JP3662051B2 - 起伏堰 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川、排水路等を堰止めると共に、魚等(蟹、泥鰌、鰻等を含む。)の上流側(あるいは下流側)への移動を可能とする魚道を備え、高さ15mを越えるダムタイプのものから通常の堰、あるいは、水門やバルブとして使用することのできる起伏堰に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、河川に設けられる堰には、ゲート堰、転倒堰、ゴム堰等があるが、これらはいずれも種々の問題を有している。すなわち、前記各堰では、上流側(あるいは下流側)に魚等が移動できるようにするため、堰を迂回するように魚道を設けたり、エレベータ等で適宜上流側(あるいは下流側)に搬送したりする等、大掛かりな構造とする必要があった。
【0003】
本願発明者はこれらの問題点を解決すべく起伏堰を発明し、既に出願を行っている(特開平6─180009号公報)。この起伏堰は、河床の幅方向に固定した支軸に一端縁部を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の他端縁部に設けた支軸に一端縁部を回動自在に連結され、その他端縁部が河床を摺動する下流側堰板と、前記両堰板を起立又は転倒させる駆動手段とを設けたものである。そして、この構成により、魚等が下流側堰板上を直接上流側(あるいは下流側)に移動できるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記起伏堰では、どのような魚でも上流側(あるいは下流側)に向かってスムーズに移動できるように下流側堰板の勾配を1/10以下に維持する必要がある。このため、堰止め量を多くすべく、上流側堰板の起立高さを高くすれば、それだけ下流側堰板の下流側への寸法が増大し、設置費用、占有スペース等の点で実用化に適さない場合がある。
【0005】
また、流量が減少すれば、下流側堰板の上面で魚等が上流側に移動できないような流れとなる。つまり、所望の越流高さが得られないという問題が発生する。逆に、所望の越流高さを確保しようとすれば堰としての役割を果さないことになる。このような越流高さの問題は河川の流動状態が変化して流量に偏りが出た場合にも発生する。
【0006】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、簡単な構造で上流側又は下流側への魚等の移動を容易とする起伏堰を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するため、本発明は、河床の幅方向に上流縁を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の下流縁に設けた支軸に上流縁を回動自在に連結され、その下流縁が河床を摺動する下流側堰板とを備えた起伏堰において、前記下流側堰板の上流縁から下流縁にかけて、流下方向に対して傾斜する、凹溝からなる魚道を形成し、前記下流側堰板には、前記凹溝の上方開口を上流側から閉塞し、かつ、その閉鎖寸法を調整可能な蓋体を設けたものである。
【0008】
この構成により、下流側堰板に比べて魚道の勾配を小さくすることができ、両堰板の起立位置に拘わらず、上流側(あるいは下流側)への魚等(蟹や泥鰌、鰻等を含む)の移動が可能となる。また、下流側堰板に直接魚道を設けるようにしたので、魚道長さを最小限に抑制することができ、上流側(あるいは下流側)への魚等の移動をスムーズに行わせることが可能である。さらに、魚等は、凹溝がそれ程深くなくても流水抵抗を受けにくく、取り等の外敵からも適切に保護される。なお、前記蓋体の閉鎖寸法の調整は、蓋体に長穴を形成し、この長穴を介して下流側堰板にねじ止めする構成としたり、前記蓋体と下流側堰板とを複数の連結棒により回動可能に連結し、川岸側に延設した操作部を川幅方向に操作して前記連結棒の回動位置を変更したりする構成等とすればよい。
【0009】
前記課題を達成するため、本発明は、河床の幅方向に上流縁を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の下流縁に設けた支軸に上流縁を回動自在に連結され、その下流縁が河床を摺動する下流側堰板とを備えた起伏堰において、前記下流側堰板の上流縁から下流縁にかけて、流下方向に対して傾斜する、凹溝からなる魚道を形成し、前記上流側堰板には、前記魚道の上流端部及び下流端部の上流位置を除いて、下流側斜め上方への突出寸法を調整可能な補助板を取り付けたものである。
【0010】
この構成により、補助板の突出寸法を調整することにより、両堰板の起立位置よりも高い位置で流水を堰止めることができる。この場合、前記補助板は、魚道の最上流位置には設けられていないため、魚道を上ってきた魚はスムーズに上流側へと移動して行くことができる。特に、魚道内は流れの遅い下流領域に該当するため、魚が上流側へと移動するには都合がよい。また、水量が少なくなった場合でも、下流側堰板の魚道には水が流れるので、下流側堰板が日射により温度上昇し過ぎず、下流側堰板の変形を阻止可能となる。また、最下流部の水量が他の部分に比べて多くなり、水しぶきが上がるので、魚がこの音に反応して集まりやすくなる。さらに、水量が多くなった分、魚は上流側へと移動しやすくなる。
【0011】
前記課題を達成するため、本発明は、河床の幅方向に上流縁を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の下流縁に設けた支軸に上流縁を回動自在に連結され、その下流縁が河床を摺動する下流側堰板とを備えた起伏堰において、前記下流側堰板の上流縁から下流縁にかけて、流下方向に対して傾斜する、凹溝からなる魚道を形成し、前記両堰板には、堰止め位置のさらに上流側の水位を調整可能な略同一構成の上流側補助堰板、下流側補助堰板及び補助駆動手段からなる自動補助起伏堰を設けたものである。
【0012】
この構成により、前記補助板を設ける場合に比べて広い範囲で水位を調整することができるだけでなく、魚道内を流下する水量も簡単に調整することが可能となる。
【0013】
前記課題を達成するため、本発明は、河床の幅方向に固定された支軸に一端縁部を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の他端側縁部に設けた支軸に一端縁部を回動自在に連結され、その他端縁部が河床を摺動する下流側堰板とを備えた起伏堰を川幅方向に複数並設し、各起伏堰の間には隙間が生じないように河床からガイド壁を立設し、各起伏堰には起立位置を同じにした場合、同一直線上に位置する魚道を形成すると共に、前記ガイド壁には各起伏堰の起立位置を変更しても、魚道が同一直線上に位置すれば、それらを連通する逃がし凹部を形成することにより、前記魚道及び逃がし凹部で上流側から下流側に流下するようにしたものである。
【0014】
この構成により、河川の幅寸法が大きい場合であっても、前記起伏堰によって対応することができると共に、魚道の勾配を十分に小さく設定することが可能である。しかも、ガイド壁によって両堰板がガイドされるので、強度面でも優れている上、両堰板の起立位置が多少変更しても、ガイド壁に形成した逃がし凹部により適切に魚道が連通する。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0031】
(第1の実施の形態)図1は、第1の実施の形態に係る起伏堰1を示し、下記する下流側堰板4に形成した魚道11以外は従来例に係る起伏堰とほぼ同様な構成である。すなわち、この起伏堰1は、コンクリート等の河床2上に支軸2aを中心として上流縁を回動自在に設けた上流側堰板3と、この上流側堰板3の下流縁に設けた支軸3aを中心として上流縁を回動自在に連結され、その下流縁が河床2を摺動する下流側堰板4と、前記両堰板3,4を起立又は転倒させる駆動手段5とを備えたものである。
【0032】
前記両堰板3,4には、錆止め処理が施された鋼板や、強化プラスチックボード、鋼板の両面に樹脂板を配設したサンドイッチ構造の板、鋼板を所定間隔で配設して複数のリブで連結したハニカム構造の板等が使用でき、両側部には防水性を有するゴム、プラスチック等の封止部材6(図中、手前側の縁には図示せず。)が一体化されている。
【0033】
前記両堰板3,4が配設される河川の両岸は、前記河床2に連続してコンクリート等で側壁7(図中、手前側は省略)が形成され、前記封止部材6が摺接する部分にはメタル8が一体化されている。メタル8に使用できる材料としては、例えば、ステンレス(SUS304)、炭素鋼(SS400)等がある。勿論、炭素鋼を使用する場合には、その表面は塗装により錆止めしておく必要がある。
【0034】
また、前記駆動手段5には、上流側堰板3をシリンダにより回動させる、モータの駆動によりワイヤ等を介して下流側堰板4の下流縁を引っ張る等の機構が採用可能で(本実施の形態ではシリンダを採用)、起伏堰1の重量等に応じて適切な数を配置すればよい。ただし、起伏堰1を安価に形成する場合には、前記駆動手段5は必ずしも必要ではなく、起立堰1が転倒しないように所定の起立位置に維持可能な構造を設け、必要に応じてクレーン等により起立位置を変更できるようにすればよい。前記起伏堰1の起立位置を維持するための構造としては、例えば、支軸3aの両端部をワイヤ等で両岸に固定したり、下流側堰板4の下流縁を河床2から適宜立設させた支持部材により支持する構造等が採用可能である。
【0035】
前記下流側堰板4の下流縁が摺動する河床2には溝部9が形成されている。この溝部9は、魚等(蟹や泥鰌、鰻等を含む。)がよく移動する河川の両岸近傍に設けられる。そして、下流側堰板4の下流縁の摺動位置に拘わらず、下記する下流側堰板4の凹溝12に連通するようになっている。但し、前記溝部9は、流水状態の違いや変化に応じて河川の中央部等、種々の場所に設けることができるのは言うまでもない。
前記下流側堰板4の下流縁が摺動する河床2には溝部9が形成されている。この溝部9は、魚等(蟹や泥鰌、鰻等を含む。)がよく移動する河川の両岸近傍に設けられる。そして、下流側堰板4の下流縁の摺動位置に拘わらず、下記する下流側堰板4の凹溝12に連通するようになっている。但し、前記溝部9は、流水状態の違いや変化に応じて河川の中央部等、種々の場所に設けることができるのは言うまでもない。
【0036】
前記下流側堰板4の下流縁には、図2に示すように、前記溝部9内を摺接する摺接部材10を設けるようにするのが好ましい。この摺接部材10は、例えば、弾性を有する複数の紐状材で構成したものや、硬質な棒状体等が使用可能で、前記溝部内に配設した砂、砂利等の粒状物から藻等を除去し、苔の発生しやすい状態とすることにより魚等が好んで移動しやすい環境を形成する。
【0037】
前記下流側堰板4には魚道11が形成されている。この魚道11は、下流側堰板4に形成される凹溝12と、この凹溝12を覆う蓋体13とで構成される。凹溝12は下流側堰板4の上流縁から下流縁にかけて流下方向に対して傾斜するように設けられる傾斜部14と下流端部に流下方向に沿うように設けられる直線部15とからなり、断面半円状で、プレス加工等により形成される。前記凹溝12の傾斜部14の傾斜角度は、両堰板3,4を最大起立位置まで起立させたとしても、魚道11の勾配が1/10以下となるような値とされている。
【0038】
前記蓋体13は、下流側堰板4の上流側から前記凹溝12を覆うように取り付けられる。詳しくは、蓋体13には幅方向に長穴13aが穿設され、この長穴13aを介して下流側堰板4にねじ止めされている。したがって、長穴13aに対するねじの位置を変更することにより、凹溝12を覆う蓋体13の突出(閉塞)寸法を調整することができる。これにより、凹溝12内に、光を多く取り入れたり(魚は暗い場所への移動を嫌う場合が多いため有効である。)、ゴミ等が溜まらないようにする場合には、蓋体13による突出寸法を少なくすればよく、外敵(例えば、鳥等)から保護する場合には、閉塞寸法を多くすればよい(例えば、全閉としてもよい。)。この場合、前記蓋体13を透明なアクリル板等の透光性を有する材料で構成するようにすれば、魚道11内の光量不足の問題は発生しない。なお、前記蓋体13は必ずしも必要なものではなく、起伏堰1の設置場所、流速等の諸条件により、凹溝12内の流れが下流側堰板4の上面を流れる流水の影響を大きく受けない場合には不要である。
【0039】
前記構成の魚道11を備えた起伏堰1は、河川の複数箇所に設けられ、流水を順次堰き止める。そして、河川の水量に合わせて両堰板3,4の起立位置を変更して使用する。両堰板3,4の起立位置は、水位よりも若干低い位置とするのが好ましい。このようにして使用される起伏堰1では、魚は次のようにして上流側に移動可能である。
【0040】
すなわち、魚は、主に両岸近傍の溝部9を上流側(あるいは下流側)に向かって移動する。両岸近傍では前記溝部9のために他の部分に比べて水量が多く、流速も遅いため、魚が移動しやすい。また、河川の水位が低下しても、前記溝部9により所定の水量が保証され、前記下流側堰板4に形成した凹溝12からも上流側の流水が流れ込んでくるので、魚の移動が妨げられることはない。
【0041】
こうして、起伏堰1に至った魚は、水位が十分に高く、かつ、両堰板3,4の起立位置が低くて下流側堰板4の勾配が1/10以下である場合には、下流側堰板4の魚道11のみならず、他の部分をも通過して上流側(あるいは下流側)へと向かうことができる。
【0042】
一方、水位が低いか、あるいは、両堰板3,4の起立位置が高く、下流側堰板4の勾配が1/10を越える場合には、傾斜部14を上流側へと移動することができる。この場合、下流側から移動してきた魚は、河床2での移動方向と同じ方向に形成した直線部15に進入した後、傾斜部14へと移動して行ける。また、魚道11は凹溝12を蓋体13で覆った構成であるので、流速が遅く、上流側への移動は容易である。
【0043】
なお、前記第1の実施の形態では、蓋体13は、図3に示すように、下流側堰板4の凹溝12の上流側に回動可能に設けた複数の連結棒16に連結し、これら連結棒16の回動位置を変更することにより、蓋体13の凹溝12に対する突出寸法を調整可能としてもよい。これによれば、蓋体13自身に操作部材17を連結して、河川の岸から凹溝12に対する突出寸法を調整することができ、前記長穴13aを利用するものに比べて調整作業が容易である。
【0044】
また、前記凹溝12は半円状としたが、四角形や逆三角形等の種々の形状に形成してもよく、要は起伏堰1の起立位置に拘わらず、凹溝12内に所定水位を維持できる形状とすればよい。但し、ゴミ等が溜まりにくく、水をスムーズに流下させるという点で半円状等の滑らかに形状変化する構成とするのが好ましい。
【0045】
また、前記凹溝12の下流端部のみに直線部15を形成するようにしたが、上流端部のみに形成したり、あるいは、両端部に形成するようにしてもよい。直線部15を上流端部にも形成するようにしたのは、魚が下流側へも魚道11を介して移動しやすくするためである。つまり、下流側堰板4の勾配が大きい場合(1/10を越える場合)、この下流側堰板4での魚の移動速度が速く、傷付く危険が高くなるため、前記直線部15を上流側端部に設けることにより、魚道11への進入を容易として下流側に傷付く心配なくスムーズに移動させることが可能となる。
【0046】
また、前記凹溝12の底面に複数の突出部を設けて流水を突出部に沿った滑らかな流れとすれば、魚等が上流側に向かってスムーズに移動して行くことができる。
【0047】
前記突出部としては、図4(a)に示す無数の突起18aからなるものや、図4(b)に示す流下方向に傾斜して並設される複数の突条18bからなるものや、図4(c)に示す流下方向に直交して並設される複数の突条18cからなるもの等、種々の形状のものが適用可能である。そして、前記各突出部18a,18b,18cは、魚道11の内面に粒子を吹き付けて付着させたり、板材を溶接等により一体化したり、魚道11を構成する板材自身にプレス加工により形成したり、突出部を有するシートを張り付る等、種々の方法により形成すればよい。
【0048】
この外、前記突出部を、図15に示すように、中空空間100aを有すると共に、複数の貫通孔100bを備えたブロック100で構成するようにしてもよい。このブロック100は、コンクリートや強化プラスチック等の強度の高い種々の材料で形成できる。ブロック100は、魚道11のみならず、コンクリート等で形成された河床2に固定あるいは載置するようにしてもよい。ただし、増水時に流されないように固定しておく方が好ましい。また、ブロック100の突出方向、長さも自由に設定すればよく、要はより自然に近い状態でブロック100の下流側に魚等が流れを避けることのできるような領域を形成できるものであればよい。前記中空空間100a内には水草等の種を入れておくのが好ましい。成長した水草等は前記貫通孔100bを介してブロック100の外に伸び、単にブロックの表面から伸びたもののようにはがれ落ちて流されるといったことがなく、常に自然に近い状態を維持することができる。また、前記貫通孔100bには、水草等が成長することによりブロック100が亀裂等の損傷を受けないように、貫通孔100bに金属製等のリングをはめ込んだり、外表面に鉄板等の保護枠を設けるようにしてもよい。
【0049】
また、前記魚道11は凹溝12と蓋体13とで構成するようにしたが、筒状体や、断面U字形あるいは断面コ字形等の溝部材で構成するようにしてもよい。これらは、下流側堰板4に直接、溶接、ボルト止め等で固定してもよいが、下流側堰板4の上流縁に回動可能に連結するのが好ましい。これによれば、下流側堰板4の勾配に拘わらず、魚道11の勾配を自由に調整できる。前記筒状体や溝部材は、流水がスムーズに流れるように、流下方向に対して滑らかに変化する形状とするのが好ましい。前記筒状体や溝状部は中間部に蛇腹部を形成して屈曲可能としたり、全体を可撓性を有する構成としてもよいが、この場合には前記筒状体等を任意の位置で位置決めできるようにする必要がある。なお、筒状体の場合、透明材料で構成して内部に光を取り入れることができるようにしたり、複数の貫通孔を穿設して下流側堰板4上面の流水や、この流水が少ない場合には空気(酸素)を内部に取り入れることができるようにするのが好ましい。
【0050】
(第2の実施の形態)図5は第2の実施の形態に係る起伏堰20を示す。この起伏堰20は、前記第1の実施の形態とは、上流側堰板21、下流側堰板22及び駆動手段23を備えている点等では共通しているが、魚道24が下流側に向かって傾斜方向の異なる2本の凹溝25a,25bで形成され、凹溝25a,25bの中間部は互いに連通するように交差している点では相違している。
【0051】
前記各凹溝25a,25bの下流端部は河川の両岸側にそれぞれ位置している。これは、通常、河川の両岸近傍では流速が遅く、魚はこの流速の遅い部分を好んで上流側に移動することから、魚が魚道24に進入しやすいようにするためである。
【0052】
前記構成の起伏堰20によれば、河川を上流側に移動する魚が好んで通過する両岸近傍に魚道24の下流端部を位置させて魚道24内に魚が進入しやすいようにしたので、魚道24を有効利用できる構成とすることが可能である。
【0053】
なお、前記第2の実施の形態に係る起伏堰20では、魚道24を2本の凹溝25a,25bを設けて両者を中間部で連通させる構成としたが、さらに枝分かれさせるようにしてもよい。例えば、水位が低くなった場合、河川の中央部のみで流下することが多いため、魚道24の下流端部をその位置に開口する必要があるからである(図中、2点鎖線で示す。)。また、前記第1の実施の形態と同様に、凹溝25a又は25bの端部に直線部を形成したり、凹溝25a又は25bに蓋体を設けたり、凹溝25a又は25bの内面に複数の突出部を設けたり、あるいは、凹溝25a,25b内に筒状体を配設するようにしてもよいことは勿論である。さらに、前記各凹溝25a,25bは移動する魚の種類等に応じて幅や深さ等を変更するようにしてもよい。
【0054】
(第3の実施の形態)図6は第3の実施の形態に係る起伏堰30を示す。この起伏堰30は、前記第1及び第2の実施の形態とは、上流側堰板31、下流側堰板32及び駆動手段33を備えている点等では共通しているが、魚道34が中間部分で屈曲し、その屈曲部分に魚が休息することのできる滞留部35が形成されている点では相違している。
【0055】
前記起伏堰30によれば、起立位置が高く、かつ、河川(下流側堰板3)の幅が狭いことにより、前記各実施の形態のような構成では下流方向に対する魚道の勾配を1/10以下にできない場合であっても、前述のように、魚道34の中間部分を屈曲させ、各傾斜部34a,34bの勾配を抑えることにより、上流側(あるいは下流側)に魚が移動可能である。
【0056】
また、前記魚道34には滞留部35が形成され、そこでは水はある程度澱んだ状態となっているため、魚が押し流されることがない。したがって、魚道34の傾斜部34aを上ってきた魚は、一旦滞留部35で休憩して方向変換した後、さらに魚道34の傾斜部34bを上って行けばよく、スムーズに上流側へと移動可能である。
【0057】
なお、前記魚道34には滞留部35を形成するようにしたが、魚道34の全長がそれ程長くなく、魚が十分に上流側に移動できる場合等には不要である。また、前記魚道34は、必ずしも直線的に形成する必要はなく、所定の勾配(例えば、1/10以下の勾配)を維持できるのであれば、蛇行するように形成してもよいことは勿論である。
【0058】
また、前記滞留部35は、必ずしも魚道34の屈曲部分に設ける必要はなく、傾斜部34a,34bが長い場合や、傾斜部34a,34bが短くても上って行くことのできない魚が移動する場合には、傾斜部34a,34bの途中に滞留部35を形成してもよいことは勿論である。
【0059】
(第4の実施の形態)図7は第4の実施の形態に係る起伏堰40を示す。この起伏堰40は、前記各実施の形態とは、下流側堰板41、上流側堰板42及び駆動手段43を備えている点等では共通しているが、下流側堰板3の表面に魚道44を構成する仕切壁45を支軸45aを中心として回動可能に設けた点では相違している。
【0060】
前記仕切壁45は起伏堰40を起立させている状態では、その下流側表面を下流側堰板3から突設させた複数のリブ46(図8参照)によって支持され、上流側に下流側堰板42の表面とで溝状部47を形成できるようになっている。そして、起立堰40を平坦に転倒させた状態では、前記仕切壁45をリブ46に対して反対側に回動させることにより、下流側堰板42から突出しないようにする。これにより、前記仕切壁45が流下の邪魔となることがなく、常にスムーズな流れが確保される。
【0061】
なお、前記仕切壁45は下流側表面をリブ46で支持することにより、水圧に耐えて下流側堰板43との間に溝状部47を形成可能な構成としたが、リブ46を設けることなく、仕切壁45をシリンダ(図示せず)によって回動可能とする等、種々の構成を採用可能である。つまり、前記溝状部47を魚道44として利用する際には所定の水圧に耐えることができ、かつ、折り畳むことのできる構成であればよい。そして、折り畳んだ際、下流側堰板43と略面一となるように下流側堰板43に凹部(図示せず)を形成するのがさらに好ましい。
【0062】
また、前記仕切壁45は、必ずしも回動可能な構成とする必要はなく、溶接等で下流側堰板43に一体化するようにしてもよい。この場合、例えば、河川の流水状況が変化する等により魚道位置を変更する必要が生じれば、仕切壁45の一部を切断し、新たに仕切壁45を接続する等により比較的簡単に対応することができる。
【0063】
(第5の実施の形態)図9は第5の実施の形態に係る起伏堰50を示す。この起伏堰50は、前記各実施の形態とは、上流側堰板51、下流側堰板52及び駆動手段53を備えている点等では共通しているが、上流側堰板51には上流縁に沿って鋼板等からなる複数の補助板54が長穴54aを介してねじ止め固定されている点では相違している。
【0064】
前記各補助板54は、上流側堰板51から下流側に向かって斜め上方に突出するように固定され、その突出寸法は前記長穴54aを利用することにより調整可能となっている。前記補助板54は、1箇所あるいは必要に応じて複数箇所で上流側堰板52からの突出寸法をゼロとされる。具体的に、魚道55の上流開口が位置する部分には、魚の移動のために補助板54の突出寸法をゼロとする(図9では、この位置に補助板54を設けないようにしている。)。また、前記補助板54を1枚物で構成してもよいが、河川の流水状態の経時変化(中央を流れていたものが、地形の変化等により一方の岸近傍を流れる場合等)を考慮すれば、複数枚で構成する方が柔軟に対応することができる。
【0065】
前記補助板54によれば、上流側堰板51からの突出寸法を調整することにより堰止め水位を調整可能であり、駆動手段53により起伏堰50の起立高さを調整する場合に比べて簡単に対応することができる。しかも、水圧に逆らって起立堰50を起立させる場合のように多大なエネルギーを必要としない。ただし、前記補助板54は上流側堰板51にねじ止めしただけの構造であるため、堰き止めることができる水量には限界があり、水位の上昇寸法が、例えば、20cm以内である場合にのみ利用可能である。したがって、水位の上昇寸法が20cmを越えれば、起伏堰50の起立位置を調整することにより対処する必要がある。
【0066】
なお、前記補助板54は、図10に示すように、魚道55の下流側端部の上流位置でも、突出寸法をゼロとしたり、設けないようにするのが好ましい。すなわち、この位置に補助板54を突出させないことにより、魚道55の下流側端部には他の部分に比べて多くの流水を供給できる。魚道55の下流側端部では、水しぶき等に基づく音が発生し、魚がこの音に反応して集まると共に、水量が多くなることにより魚道55内へと進入しやすくなる。また、この第5の実施の形態でも、前記各実施の形態で採用したのと同様な魚道を採用可能である。
【0067】
(第6の実施の形態)図11は第6の実施の形態に係る起伏堰60を示す。この起伏堰60は、前記各実施の形態とは、上流側堰板61、下流側堰板62及び駆動手段63を備えている点等では共通しているが、前記下流側堰板62を、上流側堰板61との連結部分である支軸61aの近傍で内方に折り曲げられることにより形成された平坦部64を有している点では相違している。
【0068】
前記平坦部64の両縁は角張らないように面取りを施したり円弧状とされている。これにより、勾配の変化が滑らかになるので、魚が上流側(あるいは下流側)へとスムーズに移動して行くことができ、傷付くこともない。また、前記平坦部64により起伏堰全体の機械的強度が向上する上、前述のように、魚道を凹溝で構成する場合には上流側との接続構造が簡単となる(図11中、2点鎖線で示すように、凹溝を形成するだけでよい。)。しかも、前記平坦部64は、水位が低い場合に歩道等としても利用することができ、修理箇所が発生した場合には、この平坦部64を移動すればよく便利である。なお、前記平坦部64は下流側堰板62に限らず、上流側堰板61に形成してもよい。
【0069】
(第7の実施の形態)図12は第7の実施の形態に係る起伏堰70を示す。この起伏堰70は、前記各実施の形態とは、上流側堰板71、下流側堰板72及び駆動手段73を備えている点等では共通しているが、起伏堰70の上部にさらに小型の補助起伏堰74が設けられている点では相違している。
【0070】
前記補助起伏堰74は、上流側補助堰板75、下流側補助堰板76及び補助駆動手段77を備えている。上流側補助堰板75の上流縁は、前記両堰板71,72を連結する支軸71aに回動自在に連結されている。上流側補助堰板75の下流縁には支軸75aを中心として下流側補助堰板76の上流縁が回動自在に連結されている。下流側補助堰板76の下流縁は下流側堰板76の上面を摺動するようになっており、そこに連結されるシリンダ等の補助駆動手段77によって起伏堰70の起立位置が調整される。
【0071】
前記構成の起伏堰では、通常の少ない水位の変化であれば、前記両補助堰板75,76の起立位置を調整することにより対応する。例えば、1年間での河川の水位変化の統計をとることにより、前記補助起伏堰74で最大限カバーできるようにすればよい。前記補助起伏堰74によれば、前記起伏堰70の起立位置を調整する場合に比べて消費エネルギーが少なくて済み、迅速に対応することが可能である。つまり、起伏堰70の上流側堰板71に作用する水圧は大きいため、その起立位置を変更する場合には制約があるからである。
【0072】
なお、前記両補助堰板75,76は、前記両堰板71,72を平坦に転倒する場合には、同様に平坦に転倒させておくことにより流動の妨げとなることはない。また、前記上流側補助堰板75の上流縁は支軸71aに設けるようにしたが、他の部分、例えば、上流側堰板71や下流側堰板72に別途支軸(図示せず)を固定し、この支軸に連結するようにしてもよいことは勿論である。
【0073】
(第8の実施の形態)図13は第8の実施の形態に係る起伏堰80を示す。この起伏堰80は、前記各実施の形態とは、上流側堰板81、下流側堰板82及び駆動手段83を備えている点等では共通しているが、前記両堰板81,82に開閉手段84a,84bを有すると共に、魚等が移動可能な貫通孔85a,85bがそれぞれ穿設されることにより、両堰板81,82の内面と河床86の上面とで形成される内部空間87内に流水が導入可能となっている点で相違している。
【0074】
前記開閉手段84a,84bとしては、バルブやスライド式の板材等が使用可能である(図13に示す開閉手段84a,84bはスライド式の開閉板で構成されている。この場合、各開閉板は流下方向の上流側で各貫通孔85a,85bを閉塞するようにするのが好ましい。また、各開閉板と堰板81,82とはパッキン等で水密状態とするのが好ましい。)。また、前記貫通孔85a,85bの数は幾つであってもよいが、上流側堰板81に設ける貫通孔85aの数を多くする場合には、水圧との関係で下流側堰板82には前記上流側堰板81と同様な高い強度を有する構造が要求される。
【0075】
このような構成の起伏堰80では、まず、上流側堰板81の貫通孔85aを開放し、内部空間87内に上流側の流水を取り込む。そして、前記上流側堰板81の貫通孔85aを一旦閉塞し、下流側堰板82の貫通孔85bを開放する。これにより、下流側の魚等は前記内部空間87内に移動可能となる。こうして内部空間87内に魚等が移動すれば、一旦下流側堰板82の貫通孔85bを閉塞し、上流側堰板81の貫通孔85aを開放することにより、魚等を上流側に移動可能とする。
【0076】
この場合、前記各開閉手段84a,84bは前記順序で所定時間周期で自動的に貫通孔85a,85bを開閉するような構成とするのが好ましい。また、下流側堰板82に貫通孔85bを穿設する代わりに、その下流縁が摺動する河床86に前記内部空間87と下流側とを連通する溝等を形成するようにしても構わない。さらに、前記各開閉手段84a,84b及び貫通孔85a,85bは魚道として利用するだけでなく、上流側水位が高いために水圧が大きく、起伏堰80の起立位置を変更できない場合に放水用として利用してもよい。すなわち、両貫通孔85a,85bを開口することにより、上流側に堰き止めていた水を下流側に流下させて水位を低下させた後、起伏堰80の起立位置を変更するものである。
【0077】
(第9の実施の形態)図14は第9の実施の形態に係る起伏堰90を示す。この起伏堰90は、前記各実施の形態で説明したのと同様な起伏堰91a、91bを河川の幅方向に並設したもので、各起伏堰91a,91bの間には、河床92から立設させたガイド壁93が位置している。各起伏堰91a,91bは、上流側堰板94a,94b、下流側堰板95a,95b及び駆動手段96a,96bを備え、前記各起伏堰91a,91bの下流側堰板94a,94bには凹溝97a,97bがそれぞれ形成されている。下流側堰板95aに形成された凹溝97aの一端部は下流縁に位置し、他端部は側縁に位置する。一方、下流側堰板95bに形成された凹溝97bの一端部は側縁に位置し、他端部は上流縁に位置する。また、前記ガイド壁93には、前記両凹溝97a,97bを連通する逃がし凹部98が形成されている。この逃がし凹部98は、前記各起伏堰92a,91bの起立位置が多少変化しても、前記両凹溝97a,97b同士を連通可能なように幅及び深さが大きめに形成されている。
【0078】
このように、起伏堰91a,91bを並設するようにしたので、河川の幅寸法が大きい場合でも対応することができると共に、1つの起伏堰では起立位置が高くて魚道に所望の勾配を得られない場合であっても、魚道を途中で屈曲させることなく、対応することができる。
【0079】
なお、前記第9の実施の形態では、2つの起伏堰91a,91bを並設する場合について説明したが、河川の幅寸法に応じて3以上としてもよいことは勿論である。この場合、魚道は全ての下流側堰板に形成した凹溝によって形成されるようにしなくてもよく、通常使用される起伏堰の起立位置に応じて適切な構成とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図2】 図1の部分拡大図である。
【図3】 図1の蓋体の突出寸法を調整可能とする機構を示す部分拡大図である。
【図4】 (a)〜(c)は、図1の凹溝に形成する突出部の種々の形態を示す部分正面図である。
【図5】 第2の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図6】 第3の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図7】 第4の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図8】 図7の部分側面図である。
【図9】 第5の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図10】 第6の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図11】 第7の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図12】 第8の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図13】 第9の実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図14】 第10実施の形態に係る起伏堰の斜視図である。
【図15】 突出部の一態様を示す断面図である。
【符号の説明】
2 河床
3 上流側堰板
4 下流側堰板
2a,3a 支軸
5 駆動手段
11 魚道
Claims (4)
- 河床の幅方向に上流縁を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の下流縁に設けた支軸に上流縁を回動自在に連結され、その下流縁が河床を摺動する下流側堰板とを備えた起伏堰において、
前記下流側堰板の上流縁から下流縁にかけて、流下方向に対して傾斜する、凹溝からなる魚道を形成し、
前記下流側堰板には、前記凹溝の上方開口を上流側から閉塞し、かつ、その閉鎖寸法を調整可能な蓋体を設けたことを特徴とする起伏堰。 - 河床の幅方向に上流縁を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の下流縁に設けた支軸に上流縁を回動自在に連結され、その下流縁が河床を摺動する下流側堰板とを備えた起伏堰において、
前記下流側堰板の上流縁から下流縁にかけて、流下方向に対して傾斜する、凹溝からなる魚道を形成し、
前記上流側堰板には、前記魚道の上流端部及び下流端部の上流位置を除いて、下流側斜め上方への突出寸法を調整可能な補助板を取り付けたことを特徴とする起伏堰。 - 河床の幅方向に上流縁を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の下流縁に設けた支軸に上流縁を回動自在に連結され、その下流縁が河床を摺動する下流側堰板とを備えた起伏堰において、
前記下流側堰板の上流縁から下流縁にかけて、流下方向に対して傾斜する、凹溝からなる魚道を形成し、
前記両堰板には、堰止め位置のさらに上流側の水位を調整可能な略同一構成の上流側補助堰板、下流側補助堰板及び補助駆動手段からなる自動補助起伏堰を設けたことを特徴とする起伏堰。 - 河床の幅方向に固定された支軸に一端縁部を回動自在に取り付けられた上流側堰板と、該上流側堰板の他端側縁部に設けた支軸に一端縁部を回動自在に連結され、その他端縁部が河床を摺動する下流側堰板とを備えた起伏堰を川幅方向に複数並設し、各起伏堰の間には隙間が生じないように河床からガイド壁を立設し、各起伏堰には起立位置を同じにした場合、同一直線上に位置する魚道を形成すると共に、前記ガイド壁には各起伏堰の起立位置を変更しても、魚道が同一直線上に位置すれば、それらを連通する逃がし凹部を形成することにより、前記魚道及び逃がし凹部で上流側から下流側に流下するようにしたことを特徴とする起伏堰。
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