圧送してナット2の外周面と筒状磁性体5の内壁面との間の筒状空間に注入・充填した(図1(c))。
射出成形条件は、射出圧力が 200kgf/cm2 、保圧は 200から 100kgf/cm2 の間で調整し、また型温度が 70 ℃、樹脂温度が 280℃に設定した。
その後、注入・充填された固着樹脂16を硬化後、一方の型11から他方の型12を離脱させてその一方の型12のキャビティ14を開口させ、エジェクトピンにより磁性体付き樹脂成形体27を離型させた。
得られた磁性体付き樹脂成形体を固定子が取り付けられたケースに組み込みねじ駆動装置を得た。
【0042】
得られたねじ駆動装置について、以下の評価試験を行った。
実施例および比較例の評価項目および評価方法を以下に示す。なお、本測定に使用した試験体は各n=5で行った。
(1)ナットの寸法の変化:射出成形によってナットのねじ山の寸法変形がどのくらい変化したかを測定する。
(2)回転子の破損率:射出成形後、回転子にクラックが入っているか否かを顕微鏡で観察し、クラックが入っている確率を調査する。
(3)回転子の寸法変化:射出成形後、クラックの入らなかった回転子の外径寸法に変化があるか否かを測定する。
評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなとおり、実施例1はナットの寸法変化が非常に小さく、回転子の破損がなく、かつ回転子の寸法変化も非常に小さかった。これに対して、固着樹脂層にナットと同じ材料を使用した比較例1および従来技術で製造した比較例2は回転子が破損した。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る磁性体付き樹脂成形体の製造方法は、筒状磁性体と樹脂体との空隙部に、その樹脂体の溶融粘度より低い溶融粘度を有する固着樹脂を充填し硬化する工程を有するので、筒状磁性体を破損することなく磁性体付き樹脂成形体を製造することができる。さらに、前工程や後工程を必要としないためコストの上昇を抑えることができる等、生産性に優れている。
【0046】
本発明に係るねじ駆動装置の製造方法は、ナットの外周に取付けられるモータの回転子が固着樹脂を充填し硬化する工程を有するので、回転子を破損することなくねじ駆動装置を製造することができる。また、高精度なねじ山を保つことができる。さらに、前工程や後工程を必要としないためコストの上昇を抑えることができる等、生産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁性体付き樹脂成形体の製造工程を示す図である。
【図2】ねじ駆動装置の断面図である。
【図3】従来のねじ駆動装置の断面図である。
【図4】従来の磁性体付き樹脂成形体の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
2……ナット、5……筒状磁性体、11、12……成形型、13……コアピン、14……キャビティ、15……スプルー、16……固着樹脂、27……磁性体付き樹脂成形体。
Claims (6)
- 成形型のキャビティ内に筒状磁性体を配置する工程と、
前記筒状磁性体の中空部に空隙部を有して樹脂体を挿入配置する工程と、
前記空隙部に前記樹脂体の溶融粘度より低い溶融粘度を有する固着樹脂を充填し硬化する工程とを有することを特徴とする磁性体付き樹脂成形体の製造方法。 - 成形型のキャビティ内に筒状磁性体を配置する工程と、
前記筒状磁性体の中空部に空隙部を有して樹脂体を挿入配置する工程と、
前記筒状磁性体の機械的強度よりも低い成形圧力で固着樹脂を充填し硬化する工程とを有することを特徴とする磁性体付き樹脂成形体の製造方法。 - 前記固着樹脂の充填、硬化は、射出成形法によることを特徴とする請求項1または請求項2記載の磁性体付き樹脂成形体の製造方法。
- 樹脂製ナットの外周に脆性材料からなるモータの回転子を設ける工程と、前記樹脂製ナットをねじ軸と螺合させるとともに、前記モータの固定子が取り付けられたケースに回転自在に組み込む工程とからなるねじ駆動装置の製造方法であって、
前記樹脂製ナットの外周にモータの回転子を設ける工程は、成形型のキャビティ内に筒状磁性体を配置する工程と、前記筒状磁性体の中空部に空隙部を有して樹脂製ナットを挿入配置する工程と、前記空隙部に前記樹脂製ナットの溶融粘度より低い溶融粘度を有する固着樹脂を充填し硬化する工程とを有することを特徴とするねじ駆動装置の製造方法。 - ナットの外周に脆性材料からなるモータの回転子を設ける工程と、前記ナットをねじ軸と螺合させるとともに、前記モータの固定子が取り付けられたケースに回転自在に組み込む工程とからなるねじ駆動装置の製造方法であって、
前記ナットの外周にモータの回転子を設ける工程は、成形型のキャビティ内に筒状磁性体を配置する工程と、前記筒状磁性体の中空部に空隙部を有してナットを挿入配置する工程と、前記筒状磁性体の機械的強度よりも低い成形圧力で固着樹脂を充填し硬化する工程とを有することを特徴とするねじ駆動装置の製造方法。 - 前記固着樹脂の充填、硬化は、射出成形法によることを特徴とする請求項4または請求項5記載のねじ駆動装置の製造方法。
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