JP3687448B2 - 多孔質ポリイミドフィルムの製造法及びフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、両表面に緻密層を有し中央部が多孔質層である多孔質ポリイミドフィルムの製造法およびフィルムに関し、特に、電子分野で有用な低誘電率フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より耐熱性、耐薬品性、機械的強度に優れたポリイミド多孔質膜として、高性能のガス分離用途のものが知られている。このガス分離用ポリイミド多孔質膜は、例えば、特開昭49−45152号公報に記載されているように、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重合反応によって得られたポリアミック酸の溶液を液状の薄膜に流延し、該薄膜を非溶媒中でイミド化しながら析出する、芳香族ポリイミドガス分離膜の製造方法によって得られる。
【0003】
また、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重縮合反応で得られたポリアミック酸の溶液を調製し、そのポリアミック酸の溶液で液状の薄膜を形成し、その薄膜を非溶媒中で析出し、最後にそのポリアミック酸の半透膜を製造する方法によって得られる。さらに、ポリアミック酸の溶液で薄膜を形成しながら一部イミド化を進めて、その薄膜を非溶媒中で析出し、最後にそのポリアミック酸−イミドの半透膜を加熱してイミド化を完結させてポリイミドの半透膜を製造する方法が知られている。また、ポリアミック酸の液状の薄膜を、イミド化剤含有非溶媒中で、イミド化しながら析出し、得られたイミド膜を加熱する方法が知られている。そして、溶媒中に溶解したポリアミック酸をフィルム状に流延した後、非溶媒と接触させてポリアミック酸の相分離析出を誘起する方法が知られている。
【0004】
これらの製造法によるポリイミド多孔質膜は、非溶媒と接触する一方の面に緻密層が他方の面に多孔質層が形成され、膜表面に形成された上記緻密層はガスの分離能を発現する。
しかし、このようなポリイミド多孔質膜は、上記片面の多孔質層が多孔構造のために塗布タイプの接着剤が使用される低誘電率フィルムとして適しているとはいえなかった。
【0005】
一方、低誘電率ポリマ−フィルムとして、特開平9−100363号公報には低誘電率発砲樹脂フィルムとラミネ−トとからなる低誘電率プラスチック絶縁フィルムが開示されている。そして、具体例として発砲体の両面を多孔質でないフィルムで張り付けたものが記載されている。つまり、表面層は発砲のない平坦なフィルムが好適であるとされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の製造法では低誘電率発砲樹脂フィルムと多孔質でないフィルムとの積層という2種類の基材と接着剤が必要であり、接着剤によってはかえって低誘電率プラスチック絶縁フィルムの耐熱性が低下したり、また2種類の基材を積層するという工程が必要であった。
本発明の目的は、簡単な操作でフィルム中央部に多孔質層を有し且つ両表面に緻密層を有するフィルムの製造法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、簡単な操作で得られるフィルム中央部に多孔質層を有し且つ両表面に緻密層を有する多孔質フィルムおよび低誘電率フィルムを提供することである。
【0007】
【問題点を解決するための手段】
すなわち、この発明は、ポリイミド前駆体の均一溶液(A)と、前記ポリイミド前駆体の均一溶液(A)100重量部に対して10〜40重量部の該ポリイミド前駆体の貧溶媒(B)からなるフィルム状組成物(C)であって、上記貧溶媒はポリイミド前駆体のイミド化開始温度より高い温度あるいは170℃の前後10〜20℃の温度に沸点または熱分解点を有する前記フィルム状組成物(C)を加熱処理してイミド化することを特徴とするフィルム両面に緻密層を有し、フィルム中央部は多孔質層からなり全体の厚さが5〜150μmであり、緻密層の厚さが各側で10nm以上であり、さらにフィルム両側の緻密層の厚さの和がフィルム全体の厚さの50%以下である多孔質ポリイミドフィルムの製造法に関する。また、この発明は、ポリイミド前駆体の均一溶液(A)を基板上に流延して溶液フィルムとし、この溶液フィルムを、ポリイミド前駆体のイミド化開始温度より高い温度あるいは170℃の前後10〜20℃の温度に沸点または熱分解点を有す貧溶媒(B)からなる凝固浴に浸漬して貧溶媒(B)を含むフィルム状物を析出させ、このフィルム状物を凝固浴から取出すことによって得られたフィルム状組成物(C)を加熱処理してイミド化することを特徴とするフィルム両面に緻密層を有し、フィルム中央部は多孔質層からなる全体の厚さが5〜150μmであり、緻密層の厚さが各側で10nm以上であり、さらにフィルム両側の緻密層の厚さの和がフィルム全体の厚さの50%以下である多孔質ポリイミドフィルムの製造法に関する。また、この発明は、上記の製造法によって得られる上記の製造法によって得られる多孔質ポリイミドフィルムを構成要素として含む単層または複層の多孔質フィルムに関する。また、この発明は、上記の多孔質フィルムからなる低誘電率フィルムに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい態様を列記する。
1)ポリイミド前駆体の均一溶液(A)が、ポリイミド前駆体0.3〜60重量%と良溶媒99.7〜40重量%からなるものである上記の多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
2)フィルム状組成物(C)が、ポリイミド前駆体の均一溶液(A)100重量部に対して貧溶媒(B)10〜40重量部を加えて均一な混合溶液とし、この混合溶液を基板上に流延することによって得られるものである上記の多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
【0009】
3)フィルム状組成物(C)が、ポリイミド前駆体の均一溶液(A)を基板上に流延して溶液フィルムとし、この溶液フィルムを貧溶媒(B)の凝固浴に浸漬してフィルム状物を析出させ、このフィルム状物を凝固浴から取り出して得られるものである上記の多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
4)貧溶媒(B)が、ポリイミド前駆体を加熱処理してイミド化が進行する工程中において、気化または熱分解によってフィルム状組成物(C)から除去される上記の多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
【0010】
5)フィルム状組成物(C)を加熱処理してイミド化することによって得られるフィルムが、全体の厚さが5〜150μmであり、緻密層の厚さが各側で10nm以上であり、さらにフィルム両側の緻密層の厚さの和がフィルム全体の厚さの約50%以下である上記の多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
6)絶縁材料と金属層とを必須の構成材料として含む金属層−絶縁材料積層体において、絶縁材料として使用される上記の製造法による低誘電率フィルム。
【0011】
本発明におけるポリイミド前駆体とは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の好ましくは芳香族化合物に属するモノマ−を重合して得られたポリアミック酸或いはその部分的にイミド化したものであり、加熱処理して熱イミド化或いは化学イミド化することで閉環してポリイミド樹脂とすることができる。ポリイミド樹脂とは、後述のイミド化率が約50%以上の耐熱性ポリマ−である。
【0012】
テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを、有機溶媒中に大略等モル溶解、重合して、好適には対数粘度(30℃、濃度;0.5g/100mL NMP)が0.3以上、特に0.5〜7であるポリアミック酸であるポリイミド前駆体が製造される。また、重合を約80℃以上の温度で行った場合には、部分的に閉環してイミド化したポリイミド前駆体が製造される。
【0013】
前記のポリイミド前駆体を製造するための有機溶媒としては、パラクロロフェノ−ル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、フェノ−ル、クレゾ−ルなどが挙げられる。
【0014】
前記のテトラカルボン酸成分としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもある)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、a−BPDAと略記することもある)などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましいが、2,3,3’,4’−又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、あるいは2,3,3’,4’−又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の塩またはそれらのエステル化誘導体であってもよい。ビフェニルテトラカルボン酸成分は、上記の各ビフェニルテトラカルボン酸類の混合物であってもよい。
【0015】
また、上記のテトラカルボン酸成分は、前述のビフェニルテトラカルボン酸類のほかに、テトラカルボン酸として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−テル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエ−テル、ブタンテトラカルボン酸、あるいはそれらの酸無水物、塩またはエステル化誘導体などのテトラカルボン酸類であってもよく、これらが全テトラカルボン酸成分中10モル%以下、特に5モル%以下の割合で含有するものが好ましい。
【0016】
前記の芳香族ジアミンとしては、例えば、次式
H2N−Bz(R1)m−[A−(R2)nBz]l−NH2
(ただし、前記一般式において、Bzはベンゼン環で、R1またはR2は、水素、低級アルキル、低級アルコキシなどの置換基で、Aは、独立に直接結合、O、S、CO、SO2、SO、CH2、C(CH3)2などの二価の基であり、lは0または1〜2の整数、mまたはnは1〜4の整数である。)で示される芳香族ジアミン化合物が好ましい。
【0017】
前記式で示される芳香族ジアミンの具体的な化合物としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、DADEと略記することもある)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、パラ−フェニレンジアミン(PPD)などが挙げられる。また上記各化合物の混合物であってもよい。
あるいは、芳香族ジアミンとしては、ジアミノピリジンであってもよく、具体的には、2,6−ジアミノピリジン、3,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジンなどが挙げられる。
【0018】
本発明においては、ポリイミド前駆体の均一溶液(A)と、該ポリイミド前駆体の貧溶媒(B)とからなるフィルム状組成物(C)
を加熱処理してイミド化する。
本発明におけるポリイミド前駆体の均一溶液(A)とは、上記のポリイミド前駆体と良溶媒とからなるものである。このポリイミド前駆体の均一溶液(A)は、重合溶液をそのまま使用してもよくあるいはポリイミド前駆体を分離取得あるいは濃縮して良溶媒と混合し溶解することによって得ててもよい。
【0019】
前記のポリイミド前駆体の良溶媒としては、パラクロロフェノ−ル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素などが挙げられる。
【0020】
前記のポリイミド前駆体の均一溶液(A)は、好適にはポリイミド前駆体0.3〜60重量%、特に1〜30重量%およびポリイミド前駆体の良溶媒99.7〜40重量%、特に99〜70重量%からなる溶液である。ポリイミド前駆体の割合が0.3重量%より少ないとフィルムの機械的強度が小さくなり、ポリイミド前駆体の割合が60重量%より多いと均一な溶液を得ることが困難になるので好ましくない。また、ポリイミド前駆体の均一溶液(A)は、10〜10000ポイズ、特に40〜3000ポイズの溶液粘度であるものが好ましい。ポリイミド前駆体の均一溶液(A)の溶液粘度が10ポイズより小さいと得られる多孔質フィルムの強度が低下するので好ましくなく、10000ポイズより大きいとフィルム状に流延することが困難になるので好ましくない。
【0021】
前記のポリイミド前駆体の貧溶媒(B)としては、該ポリイミド前駆体のイミド化開始温度(通常、170℃程度)より高い温度あるいはそれと同等の温度に沸点または熱分解温点を有する溶媒が使用される。このような溶媒としては、ポリイミド前駆体を全く溶解しない溶剤であってもよい。ここで、イミド化開始温度と同等な温度とは、170℃の前後10〜20℃の温度を意味する。また、前記の貧溶媒(B)は、好適には前記ポリイミド前駆体の良溶媒と相溶する溶媒が好ましい。また、上記貧溶媒(B)は、上記イミド化開始温度より低い温度に沸点または熱分解点を有するポリイミド前駆体の非溶媒、例えば水、メタノ−ル、エタノ−ルなどを50体積%以下の割合で含むことができる。
【0022】
特に、貧溶媒(B)として、前記ポリイミド前駆体の均一溶液(A)を構成するポリイミド前駆体の良溶媒よりも高い沸点を有する貧溶媒が好ましい。具体的には、沸点あるいは熱分解点が150〜500℃の貧溶媒、さらに好ましくは沸点あるいは熱分解点が170〜300℃の貧溶媒である。
【0023】
また、前記のポリイミド前駆体の貧溶媒(B)として、前記ポリイミド前駆体の加熱イミド化が進行する工程中において、気化または熱分解によりフィルム状組成物(C)から除去されるものが望ましい。貧溶媒(B)が加熱イミド化が進行する工程中において、フィルム状組成物(C)から除去されない場合、得られる多孔質フィルムは電子材料の分野で好ましくなくなる。
【0024】
上記の条件を満足する貧溶媒(B)としては、脂肪族炭素数7以上の直鎖状一級アルコ−ル、炭素数7以上の二級アルコ−ル、分岐アルコ−ル、環状アルコ−ル、脂環式アルコ−ル、芳香族アルコ−ル、またはこれ以外の高沸点アルコ−ルなどが挙げられる。
具体的には、例えば、n−ヘプタノ−ル(沸点176.3℃)、n−オクタノ−ル(沸点1793℃)、n−ノナ−ル(沸点203℃)、n−デカノ−ル(沸点231℃)、n−ウンデカノ−ル(沸点243℃)、2−オクタノ−ル(沸点179℃)、2−エチルヘキサノ−ル(沸点184.7℃)、2,6−ジメチル−4−ヘプタノ−ル(沸点178℃)、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノ−ル(沸点194℃)、テトラヒドロフルフリルアルコ−ル(沸点178℃)、α−テルピネオ−ル(沸点219℃)、フルフリルアルコ−ル(沸点170℃)、ベンジルアルコ−ル(沸点205.8℃)
などが挙げられる。特に、n−デカノ−ルを好適に使用することができる。
【0025】
また、貧溶媒(B)としてエ−テル系では、メチルアニソ−ル(沸点171〜177℃)、エチルベンジルエ−テル(沸点186℃)、ジイソアミルエ−テル(沸点173.2℃)、1,8−シネオ−ル(沸点176.4℃)、フェネト−ル(沸点170.3℃)、
ブチルフェニルエ−テル(沸点210.2℃)などが挙げられる。
【0026】
さらにまた、貧溶媒(B)として多価アルコ−ルおよびその誘導体では、エチレングリコ−ル(沸点197℃)、ジプロピレングリコ−ル(沸点231.8℃)、ジプロピレングリコ−ルモノエチルエ−テル(沸点198℃)、ジプロピレングリコ−ルモノブチルエ−テル(沸点231℃)、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(沸点216℃)、トリメチレングリコ−ル(沸点213℃)、ヘキシレングリコ−ル(沸点213℃)などが挙げられる。
特に、エチレングリコ−ルなどが好適に使用することができる。
【0027】
本発明においては、前記のポリイミド前駆体の均一溶液(A)およびポリイミド前駆体の貧溶媒(B)からなるフィルム状組成物(C)を加熱処理する。
このフィルム状組成物(C)を得るためには、次の二つの方法を用いることができる。
【0028】
第一の方法としては、前記のポリイミド前駆体の均一溶液(A)100重量部に対して貧溶媒(B)10〜40重量部、特に15〜30重量部を加えて均一な混合溶液とし、この混合溶液を基板上に流延することによってフィルム状組成物(C)を得ることができる。
前記の方法において、貧溶媒(B)の量が均一溶液(A)100重量部に対して10重量部より少ないと貧溶媒の添加効果が少なく、貧溶媒(B)の量が40重量部より多いと均一な混合溶液になりにくいので前記の割合が好適である。前記均一溶液(A)中の良溶媒および貧溶媒(B)はそれぞれ1種類使用してもよく2種類以上の混合溶媒であってもよい。
【0029】
第二の方法としては、前記のポリイミド前駆体の均一溶液(A)を基板上に流延して溶液フィルムとし、次いでこの溶液フィルムを貧溶媒(B)からなる凝固浴に浸漬して貧溶媒(B)を含むフィルム状物を析出させ、このフィルム状物を凝固浴から取り出すことによってフィルム状組成物(C)を得ることができる。
【0030】
本発明における貧溶媒(B)を含むフィルム状組成物(C)を得る方法として、前記の2つのいずれの方法を用いてもよいが、どちらの方法によっても得られるフィルム状組成物(C)を貧溶媒(B)を含んだ状態で加熱処理しイミド化させることによって、フィルム中央部が多孔質層でフィルムの両表面部分が緻密層である多孔質ポリイミドフィルムを形成することができる。
【0031】
前記の2つの方法において、ポリイミド前駆体の均一溶液(A)と貧溶媒(B)との混合溶液あるいはポリイミド前駆体の均一溶液(A)からなるド−プを基板上に流延する方法としては、スプレ−法あるいはドクタ−ブレ−ド法を用いてコ−ティングする方法や、Tダイから押出す方法など、好適にはガラス等の基板上或いは可動式のベルトである基板上に流延する方法、該ポリイミド前駆体溶液をT型ダイスから押出す方法が挙げられる。
前記の流延用のド−プ溶液には、界面活性剤、難燃剤、着色剤、或いはガラス繊維、ケイ素系繊維、無機粉末等の補強材が含まれても良い。これらの添加剤及び補強材は上記ポリイミド前駆体の均一溶液(A)に添加しておいてもよく、あるいは流延用のド−プ溶液に添加してもよい。
【0032】
本発明においては、前記のようにして得られるフィルム状組成物(C)を加熱して乾燥する。この加熱処理はフィルム状物に流延した後直ちに加熱して、イミド化が起こる温度で乾燥およびイミド化工程に移ることが好ましい。その際に、フィルム状組成物(C)は加熱処理工程の極く初期に基板から離れる傾向があるため、基板から剥離したフィルムをピン、チャックあるいはピンチロ−ルなどを用いて固定することが好ましい。このフィルムの加熱処理によるイミド化は、大気中、好適には280〜500℃で5〜90分程度行うことが好ましい。
また、イミド化は熱イミド化でもあるいは化学イミド化でも行うことができる。
【0033】
前記の化学イミド化は、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物を脱水剤として用い、トリエチルアミン等の第三級アミンを触媒として行われる。また、特開平4−339835のように、イミダ−ル、ベンズイミダゾ−ル、もしくはそれらの置換誘導体を用いても良い。
【0034】
複層ポリイミド多孔質フィルムは、好適にはフィルム状組成物(C)を複層化し、最後に熱処理してイミド化処理を行うことで複層ポリイミド多孔質フィルムを製造することができる。
【0035】
このようにして製造される多孔質ポリイミドフィルムは200℃以上の耐熱性を有し、好適には膜厚(全体厚)が5〜150μm、引張強さが200〜1000kgf/cm2程度であり、緻密層の厚さが各側で10nm以上であり、さらに緻密層厚みの合計がフィルム全体の厚みの約50%以下であり、空孔率が30〜85%、特に40〜70%、多孔質層の平均孔径が0.01〜5μm、特に0.05〜1μm程度である。フィルム全体の厚みが5μmより小さければフィルムの機械的強度が劣り、150μmより大きいと可撓性が劣る。また、緻密層が各側で10nmより小さいと、表面緻密層部分に欠陥が生じやすくなるため好ましくない。また緻密層の厚みの合計がフィルム全体の厚みの約50%以上であると多孔質層の部分が少なすぎて、多孔質フィルムの効果、例えば低誘電率の効果などが減少するので好ましくない。
【0036】
本発明の多孔質ポリイミドフィルムは低誘電率フィルムである。
本発明の多孔質ポリイミドフィルムの誘電率は、空孔率にもよるが、25℃、103Hzの条件で、バルクのポリイミドフィルムの誘電率が3.2〜3.4であるのに対し、1.3〜2.8である。
【0037】
本発明によって得られる多孔質ポリイミドフィルムは、1層あるいは2層以上組み合わせて用いてもよい。2層以上を組み合わせることにより、用途によっては補強用として、あるいは厚物に用いることができる。また、他の材料、他のポリマ−フィルム、繊維、無機物と組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の多孔質ポリイミドフィルムは、実装に際しては単独あるいは多孔質ポリイミドフィルムの複数層を積層し、さらには新たに緻密なポリイミドフィルムを該多孔質ポリイミドフィルムに積層して用いることも可能である。また、例えばポリイミドフィルム、シリコン基板やガラス基板やカ−ボン基板やアルミニウム基板などの有機、無機あるいは金属の基板に耐熱性接着剤を介して本発明の多孔質ポリイミドフィルムを積層することもできる。
【0039】
また、本発明の多孔質ポリイミドフィルムの片面あるいは両面に、熱可塑性ポリイミドやポリイミドシロキサン−エポキシ樹脂などの耐熱性でフィルム状の接着剤層を積層し、さらにその上に芳香族ポリイミド、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などの樹脂フィルムからなる保護フィルムを設けて、積層体を得ることができる。
この積層体によって埃の付着を防止して運搬が容易になり、使用時に保護フィルムを引き剥がして、電解銅箔、圧延銅箔、圧延アルミニウム箔などそれ自体公知の電子回路用の導電性金属箔を積層して回路基板を容易に得ることができる。
【0040】
また、本発明の多孔質ポリイミドフィルムの片面あるいは両面に耐熱性接着剤溶液を塗布、乾燥し、次いでその上に電子回路用の導電性金属箔を積層して積層体を得ることができる。
【0041】
また、本発明の多孔質ポリイミドフィルムと、シリコン基板、ガラス基板やカ−ボン基板などの無機基板あるいはアルミニウム基板などの金属基板とを、耐熱性の接着剤層で挟んで重ねて、加熱圧着し、次いでこの積層体の多孔質絶縁材料である多孔質ポリイミドフィルムの他の面と導電性金属箔とを耐熱性の接着剤層で加熱圧着して積層基板である積層体を得ることができる。
さらに、本発明の多孔質ポリイミドフィルムの片面に耐熱性接着剤を介してシリコン基板などの無機、有機あるいは金属の基板が、他の面に直接あるいは耐熱性接着剤を介して回路用の導電性金属層が設けられた積層体としてもよい。この場合、回路用の導電性金属層としては銅、ニッケル、クロム、アルミニウムなどのそれ自体公知の金属を蒸着法(真空蒸着あるいはスパッタ)−メッキ(無電解メッキ、電気メッキ)の各種組み合わせによって回路用の導電性金属層を形成してもよい。
なお、本発明の多孔質ポリイミドフィルムは、環境によっては孔あるいはポリイミドに含まれる水分を加熱乾燥して除去した後に使用してもよい。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下の各例において、多孔質フィルムについて以下の物性を測定し評価した。
【0043】
▲1▼引張強さ
JIS K7127に準じて測定した。テンシロン万能試験機(東洋ボ−ルドウイン社製)を使用し、引張速度10mm/分で測定した。
▲2▼空孔率
所定の大きさに切取った多孔質フィルムの膜厚及び重量を測定し、目付重量から空孔率を次の式によって求めた。式中のSは多孔質フィルムの面積、dは膜厚、Wは測定した重量、Dはポリイミドの密度を意味し、ポリイミドの密度は1.34g/m3とした。
空孔率(%)=100−100×(W/D)/(S×d)
【0044】
▲3▼緻密層の厚さ、割合
多孔質フィルムの断面を切り取り、走査型顕微鏡で緻密層厚、フィルム全体厚を測定し、緻密層の割合を求めた。
▲4▼熱収縮率
所定の長さに目盛りを記した試料を、無拘束状態で105℃に設定したオ−ブン中で8時間静置し、取出した後の寸法を測定した。熱収縮率は次式に従う。次式のL1はオーブンから取出した後のフィルム寸法を意味し、L0は初期のフィルム寸法を意味する。
熱収縮率(%)=[1−(L1/L0)]×100
【0045】
▲5▼突刺強度
試料を直径11.28mm、面積1cm2の円孔ホルダ−に固定し、先端形状が0.5R、直径1mmΦのニ−ドルを2mm/secの速度で下降させ突刺し、貫通荷重を測定した。
▲6▼誘電率
周波数1000Hzで、JIS−C−6481に準じて測定した。
【0046】
実施例1
テトラカルボン酸成分としてs−BPDAを、ジアミン成分としてDADEを用い、s−BPDAに対するDADEのモル比が0.994で且つ該モノマ−成分の合計重量が18重量%になるようにNMP(bp202℃)に溶解し、40℃で6時間重合を行ってポリイミド前駆体の均一溶液(A)を得た。
【0047】
前記のポリイミド前駆体の均一溶液(A)に貧溶媒(B)としてn−デカノ−ル(bp231℃)を添加し、前記ポリイミド前駆体が約15重量%、NMPが68重量%、n−デカノ−ルが17重量%であるド−プ溶液を調製した。
【0048】
前記のド−プ溶液をガラス板上に厚みが約150μmになるように流延し、80℃程度で乾燥した。乾燥の初期にガラス板から剥離したポリイミド前駆体フィルム状物(ポリイミド前駆体ゲル)をピンテンタ−に固定した状態で、大気中にて300℃で40分間熱処理を行って、多孔質ポリイミドフィルムを得た。
【0049】
得られた多孔質ポリイミドフィルムは、膜断面の走査型顕微鏡観察によって、両表面層は緻密層で中央部に膜断面方向に連続微細孔を有したものであることが確認された。この多孔質ポリイミドフィルムの引張強度、膜厚、空孔率、表面の形態、緻密層厚み、中央部の形態、熱収縮率、突刺強度の測定結果を以下に示す。
【0050】
評価結果
引張強度 460kgf/cm2
膜厚 85μm
空孔率 65%
表面の形態 緻密層
緻密層厚み 2.1μm(両側とも)
中央部の形態 多孔層
熱収縮率 0.3%
突刺強度 385gf
【0051】
実施例2
ポリイミド前駆体の均一溶液(A)に加える貧溶媒(B)としてn−デカノ−ルに代えてエチレングリコ−ル(bp197.8℃)を添加し、前記ポリイミド前駆体が約10重量%、NMPが48重量%、エチレングリコ−ルが42重量%であるド−プ溶液を調製し、このド−プ溶液を使用した他は実施例1と同様に実施して多孔質ポリイミドフィルムを得た。
得られた多孔質ポリイミドフィルムは、膜断面の走査型顕微鏡観察による構造および引張強度が実施例1で得られたものと同等であった。膜厚、空孔率、表面の形態、緻密層の厚み、中央部の形態、熱収縮率、突刺強度の測定結果を以下に示す。
【0052】
評価結果
膜厚 83μm
空孔率 52%
表面の形態 緻密層
緻密層厚み 3.0μm(両側とも)
中央部の形態 多孔層
熱収縮率 0.3%
突刺強度 408gf
【0053】
実施例3
貧溶媒(B)としてエチレングリコ−ル(bp197.8℃)を使用し、ポリイミド前駆体の均一溶液(A)をガラス板上流延して溶液フィルムとし、これをガラス板とともににエチレングリコ−ルの凝固浴に浸漬してフィルム状物を析出させ、析出したフィルム状物を凝固浴から取出し、ピンテンタ−で固定し、直ちに300℃で40分間加熱しイミド化して、多孔質ポリイミドフィルムを得た。
得られた多孔質ポリイミドフィルムは、膜断面の走査型顕微鏡観察による構造および引張強度が実施例1で得られたものと同等であった。
膜厚、空孔率、表面の形態、緻密層の厚み中央部の形態、熱収縮率、突刺強度の測定結果を以下に示す。
【0054】
評価結果
膜厚 84μm
空孔率 49%
表面の形態 緻密層
緻密層厚み 1.8μm(両側とも)
中央部の形態 多孔層
熱収縮率 0.3%
突刺強度 410gf
【0055】
比較例1〜2
貧溶媒(B)としてn−デカノ−ルに代えてエタノ−ル(bp78.3℃)を使用する(比較例1)か、あるいはメタノ−ル(bp64.1℃)を使用した他は実施例1と同様に実施した。得られたポリイミドフィルムは、膜断面の走査型顕微鏡観察によればいずれも多孔質層を有さない緻密層のみのフィルムであった。
【0056】
実施例4
ジアミン成分としてDADEに代えてPPDを使用して得たポリイミド前駆体の均一溶液(A)を使用し、加熱温度(最高温度)を425℃に変えた他は実施例1と同様に実施して、多孔質ポリイミドフィルムを得た。この多孔質ポリイミドフィルムの評価結果は実施例1のものと同等である。
【0057】
実施例5
実施例1〜4で得られた多孔質ポリイミドフィルムを使用して、絶縁材料として評価した。いずれも良好な特性を示した。また、実施例1で得られた多孔質ポリイミドフィルムについて、23℃、1000Hzで測定した誘電率が2.1、損失係数が0.004であった。
【0058】
比較例3
多孔質ではない市販の厚み25μmのポリイミドフィルムを使用して、評価した。23℃、1000Hzで誘電率が3.2、損失係数が0.004であり、誘電率が不十分であった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によると、耐熱性、耐薬品性及び機械的強度に優れるポリイミドからなる、両表面層が緻密層で中央部に膜断面方向に連続微細孔を有した多孔質ポリイミドフィルムを製造することが可能となった。
Claims (7)
- ポリイミド前駆体の均一溶液(A)と、前記ポリイミド前駆体の均一溶液(A)100重量部に対して10〜40重量部の該ポリイミド前駆体の貧溶媒(B)からなるフィルム状組成物(C)であって、上記貧溶媒はポリイミド前駆体のイミド化開始温度より高い温度あるいは170℃の前後10〜20℃の温度に沸点または熱分解点を有する前記フィルム状組成物(C)を加熱処理してイミド化することを特徴とするフィルム両面に緻密層を有し、フィルム中央部は多孔質層からなり全体の厚さが5〜150μmであり、緻密層の厚さが各側で10nm以上であり、さらにフィルム両側の緻密層の厚さの和がフィルム全体の厚さの50%以下である多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
- ポリイミド前駆体の均一溶液(A)を基板上に流延して溶液フィルムとし、この溶液フィルムを、ポリイミド前駆体のイミド化開始温度より高い温度あるいは170℃の前後10〜20℃の温度に沸点または熱分解点を有す貧溶媒(B)からなる凝固浴に浸漬して貧溶媒(B)を含むフィルム状物を析出させ、このフィルム状物を凝固浴から取出すことによって得られたフィルム状組成物(C)を加熱処理してイミド化することを特徴とするフィルム両面に緻密層を有し、フィルム中央部は多孔質層からなる全体の厚さが5〜150μmであり、緻密層の厚さが各側で10nm以上であり、さらにフィルム両側の緻密層の厚さの和がフィルム全体の厚さの50%以下である多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
- ポリイミド前駆体の均一溶液(A)が、ポリイミド前駆体0.3〜60重量%と良溶媒99.7〜40重量%からなるものである請求項1または2記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
- 貧溶媒(B)が、ポリイミド前駆体を加熱処理してイミド化が進行する工程中において、気化または熱分解によってフィルム状組成物(C)から除去される請求項1または2記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造法。
- 請求項1または2に記載の製造法によって得られる多孔質ポリイミドフィルムを構成要素として含む単層または複層の多孔質フィルム。
- 請求項5に記載の多孔質フィルムからなる低誘電率フィルム。
- 絶縁材料と金属層とを必須の構成材料として含む金属層−絶縁材料積層体において、絶縁材料として使用される請求項6記載の低誘電率フィルム。
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