JP3694082B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一の陸部に、片側開口サイプを二本以上有し、かつ各サイプの最大深さが、幅方向溝の深さより深い空気入りタイヤに関するものであって、加硫成形時のゴム流れの遅延によって生じる表層ゴムの巻込み、ひいては、それに起因するフロークラックの発生を有効に防止するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえばブロックパターン空気入りタイヤにおいて、氷上性能と耐摩耗性能とを両立させるためには、ブロックに設けたサイプを、片側開口サイプとすることが有効であり、また、氷上性能を、タイヤの使用末期に至るまで発揮させるためには、サイプの深さを幅方向溝の深さと同等にすることが必要である。
この一方で、サイプの深さを幅方向溝のそれと同じにした場合には、サイプ底からクラックが発生し易く、そのクラックがブロック欠けの原因となるため、多くは、サイプ深さを幅方向溝の深さより深くすることによってクラックの発生を抑制している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、一のブロックに設けた複数本のサイプの各一端を、周方向溝に開口させた場合において、各サイプをその全長にわたって幅方向溝より深くするときは、とくには、タイヤの加硫成形に当ってそのサイプを形成する場合に、加硫成形に際する、ゴムの円滑な流動が、加硫成形型に設けたサイプ形成用ブレードによって妨げられることになり、ブロック表面のサイプ間に、ゴムの表層を巻込むことに起因するフロークラックが発生するという問題があった。
【0004】
これはすなわち、図8(a) に例示するように、一のブロックbに、互いに反対側の周方向溝に開口する二本のサイプs1, s2を設ける場合に、それらのサイプs1, s2を、加硫成形型に取付けたブレードをもって形成するときは、そのブロックbの、図のA−A線に沿う部分での成形は、図8(b) に断面図で示すように、加硫成形型mに設けたブレードcの両側での、ゴムの円滑なる流動に基づいて十分適正に行われることになるも、図のB−B線に沿う部分の成形では、図8(c) に示すように、両ブレードcに挟まれた領域内へのゴムの流入が、両ブレードcの外側領域へのゴムの流入に比して遅れて行われることになって、成形されるブロックを平面でみると、図9(a) に矢印で示すような両サイプs1, s2間へのゴムの流入時に、ゴムの表層の巻込みが行われることになるため、そのブロックbにおいては、両サイプs1, s2間での横断面内で、図9(b) に示すように、多くは、ブロックbの幅方向のほぼ中央部分に、クリスと称されるフロークラックdが発生し、このフロークラックdが、ブロックbへの外力の作用に際するブロック欠け等の原因となるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決することを課題として検討した結果なされたものであり、この発明の目的は、ブロックその他とすることができる一の陸部に、最大深さが幅方向溝より深い複数本のサイプを設けてなお、サイプ間へのフロークラックの発生を十分に防止することができる空気入りタイヤ、なかでもサイプ構造を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の空気入りタイヤは、周方向溝および幅方向溝のそれぞれによって区画される陸部に、傾向的にトレッド幅方向に、直線状、ジグザグ状、ステップ状等の形状をもって延びる複数本のサイプを設け、それぞれのサイプの各一端を相互に反対側の周方向溝に交互に開口させるとともに、他端を陸部内で終了させたものであって、サイプの最大深さを、サイプに最も近接して位置する幅方向溝の最浅部の深さより深くする一方、サイプに、最も近接して位置するその幅方向溝の深さより浅くなる部分を設け、サイプの深さがその幅方向溝の深さより深くなる部分の、サイプの延在方向長さを、サイプの延在方向に測った陸部幅の15%〜65%としたものである。
【0007】
なおここで、サイプが、ジグザグ状、ステップ状等の折れ曲がったもしくは湾曲した形態にて延在する場合には、その「サイプの延在方向長さ」とは、小さな折れ曲がり、湾曲などの中間点位置を通る、直線状仮想線分の延在方向長さを意味するものとする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の一の実施形態を示す図であり、図中1はブロックを示す。このブロック1は、二本の周方向溝2,3と、二本の幅方向溝4,5とで区画されて、図では方形の平面輪郭形状を有するとともに、その表面上に、タイヤ周方向に間隔をおいて位置して、実質的にタイヤ幅方向に直線状に延びる二本のサイプ6,7を有しており、これらのサイプ6,7は、それらの各一端を、相互に反対側の周方向溝2,3に開口する。
なおそれぞれのサイプ6,7の他端はブロック内で終了する。
【0009】
ここで、このようなサイプ6、7を、タイヤの加硫成形と同時に形成する場合には、サイプ6については図1(b)に、そして、サイプ7については図1(c)に、それぞれ、加硫成形型8の型閉め状態における、それぞれのサイプ形成用ブレード9、10と、それぞれのサイプ6、7に最も近接して位置する幅方向溝4、5の溝底4a、5aとの相対関係を、サイプの深さ方向の断面図で示すように、各サイプ形成用ブレード9、10が各溝底4a、5aより深くゴム中に進入する部分の長さ1をブロック幅wの15〜65%とすることによって、成形されたブロック1における各サイプ6、7の最大深さを、それに最も近接して位置する幅方向溝4、5の最浅部の深さより深くし、かつ、各サイプ6、7がその幅方向溝4、5より深くなる部分の、サイプ6、7の延在方向長さ1を、サイプ6、7の延在方向に測ったブロック幅wの15〜65%の範囲とする。
従って、各サイプ6、7の残部は、各幅方向溝4、5の深さより浅くなる。
【0010】
このようなサイプ構造を具えるブロック、ひいては空気入りタイヤによれば、サイプ6,7の最大深さを幅方向溝4,5の深さより深くしたことで、サイプ底からのクラックの発生を有効に防止して、タイヤの使用末期に至るまで、すぐれた氷上性能および耐偏摩耗性能を発揮させることができる。
【0011】
しかもここでは、サイプ深さが幅方向溝4,5より深くなる部分の、サイプ6,7の延在方向長さlを、ブロック幅wの15〜65%とすることで、サイプ6,7を有するブロック1の加硫成形に当り、ゴムは、図1(a) に矢印A,Bで示すように、それぞれのブレード9,10と加硫成形型8との間の隙間を経て両サイプ間へ流入するのみならず、各ブレード9,10の、とくにはそれぞれの溝底4a, 5aまで達しない部分の先端縁の、図では下方を巡ってもまた両サイプ間へ流入することができるので、サイプ間へのゴムの流入遅れを有効に緩和できることに加え、ブレード9,10の先端縁下方を巡るゴム流動の存在それ自体をもって、ゴムの表層の巻込みのおそれを効果的に取り除くことができ、それにより、両サイプ間へのフロークラックの発生を十分に防止することができる。なおこのことは、上記比率を15〜55%とした場合にとくに顕著である。
【0012】
ここでこの比率を15%未満とした場合には、サイプ底クラックの発生を十分に防止し、また、氷上性能および耐偏摩耗性能を長期間にわたって発揮させることが困難になり、一方、65%を越えると、ブレード9,10の先端縁の下方を巡る、円滑にして迅速なゴム流動をもたらすことが困難になる。
【0013】
図2は、上記比率を変化させた場合の、フロークラック発生率および発生したフロークラックの長さを示すグラフである。なおここで、試験を行ったブロックおよびサイプは、図1に示す形状を有するものとし、上記比率の変化は、サイプ形成用ブレード9,10の先端縁の、水平面に対する傾斜角度を変化させることによって実現した。
【0014】
図2に示すところによれば、比率 (l/w×100)が約65%を越えると、フロークラックの発生率が急激に増加し、また、発生したフロークラックの長さが急激に長くなることが明らかである。
【0015】
ところで、それぞれのサイプ6,7のサイプ底側面形状、いいかえれば、サイプ形成用ブレード9,10の先端縁側面形状は、幅方向溝4,5の溝底形状との関連において、図3(a) に示すような、全長にわたって均一深さの直線状側面形状、図3(b) に示すように、サイプの、ブロック内での終了端に向けて途中から次第に深さが浅くなる折れ線状側面形状などとすることができる他、図3(c) 〜(f) に示すように、サイプの長さ方向の中央部分で深さが最も浅くなる、直線状、曲線状等の各種側面形状とすることもできる。
【0016】
【実施例】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図4は、上述したようなサイプ構造を、サイズが11R 22.5の重荷重用空気入りタイヤに適用した場合のトレッドパターンを例示する図であり、ここでは、トレッド中央区域21内に画成した各ブロック22に、ブロック22の周方向の辺縁と平行に延びる二本の直線状サイプ23, 24をそれぞれ形成し、それらの各サイプ23, 24のサイプ底側面形状を斜め直線形状としたところにおいて、一方の直線状サイプ23の、それに最も近接して位置する幅方向溝25より深さが深くなる部分の、サイプ23の延在方向長さを、そのサイプ23の延在方向に測ったブロック幅の60%とするとともに、他方の直線状サイプ24の、幅方向溝26より深さが深くなる部分の、サイプ延在方向長さを、同様にして測ったブロック幅の60%とする。
【0017】
また、トレッド側部区域27に区画した各ブロック28においては、サイプ底側面形状を斜め直線形状とした二本の直線状サイプ29, 30のそれぞれの上記比率をともに60%とする。
【0018】
このような空気入りタイヤでは、それぞれのブロック22, 28へのフロークラックの発生を、5000kmの実車走行の後においてなお、完全に防止することができた。
【0019】
図5は、他の実施例を示すトレッドパターンであり、ここでは、ショルダーブロック31を除く他の各ブロック32に設けた二本の直線状サイプ33, 34のそれぞれのサイプ底側面形状を斜め直線形状とするとともに、それぞれのサイプ33, 34の上記比率をともに55%とし、さらに、ショルダーブロック31に形成した二本の直線状サイプ35, 36のサイプ底側面形状をもまた、斜め直線形状とするとともに、それぞれのサイプ35, 36の比率をともに55%としたものである。
【0020】
また、図6,7はさらに他の実施例を示すトレッドパターンであり、これらのそれぞれの実施例においても、上述したところと同様の作用効果をもたらすことができた。
【0021】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、一の陸部に、最大深さが幅方向溝より深い複数本のサイプを設けることで、サイプ底クラックの発生を有効に防止してなお、タイヤの摩耗末期に至るまで、すぐれた氷上性能、耐偏摩耗性能を有効に発揮させることができ、また、サイプが幅方向溝より深くなる部分の、サイプ延在方向の長さを、サイプの延在方向に測った陸部幅の15%以上65%以下とすることにより、タイヤの加硫成形に際するゴムの流動を、サイプ形成用ブレードの存在にもかかわらず、十分円滑かつ迅速ならしめて、複数本のサイプ間へのフロークラックの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一の実施形態を示す図である。
【図2】比率の変化に伴う、フロークラック発生率およびフロークラック長さの変化を示すグラフである。
【図3】サイプ底の他の側面形状を示す図である。
【図4】この発明の一実施例を示すトレッドパターンである。
【図5】他の実施例を示すトレッドパターンである。
【図6】他の実施例を示すトレッドパターンである。
【図7】さらに他の実施例を示すトレッドパターンである。
【図8】従来技術におけるゴムの流動形態を例示する図である。
【図9】フロークラックの発生態様を例示する図である。
【符号の説明】
1 ブロック
2,3 周方向溝
4,5 幅方向溝
6,7 サイプ
8 加硫成形型
9,10 サイプ形成用ブレード
l 長さ
w ブロック幅
Claims (1)
- 周方向溝および幅方向溝のそれぞれによって区画される陸部に、傾向的にトレッド幅方向に延びる複数本のサイプを設け、それぞれのサイプの各一端を相互に反対側の周方向溝に交互に開口させるとともに、他端を陸部内で終了させてなるタイヤであって、
サイプの最大深さを、サイプに最も近接して位置する幅方向溝の最浅部の深さより深くする一方、サイプに、最も近接して位置するその幅方向溝の深さより浅くなる部分を設け、サイプの深さが、その幅方向溝の深さより深くなる部分の、サイプの延在方向の長さを、サイプの延在方向に測った陸部幅の15%以上65%以下としてなる空気入りタイヤ。
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