JP3700541B2 - 超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造方法および連続鋳造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造方法および連続鋳造装置に関し、特に溶融金属の連続鋳造に際し、磁場による溶湯流動制御手段として超伝導磁石を使用した場合に懸念される超伝導状態のブレークアウトを効果的に防止して、安定した高速鋳造を可能ならしめようとするものである。
また、本発明は、鋼スラブの製造方法として連続鋳造を利用する代表的な産業である鉄鋼産業に限らず、溶融金属を取り扱う他の産業にも適用することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋼の連続鋳造においては、タンディッシュから浸漬ノズルを通して溶鋼をモールド内に注入するのが一般的である。
しかしながら、浸漬ノズルの吐出口から流出される溶鋼は、大きな吐出流速を持っているため、アルミナ等の介在物や気泡等が溶鋼中に巻き込まれることになり、これが製品の品質欠陥の原因になっていた。
また、溶鋼の注入に際しては、吐出流が鋳型の短辺側に衝突することになるが、これによって鋳型内に上昇流が発生した場合には、この上昇流が湯面を乱すことから、その結果として湯面に添加されたモールドフラックス等が鋼中に巻き込まれ、これもまた、製品の品質を劣化させる原因となっていた。
【0003】
このような問題は、これまで、ノズルの角度や形状を変えて溶鋼の吐出流速を減速させることによって対処がなされていたが、近年では、ユーザの要求を満足する高品質を確保することは勿論であるが、高効率化、高経済性のために鋳造速度(吐出量)を上昇させる傾向にあり、そのためには、ノズルの角度を変えたり形状を変更するだけでは不十分なことから、新規な鋳造方式の開発が望まれていた。
【0004】
この点に関する先行技術としては、連続鋳造用鋳型内の溶鋼流に対して磁場(常伝導磁石)を印加し、溶鋼の吐出流に制動を加えて、介在物の溶鋼内部への進入の防止を図った、例えば特開平8−52549 号公報、特開平8−19841 号公報、特開昭57−17356 号公報および特開平2−284750号公報などに開示の技術が知られている。
しかしながら、上記のような従来技術では、溶鋼の噴流の向きを変えることはできても、噴流の持つエネルギーを分散して均一な流れにすることはできないことの他、静磁場のない領域に溶鋼が逃げる場合があり、また溶鋼の鋳造速度が4〜5ton/min 程度の場合には品質の改善効果が見られるものの、特に鋳造速度が従来の2倍を超えるような高速鋳造においては、その効果はほとんど期待できないのが現状であった。
【0005】
上記の問題の解決策として、例えば特開平8−90176号公報、特開平8−229648号公報には、超伝導磁石を使用した鋼の連続鋳造方法が開示されていて、これによって高速鋳造を実施する際の上記のような諸問題の解決が期待できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、超伝導磁石を用いた連続鋳造を長期にわたって試験操業したところ、超伝導磁石中の超伝導コイルの超伝導状態が消失するケースが発生した。
すなわち、超伝導磁石の連続鋳造法への適用に際しては、実機の連続鋳造機に十分に適用可能なように設計しており、しかも実機試験を実施して、使用可能との結果を出してから実機に設置していたが、それにもかかわらず超伝導状態を維持できなくなる場合が少なからず発生したのである。
【0007】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、超伝導磁石を用い長期にわたって連続鋳造を実施したとしても、超伝導状態が消失することがなく、安定した磁場印加ひいては安定した高速連続鋳造を達成することができる、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造方法を、その実施に用いて好適な連続鋳造装置と共に提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、この発明に想到した経緯について説明する。
従来から大型の超伝導磁石における冷却方法としては、液体窒素や液体ヘリウムを用いる冷却方法が一般的である。近年は、直冷式の超伝導磁石も増えてきているが、大型の磁石に関しては、まだ一般的に実用化されてなく、特に工業的にはほとんど使用されていない。
そのため、超伝導磁石がどのような方面に使用できるかは、種々の分野で試行されている段階である。
【0009】
鉄鋼分野、特に連続鋳造の分野では、従来から磁場を用いた品質の改善が行われており、最近の研究開発で、高磁場を用いて鋳造を行うことで、より高生産・高品質になるとの結論が出つつある。
ただし、そのためには、超伝導磁石のこの分野への適用化が大きな問題となる。
本発明は、上記したとおり、超伝導磁石を鋳造分野に適用した場合における、超伝導状態の消失という問題を解決することによって、安定した高磁場での連続鋳造を可能ならしめようとするものである。
【0010】
従来の常伝導磁石を用いた鋳造方法では、上記の点は問題とならなかった。例えば、従来の常伝導磁石では、導線の温度上昇が仮にあったとしても、それによって急激に導線を流れる電流がゼロとなって磁場が消失するという問題はなかった。また、常伝導磁石は、磁場が小さく、磁場の効果も高品質化のみに限定しているため、たとえ磁場が停電等の原因で消失したとしても、高生産性を追求していないため、生産量が落ちることはなかった。
しかしながら、超伝導磁場を使用する場合は、高品質・高生産性を強く追求しているため、磁場が消失することは非常に大きな問題となる。
また、常伝導磁石では、コイルの中の導線自体が電流で発熱するため、常に冷却水を循環させ、抜熱を実施する必要があった。そのため、多少熱が不安定であっても導線には問題はなく、また冷却水自体が熱吸収を行うため、問題は無かった。
【0011】
従って、今回のように超伝導磁石を使用して鋳造を実施した場合に、磁場の発生が不安定になるということは、今後超伝導磁石を当該分野に利用する場合の重大な課題であると言える。
そこで、発明者らは、まず、上記した超伝導状態の消失の発生原因を解明すべく、詳細な調査を行った。
【0012】
すなわち、超伝導磁石内部の超伝導コイルにCGR温度センサーを設置して、外部から低電流を流して、抵抗による温度測定を行った。
その結果、超伝導磁石内部の温度は常に一定ではなく、極めて短い周期で温度が変化していることが明かとなった。
この調査結果を図1,図2に示す。
図1は、モールドを挟んで設けた2つの超伝導磁石A,Bの内部の超伝導コイルにそれぞれ調査用として取り付けた2個のCGR温度センサーそれぞれのCGR抵抗値と温度との関係を示したものであり、図2は、かかる2つのCGR温度センサーで測定した、実際の連続鋳造操業における経過時間と超伝導磁石内部のCGR抵抗値との関係を示したものである。
従って、図2で得られた抵抗値を、図1により、温度に換算すれば、超伝導磁石の内部温度が求められる。
【0013】
図2から明らかなように、この超伝導コイルの温度変化は非常に早い段階で生じることから、通常の熱伝導・熱放射で温度上昇が生じているとは考えにくい。また、超伝導磁石のクライオ(冷却装置)は、数十ミリの厚さの金属に断熱材を付加しているので、外部の温度変化が直接超伝導コイルの温度を上昇させたとも考えられなかった。
【0014】
上記したように、クライオ外部の温度変化が、クライオ内部の早い温度変化を引き起こしているとは考えにくかったが、クライオ外部の温度についても、測定を行った。
その結果、連続鋳造機において、モールドカバー下の大気の温度は40〜50℃まで上昇し、甚だしい場合には70℃以上にまで達することがあった。しかしながら、この程度の外気温度は予め想定して設計・製作を実施しており、そのため超伝導磁石内部の温度を上昇させるまでには至らないと考えられた。
【0015】
そこで、次に、発明者らは、超伝導磁石壁面の温度について調査した。
その結果、超伝導磁石の表面も30〜40℃程度の温度となっていることが明かとなった。しかしながら、この程度の温度では、前述したように超伝導磁石内部の温度上昇は生じないと考えられる。
【0016】
そこで、さらに、超伝導磁石に対し、図3に記号イ〜トで示す位置に熱電対を取り付けてさらに詳細に測定したところ、図4に示すように、超伝導磁石の壁面の一部、特に底面部において温度が上昇する場合があり、超伝導磁石への入熱は、外気からだけではなく、輻射熱が大きく影響していることが、新たに判明した。
【0017】
通常、ロール間の隙間には、冷却水を噴出してスラブを冷却するためのノズルがあり、これより常に冷却水が噴出され、水幕も形成されているため、輻射熱は遮断されていると考えられていた。
しかしながら、上記の調査により、ロールとロールの隙間から輻射熱が水幕および水蒸気幕をある程度素通りして、超伝導磁石まで達する場合があることが明かとなったのである。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0018】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鋳造中の溶融金属に超伝導磁石による磁場を作用させつつ連続鋳造を行う方法において、該超伝導磁石の外側に、該超伝導磁石から離隔して熱遮断体を設け、該超伝導磁石に対する、鋳片からの輻射熱および/または鋳片に噴霧された冷却水の蒸気からの熱伝達および輻射熱を遮断しつつ、鋳造することを特徴とする、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造方法。
【0019】
2.鋳型内の溶融金属に対する磁場発生手段として超伝導磁石を配設した溶融金属の連続鋳造装置において、該超伝導磁石の外側に、該超伝導磁石から離隔して熱遮断体を設けたことを特徴とする、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造装置。
【0020】
3.前記熱遮断体が、一層または複層の断熱材からなる構造体であることを特徴とする上記2に記載の、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造装置。
【0021】
4.前記熱遮断体が、少なくともその表面が熱反射率の高い物質で構成された構造体であることを特徴とする上記2または3に記載の、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造装置。
【0022】
5.前記熱遮断体が、冷却用流体によって内部または外部から冷却される仕組みの構造体であることを特徴とする上記2に記載の、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造装置。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明は、連続鋳造機のモールド内の溶鋼に磁場を印加する手段として超伝導磁石を利用する場合において、鋳片からの輻射熱や鋳片に噴霧された冷却水の蒸気からの熱伝達および輻射熱等を効果的に遮断するもので、かかる遮断手段として、超伝導磁石の外側に、該磁石から離隔して熱遮断体を設ける。
【0028】
以下、超伝導磁石の外側に、該磁石から離隔して熱遮断体を設ける場合について説明する。
図5に、上記の発明を適用した連続鋳造機を模式で示し、図中、番号1は浸漬ノズル、2はモールド、3はタンディッシュ内の溶鋼、4はモールド内溶鋼の表面に供給されたパウダー、5はロールであり、6が超伝導磁石を用いた静磁場発生器である。そして、かかる超伝導磁石6の外側には、図6に示すように、超伝導磁石6から離隔して熱遮断体7が設けられている。
なお、図6の例では、熱遮断体7を、超伝導磁石6の外側面全面に設ける場合について示したが、かかる熱遮断体7は必ずしも超伝導磁石6の外側面全面に設ける必要はなく、輻射熱や熱伝達の影響が最も大きい底面のみに設置するだけでも良い。
【0029】
また、上記の熱遮断体7しては、断熱効果を示す材料であればいずれもが適合し、その材質および構造について特に限定されることはないが、
a)一層または複層の断熱材からなる構造物、
b)少なくともその表面が熱反射率の高い物質で構成された構造体、
c)冷却用流体によって内部または外部から冷却される仕組みの構造体
等が特に有利に適合する。
【0030】
ここで、上記a)〜c)の各構造体について具体的に説明する。
図7(a) は、金属製の防熱板8を熱遮断体7とするものであるが、この金属製防熱板8に替えて複層の断熱材9を配置したり、金属製防熱板8の内側に断熱材9を配置する構造にすれば、上記a)相当の構造体となる。
また、上記の金属製防熱板8の外側面を、めっき等で熱反射率の高い物質で被覆すれば、上記b)相当の構造体となる。
さらに、図7(b) は、金属製防熱板8の内側を窒素ガス等の冷却ガスで、一方同図(c) は金属製防熱板8の内側を冷却水で直接冷却する仕組みとしたもので、上記c)の構造体に相当する。
【0031】
なお、断熱材としては、鉄鋼業において入手容易なロックウールの他、グラスウールやロックボード、硅カル板等が有利に適合する。
また、かかる断熱材中に金属を含浸させたものであっても良い。
一方、冷却媒体としては、冷却水および窒素ガス、炭酸ガス、フレオンガス等が有利に適合するが、これだけに限るものではなく、冷却効果を示すものであればいずれもが適合する。重要なことは、冷却を確実に実施できることである。
【0035】
上記したように、本発明に従い、超伝導磁石の外側に、熱遮断体を設けてやれば、鋳片からの輻射熱や鋳片に噴霧された冷却水の蒸気からの熱伝達や輻射熱等を効果的に遮断することができるので、従来懸念された熱伝達や輻射熱による磁場の消失等のおそれなしに、超伝導磁石を利用した高速鋳造が可能となるのである。
【0036】
【実施例】
連続鋳造機としては、図5に示した垂直曲げ型連鋳機を使用した。
また、連続鋳造条件は次のとおりである。
・ノズル:2孔ノズル 吐出孔径:40mm×40mm角
・鋳込み速度:2.5 m/min
・垂直曲げ連鋳機の垂直部:1.5 m
・モールドサイズ:0.4 m(幅) ×0.11m(厚み)
・印加磁場:1T
・鋳造した鋼種:
C:300 〜350 ppm, Mn:0.15〜0.2 mass%, P:0.025 mass%以下,
S:0.015 mass%以下, Al:0.025 〜0.038 mass%, T.O.:25〜35 ppm
・タンディッシュ溶鋼温度:1550〜1565℃
・鋳造量:5 ton(1チャージ)
【0043】
この実施例では、超伝導磁石から離隔して熱遮断体を設けることによって、輻射熱を遮断するものとした。
各熱遮断体の構成は、次の5とおりである。
1) 熱遮断体なし(従来例)
2) 熱遮断体有り(金属タイプ)
金属製の熱遮断板として3mm厚のオーステナイト系ステンレス鋼板を使用した。
3) 熱遮断体有り(断熱材使用)
断熱材として20mm厚のロックウールを使用した(ロックウールの外側はステンレスのホイルでカバーした) 。
4) 熱遮断体有り(金属タイプ+断熱材)
断熱材として、表面にアルミニウムを含浸させたロックウール(50mm厚)を使用した。
5) 熱遮断体有り(金属タイプ+冷却処理)
金属製の熱遮断板として3mm厚のオーステナイト系ステンレス鋼板を使用し、その内側を冷却水で直接冷却した。
【0044】
上記の5条件で連続鋳造した場合の、超伝導磁石における超伝導状態の消失の発生の有無について調査した結果を、表1に示す。また、表2には、超伝導磁石内外の温度上昇量を示す。
表1,2に示したとおり、本発明に従った場合には、優れた熱遮断性が得られている。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、超伝導磁石に対する、鋳片からの輻射熱や鋳片に噴霧された冷却水の蒸気からの輻射熱や熱伝達等を効果的に遮断することができるので、従来懸念された輻射熱による磁場の消失等のおそれなしに、高品質スラブの製造を高速で安定して実施することができ、さらには大幅なコスト削減も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 CGR温度センサー(AおよびB)それぞれのCGR抵抗値と温度との関係を示したグラフである。
【図2】 2つのCGR温度センサー(AおよびB)で測定した、実際の連続鋳造操業における経過時間と超伝導磁石内部のCGR抵抗値との関係を示したグラフである。
【図3】 超伝導磁石に対する熱電対の取り付け位置を示した図である。
【図4】 超伝導磁石壁面の各位置における温度変化を示したグラフである。
【図5】 本発明を適用した連続鋳造機の模式図である。
【図6】 超伝導磁石に対する熱遮断体の設置状態の説明図である。
【図7】 熱遮断体を示した図である。
【符号の説明】
1 浸漬ノズル
2 モールド
3 溶鋼
4 パウダー
5 ロール
6 静磁場発生器(超伝導磁石)
7 熱遮断体
8 防熱板
9 断熱材
Claims (5)
- 鋳造中の溶融金属に超伝導磁石による磁場を作用させつつ連続鋳造を行う方法において、該超伝導磁石の外側に、該超伝導磁石から離隔して熱遮断体を設け、該超伝導磁石に対する、鋳片からの輻射熱および/または鋳片に噴霧された冷却水の蒸気からの熱伝達および輻射熱を遮断しつつ、鋳造することを特徴とする、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造方法。
- 鋳型内の溶融金属に対する磁場発生手段として超伝導磁石を配設した溶融金属の連続鋳造装置において、該超伝導磁石の外側に、該超伝導磁石から離隔して熱遮断体を設けたことを特徴とする、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造装置。
- 前記熱遮断体が、一層または複層の断熱材からなる構造体であることを特徴とする請求項2に記載の、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造装置。
- 前記熱遮断体が、少なくともその表面が熱反射率の高い物質で構成された構造体であることを特徴とする請求項2または3に記載の、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造装置。
- 前記熱遮断体が、冷却用流体によって内部または外部から冷却される仕組みの構造体であることを特徴とする請求項2に記載の、超伝導磁石を用いた溶融金属の連続鋳造装置。
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