JP3673367B2 - 衝突安全性に優れた440MPa級熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の軽量化および安全性向上を達成する高強度鋼板およびその製造方法に関し、特に、衝突安全性に優れた440MPa級熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の安全性向上の観点から衝突時の安全性に対する要求もますます厳しくなりつつある。自動車の軽量化と衝突時の衝撃吸収特性の向上とを両立させるためには、自動車の強度部材として高強度鋼板を使用することが適するが、一般に高強度鋼板は強度の低い鋼板に比べ成形性が劣るため、自動車設計時の自由度を減少させる。また、衝突時に対応すると推定されるひずみ速度(103 (s-1)程度)での強度(動的強度)は、従来、一般に使用されてきた約10-3(s-1)と非常に遅いひずみ速度での強度(静的強度)での強度に必ずしも対応していない。例えば、軟鋼と高強度鋼を比較すると、高強度鋼の動的強度は軟鋼の動的強度程には高い値を示さないことが知られている。このため、静的強度値に基づいて薄肉化した場合、実際の衝突安全の指標となる動的強度は低下するという本末転倒の結果になる。
【0003】
これに対し、例えば、特開平7−18370号公報では、実際の自動車の安全性の観点から、単なる高強度化のみでなく、Ti、Nb、ZrおよびVを添加して、固溶C、Nを減少させるとともに、析出物を微細に多く析出させて、高ひずみ速度で変形した場合の変形抵抗を大きくした鋼板の発明が開示されている。また、同様な観点から、特開平7−18372号公報では、残留オーステナイト量を10%以上とし、フェライト相中のC量を0.002重量%以下に低減させた鋼板の発明が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、自動車用鋼板は、実際には、自動車製造過程において成形、塗装、その後の塗装焼付の工程を経ているため、このような自動車用鋼板の履歴を考慮しない上記従来技術では、衝突時の鋼板の衝撃吸収性を十分に評価し、その解決手段を提示しているとはいえない。すなわち、成形ひずみ、塗装焼き付け相当の熱処理を加えた後の動的強度で材料特性を評価し、材料設計する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を有利に解決して、自動車の軽量化および安全性向上を達成することのできる衝突安全性に優れた440MPa級熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、種々の実験・研究を重ねた結果、鋼材の成分を適切に調整し、固溶Nが残った状態で予ひずみを与えることで、静動比の向上が可能であることを見出し、本発明を成したものである。すなわち、本発明の要旨とするところは下記のとおりである。
【0007】
(1) 重量%で、
C :0.01〜0.08%、
Si:1.5%以下、
Mn:2.0%以下、
P :0.05%以下、
S :0.015%以下、
Al:0.005〜0.045%、
N :0.0041〜0.015%
を含み、かつAl、Nの関係が
2N−Al≦0.012を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、10-3(s-1)のひずみ速度で変形したときの最大強度σS(Mpa)と、予ひずみE(%)をあたえて温度T(℃)、時間t(分)で処理した後にひずみ速度103(s-1)で変形したときの最大強度σD(MPa)との比σD/σSが、
σD/σS≧460/σS+0.35
+571E(t1/2)exp{−5000/(T+273)}
を満足することを特徴とする衝突安全性に優れた440Mpa級熱延鋼板。
【0008】
(2) 重量%で、
C :0.01〜0.08%、
Si:1.5%以下、
Mn:2.0%以下、
P :0.05%以下、
S :0.015%以下、
Al:0.005〜0.045%、
N :0.0041〜0.015%
を含み、かつAl、Nの関係が
2N−Al≦0.012
を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延終了温度がAr3−50℃以上となるように熱間圧延を行い、その後の巻取工程において、(2N−Al)<0.0016においては巻取温度CTを
CT<570−0.55/{(2N−Al)−0.004}
とし、(2N−Al)≧0.0016においてはCT<800℃とすることを特徴とする、10-3(s-1)のひずみ速度で変形したときの最大強度σS(Mpa)と、予ひずみE(%)をあたえて温度T(℃)、時間t(分)で処理した後にひずみ速度103(s-1)で変形したときの最大強度σD(MPa)との比σD/σSが、
σD/σS≧460/σS+0.35
+571E(t1/2)exp{−5000/(T+273)}
を満足する衝突安全性に優れた440MPa級熱延鋼板の製造方法。
【0009】
なお、本発明では衝突安全性に優れた鋼板に求められる特性としての静動比を、鋼の成形性・塗装焼き付け後に相当する予ひずみ・熱処理を行った後の動的強度と成形前の静的強度との比とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0011】
まず、鋼成分を限定した理由について述べる。
【0012】
Cは強度を得るのに必要な元素であり若干の添加の必要がある。また、低C化によるコスト上昇からも0.01%以上とする。但し多量の添加は鋼の成形性を劣化させるため0.08%以下とする。
【0013】
Siは固溶強化元素であり、本発明鋼ではMnとともに強度調整を行うための元素である。また、高速変形時の強度上昇を促進することから添加が望ましい。しかしながら、添加量が多くなると成形性が劣化し、静動比を低下させるため、するため、1.5%以下とする。
【0014】
MnはSiと同様に固溶元素であり本発明鋼では強度調整を行うための元素である。しかしながら、添加量が多くなると成形性が劣化し、静動比を低下させるため、2.0%以下とする。
【0015】
PはSi、Mn同様、固溶強化元素であり鋼板の強度の調整を可能にする。また、結晶粒度を細かくして固溶窒素の残存を容易にする。しかしながら、添加量が多くなると粒界が弱くなり、耐衝撃性が悪化するほか、成形性が劣化するため、0.05%以下とする。特にPの添加は成形性の観点から、0.02%以下が望ましい。
【0016】
Sは含有量が多くなると高強度鋼板の重要な特性の一つである伸びフランジ性が劣化するため、0.015%以下とする。
【0017】
Alはキルド鋼にするための脱酸剤として添加され、これを満足する量として、0.005%以上必要であるが、多量に添加するとAlNの析出が促進され、静動比を向上させる固溶窒素を減少させるため0.005〜0.045%とする。
【0018】
Nは静動比向上のため、巻取後に固溶窒素として残存するに足る量が存在する必要がある。このため、0.0041%以上の含有が必要である。一方、多量の添加は成形性を劣化させるため0.015%とした。
【0019】
また、AlとNの関係を2N−Al≦0.012で規定したが、この式は巻取後の固溶窒素量を規定するものであり、これを越えると成形性が劣化が著しいためこれ以下とする。
【0020】
鋼の特性を、σD/σS≧460/σS+0.35
+571E(t1/2)exp{−5000/(T+273)}・・・(1)
で限定しているが、この式においてσDは自動車製造における成形に対応する予ひずみE(%)をあたえ、塗装焼付に対応する温度T(℃)、時間t(分)の熱処理をした後にひずみ速度103(s-1)で変形したときの最大強度、σSは10-3(s-1)のひずみ速度で変形したときの最大強度である。鋼材の特性は成形時に導入されるひずみおよびその後の塗装焼付処理において変化するが、この式はこの変化を考慮したときの値である。
【0021】
このような成分の鋼を鋳造し、得られた熱片スラブを直接または加熱した後、あるいは冷片を再加熱して熱間圧延を施す。熱間圧延は、通常の熱間工程、あるいは仕上げ圧延においてスラブを接合し圧延する連続化熱延工程のどちらでも可能である。
【0022】
熱間圧延の際の圧延終了温度は、Ar3−50℃以上とする。これは、Ar3−50℃未満であると、圧延後に加工組織が残り、鋼板の成形性が劣化するためである。
【0023】
巻取温度CTは、(2N−Al)<0.0016においては
CT<570−0.55/{(2N−Al)−0.004} ・・・(2)
とし、(2N−Al)≧0.0016においてはCT<800℃とする。これは、静動比を向上させる固溶窒素を鋼中に残存させるために巻取温度を規定するもので、これ以上の温度にて巻き取ると静動比の向上はほとんどないためこれ以下とする。特に、設備面でのコストメリットを考え上限としては熱間圧延終了温度、下限としては常温が望ましい。
本発明は熱延鋼板だけでなく、これを素材とした表面処理鋼板に対しても適用可能である。特に、本発明鋼のうちSi濃度が0.5%以下の鋼ではめっき性に害を与えることもなく、容易に溶融亜鉛めっきを施すことができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0025】
表1に示す種々の化学成分の鋼を、実機にて鋳造し熱延して供試材を試作した。鋼種番号1〜4及び8〜11はAl、N量を変化させ、Si、Mnを用いて強度調整を行ったものであり、本発明鋼の範囲内の成分を持つ。12〜14はそれぞれSi、Mn、N濃度が本発明鋼の範囲外となる比較鋼である。
【0026】
【表1】
これらの鋼を1150℃にて加熱し、熱間圧延を行い板厚2mmの鋼板としたが、それぞれ表2〜10に示す温度で熱延、巻取を行った。また、熱延終了温度から巻取温度までは、10〜60℃/sにて冷却を行った。その後、自動車の成形・焼付塗装を想定した予ひずみ、熱処理を行った。引張試験は静的に関してJIS5号試験片を用い、JIS Z 2241に従って行い、動的に関しては、板状試験片(Masaaki Itabashi and Kozo Kawata、Proceeding of PLASTICITY ’95、p.52)を用い、one bar method(材料、36、(1987)、p.1298)にて測定した。表2〜10に、それぞれ、供試材の熱間圧延条件、高速変形前の予ひずみ量、熱処理温度および熱処理時間を示す。また、この条件下にて得られた、静的強度、式(1)右辺の値および得られた静動比も示す。
【0027】
表2〜7は、それぞれ表1の鋼成分は本発明鋼の範囲内にある鋼種について、製造条件を変化させたものである。ここで、表4〜7の内での本発明範囲外のものは式(2)を満足しない条件にて巻取を行ったものである。ここで、製造条件が本発明範囲内ものは、得られた静動比が式(1)を満足するが、製造条件が式(2)を満たさない本発明範囲外のものは得られた静動比が式(1)を満足しないことがわかる。
【0028】
表10は表1中の鋼成分が本発明範囲外にあるものについて、製造条件を本発明範囲内で行ったものを示す。この比較鋼から、鋼成分が本発明範囲外になると式(1)の特性を満足しないことがわかる。これらの試験結果から、本発明によると高い静動比が得られることがわかる。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明によれば、静的強度に対し動的強度が高い鋼板の製造が可能となるため、本発明は、工業的に価値の高い発明であると言える。
Claims (2)
- 重量%で、
C :0.01〜0.08%、
Si:1.5%以下、
Mn:2.0%以下、
P :0.05%以下、
S :0.015%以下、
Al:0.005〜0.045%、
N :0.0041〜0.015%
を含み、かつAl、Nの関係が
2N−Al≦0.012
を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、10-3(s-1)のひずみ速度で変形したときの最大強度σS(Mpa)と、予ひずみE(%)をあたえて温度T(℃)、時間t(分)で処理した後にひずみ速度103(s-1)で変形したときの最大強度σD(MPa)との比σD/σSが、
σD/σS≧460/σS+0.35+571E(t1/2)exp{−5000/(T+273)}
を満足することを特徴とする衝突安全性に優れた440Mpa級熱延鋼板。 - 重量%で、
C :0.01〜0.08%、
Si:1.5%以下、
Mn:2.0%以下、
P :0.05%以下、
S :0.015%以下、
Al:0.005〜0.045%、
N :0.0041〜0.015%
を含み、かつAl、Nの関係が
2N−Al≦0.012
を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延終了温度がAr3−50℃以上となるように熱間圧延を行い、その後の巻取工程において、(2N−Al)<0.0016においては巻取温度CTを
CT<570−0.55/{(2N−Al)−0.004}
とし、(2N−Al)≧0.0016においてはCT<800℃とすることを特徴とする、10-3(s-1)のひずみ速度で変形したときの最大強度σS(Mpa)と、予ひずみE(%)をあたえて温度T(℃)、時間t(分)で処理した後にひずみ速度103(s-1)で変形したときの最大強度σD(MPa)との比σD/σSが、
σD/σS≧460/σS+0.35+571E(t1/2)exp{−5000/(T+273)}
を満足する衝突安全性に優れた440MPa級熱延鋼板の製造方法。
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| JP11415897A JP3673367B2 (ja) | 1997-04-17 | 1997-04-17 | 衝突安全性に優れた440MPa級熱延鋼板およびその製造方法 |
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| JP11415897A JP3673367B2 (ja) | 1997-04-17 | 1997-04-17 | 衝突安全性に優れた440MPa級熱延鋼板およびその製造方法 |
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| JPH10287951A JPH10287951A (ja) | 1998-10-27 |
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