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JP3686482B2 - ヘモグロビンa1cの管理試料 - Google Patents
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JP3686482B2 - ヘモグロビンa1cの管理試料 - Google Patents

ヘモグロビンa1cの管理試料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘモグロビンA1Cの凍結乾燥復元後の保存性を格段に向上させたヘモグロビンA1C の管理試料に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
血液中のヘモグロビンは、α鎖N末端のアミノ酸のバリンのアミノ基とグルコースのアルデヒド基の間の非酵素的な反応によりグルコースと結合する。この結合の第一段階は、可逆的なシッフ塩基反応であるが、さらにアマドリ転移反応を経て不可逆的なケトアミンを形成する。このようにして生成するヘモグロビンとグルコースの結合物は、ヘモグロビンA1C(以下、HbA1Cともいう)として知られている。
ヘモグロビンの血液中での寿命は約3ヵ月であり、その間グルコースと結合して生成するHbA1Cが徐々に蓄積するが、その一方で寿命が尽きたHbA1Cは逐次分解されていく。すなわち、ある時点で血液中に存在しているHbA1Cの濃度は、その時点からヘモグロビンの寿命のおよそ半分の1〜2ヵ月程遡った過去の血液中のグルコース濃度、すなわち血糖濃度を平均的に反映するものである。
【0003】
このような特徴を有するHbA1Cは、一般的な糖尿病の指標である血糖濃度等のように一時的な変動が無く過去の血糖状態を正確に把握できる。そのため、血中のHbA1C濃度は糖尿病患者の血糖コントロール指標として、今日重要である。
HbA1Cの定量法には、イオン交換カラムを使用した高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCという),m−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定したアフィニティクロマトグラム担体を用いたアフィニティーカラム法,,ラテックス凝集法,免疫比濁法,等電点電気泳動法,フィチン酸法,チオバルビツール酸法等があるが、感度,特異性,再現性に優れており、また専用の簡便な自動分析機が普及したこともあって、HPLC法が臨床検査においては標準的な測定法となっている。
【0004】
ここで問題となるのは、HbA1C測定における標準としたり、また測定機器や施設間、あるいはデータの継続性等の精度管理の基準として使用する「管理試料」を得ることである。HbA1C管理試料の製造方法についてはいくつかの検討例がある。例えば、赤血球の溶血液に保存料を添加して製造する方法(東独特許第150543号,米国特許第3519572号,英国特許第934461号)、シアンメトヘモグロビン,オキシヘモグロビン−ポリヒドロキシ化合物,一酸化炭素ヘモグロビンを用いて製造する方法〔ドイツ特許第3311458号,ヨーロッパ特許第72440号,“Mosca.A.,et al., J.Clin.Chem. Clin. Biochem.23:361-364(1985)”〕、N−〔5−ニトロトロポン−2−イル〕ヘモグロビンとヘモグロビンとの混合物からなるもの(特公昭63−19828号公報)、ポリヒドロキシ化合物により全血から得られる溶血液を脱脂する方法(特開昭58−37561号公報)、シアンメトヘモグロビンに変換し凍結乾燥する方法(特開昭59−183370号公報)、HbA1Cの代用としてアセチル化ヘモグロビンより製造する方法(特開平3−220457号公報)、ヘモグロビンを一酸化炭素ヘモグロビン,アザイドメトヘモグロビン又はシアンメトヘモグロビンに変換した状態でインビトロでグルコースとヘモグロビンとを結合させた後,不安定なシッフ塩基結合のものを還元剤により分解し,安定なHbA1Cを回収して製造する方法(特表平6−508690号公報)等を挙げることができる。
なお、現在Bio−Rad社の製品〔Bio-Rad Laboratories. Hemoglobin A1cMicro Column test Instruction Manual. March 1990〕をはじめとして、いくつかの製品が市販されているが、これらの製品の製法は明らかにされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このHbA1Cの管理試料においては、実際の検体である新鮮血液と分析時の挙動が同等であることが必要である。
何故なら、ヘモグロビンは、時間,温度等の負荷によって、主に酸化による変性を起こし、酸化されたヘモグロビンであるメトヘモグロビンと、酸化していないヘモグロビンであるオキシヘモグロビンとは、その電荷が異なるからである。
【0006】
HbA1Cの主流である上記のイオン交換HPLC法は、HbA1Cをその他のヘモグロビンとの電荷の差により分離するものであるが、上述のように酸化されたヘモグロビン(酸化されたHbA1Cを含む)が混合すると、クトマトグラムの分離パターンが乱れ、非常に鋭敏なHPLCにおいては、新鮮血液本来のものとはかなり異なるものとなる。
よって、HbA1Cの管理試料としては、個々のロットが長期に継続することが要求される。また、この管理試料が凍結乾燥品の場合には、凍結乾燥時の安定性のみならず、使用時に精製水等を加え溶解し復元した後の安定性も要求される。
【0007】
なお、このHbA1Cの管理試料に要求される安定性を満たす従来の手段としては、例えば▲1▼始めから全成分をメトヘモグロビンとして、ヘモグロビンをそれ以上酸化変性する余地をなくし、全成分中での電荷の差を、HbA1Cとその他のヘモグロビンとの間のものだけとし、HbA1Cとその他のヘモグロビンとの分離を明確にする方法;▲2▼一酸化炭素と2価の状態のヘム鉄との結合が酸素のほぼ数万倍は強いことに着目し、全成分を一酸化炭素ヘモグロビンとして、ヘム鉄が3価に変わるヘモグロビンの酸化を防ぐ方法〔▲1▼▲2▼に該当する先行技術文献としては、前出のドイツ特許第3311458号,ヨーロッパ特許第72440号,“Mosca.A.,et al., J.Clin.Chem. Clin. Biochem.23:361-364(1985)”;特開昭59−183370号公報;特表平6−508690号公報〕等を挙げることができる。
【0008】
しかしながら、これらの方法における問題点として、全体がメトヘモグロビンの場合は、HPLC法の分離パターンが新鮮血液と同一であっても全体的にリテンションタイムが新鮮血液のリテンションタイムから外れるために、新鮮血液のための機器調整等に必ずしも適合するものではなく、メト化したHbA1Cのリテンションタイムに基づき機器の調整をした場合、新鮮血液の本来のHbA1CのピークをHbA1Cのものとして機器が識別することができないという点が挙げられる。また、新鮮血液のHbA1Cのピークに異常が現れるようなHPLCのカラムの劣化等の異常がある場合に、メトヘモグロビンの管理試料ではこのような異常をモニターすることができないという点も挙げることができる(▲1▼)。
そして、一酸化炭素ヘモグロビンを用いる場合においても、次の製造工程において、グルコースと反応させるために加温したりした場合には、完全に変性を防ぐことはできない(▲2▼)。
【0009】
さらに、上記に例示した方法の他に、電荷がHbA1Cと等しく、HPLC法において、HbA1Cと同じ位置にピークを示すため、HbA1Cの代用としてアセチル化ヘモグロビンを用いる方法も挙げられるが、この場合のHPLCのクロマトグラムのパターンもまたHbA1Cと同一とはいえない。
すなわち、これらの従来のいずれの方法によって製造されたHbA1C管理試料も、HbA1C測定の主流である上記のHPLC法に適しているとはいえない。
【0010】
そこで、本発明の解決すべき課題は、長期間安定で、かつ新鮮血液のHPLCクロマトグラムパターンを示す糖尿病診断等において極めて有用なHbA1C管理試料を提供する手段を見出すことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題の解決に向けて鋭意検討を行った。その結果、通常検体の安定剤としてサッカロースをHbA1Cと共存させることにより、HbA1Cの安定性,特に凍結乾燥復元後の保存性を格段に向上させることができることを見出し本発明を完成した。
【0012】
また、このサッカロースと共存させる、糖尿病診断に特に有用なHbA1Cの調製方法として、m−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定したアフィニティクロマトクロマトグラム担体を用いた特定の手段を用いることで、極めて優れたHbA1Cの管理試料を提供し得ることを見出して本発明を完成した。
すなわち本発明者は、以下の発明を提供する。
【0013】
請求項1において、ヘモグロビンA1C及びサッカロースを含んでなるヘモグロビンA1C組成物の管理試料を提供する。
【0014】
請求項2において、ヘモグロビンA1Cが、血液試料をm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定したアフィニティクロマトグラム担体で捕捉して得られるヘモグロビンA1Cである前記請求項1記載の管理試料を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
A.本発明ヘモグロビンA1C 管理試料(以下、本発明試料ともいう)は、HbA1Cとサッカロースとを含んでなる。本発明試料中におけるHbA1Cの形態は、特に限定されない。すなわち、新鮮血中のHbA1Cをそのまま用いることもできるし、上記のように、メトヘモグロビンとグルコースとが結合したHbA1C等も許容され、一酸化炭素結合ヘモグロビンとグルコースとが結合したHbA1Cも許容され、HbA1Cの代用物質、例えばアセチル化ヘモグロビン等も許容される。
【0016】
しかしながら、可能な限り生体内のHbA1Cの状態を反映させたHPLCクロマトグラムを得ることが検査の信頼性を向上させる上で好ましいことを考慮すると、新鮮血中のHbA1Cをそのまま用いることが好ましい。
【0017】
そして、この新鮮血中のHbA1Cを得る手段は特に限定されるものではなく、公知のHbA1Cの入手手段を用いることができる。すなわち、血液試料をm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定したアフィニティクロマトグラム担体で捕捉して得る方法;イオン交換カラムで分離して得る方法;電気泳動で分離して得る方法等を挙げることができる。
【0018】
これらのHbA1Cの入手法のうちでも、特に前述したHbA1Cの管理試料を得る場合には、血液試料をm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定したアフィニティクロマトグラム担体で捕捉して得る方法を選択することが好ましい。
このHbA1Cの調製方法については、後述する。
【0019】
本発明試料中に上記HbA1Cと共に配合するサッカロースは、総ヘモグロビン1重量部に対して0.3重量部以上,同10重量部以下の範囲で配合される。総ヘモグロビン1重量部に対して0.3重量部未満では所望するHbA1Cの安定効果が十分に発揮されずに好ましくなく、同10重量部を越えて配合すると凍結乾燥の際、余剰のサッカロースに対する結合水が気化せずバイアルに水分が残留し、好ましくない。
【0020】
また、好適なサッカロースの配合量は、総ヘモグロビンの濃度によって異なる。具体的には、総ヘモグロビン濃度が通常の検体程度,すなわち10〜15g /dl程度のものには、総ヘモグロビン1重量部に対して1重量部程度が適当であり、総ヘモグロビン濃度がさらに希薄な場合,すなわち1.0g /dl程度のものには、総ヘモグロビン1重量部に対して5重量部程度が適当である。
【0021】
このように、HbA1Cとサッカロースを組み合わせて配合することにより、HbA1Cの安定性、特に凍結乾燥後のHbA1Cの安定性を飛躍的に向上させることができる。
【0022】
なお、本発明試料中には、上記必須成分の他に、ヘモグロビンの酸化防止等を目的として、本発明の所期の効果を損なわない範囲で他の任意成分を配合することが可能である。例えば、アスコルビン酸,三リン酸塩,カテキン,亜硫酸ナトリウム,亜硫酸水素ナトリウム,硫酸第一鉄,グルタチオン等を本発明試料中に配合することができる。
【0023】
なお、本発明試料の所期の経時的安定効果を発揮させる最も好適な形態は、凍結乾燥品としての形態であるが、この凍結乾燥品の調製に際しては通常公知の方法を採ることができる。
【0024】
例えば、−30℃〜−40℃で試料を凍結し、減圧し、棚温−20℃〜4℃で5〜100時間程度乾燥することにより所望する凍結乾燥製剤を得ることができる。なお、本発明においては、特に本発明試料中のサッカロースを乾燥させるために、90〜100時間程度乾燥させることが好ましい。
【0025】
このように調製した本発明試料は、格段に経時的な安定性に優れており、後述するごとくHbA1Cの管理試料として特に優れた組成物である。また、その特性を生かして、本発明はHbA1Cの検出を目的とする検体試料にも適用することができる。すなわち、HbA1Cの検出を目的とする後述する溶血処理を施した血液検体に、上記の配合割合でサッカロースを添加することによって、従来のHbA1Cの検出を目的とする血液検体よりも保存性が格段に向上した本発明試料としての血液検体を得ることができる。なお、この本発明試料としての血液検体は、上記の管理試料と同様の凍結乾燥品としての形態を採ることも可能であるが、凍結乾燥処理を省略した液状形態や乾燥処理を省略した凍結形態としての形態を採ることも可能である。
【0026】
B.本発明試料を構成するHbA1Cの最も好ましい調製方法は、血液試料をm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定したアフィニティクロマトグラム担体で捕捉して得る方法である。特に、HbA1Cの管理試料の製造を前提とする場合には、この手段を選択することが特に有効である。
【0027】
これは、以下に掲げる理由による。
▲1▼従来のHbA1Cの管理試料は、一般的にそのレベル調製の際に問題がある。特に、高いHbA1Cレベルを得る必要性がある場合に問題がある。
すなわち、HbA1Cのレベルの正常値は、ヘモグロビン全量に対して4.0〜5.8重量%程度であるが、糖尿病の発病に伴い生体の血糖コントロールが悪化するとこれより高値となり、同10重量%を越える場合もある。これに対応して臨床検査用のHbA1Cの管理試料としてのふさわしいレベルとしては、低値用でヘモグロビン全量に対して4.0〜5.0重量%程度であり、高値用としては、同10〜15重量%程度である。
【0028】
どのような手段を採るにしても、HbA1Cの原材料は、人血をはじめとする哺乳動物の新鮮血なのであるから、新鮮血中のある程度のHbA1C量のばらつきは避けることができない。特に、高値用の管理試料を製造する場合にはHbA1C量が高値である糖尿病患者の血液を用いる必要があり、これの確保には非常な困難を伴うのが常である。また、インビトロでヘモグロビンとグルコースを人為的に結合させるためには、時間とある程度の温度が必要になり、前述のようなヘモグロビンの変性を伴うことは避けがたいことである。
【0029】
この点において、上記の担体捕捉法を用いることにより、健常人の新鮮血を原材料として、ヘモグロビンを変性させずにHbA1Cを高値に加工することが容易である。
【0030】
▲2▼検体のヘモグロビン濃度に応じた管理試料が必要である。
すなわち、HbA1C量の測定においては、検体として全血又は沈降赤血球を用い、ここから得られるヘモグロビン溶液の全ヘモグロビン中におけるHbA1Cの相対量(%)として測定される。この検体は通常全ヘモグロビン濃度を希釈するが、この希釈倍率がそれぞれの測定法毎に大きく異なる。従って、HbA1Cの管理試料は、相対的にHbA1Cが高濃度で存在しても低濃度で存在しても、少なくともあらゆる測定法に対応できるだけの濃度、具体的には1.0g/dl以上の濃度であることが理想的である。
【0031】
上記の担体捕捉法は、HbA1Cの高値成分の分画を得る場合も低値成分の分画を得る場合にも、アフィニティカラムがHbA1Cを特異的に吸着する。そのために、HbA1Cとそれ以外のヘモグロビンとを両者の溶出速度の差を用いて分離する必要がなく、単にHbA1C以外のヘモグロビンを溶出液で押し出すことのみにより両者を分離することができる。すなわち、上記の担体捕捉法においては、イオン交換樹脂等による分離の場合に比べて、HbA1Cとそれ以外のヘモグロビンとを分離する際に用いる溶出液量を格段に節約することが可能になるため、結果としてHbA1Cの高値成分の分画を得る場合も低値成分の分画を得る場合にも、試料における総ヘモグロビン濃度を1.0g/dl以上の濃度とすることができる。
【0032】
上記の担体捕捉法において用いる血液試料は、通常溶血試料を用いる。この溶血試料の調製工程は、常法に従い行われる。すなわち、採取した新鮮血液から分離した赤血球の細胞膜を破壊することにより行うことができる。この破壊手段は、例えば激しく振盪して細胞膜を破壊する振盪法,超音波で細胞膜を破壊する超音波法,低張溶液中で細胞膜を破壊する浸透圧法,界面活性剤で膜を溶解する方法等通常公知の破壊手段を用いることが可能である。通常この溶血を行った後、破断した赤血球膜脂質等を脱脂処理等の手段により除去する。
【0033】
なお、この赤血球の細胞膜の破壊に先立ち、予め赤血球を十分に洗浄して遊離のグルコースを除去し、Labile HbA1C(シッフ塩基結合の段階のグルコースとヘモグロビンとの結合物、可逆性がある)を分解しておくことが好ましい。
このようにして、通常は10g/dl以上のヘモグロビン濃度の精製溶血液を得ることができる。
【0034】
次に、上記血液試料(精製溶血液)をm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定したアフィニティクロマトグラム担体で捕捉処理を行い、この担体に捕捉されたHbA1Cを選択的に分離する。
m−アミノフェニルボロン酸は、シスジオール基と結合する性質を有するために、このm−アミノフェニルボロン酸をアガロースやポリアクリルアミド等の担体にリガンドとして固定したアフィニティクロマトグラフィーにかけることにより、全ヘモグロビンの中から、シスジオール基を有するグルコースと結合しているHbA1Cを選択的に捕捉して分離することができる。
【0035】
上記のm−アミノフェニルボロン酸を担体に固定するためのスペーサーは、通常公知のものを用いることが可能であり、例えばNH2(CH2)nCOOH等をスペーサーとして用いることができる。
なお、このようなスペーサーを用いずに活性化したアガロースにm−アミノフェニルボロン酸を結合させることも可能である。
【0036】
また、m−アミノフェニルボロン酸は、HbA1Cを特異的に捕捉することができるリガンドとして最も好ましいものであるが、この他の(オルト)ほう酸基を有する物質や抗HbA1C抗体等のHbA1Cを特異的に吸着することができる物質をリガンドとすることができる。
【0037】
このm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定した担体は、通常公知の方法を組み合わせて調製することも可能であるが、市販品を用いることも可能である。例えばシグマ社からm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定した担体が市販されている。
【0038】
さらに、コンディショニングしたm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定した担体に、上記血液試料を仕込み、この担体に選択的に捕捉されたHbA1Cを個別的に溶出させて分離することができる。
【0039】
この工程では、先ず担体に吸着するHbA1Cが変性しない条件(2〜8℃程度の低温及び遮光条件下)で、十分な時間をかけて血液試料中のHbA1Cを担体に吸着させる。
このような条件で、選択的に担体に吸着させたHbA1Cを溶出させて所望するHbA1Cを得ることができる。
【0040】
この溶出の際の溶出液は、通常HbA1Cと同じくシスジオール基を有する成分,例えばソルビトール等を含むものを用いる。
なお、上記のHbA1Cの選択的な吸着−溶出工程において、血液試料をm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定した担体に仕込む際に、過剰量の血液試料を仕込むことで、所望する濃度でHbA1Cを含む管理試料を容易に調製することができる。
【0041】
すなわち、過剰の血液試料を仕込んで、ゲルベットの部分に残っている血液試料を低値用管理試料と高値用管理試料とに分別して、原料ヒト健常者血液のままのHbA1C濃度の精製溶血液と両者の試料とを任意の比率で混合することにより所望するHbA1C濃度の管理試料を調製することができる。
【0042】
低値用管理試料については、例えばゲルベットの部分に残っているが担体に吸着されていない血液試料を、HbA1Cと担体との吸着状態を保持できる溶液で溶出させて、これを低値用管理試料として用いることができる(この血液試料は、血液試料中に存在する本来の濃度のHbA1Cの一部分が担体に吸着されているので、HbA1Cの存在量が血液試料本来のものよりも低濃度となる。)。
また、高値用管理試料は、例えば前記のように担体に選択的に吸着されたHbA1Cを溶出させることにより得ることができる。
【0043】
なお、このようにして得たHbA1Cが高値と低値の溶液を透析にかけることにより、前記したHbA1Cの安定剤であるサッカロースを添加して試料を凍結乾燥にかける際の水分の蒸発を妨げるマグネシウムイオンやソルビトール等の成分を除去することが好ましい(なお、この透析における希釈を考慮して、透析試料をさらに濃縮することが好ましい)。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例等によりさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこの実施例等により限定されるものではない。
【0045】
〔製造例〕本発明試料の製造
(1)溶血液の調製450mlの健常人のヒト全血を、50ml容遠沈管に約45mlずつ分注し、遠心分離器(1250×g,5min ,4℃)にかけ、上清の血漿,血小板,白血球を除去して赤血球を分離した。この分離した赤血球に3/2容量の生理食塩水を加えて混合し、これを再び遠心分離器(1250×g,5min ,4℃)にかけ、生理食塩水を除去した。この生理食塩水による洗浄操作を8回繰り返した(8回目の遠心時間は10分間)。このようにして、洗浄赤血球200mlを調製した。得られた洗浄赤血球に等量の氷冷した精製水を加え、激しく振盪して赤血球を溶血させて溶血液400mlを調製した。
【0046】
次に、上記の溶血液に対して、1/4容量のトルエンを加えて激しく振盪し、遠心分離(1800×g,30min ,4℃)にかけ、3層に分離したうちの下層部分を回収した。回収した画分を再び遠心分離(1800×g,15min ,4℃)にかけ、上層に浮くか又は底に沈澱した不溶解物を除き、透明な部分のみを回収して、これを精製溶血液とした〔この精製溶血液のうち150mlを取り,安定剤(サッカロースの50重量%水溶液)を,16.7ml加え均一になるまで混合して、これを「原料血液そのままのHbA1C濃度の溶液」とした。
【0047】
(2)ゲルの調製
内径50mmのカラムに、m−アミノフェニルボロン酸アガロースゲル(シグマ社製)を約250ml充填した。
ゲル調整液として水酸化ナトリウム0.08重量%溶液を流速約50ml/min で約1000ml流した後、同じくゲル調整液として酢酸0.3重量%溶液を流速約50ml/min で約1250ml流した。次いで、精製水を流速約50ml/min で約2500ml流した。なお、このゲルの調整工程を通じて、カラムジャケットには循環ポンプで約20℃の冷却水を流した。
【0048】
このようにして調整したゲルに、平衡化液〔EPPS(0.505重量%),水酸化ナトリウム(pH8.6とするための必要量),塩化ナトリウム(0.877重量%),塩化マグネシウム・6水塩(0.203重量%),精製水(残量)〕を流速約50ml/min で約2500ml流してゲルを平衡化した。なお、このゲルの平衡化工程を通じて、カラムジャケットには循環ポンプで約20℃の冷却水を流した。
【0049】
(3)HbA1Cのゲル吸着
上記(2)において平衡化したゲルに上記(1)で調製した精製溶血液を3000ml混合し、垂直に立てたカラム内で2〜8℃で遮光し、16〜24時間静置した。
次に、ゲルベットの上に溜まった精製溶血液を駒込ピペットでカラム上から排出した。なお、この排出工程を通じて、カラムジャケットには循環ポンプで約2〜8℃の冷却水を流した。
【0050】
(4)HbA1C低値溶液の溶出
上記(2)と同一の組成の平衡化液を流速約50ml/min で1000ml流して、溶出した液をフラクションコレクターで試験管に約10mlずつ分画して回収した。なお、この溶出工程を通じて、カラムジャケットには循環ポンプで約2〜8℃の冷却水を流した。
0.5g /dlのヘモグロビン水溶液を用意し、これを対照として目視により、およそこの対照よりも濃い分画をビーカーにプールした。
【0051】
(5)HbA1C高値溶液の溶出
上記(4)に引続き、上記(2)と同一の組成の平衡化液を流速約50ml/min で1500ml流した(この工程を通じて、カラムジャケットには循環ポンプで約2〜8℃の冷却水を流した)。なお、この工程の間に溶出した液は廃棄した。
【0052】
次に、分離液〔EPPS(0.505重量%),水酸化ナトリウム(pH8.6とするための必要量),D−ソルビトール(1.822重量%),精製水(残量)〕を流速約25ml/min で1500〜2000ml流して、溶出した液をフラクションコレクターで試験管に約10mlずつ分画して回収した。なお、この溶出工程を通じて、カラムジャケットには循環ポンプで約2〜8℃の冷却水を流した。 0.5g /dlのヘモグロビン水溶液を用意し、これを対照として目視により、およそこの対照よりも特に濃い分画から約100mlまでプールした。
【0053】
(6)透析及び濃縮
上記(4)(5)により得られたHbA1C低値溶液及び同高値溶液をそれぞれ透析チューブに詰め(低値溶液約180 ml/ チューブ,高値溶液約100ml/ チューブ )
、精製水にこの透析チューブを浸漬して、2〜8℃で遮光し、約2時間スターラーで精製水を攪拌した〔低値溶液の精製水約20l ,高値溶液の精製水約10l 〕。この透析の終了後、精製水にこの透析チューブを浸漬して、2〜8℃で遮光し、約16時間静置した〔低値溶液の精製水約20l ,高値溶液の精製水約10l 〕。
【0054】
上記透析工程の終了したそれぞれの透析チューブを、約5l の濃縮剤〔ポリエチレングリコール20000 の30重量%水溶液〕に浸漬し、2〜8℃で遮光してスターラーで濃縮剤を攪拌した。
HbA1C低値溶液の透析チューブは、約2時間後に上記濃縮剤から取り出し、表面に付着した濃縮剤を氷冷した精製水で洗い流した後、表面の水分をペーパータオルで拭き取り、透析チューブ中の液体をメスシリンダーに採取して、その液量を定量し、これに1/9容量の安定剤(サッカロースの50重量%水溶液)を加え、均一になるまで混合し、下記の濃度調整工程を経て後述の凍結乾燥工程に処した。
【0055】
また、HbA1C高値溶液の透析チューブは、約4時間後に上記濃縮剤から取り出し、表面に付着した濃縮剤を氷冷した精製水で洗い流した後、表面の水分をペーパータオルで拭き取り、透析チューブ中の液体をメスシリンダーに採取して、その液量を定量し、これに1/9容量の上記安定剤を加え、均一になるまで混合し、下記の濃度調整工程を経て後述の凍結乾燥工程に処した。
【0056】
(7)HbA1C及び総ヘモグロビン量の濃度調製
前記(1)において調製した「原料血液そのままのHbA1C濃度の溶液」並びに前記(6)において調製した「HbA1C低値溶液」及び「HbA1C高値溶液」の総ヘモグロビン量をアザイドメトヘモグロビン法により定量し、次にHbA1C濃度をHPLC法〔HLC−723HbIII 型HbHbA1C自動分析機(東ソー社製)による〕により定量した。
【0057】
次いで、「原料血液そのままのHbA1C濃度の溶液」と「HbA1C低値溶液」又は「HbA1C高値溶液」を混合して、それぞれ所望のHbA1C濃度に調整した上で、安定剤(サッカロースの5重量%水溶液)を加えて総ヘモグロビン濃度を1.0g/dlに合わせた。
【0058】
(8)凍結乾燥
上記(7)で濃度調整した「HbA1C低値溶液」及び「HbA1C高値溶液」を10ml容褐色バイアルに2mlずつ分注し、これらのバイアルを凍結乾燥機に入れ、制御運転〔第1段階:−20℃・10時間,第2段階:−20℃・10時間,第3段階:−4℃・10時間,最終制御:4℃・60〜70時間;到達真空度:約10mTorr 〕を行い、凍結乾燥品を得た。凍結乾燥が終了したそれぞれのバイアルに窒素を充填し、封栓しアルミシールを施した。このように、HbA1C管理試料を得た。
【0059】
〔試験例〕本発明試料の凍結乾燥前後における経時的安定性の検討
(1)本発明試料においてHbA1Cの安定剤として配合するサッカロースの凍結乾燥前後における経時的安定性を、他の糖類を配合した場合との比較において検討した。すなわち、予め凍結乾燥前の全ヘモグロビン量を10g/dlに調整した各試料における全ヘモグロビン量中のHbA1C量を上記製造例(7)で示したと同様の方法で測定した。
【0060】
次に、これらの各試料を上記製造例(8)に示したと同様の方法で凍結乾燥した後、これらの凍結乾燥品に精製水0.5mlを加えて、各試料における全ヘモグロビン量中のHbA1C量を上記と同じく測定した。
この結果を第1表に示す。
【0061】
【表1】
Figure 0003686482
【0062】
この第1表において、糖類を添加しなかった試料は、凍結乾燥後は、この凍結乾燥操作自体によるヘモグロビンの変性が著しく、HPLC分析に耐えられないものとなった。
また、アルドース系単糖類であるD−キシロース又はD−アラビノースを添加した群は、凍結乾燥操作によるヘモグロビンの変性は抑制されたが、凍結乾燥中の反応により凍結乾燥前後でHbA1C値が大きく異なるものとなった。
【0063】
この結果より、HbA1Cの凍結乾燥における安定性を付与するための安定剤としては、アルドース単糖類は不適当であることが明らかになった。
なお、D−ガラクトース,D−マンニトール,ラクトースはヘモグロビン溶液における溶解度が低いのでこの試験系からは除外した。
【0064】
(2)次に、この試験系で安定性に優れていたD−ソルビトール添加群とサッカロース添加群の凍結乾燥後における経時的安定性を検討した。
すなわち、D−ソルビトール添加群とサッカロース添加群の凍結乾燥直後におけるHbA1Cの安定性を、試料の凍結乾燥直後のHbA1C値と凍結乾燥後1ヵ月後(室温)のHbA1C値をHPLC法により比較した。
この結果を第2表に示す。
【0065】
【表2】
Figure 0003686482
この結果、凍結乾燥後長期間経過時におけるHbA1Cを安定に保つためには、安定剤としてサッカロースを添加することが最適であることが明らかになった。
【0066】
【発明の効果】
本発明により、長期間安定で、かつ新鮮血液のHPLCクロマトグラムパターンを示す糖尿病診断等において極めて有用なHbA1C の管理試料が提供される。

Claims (2)

  1. ヘモグロビンA1C及びサッカロースを含んでなるヘモグロビンA1Cの管理試料。
  2. ヘモグロビンA1Cが、血液試料をm−アミノフェニルボロン酸をリガンドとして固定したアフィニティクロマトグラム担体で捕捉して得られるヘモグロビンA1Cである請求項1記載の管理試料。
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