JP3662440B2 - 透明凝集体の物性の立体的計測方法および装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスやプラスチックス等の透明な液体および固体、すなわち透明凝集体の3次元立体における任意の点の温度その他の物性を非接触で計測する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光物質の蛍光寿命時間が温度に依存する光学的特性を利用し、光源により蛍光物質を励起させて、蛍光物質の温度に依存する蛍光寿命時間を測定することにより温度を測定する原理を利用した光学温度測定方法および装置は公知である(特公平4−10574号公報、特公平4−12410号公報、特開平6−26941号公報、特公平7−46063号公報、米国特許第4,789,992号明細書・図面)。
【0003】
これらの公知の測定方法および装置では、被測定物の表面に蛍光物質を塗布するか、プローブの先端の光ファイバに蛍光物質を取り付けて被測定物に接触または非接触で温度測定を行っている。
【0004】
また、非接触の温度測定手段としては、蛍光強度が温度に依存性を有する蛍光性のトレーサー粒子を流体に供給し、紫外線などの励起光を照射してトレーサー粒子の蛍光強度を計測して非接触で温度測定を行う方法(特開平9−126837号公報)や、測定対象に一体化させたイッテルビウムを発光中心として含むインジウムリン単結晶からなる半導体を発光させ、フォトルミネッセンス光の強度により温度を測定する装置(特開平9−33364号公報)等も公知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
プラスチックスやガラスの成型品の製造工程において、温度をはじめとする物性値の把握は、その成形不良を防ぐための直接的な制御因子になり、利益向上のための生産効率の向上のみならず、不良品を減らし、エネルギー効率を高めることによる環境問題への対策といった観点からも極めて重要である。
【0006】
しかし、固体や液体などの凝集体からなる材料の成形過程において、物性値が3次元的にどのような値をとるかについて知るために、凝集体内部の任意の点の物性を非接触で測定する方法は現在のところ存在しない。
【0007】
例えば、プラスチック成型時の金型内の樹脂の温度制御は、樹脂製品の「ひけ」などの欠陥除去のために従来から重要な要素とされながらも、成型中の樹脂の任意の点における温度の測定手段がなかった。そのため、数千万円の金型を試行錯誤しながら作成せざるを得ないのが実情であった。
【0008】
また、結晶化ガラスを作成する際に、ガラス中では結晶化度に分布が生じている。冷却後にガラスを切断することによりガラス中の結晶化度の分布を計測することは可能だが、3次元的に任意の点の結晶化度の観測をガラスに非接触で行うことは困難であった。
【0009】
このように、凝集体内部の温度や結晶化度などの物性を任意の点において立体的に測定することは非常に困難である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この様な問題を解決するものであって、2波長励起のアップコンバージョンによる点発光によって、透明凝集体の3次元的に任意の点における温度、結晶化度といった物性の立体的計測を非接触で行うことを可能にしたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、透明の固体および液体からなる凝集体にアップコンバージョンを示す蛍光物質を含有させ、該凝集体に2種類の波長のそれぞれの光源からの光を互いに異なる方向から交差するように入射し、該光の交点において該アップコンバージョンを示す蛍光物質をアップコンバージョンにより点発光させ、該点発光の発光特性を検知し、基準特性との比較により凝集体内部の任意の点における物性値を求めることを特徴とする透明凝集体の物性の立体的計測方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、2種類の波長のそれぞれのパルス光源からなる光照射手段、アップコンバージョンを示す蛍光物質を含有させた透明凝集体に該2種類の波長のそれぞれのパルス光源からの光を互いに異なる方向から交差するように入射させるための手段、該2種類の波長のそれぞれのパルス光源の照射タイミングを変化させるレーザー同期信号制御手段、および該光の交点における点発光の発光特性を検知する手段とを備えたことを特徴とする凝集体内部の任意の点における物性を立体的に計測する装置を提供するものである。
【0013】
本発明の方法および装置において、該アップコンバージョンを示す蛍光物質は、その発光特性および残光特性が温度に依存性をもつものである場合は、2波長励起アップコンバージョンを用いることにより、凝集体内部の任意の点における温度を立体的に計測することができる。
【0014】
本発明の方法および装置において、該アップコンバージョンを示す蛍光物質は、その発光特性および残光特性が凝集体の結晶化度に依存性をもつものである場合は、2波長励起アップコンバージョンを用いることにより、凝集体内部の任意の点における結晶化度を立体的に計測することができる。
【0015】
その他、凝集体の物性であって、アップコンバージョンを示す蛍光物質の発光特性および/または残光特性が依存する物性であれば本発明の方法および装置を適用してその物性を立体的に計測することができる。
【0016】
【作用】
アップコンバージョンとは、3準位系以上の準位系において中間励起状態を経ることによりマルチステップで励起を行い、入射光よりも高いエネルギー(短い波長)の光を発する現象であり、希土類イオンの発光について多くの報告例がある。
【0017】
2波長励起アップコンバージョンは、図2に示すように、第一ステップと第二ステップで異なる波長1、波長2の光を用いることにより、単一波長によるアップコンバージョンよりも高い効率(短い波長3)でアップコンバージョンを起こす方法である。
【0018】
例えば、希土類イオン含有ガラスを二つのパルスレーザ(670nm,630nm)で励起し、一段目の励起に対する二段目の励起のタイミングを変化させてアップコンバージョン発光を起こすことができる。
【0019】
例えば、Tm3+を0.6mol%含むバルク状のZBLAN(53ZrF4 −20BaF2 −4LaF3 −3AlF3 −20NaF)ガラスを試料とし、この試料を両側から照射タイミングが制御されたOPOと色素レーザ(DCM)で励起し、その照射タイミングを変化させると450nmと480nmの発光の強度変化は図3に示すようになり、一段目に対して二段目の照射を3msほど遅らせた時、単一波長で励起した場合よりも高い発光強度を示し、また励起光照射タイミングを2波長同時とした場合よりも、約8倍程度に発光強度が増大する。
【0020】
この場合、光源からの光を互いに異なる方向から入射した場合、単一波長励起では、励起光が伝搬した全ての点において発光が起こるため、得られる発光は直線状の領域からの発光となるが、図1に示すように、光源からの波長1および波長2の2種類の波長の光を透明凝集体3に入射すると波長1および波長2の2種類の波長の光が共存する領域、すなわち両者の交点Pのみがアップコンバージョン発光に寄与するため、入射光の交点においてのみ点発光させることが可能である。そして、例えば、670nm、630nmの2つのパルスレーザをタイミングを少しずらして一点で交わるように照射すると、450nmと480nmの高エネルギー光の点発光(アップコンバージョン発光)が見られる。そして、希土類イオンのようにアップコンバージョンを示す蛍光物質の発光では温度によって異なる発光寿命を有するので、発光点での温度を特定できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
アップコンバージョンを示す蛍光物質であるTb3+やTm3+等の希土類イオンの発光スペクトルの観測によって、その時間変化を計測し、温度によって変化する発光寿命を求めて発光点における温度を計測することができる。また、スペクトルを測定すると、アップコンバージョンを示す蛍光物質の周囲の構造変化を求めることができる。希土類イオンとしては、Tb3+やTm3+の他、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Dy3+、Ho3+、Er3+も使用できる。
【0022】
本発明の測定装置は、図4に示すように、波長1のパルス光源1と波長2のパルス光源2からなる2種類の波長の光源からなる光照射手段、該2種類の波長の光源からの光を異なる方向から被測定対象物である透明凝集体に入射させるための手段、パルス光源1およびパルス光源2の照射タイミングを変化させるレーザー同期信号制御手段および点発光の発光特性を検知する手段とを備えている。また、これらの手段の制御・データ取り込み・解析用にコンピュータを用いる。
【0023】
2種類の波長のそれぞれの光源からの光を異なる方向から透明凝集体に交差するように入射させるための手段としては、例えば、パルス光源1からの光に対応する可動ミラーA、パルス光源2からの光に対応する固定ミラーCおよび可動ミラーBを用い、これらをミラー駆動制御信号により制御し、3次元立体の任意の測定点において入射光が交差するように制御する。ミラーを用いる代わりに光ファイバを用いることもできる。
【0024】
点発光の発光特性を検知する手段としては、検出器および分光器などが用いられるが、発光特性を検知し温度を特定するための手段は先行文献等に開示されている計測手段と同様に光検知器、比較器、演算装置、表示装置などからなる計測装置を適宜用いることができる。
【0025】
例えば、デジタルオシロスコープを用いて、時間分解で得られた蛍光の時間tに対する減衰を指数関数I0 exp(-t/τ) でフイットし、蛍光寿命τを求める。求めたτを予め測定したτと温度Tを関係づけるための検量値と比較し、温度を決定する。
【0026】
例えば、希土類イオンとしてTm3+を微量ドープしたガラスやプラスチックスを用意し、これに対して、励起光として670nmおよび630nmの光を異なる方向から交差するように入射すると、その交点において450nmのアップコンバージョン発光が起こる。一方、希土類イオンのある準位からの発光は、温度によって異なる発光寿命を有するので、それぞれの温度における発光寿命を予め測定しておくと、それを検量線として、2波長励起アップコンバージョンによる発光でデジタルオシロスコープを用いて計測した発光の時間変化から、その点における温度を求めることができる。
【0027】
また、結晶化ガラスを作成する際に、ガラスにTm3+を微量ドープする。これに対して、励起光として670nmおよび630nmの光を入射するとその交点において450nmのアップコンバージョン発光が起こる。一方、希土類イオンのある準位からの発光スペクトルは、その局所的な構造によって異なるスペクトルを有するので、それぞれの結晶化度における発光スぺクトルを予め測定しておくと、それとの比較により、2波長励起アップコンバージョンによる発光を分光器により測定したスペクトルから、その交点における結晶化度を求めることができる。
【0028】
さらに、射出成形をはじめとするポリマー成形では、成形による変形や温度分布が製造上の重要な制御因子となる。そこで、石英などの透明材料により成形機を構成し、本発明の方法により、成形機の外部から2種類の波長のそれぞれの光源からの光を互いに異なる方向から成形機内部の原料に入射するようにする。原料に微量のアップコンバージョンを示す蛍光物質を加えて、微量に含まれた蛍光物質の発光点を3次元的に画像解析等によって追跡し、同時に発光寿命を計測することにより、3次元的な温度分布に加えて、加工時の変形による変位を3次元的に計測することもできる。
【0029】
さらに、樹脂等の金型成形において、原料に微量のアップコンバージョンを示す蛍光物質を加え、2種類の波長の光源を互いに異なる方向から入射できるように励起レーザ用の光ファイバを金型中に埋め込み、さらに発光のセンシング用の光ファイバも金型中に埋め込むことにより、異なる方向から入射した2種類の波長の光の交点の点発光を計測することにより金型内部の透明凝集体の温度・変位の3次元的な計測も行うことができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の方法および装置によれば、透明凝集体の3次元立体の任意の点の物性を非接触で特定できることとなり、固体、液体を問わず、ガラスやプラスチックス等の透明凝集体の3次元立体の任意の点の温度をはじめとする種々の物理情報を測定点の精度がよく、しかも、簡易にかつ素早く立体的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の原理を示す概念図。
【図2】2波長励起アップコンバージョンエネルギー準位図
【図3】希土類イオンの670nm、630nm励起の発光スペクトル強度を示すグラフ。
【図4】本発明の透明凝集体の物性の立体的測定装置の概念図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスやプラスチックス等の透明な液体および固体、すなわち透明凝集体の3次元立体における任意の点の温度その他の物性を非接触で計測する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光物質の蛍光寿命時間が温度に依存する光学的特性を利用し、光源により蛍光物質を励起させて、蛍光物質の温度に依存する蛍光寿命時間を測定することにより温度を測定する原理を利用した光学温度測定方法および装置は公知である(特公平4−10574号公報、特公平4−12410号公報、特開平6−26941号公報、特公平7−46063号公報、米国特許第4,789,992号明細書・図面)。
【0003】
これらの公知の測定方法および装置では、被測定物の表面に蛍光物質を塗布するか、プローブの先端の光ファイバに蛍光物質を取り付けて被測定物に接触または非接触で温度測定を行っている。
【0004】
また、非接触の温度測定手段としては、蛍光強度が温度に依存性を有する蛍光性のトレーサー粒子を流体に供給し、紫外線などの励起光を照射してトレーサー粒子の蛍光強度を計測して非接触で温度測定を行う方法(特開平9−126837号公報)や、測定対象に一体化させたイッテルビウムを発光中心として含むインジウムリン単結晶からなる半導体を発光させ、フォトルミネッセンス光の強度により温度を測定する装置(特開平9−33364号公報)等も公知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
プラスチックスやガラスの成型品の製造工程において、温度をはじめとする物性値の把握は、その成形不良を防ぐための直接的な制御因子になり、利益向上のための生産効率の向上のみならず、不良品を減らし、エネルギー効率を高めることによる環境問題への対策といった観点からも極めて重要である。
【0006】
しかし、固体や液体などの凝集体からなる材料の成形過程において、物性値が3次元的にどのような値をとるかについて知るために、凝集体内部の任意の点の物性を非接触で測定する方法は現在のところ存在しない。
【0007】
例えば、プラスチック成型時の金型内の樹脂の温度制御は、樹脂製品の「ひけ」などの欠陥除去のために従来から重要な要素とされながらも、成型中の樹脂の任意の点における温度の測定手段がなかった。そのため、数千万円の金型を試行錯誤しながら作成せざるを得ないのが実情であった。
【0008】
また、結晶化ガラスを作成する際に、ガラス中では結晶化度に分布が生じている。冷却後にガラスを切断することによりガラス中の結晶化度の分布を計測することは可能だが、3次元的に任意の点の結晶化度の観測をガラスに非接触で行うことは困難であった。
【0009】
このように、凝集体内部の温度や結晶化度などの物性を任意の点において立体的に測定することは非常に困難である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この様な問題を解決するものであって、2波長励起のアップコンバージョンによる点発光によって、透明凝集体の3次元的に任意の点における温度、結晶化度といった物性の立体的計測を非接触で行うことを可能にしたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、透明の固体および液体からなる凝集体にアップコンバージョンを示す蛍光物質を含有させ、該凝集体に2種類の波長のそれぞれの光源からの光を互いに異なる方向から交差するように入射し、該光の交点において該アップコンバージョンを示す蛍光物質をアップコンバージョンにより点発光させ、該点発光の発光特性を検知し、基準特性との比較により凝集体内部の任意の点における物性値を求めることを特徴とする透明凝集体の物性の立体的計測方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、2種類の波長のそれぞれのパルス光源からなる光照射手段、アップコンバージョンを示す蛍光物質を含有させた透明凝集体に該2種類の波長のそれぞれのパルス光源からの光を互いに異なる方向から交差するように入射させるための手段、該2種類の波長のそれぞれのパルス光源の照射タイミングを変化させるレーザー同期信号制御手段、および該光の交点における点発光の発光特性を検知する手段とを備えたことを特徴とする凝集体内部の任意の点における物性を立体的に計測する装置を提供するものである。
【0013】
本発明の方法および装置において、該アップコンバージョンを示す蛍光物質は、その発光特性および残光特性が温度に依存性をもつものである場合は、2波長励起アップコンバージョンを用いることにより、凝集体内部の任意の点における温度を立体的に計測することができる。
【0014】
本発明の方法および装置において、該アップコンバージョンを示す蛍光物質は、その発光特性および残光特性が凝集体の結晶化度に依存性をもつものである場合は、2波長励起アップコンバージョンを用いることにより、凝集体内部の任意の点における結晶化度を立体的に計測することができる。
【0015】
その他、凝集体の物性であって、アップコンバージョンを示す蛍光物質の発光特性および/または残光特性が依存する物性であれば本発明の方法および装置を適用してその物性を立体的に計測することができる。
【0016】
【作用】
アップコンバージョンとは、3準位系以上の準位系において中間励起状態を経ることによりマルチステップで励起を行い、入射光よりも高いエネルギー(短い波長)の光を発する現象であり、希土類イオンの発光について多くの報告例がある。
【0017】
2波長励起アップコンバージョンは、図2に示すように、第一ステップと第二ステップで異なる波長1、波長2の光を用いることにより、単一波長によるアップコンバージョンよりも高い効率(短い波長3)でアップコンバージョンを起こす方法である。
【0018】
例えば、希土類イオン含有ガラスを二つのパルスレーザ(670nm,630nm)で励起し、一段目の励起に対する二段目の励起のタイミングを変化させてアップコンバージョン発光を起こすことができる。
【0019】
例えば、Tm3+を0.6mol%含むバルク状のZBLAN(53ZrF4 −20BaF2 −4LaF3 −3AlF3 −20NaF)ガラスを試料とし、この試料を両側から照射タイミングが制御されたOPOと色素レーザ(DCM)で励起し、その照射タイミングを変化させると450nmと480nmの発光の強度変化は図3に示すようになり、一段目に対して二段目の照射を3msほど遅らせた時、単一波長で励起した場合よりも高い発光強度を示し、また励起光照射タイミングを2波長同時とした場合よりも、約8倍程度に発光強度が増大する。
【0020】
この場合、光源からの光を互いに異なる方向から入射した場合、単一波長励起では、励起光が伝搬した全ての点において発光が起こるため、得られる発光は直線状の領域からの発光となるが、図1に示すように、光源からの波長1および波長2の2種類の波長の光を透明凝集体3に入射すると波長1および波長2の2種類の波長の光が共存する領域、すなわち両者の交点Pのみがアップコンバージョン発光に寄与するため、入射光の交点においてのみ点発光させることが可能である。そして、例えば、670nm、630nmの2つのパルスレーザをタイミングを少しずらして一点で交わるように照射すると、450nmと480nmの高エネルギー光の点発光(アップコンバージョン発光)が見られる。そして、希土類イオンのようにアップコンバージョンを示す蛍光物質の発光では温度によって異なる発光寿命を有するので、発光点での温度を特定できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
アップコンバージョンを示す蛍光物質であるTb3+やTm3+等の希土類イオンの発光スペクトルの観測によって、その時間変化を計測し、温度によって変化する発光寿命を求めて発光点における温度を計測することができる。また、スペクトルを測定すると、アップコンバージョンを示す蛍光物質の周囲の構造変化を求めることができる。希土類イオンとしては、Tb3+やTm3+の他、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Dy3+、Ho3+、Er3+も使用できる。
【0022】
本発明の測定装置は、図4に示すように、波長1のパルス光源1と波長2のパルス光源2からなる2種類の波長の光源からなる光照射手段、該2種類の波長の光源からの光を異なる方向から被測定対象物である透明凝集体に入射させるための手段、パルス光源1およびパルス光源2の照射タイミングを変化させるレーザー同期信号制御手段および点発光の発光特性を検知する手段とを備えている。また、これらの手段の制御・データ取り込み・解析用にコンピュータを用いる。
【0023】
2種類の波長のそれぞれの光源からの光を異なる方向から透明凝集体に交差するように入射させるための手段としては、例えば、パルス光源1からの光に対応する可動ミラーA、パルス光源2からの光に対応する固定ミラーCおよび可動ミラーBを用い、これらをミラー駆動制御信号により制御し、3次元立体の任意の測定点において入射光が交差するように制御する。ミラーを用いる代わりに光ファイバを用いることもできる。
【0024】
点発光の発光特性を検知する手段としては、検出器および分光器などが用いられるが、発光特性を検知し温度を特定するための手段は先行文献等に開示されている計測手段と同様に光検知器、比較器、演算装置、表示装置などからなる計測装置を適宜用いることができる。
【0025】
例えば、デジタルオシロスコープを用いて、時間分解で得られた蛍光の時間tに対する減衰を指数関数I0 exp(-t/τ) でフイットし、蛍光寿命τを求める。求めたτを予め測定したτと温度Tを関係づけるための検量値と比較し、温度を決定する。
【0026】
例えば、希土類イオンとしてTm3+を微量ドープしたガラスやプラスチックスを用意し、これに対して、励起光として670nmおよび630nmの光を異なる方向から交差するように入射すると、その交点において450nmのアップコンバージョン発光が起こる。一方、希土類イオンのある準位からの発光は、温度によって異なる発光寿命を有するので、それぞれの温度における発光寿命を予め測定しておくと、それを検量線として、2波長励起アップコンバージョンによる発光でデジタルオシロスコープを用いて計測した発光の時間変化から、その点における温度を求めることができる。
【0027】
また、結晶化ガラスを作成する際に、ガラスにTm3+を微量ドープする。これに対して、励起光として670nmおよび630nmの光を入射するとその交点において450nmのアップコンバージョン発光が起こる。一方、希土類イオンのある準位からの発光スペクトルは、その局所的な構造によって異なるスペクトルを有するので、それぞれの結晶化度における発光スぺクトルを予め測定しておくと、それとの比較により、2波長励起アップコンバージョンによる発光を分光器により測定したスペクトルから、その交点における結晶化度を求めることができる。
【0028】
さらに、射出成形をはじめとするポリマー成形では、成形による変形や温度分布が製造上の重要な制御因子となる。そこで、石英などの透明材料により成形機を構成し、本発明の方法により、成形機の外部から2種類の波長のそれぞれの光源からの光を互いに異なる方向から成形機内部の原料に入射するようにする。原料に微量のアップコンバージョンを示す蛍光物質を加えて、微量に含まれた蛍光物質の発光点を3次元的に画像解析等によって追跡し、同時に発光寿命を計測することにより、3次元的な温度分布に加えて、加工時の変形による変位を3次元的に計測することもできる。
【0029】
さらに、樹脂等の金型成形において、原料に微量のアップコンバージョンを示す蛍光物質を加え、2種類の波長の光源を互いに異なる方向から入射できるように励起レーザ用の光ファイバを金型中に埋め込み、さらに発光のセンシング用の光ファイバも金型中に埋め込むことにより、異なる方向から入射した2種類の波長の光の交点の点発光を計測することにより金型内部の透明凝集体の温度・変位の3次元的な計測も行うことができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の方法および装置によれば、透明凝集体の3次元立体の任意の点の物性を非接触で特定できることとなり、固体、液体を問わず、ガラスやプラスチックス等の透明凝集体の3次元立体の任意の点の温度をはじめとする種々の物理情報を測定点の精度がよく、しかも、簡易にかつ素早く立体的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の原理を示す概念図。
【図2】2波長励起アップコンバージョンエネルギー準位図
【図3】希土類イオンの670nm、630nm励起の発光スペクトル強度を示すグラフ。
【図4】本発明の透明凝集体の物性の立体的測定装置の概念図。
Claims (4)
- 透明の固体および液体からなる凝集体にアップコンバージョンを示す蛍光物質を含有させ、該凝集体に2種類の波長のそれぞれの光源からの光を互いに異なる方向から交差するように入射し、該光の交点において該アップコンバージョンを示す蛍光物質をアップコンバージョンにより点発光させ、該点発光の発光特性を検知し、基準特性との比較により凝集体内部の任意の点における物性値を求めることを特徴とする透明凝集体の物性の立体的計測方法。
- 該アップコンバージョンを示す蛍光物質は、その発光特性および残光特性が温度に依存性をもつものであり、凝集体内部の任意の点における温度を計測することを特徴とする請求項1記載の透明凝集体の物性の立体的計測方法。
- 該アップコンバージョンを示す蛍光物質は、その発光特性および残光特性が凝集体の結晶化度に依存性をもつものであり、凝集体内部の任意の点における結晶化度を計測することを特徴とする請求項1記載の透明凝集体の物性の立体的計測方法。
- 2種類の波長のそれぞれのパルス光源からなる光照射手段、アップコンバージョンを示す蛍光物質を含有させた透明凝集体に該2種類の波長のそれぞれのパルス光源からの光を互いに異なる方向から交差するように入射させるための手段、該2種類の波長のそれぞれのパルス光源の照射タイミングを変化させるレーザー同期信号制御手段、および該光の交点における点発光の発光特性を検知する手段とを備えたことを特徴とする凝集体内部の任意の点における物性を立体的に計測する装置。
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