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JP3660793B2 - 金属条材の増肉加工方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一定断面の鋼材等の金属条材(H形材、I形材、丸パイプ、角パイプ、丸棒、角棒、板材等)の長手方向の少なくとも1ヶ所を増肉させる金属条材の増肉加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋼材等の金属条材(以下単に条材と略称する)の長手方向の一部領域に増肉加工を施して、強度の大きい厚肉部を形成することが知られており、その1例が特開平8−66736号公報に記載されている。この公報に記載の増肉加工方法は、増肉加工すべき条材に軸線方向の圧縮力を作用させた状態で、その条材の長手方向の狭幅領域を環状の誘導加熱コイルによって局部的に塑性変形容易な温度に加熱し、その加熱した部分すなわち加熱部に圧縮力による増肉を生じさせると共にその誘導加熱コイルを条材に沿って移動させ、それによって加熱部を条材に対して長手方向に移動させ、同時にその加熱部の後端部分に冷却水等の冷却媒体を吹き付けて増肉直後の部分を冷却、固化し、これにより条材を長手方向に連続的に増肉してゆくものであり、条材の長手方向の所望領域に所望長さの厚肉部を容易に形成できるという利点を有していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この増肉方法では、増肉加工中、増肉加工部分の両側をローラ等で所定の軸心上に保持し位置規制を行っているにもかかわらず、増肉加工によって条材に曲がりが生じることがあり、製品としての条材に要求される真直度を損なうことがあるという問題があった。
【0004】
増肉加工時に生じる曲がりの原因は、条材の、加熱され、増肉を生じている加熱部が、何らかの理由によって所定の加工基準軸心(増肉加工を行う装置が真直な条材を正しく保持した時に、その条材の軸心の占める位置、機械軸心とも言う)から直角方向に変位してずれ、このため、その条材が加熱部を中心としてくの字状に折れ曲がった状態となっていたためと思われた。そこで、本発明者等は、増肉加工中、条材の加熱部の加工基準軸心からの変位量(ずれ量)を求め(なお、加熱部の変位を直接検出することは困難であるので、その加熱部の近傍の部分の変位を検出し、それで代用した)、その変位が小さくなるように、加熱部の両側の条材部分にそれぞれ、前記変位に応じた変位、荷重或いはモーメントを付与するという制御を行った。しかしながら、この方法では、曲がり矯正をできる場合もあるが、常に良好な結果が得られるとは限らず、必ずしも満足すべき解決策とはいえなかった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みて為されたもので、条材の曲がり発生を極力防止しながら条材に増肉加工を行うことを可能とする金属条材の増肉加工方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は条材に生じる曲がりの原因を鋭意検討の結果、上記したように条材が加熱部を中心としてくの字状に曲がった状態で増肉加工されるために曲がりが生じたというよりは、加熱部において段差が生じたために曲がりが生じていることを見い出した。すなわち、加熱部の中で増肉を生じている最軟部は、塑性変形抵抗がきわめて小さい(例えば、冷間時の1/50程度)ため、その最軟部をはさんだ両側の条材部分を連結する力はきわめて小さく、このため、最軟部に隣接した両側の条材部分は互いに独立しているように変位可能であり、両側それぞれの条材部分に作用する力に応じて変位する。従って、加熱部内の最軟部の両側の変位は必ずしも一致せず、ずれた状態となり、加熱部に段差が生じ、この段差が増肉後の曲がりの原因となっていた。従って、加熱部に生じる恐れのある段差を極力小さくすることで、曲がりの発生を抑制することが可能と考えられる。
【0007】
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、金属条材の加熱部の両側に位置する前側条材部分と後側条材部分をそれぞれ、前記加熱部で切り離され、その加熱部側を自由端とする2本の片持ち梁とみなし、それぞれの片持ち梁について、その片持ち梁に作用する自重によって、或いは中子を用いる場合には片持ち梁に作用する自重及び中子による荷重によって、片持ち梁の先端に生じる加工基準軸心からの変位量を計算し、次いで、その片持ち梁に矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントを加えることによって、その片持ち梁の自由端を先に計算した変位量を生じる方向とは逆方向に矯正移動させるものとして、その片持ち梁に加える矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントの大きさを、先に計算した変位量に基づいて設定し、その設定した大きさの変位、荷重若しくは曲げモーメントを、対応する前側条材部分又は後側条材部分に加えた状態で増肉加工を行うことを特徴とするものである。
【0008】
本発明はこのように、金属条材を加熱部で分割された2本の片持ち梁とみなし、それぞれについて変位量を計算し、その変位量を矯正するように、矯正用の変位、荷重或いは曲げモーメント等を付与した状態で増肉加工を行うので、増肉加工中、各条材部分の自由端位置(加熱部位置)を、加工基準軸心の近傍に保持でき、このため加熱部に生じる恐れのある段差を抑制でき、曲がりの発生を防止できる。後述の実施例に示すように、本発明方法によって、加熱部の両側の条材部分をそれぞれ、加熱部側を自由端とする片持ち梁とみなし、その自由端の変形量を計算し、それに基づいて矯正用の変位を設定し、増肉加工を行うことにより、曲がりを小さく抑制できることが確認されており、従って、本発明において、金属条材を加熱部で分割された2本の片持ち梁とみなしたことは、実際の現象にきわめて近いと思われる。また、上記本発明の効用から見て、熱間増肉加工時の曲がりは、加熱部に生じた段差が増肉加工の進行により積分されて発生していたものと推論される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、増肉加工すべき金属条材の長手方向の小領域を局部的に加熱して加熱部を形成し、該加熱部を前記金属条材の長手方向に相対的に移動させながら圧縮力を付与して増肉させ、前記加熱部の後端部分を増肉直後に冷却する金属条材の増肉加工方法において、その増肉加工中に、加熱部の後ろに位置する後側条材部分及び/又は加熱部の前に位置する前側条材部分に矯正用の変位、荷重或いは曲げモーメントを付与して曲がり発生を防止することを基本とする。
【0010】
本発明で増肉の対象とする条材は、H形材、I形材、丸パイプ、角パイプ、丸棒、角棒、板材等、任意の断面形状のものとしうる。以下、本発明を角パイプに適用した場合を例にとって、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図7は本発明方法の実施に用いる増肉加工装置の1例の概略構成を示す概略垂直断面図、図8は図7のA−A矢視概略図である。1は増肉加工すべき角パイプである条材、2は条材1の一端を定位置に固定、保持する固定保持具、3は条材1の反対端を保持し且つ押圧して条材に圧縮力を作用させる可動保持具であり、油圧シリンダ等の圧縮装置3Aに連結されている。4は、条材1の長手方向の小領域を局部的に塑性変形容易な温度に加熱して加熱部5とすることの可能な環状の加熱装置であり、ここでは誘導コイルが用いられている。この加熱装置4は、内部に冷却水等の冷却媒体の通路を備えると共に、冷却媒体6を、加熱部5の移動方向(矢印B方向)に関して後側となる部分に吹き付ける吐出穴を備えている。7は加熱装置4を保持した移動台であり、ねじ機構等の移動機構に連結され、加熱装置4を条材1に沿って所望の速度で移動させることの可能な構成となっている。8は、条材1の、加熱部5に関して後ろ側(固定保持具2側)に位置する後側条材部分1aを保持する固定側ガイドローラであり、定位置に配置されている。9は、条材1の、加熱部5に関して前側(可動保持具3側)に位置する前側条材部分1bを保持する移動側ガイドローラである。この移動側ガイドローラ9は、移動台10に保持されており、その移動台10によって条材1に沿って移動可能である。移動台10はそれを移動させるための移動機構(図示せず)に連結され、加熱装置4を保持した移動台7と同期して同一速度で移動可能な構成となっている。なお、20は第一曲がり矯正手段、30は第二曲がり矯正手段であり、詳細は後述する。
【0012】
上記構成の増肉加工装置における増肉動作は次のように行われる。すなわち、図1において、増肉加工すべき角パイプである条材1の一端を固定保持具2に固定、保持させ、その反対端を可動保持具3に保持させ、且つガイドローラ8、9で所定の加工基準軸心O−O上に位置するように保持させる。次いで、加熱装置4を増肉開始位置Sに位置させ、可動保持具3を油圧シリンダ等の圧縮装置3Aで押圧して条材1に圧縮力を作用させ、その状態で、加熱装置4による条材1の加熱を開始し、条材1の長手方向の小領域を局部的に塑性変形容易な温度に加熱して加熱部5とし、その加熱部5の最軟部に圧縮力による増肉を生じさせる。同時に、その加熱装置4及びその前方に位置する移動側ガイドローラ9を条材1に沿って同一速度で移動させて加熱部5を条材1の長手方向に移動させ、且つその動作と並行してその加熱装置4から冷却媒体6を加熱部5の後側に吹き付けて増肉直後の部分を冷却、固化し、これにより条材1を長手方向に連続的に増肉してゆく。そして、加熱装置4が所定の増肉終了位置に到達すると、加熱、加圧を停止し、増肉動作を終了する。
【0013】
以上の増肉加工動作を行う際、条材1は加熱部5の両側を固定側ガイドローラ8及び移動側ガイドローラ9で位置を規制され、全長に渡ってその軸心が加工基準軸線O−O(図1参照)に一致するように保持されているはずである。しかしながら、実際には、ガイドローラ8、9間の条材部分の自重により、加熱部5が下方に変位した状態となっており、しかもその加熱部5には増肉変形を生じる最軟部をはさんで段差が生じており、これによって曲がりが生じる。
【0014】
第一曲がり矯正手段20及び第二曲がり矯正手段30は、加熱部5の下方への変位を矯正するために設けたものである。すなわち、第一曲がり矯正手段20は、固定側ガイドローラ8と加熱部5との間の後側条材部分1aに矯正用の変位或いは荷重を加えることによって、後側条材部分1aの先端(加熱部5)位置を矯正するものであり、また、第二曲がり矯正手段30は、移動側ガイドローラ9と加熱部5との間の前側条材部分1bに矯正用の変位或いは荷重を加えることによって、前側条材部分1bの先端(加熱部5)位置を矯正するものである。
【0015】
第一曲がり矯正手段20は、後側条材部分1aの上下面をはさむように配置された一対の加圧ローラ21と、その加圧ローラ21を保持した移動フレーム22と、移動フレーム22を上下方向に移動させる加圧シリンダ23と、加圧シリンダ23に対して油圧源24からの油圧供給を制御する油圧サーボ装置25と、その油圧サーボ装置25を操作する制御装置26等を備えており、制御装置26からの指令に基づき、後側条材部分1aを所定量だけ変位させるとか、後側条材部分1aに所定量の荷重を加えることができ、それによって後側条材部分1aの先端(加熱部5)を変位させることができる構成となっている。また、第二曲がり矯正手段30も同様に、前側条材部分1bの上下面をはさむように配置された一対の加圧ローラ31と、その加圧ローラ31を保持した移動フレーム32と、移動フレーム32を上下方向に移動させる加圧シリンダ33と、加圧シリンダ33に対して油圧源24からの油圧供給を制御する油圧サーボ装置35と、その油圧サーボ装置35を操作する制御装置36等を備えており、制御装置36からの指令に基づき、前側条材部分1bを所定量だけ変位させるとか、前側条材部分1bに所定量の荷重を加えることができ、それによって前側条材部分1bの先端(加熱部5)を変位させることができる構成となっている。なお、後側条材部分1a、前側条材部分1bの先端位置を矯正するための曲がり矯正手段20、30としては、図7に示すように、条材部分に対して変位或いは荷重を付与するものに限らず、その条材部分に曲げモーメントを付与して先端位置を変位させる構成のものとしても良いが、以下の説明では、図示した曲がり矯正手段20、30を用いるものとする。
【0016】
本発明はこのような第一曲がり矯正手段20、第二曲がり矯正手段30によって曲がり矯正を行うに際し、その矯正量(条材部分1a、1bに付与する矯正用の変位或いは荷重の大きさ)を以下に説明する計算によって求めることを特徴とする。
【0017】
まず、矯正量計算の基本的な考え方を説明する。今、図1(a)に示すように、条材1に対して長さLZ の厚肉部1cを形成するものとし、その増肉領域内の或る位置を加熱装置4が加熱して加熱部5とし、増肉を行っている場合を考える。この増肉加工中、図1(b)に示すように、条材1の加熱部5の両側に位置する後側条材部分1aと前側条材部分1bをそれぞれ、その加熱部5(の最軟部)で切り離され、加熱部側を自由端とする2本の片持ち梁とみなす。すなわち、後側条材部分1aを、固定側ガイドローラ8で支持され、加熱部5を自由端とする片持ち梁とみなし、前側条材部分1bを、移動側ガイドローラ9で支持され、加熱部5を自由端とする片持ち梁とみなす。このように条材部分1a、1bをそれぞれ片持ち梁とみなすと、その片持ち梁に作用する自重によって、或いは、片持ち梁に何らかの荷重が加わっている場合には、自重及びその荷重によって、片持ち梁の自由端(先端)が加工基準軸心O−Oから下方に変位することとなり、且つそれぞれの変位量δ2 、δ3 は片持ち梁の長さや、作用する荷重によって異なることとなる。そこで、この変位量δ2 、δ3 を計算によって求める。この計算は、片持ち梁のたわみに関する公知の計算技法を用いて行うことができる。
【0018】
次に、図1(c)に示すように、各条材部分1a、1bを片持ち梁とみなし、それを第一曲がり矯正手段20及び第二曲がり矯正手段30の加圧ローラ21、31で押し上げて、それぞれの自由端の変位(先に計算して求めた変位量)を修正するものとして、各加圧ローラ21、31に加える矯正用の変位(各加圧ロールによる押し上げ量)或いは荷重(各加圧ロールに加える押し上げ力)を、先に求めた変位量δ2 、δ3 に基づいて求める。すなわち、各片持ち梁の自由端を、先に計算で求めた変位量δ2 、δ3 を考慮して適当量だけ、好ましくは、その変位量δ2 、δ3 に相当する量だけ、上方に変位させることができるように、矯正用の変位或いは荷重の大きさ(矯正量)を求める。そして、求めた大きさの矯正用の変位或いは荷重を各条材部分1a、1bに加え、その状態で増肉加工を行う。これにより、各条材部分1a、1bの先端(加熱部5)、即ち片持ち梁とみなした時の自由端の加工基準軸心からの変位を抑制し、且つ、加熱部5に生じる恐れのある段差を抑制した状態で増肉加工を行うことができ、曲がりの発生を防止できる。
【0019】
以上が本発明における矯正量計算の基本的な考え方である。ところで、増肉加工時における各片持ち梁の自由端の変位量δ2 、δ3 はそれぞれ、ガイドローラ8と加熱部5との距離、及び加熱部5とガイドローラ9との距離によって変化する。図1に示す増肉加工装置では、後側条材部分1aを支持するガイドローラ8が定位置にあり、前側条材部分1bを支持するガイドローラ9が加熱装置4と一緒に移動する構成であるので、加熱装置4の移動につれて(従って、加熱部5の移動につれて)、後側条材部分1aの自由端の変位量δ2 は増加し、前側条材部分1bの自由端の変位量δ3 はほぼ一定である。これをグラフに示すと図2に示すようになる。なお、図1、図2において、S点は増肉開始位置、E点は増肉終了位置である。
【0020】
本発明において、各条材部分1a、1bに加える矯正用の変位或いは荷重の大きさ(矯正量)は、このような変位量δ2 、δ3 の特性を考慮して設定するものである。その際、矯正量としては、条材部分の自由端の変位量が、変位量δ2 のように増肉加工中における加熱部の位置に応じて変化する場合に対しても、増肉加工中一定となるように設定してもよいし、或いは、加熱部の位置に応じて変化する変位量に応じて、連続的或いは段階的に変化するように設定してもよい。
【0021】
各条材部分1a、1bに加える矯正用の変位或いは荷重を加熱部の位置に応じて連続的或いは段階的に変化させるように設定する場合には、あらかじめ、加熱部5が複数の位置に移動した場合のそれぞれの変位量δ2 、δ3 を計算して、図2に示すような特性曲線を求め、次いで、加熱部5の各位置について、各片持ち梁の自由端を、先に計算で求めた変位量δ2 、δ3 に相当する量だけ、上方に変位させることができる矯正用の変位或いは荷重の大きさを求める。これによって、加熱部の位置に対する矯正用の変位或いは荷重の大きさをあらかじめ設定する。そして、増肉加工を行うに当たっては、加熱部5の移動につれて、その加熱部5の位置に応じて設定している大きさの矯正用の変位或いは荷重を各条材部分1a、1bに加えるように、各曲がり矯正手段20、30をプログラム的に制御し、その状態で増肉加工を行う。これにより、加熱部5がどの位置に移動しても、各条材部分1a、1bの自由端(加熱部5)をほぼ加工基準軸線上に保持し、加熱部5に段差が生じないように拘束して増肉加工を行うことができ、曲がり発生を防止できる。
【0022】
次に、条材部分1aに加える矯正用の変位或いは荷重を、加熱部の移動にかかわらず一定に設定する場合には、図2に示す特性の変位量δ2 を平均的に矯正するように、片持ち梁の自由端を上方に変位させる矯正用の変位或いは荷重を求め(具体的な求め方は後述する)、その値に設定する。そして、その設定した大きさの矯正用の変位或いは荷重を条材部分1aに加えた状態で増肉加工を行う。この場合には、図2に示すように、後側条材部分1aの自由端の変位量δ2 が加熱部5の移動につれて変化しているのに対して、後側条材部分1aに加える矯正量が一定であるので、増肉加工中における後側条材部分1aの自由端の加熱部5の加工基準軸心からの変位を、常に0になるようには制御できないが、矯正しない場合に比べると大幅に小さくでき、これによって曲がり発生を抑制できる。なお、前側条材部分1bに生じる変位量δ3 は、加熱部5の位置に関係なくほぼ一定であるので、前側条材部分1bに加える矯正用の変位或いは荷重は、変位量δ3 を0に矯正するように設定するものであり、これにより、増肉加工中における前側条材部分1bの自由端の加熱部5を加工基準軸心上に保持できる。また、前側条材部分1bに生じる変位量δ3 が微小で無視しうる場合には、前側条材部分1bに加える矯正用の変位或いは荷重を0とし、従って、前側条材部分1bに対する矯正は行わないようにしてもよい。
【0023】
後側条材部分1aに加える矯正用の変位或いは荷重を、増肉加工中、一定とする場合において、その矯正用の変位或いは荷重を求める具体的な方法としては、例えば、次の各方法を挙げることができる。
【0024】
▲1▼ 増肉開始時(加熱部5が増肉開始位置Sにある時)の変位量δ2Sを計算し、その変位量δ2Sを0に矯正するための矯正用の変位或いは荷重を計算し、次いで、増肉終了時(加熱部5が増肉開始位置Eにある時)の変位量δ2Eを計算し、その変位量δ2Eを0に矯正するための矯正用の変位或いは荷重を計算し、増肉開始時及び終了時の矯正用の変位或いは荷重の平均値を、後側条材部分1aに加える矯正用の変位或いは荷重と設定する。
【0025】
▲2▼ 加熱部5が増肉領域内の適当な位置M(好ましくは中央位置)にある時の変位量δ2Mを計算し、その変位量δ2Mを0に矯正するための矯正用の変位或いは荷重を計算し、それを後側条材部分1aに加える矯正用の変位或いは荷重と設定する。
【0026】
▲3▼ 増肉加工中における変位量δ2 の平均値を計算し、その平均値の変位量を0に矯正するための矯正用の変位或いは荷重を計算し、それを後側条材部分1aに加える矯正用変位或いは荷重と設定する。
【0027】
次に、上記した▲1▼の方法を実施するに当たって、増肉開始時におけるの変位量δ2S、δ3S及び増肉終了時における変位量δ2E、δ3Eを計算する計算方法の一例を説明する。
【0028】
(1)増肉開始時に発生するたわみ
図3(a)に示すように、加熱装置4が増肉開始位置Sにあるものとし、各部寸法を図3に示すように定めておく。条材1が加熱部5の最軟部で切り離されたものとみなすと、固定側ガイドローラ8で支持された後側条材部分1a、及び、移動側ガイドローラ9で支持された前側条材部分1bはそれぞれ、図3(b)、(c)に示すように片持ち梁となり、それぞれの全長にわたって自重による一定の分布荷重q(kg/cm)が作用し、それぞれの先端(自由端)が下方に変位する。この時の後側条材部分1aの自由端の変位量δ2sは、数式1で求めることができ、また、前側条材部分1bの自由端の変位量δ3sは、数式2で求めることができる。
【0029】
【数1】
Figure 0003660793
【0030】
【数2】
Figure 0003660793
【0031】
(2)増肉終了時に発生するたわみ
図4(a)に示すように、加熱装置4が増肉終了位置Eにあるものとし、各部寸法を図4に示すように定めておく。そして、条材1が増肉終了位置にある加熱部5の最軟部で切り離され、その両側の条材部分1a、1bがそれぞれ片持ち梁を形成するものとみなす。
【0032】
▲1▼ 後側条材部分1a
固定側ガイドローラ8で支持された後側条材部分1aは、図4(b)に示すように片持ち梁となる。この時の片持ち梁の自由端の下方への変位量δ2Eを計算するに当たっては、計算を簡略化するため、増肉しない領域には自重による一定の分布荷重qが作用し、増肉を行った厚肉部1cには、その中央に厚肉部1c全体の重量PZ が集中荷重として作用しているのもと仮定する。この集中荷重PZ は、増肉率をβとすると、
Z =qLZ (1+β)
で計算できる。
【0033】
まず、図4(c)に示すように、片持ち梁(条材部分1a)に分布荷重qのみが作用するものとして(厚肉部の重量はないものとして)、自由端の変位量δ2qを計算する。増肉開始位置であるS点の変位量δ2 は、図3(b)に示す片持ち梁の自由端の変位量δ2Sに等しい。従って、S点の変位量δ2 は、数式3のようになる。
【0034】
【数3】
Figure 0003660793
【0035】
次に、S点における傾斜角θ2 は数式4となる。
【0036】
【数4】
Figure 0003660793
【0037】
従って、片持ち梁先端のS点からの下方への変位量δ2 ′は、数式5のようになり、自由端の変位量δ2qは数式6で計算できる。
【0038】
【数5】
Figure 0003660793
【0039】
【数6】
Figure 0003660793
【0040】
次に、図4(d)に示すように、片持ち梁に集中荷重PZ のみが作用するものとして、自由端の変位量δ2Zを計算する。まず、S点の変位量δ2Z′は、数式7となる。また、その位置での変位角θ2Zは数式8となるので、片持ち梁の自由端のS点からの下方への変位量δ2Z″は、数式9のようになる。従って自由端の変位量δ2Zは数式10により計算できる。
【0041】
【数7】
Figure 0003660793
【0042】
【数8】
Figure 0003660793
【0043】
【数9】
Figure 0003660793
【0044】
【数10】
Figure 0003660793
【0045】
図4(b)に示すように、片持ち梁(条材部分1a)に分布荷重qと集中荷重PZ とが作用した時の自由端の変位量δ2Eは、分布荷重qのみが作用した時の自由端の変位量δ2q[図4(c)参照]と、集中荷重PZ のみが作用した時の自由端の変位量δ2Z[図4(d)参照]を足したものであるので、結局、増肉加工終了時の後側条材部分1aの自由端に生じる下方への変位量δ2Eは、数式11で計算できる。
【0046】
【数11】
Figure 0003660793
【0047】
▲2▼ 前側条材部分1b
一方、移動側ガイドローラ9で支持された前側条材部分1bは、増肉終了時にも、図4(e)に示すような寸法の片持ち梁となり、これは、図3(c)に示す増肉開始時の片持ち梁と同一である。従って、増肉終了時の変位量δ3Eは、増肉開始時の変位量δ3Sと等しく、数式12で示すようになる。
【0048】
【数12】
Figure 0003660793
【0049】
以上のようにして、増肉開始時及び増肉終了時の各条材部分1a、1bの自由端の変位量を計算し、それに基づいて矯正用の変位或いは荷重を求めることができる。
【0050】
以上の説明は、図7に示すように、条材1の増肉部分をフリーとした状態で増肉加工を行う場合を示したが、本発明はこの場合に限定されず、例えば、図9に示すように、条材1内の、増肉加工によって形成される厚肉部1eの内側に位置するように熱処理用ダイス等の中子12を挿入した状態で増肉加工を行う場合にも適用可能である。ここで用いられる中子12は、増肉加工によって形成する厚肉部1cの長さ以上の長さを有するもので、その両端に条材1の内面に接触させることで中子12の外面と条材1の内面との間隔を一定に保持するための突起12aを備えている。この中子12には連結棒13が接続されているが、この連結棒13は単に中子12の長手方向の位置決めのために設けられたもので、中子12の重量を支えるものではない。従って、中子12の重量は条材1によって保持されており、換言すれば、中子12の重量は条材1に荷重として作用し、その重量は中子12の両端の突起12aによって集中荷重として作用する。なお、中子12を設けた点以外の構成は、図7に示す増肉加工装置と同様である。
【0051】
図9に示すように、条材1に中子12を挿入した状態で増肉加工を行う場合には、増肉を開始すると、増肉で形成される厚肉部1cの内面が中子12の外周面に押し付けられ、一体化しながら増肉が進行する。このように、厚肉部が中子12に密着し、一体化しながら増肉が進む間は、条材1と中子12とが1本の両端支持梁のように作用し、加熱部5に段差はあまり生じない。しかしながら、増肉開始から、厚肉部が中子12に密着するまでの間は、加熱部5の両側に位置する条材部分1a、1bは中子12で拘束されていないので、それぞれ自由に動くことができ、加熱部5の最軟部で切り離された片持ち梁のような挙動を示す。従って、各条材部分1a、1bの自由端(加熱部5)の下方への変位量が異なり、曲がり発生の原因となる。
【0052】
そこで、この場合に対して本発明を適用することができる。すなわち、増肉加工の開始時において、加熱部5の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ、加熱部5の最軟部で切り離され、加熱部側を自由端とする片持ち梁とみなし、それぞれの自由端の下方への変位量を計算で求める。この時の計算には当然、中子12による集中荷重を考慮する。そして、計算で求めた変位量を矯正することができるように、矯正用の変位或いは荷重を求め、それを、第一及び第二曲がり矯正手段20、30によって、条材部分1a、1bにそれぞれ加えた状態で増肉加工を行う。これにより、増肉開始から、厚肉部が中子と一体化するまでの間に加熱部5に生じる恐れのある段差の発生を防止し、曲がり発生を防止しながら、増肉加工を行うことができる。なお、増肉開始時に各条材部分1a、1bに加えた矯正用の変位或いは荷重は、厚肉部が中子と一体化した後もそのまま、加えておくことが好ましい。
【0053】
次に、中子12を使用した場合の、増肉開始時の各条材部分1a、1bの自由端の変位量の計算方法の1例を説明する。図5(a)に示すように、加熱装置4が増肉開始位置Sにあるものとし、各部寸法を図5に示すように定めておく。この場合にも、条材1が増肉開始位置にある加熱部5の最軟部で切り離され、その両側の条材部分1a、1bがそれぞれ片持ち梁を形成するものとみなす。
【0054】
▲1▼ 後側条材部分1a
まず、図5(c)に示すように、固定側ガイドローラ8で保持された後側条材部分1aを片持ち梁とみなし、且つそれに対して分布荷重qのみが作用するものとして(中子12による集中荷重は作用していないものとして)、自由端の変位量δ2qを計算する。この変位量δ2qは、数式13で求めることができる。
【0055】
【数13】
Figure 0003660793
【0056】
次に、図5(d)に示すように、片持ち梁(条材部分1a)の自由端に中子12による集中荷重P1 のみが作用するものとして、自由端の変位量δ21を計算する。なお、中子12による集中荷重は、条材部分1aの自由端(加熱部5)から少し離れた位置に作用しているが、そのずれは小さいので省略する。自由端の変位量δ21は数式14により計算できる。
【0057】
【数14】
Figure 0003660793
【0058】
図5(b)に示すように、片持ち梁に分布荷重qと集中荷重P1 とが作用した時の自由端の変位量δ21S は、分布荷重qのみが作用した時の変位量δ2q[図5(c)参照]と、集中荷重のみが作用した時の変位量δ21[図5(d)参照]を足したものであるので、結局、後側条材部分1aの自由端に生じる下方への変位量δ21S は、数式15で計算できる。
【0059】
【数15】
Figure 0003660793
【0060】
▲2▼ 前側条材部分1b
図5(f)に示すように、移動側ガイドローラ9で保持された前側条材部分1bを片持ち梁とみなす。そして先ず、それに対して分布荷重qのみが作用するものとして(中子12による集中荷重は作用していないものとして)、自由端の変位量δ3qを計算する。この変位量δ3qは、数式16で求めることができる。
【0061】
【数16】
Figure 0003660793
【0062】
次に、図5(g)に示すように、片持ち梁(条材部分1b)の自由端から、増肉長さに相当する距離LN だけ離れた位置(増肉終了位置即ちE点)に中子12による集中荷重P2 のみが作用するものとして、自由端の変位量δ32を計算する。なお、中子12による集中荷重は、増肉終了位置Eから少し離れた位置に作用しているが、そのずれは小さいので省略する。
【0063】
まず、E点の変位量δ32′は、数式17となる。またその位置での変位角θ3 は数式18となるので、片持ち梁の自由端のE点からの下方への変位量δ32″は、数式19のようになる。従って、先端の変位量δ3Zは数式20により計算できる。
【0064】
【数17】
Figure 0003660793
【0065】
【数18】
Figure 0003660793
【0066】
【数19】
Figure 0003660793
【0067】
【数20】
Figure 0003660793
【0068】
図5(e)に示すように、片持ち梁に分布荷重qと集中荷重P2 とが作用した時の自由端の変位量δ32S は、分布荷重qのみが作用した時の変位量δ3q[図5(f)参照]と、集中荷重P2 のみが作用した時の変位量δ32[図5(g)参照]を足したものであるので、結局、前側条材部分1bの自由端に生じる下方への変位量δ32S は、数式21で計算できる。
【0069】
【数21】
Figure 0003660793
【0070】
以上のようにして、中子12を使用する場合における増肉開始時の各条材部分1a、1bの自由端(加熱部)の変位量を計算でき、それに基づいて矯正用の変位或いは荷重を求めることができる。
【0071】
なお、以上の説明は、本発明方法を、図7或いは図9に示す構成の装置を用いた増肉加工について適用した場合についてのものであるが、増肉加工に使用する装置はこれに限らず、適宜変更可能である。例えば、加熱装置4と同期して移動する移動側ガイドローラ9を用いる代わりに、定位置に配置したガイドローラを用いても良い。その場合には、増肉の進行につれて加熱部5とガイドローラとの間隔が変化するので、前側条材部分1bの自由端の変位量δ3 の計算や矯正量の設定に当たって、後側条材部分1aと同様に間隔の変化を考慮すればよい。また、図7、図9に示す装置では、加熱部5の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ、間隔を開けて配置した2組のガイドローラ8、9で保持しているが、このガイドローラの本数を増加させるとか、クランプ等の他の機構を用いる等の変更を行っても良い。その場合には、片持ち梁の自由端の変位量の計算に当たって、その片持ち梁を保持している機構の特性を考慮すれば良い。
【0072】
更に、上記した説明では、増肉加工に供する条材は真直なものであることを前提としている。ところで、増肉加工に供する条材には、増肉加工に供する前に既に曲がりを有しているものがある。このように冷間の状態で曲がりを有している条材を、図7に示す増肉加工装置にセットして増肉加工を行う場合、条材の増肉加工すべき部分の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ、間隔を開けて配置された複数のガイドローラ8、9で所定の加工基準軸心に拘束すると、条材のガイドローラ8、9によって拘束された部分は加工基準軸心上に保持されるが、その他の部分は必ずしも加工基準軸心上に位置するとは限らず、特に、加熱部は加工基準軸心から変位することが多い。この場合に対しても本発明を適用することが可能である。すなわち、ガイドローラ8、9でそれぞれ保持した条材部分を、加熱部で切り離した片持ち梁とみなし、それぞれの自由端の変位量を計算するに当たっては条材が冷間時に持っていた曲がりを考慮し、求めた変位量を矯正するように、各条材部分に加える矯正用の変位或いは荷重を求め、その矯正用の変位或いは荷重を各条材部分に加えた状態で増肉加工することにより、増肉加工中の加熱部に生じる恐れのある段差を抑制して、曲がりの発生を防止できる。
【0073】
【実施例】
[実施例1]
▲1▼ 増肉加工装置
図6(a)(b)に示す寸法の増肉加工装置(中子なし)
▲2▼ 増肉条件
供試条材:300mm角×12mm厚さ×15000mm長さの角形鋼管
増肉長さLZ =1150mm、3ヶ所増肉
増肉率β=100%
【0074】
▲3▼ 矯正なしでの増肉
加圧ローラ21、31による押し上げ量を0に設定し、増肉加工を行ったところ、得られた増肉条材は全長に対して11mm下向きに曲がっていた。
【0075】
▲4▼ 変位量の計算及び矯正用変位の計算
加熱部5の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ片持ち梁とみなして、自由端の変位量を増肉開始時及び終了時について計算し、表1に示す結果を得た。また、増肉開始時及び終了時についてそれぞれ、計算で求めた変位量を0に矯正するための加圧ローラ21、31による押し上げ量(矯正用変位)Δyを計算し、表1に示す結果を得た。なお、表1及び後述する表2〜表6において、「固定側」は、加熱部5の後ろに位置する後側条材部分1aに関するものであり、「移動側」は、加熱部5の前に位置する前側条材部分1bに関するものである。また、表中の単位はmmである。
【0076】
【表1】
Figure 0003660793
【0077】
▲5▼ 押し上げ量の設定
固定側(後側条材部分1a)については、増肉開始時の押し上げ量と、増肉終了時の押し上げ量の平均値を矯正用の押し上げ量Δym と設定した。すなわち、
Δym =(0.0215+0.374)/2≒0.2(mm)
と設定した。一方、移動側(前側条材部分1b)は変位量が微小であるので、特に矯正は必要ないと判断し、押し上げ量は0に設定した。
【0078】
▲6▼ 増肉加工及び結果
増肉加工の開始前に、第一曲がり矯正手段の加圧ローラ21で後側条材部分1aを設定した押し上げ量Δym =0.2mmだけ押し上げ、その状態に保持して増肉加工を行った。増肉加工後、増肉条材の全長に対する曲がりを測定したところ、±4mmであり、矯正しない場合に比べて、曲がりを大幅に減少させることができた。
【0079】
[実施例2]
▲1▼ 増肉加工装置
図6(a)(b)に示す寸法の増肉加工装置(中子なし)
▲2▼ 増肉条件
供試条材:250mm角×9mm厚さ×15000mm長さの角形鋼管
増肉長さLZ =850mm、3ヶ所増肉
増肉率β=100%
【0080】
▲3▼ 矯正なしでの増肉
加圧ローラ21、31による押し上げ量を0に設定し、増肉加工を行ったところ、得られた増肉条材は全長に対して12mm下向きに曲がっていた。
【0081】
▲4▼ 変位量の計算及び矯正用変位の計算
増肉加工時の加熱部5の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ片持ち梁とみなして、自由端の変位量を増肉開始時及び終了時について計算し、表2に示す結果を得た。また、増肉開始時及び終了時についてそれぞれ、計算で求めた変位量を0に矯正するための加圧ローラ21、31による押し上げ量(矯正用変位)Δyを計算し、表2に示す結果を得た。
【0082】
▲5▼ 押し上げ量の設定
固定側(後側条材部分1a)については、増肉開始時の押し上げ量と、増肉終了時の押し上げ量の平均値を矯正用の押し上げ量Δym と設定した。すなわち、
Δym =(0.0307+0.365)/2≒0.2(mm)
と設定した。一方、移動側(前側条材部分1b)は変位量が微小であるので、特に矯正は必要ないと判断し、押し上げ量は0に設定した。
【0083】
【表2】
Figure 0003660793
【0084】
▲6▼ 増肉加工及び結果
増肉加工の開始前に、第一曲がり矯正手段の加圧ローラ21で後側条材部分1aを設定した押し上げ量Δym =0.2mmだけ押し上げ、その状態に保持して増肉加工を行った。増肉加工後、増肉条材の全長に対する曲がりを測定したところ、±4mmであり、矯正なしに比べて曲がりを大幅に減少させることができた。
【0085】
[実施例3]
▲1▼ 増肉加工装置
図6(a)(b)に示す寸法の増肉加工装置(中子なし)
▲2▼ 増肉条件
供試条材:175mm角×9mm厚さ×12000mm長さの角形鋼管
増肉長さLZ =550mm、3ヶ所増肉
増肉率β=66.7%
【0086】
▲3▼ 矯正なしでの増肉
加圧ローラ21、31による押し上げ量を0に設定し、増肉加工を行ったところ、得られた増肉条材は全長に対して10.5mm下向きに曲がっていた。
【0087】
▲4▼ 変位量の計算及び矯正用変位の計算
増肉加工時の加熱部5の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ片持ち梁とみなして、自由端の変位量を増肉開始時及び終了時について計算し、表3に示す結果を得た。また、増肉開始時及び終了時についてそれぞれ、計算で求めた変位量を0に矯正するための加圧ローラ21、31による押し上げ量(矯正用変位)Δyを計算し、表3に示す結果を得た。
【0088】
【表3】
Figure 0003660793
【0089】
▲5▼ 押し上げ量の設定
固定側(後側条材部分1a)については、増肉開始時の押し上げ量と、増肉終了時の押し上げ量の平均値を矯正用の押し上げ量Δym と設定した。すなわち、
Δym =(0.0646+0.419)/2≒0.24(mm)
と設定した。一方、移動側(前側条材部分1b)は変位量が微小であるので、特に矯正は必要ないと判断し、押し上げ量は0に設定した。
【0090】
▲6▼ 増肉加工及び結果
増肉加工の開始前に、第一曲がり矯正手段の加圧ローラ21で後側条材部分1aを設定した押し上げ量Δym =0.24mmだけ押し上げ、その状態に保持して増肉加工を行った。増肉加工後、増肉条材の全長に対する曲がりを測定したところ、±3mmであり、矯正なしに比べて曲がりを大幅に減少させることができた。
【0091】
[実施例4]
▲1▼ 増肉加工装置
図6(a)(b)に示す寸法の増肉加工装置(中子あり)
中子:重量W=500kg、長さL=1460mm
▲2▼ 増肉条件
供試条材:300mm角×12mm厚さ×15000mm長さの角形鋼管
増肉長さLZ =1150mm、3ヶ所増肉
増肉率β=100%
【0092】
▲3▼ 矯正なしでの増肉
加圧ローラ21、31による押し上げ量を0に設定し、増肉加工を行ったところ、得られた増肉条材は全長に対して7.5mm下向きに曲がっていた。
【0093】
▲4▼ 変位量の計算及び矯正用変位の計算
増肉開始時の加熱部5の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ片持ち梁とみなして、自由端の変位量を増肉開始時について計算し、表4に示す結果を得た。また、増肉終了時には条材が中子と一体となった両持ち梁とみなして、加熱部の変位量を計算し表4の結果を得た。更に、増肉開始時及び終了時についてそれぞれ、計算で求めた変位量を0に矯正するための加圧ローラ21、31による押し上げ量(矯正用変位)Δyを計算し、表4に示す結果を得た。
【0094】
【表4】
Figure 0003660793
【0095】
▲5▼ 押し上げ量の設定
固定側(後側条材部分1a)については、増肉開始時の押し上げ量を矯正用の押し上げ量Δym と設定した。すなわち、
Δym =0.182≒0.18(mm)
と設定した。一方、移動側(前側条材部分1b)は変位量が微小であるので、特に矯正は必要ないと判断し、押し上げ量は0に設定した。
【0096】
▲6▼ 増肉加工及び結果
増肉加工の開始前に、第一曲がり矯正手段の加圧ローラ21で後側条材部分1aを設定した押し上げ量Δym =0.18mmだけ押し上げ、その状態に保持して増肉加工を行った。増肉加工後、増肉条材の全長に対する曲がりを測定したところ、±3mmであり、矯正なしに比べて曲がりを大幅に減少させることができた。
【0097】
[実施例5]
▲1▼ 増肉加工装置
図6(a)(b)に示す寸法の増肉加工装置(中子あり)
中子:重量W=400kg、長さL=1350mm
▲2▼ 増肉条件
供試条材:250mm角×9mm厚さ×15000mm長さの角形鋼管
増肉長さLZ =850mm、3ヶ所増肉
増肉率β=100%
【0098】
▲3▼ 矯正なしでの増肉
加圧ローラ21、31による押し上げ量を0に設定し、増肉加工を行ったところ、得られた増肉条材は全長に対して8.0mm下向きに曲がっていた。
【0099】
▲4▼ 変位量の計算及び矯正用変位の計算
増肉開始時の加熱部5の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ片持ち梁とみなして、自由端の変位量を増肉開始時について計算し、表5に示す結果を得た。また、増肉終了時には条材が中子と一体となった両持ち梁とみなして、加熱部の変位量を計算し表5の結果を得た。更に、増肉開始時及び終了時についてそれぞれ、計算で求めた変位量を0に矯正するための加圧ローラ21、31による押し上げ量(矯正用変位)Δyを計算し、表5に示す結果を得た。
【0100】
【表5】
Figure 0003660793
【0101】
▲5▼ 押し上げ量の設定
固定側(後側条材部分1a)については、増肉開始時の押し上げ量を矯正用の押し上げ量Δym と設定した。すなわち、
Δym =0.324≒0.32(mm)
と設定した。一方、移動側(前側条材部分1b)は変位量が微小であるので、特に矯正は必要ないと判断し、押し上げ量は0に設定した。
【0102】
▲6▼ 増肉加工及び結果
増肉加工の開始前に、第一曲がり矯正手段の加圧ローラ21で後側条材部分1aを設定した押し上げ量Δym =0.32mmだけ押し上げ、その状態に保持して増肉加工を行った。増肉加工後、増肉条材の全長に対する曲がりを測定したところ、±3.5mmであり、矯正なしに比べて曲がりを大幅に減少させることができた。
【0103】
[実施例6]
▲1▼ 増肉加工装置
図6(a)(b)に示す寸法の増肉加工装置(中子あり)
中子:重量W=400kg、長さL=1350mm
▲2▼ 増肉条件
供試条材:175mm角×9mm厚さ×12000mm長さの角形鋼管
増肉長さLZ =550mm、3ヶ所増肉
増肉率β=66.7%
【0104】
▲3▼ 矯正なしでの増肉
加圧ローラ21、31による押し上げ量を0に設定し、増肉加工を行ったところ、得られた増肉条材は全長に対して24mm下向きに曲がっていた。
【0105】
▲4▼ 変位量の計算及び矯正用変位の計算
増肉開始時の加熱部5の両側の条材部分1a、1bをそれぞれ片持ち梁とみなして、自由端の変位量を増肉開始時について計算し、表6に示す結果を得た。また、増肉終了時には条材が中子と一体となった両持ち梁とみなして、加熱部の変位量を計算し表6の結果を得た。更に、増肉開始時及び終了時についてそれぞれ、計算で求めた変位量を0に矯正するための加圧ローラ21、31による押し上げ量(矯正用変位)Δyを計算し、表6に示す結果を得た。
【0106】
【表6】
Figure 0003660793
【0107】
▲5▼ 押し上げ量の設定
固定側(後側条材部分1a)については、増肉開始時の押し上げ量を矯正用の押し上げ量Δym と設定した。すなわち、
Δym =0.624≒0.62(mm)
と設定した。一方、移動側(前側条材部分1b)は変位量が微小であるので、特に矯正は必要ないと判断し、押し上げ量は0に設定した。
【0108】
▲6▼ 増肉加工及び結果
増肉加工の開始前に、第一曲がり矯正手段の加圧ローラ21で後側条材部分1aを設定した押し上げ量Δym =0.62mmだけ押し上げ、その状態に保持して増肉加工を行った。増肉加工後、増肉条材の全長に対する曲がりを測定したところ、±4.5mmであり、矯正なしに比べて曲がりを大幅に減少させることができた。
【0109】
【発明の効果】
以上のように、本発明方法は、金属条材の加熱部の最軟部の両側に位置する前側条材部分と後側条材部分をそれぞれ、前記最軟部で切り離され、その最軟部側を自由端とする2本の片持ち梁とみなし、それぞれの片持ち梁に作用する自重によって、或いは中子を用いる場合には片持ち梁に作用する自重及び中子による荷重によって、各片持ち梁の自由端に生じる加工基準軸心からの変位量を計算すると共に、その変位量に基づいて、片持ち梁の自由端の変位を修正するように前記片持ち梁に加える矯正用変位、荷重若しくは曲げモーメントを求め、2本の片持ち梁について求めた二つの矯正用変位、荷重若しくは曲げモーメントをそれぞれ、対応する前側条材部分及び後側条材部分に加えた状態で増肉加工を行う構成としたことにより、増肉加工時に実際に条材に生じるたわみ変形にきわめて近似した計算によってたわみ矯正を行うことができ、従って、増肉加工中における加熱部を加工基準軸心の近傍に矯正して、加熱部に生じる恐れのある段差を抑制でき、曲がりの発生を防止しながら増肉加工を行うことができる。従って、本発明方法は、曲がりのほとんどない増肉加工条材を得ることができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の原理を説明するもので、(a)は増肉加工中の状態を示す概略側面図、(b)は片持ち梁とみなした条材部分1a、1bに生じる変位を示す概略側面図、(c)はその変位を矯正した状態を示す概略側面図
【図2】図1(b)に示す条材部分1a、1bの自由端の変位量と加熱部の位置との関係を示すグラフ
【図3】増肉開始時の変位量の計算条件を説明するもので、(a)は増肉開始時の状態を示す概略側面図、(b)は片持ち梁とみなした条材部分1aに作用する自重及び変位を示す概略側面図、(c)は片持ち梁とみなした条材部分1bに作用する自重及び変位を示す概略側面図
【図4】増肉終了時の変位量の計算条件を説明するもので、(a)は増肉終了時の状態を示す概略側面図、(b)(c)(d)は片持ち梁とみなした条材部分1aに作用する自重、荷重、及び変位を示す概略側面図、(c)は片持ち梁とみなした条材部分1bに作用する自重及び変位を示す概略側面図
【図5】増肉開始時の変位量の計算条件を説明するもので、(a)は増肉開始時の状態を示す概略側面図、(b)(c)(d)は片持ち梁とみなした条材部分1aに作用する自重、荷重、及び変位を示す概略側面図、(e)(f)(g)は片持ち梁とみなした条材部分1bに作用する自重、荷重、及び変位を示す概略側面図
【図6】実施例1〜6に用いる増肉加工装置を示すもので、(a)は増肉開始時の概略側面図、(b)は増肉終了時の概略側面図
【図7】本発明方法に使用する増肉加工装置の1例を示す概略垂直断面図
【図8】図7の矢印A−A方向の概略断面図
【図9】本発明方法に使用する増肉加工装置の他の例を示す概略垂直断面図
【符号の説明】
1 条材
1a 後側条材部分
1b 前側条材部分
1c 厚肉部
2 固定保持具
3 可動保持具
3A 圧縮装置
4 加熱装置
5 加熱部
6 冷却媒体
7 移動台
8 固定側ガイドローラ
9 移動側ガイドローラ
10 移動台
12 中子(熱処理用ダイス)
20 第一曲がり矯正手段
21 加圧ローラ
23 加圧シリンダ
30 第二曲がり矯正手段
31 加圧ローラ
33 加圧シリンダ

Claims (5)

  1. 増肉加工すべき金属条材の長手方向の小領域を局部的に加熱して加熱部を形成し、該加熱部を前記金属条材の長手方向に相対的に移動させながら圧縮力を付与して増肉させ、前記加熱部の後端部分を増肉直後に冷却する金属条材の増肉加工方法において、前記金属条材の加熱部の両側に位置する前側条材部分と後側条材部分をそれぞれ、前記加熱部で切り離され、その加熱部側を自由端とする2本の片持ち梁とみなし、それぞれの片持ち梁について、その片持ち梁に作用する自重によって片持ち梁の自由端に生じる加工基準軸心からの変位量を計算し、次いで、その片持ち梁に矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントを加えることによって、その片持ち梁の自由端を先に計算した変位量を生じる方向とは逆方向に矯正移動させるものとして、その片持ち梁に加える矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントの大きさを、先に計算した変位量に基づいて設定し、その設定した大きさの変位、荷重若しくは曲げモーメントを、対応する前側条材部分又は後側条材部分に加えた状態で増肉加工を行うことで加熱部に生じる恐れのある段差を抑制し、曲がりの発生を防止することを特徴とする金属条材の増肉加工方法。
  2. 増肉加工すべき金属条材である金属管の、増肉加工によって形成される厚肉部の内側に位置するように中子を配設しておき、その金属条材の長手方向の小領域を局部的に加熱して加熱部を形成し、該加熱部を前記金属条材の長手方向に相対的に移動させながら圧縮力を付与して増肉させ、前記加熱部の後端部分を増肉直後に冷却する金属条材の増肉加工方法において、前記金属条材の加熱部の両側に位置する前側条材部分と後側条材部分をそれぞれ、前記加熱部で切り離され、その加熱部側を自由端とする2本の片持ち梁とみなし、それぞれの片持ち梁について、その片持ち梁に作用する自重及び前記中子による荷重によって片持ち梁の自由端に生じる加工基準軸心からの変位量を計算し、次いで、その片持ち梁に矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントを加えることによって、その片持ち梁の自由端を先に計算した変位量を生じる方向とは逆方向に矯正移動させるものとして、その片持ち梁に加える矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントの大きさを、先に計算した変位量に基づいて設定し、その設定した大きさの変位、荷重若しくは曲げモーメントを、対応する前側条材部分又は後側条材部分に加えた状態で増肉加工を行うことで加熱部に生じる恐れのある段差を抑制し、曲がりの発生を防止することを特徴とする金属条材の増肉加工方法。
  3. 前記前側条材部分及び後側条材部分に加える矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントを、増肉加工中、一定に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の金属条材の増肉加工方法。
  4. 前記前側条材部分及び後側条材部分に加える矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントの大きさを設定するに当たって、加熱部が増肉開始位置にある場合と増肉終了位置にある場合についてそれぞれ、前記前側条材部分及び後側条材部分を片持ち梁とみなして、その片持ち梁の自由端に生じる加工基準軸心からの変位量を計算し、増肉開始位置及び増肉終了位置のそれぞれについて求めた変位量に基づいて、前記矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントの大きさを設定することを特徴とする請求項3記載の金属条材の増肉加工方法。
  5. 前記前側条材部分及び後側条材部分に加える矯正用の変位、荷重若しくは曲げモーメントの大きさが、加熱部の位置に応じて変化する片持ち梁の自由端の変位量に応じた値となるようにプログラム的に設定することを特徴とする請求項1又は2記載の金属条材の増肉加工方法。
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