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JP3707082B2 - 四重極質量分析装置 - Google Patents
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四重極質量分析装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、所定の質量(実際には質量数mを電荷zで除した値m/z)を有するイオンのみを通過させることにより目的イオンを分離し又は所定の質量範囲を走査し、試料の分析を行なう四重極質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
四重極質量分析装置で用いる四重極質量フィルタ(QMF)は、イオンの進行方向(これをZ軸とする)に対して直交するX軸方向及びY軸方向に各1対の電極棒をZ軸に平行に配置したものであり、これらの間に直流電圧と交流電圧を重畳した電圧を印加することにより、その電圧に対応した質量を有する目的イオンのみをZ軸方向に通過させ、他の質量のイオンを発散させる。四重極質量フィルタがこのようなフィルタとして正しく、しかも高感度に機能するためには、四重極質量フィルタの入射側の所定の位置におけるイオンの入射範囲及びその運動方向がその四重極質量フィルタのアクセプタンスに適合したものでなければならない。
【0003】
アクセプタンスは、各四重極質量フィルタの粒子受入れ特性を示すものであり、四重極質量フィルタの出口から出射されるイオンを所定の目標範囲内に収めるために必要な入射イオンの空間的範囲及び運動方向の範囲で表わされる。アクセプタンスは図8に示すようなX−X'平面及びY−Y'平面における範囲で表わされ、例えばX軸方向については、入射イオンのX座標が入射側の所定位置においてその範囲内に収まっており、しかも、その入射方向(X')がその範囲内に収まっているときに、四重極質量フィルタの出口から出射されるイオンは目標範囲内に収まる。Y軸方向についても同様である。アクセプタンスの形状については、一般的に次のようなことが言える。例えば、図7(a)に示すように、多数のイオンが或る1点Fから出射されるときは、Z=0のX−Y平面内において、イオンの通過位置の座標X1(又はY1)が大きくなるほど、イオンの運動方向の傾きX'1(又はY'1)もそれに比例して大きくなる。従って、この場合のアクセプタンスは図8(a)及び(b)の線Dvに示すように右上がりの直線となる。一方、図7(b)に示すように、多数のイオンが或る1点に集束するように飛行しているときは、座標X1(又はY1)が大きくなるほど傾きX'1(又はY'1)は負の方向に大きくなる。この場合のアクセプタンスは図8(a)及び(b)の線Cvのように右下がりの直線となる。
【0004】
四重極質量フィルタにイオンを入射させる場合、入射イオンの位置及び運動方向をその四重極質量フィルタのアクセプタンスに適合させるために、従来よりイオン源と四重極質量フィルタの間には入射イオン光学系が設けられていた。この入射イオン光学系のイオン出射特性(これをエミッタンスと呼ぶ)を四重極質量フィルタのアクセプタンスに一致させておくことにより、四重極質量分析装置においてイオンは効率よく検出され、高感度の分析を行なうことができる。
【0005】
従来の四重極質量分析装置における入射イオン光学系は、一般に、イオンの通路の周囲に直流電圧を印加することによりイオンを集束させるものであり、その印加電圧は固定されていた。また、入射イオン光学系の形状及び電場はイオンの入射軸に対して回転対称となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
入射イオン光学系の集束特性を一定としておいても、入射イオンのエネルギが変化するとエミッタンスは変化する。例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP/MS)ではイオンの運動エネルギはプラズマ膨張により与えられるため、イオンの速度は質量によらずほぼ同じとなり、図9に示すように、イオンの質量が大きくなるにつれてそのエネルギが増加する。そのため、入射イオン光学系の印加電圧を一定にしておくと、図11(a)〜(f)に示すように、入射イオンのエネルギが高くなるにつれてエミッタンスは第2及び第4象限に強く現われるようになり、集束性の強いものとなる。従って、四重極質量フィルタ側で通過目的イオンを変えたり質量走査を行なう場合、それに伴い入射エネルギが変化するために、入射イオン光学系のエミッタンスと四重極質量フィルタのアクセプタンスのマッチングが崩れ、イオンの質量によって感度が変化するという問題が生ずる。
【0007】
また、図11を見ると明かな通り、同一入射エネルギでは、X方向のエミッタンスとY方向のエミッタンスはほぼ同じ形状をしている。これは、入射イオン光学系が軸対称であることをそのまま反映しているものである。しかし、四重極質量フィルタのアクセプタンスは実際には軸対称ではなく、図10に示すように、X方向とY方向とで形状が異なっている。従って、従来のような軸対称の入射イオン光学系ではエミッタンスとアクセプタンスの十分なマッチングがとれず、十分な効率が得らない。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、入射イオン光学系のエミッタンスと四重極質量フィルタのアクセプタンスとが常に良好にマッチングするようにした四重極質量分析装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係る四重極質量分析装置は、Z軸を中心軸とし、それに直交するX軸方向及びY軸方向に各1対の電極棒が配置された四重極から成り、直流電圧及び交流電圧を重畳した電圧を電極棒間に印加することにより所定の質量のイオンのみをZ軸方向に通過させる四重極質量フィルタを備えた四重極質量分析装置において、
入射イオンに対してX軸方向及びY軸方向に異なった集束性又は発散性を与える入射イオン光学系を備え、該入射イオン光学系はZ軸に対して回転対称である四重極とZ軸の周りに開口を有するアパーチャ板とを組み合わせたものであり、前記四重極及び前記アパーチャ板を用いて、イオンの空間的な通過範囲及び運動方向の傾きをX軸方向及びY軸方向に関して制限することにより、前記入射イオン光学系のエミッタンスの形状を、X軸方向、Y軸方向ともに前記四重極質量フィルタのアクセプタンスの形状と一致させるようにしたことを特徴としている。
【0012】
【作用】
本発明の四重極質量分析装置では、入射イオン光学系が従来のように軸対称ではなく、X軸方向及びY軸方向に異なった集束性又は発散性を与えるように設定されているため、入射イオン光学系のエミッタンスを、各軸方向に異なった形状を有する四重極質量フィルタのアクセプタンスに常に合わせた状態としておくことができる。なお、四重極質量フィルタに印加する電圧は、四重極質量フィルタを通過させるべき目的イオンの質量に応じて変化するため、その四重極質量フィルタの印加電圧の変化に関する情報を利用することにより、入射イオンの質量に応じてX軸方向及びY軸方向の集束性又は発散性を変化させるようにしてもよい。
【0013】
【実施例】
まず本発明が適用される四重極質量分析装置の一実施例を図1及び図2により説明する。本実施例の四重極質量分析装置は図1に示すように、イオン源11から出射されるイオンを入射イオン光学系であるアインツェルレンズ12で集束し、四重極質量フィルタ(QMF)13に入射させる。四重極質量フィルタ13へは、四重極電圧印加回路(AC/DC)18から直流/交流重畳電圧が印加され、これにより、目的の質量を有するイオンのみが四重極を通過する。四重極質量フィルタ13を通過した目的イオンは、デフレクタ14により偏向され、イオン検出器15により検出される。
【0014】
従来の四重極質量分析装置では、レンズ12へ印加する直流電圧は固定されていたが、本実施例の装置では、図1に示すように、レンズ電圧印加回路(DC)17が可変の直流電圧をレンズ12に印加することができるようになっており、その印加電圧の値は制御部19からの制御信号により制御可能となっている。
【0015】
一般にアインツェルレンズ12は図2に示すように、中央に円孔21を有する3枚の電極板12a、12b、12cから成り、レンズ電圧印加回路(DC)は各電極板12a、12b、12cに対して独立に直流電圧を印加する。レンズ12によるエミッタンスはいずれの電極板12a、12b、12cに対する印加電圧の変化によっても変化するが、中間の電極板12bに対する印加電圧を主に変化させることにより、エミッタンス(すなわち集束度)の変化の制御がより容易となる。
【0016】
本実施例の四重極質量分析装置では、制御部19が四重極電圧印加回路18とレンズ電圧印加回路17の双方を制御する。四重極電圧は上記の通り、四重極質量フィルタ13を通過させるべき目的イオンの質量に応じて変化する。従って、制御部19はレンズ電圧印加回路17に対しても、通過目的イオンの質量に応じた制御信号を与え、レンズ12への印加電圧を変化させる。これにより、目的イオンの質量が変化し、そのエネルギが変化しても、同時にレンズ12に対する印加電圧の値が変化することにより、入射イオンのエミッタンスは常に四重極質量フィルタ13のアクセプタンスに適合する。
【0017】
本発明の一実施例を図3及び図4により説明する。上記実施例では図2に示すように入射光学系がZ軸に対して軸対称であったが、四重極質量フィルタ13のアクセプタンスは図10に示すように、X軸方向とY軸方向とで形状が異なる。そこで本実施例の四重極質量分析装置では、従来の四重極質量分析装置で入射イオン光学系12と四重極質量フィルタ13との間に設けていたノーズ電極22の内部の空間に第2入射イオン光学系24を付加し、これによりX軸方向とY軸方向のエミッタンスに差を設けている。
【0018】
第2入射イオン光学系24は図4に示すように、四重極25と二重アパーチャ26から成る。四重極25は四重極質量フィルタ13と同じく4本の電極棒25a〜25dをZ軸に関して回転対称に配置したものであるが、四重極質量フィルタ13とは異なり、直流電圧のみを印加する。すなわち、X軸方向の1対の電極棒25b及び25dには+Vの直流電圧を、Y軸方向の1対の電極棒25a及び25cにはそれとは逆極性で同じ大きさの−Vの直流電圧を印加する。ここにおけるVは正又は負の電圧であり、後述の通り、第1入射イオン光学系12の特性と四重極質量フィルタ13のアクセプタンスに応じて設定する。なお、図4に示す電圧+V0については後述する。
【0019】
二重アパーチャ26は、同一の開口26c及び26dを有する2枚のアパーチャ板26a及び26bから成る。開口26c及び26dはX軸及びY軸の双方に関して対称となっており、イオンの通過範囲をX軸方向及びY軸方向に関して空間的に制限すると共に、四重極25との間の距離により、イオンの運動方向の傾きX'及びY'についても制限する。通過範囲の制限及び運動方向の傾きの制限は1枚のアパーチャ板のみでも可能であるが、イオンビーム源は一般に空間的広がりを有する(これは、図10で示されるようにエミッタンスが一直線とはならないことから分かる)ため、アパーチャ板を2枚用いることにより通過範囲及び運動方向の制限をより確実にしている。
【0020】
本実施例の四重極質量分析装置では、第1入射イオン光学系12と第2入射イオン光学系24を次のように設定する。まず、図5に示すように、第1入射イオン光学系12の集束点を、四重極質量フィルタ13のX軸方向のアクセプタンスから得られる仮想イオン源(図7(a)又は(b)の集束点F)の位置FXとY軸方向のアクセプタンスから得られる仮想イオン源の位置FYとの中間点FCとなるように設定する。次に、この集束点FCが四重極質量フィルタ13のX軸方向の仮想イオン源FXの位置まで距離dXだけ移動するように、四重極25のX軸方向に配置された1対の電極棒25b及び25dに印加する直流電圧Vを設定する。図5の場合、集束点を遠方に移動させるためには、四重極25は第1入射イオン光学系12により集束されているイオンをX軸方向に関してやや発散させるように設定する必要がある。従って、例えばプラスイオンを扱う場合はX軸方向の1対の電極棒25b及び25dにはマイナスの電圧Vを与える。上記の通り、Y軸方向の1対の電極棒25a及び25cには逆方向の電圧−Vが印加されるため、四重極25を通過するイオンはY軸方向に関しては集束され、集束点は距離dYだけ手前に移動してFYと一致する。
【0021】
これにより、X−X'平面及びY−Y'平面において、エミッタンスの傾きは四重極質量フィルタのアクセプタンスの傾きに一致した。次に、上述のように2枚のアパーチャ板26a、26bによりイオンの通過範囲及び運動方向が制限されることにより、X−X'平面及びY−Y'平面におけるエミッタンスの最大範囲がアクセプタンスの最大範囲と一致する。これらにより、第1入射イオン光学系12と第2入射イオン光学系24とを合わせた入射イオン光学系のエミッタンスの形状は、X軸方向、Y軸方向とも四重極質量フィルタ13のアクセプタンスの形状と一致するようになる。
【0022】
ノーズ電極22は、四重極質量分析装置において従来より四重極質量フィルタ13の入射口に配置されており、バイアス電圧を印加することにより、四重極質量フィルタ13の端縁で形成される電場によってイオンが滞在する時間を短くするために設けられている。本実施例においては、第2入射イオン光学系24の全体(四重極25及びアパーチャ26)にこのバイアス電圧V0を印加することにより、同じ効果を得るようにしている。
【0023】
上記実施例では、イオンのX軸方向とY軸方向の集束性を独立に制御するために図4に示すような四重極25を用いたが、このような棒電極の代わりに、図6(a)に示すような2対の平板電極31、32、33、34を用いてもよい。この場合の電圧の印加方法は上記実施例と同様である。また、図6(b)に示すようなクロスドレンズを使用することもできる。クロスドレンズはX軸方向及びY軸方向の2軸に関して対称な開口を有する3枚以上のアパーチャレンズ41、42、43を互いに90°回転させて配置したものであり、この場合、アパーチャレンズ41、42、43はイオンの集束性をX軸方向及びY軸方向に独立に制御すると共に、その通過範囲及び運動方向を規制して、エミッタンスを四重極質量フィルタのアクセプタンスに適合させる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の四重極質量分析装置では、入射イオン光学系のエミッタンスをX軸方向、Y軸方向に別個に制御することができるため、両方向で異なった形状を有する四重極質量フィルタのアクセプタンスに常に合わせた状態としておくことができ、常に高感度の質量分析を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の四重極質量分析装置の概略構成図。
【図2】 第1実施例の入射イオン光学系の斜視図。
【図3】 第2実施例の四重極質量分析装置の主要部の構成図。
【図4】 第2実施例の四重極質量分析装置の第2入射イオン光学系の斜視図。
【図5】 第1入射イオン光学系と第2入射イオン光学系の関係を示す説明図。
【図6】 第2入射イオン光学系の別の例を示す斜視図。
【図7】 イオンが1点から発散する場合(a)と1点に集束する場合(b)のX−Y平面上の座標と運動方向の関係を示すグラフ。
【図8】 1点発散(Dv)及び1点集束(Cv)の場合のX−X'平面及びY−Y'平面上のアクセプタンス又はエミッタンスを示すグラフ。
【図9】 ICP/MSにおける入射イオンの質量とエネルギとの関係を示すグラフ。
【図10】 四重極質量フィルタのアクセプタンスを示すグラフ。
【図11】 エネルギ変化により従来の入射イオン光学系のエミッタンスが変化することを示すグラフ。
【符号の説明】
11…イオン源
12…入射イオン光学系
13…四重極質量フィルタ
14…デフレクタ
15…イオン検出器
17…レンズ電圧印加回路
18…四重極電圧印加回路
19…制御部
21…ノーズ電極
24…第2入射イオン光学系
25…四重極
26…二重アパーチャ

Claims (1)

  1. Z軸を中心軸とし、それに直交するX軸方向及びY軸方向に各1対の電極棒が配置された四重極から成り、直流電圧及び交流電圧を重畳した電圧を電極棒間に印加することにより所定の質量のイオンのみをZ軸方向に通過させる四重極質量フィルタを備えた四重極質量分析装置において、
    入射イオンに対してX軸方向及びY軸方向に異なった集束性又は発散性を与える入射イオン光学系を備え、該入射イオン光学系はZ軸に対して回転対称である四重極とZ軸の周りに開口を有するアパーチャ板とを組み合わせたものであり、前記四重極及び前記アパーチャ板を用いて、イオンの空間的な通過範囲及び運動方向の傾きをX軸方向及びY軸方向に関して制限することにより、前記入射イオン光学系のエミッタンスの形状を、X軸方向、Y軸方向ともに前記四重極質量フィルタのアクセプタンスの形状と一致させるようにしたことを特徴とする四重極質量分析装置。
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