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JP3662436B2 - ゴルフボールカバー用組成物及びそれを用いたゴルフボール - Google Patents
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ゴルフボールカバー用組成物及びそれを用いたゴルフボール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフボールカバー用組成物に関し、より詳細にはゴルフボールとしたときに、優れたスピン性能を示し、ラフからのショットであってもフライヤー現象が起こりにくく、しかも高反発性能、高耐久性を示すゴルフボールカバー用組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ラウンド用ゴルフボールとしては、ポリブタジエンを主材とするゴム組成物の加硫成形体からなるソリッドコアをカバーで被覆したソリッドゴルフボールや、ゴム系または液系のセンターに糸ゴムを巻き付けることによって形成した糸巻きコアにカバーを被覆した糸巻きゴルフボールが多用されてきたが、ボールの種類にかかわらず、プレー中にボールが深い芝生に入り込むことがしばしばあり、このとき次のような問題があった。
【0003】
その深い芝生からのショットでは、芝がクラブフェースとボールとの間に噛み込むため、バックスピン量が減少してボールが高くあがってしまうフライヤー現象が生じ、アプローチショットでのコントロール性を損なわせる原因の一つとなっていた。
【0004】
このフライヤー現象はソリッドゴルフボール、糸巻きゴルフボールのいずれにも生じるが、その生じやすさをカバー別で検討してみると、アイオノマーを用いたカバー(以下、「アイオノマーカバー」と記すことがある)ではフライヤー現象が生じやすく、他方バラタ(トランスポリイソプレン)を用いたカバー(以下、「バラタカバー」と記すことがある)ではフライヤー現象が生じにくかった。しかし、このバラタカバーはアイオノマーカバーに比べて反発性能が低いという問題があり、このためバラタカバーを用いた糸巻きゴルフボールは、アイオノマーカバーを用いたツーピースソリッドゴルフボールに比べて飛距離が劣るという問題があった。またバラタカバーは、アイオノマーカバーに比べて耐久性に劣るという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は優れたスピン性能を示し、ラフからのショットであってもフライヤー現象が起こりにくく、しかも高反発性能、高耐久性を示すゴルフボールカバー用組成物を提供する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、主な基材樹脂としてアイオノマーを用いるゴルフボールカバー用組成物であって、
周波数10Hz、昇温速度4℃/分で測定される動的粘弾性の温度分散曲線における、動歪0.25%(ただし、片振幅)、23℃の複素弾性率が600〜2,500kgf/cm2の範囲であり、
tanδ(損失正接)に基づくガラス転移温度が−60〜−30℃の範囲であることを特徴とするゴルフボールカバー用組成物が提供される。
【0007】
ここで、0℃におけるtanδが0.19以下であり、−20℃におけるtanδが0.06以上であるのが好ましい。また前記基材樹脂中にゴム成分、特にブチルゴムを含有させているのがよい。
【0008】
また本発明によれば、アイオノマーを主体とする基材樹脂100重量部に対してブチルゴムを15〜50重量部の範囲含有するゴルフボールカバー用組成物が提供される。
【0009】
さらに本発明によれば、コアとカバーを備えたゴルフボールにおいて、該カバーが上記記載のいずれかのゴルフボールカバー用組成物で形成されていることを特徴とするゴルフボールが提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず請求項1に係る発明について説明すると、本発明者等は上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ゴルフのラウンドプレー中に生じるフライヤー現象は、特定の動歪量で測定したカバー組成物の動的硬さ、すなわち複素弾性率と相関関係があるという新たな知見を得、より詳細にはカバー組成物の複素弾性率が小さいほどラフからのショットでもボールスピン量が保持されてフライヤー現象が生じにくくなるという知見を得て本発明をなすに至った。
【0011】
請求項1に係る発明の大きな特徴は、主な基材樹脂としてアイオノマーを用い、ゴルフボールカバー用組成物の複素弾性率を600〜2,500kgf/cm2の範囲とし、且つtanδに基づくガラス転移温度を−60〜−30℃の範囲とした点にある。
【0012】
従来使用されていたカバー組成物は、複素弾性率が1,500〜3,500kgf/cm2で、且つtanδに基づくガラス転移温度は存在しておらず、ショートアイアンやサンドウェッジなどによるアプローチショットではフライヤー現象が起こりやすかったが、本発明では、複素弾性率を低くし、且つガラス転移温度を上記範囲とすることによってフライヤー現象を抑えることができた。複素弾性率が600kgf/cm2より小さいと、反発性能や耐久性の低下を招きやすく、他方2,500kgf/cm2より大きいと、フライヤー現象が生じやすくなる。前記複素弾性率の好ましい下限値は800kgf/cm2であり、好ましい上限値は2200kgf/cm2である。
【0013】
なお本発明における複素弾性率は、粘弾性スペクトロメーターとして島津製作所社製「DVA−200」を用い、周波数10Hz、昇温速度4℃/分で動的粘弾性の温度分散曲線を作成し、動歪0.25%(ただし、片振幅)における23℃のときの値をいう。
【0014】
一方、本発明におけるtanδに基づくガラス転移温度とは、前記粘弾性スペクトロメーター「DVA−200」を用いて、縦軸をtanδ、横軸を温度としたtanδの温度分散曲線を作成したときにtanδが極大値をとる温度をいう。図1にtanδの温度分布曲線の概説図を示す。図1を参照して、本発明者等の研究成果によって、カバー組成物の反発性能は温度0℃付近のtanδと相関関係があることが突き止められており、0℃付近のtanδが大きいほどボール打撃時のエネルギーロスが大きくなって反発性能は低下する傾向にある。したがって該tanδは小さい方が望ましく、このためにはtanδの温度分布曲線を図上左側に移動させる、すなわちガラス転移温度を低くする必要があり、実験結果からガラス転移温度は上限は−30℃である。より好ましい上限は−40℃である。また0℃付近のtanδは0.19以下であることが望ましく、さらには0.17以下であることが望ましい。
【0015】
またカバー組成物のバックスピン性能は温度−20℃付近のtanδと相関関係があることも本発明者等により突き止められており、−20℃付近のtanδが小さいほどボールのバックスピン性能は低下する傾向にある。したがって該tanδは大きい方が望ましく、このためにはtanδの温度分布曲線を図上右側に移動させる、すなわちガラス転移温度を高くする必要があり、実験結果からガラス転移温度の下限値は−60℃が好ましく、より好ましい下限値は−50℃である。また−20℃付近のtanδは0.06以上であることが望ましく、さらには0.09以上であることが望ましい。
【0016】
しかし複素弾性率およびガラス転移温度を上記範囲に制御するだけでは反発性能および耐久性の低下を充分には抑えられないことがある。そこでアイオノマーを主な基材樹脂として用いることによって、高い反発性能および耐久性をゴルフボールカバーに付与し上記不具合の発生を防止するのである。
【0017】
本発明で基材樹脂として用いるアイオノマーとしては特に限定はなく、例えばα−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸及び/又は一部エステル化された不飽和カルボン酸金属塩の共重合体系アイオノマーが好ましく用いられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
上記共重合体系アイオノマーのα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが挙げられ、特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。上記エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体やエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
【0019】
共重合体系アイオノマーのうち、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュボンポリケミカル社から市販されているアイオノマーとして、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1601(Na)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7315(Zn)、ハイミランAM7317(Zn)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAK7320(K)などが挙げられ、米国デュボン社から市販されているアイオノマーとしては、サーリンAD8511(Zn)、サーリン8945(Na)、サーリン8920(Na)、サーリン8940(Na)、サーリン9910(Zn)、サーリンAD7930(Li)、サーリンAD7940(Li)などが挙げられる。
【0020】
また、共重合体系アイオノマーのうち、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとを含む三元共重合体系アイオノマーの具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュボンポリケミカル社から市販されているアイオノマーとして、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミランAM7316(Zn)などが挙げられ、米国デュボン社から市販されているアイオノマーとしては、サーリンAD8265(Na)、サーリンAD8269(Na)、サーリンAD8542(Mg)などが挙げられる。なお、上記アイオノマーの商品名の後の括狐内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、それらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0021】
アイオノマーの配合量は基材樹脂の全重量に対して50〜95重量%の範囲が好ましく、より好ましくは60〜90重量%の範囲である。アイオノマーの配合量が50重量%よりも少ないと反発性能および耐久性が悪くなるおそれがあり、他方配合量が95重量%より多いとフライヤー現象が頻発するおそれがある。
【0022】
また基材樹脂の配合量は、ゴルフボールカバー用組成物の全重量に対して50〜95重量%の範囲が好ましく、より好ましくは60〜90重量%の範囲である。
【0023】
本発明において基材樹脂として前記アイオノマーと共に使用できるものとしては、特に限定はなく例えばポリウレタン系やポリアミド系、ポリエステル系の熱可塑性エラストマー;エポキシ基を有するポリブタジエンブロックを含むスチレン−ブタジエン−スチレン構造のブロック共重合樹脂、末端に水酸基を有する熱可塑性エラストマーなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本件発明のゴルフボールカバー用組成物を前記範囲の複素弾性率およびガラス転移温度に調整するには、前記アイオノマーにゴム成分を含有させるのが好ましい。アイオノマーのみでゴルフボールカバーを形成した場合には複素弾性率が高くなりすぎるおそれがあり、反発性能は向上するもののスピン性能に劣りフライヤー現象が生じやすくなるからである。使用できるゴム成分としては特に限定はなく、天然ゴムでも合成ゴムでもよく、合成ゴムとしては、例えばブチルゴム、エチレン−プロピレンジエン3元共重合体、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上混合して用いてもよい。この中でもブチルゴムが好適に使用できる。
【0025】
ゴム成分の配合量としては特に限定はないが、アイオノマーとの重量配合比率(アイオノマー/ゴム成分)が95/5〜35/65の範囲が好ましい。ゴム成分の配合量が上記範囲より少ないと、tanδに基づくガラス転移温度が現れず、バックスピン性能が向上しないことがある。他方ゴム成分の配合量が上記範囲より多いと、tanδに基づくガラス転移温度は現れるものの、反発性能が低下するおそれがある。
【0026】
前記ゴルフボールカバー用組成物には、その他必要に応じて着色剤、老化防止剤や可塑剤、含有剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0027】
次に請求項5に係る発明のゴルフボールカバー用組成物について説明すると、該発明の大きな特徴は、アイオノマーを主体とする基材樹脂100重量部に対してブチルゴムを15〜50重量部の範囲で含有させる点にある。かかる構成とすることにより、アイオノマーが有する反発性を維持しながらある程度弾性率を低下させてスピン性能を向上させフライヤー現象の抑制を図っている。
【0028】
ブチルゴムの含有量が15重量部より少ないと、カバー弾性率の低下が不十分でありスピン性能が改善されずフライヤー現象が生じることがある。他方、ブチルゴムの含有量が50重量部より多いと、スピン性能が向上しフライヤー現象は抑制されるものの、カバーの反発性能が低下しすぎる。
【0029】
請求項5の発明で使用できるアイオノマーとしては、請求項1の発明で使用できるものがそのままここでも使用でき、アイオノマーの配合量は基材樹脂の全重量に対して50〜100重量%の範囲が好ましく、より好ましくは60〜100重量%の範囲である。
【0030】
また基材樹脂の配合量は、ゴルフボールカバー用組成物の全重量に対して50〜95重量%の範囲が好ましく、より好ましくは60〜95重量%の範囲である。
【0031】
前記ゴルフボールカバー用組成物には、その他必要に応じて着色剤、老化防止剤や可塑剤、含有剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0032】
上記説明したゴルフボールカバー用組成物を用いてコア表面にカバーを形成するには、まず前記基材樹脂と、必要に応じてペレット状に粉砕したゴム成分や顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの添加剤を混合し、二軸混練押出機やバンバリミキサー、ニーダーなどのインターナルミキサーを用いて150〜230℃で0.5〜15分間加熱混合してカバー組成物を作製し、このカバー組成物をコアに直接被覆してもよいし、他の層を介して被覆してもよい。コアにカバーを被覆する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法で被覆すればよい。例えば、カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェル形状に成形しておき、この2つを1組として内部にコアを包み込み球形として、130〜170℃で1〜15分間加熱成形する方法、またはコア上にカバー組成物を射出成形してコア上にカバーを形成する方法などが採用される。
【0033】
上記カバーの厚みは、1.0〜3.0mmの範囲が好ましく、1.2〜2.7mmの範囲がより好ましい。カバーの厚みが1.0mmより薄くなると、ショートアイアンで打ったときのスピン量が少なくなりコントロール性が低下することがある。一方カバーの厚みが3.0mmより厚くなると、ゴルフボールの反発力が低下し、飛び性能が悪くなる。
【0034】
カバー成形時、必要に応じてボール表面にディンプルの形成が行われる。ディンプル数は360〜450個の範囲、好ましくは370〜420個の範囲が望ましい。
【0035】
かかるゴルフボール本体に塗料を塗布してもよく、その塗布方法は特に限定はなく、従来公知の方法が利用できる。例えばスプレーガン、静電塗装などが利用でき、ポリオールとイソシアネートとを含む2液混合型塗料を塗布する場合には、予め2液を混合したものを塗布するか、あるいは塗布直前に混合して塗布する。
【0036】
塗料を塗布後に行う乾燥の温度に特に限定はないが、50℃未満の温度で乾燥するのが好ましい。乾燥時間は樹脂の種類などによって適宜決定すればよく、0.5〜5時間の範囲が好ましい。
【0037】
前記のようにして形成された塗膜の厚さは、5〜30ミクロンの範囲が好ましい。なお塗膜の厚さは、ゴルフボール表面のディンプル底10ヶ所及び陸地10ヶ所の計20ヶ所の厚さの平均値である。
【0038】
また本発明のゴルフボールカバー用組成物によって被覆されるコアは、ポリブタジエンを主材とするゴム組成物の加硫成形体からなるソリッドコア、及びゴム系又は液系のセンターに糸ゴムを巻き付けることによって形成した糸巻きコアのいずれであってもよいが、反発性能や生産性などの点からソリッドコア(以下「コア」と略すことがある)が好ましい。該ソリッドコアはゴムを主体とするもので、そのJIS−C硬度は75度以下であり、その大きさは、ボールの大きさの規格との関係で直径29〜40.8mmであることが好ましい。
【0039】
コアは、ドライバー、アイアンといった打撃時の初速度が大きいクラブに対する打撃フィーリングに与える影響が大きい。また、ボールの大部分を占めることになるコアが硬すぎると、打撃によるボールの変形量が抑制されてスピンがかかりやすくなるため、アゲインストな風に対してボールが吹き上がるようになって飛距離が伸びなくなる。このような理由から、コアのJIS−C硬度を75度以下であることが好ましい。より好ましくは70度以下である。なお、コアのJIS−C硬度は、コアの中心と表面の中点位置でJIS−C硬度測定法により測定した硬度である。そして、ゴルフボールとしての形状保持、本来有する反発性の確保の点から、コアの硬度の下限値としては50度が好ましく、より好ましくは55度である。また、コアの直径を29mm以上が好ましい理由は、29mm未満では、打ち出し角度が小さくなって飛距離が延びないからである。さらに10kg荷重と130kg荷重のときの該コアの変形量差は4.0mm以上であることが望ましい。当該変形量差が4.0mmより小さいと、ドライバーなど打撃時の初速度が大きいクラブで打ったときの打撃フィーリングが悪くなり、またボールにスピンがかかりやすくなる。
【0040】
このようなコアは、一般に基材ゴムに架橋剤としての有機過酸化物、共架橋剤としての不飽和カルボン酸又はその金属塩を配合してなるゴム組成物の加硫成形体で構成され、コアの硬度は、前記基材ゴムの種類や架橋度などにより調整することができる。
【0041】
ここで、コア用ゴム組成物に用いられる基材ゴムとしては、従来からソリッドゴルフボールのコアに用いられているジエン系ゴムであれば、天然ゴムでも合成ゴムでもよく、合成ゴムとしては、例えばエチレンプロピレンジエン3元共重合体(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられ、これらの1種又は2種以上混合して用いてもよい。これらのうち、シス構造を40%以上、好ましくは80%以上有するいわゆるハイシス1,4−ポリブタジエンゴムが好ましく用いられる。
【0042】
有機過酸化物は、架橋剤又は硬化剤として添加され、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3、5−トリメチルシクロヘキサン、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.3〜2.0重量部が好ましく、特に0.5〜2.0重量部が好ましい。
【0043】
共架橋剤として配合される不飽和カルボン酸又はその金属塩としては、アクリル酸又はメタクリル酸などのような炭素数が3〜8個のα、β−不飽和カルボン酸又はこれらの亜鉛、マグネシウム塩等の一価又は二価の金属塩が挙げられる。これらの中でも、高い反発性を付与するアクリル酸亜鉛が好ましく用いられる。不飽和カルボン酸金属塩の配合量は、基材ゴム100重量部に対して10〜40重量部が好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。40重量部より多いと架橋構造が緻密になりすぎて、硬度75以下に調整することが困難になる。逆に10重量部より少ないとソリッドゴルフボールが本来有する反発性を確保できなくなる。
【0044】
またコア用ゴム組成物には、上記必須成分に加えて、比重調整剤や老化防止剤、可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤、着色剤、しゃ解剤などゴルフボール用コア材に配合される通常の添加剤を必要に応じて適宜配合することが可能である。
【0045】
比重調整剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機塩;タングステン、モリブデン粉末等の高比重金属粉末;及びそれらの混合物が挙げられる。老化防止剤としてはフェノール系化合物が挙げられる。
【0046】
上記コア組成物をバンバリーミキサーやロール混練機などを用いて混練し、型内で加硫成形することによりコアが形成される。加硫条件はコア組成物の種類や所望の硬度分布などから適宜決定すればよく、例えば加硫温度としては140〜180℃の範囲、加硫時間としては10〜60分間の範囲が好ましい。
【0047】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお特に断りのない限り、実施例および比較例に記載された「部」は重量部を、「%」は「重量%」を示すものとする。
【0048】
(コアの作製)
ハイシスブタジエンゴム(日本合成ゴム社製「BR−11」)100部、アクリル酸亜鉛36部、酸化亜鉛16部、ジクミルパーオキサイド1部を配合したゴム組成物を金型内に充填し、160℃で20分間圧縮加硫成形して、外径38.4mmのコアを作製した。
【0049】
実施例1
基材樹脂としてデュポン社製「サーリン8945」と同社製「サーリン9945」の等重量混合物85部、未加硫ブチルゴム15部を2軸押出機を用いて加熱混合して該ブチルゴムが基材樹脂中に微分散されたペレット状のカバー組成物を作製した。このペレット状カバー組成物を用いてインジェクション成型機で上記作製したコア表面にカバーを形成して、直径43mm、ディンプル数360の2ピースゴルフボールを作製した。カバー組成物およびゴルフボールについて下記特性を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
(カバー組成物の複素弾性率およびtanδ)
島津製作所社製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、下記条件で測定した。
・試料:幅4mm×長さ30mm×厚さ2mm
・試料における変形部位の長さ:20mm(長さ30mmのうち両端5mmを挟持)
・初期歪:1%(0.2mm)
・振幅:0.25%(0.05mm)
・周波数:10Hz。
【0051】
(ゴルフボールの反発係数)
R&A初速測定機を用いて、200gのアルミニウム製円筒物を45m/sの速度でゴルフボールに衝突させ、衝突前後の該円筒物及びゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度及び重量からゴルフボールの反発係数を算出した。測定は8個のゴルフボールを用いて各2回づつ測定し、その平均値を採用した。
【0052】
(ゴルフボールの圧縮変形量)
ゴルフボールに初荷重10kgfから終荷重130kgfの荷重をかけたときのゴルフボールの変形量(mm)を測定した。
【0053】
(スピン量比)
ピッチングウェッジによるアプローチショットにおいて、ボールをラフから打ち出した場合と通常条件で打ち出した場合とのスピン量の比を算出表示した。当該スピン量比が小さいほどフライヤー現象が生じやすいことを示している。なおこの測定は上級プレイヤー10名を被験者として実打を行った平均値である。
【0054】
実施例2,4及び比較例2,3
アイオノマー及びブチルゴムの配合量を表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にしてゴルフボールを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
実施例3
加硫剤としての酸化亜鉛および大内新興化学社製の「ノクセラーEz」を予め混練した未加硫ブチルゴム30部を使用し、アイオノマーの配合量を70部とした以外は実施例1と同様にしてゴルフボールを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
比較例1
ブチルゴムを配合しなかった以外は実施例1と同様にしてゴルフボールを作製し(市販の2ピースボールと同じ)、評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
比較例4
カバー組成物としてバラタカバーを使用した以外は実施例1と同様にしてゴルフボールを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
比較例5,6
ブチルゴムの代わりにブタジエンゴム(日本合成ゴム社製「BR−01」)、スチレン−ブタジエンゴム(住友化学社製「1502」)を30部配合し、アイオノマーの配合量を70部とした以外は実施例1と同様にしてゴルフボールを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
比較例7
ブチルゴムの代わりに軟質アイオノマー(三井デュポン社製「ハイミランSA420」)を40部配合し、アイオノマーの配合量を60部とした以外は実施例1と同様にしてゴルフボールを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0003662436
【0061】
本発明で規定するゴルフボールカバー用組成物を用いてカバーを形成した実施例1〜4のゴルフボールでは、反発係数が108以上と良好な反発性能を示し、またスピン量比も68以上とフライヤー現象が起こりにくい値であった。一方、複素弾性率が2,800と2,550と本発明の規定範囲より大きいカバー組成物でカバーを形成した比較例1、2のゴルフボールでは、スピン量比が42、44と小さな値を示しフライヤー現象が生じやすいことがわかった。反対に、複素弾性率が550と本発明の規定範囲より小さいカバー組成物でカバーを形成した比較例3のゴルフボールでは、スピン量比は70と良好な値を示したものの、反発係数が99と低いものであった。バラタカバーを用いた比較例4のゴルフボールでも反発係数は100と低いものであった。またガラス転移温度が−90℃と本発明の規定範囲より低いカバー組成物でカバーを形成した比較例5のゴルフボールでは、スピン量比が52と小さな値を示しフライヤー現象が生じやすいことがわかった。他方、ガラス転移温度が−20℃と本発明の規定範囲より高いカバー組成物でカバーを形成した比較例6のゴルフボールでは、反発係数が95と低いものであった。そしてまた、ガラス転移温度を有しないカバー組成物でカバーを形成した比較例7のゴルフボールでは、スピン量比が44と小さな値を示しフライヤー現象が生じやすいことがわかった。
【0062】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、主な基材樹脂としてアイオノマーを用いたゴルフボールカバー用組成物であって、周波数10Hz、昇温速度4℃/分で測定される動的粘弾性の温度分散曲線における、動歪0.25%(ただし、片振幅)、23℃の複素弾性率が600〜2,500kgf/cm2の範囲であり、tanδ(損失正接)に基づくガラス転移温度が−60〜−30℃の範囲であるゴルフボールカバー用組成物を使用してカバーを形成することにより、優れたスピン性能を示し、ラフからのショットであってもフライヤー現象が起こりにくく、しかも高反発性能、高耐久性が得られる。
【0063】
また請求項5の発明によれば、アイオノマーを主体とする基材樹脂100重量部に対してブチルゴムを15〜50重量部の範囲含有するゴルフボールカバー用組成物を使用してカバーを形成することにより、上記請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】tanδの温度分布曲線の概念図である。

Claims (3)

  1. 主な基材樹脂としてアイオノマーを使用し、該基材樹脂中にゴム成分としてブチルゴムを含有させたゴルフボールカバー用組成物であって、
    周波数10Hz、昇温速度4℃/分で測定される動的粘弾性の温度分散曲線における、動歪0.25%(ただし、片振幅)、23℃の複素弾性率が1080〜2050kgf/cm2の範囲であり、
    tanδに基づくガラス転移温度(粘弾性スペクトロメーターを用いて、縦軸をtanδ、横軸を温度としたtanδの温度分布曲線を作成したときにtanδが極大値をとる温度)−50〜−44℃の範囲であることを特徴とするゴルフボールカバー用組成物。
  2. 0℃におけるtanδが0.19以下であり、−20℃におけるtanδが0.06以上である請求項1記載のゴルフボールカバー用組成物。
  3. コアとカバーを備えたゴルフボールにおいて、該カバーが請求項1または2に記載のゴルフボールカバー用組成物で形成されていることを特徴とするゴルフボール。
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