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JP3689952B2 - 窒化炭素配向膜被覆部材 - Google Patents
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JP3689952B2 - 窒化炭素配向膜被覆部材 - Google Patents

窒化炭素配向膜被覆部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具、耐摩部品、高熱伝導率ヒートシンク、高温動作素子、耐環境素子、発光素子、光学材料、圧電材料などに利用される窒化炭素膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまでダイヤモンドが物質中最高の硬度を有する物質として認められていた。しかし1989年CohenらはScience,245 841(1989)において窒化炭素β−C34 がダイヤモンドを越える超硬度物質であろうということを計算機実験によって予測した。β−C34 はsp3 混成軌道によるC−N結合を持ち、β−Si34 型の結晶構造を持つ新物質である。同様に、α−Si34 型の結晶構造を有するα−C34 もダイヤモンドを越える超硬度物質であろうことが予想される。もちろんいずれも天然に存在しない物質である。人工的な合成もなされていない。
【0003】
Cohen等による計算機予測以来、結晶質の窒化炭素即ち、α−C34 或いはβ−C34 の薄膜を合成する試みが盛んになされている。しかしそのような試みにおいて作られたものの多くはアモルファスのものである。結晶質窒化炭素が未だ殆ど得られていない。それ程に結晶質の窒化炭素を作るのは難しいのである。
【0004】
結晶質の窒化炭素薄膜を作る方法として、例えば米国特許5110679はスパッタリング法による方法を提案している。これは、窒素を含む雰囲気ガス中で、グラファイトターゲットをスパッタリングするものである。Si(100)単結晶基板上に、β−C34 の薄膜を合成したという。またGe(111)単結晶基板上にα−C34 の薄膜を合成したと報告している。これらは結晶質であると述べているがアモルファスに近いものであり、結晶質であるとしても無秩序な方位の結晶粒からなる多結晶である。単結晶でないし、配向性の膜でもない。
【0005】
国際公表公報WO95/02709はレ−ザアブレーション法による合成が提案されている。これは基板上に、グラファイトターゲットのレ−ザアブレーションによりC原子を、RFプラズマにより形成した原子状窒素ビームによって窒素原子を供給する方法である。この方法によって、Si(100)単結晶基板上、及び多結晶Ni基板上にβ−C34 の薄膜を形成したという。これもアモルファスに近い多結晶である。単結晶でなくまた配向性がない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
β−C34 、或いはα−C34 は六方晶系の結晶構造を持つ。為に硬度、電気特性、光物性、圧電特性などの物性が異方性を持つ事が予想される。従ってこれら窒化炭素膜を薄膜の形で基板の上に形成して使用する場合は、特定の結晶方位に優先的に配向した多結晶膜あるいは単結晶膜であることが望ましい。
【0007】
前述の米国特許5110679、WO95/2709は何れもアモルファスであるか、ランダムな結晶方位を持つ結晶粒からなる多結晶膜である。これらはいずれも、特定の方向に優先配向した配向膜を得るための方法については全く述べられていない。
34 の配向膜を得ることのできる製造方法を提案する事が本発明の第1の目的である。またC34 配向膜を被覆した硬質の部材を提供することが本発明の第2の目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、α−Si34 、β−Si34 の配向膜を基板の上に形成しておき、これらの上にさらにα−C34 、β−C34 の膜を形成する。α−Si34 はα−C34 とほぼ同じ結晶構造をもつ。β−Si34 はβ−C34 とほぼ同じ結晶構造をもつ。そこでこれらのほぼ同等の結晶構造をもつ材料の上に、目的であるα−C34 、β−C34 の薄膜を形成するのである。
【0009】
α−Si34 、β−Si34 ともに自然界に存在する材料ではない。またバルク単結晶も製造できない。そこで他の材料の基板の上にα−Si34 、β−Si34 の配向膜中間層を予め作製し、その上にα−C34 、β−C34 の薄膜を作製する。こうする事によって初めてα−C34 配向膜、β−C34 配向膜を製造する事ができる。
【0010】
下地にSi34 の配向膜を形成し、この中間層の作用によって、C34 の高配向膜を形成することが本発明の特徴である。本発明のC34 は、基板/Si34 /C34 という構造をもち、C34 は配向膜である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、窒化炭素(C34 )を特定の方位に優先的に配向した窒化珪素(Si34 )上に成長させる事により、窒化炭素の配向膜を実現する。しかしながら、Si34 は基板として使用可能な程に大型の単結晶を合成することは不可能である。そこで本発明においては、他の物質の基板の上に、Si34 の高配向薄膜を形成し、そのSi34 膜の上に窒化炭素膜を成長させる。図1はこれを示す。中間層としてSi34 の配向膜を形成し、その上に C34 の配向膜を製造することが本発明の眼目である。
【0012】
窒化炭素(C34 )はSi34 と同じ結晶構造をもつ。C34 は、下地のSi34 の結晶方位を受け継いで成長し、下地のSi34 配向膜と同じ配向方向を持った配向膜となる。
例えば、Si34 が基板面と平行に(001)面が優先的に配向した(001)配向膜であれば、その上に形成したC34 も(001)配向膜となる。これらのSi34 配向膜、及びC34 配向膜は基板面に垂直な結晶方位は一方向に揃っているが、基板に平行な面内での方位はバラバラな多結晶膜である。
【0013】
Si34 及びC34 にはβ型とα型の2種類の結晶構造がある。β−C34 はβ−Si34 と同じ結晶構造を持つ。α−C34 はα−Si34 と同じ結晶構造を持つ。従って、α−C34 を成長させたい場合は、下地にα−Si34 を用いるのが最適である(図3)。β−C34 を成長させたい場合は、下地にβ−Si34 を用いるのが最良の方法である(図2)。
【0014】
しかし必ずしも、成長させたいC34 と同じ結晶構造のSi34 を下地に使わなくてはいけないということはない。α−Si34 下地の上に、β−C34 膜を成長させる事が可能である。反対にβ−Si34 下地の上に、α−C34 膜を成長させることもできる。これはSi34 、C34 のα型、β型が、c軸方向の積み重ねの様式が異なるだけで、それ以外の結晶構造は殆ど同じであるからである。格子定数もα型のc軸長は、β型のc軸長の約2倍であるが、a軸長は殆ど変わらない。
【0015】
本発明が目的とするC34 は六方晶系の構造を持つ結晶である。これについて2種類の面指数の表現方法(三指数法、四指数法)があるので、初めにこれを説明する。図7に示すように六方晶系の結晶は、c軸に直角な面では正6角形の構造をもつ。この面の単位のベクトルは120度の角度をなす。これをa、b、w軸としよう。通常はこれらの軸はa軸と呼ばれるが、ここでは幾何学的な関係を明らかにするためにa、b、w軸とする。これらに直角な軸がc軸である。c軸の表記については両方の表記ともに同一である。c軸については問題がない。
【0016】
[四指数法]面指数というのは結晶格子の中に想定される多数の等間隔平行面を表現する指数である。四指数法は、面や方位を4つの指数によって表す方法である。原点を通る面の次の面について、その面がa、b、w、c軸を切る点の原点からの距離の逆数を並べたものが面指数である。a/k、b/l、w/m、c/nにおいてその面が軸と交差するとき、この面は(klmn)によって表現される。(0001)はc軸に直角な間隔cの面である。(10−10)はbc面に平行な間隔が(31/2 /2)aの面である。
【0017】
面指数であるので、ここで−1は1の上にマイナス−を付けるべきであるが表記できないので−1としている。1を引くと解してはならない。(10−10)、(01−10)、(1−100)は等価な面である。間隔がa/2でw軸に直角な面は(11−20)面である。(11−20)、(2−1−10)、(1−210)は等価な面である。当然のことであるが、幾何学的な関係からk+l+m=0という関係が常に存在する。つまり独立な指数は3つである。
【0018】
[三指数法]独立な指数が3つしかないので、3つの指数によって六方晶系の面指数を表す事もできる。図7においてw軸の表記をやめる。a軸、b軸のみを使う。c軸に直角な間隔cの面指数は(001)である。間隔が(31/2 /2)aであってbc面に平行な面は(100)である。(100)、(010)、(1−10)は等価である。間隔がa/2でw軸に直角なものは(110)面である。(110)、(2−10)、(1−20)は等価面である。つまり四指数法で(klmn)の時、三指数法の場合(kln)で表現される。これは面の表現であって比較的単純であるが、方位の場合両者の関係は単純でない。
【0019】
またklmは等価な指数であるが、このうち2つだけを取るので対称性が良く分からないという欠点がある。しかし簡単であるから三指数法が六方晶系の結晶構造を表現するのに良く用いられる。本発明で三指数法を用いる。図7において、c軸に平行な面であってa軸、b軸、w軸を適当な箇所において切るような面群を三指数法と四指数法によって表現したものを示す。
【0020】
α−Si34 、β−Si34 が本発明では重要な中間層を構成する。これら自体かなり複雑な結晶構造をもち、自然界には存在しない物質である。結晶構造は単純でない。そこでこれらSi34 の結晶構造についてまず説明する。Si34 にはα型とβ型がある。両者の構造は良く似ている。いずれの型においても窒素原子は、3つの同一平面上のSi原子によって囲まれている。つまりほぼ正三角形をなすSi原子の中心にN原子がある。またSi原子は4つのN原子によって三次元的に囲まれる。つまりN原子4つが作る四面体の中心にSi原子がある。そのような四面体が頂点を共有している。α型のc軸の長さはβ型の約2倍である。α型のa軸の長さは、β型のそれより少し長い。
【0021】
[β型Si34 の結晶構造]
単位胞はSi34 で表現されるもの二つ分を含む。つまり単位胞はSi原子6個、窒素原子8個を含む。c軸に直角な面で切った場合a軸、b軸、w軸によって張られる正六角形は単位胞3つ分を含む。この正六角形柱はSi原子18個、窒素原子24個よりなる。
【0022】
つまりa軸とb軸によって囲まれる120度、240度の菱型柱が単位胞である。図8にこれを示す。単位胞(2Si34 )に含まれる14個の原子座標は次の(2b)と(6c)、(6c’)によって表現される。
【0023】
(2b)1/3,2/3,z;2/3,1/3,1/2+z(z=0.739 )
(6c)x,y,z;−y,x−y,z;y−x、−x,z;
−x,−y,1/2+z;y,y−x,1/2+z;x−y,x,1/2+z
(x=0.030 、y=0.329 、z=0.263 )
(6c’)x,y,z;−y,x−y,z;y−x、−x,z;
−x,−y,1/2+z;y,y−x,1/2+z;x−y,x,1/2+z
(x=0.769 、y=0.174 、z=0.250 )
【0024】
β−Si34 の構造において、2個の窒素原子が(2b)位置を占める。6個の窒素原子が(6c)位置にある。6個のSi原子が(6c’)位置にある。図9にz=0.239、z=0.250、z=0.263、z=0.739、z=0.750、z=0.763の断面に存在する窒素原子(白丸)、Si原子(●)を表している。又、図10はβ−Si34 において、abw面に原子位置を投影した図を示している。格子定数はa0 =0.7595nm、c0 =0.2902nmである。
【0025】
[α型Si34 の結晶構造]
α型のSi34 はより複雑である。単位胞はSi34 で表現されるもの4つ分を含む。β型の2倍の要素を持つ。つまり単位胞はSi原子12個、窒素原子16個を含む。α−Si34 は、β−Si34 型の層(A層とする)とこれと(100)面について鏡面対称にある層(B層)を足し合わせたABABの構造をとる。単位胞はABなので、β−Si34 の約倍の大きさをもつのである。c軸に直角な面で切った場合a軸、b軸、w軸によって張られる正六角形は単位胞3つ分を含む。この正六角形柱はSi原子36個、窒素原子48個よりなる。結晶系はP31cである。
【0026】
つまりa軸とb軸によって囲まれる120度、240度の菱型柱が単位胞である。単位胞(4Si34 )に含まれる2814個の原子座標は次の(2a)、(2b)、(6c)、(6c’)、(6c’’)、(6c’’’)によって表現される。
【0027】
(2a)0,0,z;0,0,z+1/2 (z=0.450 )
(2b)1/3,2/3,z;2/3,1/3,1/2+z(z=0.593 )
(6c)x,y,z;−y,x−y,z;y−x、−x,z;
x,y,1/2+z;−x,y−x,1/2+z;x−y,−y,1/2+z
(x=0.656 、y=0.608 、z=0.432 )
【0028】
(6c’) x,y,z;−y,x−y,z;y−x、−x,z;
x,y,1/2+z;−x,y−x,1/2+z;x−y,−y,1/2+z
(x=0.315 、y=0.319 、z=0.696 )
(6c’’)x,y,z;−y,x−y,z;y−x、−x,z;
x,y,1/2+z;−x,y−x,1/2+z;x−y,−y,1/2+z
(x=0.083 、y=0.514 、z=0.656 )
(6c’’’)x,y,z;−y,x−y,z;y−x、−x,z;
x,y,1/2+z;−x,y−x,1/2+z;x−y,−y,1/2+z
(x=0.256 、y=0.168 、z=0.451 )
【0029】
α−Si34 の構造において、2個の窒素原子が(2a)位置を占める。2個の窒素原子が(2b)位置を占める。6個の窒素原子が(6c)位置にある。残りの6個の窒素原子が(6’c)位置にある。また6個のSi原子が(6c’’)位置にある。残りの6個のSi原子が(6c’’’)位置にある。格子定数はa0 =0.7813nm、c0 =0.5591nmである。
【0030】
以上において、Si34 の構造を説明した。Si34 は共有結合性の強い化合物である。硬度が大きく、耐熱性、耐酸化性、耐スポ−リング性などに優れる。高強度であって、熱膨張率が小さい、などの特徴がある。
α型、β型のC34 も同じ結晶構造をもつ。
【0031】
34 を成長させるための下地としてのSi34 配向膜の優先配向の方位としては、Si34 とC34 の結晶構造が同じであるから、どのような面方位をも用いる事ができる。
Si34 配向膜は基板上に形成した薄膜の形で使用するので、基板上に配向膜として成長させ易い方位のものを用いるのが便利である。これは(001)、(100)、(110)、(101)などの低面指数の面が基板と平行になるように配向したものである。
【0032】
その上に結晶性、配向性の優れたC34 を成長させるため、Si34 配向膜はできるだけ配向性の良好なものを用いる必要がある。Si34 のこれらの配向面からのX線回折のロッキングカ−ブの半値幅(FWHM)が10゜以下であれば下地結晶として十分に使用できる。つまりここで、配向性が良好であるというのは、その配向面でのX線回折ロッキングカ−ブFWHMが10゜以下であるものを意味する。
【0033】
Si34 は基板と上層のC34 の間にあるから、中間層と呼ぶことにする。Si34 中間層の適当な厚さは、1nm〜1μmである。1nm未満であると、中間層がないのと同じであり、上層のC34 を配向させる作用が弱い。1μm以上であると、Si34 中間層自体に欠陥や歪が発生しやすくなり、その上に形成するC34 上層に欠陥、歪を与え、C34 層の結晶性を低下させる恐れがある。
【0034】
中間層のSi34 配向膜を成長させるための基板として適当なものは、WC、Fe、Ni、ステンレスなどの金属基板、ガラス、アルミナ、SiCなどのセラミック基板、Si、GaAsなどの半導体基板、ダイヤモンド、BNなどの絶縁体基板などである。これら基板は単結晶、多結晶、焼結体の何れであっても良い。
【0035】
しかしその中でも、中間層Si34 と格子整合性のよい単結晶基板を用いると、最も容易に配向性のSi34 上層を成長させる事ができる。このような目的に利用できる基板としては、例えば、サファイア(α−Al23 )、六方晶SiC、立方晶SiC、ダイヤモンド、シリコン、BN、MgOなどの単結晶基板である。
【0036】
基板上に、中間層のSi34 配向膜を成長させるための合成方法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、スパッタ法、イオンプレーティング法、反応性蒸着法、MBE法、レ−ザアブレーション法など、公知の方法を用いる事ができる。
【0037】
配向性に優れた中間層Si34 を得ようとすると、基板温度はより高温である事が望ましい。良好な配向性の中間層を得るために必要な基板温度は、合成方法、基板、他の合成条件などによって異なる。好ましい基板温度は、一般に800℃〜1800℃である。
【0038】
中間層として利用するSi34 は、先述のように、β型とα型の結晶構造が存在する。β型、α型いずれのSi34 も中間層として使用可能である。Si34 がいずれの構造を取るかという事は、基板、基板温度などによって決まる。しかしSi34 の構造は主に基板温度によって決定される。
【0039】
一般に、β−Si34 膜の合成は、α−Si34 の合成よりも高い基板温度を要求する。基板温度の範囲は、合成法、その他の合成条件にもよる。基板温度1000℃〜1800℃ではβ型Si34 が生成される。基板温度が800℃〜1500℃ではα型Si34 が合成される事が多い。
成膜方法、基板の種類、基板温度、その他の合成条件によって、Si34 中間層の配向方位が決定される。これらの方法条件を適当に選ぶ事によって、任意の配向方位のSi34 中間層を得る事ができる。
【0040】
Si34 中間層の上に、C34 上層を成長させるための合成方法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、レ−ザCVD法、スパッタ法、イオンビ−ムスパッタ法、イオンプレーティング法、反応性蒸着法、MBE法、レ−ザアブレーション法などの公知の方法を用いることができる。
何れの合成法においても、C34 配向膜を成長させるためには、基板を高温に加熱する必要がある。加熱温度は、合成法や他の条件によっても異なるが、600℃〜2000℃の範囲である。
【0041】
34 の合成に関して、熱CVD法、プラズマCVD法、レ−ザCVD法などのCVD法では、炭素原料として、CH4 、C26 、C38 などの炭化水素を用いる事ができる。また窒素原料として、N2 、NH3 などを使用できる。プラズマCVD法の場合は励起源によっていくつかの種類がある。RFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECRプラズマCVD法などの何れの方法であっても良い。
【0042】
スパッタ法、イオンビ−ムスパッタ法、イオンプレーティング法、反応性蒸着法、MBE法、レ−ザアブレーション法などよってC34 を合成する場合は、グラファイトなど炭素固体を炭素原料として用いる。窒素原料は、窒素ガス(N2 )、アンモニア(NH3 )などである。
このように、基板の上に、Si34 配向膜を中間層として形成し、さらにその上に、C34 を成長させることによって、特定の方向に優先配向したC34 配向膜を製造する事ができる。
【0043】
また、Si34 中間層の配向方向を制御することによって、目的とする特性に応じて、最適な方位に配向したC34 配向膜を得る事ができる。硬度、電気的特性、光学特性、圧電性などにおいて優れたC34 被覆材料を製作する事ができる。
【0044】
【実施例】
[実施例1(6H−SiC/β−Si34 /β−C34 )]
基板として六方晶SiC(001)単結晶を用いた。基板を次の手順によって洗浄した。
【0045】
(1)アセトンによる超音波洗浄
(2)純水リンス
(3)1.5%フッ化水素水溶液による酸化膜除去1分
(4)純水リンス
このSiC基板の上に、次の条件で熱CVD法によってβ−Si34 薄膜を成長させた。
【0046】
Figure 0003689952
【0047】
こうして得られた中間層をX線回折のθ−2θスキャンによって調べた。基板面に対して、(001)面が平行になるように配向したβ−Si34 であることが確認された。θ−2θスキャンでは(00x)面以外の面からの回折線は現れなかった。(002)回折線のロッキングカ−ブ半値幅(FWHM)は3.0゜であった。
さらにβ−Si34 中間層の上に、スパッタ法によって窒化炭素膜を次の条件によって成長させた。
【0048】
Figure 0003689952
【0049】
RFパワー 500 W
基板温度 1000 ℃
基板バイアス 300 V
成長時間 1 時間
34 膜厚 200 nm
【0050】
こうして得られた薄膜をX線回折のθ−2θスキャンによって調べた。基板面に対して(001)面が平行に配向したβ−C34 であることが確認された。θ−2θスキャンでは(00x)面以外の面からの回折線は見られなかった。(002)回折線のロッキングカーブの半値幅は5.2゜であった。
【0051】
[実施例2(6H−SiC/α−Si34 /α−C34 )]
基板として六方晶SiC(001)単結晶を用いた。実施例1と同じように基板を次の手順によって洗浄した。
【0052】
(1)アセトンによる超音波洗浄
(2)純水リンス
(3)1.5%フッ化水素水溶液による酸化膜除去1分
(4)純水リンス
このSiC基板の上に、次の条件で熱CVD法によってα−Si34 薄膜を成長させた。実施例1では基板温度が1500℃であったが、ここでは1000℃とより低温にしている。基板温度以外の条件は実施例1と同じである。
【0053】
Figure 0003689952
【0054】
こうして得られた中間層をX線回折のθ−2θスキャンによって調べた。これは基板面に対して、(001)面が平行になるように配向したα−Si34 であることが確認された。θ−2θスキャンでは(00x)面以外の面からの回折線は現れなかった。(002)回折線のロッキングカ−ブ半値幅(FWHM)は3.5゜であった。
さらにα−Si34 中間層の上に、スパッタ法によって窒化炭素膜を次の条件によって成長させた。
【0055】
Figure 0003689952
【0056】
こうして得られた薄膜をX線回折のθ−2θスキャンによって調べた。基板面に対して(001)面が平行に配向したα−C34 であることが確認された。θ−2θスキャンでは(00x)面以外の面からの回折線は見られなかった。(002)回折線のロッキングカ−ブの半値幅は5.5゜であった。実施例1、2を比較すると、中間層を作るときに比較的基板温度が高いとβ−Si34 が、温度が低いとα−Si34 が成長しやすいという事が分かる。中間層の基板温度によって、α型、β型のいずれかの高配向膜を自在に製造できる。
【0057】
[実施例3(ダイヤモンド/α−Si34 /β−C34 )]
基板としてダイヤモンド(111)単結晶を用いた。ダイヤモンド(111)基板を次の手順によって洗浄した。
【0058】
(1)アセトンによる超音波洗浄
(2)純水リンス
(3)10%塩化水素水溶液による洗浄10秒
(4)純水リンス
このダイヤモンド基板の上に、次の条件でマイクロ波プラズマCVD法によってSi34 配向膜を成長させた。
【0059】
[マイクロ波プラズマCVD法]
原料ガス Si3 Cl4 :NH3 :H2 =1:2:6
圧力 100 Torr
マイクロ波パワー 350 W
基板温度 800 ℃
反応時間 25 min
α−Si34 膜厚 200 nm
【0060】
こうして得られた中間層をX線回折のθ−2θスキャンによって調べた。これは基板面に対して、(001)面が平行になるように配向したα−Si34 であることが確認された。θ−2θスキャンでは(00x)面以外の面からの回折線は現れなかった。つまりこれは高配向膜であることの証拠である。(002)回折線のロッキングカ−ブ半値幅(FWHM)は4.2゜であった。
【0061】
さらにα−Si34 中間層の上に、レ−ザアブレーション法によって窒化炭素膜を次の条件によって成長させた。パルスYAGレ−ザによってグラファイトターゲットをアブレーションし、窒素イオンビ−ムを基板に照射する。
【0062】
[レ−ザアブレーション法]
レ−ザ YAGレ−ザ
ターゲット グラファイト
イオンビ−ム 窒素イオンビ−ム
イオンビ−ムエネルギー 100 eV
基板温度 1200 ℃
成長時間 1 時間
34 膜厚 400 nm
【0063】
こうして得られた薄膜をX線回折のθ−2θスキャンによって調べた。基板面に対して(001)面が平行に配向したβ−C34 であることが確認された。θ−2θスキャンでは(00x)面以外の面からの回折線は見られなかった。(002)回折線のロッキングカーブの半値幅は5.0゜であった。
【0064】
【発明の効果】
34 は新規な物質であり合成されてから未だ日が浅い。単結晶C34 はダイヤモンド以上の硬度を有するものだという計算がなされているが、実際にはアモルファスのC34 しかできないでいる。これは硬度、耐摩耗性、熱伝導率などにおいて期待されるほどのものではなかった。しかし本発明は、Si34 の中間層を基板の上に設ける事によって、その上に良好なC34 の配向膜を成長させることができた。Si34 高配向膜を中間層として用いることにより、C34 配向膜を作るところに本発明の特徴がある。これによって超高硬度の工具、耐摩部品を製造できる。さらに熱伝導率の高いヒートシンクの材料として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のC34 /Si34 /基板構造材料の断面図。
【図2】β−Si34 を中間層にして作る本発明のC34 材料の断面図。
【図3】α−Si34 を中間層にして作る本発明のC34 材料の断面図。
【図4】h−SiC(001)基板の上にβ−C34 配向膜薄膜を作製する実施例1の部材の構造を示す断面図。
【図5】h−SiC(001)基板の上にα−C34 配向膜薄膜を作製する実施例2の部材の構造を示す断面図。
【図6】ダイヤモンド(111)基板の上にβ−C34 配向膜薄膜を作製する実施例3の部材の構造を示す断面図。
【図7】六方晶系の面群を四指数法で表現する場合と三指数法で表現する場合の両者の関係を示す図。
【図8】a軸長を辺とする六角柱に単位格子(ユニットセル)が三個分含まれることを示す説明図。
【図9】z軸に直角な面における原子配置によってβ−Si34 の構造を示す図。z=0.239、z=0.250、z=0.263、z=0.739、z=0.750、z=0.763での窒素原子、シリコン原子の配置を表している。
【図10】β−Si34 において、abw面に原子位置を投影した図。

Claims (2)

  1. 単結晶基板に、中間層としてα型又はβ型結晶構造を有する窒化珪素(Si)配向膜が形成され、前記窒化珪素配向膜上にβ−Si 型又はα−Si 型の結晶構造を有しC なる化学式によって示される窒化炭素配向膜が形成された構造を持つ事を特徴とする窒化炭素配向膜被覆部材。
  2. 基板としてサファイヤ、六方晶SiC、立方晶SiC、ダイヤモンド、Si、BN、MgOの単結晶を使用する事を特徴とする請求項1に記載の窒化炭素配向膜被覆部材。
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