JP3695259B2 - バルブシート面検査装置および検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のエンジン等に用いられるシリンダーヘッドのバルブシート面を検査するバルブシート面検査装置に関し、特に、レーザー溶接等によって肉盛された肉盛層の厚みを検査する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリンダーヘッドのバルブシートは、高い寸法精度と耐磨耗性が要求される。従来、シリンダーヘッドのバルブシートは、アルミニウム合金のシリンダーヘッド母体に下穴を機械加工し、その部分に鋳鉄製のリング形状機械加工部品を打ち込み、しかる後、バルブが接合する面を仕上げ加工している。近年、燃焼効率の向上を目的として、打ち込み式のバルブシートに代えて、アルミ合金のシリンダーヘッド母体に、直接、銅合金等の粉末を肉盛りする加工方法が開発されている。
【0003】
この場合も、その肉盛層が最終的な形状に切削加工(以下「仕上げ加工」という)されることによって、高い寸法精度および耐磨耗性を持つバルブシートが作製される。
【0004】
このような高性能なバルブシートを作製するためには、肉盛層の厚さ(高さ)を管理することが重要である。例えば、仕上げ加工後の最終的なバルブシート面に対して肉盛層の厚さが十分でない状態(欠肉)は、仕上げ加工後のバルブシート面に窪みを生じさせ、バルブシートの不良に直結する。一方、仕上げ加工の際に削り取られる肉盛層が必要以上に厚すぎることは、肉盛に使用される材料を無駄に消費することになるだけでなく、母材に熱歪みを生じさせ、不具合の発生要因となる。
【0005】
バルブシートを管理するためには、環状をしたバルブシートの全周、全幅について、肉盛層の厚さを正確に測定する必要がある。
【0006】
バルブシート面の形状寸法、特に、肉盛層の厚さを測定する技術として、光切断式センサを用いて測定する技術が考えられる。光切断式センサとは、対象にスリット光を照射して生ずる切断線をビデオカメラ等の視認手段で観測することによって対象の高さや凸凹等を検出するセンサである。
【0007】
光切断式センサを用いて対象の高さを検出する場合、スリット光を斜めに照射すると、切断光が歪んで観測されるため、通常は、スリット光を対象に垂直に照射することによって、正確な断面形状を測定している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バルブシートについて光切断式センサを用いて検査する場合、スリット光をバルブシート面に垂直に照射する配置が難しいことがある。例えば、スリット光をバルブシート面に垂直に照射するようにスリット光源を配置すると、それに伴ってビデオカメラがシリンダヘッドの面に近付きすぎる場合がある。この場合、ビデオカメラの視野がシリンダヘッドのたてかべ部分等の構造物によって遮られてしまい、バルブシート全周を測定することが困難となるおそれがある。
【0009】
一方、スリット光をバルブシート面に斜めに照射することによってビデオカメラの視野角度を深くとる配置が可能となり、ビデオカメラの視野を十分に確保できる。ただし、スリット光がバルブシート面に斜めに照射されるため、切断線が歪み、ビデオカメラで観測される画像が非線形的に歪んでしまうという問題を生じる。このため、従来、仕上げ加工後のバルブシート面に対する欠肉欠陥の有無の判断、仕上げ加工後に残る肉盛層の厚さの推定、仕上げ加工後のバルブシート面に露出してしまう母材部分の有無の推定を正確に行うことができない場合があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するために成されたものである。したがって、本発明の目的は、光切断式センサを利用してバルブシート面を検査する場合において、照射されるスリット光をバルブシート面に対して垂直に照射できない場合であっても、バルブシート面の断面形状を正確に測定することができ、仕上げ加工の際に削り取られる肉盛層の厚さの推定、仕上げ加工後のバルブシート面に対する欠肉の有無の判断、仕上げ加工後に残る肉盛層の推定、仕上げ加工後のバルブシート面に露出してしまう母材部分の有無の推定を正確に行うことができるバルブシート面検査技術を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下のように構成される。
【0012】
本発明に係るバルブ面検査装置は、バルブシート下穴にレーザー溶接により肉盛層を形成し、切削加工する際のバルブシート面検査装置であって、バルブシート面にスリット光を照射するスリット光源と、スリット光がバルブシート面に当たって形成される光切断線を視認する視認手段と、バルブシートの中心を回転軸として前記スリット光源および前記視認手段をバルブシート面に対して相対的に回転移動させる駆動手段と、前記視認手段によって視認された光切断線の画像を点列データに変換する点列データ変換手段と、バルブシート面にスリット光が斜めに照射されることによる前記点列データの歪みを補正する補正手段と、予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記切削加工前のバルブシート面を視認して得られた補正後の点列データである第2の点列データと、を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとる差分手段と、前記差分手段による差分の結果に基づいて、前記切削加工によって削り取られる肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後に肉盛層の厚さが不十分な部分が発生するか否かを判断する欠肉判断手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るバルブ面検査装置は、バルブシート下穴にレーザー溶接により肉盛層を形成し、切削加工する際のバルブシート面検査装置であって、バルブシート面にスリット光を照射するスリット光源と、スリット光がバルブシート面に当たって形成される光切断線を視認する視認手段と、バルブシートの中心を回転軸として前記スリット光源および前記視認手段をバルブシート面に対して相対的に回転移動させる駆動手段と、前記視認手段によって視認された光切断線の画像を点列データに変換する点列データ変換手段と、バルブシート面にスリット光が斜めに照射されることによる前記点列データの歪みを補正する補正手段と、予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記肉盛層の形成前のバルブシート下穴を視認して得られた補正後の第2の点列データと、を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとる差分手段と、前記差分手段による差分の結果に基づいて、前記切削加工後に残存する前記肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後にバルブシート下穴の母材が露出するか否かを判断する母材露出判断手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
さらに、上記のバルブ面検査装置は、前記補正手段によって補正された点列データの芯振れの量に基づいてバルブシートの位置精度を算出する位置精度算出手段を有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係るバルブ面検査方法は、バルブシート下穴にレーザー溶接により肉盛層を形成し、切削加工する際のバルブシート面検査方法であって、スリット光源および視認手段をバルブシートの中心を回転軸として回転するとともに、スリット光源によってバルブシート面にスリット光を照射し、スリット光がバルブシート面に当たって形成される光切断線を前記視認手段によって視認し、視認された光切断線に基づいて点列データに変換し、バルブシート面にスリット光が斜めに照射されることによる前記点列データの歪みを補正するものであり、予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記切削加工前のバルブシート面を視認して得られた補正後の点列データである第2の点列データと、を記憶する段階と、前記記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとる段階と、前記差分の結果に基づいて、前記切削加工によって削り取られる肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後に肉盛層の厚さが不十分な部分が発生するか否かを判断する段階と、を有することを特徴とする。
本発明に係るバルブ面検査方法は、バルブシート下穴にレーザー溶接により肉盛層を形成し、切削加工する際のバルブシート面検査方法であって、スリット光源および視認手段をバルブシートの中心を回転軸として回転するとともに、スリット光源によってバルブシート面にスリット光を照射し、スリット光がバルブシート面に当たって形成される光切断線を前記視認手段によって視認し、視認された光切断線に基づいて点列データに変換し、バルブシート面にスリット光が斜めに照射されることによる前記点列データの歪みを補正するものであり、予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記肉盛層の形成前のバルブシート下穴を視認して得られた補正後の第2の点列データと、を記憶する段階と、前記記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとる段階と、前記差分の結果に基づいて、前記切削加工後に残存する前記肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後にバルブシート下穴の母材が露出するか否かを判断する段階と、を有することを特徴とする。
【0025】
【発明の効果】
請求項1および4に記載の発明によれば、予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記切削加工前のバルブシート面を視認して得られた補正後の点列データである第2の点列データとを記憶し、記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとり、差分の結果に基づいて、前記切削加工によって削り取られる肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後に肉盛層の厚さが不十分な部分が発生するか否かを判断するので、切削加工の際に削り取られる肉盛層の厚さを正確に予想でき、また、形成された肉盛層の厚さが十分でない場合をいちはやく判断できる。したがって、削り取られる肉盛層の厚さが必要以上に多いことを避けて、肉盛層に使用される材料を無駄に消費することを防止し、熱歪みの発生を防止してバルブシートの製作時の不具合を軽減できる。さらに、肉盛層の厚さが不十分である場合の最終的な窪みの発生を防止することができる。
【0026】
請求項2および5に記載の発明によれば、予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記切削加工前のバルブシート面を視認して得られた補正後の点列データである第2の点列データとを記憶し、記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとり、差分の結果に基づいて、前記切削加工後に残存する肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後にバルブシート下穴の母材が露出するか否かを判断するので、肉盛層の形成や最終的な切削加工の前に、母材が露出する否かを判断することができ、バルブシート下穴作製時点で、良否の決定をすることができ、早い時点でバルブシート下穴の作成工程の不具合を発見できる。また、バルブシート面における肉盛層の最終的な厚さについての知見を得ることができる。
【0027】
請求項3に記載の発明によれば、前記補正手段によって補正された点列データの芯振れの量に基づいてバルブシートの位置精度を算出する位置精度算出手段を有するので、バルブシートの位置精度を簡便に検査することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面にしたがって、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態であるバルブシート面検査装置の概略図を示す。バルブシート面検査装置は、センサヘッド10を有する。センサヘッド10は、光切断式センサのヘッドであり、検査するバルブシート面にスリット光を照射して生ずる切断線を光源とは異なる方向からビデオカメラ等の視認部で視認することによってバルブシート面の高さ、凸凹等を測定する。
【0031】
また、バルブシート面検査装置には、センサヘッド10と検査対象であるシリンダヘッド100との相対的な位置関係を調整するための位置調整部20が備えられている。この位置調整部20は、センサヘッド10の位置を3軸方向に移動することができ、センサヘッド10の回転軸とシリンダヘッド100のバルブシートの中心軸とを合わせることができる。また、センサヘッド10が取り付けられた回転駆動部30は、バルブシートの中心軸を回転軸として、センサヘッド10をシリンダヘッド100のバルブシート面に対して相対的に回転移動する。
【0032】
なお、シリンダヘッド100を保持するために治具70や作業台80が備えられている。作業台80はシム調整機構22を有しており、シリンダヘッド100の角度を調節することができる。
【0033】
バルブシート面検査装置は、制御部60を備える。制御部60は、センサヘッド10によって検出された切断線の画像データに基づいて各種のデータ変換および補正を行うとともに、位置調整部20や回転駆動部30等の制御を行う。制御部60は、パーソナルコンピュータやエンジニアリングワークステーション等のコンピュータを用いて構成することができ、センサヘッド10や位置調整部20に接続される。
【0034】
さらに、指示を行うためのデータを入力する入力部40、およびバルブシート面検査装置の検査結果等を表示する表示部50が制御部60に接続されている。
【0035】
図2は、センサヘッド10の構成例を示す概略図である。
【0036】
センサヘッド10は、スリット光90を照射するスリット光源部12とスリット光の画像を捉えるための視認部14とを有する。スリット光源部12は、スリット光90を照射する。照射されるスリット光90は、断面が一方向に伸張された光であり、検査するワークの面(つまり、バルブシート面)の法線方向に対してθsの角度をなすように斜めに照射される。このような配置の結果、視認部14の視野が十分に確保される。なお、スリット光源部12は、レーザー光源等で構成することができる。
【0037】
視認部14は、ワークにスリット光90を照射して生ずる切断線92をスリット光の光軸とは異なる方向から観測するための手段であり、ビデオカメラ、イメージセンサ、その他撮像手段が含まれる。精度を高める上では、スリット光源部12の光軸と視認部14の軸とは90度になるように設計することができる。
【0038】
図3は、バルブシート面検査装置の機能を説明するためのブロック図である。
【0039】
上述したようにスリット光源部12と視認部14とはセンサヘッド10を構成する。また、センサヘッド10の回転軸とバルブシートの中心軸とが正確に一致するように位置調整部20によって調節された後、回転駆動部30は、スリット光源部12と視認部14が一体となったセンサヘッド10をバルブシート面に対して相対的に回転移動する。視認部14は、スリット光を照射して生ずる切断線92をバルブシート面の各地点で観測し、観測された切断線92の画像データは、制御部60に出力される。
【0040】
制御部60は、以下の機能を有する。
【0041】
点列データ変換部61は、視野部14から入力された画像データを点列データに変換する。点列データは、バルブシート面上の各観測地点毎の断面形状を示すものである。点列データは、バルブシートの全周に渡って作成される。
【0042】
歪み補正部62は、点列データ変換部61によって変換された点列データの歪を補正するものである。本発明のバルブシート面検査装置におけるスリット光源部12は、バルブシート面の法線方向に対してθsの角度をなすように斜めにスリット光90を照射するものであるため、スリット光90の切断線92の画像が歪む。その結果、切断線92の画像データを点列データに変換しただけでは、正確な断面形状を示すことができない。したがって、歪み補正部62は、正確な断面形状を表示できるように、補正計算を行い、点列データを補正する。
【0043】
第1記憶部63および第2記憶部64は、各々、測定された断面形状を示す補正された点列データを記憶するメモリである。例えば、第1記憶部63は、仕上げ加工を施して正確な形状に加工された良品のバルブシート面の断面形状を示す点列データを基準値として記憶する。一方、第2記憶部64は、不良判別を行うために検査する各々のバルブシート面の断面形状を示す点列データを記憶する。さらに、第1記憶部63および第2記憶部64は、センサヘッド10を構成しているスリット光源部12および視認部14の回転軸の位置を記憶しておくこともできる。なお、1つのメモリ素子のメモリ領域を2つに分けて、各メモリ領域を第1記憶部63と第2記憶部64として使用することもできる。
【0044】
差分計算部65は、第1記憶部63に記憶されている点列データと、第2記憶部64に記憶されている点列データとの差分をとるものである。例えば、差分計算部65は、検査をするバルブシート面の断面形状を示す補正された点列データと、基準値として記憶されている仕上げ処理後のバルブシート面に関する点列データとの差分をとる。差分計算部65による差分計算の結果に基づいて、判断部67は、肉盛層の厚さ、欠肉が生じるか否か、および仕上げ処理によって母材が露出するか否か等の判断を行う。
【0045】
なお、判断部67による判断結果は、表示部50に表示することができ、肉盛層の厚さ等の算出結果は表示部50にグラフィック表示することができる。また、制御部60には、位置調整部20や回転駆動部30を制御する駆動制御部66が備えられている。
【0046】
以上のように構成されるバルブシート面検査装置を実際にバルブシート面の検査に適用した実施形態を説明する。
【0047】
図4は、検査の対象となるシリンダヘッド100の底面図である。シリンダヘッド100には、給気ポート112と排気ポート114が設けられている。給気ポート112と排気ポート114は、各々環状をしたバルブシート110を備えている。但し、給気ポート112と排気ポート114とでは、そのバルブシート110の径が異なっていてもよい。
【0048】
この環状をしたバルブシート110は、シリンダーピストン機構の中でも、精度および耐磨耗性が要求される重要な部分である。そのため、本発明は、バルブシート110の全周に渡ってバルブシート110の面を検査する。したがって、図5に示すように、バルブシート110の中心軸とセンサヘッド10の回転軸とが一致するように調整され、センサヘッド10(すなわちスリット光源部12と視認部14とが一体的に構成されたもの)がバルブシート110の面に対して相対的に回転移動される。その結果、バルブシート110の周上の各地点におけるバルブシート110の断面形状を示す点列データを得ることができる。
【0049】
図6は、検査される各バルブシート110の断面形状を模式的に示した図である。バルブシート110の面(以下、「バルブシート面」という)は、その各工程毎に種々の断面形状を持つ。
【0050】
図6(A)に示すように、バルブシート110は、アルミニウム等の金属を鋳造して所定の素材形状を持つように形成されたバルブシート下穴(母材)120の上に、耐磨耗性の高い金属のビードを肉盛して肉盛層122を形成したグリッド構造を持つ。したがって、バルブシート面は、丸みをおびた曲面となることが多い。
【0051】
次に図6(B)に示すように、肉盛層122が形成されたバルブシート110が基準面126、128等にしたがって仕上げ加工され、寸法通りに仕上げ加工されたワーク124が作成される。
【0052】
図6(C)は、肉盛層122が形成されたバルブシート110の断面形状と、正確に所定の寸法通りに仕上げ加工されたバルブシートの断面形状(基準面126、128)とを比較した様子を示す。肉盛層122の高さが、基準面126、128よりも低い部分は、欠肉130であり、仕上げ加工された後に窪みとなる。また、肉盛層122の高さから、仕上げ加工後のバルブシート面の高さ(基準面126および128)を差し引いた差分は、仕上げ加工によって削り取られる肉盛層122の厚みを示す。
【0053】
以上のように、バルブシート110の断面形状を測定し、寸法通り仕上げ加工されたバルブシートの断面形状(基準面126、128)と比較することによって、欠肉の有無や、仕上げ加工によって削り取られる肉盛層122の厚さ等を検査することができる。
【0054】
しかしながら、バルブシート面が平面ではなく、面上の位置によって高さが変化する曲面であることから、面の法線方向からθsの角度を持って斜めにスリット光90を照射する場合、そのまま切断線92を観測したのみでは、画像が歪んでしまって高さ方向の測定値を正確に求めることが難しい。
【0055】
図7および図8は、バルブシート面の法線方向とθsの角度をなすように斜めにスリット光90が照射される場合の画像の歪みの内容を示す。
【0056】
図7(A)は、バルブシート面に垂直にスリット光90が照射される場合を示す。図7(B)は、バルブシート面上の切断線92の画像データを断面形状を示す点列データに変換した結果を示す。縦軸が、バルブシート110の面の高さ(変位)を表している。
【0057】
一方、図8(A)は、バルブシート面の法線方向とθsの角度をなすように斜めにスリット光90が照射される場合を示す。図8(B)は、バルブシート面上の切断線92の画像を断面形状を示す点列データに変換した結果を示す。
【0058】
図7(B)と図8(B)とを比較すると、バルブシート面110の法線方向に対してθsの角度をなすように斜めにスリット光90が照射された場合、幅方向の値(図中の横軸)は変化しないが、高さ方向の値(図中の縦軸)が誇張される。さらに、バルブシート110の曲面上の高さに依存して歪みの具合が異なるため、図7(B)と図8(B)に示された断面形状は、相似形にならない。このため、バルブシート面のような曲面に対して斜めにスリット光90を照射して断面形状を観察する際には、画像が非線形的に画像が歪み、正確な断面形状を検出することが困難となる。本発明のバルブシート面検査装置は、この歪みを補正するために歪み補正部62を備えている。以下、この歪み補正部62による補正の内容について説明する。
【0059】
図9、図10、および図11は、歪み補正部62による補正の内容を説明するための説明図である。
【0060】
<検査対象物の面に対して斜めにスリット光が照射されることの考慮>
図9は、対象物の変位(例えば、バルブシート面の「高さ」に相当する)の基準値rmに対して±Δrの変化(段差)がある場合を模式的に示している。
【0061】
図中、基準値となる変位、および、基準値よりΔrだけ大きい変位、ならびに基準値よりΔrだけ低い変位は、それぞれ同心円で表されている。
【0062】
この検査対象物の面の法線方向に対してθsの角度だけ傾いてスリット光90が照射される場合、基準となる半径rmの円に対して半径がΔrだけ小さい円で観測される変位をΔds1とし、基準となる半径rmの円に対して半径がΔrだけ大きい円で観察される変位をΔdS2とすると、図に示したように|Δds1|>|Δds2|となる。
【0063】
観測された変位から実際の円の半径r(r=rm+Δr)を補正計算する式を求める。
【0064】
観測される変位を図中のd軸上に表す。半径rmの円でセンサヘッド10によって観測される変位をd0とし、半径r(=rm+Δr)の円でセンサヘッド10によって観測される変位をd(=d0+Δds2)とする。
【0065】
直角三角形αβγに着目すると、幾何学的に、実際の半径rは、式1のように導き出せる。
【0066】
【数1】
【0067】
したがって、実際の変位(段差)Δrは、式2のように導き出せる。
【0068】
【数2】
【0069】
<センサが下向きに45度の迎角をもっていることの考慮>
バルブシートを測定する場合、センサヘッド10は、下向きに45度の迎角を持っている。したがって、図9で求めた補正計算式を適用するために、センサヘッド10が下向きに45度の迎角を持っていることに基づく修正を加える必要がある。
【0070】
図10はバルブシート面を測定する場合のバルブシート110とセンサヘッド10との位置関係を模式的に示す図であり、バルブシート110の中心軸方向に沿った断面図である。
【0071】
図10において、センサヘッド10の迎角は45度である。r0は、センサヘッド10からバルブシート面(より、正確にはバルブシート面は幅を持つので、センサヘッド10の光軸中心が位置するバルブシート面上の位置)までのスリット光90の光軸に沿った距離(以下、「スタンドオフ」という)である。また、R0は、バルブシート110の半径である(より正確には、バルブシート110の面は、幅を持つので、センサヘッド10の光軸中心が位置するバルブシート面上の位置とバルブシートの中心軸との距離をR0とする)。また、バルブシート面の法線方向、すなわち、肉盛の盛り上がり方向をd方向とする。なお、センサヘッド10のセンサ光軸はとd方向に対してθsの角度を持つ。また、lは、バルブシート面におけるセンサヘッド10の光軸の中心を0としたときののスリット光断面伸長方向に沿った距離であり、バルブシート110の外周に向かう方向を正にとっている。
【0072】
また、バルブシート110の中心軸に向かう半径方向をR方向とし、上述のようにバルブシート面の法線方向(すなわち、バルブシートの軸に沿った断面における斜面に直交する方向)をd方向とし、スリット光90の断面伸長方向をl方向とする。
【0073】
図9で説明した補正計算の結果を使用するために、観測される位置dやθsのR方向への寄与分を求める。
【0074】
バルブシート面に対し観測されるd方向に沿った位置をd0とすると、その位置の変化ΔdのR方向への寄与率は、1/√2である。したがって、式1および式2のrmをR0とし、d−d0を(d−d0)/√2と置き換えることができる。
【0075】
また、図11に示したように、R方向から見た法線(図9でいう円の接線と直交する線)とスリット光90とのなす角度θs′と、d方向から見た法線(図9でいう円の接線と直交する線、すなわちバルブシート面の盛り上がり方向の法線)とスリット光90とのなす角度θsとの関係は、式3および式4によって表される。
【0076】
【数3】
【0077】
【数4】
【0078】
式3および式4におけるR方向から見たスリット光90の成す角度θs′が図9におけるθsに該当する。したがって、式1および式2のsinθsおよびcosθsをsinθs′およびcosθs′で置き換えることで、以下の補正式が成り立つ。
【0079】
但し、基準となる実際の円の半径は、l方向の位置、すなわち、スリット光90の断面伸長方向に沿った位置によって変化する。この点を考慮して、R0を(r0+l)/√2と置き換える。また最終的に知りたいのは、バルブシート面の肉盛等の盛り上がり方向、すなわちd方向の変位であるΔrであり、Δrは、Δr=√2ΔRと表される。
【0080】
これらの結果を利用することによって、変位Δrは、式5のように導き出される。
【0081】
【数5】
【0082】
したがって、歪み補正部62は、式5にしたがって、点列データを補正し、正確な断面形状を算出することができる。
【0083】
以上のように構成されるバルブシート面検査装置を用いて、各種の検査を行うためには、センサヘッド10を回転させる回転軸等の初期調整(キャリブレーション)を行う必要がある。図12および図13に初期調整をする場合の概略構成を示す。
【0084】
キャリブレーションを行う場合、キャリブレーション用マスターピース140が測定される。
【0085】
キャリブレーション用マスターピース140は、精度が確かめられたワークである。バルブシート面検査装置は、スピンドル33を備えており、通常はスピンドル33にはセンサヘッド10が取り付けられている。ただし、バルブシート面検査装置は、センサヘッド10の代わりにマスターヘッド34を取り付けることができる。マスターヘッド34にはゲージA35、およびゲージB36が取り付けられており、駆動制御部66等によって、ゲージA35およびゲージB36の目盛りを自動的に読み込むことによって、面振や偏心がないように調整する。
【0086】
次に、マスターヘッド34に代えて、センサヘッド10を装着し、キャリブレーション用マスターピース140の傾斜面141およびエッジ部分142の位置を測定する。この測定結果を基にして、センサヘッド10のオフセット(Xs,Ys、Zs、θs)を調整する。以上のようにセンサヘッド10とマスターヘッド34を着脱自在に構成することによって、初期調整の処理が容易になる。
【0087】
初期調整を行った後、各種の検査を行うモードに入る。
【0088】
バルブシート面検査装置は、複数種類の検査に使用することができる。具体的には、仕上げ加工によって削り取られる肉盛層122の厚さ、欠肉130の有無の判断、仕上げ加工後に残る肉盛層122の厚さ、仕上げ加工後にシート面に母材が露出するか否かの判断、および、バルブシート下穴の位置精度についての検査を行うことができる。
【0089】
<仕上げ加工で削り取られる肉盛層の厚さ、および欠肉の有無の判断>
図14は、仕上げ加工で削り取られる肉盛層122の厚さの推定、および欠肉130の有無の判断を行う測定内容を説明するためのバルブシート110の断面図である
バルブシート110の構成は、母材を鋳造して所定の素材形状を持つようにバルブシート下穴120を形成した段階(肉盛前の段階)、肉盛して肉盛層122を形成した段階、および、肉盛層122を所定の形状になるように仕上げ加工(切削加工)して最終的な形状124となった段階によって異なる。
【0090】
バルブシート面検査装置は、まず、正確に所定寸法通りに仕上げ加工されていることが確認されているワーク(以下、「マスターワーク」と称する)のバルブシート面を測定する。すなわち、図14に示される最終的な製品の形状124が測定される。測定は、バルブシート110の全周および全幅に渡って行われる。
【0091】
マスターワークのバルブシート面の測定結果、すなわち断面形状を示す点列データは、第1記憶部63に記憶される。
【0092】
一方、肉盛層122の形成されたバルブシート面が測定される。測定は、マスターワークのバルブシート面の測定と同様に行われる。肉盛層122が形成されたバルブシート面の測定結果、すなわち断面形状を示す点列データは、第2記憶部64に一時記憶される。
【0093】
図15は、マスターワークのバルブシート面の測定結果と肉盛層122の形成されたバルブシート面の測定結果を示す。なお、マスターワークのバルブシート面の断面形状は、台形形状をしている。したがって、マスターワークのバルブシート面の測定領域は、区間1(斜辺部)、区間2(上底部)、および区間3(斜辺部)に分けられ、それぞれの領域における測定結果は、基準面126、127、および128で表される。
【0094】
一方、肉盛層122の形成されたバルブシート面の測定結果122aは、マスターワークのバルブシート面の測定結果(基準面126、127、128)と比較される。
【0095】
図16は、マスターワークのバルブシート面の測定結果と肉盛層122が形成されたバルブシート面の測定結果とを比較して説明するための図である。
【0096】
肉盛層122の形成されたバルブシート面は、仕上げ加工によって、最終的な形状124、すなわち、マスターワークの面まで切削される。したがって、肉盛層122の形成されたバルブシート面の測定結果(点列データ)122aから、マスターワークのバルブシート面の測定結果の基準面126、127、および128(点列データ)の値を差し引いた値(図中の矢印で示した値)が、仕上げ加工によって、削り取られる肉盛層122の厚さである。
【0097】
一方、差し引いた値が負である部分、すなわち、肉盛層122の形成されたバルブシート面の測定結果122aが、もともとマスターワークのバルブシート面の測定結果の基準面126、127、128の値よりも小さい部分は、欠肉130となる。バルブシート面が最終的にマスターワークのバルブシート面の基準面126、127、128に仕上げ加工される場合、欠肉130の部分は肉盛層122の厚さが不十分であるため最終的にバルブシート面に窪みが生じることになる。
【0098】
なお、削り取られる肉盛層122の厚さの推定、および、欠肉部分130の有無の判断は、区間1、区間2、および区間3の各区間毎に行うことができる。
【0099】
以上のように、マスターワークのバルブシート面の断面形状を示す点列データ(基準面126、127、128のデータ)を記憶しておき、肉盛層122の形成された(仕上げ加工前の)バルブシート面の断面形状を示す点列データ(測定値122a)との差分をとることによって、仕上げ加工によって削り取られる肉盛層の厚さ、および欠肉130の有無が判断できる。
【0100】
<仕上げ加工後に残る肉厚層の厚さ、仕上げ加工後にシート面に母材が露出するか否かの判断>
図17は、仕上げ加工後に残る肉盛層122の厚さの推定、仕上げ加工後にシート面に母材が露出するか否かの判断を行う測定内容を説明するためのバルブシート110の断面図である。
【0101】
図17には、母材を鋳造して所定の素材形状を持つようにバルブシート下穴が形成された段階(肉盛層の形成前)のバルブシート面の形状が符号120aで示されている。図17に示した、バルブシート下穴を形成した段階(肉盛層の形成前)のバルブシート形状120aは、形状不良を起こしており、本来の形状120bに比べて位置がずれている。
【0102】
バルブシート面検査装置は、マスターワークのバルブシート面の形状を測定し、その測定結果を第1記憶部63に記憶する点は図14に示した場合と同様である。図14に示したように、仕上げ加工で削り取られる肉盛層122の厚さや欠肉130の有無の判断を行う場合は、マスターワークの測定結果と肉盛層122が形成されたバルブシート面の測定結果とを比較したが、本測定では、マスターワークの測定結果とバルブシート下穴が形成された(肉盛層122の形成前の)バルブシート面の測定結果と比較する。
【0103】
図18は、マスターワークのバルブシート面の測定結果と肉盛層122の形成前のバルブシート面の測定結果とを比較して説明するための図である。
【0104】
バルブシート下穴が形成された(肉盛層122の形成前の)バルブシート面の測定結果120a、および、マスターワークのバルブシート面の測定結果(基準面126、127、128)が示されている。
【0105】
マスターワークのバルブシート面の測定結果である点列データ(基準面126、127、128)から、バルブシート下穴形成後(肉盛層122の形成前)のバルブシート面の測定結果である点列データ120aを差し引いた値が、仕上げ加工後に残存する肉盛層122の厚さとなる。また、差し引いた値が負である部分、すなわち、マスターワークのバルブシート面の測定結果(基準面126、127、128の値)が、バルブシート下穴形成後(肉盛層122の形成前)のバルブシート面の測定結果120aよりも小さい部分は、仕上げ加工によって、肉盛層がすべて削り取られてしまい、母材が表面に露出する部分となる。
【0106】
以上のように、マスターワークのバルブシート面の測定結果である点列データ(基準面)、および、バルブシート下穴形成後(肉盛層122の形成前)のバルブシート面の測定結果である点列データとの差分をとることによって、仕上げ加工後に残る肉盛層の値を推定することができ、また、仕上げ加工後に母材が露出するか否かを判断することができる。
【0107】
<バルブシート下穴の位置精度についての検査>
バルブシート下穴形成後のバルブシート面を全周、全幅に渡って測定する。測定結果である点列データによって芯振れの程度を観測でき、芯振れ量から、バルブシート下穴の位置精度を算出することができる。図19に測定結果例を示す。
【0108】
以上のように構成され、バルブシート面の各種検査および検査を行うことができるバルブシート面検査装置の処理内容をフローチャートにしたがって説明する。
【0109】
図20は、バルブシート面の形状測定処理について示すフローチャートである。
【0110】
まず、位置調節部20は、センサヘッド10の回転軸とバルブシート110の中心軸とを確実に合わせるように初期調整を行う。初期調整は、キャリブレーション用マスターピース140を測定することよって行うことができる。回転駆動部30を構成しているスピンドル33は、センサヘッド10の変わりにマスターヘッド34を装着することができるように構成される。ゲージA35およびゲージB36が取り付けられているマスターヘッドをスピンドル33に装着し、ゲージの値を駆動制御部66で検出する。この検出結果に応じて、位置調整部20は、3軸方向にセンサ位置を移動して位置調整を行う。これによって、センサヘッド10の回転軸とバルブシート110の中心軸とが一致し、面振や偏心が防止される。 さらに、マスターヘッド34に代えてセンサヘッド10が装着され、キャリブレーション用マスターピース130の傾斜面141およびエッジ部142の位置が測定される。また、スリット光源部12の中心位置、および照射されるスリット光90の照射角度θsが設定される。
【0111】
初期調整の後、バルブシート面検査装置には、検査対象となるシリンダーヘッド100が装着される。シリンダヘッド100は、治具70および作業台80によって固定される(S20)。
【0112】
センサヘッド10のスリット光源部12からスリット光90がシリンダーヘッド100のバルブシート面に対して照射される(S30)。スリット光90は、断面形状が一方向に伸長された光である。スリット光源部12は、スリット光90をバルブシート面の法線方向に対してθsの角度を持って斜めに照射する。この結果、スリット光源部と一体に取り付けられている視認部14の視野が広くとることができ、バルブシートのエッジ付近の構造物によって視認部14の視野が遮られることが防止される。この結果、バルブシート面110の全周に渡って測定することが容易になる。
【0113】
次に視認部14は、バルブシート面にスリット光90が照射されることによって生ずる切断線92をスリット光の光軸とは異なる方向から観測し、観測された切断線92の画像データは、点列データ変換部61によって、断面形状を示す点列データに変換される(S40)。但し、バルブシート面の法線方向に対してθsの角度をなすように斜めにスリット光90が照射される関係上、非線形的に画像が歪み、点列データにも歪みが生じる。したがって、歪み補正部62は、点列データ変換部61によって変換された点列データの歪みを補正する(S50)。歪みの補正は、バルブシート面の高さに依存した歪みの非線形的変化、およびセンサヘッド10の迎角を考慮した補正計算式にしたがってなされる。
【0114】
歪みが補正された点列データは、測定結果として、第1記憶部63または第2記憶部64に記憶される(S60)。
【0115】
こうして、マスターワークのバルブシート面、肉盛層122の形成後のバルブシート面、および、バルブシート下穴形成後(肉盛層122の形成前)のバルブシート面の断面形状が測定される。
【0116】
図21は、仕上げ加工で削り取られる肉盛層の厚さ、および欠肉欠陥の有無を判断する処理を示すフローチャートである。
【0117】
最初に、図20に示したフローチャートにしたがって、マスターワークのバルブシートの形状測定がされる(S101)。このマスターワークのバルブシート面の測定結果である補正された点列データとセンサヘッド10の回転軸の位置とが第1記憶部63に記録される(S102)。
【0118】
次に、肉盛層122が形成されたバルブシート面の測定がされる(S103)。測定結果である補正された点列データは第2記憶部64に記憶される。なお、肉盛層122が形成されたバルブシート面の測定の際のセンサヘッド10の回転軸の位置は、第1記憶部63に記憶されているマスターワークのバルブシート面測定時の回転軸の位置と一致するように設定される。
【0119】
差分計算部65は、肉盛層122が形成されたバルブシート面の測定結果122aとマスターワークのバルブシート面の測定結果(基準線126、127、128の値)を比較する(S104)。肉盛層122が形成されたバルブシート面の測定結果122aから、マスターワークのバルブシート面の測定結果(基準線126、127、128)を差し引いた値が仕上げ加工で削り取られる肉盛層の厚さとなる(S105)。
【0120】
また、判断部67は、差分の結果に基いて、肉盛層122が形成されたバルブシート面の測定結果122aがマスターワークのバルブシート面の測定結果(基準線126、127、128)よりも小さい部分、すなわち、肉盛層122の形成されたバルブシート面の高さがマスターワークのバルブシート面の高さより低い部分があるか否かを判断する(S106)。その結果、肉盛層122が形成されたバルブシート面の高さがマスターワークのバルブシート面の高さより低い部分がない場合、判断部67は、欠肉130がない旨を判断される(S107)。一方、肉盛層122の形成されたバルブシート面の高さががマスターワークのバルブシート面の高さよりも低い部分がある場合、判断部67は、欠肉不良がある旨を判断する(S108)。
【0121】
最終的に算出された削り取られる肉盛層122の厚さ、および、欠肉130の有無の判断結果が、表示部50に表示される(S109)。
【0122】
これによって、バルブシート面の肉盛層122の管理を適切に行うことができる。
【0123】
図22は、仕上げ加工後に残存する肉盛層122の厚さ、母材露出部分の有無、および、バルブシート下穴の位置精度をを判断する処理を示すフローチャートである。
【0124】
最初にマスターワークのバルブシートの形状測定がされ、その測定結果と回転軸の位置とが第1記憶部63に記憶される点は、図21の場合と同様である(S201、S202)。なお、測定結果は、マスターワークのバルブシートの断面形状を示す点列データであり、歪み補正部62によって補正されたものである。
【0125】
次にバルブシート下穴の形成後(肉盛層122の形成前)のバルブシート面(母材の素材形状)が測定される(S203)。測定結果は第2記憶部64に記憶される。
【0126】
差分計算部65は、マスターワークのバルブシート面の測定結果(基準線126、127、128の値)と下穴形成後(肉盛層122の形成前)のバルブシート面の測定結果120aとを比較する(S204)。実際は、マスターワークのバルブシート面の測定結果(基準線126、127、128)の値から、下穴形成後(肉盛層122の形成前)のバルブシート面の測定結果120aの値を差し引いた値が仕上げ加工後に残存する肉盛層122の厚さとなる。
【0127】
また、判断部67は、差分の結果に基いて、マスターワークのバルブシート面の測定結果122aが、下穴形成後(肉盛層122の形成前)のワークのバルブシート面の測定結果120aよりも小さいか否か、すなわち、下穴形成後のバルブシート面の高さがマスターワークのバルブシート面の高さよりも高い部分があるか否かを判断する(S205)。その結果、下穴形成後のワークのバルブシート面の高さがマスターワークのバルブシート面の高さより高い部分がある場合は、仕上げ加工によって、肉盛層がすべて削り取られて母材が露出することになると判断する(S206)。
【0128】
また、下穴形成後のバルブシート面を全周に渡って測定した結果を基にして、芯振れ量を算出し、芯振れ量から下穴位置の精度を算出する(S207、S208)。判断部67は、算出結果を基にして下穴形状の位置精度が所定値よりも低いか否かを判断する。位置精度が所定値に達していない場合は、下穴位置不良と判断し(S209、S210)、位置精度が所定値よりも高精度であれば、良品と判断する(S209、S211)。
【0129】
判断結果は、表示部50に表示される(S212)。これによって、バルブシートの下穴形成工程の管理を適切に行うことができる。
【0130】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態は、スリット光源部12と視認部14とからなる光切断式センサのセンサヘッド10を用いて、バルブシート面の検査、検査を行うことができるものであり、スリット光90をバルブシート面に垂直に照射する必要をなくすことで、視認部14の視野を広くとることを可能とするものである。さらに、スリット光がバルブシート面に斜めに照射されることに起因する歪みを補正し、正確な断面形状を測定することができるように構成されている。この結果、特に、肉盛層122の形成後のバルブシート面のような曲面の形状を検査する場合でも、正確な断面形状を測定することができる。さらに、マスター形状の測定結果を記録しておき、このマスター形状の測定結果との差分をとることで、肉盛層の厚さや欠肉欠陥の有無、および、母材露出不良の有無などを検査、検査できるので、高精度な寸法精度が要求されるバルブシート製作工程を管理するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 バルブシート面検査装置の概略図である。
【図2】 センサヘッドの構成例を示す図である。
【図3】 バルブシート面検査装置の機能を示すブロック図である。
【図4】 検査の対象となるシリンダヘッドの底面図である。
【図5】 バルブシートとセンサヘッドの配置関係を示す図である。
【図6】 検査される各工程毎のバルブシートの断面形状を模式的に示した断面図である。
【図7】 バルブシート面に垂直にスリット光が照射される場合の説明図である。
【図8】 バルブシート面に斜めにスリット光が照射される場合の説明図である。
【図9】 歪み補正部における補正の内容を説明するための図である。
【図10】 補正の内容を説明するためにバルブシートトセンサヘッドの位置関係を示す図である。
【図11】 補正の内容を説明するための図である。
【図12】 面芯や偏心を防止するための初期調整時の概略構成を示す図である。
【図13】 オフセットを調整するための初期調整時の概略構成を示す図である。
【図14】 仕上げ加工で削り取られる肉盛層の厚さ推定、欠肉の有無の判断を行う測定内容を示すためのバルブシート110の断面図である。
【図15】 マスターワークのバルブシート面および肉盛層の形成されたバルブシート面の測定結果を示す図である。
【図16】 マスターワークのバルブシート面および肉盛層の形成されたバルブシート面の測定結果を比較する図である。
【図17】 仕上げ加工後に残る肉盛層の厚さ推定を行う測定内容を示すためのバルブシート110の断面図である。
【図18】 マスターワークのバルブシート面および肉盛層の形成前のバルブシート面の測定結果とを比較する図である。
【図19】 芯触れ量の測定結果例を示す図である。
【図20】 バルブシート面の形状測定処理について示すフローチャートである。
【図21】 仕上げ加工で削り取られる肉盛層の厚さ、および欠肉の有無を判断する処理を示すフローチャートである。
【図22】 仕上げ加工後に残存する肉盛層の厚さ、母材露出部分の有無等を判断する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…センサヘッド、
12…スリット光源部、
14…視認部、
20…位置調整部、
22…シム調整機構
30…回転駆動部、
33…スピンドル、
34…マスターヘッド、
35、36…ゲージ、
40…入力部、
50…表示部、
60…制御部、
61…点列データ変換部、
62…歪み補正部、
63…第1記憶部、
64…第2記憶部、
65…差分計算部、
66…駆動制御部、
67…判断部、
70…治具、
80…作業台、
90…スリット光、
92…切断線、
100…シリンダヘッド、
110…バルブシート、
112…給気ポート、
114…排気ポート、
120…バルブシート下穴(母材)、
122…肉盛層
124…寸法通りに仕上げ加工されたワーク(マスターワーク)
126、127、128…基準面、
130…欠肉、
140…キャリブレーション用マスターピース、
141…傾斜面、
142…エッジ部。
Claims (5)
- バルブシート下穴にレーザー溶接により肉盛層を形成し、切削加工する際のバルブシート面検査装置であって、
バルブシート面にスリット光を照射するスリット光源と、
スリット光がバルブシート面に当たって形成される光切断線を視認する視認手段と、
バルブシートの中心を回転軸として前記スリット光源および前記視認手段をバルブシート面に対して相対的に回転移動させる駆動手段と、
前記視認手段によって視認された光切断線の画像を点列データに変換する点列データ変換手段と、
バルブシート面にスリット光が斜めに照射されることによる前記点列データの歪みを補正する補正手段と、
予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記切削加工前のバルブシート面を視認して得られた補正後の点列データである第2の点列データと、を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとる差分手段と、
前記差分手段による差分の結果に基づいて、前記切削加工によって削り取られる肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後に肉盛層の厚さが不十分な部分が発生するか否かを判断する欠肉判断手段と、を有することを特徴とするバルブシート面検査装置。 - バルブシート下穴にレーザー溶接により肉盛層を形成し、切削加工する際のバルブシート面検査装置であって、
バルブシート面にスリット光を照射するスリット光源と、
スリット光がバルブシート面に当たって形成される光切断線を視認する視認手段と、
バルブシートの中心を回転軸として前記スリット光源および前記視認手段をバルブシート面に対して相対的に回転移動させる駆動手段と、
前記視認手段によって視認された光切断線の画像を点列データに変換する点列データ変換手段と、
バルブシート面にスリット光が斜めに照射されることによる前記点列データの歪みを補正する補正手段と、
予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記肉盛層の形成前のバルブシート下穴を視認して得られた補正後の第2の点列データと、を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとる差分手段と、
前記差分手段による差分の結果に基づいて、前記切削加工後に残存する前記肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後にバルブシート下穴の母材が露出するか否かを判断する母材露出判断手段と、を有することを特徴とするバルブシート面検査装置。 - さらに、前記補正手段によって補正された点列データの芯振れの量に基づいてバルブシートの位置精度を算出する位置精度算出手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載のバルブシート面検査装置。
- バルブシート下穴にレーザー溶接により肉盛層を形成し、切削加工する際のバルブシート面検査方法であって、
スリット光源および視認手段をバルブシートの中心を回転軸として回転するとともに、スリット光源によってバルブシート面にスリット光を照射し、スリット光がバルブシート面に当たって形成される光切断線を前記視認手段によって視認し、視認された光切断線に基づいて点列データに変換し、バルブシート面にスリット光が斜めに照射されることによる前記点列データの歪みを補正するものであり、
予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記切削加工前のバルブシート面を視認して得られた補正後の点列データである第2の点列データと、を記憶する段階と、
前記記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとる段階と、
前記差分の結果に基づいて、前記切削加工によって削り取られる肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後に肉盛層の厚さが不十分な部分が発生するか否かを判断する段階と、を有することを特徴とするバルブシート面検査方法。 - バルブシート下穴にレーザー溶接により肉盛層を形成し、切削加工する際のバルブシート面検査方法であって、
スリット光源および視認手段をバルブシートの中心を回転軸として回転するとともに、スリット光源によってバルブシート面にスリット光を照射し、スリット光がバルブシート面に当たって形成される光切断線を前記視認手段によって視認し、視認された光切断線に基づいて点列データに変換し、バルブシート面にスリット光が斜めに照射されることによる前記点列データの歪みを補正するものであり、
予め寸法が明らかとなっているマスターワークを視認して得られた補正後の点列データである第1の点列データと、前記肉盛層の形成前のバルブシート下穴を視認して得られた補正後の第2の点列データと、を記憶する段階と、
前記記憶された前記第1の点列データと前記第2の点列データとの差分をとる段階と、
前記差分の結果に基づいて、前記切削加工後に残存する前記肉盛層の厚さを計算し、前記切削加工後にバルブシート下穴の母材が露出するか否かを判断する段階と、を有することを特徴とするバルブシート面検査方法。
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