JP3674364B2 - 振動型電動機及びその駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インバータエアコンや冷蔵庫、除湿機など電動機を利用して運転する機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、振動型電動機の駆動は、振動子の位置、速度、加速度の少なくともいずれか一つを検知するセンサを有し、そのセンサの出力に基づいて通電のタイミングや期間を決定し駆動する方法が一般的であった。たとえば、特開平9−291889号公報等がある。
【0003】
また、センサを使用しない方法では、巻線への印加電圧や巻線電流を計測し、マイコンなどの演算・制御手段によって演算を行い、振動子の位置を推定して駆動する方法が一般的であった。たとえば、特開平9−112438号公報や、同じく特開平9−126145号公報等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法ではセンサを固定子に設ける必要があり、特に冷凍サイクルの運転に使用する用途では、その高温高圧下で動作可能なセンサの種類が非常に限定されるといった課題や、その信頼性に大きな課題があった。
【0005】
また振動センサなどにより、振動子と固定子が衝突した際の機械的な振動を検出して振動型電動機の駆動制御を行う方式が既に提案されているが、当該方式では、衝突時に発生する音が課題となっていた。
【0006】
また、センサを使用しない方法では、振動子の位置や速度、加速度を推定するために、リアルタイムで電圧や電流を計測する電流・電圧検出手段と、高速の演算・制御手段、そして位置や速度、加速度を推定するための複雑なアルゴリズムが必要であり、コスト面や制御の速度、精度の点で課題があった。
【0007】
また、検出精度や制御速度によっては電動機の負荷変動等の運転条件の急変に対応できず、振動子が固定子と衝突するといった課題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、固定子もしくは振動子に巻線を有し、前記巻線に通電することによって発生した磁界と振動子もしくは固定子が発生する磁界との相互作用によって推力を発生する振動型電動機の駆動装置であって、前記巻線への励磁電流の通電制御手段を有し、前記通電制御手段によって前記励磁電流の通電期間と非通電期間を設け、前記非通電期間中に前記巻線に発生する誘起電圧の変化をセンサレスで検出する誘起電圧検出手段を有し、前記誘起電圧検出手段の出力に応じて、通電制御を行い、前記非通電期間中に前記巻線の任意の2点間に発生する誘起電圧の電位を比較する誘起電圧比較手段を有し、前記誘起電圧比較手段の出力が反転した時点もしくは、反転した時点から所定の時間経過後に通電を再開するものである。
【0009】
また、前記振動子に永久磁石、前記固定子に巻線を有するものである。
【0010】
また、縦列接続されたスイッチング素子の複数対を有し、前記スイッチング素子間の各々の接続点に前記巻線の両端を接続したものである。
【0011】
また、前記巻線へ印加される巻線電圧もしくは通電する励磁電流の通電比率を制御する通電比率制御手段を有し、前記通電比率制御手段により前記巻線電圧もしくは前記励磁電流の通電比率を制御することによって、電動機出力を制御するものである。
【0012】
また、前記巻線電圧もしくは前記励磁電流の通電期間を制御する通電期間制御手段を有し、前記通電期間制御手段により前記巻線電圧もしくは前記励磁電流の通電期間を制御することによって、電動機出力を制御するものである。
【0013】
また、前記スイッチング素子群への印加電圧を制御する印加電圧制御手段を有し、前記印加電圧制御手段により前記印加電圧を制御することによって、電動機出力を制御するものである。
【0014】
また、前記通電比率制御手段及び前記通電期間制御手段及び前記印加電圧制御手段のいずれか2手段、もしくは全てを有し、通電比率または通電期間または印加電圧のいずれか一方、もしくはいずれか二方、もしくは全てを同時に制御することにより、電動機出力を制御するものである。
【0015】
また、前記スイッチング素子群に通電する母線電流を制御する母線電流制御手段を有し、前記母線電流制御手段により前記母線電流を制御することによって、電動機出力を制御するものである。
【0016】
また、前記通電比率制御手段及び前記通電期間制御手段及び前記印加電圧制御手段のいずれか一手段、もしくはいずれか二手段、もしくは全てを有し、前記振動子の運動方向に応じて前記通電比率及び前記通電期間及び前記印加電圧のいずれか一方、もしくはいずれか二方、もしくは全てを変化させることによって、電動機出力を制御するものである。
【0017】
また、前記振動子の運動方向に応じて、前記母線電流制御手段により前記母線電流を制御することによって、電動機出力を制御するものである。
【0018】
また、前記振動型電動機及びその駆動装置を用いて駆動される圧縮機である。
【0019】
また、前記圧縮機を用いた空気調和機である。
【0020】
【発明の実施の形態】
請求項1から2に記載の発明は、固定子もしくは振動子に巻線を有し、前記巻線に励磁電流を通電することによって発生した磁界と振動子もしくは固定子が発生する磁界との相互作用によって推力を発生する振動型電動機の駆動装置であって、前記巻線への励磁電流の通電制御手段において通電期間と非通電期間を設けたものであり、また非通電期間中に巻線に発生する誘起電圧を観測することにより、励磁電流の通電制御を行うものである。さらに非通電期間中に巻線の任意の2点間に発生する誘起電圧の電位を比較する誘起電圧比較手段を有し、誘起電圧比較手段の出力信号が反転した時点もしくは、反転した時点から所定の時間経過後に励磁電流の通電を再開するもので、特別なセンサ等を使用することなしに振動子の位置や状態を検出し適切なタイミングで巻線に励磁電流の制御を行うことができる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明は、縦列接続された複数個のスイッチング素子を複数対有し、各々のスイッチング素子間の接続点に振動型電動機の巻線の両端を接続し、スイッチング素子のオン・オフによって巻線電圧もしくは励磁電流の制御を可能にするものであり、これによりマイコン等に代表される演算・制御手段から出力される振幅の小さな駆動制御信号により、直接巻線電圧もしくは励磁電流の制御を行うことが可能になる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明は、巻線電圧もしくは励磁電流の通電比率を制御する、すなわちPWM制御を行うことによって出力制御を行うものであり、これにより部品の追加を伴うことなく、演算・制御手段の制御プログラムの追加・変更のみで電動機出力の制御が可能になる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明は、巻線電圧もしくは励磁電流の通電期間を制御する、すなわちパルス幅制御を行うことによって出力制御を行うものであり、これにより部品の追加を伴うことなく、演算・制御手段の制御プログラムの追加・変更のみで電動機出力の制御が可能になる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明は、スイッチング素子群への印加電圧を制御する、すなわちPAM制御を行うことによって出力制御を行うものであり、直流電圧の増減のみで制御が可能であるため、演算・制御手段にマイコン等の高価なデバイスが使用できない場合でも、電動機出力の制御が可能になる。
【0025】
また、請求項7に記載の発明は、PWM制御及びパルス幅制御及びPAM制御のいずれか一つ、またはいずれか二つ、または全てを同時に行うことによって、電動機出力の制御を行うものであり、負荷条件や電源電圧等の動作条件に応じて、つねに最適の状態で電動機の駆動制御及び出力制御が可能になる。特に、空気調和機等の用途に用いた場合、電動機の騒音や振動が課題になる場合があるが、そのような場合には印加電圧や通電比率、通電期間、さらには遅延期間を調整して騒音や振動を最小にするような駆動制御を行うことが可能である。
【0026】
また、請求項8に記載の発明は、スイッチング素子群への母線電流を制御する手段を有し、母線電流を制御することによって、出力制御を行うものであり、電流源を用いることによりスイッチング素子群が万一デッドショートしても母線電流が設定された値を超えないため、システムの安全性を高めることができるという効果がある。
【0027】
また、請求項9及び10に記載の発明は、振動子の運動方向によって印加電圧や通電比率、通電期間等を個別に、または同時に変化させて電動機の高効率運転を行うものである。振動型電動機の負荷は一般に不均一で振動子の運動方向によって仕事量が異なる場合が多い。たとえば圧縮機に応用した場合、一方向に運動するときにはガスを圧縮するなど大きな仕事が発生し、他の一方向に運動するときには逆に残留ガスの膨張等の影響でほとん
ど仕事が発生しないか非常に小さい。このような場合に運動方向によらず同じ巻線電圧を印加もしくは励磁電流を通電すると、電動機の駆動効率の低下をまねくため、本実施例に示す方法により、振動子の運動方向に応じて巻線電圧もしくは励磁電流をかえることにより、高効率な駆動制御が実現できる。
【0028】
また、請求項11及び12に記載の発明は、請求項1から10に記載の振動型電動機及びその駆動制御方法もしくは駆動制御装置を、振動型電動機の圧縮機や空気調和機への展開を可能にするものである。
【0029】
【実施例】
以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0030】
(実施例1)
図1は本発明の振動型電動機の一構成例である。
【0031】
振動型電動機は、巻線1と永久磁石である振動子2と巻線に励磁電流を通電することにより発生する磁界を透過しやすい材質で構成された固定子3とからなる。振動子2は、図1に示すように機械バネ4で固定子に接続されている。
【0032】
巻線1はU及びVの端子を有し、例えばこの図のようにU端子側から見て時計回り方向に巻かれ、然るべき巻数ののち、反対方向、この場合は反時計回り方向に然るべき巻数を有するように構成される。また、振動子2はこの場合U端子側に永久磁石のN極、V端子側にS極がくるように配置する。
【0033】
この状態で、U→V方向へ励磁電流を通電すると、その電流により(a)のように固定子の両端にN極、巻線の巻き返し部分すなわち固定子の中心付近にS極の磁界が発生する。振動子は、この磁界からV端子方向への反発力と吸引力を受け、その方向へ移動する。
【0034】
また、V→U方向へ励磁電流を通電すると、その電流により(b)のように固定子の両端にS極、巻線の巻き返し部分すなわち固定子の中心付近にN極の磁界が発生する。振動子は、この磁界からU端子方向への反発力と吸引力を受け、その方向へ移動する。
【0035】
上記のような励磁電流の方向を変える動作(以下転流という)を適当なタイミングで繰り返すことにより、振動型電動機の駆動制御を行うものである。
振動型圧縮機は、その構成上機械バネ4やガスバネ等振動型電動機特有の機構的構成要素のパラメータによって決定される機械共振点で駆動される場合が最も効率が高く、振動型電動機を高効率に駆動するには、機械共振に同期して転流制御を行うことが不可欠である。本発明では以下に述べるような制御によりそのような高効率駆動を実現するものである。
【0036】
図2を用いて基本的な駆動制御方法の考え方を説明する。
【0037】
振動子2を何らかの手段で自由振動させた時、機械バネ4の作用により正弦波振動を発生し、振動子2の変位xは図2(a)及び式1で表される。
【0038】
x=α・sin(ωt+θ) …1 α:振動子の最大振幅
ω:振動子の角速度
その時の振動子2の変位速度vは図2(b)及び式2で表される。
【0039】
v=dx/dt=β・cos(ωt+θ) …2 β:振動子の最大速度
この時、巻線1に発生する誘起電圧は変位速度vに比例するため、その波形は(c)で表される。この図から振動子2が最大振幅の点、すなわち死点にある時UV端子間の電位差が0になることがわかる。したがって、コンパレータ等の電圧比較手段を用いてUVの端子間の電位を比較し、両者の電位が反転したときに電圧比較手段の出力信号が反転するようにしておけばたとえば図2(d)に示す信号が得られ、この信号に基づいて転流を行えば機械共振に同期した駆動制御を実現でき高効率駆動が可能となる。
【0040】
図3は本発明の一実施例の基本回路ブロック図を表す。
【0041】
図3に示す実施例は、巻線1、スイッチング素子Qu,Qv,Qx,QyおよびダイオードDu,Dv,Dx,Dyからなるインバータ部5、電源6、電圧比較手段7および演算・制御手段8から構成される。演算・制御手段8はさらに、誘起電圧比較手段7の出力信号を受けて、U→VあるいはV→Uの切り替わりを検出する相検出手段、及び相切り替えから通電再開までの遅延時間を設定する遅延時間設定手段、通電再開から次の通電停止までの期間すなわち通電期間を設定する通電期間制御手段、相検出手段の出力に基づき通電パターンを決定する通電パターン決定手段から構成される。
【0042】
図4は本実施例の基本動作波形を示した図で、(1)は巻線電圧と誘起電圧の合成波形として得られる電動機端子電圧波形を誘起電圧比較手段7によって処理した結果得られる位置検出信号、(2−1)〜(2−4)はスイッチング素子Qu〜Qyのゲート(Gu〜Gy)駆動信号波形、(3)は電動機端子電圧波形、(4)は励磁電流波形である。
【0043】
スイッチング素子Qu〜Qyは、通電の方向によってすなわちU→VもしくはV→Uに対応して、
U→V Qu,Qy:オン Qv,Qx:オフ (期間Aという)
V→U Qv,Qx:オン Qu,Qy:オフ (期間Bという)と制御される。さらに上記以外に、Qu〜Qy:全てオフ(期間Cという)という状態を設定する。これらの状態はそれぞれ、図4の期間A,B,Cに相当する。期間Cは更に、期間A終了後の状態であるC1と期間B終了後の状態であるC2に分けられる。期間C1およびC2は、電圧比較手段4の出力が転じた瞬間から期間Aまたは期間Bまでの遅延期間D1および遅延時間D2を含む。遅延時間D1及びD2は遅延時間設定手段によって設定される。
【0044】
期間Aでは、QuとQyがオン、QvとQxがオフしているため、図4(3−1)に示すとおり巻線のU相電位(以下U相電位という)はほぼ電源の高電位側に等しく、V相電位はほぼ低電位側に等しくなっている。この状態から、演算・制御手段8は、通電期間制御手段によって設定された通電期間設定値に基づきQuとQyをオフし、期間C1に移行する。オフした直後は、U→Vへの回生電流が発生するため、DxとDvがオンし、U相電位はほぼ低電位側と等しく、V相電位はほぼ高電位側と等しくなる。回生電流が消滅したあとU相には振動子の移動に伴う右下がり、すなわち時間とともに減少方向にある誘起電圧が発生する。一方V相にはU相と逆相の誘起電圧が発生する。
【0045】
誘起電圧比較手段7は両者の電位を比較し、電位が逆転したところで出力信号を反転させる。すなわち、期間C1では正(以下ハイという)から0(以下ローという)に反転する。
【0046】
演算・制御手段8は上記信号に基づき出力すべき通電パターン、すなわちこの場合はV→Uを選択し、誘起電圧比較手段7の出力信号がハイからローに転じた瞬間から予め設定された遅延期間D1経過後、QvとQxをオンし、期間Bに移行する。この状態を設定された通電期間中維持する。
【0047】
通電期間が終了すると演算・制御手段8は再び、Qu〜Qyを全てオフし期間C2に移行する。オフした直後は、V→Uへの回生電流が発生するため、DuとDyがオンし、V相電位はほぼ低電位側と等しく、U相電位はほぼ高電位側と等しくなる。回生電流が消滅したあとV相には振動子の移動に伴う右下がり、すなわち減少方向にある誘起電圧が発生する。一方U相にはV相と逆相の誘起電圧が発生する。
【0048】
電圧比較手段4は両者の電位を比較し、電位が逆転したところで出力を反転させる。すなわち、期間C2ではその出力信号をローからハイに反転する。
【0049】
演算・制御手段8は上記信号に基づき出力すべき通電パターン、すなわちこの場合はU→Vを選択し、予め設定された遅延期間D2経過後、QuとQyをオンし、期間Aに移行する。これ以降
A→C1→B→C2→A→C1→ …を繰り返すことにより、振動型電動機の駆動制御を行うことができる。
【0050】
遅延時間D1およびD2は0から半周期までの任意の値を選択することができるが、振動型電動機の負荷や効率、騒音等に対して最適な値を求めて設定することが可能である。また、負荷の特性によっては、さらに最適な運転条件を実現するためにD1,D2にそれぞれ異なった値を設定することも可能である。
【0051】
本実施例では、2個の縦列接続されたスイッチング素子の2対の組み合わせを用いたが、実際はこれの限りではない。
【0052】
以上が本発明請求項1〜3記載の振動型電動機及びその駆動装置の実施例である。
【0053】
そしてこの実施例によれば、たとえば負荷変動等によって機械共振点がかわっても、つねに共振点に追従した振動型電動機の駆動制御が可能になり、その結果高効率な駆動が実現される。
【0054】
(実施例2)
図5は、本発明の別の実施例の基本回路ブロック図とその駆動波形を示す。
【0055】
(a)の基本回路ブロック図について、実施例1と同一のものは、同一の番号を付して説明は省略する。演算・制御手段8'には、実施例1の演算・制御手段8に加え、外部からの出力指令値を受け取って内部的な数値に変換する出力指令値変換手段と、その数値をもとに通電比率を決定する通電比率制御手段と、通電比率と通電パターンの論理積をとって駆動信号を生成する合成手段が追加されている。インバータ部のスイッチング素子群は通電パターンと通電比率から合成された駆動信号により、いわゆるPWM制御される。
【0056】
外部からの出力指令値とは、例えば空気調和機の電動機の出力を何kWにせよというような数値であり、その形態は直流電圧値や交流信号の周波数、ディジタル的な信号などが考えられる。また、内部的な数値とは、外部からの出力指令に対応した、例えば請求項8記載の通電比率すなわちPWMのデューティ等に相当するものである。
【0057】
(b)は本構成での駆動電圧波形を表している。(1)は通電パターン決定手段のスイッチング素子Quへの出力波形であり、(2)は通電比率制御手段の出力波形であり、(3)は前記両者の論理積をとったものでスイッチング素子Quを実際に駆動するゲート信号波形である。(4)はスイッチング素子QuとQxの間の端子電圧波形であり、Quが前記ゲート信号に追従してオンオフしている様子を表す。
【0058】
また、本実施例のように巻線電圧もしくは励磁電流の通電比率を制御する場合には、一ないし複数の通電期間を通して一定の比率を維持する等幅パルス幅変調方式(以下等幅PWM)と、一通電期間中に連続的にパルス幅を変える不等幅パルス変調方式(不等幅PWM)がある。
【0059】
等幅PWM方式は制御が簡単なため、マイコン等を使わない単純な構成で駆動制御できるという特徴があり、また不等幅PWM方式は巻線を流れる励磁電流を、例えば正弦波状の滑らかな波形にして、駆動効率の向上や騒音の低減が可能という特徴があり、それぞれ用途や条件に応じて制御方法を選択できる。
【0060】
また、巻線電圧もしくは励磁電流の通電比率を制御する場合には、縦列接続されたスイッチング素子の高電位側をスイッチングする上アームPWM方式と、低電位側をスイッチングする下アームPWM、および上下を同時または交互にスイッチングする上下アームPWM方式がある。
【0061】
上アームもしくは下アームのみのPWMは、制御が簡単なためマイコン等を使わない単純な構成で駆動制御できるという特徴があり、また上下アームPWMは通電期間の終了直前に、例えば上アームから下アームPWMに切り替えることにより通電終了時に発生する回生電流を抑制し、位置検出を行いやすくするという効果や、上記不等幅PWMと組み合わせることにより、励磁電流を正弦波状の滑らかな波形にして駆動効率の向上や騒音の低減を図れるという効果がある。
【0062】
以上が本発明請求項4記載の振動型電動機及びその駆動装置の実施例である。
【0063】
また、図5において通電期間制御手段の設定値を外部からの出力設定値に基づき変更することによって、すなわちパルス幅制御によって振動型電動機の出力制御を行うことができる。
【0064】
そして、この実施例によれば、部品の追加等を行うことなく、振動型電動機の出力制御が可能となる。
【0065】
以上が本発明請求項5記載の振動型電動機及びその駆動装置の実施例である。
【0066】
(実施例3)
図6は、本発明のさらに別の実施例の基本回路ブロック図とその駆動波形を示す。実施例1と同一のものは、同一の番号を付して、説明は省略する。電源3は可変出力電源9に置き換えられている。
【0067】
外部からの出力指令値によって可変出力電圧源9を制御することにより振動型電動機のいわゆるPAM制御が可能である。
【0068】
また、演算・制御手段8の中に出力指令値を電圧指令値に変換する変換要素を持つことにより、外部からの出力指令値を演算・制御手段で受けて、可変出力電圧源9を制御して出力制御を行うことも可能である。
【0069】
また、上記実施例2と3を組み合わせることにより、より広い範囲での最適な出力制御が可能となる。
【0070】
以上が本発明請求項6及び7記載の振動型電動機及びその駆動制御装置の実施例である。
【0071】
(実施例4)
図7は、本発明のさらに別の実施例の基本回路ブロック図とその駆動波形を示す。実施例1と同一のものは、同一の番号を付して、説明を省略する。電源3は可変出力電流源10に置き換えられている。
【0072】
出力指令値によって可変出力電流源10を直接制御することにより振動型電動機の出力制御が可能である。電流源に出力制御を行うことによって、アーム短絡等が発生しても設定値以上の電流を流さないため、特別な保護装置なしで異常時の信頼性を向上できるという効果を奏する。
【0073】
また、演算・制御手段8の中に出力指令値を電流指令値に変換する変換要素を持つことにより、外部からの出力指令値を演算・制御手段で受けて、可変出力電流源10を制御して出力制御を行うことも可能である。
【0074】
以上が本発明請求項8記載の振動型電動機及びその駆動制御装置の実施例である。
【0075】
(実施例5)
図8は、本発明のさらに別の実施例の駆動波形を示す。(1)は誘起電圧比較手段7の出力信号、(2−1)、(2−2)はスイッチング素子Qu及びQvのゲートに入力されるゲート駆動信号、(3)はUからV方向を正とした場合の励磁電流である。期間E及びFは電動機の制御周期の半周期にあたり、それぞれ期間Eは電動機の負荷が大きい期間、期間Fは負荷が小さい期間に相当する。
【0076】
基本回路ブロック図については実施例2から4に共通であるため省略する。
【0077】
一般に振動型電動機を圧縮機に応用した場合、振動子の運動方向がガスを圧縮する圧縮行程に相当するのか、ガスを吸気する吸気行程に相当するのかで、必要なエネルギーに大きな差がある。すなわち圧縮行程ではガスを圧縮する仕事に相当するエネルギーが必要なのに対して、吸気行程では圧縮行程ほどのエネルギーを必要としない。振動子の両側に圧縮室がある構造の場合はその限りではないが、コストや構成の容易さなどから振動子の片側のみに圧縮室を設ける場合が多く、この場合は上記のように振動子の方向によって必要なエネルギーが異なるため、振動子の運動方向に応じて、実施例2から4に示す通電比率や印加電圧を変更する手段を用いて励磁電流を増減させることにより、さらに高効率な振動型電動機の駆動制御が実現する。
【0078】
具体的には、予め実施例1から4に示す電圧比較手段4の出力のハイもしくはローのどちらが高負荷の期間に相当するのかを決めておき、例えば、図8のようにハイの期間が高負荷の期間Eに相当する場合には、その期間に大きな通電比率を設定して励磁電流が流れるようにしておき、ローの期間Fには期間Eの数%から数10%程度の励磁電流が流れるように小さな通電比率を設定しておくことで実現が可能である。
【0079】
本実施例では、通電比率による制御方法で説明したが、印加電圧や通電期間による制御でも同様の効果を得ることができる。
【0080】
以上が本発明請求項9及び10記載の振動型電動機及びその駆動装置の実施例である。
【0081】
また、これまで述べたような特徴を持つ振動型電動機とその駆動制御装置の搭載により、より高性能で安価な圧縮機あるいは空気調和機の提供が可能になる。以上が本発明請求項11及び12記載の振動型電動機及びその駆動装置の実施例である。
【0082】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、請求項1から3に記載の発明は、巻線への励磁電流に非通電期間を設け、非通電期間中に巻線に発生する誘起電圧を観測することにより、通電制御を行うもので、非通電期間中に巻線の任意の2点間に発生する誘起電圧の電位を比較し、電位が反転した時点もしくは、反転した時点から所定の時間経過後に通電を再開する制御方式を提供するもので、振動子の位置、速度や加速度等を検知するセンサや、高速の演算・制御手段、位置・速度・加速度推定のためのアルゴリズム等を使わずに、振動型電動機の駆動制御が実現できる。
【0083】
また、誘起電圧による位置検出信号に基づき、励磁電流の転流を行うため、常に機械バネやガスバネ等のパラメータによって変動する機械共振点での駆動が実現され、高効率な電動機駆動制御が可能となる。
【0084】
特に、振動型電動機を応用した圧縮機や空気調和機では、負荷条件の変動や運転モード、設定温度の変更などにより圧力条件が変動し、機械共振点が変動する場合があるが、本発明が提供する駆動制御方式によれば、そのような場合にでも常に機械共振点に追従した駆動がなされるため、常に高効率な運転が実現される。
【0085】
また、振動型電動機固有の課題として、振動子と固定子の衝突という問題があるが、本発明が提供する駆動制御方式によれば、位置検出を行いながら制御を行うため、そのような事態が発生する可能性が従来方式に比べて非常に低くなるという効果もある。
【0086】
請求項4から8に記載の発明は、印加電圧や電流の大きさ、一周期中の通電のオン・オフ比率や一周期中の通電時間の長さを制御することによって、振動型電動機の出力制御を実現するもので、これによりスイッチング素子の速度や可変出力電源の有無といった周辺機器の状況や、用途、システムの規模に応じて最適な出力制御を実現するという効果を奏する。また、印加電圧や電流の大きさ、一周期中の通電のオン・オフ比率や一周期中の通電時間の長さを最適化することによって、単一の駆動制御装置で高効率な駆動や低騒音な駆動を実現できる。
【0087】
請求項9及び10に記載の発明は、請求項4から8に記載の発明において、特に振動子の運動方向によって必要なエネルギーに差がある場合に、より高効率な駆動制御方法を提供するものである。
【0088】
請求項11および12に記載の発明は、請求項1から10記載の振動型電動機及びその駆動装置の、空調用の圧縮機やそれを用いた空気調和機への応用に関するものである。
【0089】
空気調和機や冷蔵庫など冷凍サイクルを用いた機器は、近年オゾン層破壊防止や地球温暖化防止等環境保護の観点から、それに用いる冷媒の種類が非常に限定される傾向にある。このように限られた種類の冷媒の中には、圧縮機の圧縮機構の潤滑に不可欠な潤滑油を分解するといった特性を持つものがあり、従来の回転型の圧縮機構を有する圧縮機では、冷媒と潤滑油の組み合わせがさらに限定されるという課題があった。
【0090】
しかしながら、本発明がその駆動制御方式を提供する振動型圧縮機は、潤滑油が不要もしくは従来に比べて極めて少量で圧縮機構の動作が可能という特徴を有している。
【0091】
したがって、本発明によって安価で高効率な振動型圧縮機の駆動制御が実現されることにより、上記のような機器に用いられる冷媒、あるいは潤滑油等についてより高効率な特性を持つものの選択が可能になるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示す構成図
【図2】 本発明の一実施例を示す波形図
【図3】 本発明の一実施例を示す基本回路ブロック図
【図4】 同一実施例の駆動電圧・電流波形図
【図5】 本発明の別の実施例を示す基本回路ブロック図と駆動電圧波形図
【図6】 本発明のさらに別の実施例を示す基本回路ブロック図と駆動電圧波形図
【図7】 本発明のさらに別の実施例を示す基本回路ブロック図と駆動電圧波形図
【図8】 本発明のさらに別の実施例を示す駆動電圧波形図
【符号の説明】
1 電動機巻線
2 振動子
3 固定子
4 機械バネ
5 インバータ部
6 電源
7 誘起電圧比較手段
8 演算・制御手段
9 可変出力電圧源
10 可変出力電流源
Claims (12)
- 固定子もしくは振動子に巻線を有し、前記巻線に通電することによって発生した磁界と振動子もしくは固定子が発生する磁界との相互作用によって推力を発生する振動型電動機の駆動装置であって、前記巻線への励磁電流の通電制御手段を有し、前記通電制御手段によって前記励磁電流の通電期間と非通電期間を設け、前記非通電期間中に前記巻線に発生する誘起電圧の変化をセンサレスで検出する誘起電圧検出手段を有し、前記誘起電圧検出手段の出力に応じて通電制御を行い、前記非通電期間中に前記巻線の任意の2点間に発生する誘起電圧の電位を比較する誘起電圧比較手段を有し、前記誘起電圧比較手段の出力信号が反転した時点もしくは、反転した時点から所定の時間経過後に通電を再開することを特徴とする振動型電動機及びその駆動制御装置。
- 前記振動子に永久磁石、前記固定子に巻線を有することを特徴とする請求項1記載の振動型電動機及びその駆動制御装置。
- 縦列接続されたスイッチング素子の複数対を有し、前記スイッチング素子間の各々の接続点に前記巻線の両端を接続したことを特徴とする請求項1または2いずれか一項記載の振動型電動機の駆動制御装置。
- 前記巻線へ印加される巻線電圧もしくは通電する励磁電流の通電比率を制御する通電比率制御手段を有し、前記通電比率制御手段により前記巻線電圧もしくは前記励磁電流の通電比率を制御することによって、電動機出力を制御することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の振動型電動機の駆動制御装置。
- 前記巻線電圧もしくは前記励磁電流の通電期間を制御する通電期間制御手段を有し、前記通電期間制御手段により前記巻線電圧もしくは前記励磁電流の通電期間を制御することによって、電動機出力を制御することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の振動型電動機の駆動制御装置。
- 前記スイッチング素子群への印加電圧を制御する印加電圧制御手段を有し、前記印加電圧制御手段により前記印加電圧を制御することによって、電動機出力を制御することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の振動型電動機の駆動制御装置。
- 前記通電比率制御手段及び前記通電期間制御手段及び前記印加電圧制御手段のいずれか2手段、もしくは全てを有し、通電比率または通電期間または印加電圧のいずれか一方、もしくはいずれか二方、もしくは全てを同時に制御することにより、電動機
出力を制御することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の振動型電動機の駆動制御装置。 - 前記スイッチング素子群に通電する母線電流を制御する母線電流制御手段を有し、前記母線電流制御手段により前記母線電流を制御することによって、電動機出力を制御することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の振動型電動機の駆動制御装置。
- 前記通電比率制御手段及び前記通電期間制御手段及び前記印加電圧制御手段のいずれか一手段、もしくはいずれか二手段、もしくは全てを有し、前記振動子の運動方向に応じて、前記通電比率及び前記通電期間及び前記印加電圧のいずれか一方、もしくはいずれか二方、もしくは全てを変化させることを特徴とする請求項4から7いずれか一項記載の振動型電動機の駆動制御装置。
- 前記振動子の運動方向に応じて前記母線電流制御手段により前記母線電流を制御することによって、電動機出力を制御することを特徴とする請求項8記載の振動型電動機の駆動制御装置。
- 請求項1から10いずれか一項記載の振動型電動機及びその駆動制御装置を用いた圧縮機。
- 請求項11記載の圧縮機を用いた空気調和機。
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