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JP3708441B2 - 交換結合膜と前記交換結合膜を用いた磁気検出素子、ならびに前記交換結合膜の製造方法と前記磁気検出素子の製造方法 - Google Patents
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JP3708441B2 - 交換結合膜と前記交換結合膜を用いた磁気検出素子、ならびに前記交換結合膜の製造方法と前記磁気検出素子の製造方法 - Google Patents

交換結合膜と前記交換結合膜を用いた磁気検出素子、ならびに前記交換結合膜の製造方法と前記磁気検出素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性層および強磁性層とから成り、前記反強磁性層と強磁性層との界面にて発生する交換結合磁界により、前記強磁性層の磁化方向が一定の方向に固定される交換結合膜および前記交換結合膜を用いた磁気検出素子(スピンバルブ型薄膜素子、AMR素子など)に係り、特に今後の高記録密度化においても、従来に比べて適切に通電信頼性(耐エレクトロマイグレーション)の向上、抵抗変化率の向上などを図ることが可能な交換結合膜と前記交換結合膜を用いた磁気検出素子、ならびに前記交換結合膜の製造方法と前記磁気検出素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図11は従来におけるスピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面と平行な方向から切断した部分断面図である。
【0003】
図11に示す符号14は、例えばNiFeCrで形成されたシードレイヤであり、前記シードレイヤ14の上に反強磁性層30、固定磁性層31、非磁性導電層32、フリー磁性層33および保護層7が順次積層されている。
【0004】
この種のスピンバルブ型薄膜素子では、熱処理によって前記反強磁性層30と固定磁性層31との界面で交換結合磁界が発生し、前記固定磁性層31の磁化はハイト方向(図示Y方向)に固定される。
【0005】
図11では、前記シードレイヤ14から保護層7までの多層膜の両側にハードバイアス層5が形成され、前記ハードバイアス層5からのバイアス磁界により前記フリー磁性層33の磁化は、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。
【0006】
また図11に示すように前記ハードバイアス層5の上には重ねて電極層8が形成されている。前記電極層8からのセンス電流は、特に固定磁性層31、非磁性導電層32、およびフリー磁性層33の3層に流れればよいが、この形態では前記シードレイヤ14及び反強磁性層30にも分流する。
【0007】
図11に示すスピンバルブ型薄膜素子では、前記反強磁性層30の下にシードレイヤ14が形成されているが、前記シードレイヤ14を設けることで、前記シードレイヤ14上に形成された各層の[111]配向性は良好になり、また膜面方向(X−Y面方向)への結晶粒径が大きくなると考えられ、耐エレクトロマイグレーションの向上に代表される通電信頼性の向上、抵抗変化率(ΔR/R)の向上やフリー磁性層33の軟磁気特性の向上が期待された。
【0008】
前記シードレイヤ14上の各層の[111]配向性を良好にし、しかも膜面方向の結晶粒径を大きくするには、前記シードレイヤ14が面心立方構造(fcc構造)であり且つ前記シードレイヤ14表面の濡れ性(wettability)を良好にする必要性があった。濡れ性が良いと前記シードレイヤ14上に反強磁性層30をスパッタ成膜するとき、前記反強磁性層30を構成する反強磁性材料の各原子が前記シードレイヤ14上で凝集しにくくなり、前記反強磁性層30の膜面方向の配向性を最稠密面となる[111]面により強く配向させることが可能になるのである。
【0009】
前記濡れ性の向上には、シードレイヤ14に含まれるCrの組成比が多いほど好ましいと思われたが、前記Crの組成比を多くしすぎるとシードレイヤ14の結晶構造に、面心立方構造(fcc構造)の他に体心立方構造(bcc構造)が混在し始め、これによって前記シードレイヤ14上の各層の[111]配向性が低下してしまい、通電信頼性の低下、抵抗変化率の低下などを招いた。
【0010】
従来では、シードレイヤ14に含まれるCr組成比を40原子%以下にしており、これにより前記シードレイヤ14の結晶構造を面心立方構造に保っていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし今後の高記録密度化に伴い、スピンバルブ型薄膜素子の更なる小型化により、前記スピンバルブ型薄膜素子に流れるセンス電流密度が大きくなり、これによってエレクトロマイグレーションの発生、さらには抵抗値の増大による抵抗変化率の低下やノイズの発生等が問題となった。
【0012】
上記した問題を解決するには、シードレイヤ14表面の濡れ性の向上を図り、前記シードレイヤ14上の各層の[111]配向性をさらに良好にし、また膜面方向の結晶粒径を大きくして電気伝導性を向上させることが効果的であり、そのためには前記シードレイヤ14に含まれるCrの組成比を従来よりも多くする必要があったが、既に説明したように、Crの組成比を40原子%以上にすると、シードレイヤ14の結晶構造に、面心立方構造以外に体心立方構造(bcc構造)が混在してしまう。
【0013】
そしてシードレイヤ14に前記体心立方構造が混在することで、結局、前記シードレイヤ14上に積層される各層の[111]配向性の向上を図ることができず、また結晶粒径を大きくすることはできず、電気伝導性は低下してしまい、従来におけるシードレイヤ14では、今後の高記録密度化に対応可能なスピンバルブ型薄膜素子を製造することはできなかった。
【0014】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、例えば前記シードレイヤを多層化し、このとき組成比や膜厚を適切に調整することで、前記シードレイヤの結晶構造を面心立方構造に保ちながら従来よりも濡れ性を向上させることができ、通電信頼性および抵抗変化率の向上などを図ることが可能な交換結合膜と前記交換結合膜を用いた磁気検出素子、ならびに前記交換結合膜の製造方法と前記磁気検出素子の製造方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下から非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成されたシードレイヤ、反強磁性層、強磁性層の順に積層され、前記反強磁性層と強磁性層との界面で交換結合磁界が発生することで、前記強磁性層の磁化方向が一定方向にされる交換結合膜において、
前記シードレイヤは元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrを含有し、前記シードレイヤの前記反強磁性層との界面での前記Crの組成比は40原子%以上で70原子%以下であり、このCrの組成比は、前記シードレイヤの前記反強磁性層と反対側の面でのCrの組成比(原子%)は20原子%以上で40原子%より小さく
前記シードレイヤには、前記反強磁性層側に向かうにしたがって、前記Crの組成比(原子%)が増加する領域が存在し、
前記シードレイヤの結晶構造は前記反強磁性層との界面で面心立方構造(fcc構造)であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、上記のようにシードレイヤの前記反強磁性層との界面でのCrの組成比が40原子%以上である。本発明では、これにより前記シードレイヤ表面での濡れ性を従来よりも向上させることができる。
【0017】
ここで濡れ性について説明する。濡れ性は表面エネルギーが増大し、表面活性となることで向上し、前記濡れ性の向上には、シードレイヤのCr組成比を大きくすることが重要である。またシードレイヤを形成する際の基板表面の温度や基板とターゲット間の距離、前記シードレイヤを形成する際のAr圧、スパッタ速度なども重要な要素である。
【0018】
前記シードレイヤのCrの組成比が小さく、前記シードレイヤ表面の濡れ性が悪いと、図6に示すように前記シードレイヤ表面に飛来してきた各原子は、表面移動が不十分で凝集し核を形成しやすくなる。このような核が形成されているか否かは電子顕微鏡で調べることができる。
【0019】
前記核を生じ、各原子がいわゆる島状構造で堆積していくと、前記シードレイヤの上にスパッタ成膜される反強磁性層の膜面と平行方向の配向性は、最稠密面である[111]配向になり難い。
【0020】
一方、図7はシードレイヤのCr組成比が高く、前記シードレイヤ表面の濡れ性が良好な状態であり、図7では、前記シードレイヤ表面に飛来してきた各原子は表面移動が十分で凝集せず、かかる場合、前記シードレイヤの上にスパッタ成膜される反強磁性層の膜面と平行方向の配向性は、最稠密面である[111]配向になりやすい。
【0021】
本発明では、前記シードレイヤ表面の濡れ性が良好であることで、前記シードレイヤ上に形成される各層の膜面と平行方向の配向性を、最稠密面となる[111]面により強く配向させることが可能である。
【0022】
次に本発明では、前記シードレイヤの結晶構造は、反強磁性層との界面で面心立方構造(fcc構造)である。先に、シードレイヤのCrの組成比を40原子%以上にすると、面心立方構造以外に体心立方構造(bcc構造)が混在すると説明したが、本発明ではシードレイヤ表面でのCrの組成比が40原子%以上であっても結晶構造を面心立方構造のみで構成することができるのは、前記シードレイヤには、前記反強磁性層側に向かうにしたがって、前記Crの組成比が増加する領域が存在し、前記シードレイヤの前記反強磁性層と反対側の面でのCrの組成比が、前記反強磁性層との界面での前記Crの組成比よりも小さくなっているからである。
【0023】
このようないわゆる組成変調を起させるには後述する製造方法で説明するように、前記シードレイヤを上層と下層の積層構造で形成し、下層側のCrの組成比を、上層側のCrの組成比よりも小さくする。Crの組成比が小さくされた前記下層は、面心立方構造を良好に保つことができる。一方、前記下層の上に積層される上層は、Crの組成比が40原子%以上に大きくても、前記下層側の結晶構造に引きずられて面心立方構造になりやすく、Crの組成比が40原子%以上であっても結晶構造に体心立方構造が混在せず結晶構造を面心立方構造のみで構成することができるのである。ただし上層の膜厚を薄くすることが重要であり、例えばその膜厚は20Å以下に調整される。膜厚が薄いことで結晶構造は下地となる下層の結晶構造に引きずられ、またバルクの場合と同じような平衡状態にはなりにくく準安定状態になり、結晶構造を面心立方構造に適切に保つことが可能なのである。
【0024】
上記のように上層と下層とを積層した後、反強磁性層と強磁性層間に交換結合磁界を発生させるために熱処理を施すが、この熱処理によって前記上層と下層間が拡散する場合があり、これによって前記上層と下層とで構成されたシードレイヤは単一層のようになり、このとき前記シードレイヤを組成分析すると、前記シードレイヤには、前記反強磁性層側に向かうにしたがってCrの組成比(原子%)が増加する領域が存在し、前記シードレイヤの前記反強磁性層と反対側の面でのCrの組成比が、前記反強磁性層との界面での前記Crの組成比よりも小さくなっているのである。
【0025】
以上のように本発明では、前記シードレイヤの反強磁性層との界面でのCrの組成比は40原子%以上であるから濡れ性は従来よりも向上し、しかも前記界面での結晶構造は面心立方構造であるため、従来に比べて前記シードレイヤ上に積層される各層の膜面と平行方向の配向性を良好に[111]配向させることができると共に、膜面と平行な方向への結晶粒径を大きくすることができる。
【0026】
前記結晶粒径が大きくなることで抵抗値は低下し、これによりジュール熱を低下させることができる。また最稠密面である[111]面が膜面と平行な方向に優先配向することで、各層の層間で拡散が生じ難くなる。このような作用により耐エレクトロマイグレーションを向上させることができ、通電信頼性を従来よりも向上させることができる。
【0027】
また抵抗値が低下することで電気伝導性が良好になり、後述する磁気検出素子においては抵抗変化率(ΔR/R)や電気伝導度の変化量(ΔG)、フリー磁性層の軟磁気特性を従来よりも向上させることができる。またサーマルノイズの低下を図ることができる。
【0028】
本発明では、前記シードレイヤの前記反強磁性層との界面での前記Crの組成比は45原子%以上で60原子%以下であることが好ましい。
【0030】
また本発明では、前記シードレイヤはNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成されることが好ましい。
【0031】
また前記シードレイヤの組成式は(Ni100-XFeX)−Crで示され、組成比Xは、0原子%≦X≦70原子%であることが好ましい。より好ましくは、前記組成比Xは、0原子%≦X≦50原子%である。さらに好ましくは、前記組成比Xは、0原子%≦X≦30原子%である。
【0032】
また本発明では、前記シードレイヤの膜厚は、23Å以上で80Å以下であることが好ましく、より好ましくは前記シードレイヤの膜厚は、25Å以上で50Å以下である。
【0033】
次に本発明は、下から非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成されたシードレイヤ、反強磁性層、強磁性層の順に積層され、前記反強磁性層と強磁性層との界面で交換結合磁界が発生することで、前記強磁性層の磁化方向が一定方向にされる交換結合膜において、
前記シードレイヤは上層と下層の積層構造で形成され、前記上層及び下層はそれぞれ、元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrとを含有した非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成され、
前記シードレイヤのうち前記上層のCrの組成比は40原子%以上で70原子%以下であり、前記反強磁性層との界面での結晶構造は、面心立方構造(fcc構造)であり、
前記下層のCrの組成比は20原子%以上で40原子%より小さく、
前記上層の膜厚は、前記下層の膜厚よりも小さいことを特徴とするものである。
【0034】
この発明と上記した発明との違いは、この発明では前記シードレイヤが2層構造であるのに対し、上記した発明では、前記シードレイヤが単一層である点のみであり、得られる効果は全く同じである。
【0035】
すなわちこの発明では、シードレイヤを構成する下層は、上層よりもCr組成比が低く、適切に面心立方構造を保ち、シードレイヤを構成する上層は、Crの組成比が40原子%以上であり、且つ結晶構造が面心立方構造であるため、前記シードレイヤ上に積層される各層の膜面と平行方向の配向性を良好に[111]配向にでき、また膜面と平行な方向の結晶粒径を大きくすることができる。
【0036】
従って、耐エレクトロマイグレーションの向上を図ることができ通電信頼性を向上させることができ、また後述する磁気検出素子では抵抗変化率(ΔR/R)や電気伝導度の変化率(ΔG)、フリー磁性層の軟磁気特性などを向上させることができる。
【0037】
本発明では、前記上層の前記Crの組成比は45原子%以上で60原子%以下であることが好ましい。
【0039】
また本発明では、前記上層及び下層はそれぞれ、FeNiCr合金あるいはNiCr合金で形成されることが好ましい。
【0040】
また本発明では、前記上層及び下層の組成式は(Ni100-XFeX)−Crで示され、組成比Xは、0原子%≦X≦70原子%であることが好ましい。より好ましくは、前記組成比Xは、0原子%≦X≦50原子%である。さらに好ましくは、前記組成比Xは、0原子%≦X≦30原子%である。
【0041】
た本発明では、前記上層の膜厚は3Å以上で20Å以下であることが好ましく、より好ましくは前記上層の膜厚は5Å以上で10Å以下である。
【0042】
また本発明では、前記下層の膜厚は20Å以上で60Å以下であることが好ましく、より好ましくは、前記下層の膜厚は20Å以上で40Å以下である。
【0043】
また本発明では、前記上層と下層との間には、1層以上の中間層が形成されても良く、かかる場合、前記中間層は元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrを含有した非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成され、前記Crの組成比は、上層のCrの組成比よりも小さいことが好ましい。
【0044】
また本発明では、前記シードレイヤの下には、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上の元素で形成された下地層が形成されていることが好ましい。これにより前記シードレイヤの結晶構造を適切に面心立方構造にすることができる。
【0045】
また前記シードレイヤはスパッタ成膜されることが好ましい。これにより前記シードレイヤはバルクのときの平衡状態と同じにならず、Crの組成比が40原子%以上であっても準安定状態となって結晶構造を面心立方構造にしやすくできる。
【0051】
また本発明では、前記反強磁性層は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成されることが好ましい。
【0052】
あるいは本発明では、前記反強磁性層は、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Ir,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成されていてもよい。
【0053】
上記の場合、本発明では、前記X―Mn―X′合金は、元素XとMnとで構成される空間格子の隙間に元素X′が侵入した侵入型固溶体であり、あるいは、元素XとMnとで構成される結晶格子の格子点の一部が、元素X′に置換された置換型固溶体であることが好ましい。
【0054】
また本発明では、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、45(原子%)以上60(原子%)以下であることが好ましい。
【0055】
また本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、およびフリー磁性層の順に積層され、前記フリー磁性層の磁化が前記固定磁性層の磁化と交叉する方向に揃えられた磁気検出素子において、
前記シードレイヤ、反強磁性層及び固定磁性層が上記に記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とするものである。
【0056】
また本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性のエクスチェンジバイアス層、フリー磁性層、非磁性中間層、固定磁性層、および反強磁性層の順に積層され、前記フリー磁性層の磁化が前記固定磁性層の磁化と交叉する方向に揃えられた磁気検出素子において、
前記シードレイヤ、エクスチェンジバイアス層及びフリー磁性層が上記に記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とするものである。
【0057】
また本発明は、フリー磁性層の上下に積層された非磁性中間層と、一方の前記非磁性中間層の上および他方の非磁性中間層の下に位置する固定磁性層と、一方の前記固定磁性層の上および他方の固定磁性層の下に位置する反強磁性層とを有し、前記フリー磁性層よりも下側に形成された反強磁性層の下側にはシードレイヤが形成され、前記フリー磁性層の磁化が前記固定磁性層の磁化と交叉する方向に揃えられた磁気検出素子において、
前記シードレイヤ、その上に接合された反強磁性層及び固定磁性層が上記に記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とするものである。
【0058】
また本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性のエクスチェンジバイアス層、磁気抵抗層、非磁性層、および軟磁性層の順で積層された磁気検出素子において、
前記シードレイヤ、エクスチェンジバイアス層及び磁気抵抗層が上記に記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とするものである。
【0059】
上記のように交換結合膜を各磁気検出素子に使用することで、耐エレクトロマイグレーションを向上させることができ、通電信頼性を従来よりも向上させることができる。
【0060】
また抵抗変化率(ΔR/R)を従来よりも向上させることができる。またサーマルノイズの低下を図ることができる。
【0061】
さらにフリー磁性層や磁気抵抗層の保磁力Hcの低下を図ることができる。これにより前記保磁力Hcと比例関係にある膜面内の結晶磁気異方性エネルギーKの低下を図ることができ、前記フリー磁性層の磁化を、外部磁界に対して感度良く回転させることが可能である。
【0062】
従って本発明では、今後の高記録密度化に伴い、磁気検出素子がさらに小さくなっても、従来より上記効果を適切に得ることができ、高記録密度化に適切に対応可能な磁気検出素子の製造を図ることが可能である。
【0063】
また、本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性層、および強磁性層の順に積層し、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界を発生させて、前記強磁性層の磁化方向を一定方向に向ける交換結合膜の製造方法において、
(A)Crの組成比が20原子%以上で40原子%より小さいNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成された前記シードレイヤの下層を20Å以上で60Å以下の膜厚でスパッタ成膜する工程と、
(B)前記下層の上に、前記下層よりもCrの組成比が大きく、且つ前記Crの組成比が40原子%以上で70原子%以下となるNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成された前記シードレイヤの上層を3Å以上で20Å以下の膜厚でスパッタ成膜する工程と、
(C)前記シードレイヤの上に反強磁性層、強磁性層を順次積層し、熱処理を施して、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界を発生させ、磁場方向に前記強磁性層を磁化する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0064】
上記(A)工程では、まずCrの組成比が20原子%以上で40原子%より小さいNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成されたシードレイヤの下層を20Å以上で60Å以下の膜厚でスパッタ成膜する。
【0065】
Crの組成比を20原子%以上で40原子%より小さくすれば、前記下層の結晶構造を適切に面心立方構造(fcc構造)にすることができる。また前記下層の膜厚をある程度確保することで、前記下層の結晶構造を適切に面心立方構造にすることができる。ただしあまり膜厚が厚くなりすぎると、前記下層に流れるセンス電流の分流ロスが大きくなり、また結晶構造に体心立方構造が混入しやくなることから好ましくない。上記の観点から本発明では前記下層の膜厚を20Å以上で60Å以下に設定している。また前記下層の下にTaなどの下地層を敷くことで前記下層の結晶構造をより適切に面心立方構造のみで構成できるとともに、{111}面の配向度を高めることができる。
【0066】
次に上記(B)工程では、前記下層の上に、前記下層よりもCrの組成比が大きく、且つ前記Crの組成比が40原子%以上で70原子%以下となるNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成された前記シードレイヤの上層を3Å以上で20Å以下の膜厚でスパッタ成膜する。
【0067】
Crの組成比を40原子%以上で70原子%以下に調整することで、前記上層の表面の濡れ性を従来よりも向上させることが可能である。
【0068】
しかも本発明では、前記上層の膜厚を3Å以上で20Å以下に非常に薄くしている。これにより前記上層の結晶構造は前記下層の結晶構造に引きずられる。また前記上層をスパッタ成膜することで、バルクの場合と同様な平衡状態にはなり難く準安定状態になり、Crの組成比を40原子%以上にしても前記上層の結晶構造を面心立方構造にすることが可能になるのである。
【0069】
次に上記(C)工程では、前記上層の上に反強磁性層及び強磁性層をスパッタ成膜する。上記のようにシードレイヤを構成する上層の表面は従来に比べて濡れ性が良く、しかも面心立方構造になっているから、前記シードレイヤの上に形成される反強磁性層及び強磁性層の膜面と平行方向の配向性を、従来に比べて最稠密面である[111]配向に強く配向でき、しかも膜面と平行な方向の結晶粒径を大きくすることができる。
【0070】
このように本発明では、容易な製造方法で確実にシードレイヤ表面の濡れ性を従来よりも向上させることができ、しかも前記シードレイヤの結晶構造を面心立方構造に保つことができるのである。
【0071】
また本発明では、前記上層のCrの組成比を45原子%以上で60原子%以下とすることが好ましい。
【0072】
また本発明では、前記上層の膜厚を5Å以上で10Å以下にすることが好ましい。
【0074】
また本発明では、前記上層及び下層の組成式は(Ni100-XFeX)−Crで示され、組成比Xを、0原子%≦X≦70原子%とすることが好ましい。またより好ましくは、前記組成比Xを、0原子%≦X≦50原子%とすることである。さらに好ましくは、前記組成比Xを、0原子%≦X≦30原子%とすることである。
【0076】
また本発明では、前記下層の膜厚を20Å以上で40Å以下にすることが好ましい。
【0077】
また本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性層、および強磁性層の順に積層し、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界を発生させて、前記強磁性層の磁化方向を一定方向に向ける交換結合膜の製造方法において、
(E)前記シードレイヤをNiFeCr合金あるいはNiCr合金で23Å以上で80Å以下の膜厚でスパッタ成膜し、このとき下面でのCr組成比を20原子%以上で40原子%より小さくして前記下面から上面にかけて徐々にCrの組成比が大きくなるようにスパッタ成膜し、さらに前記上面でのCrの組成比を40原子%以上で70原子%以下とする工程と、
(F)前記シードレイヤの上に反強磁性層、強磁性層を順次積層し、熱処理を施して、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界を発生させ、磁場方向に前記強磁性層を磁化する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0078】
この交換結合膜の製造方法では、上記した製造方法と異なり、シードレイヤを2層構造にせず、シードレイヤを単一層でスパッタ成膜する。このとき、シードレイヤの下面から上面にかけて徐々にCrの組成比が大きくなるようにスパッタ成膜するが、その方法は例えばNiFeターゲットとCrターゲットを用意し、Crターゲットに供給される電力を膜厚が大きくなるにつれて相対的に徐々に大きくしていくことで達成することができる。
【0079】
この発明においても、容易な製造方法で確実にシードレイヤ表面の濡れ性を従来よりも向上させることができ、しかも前記シードレイヤの結晶構造を面心立方構造に保つことができるのである。
【0080】
また本発明では、前記シードレイヤの組成式は(Ni100-XFeX)−Crで示され、組成比Xを、0原子%≦X≦70原子%とすることが好ましい。より好ましくは、前記組成比Xを、0原子%≦X≦50原子%とすることである。さらに好ましくは、前記組成比Xを、0原子%≦X≦30原子%とすることである。
【0081】
なお本発明では、前記シードレイヤを25Å以上で50Å以下の膜厚でスパッタ成膜することが好ましい。
【0082】
また本発明では前記シードレイヤの下に、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上の元素で形成された下地層を形成することが好ましい。これにより前記下地層上に形成されるシードレイヤの結晶構造をより確実に面心立方構造にすることができるとともに[111]面の優先配向度を高めることができる。
【0083】
また本発明では、前記反強磁性層を、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料でスパッタ成膜することが好ましい。
【0084】
あるいは本発明では、前記反強磁性層を、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Ir,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)でスパッタ成膜してもよい。
【0085】
また本発明では、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比を、45(原子%)以上60(原子%)以下とすることが好ましい。
【0086】
また本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、およびフリー磁性層の順に積層して成る磁気検出素子の製造方法において、
前記シードレイヤ、反強磁性層及び固定磁性層を上記に記載された交換結合膜により形成することを特徴とするものである。
【0087】
また本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性のエクスチェンジバイアス層、フリー磁性層、非磁性中間層、固定磁性層、および反強磁性層の順に積層する磁気検出素子の製造方法において、
前記シードレイヤ、エクスチェンジバイアス層及びフリー磁性層を上記に記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とするものである。
【0088】
また本発明は、フリー磁性層の上下に積層された非磁性中間層と、一方の前記非磁性中間層の上および他方の非磁性中間層の下に位置する固定磁性層と、一方の前記固定磁性層の上および他方の固定磁性層の下に位置する反強磁性層とを有し、前記フリー磁性層よりも下側に形成された反強磁性層の下側にシードレイヤを形成して成る磁気検出素子の製造方法において、
前記シードレイヤ、その上に接合する反強磁性層及び固定磁性層を上記に記載された交換結合膜により形成することを特徴とするものである。
【0089】
また本発明は、下からシードレイヤ、反強磁性のエクスチェンジバイアス層、磁気抵抗層、非磁性層、および軟磁性層の順で積層した磁気検出素子の製造方法において、
前記シードレイヤ、エクスチェンジバイアス層及び磁気抵抗層を上記に記載された交換結合膜により形成することを特徴とするものである。
【0090】
この磁気検出素子の製造方法では、容易な製造方法で確実にシードレイヤ表面の濡れ性を従来よりも向上させることができ、しかも前記シードレイヤの結晶構造を面心立方構造に保つことができる。
【0091】
したがって前記シードレイヤ上に形成される各層の膜面と平行方向の結晶配向性を最稠密面である[111]配向に良好に配向でき、しかも膜面と平行な方向への結晶粒径を大きくすることができる。
【0092】
よって本発明では、耐エレクトロマイグレーションに代表される通電信頼性、抵抗変化率、およびフリー磁性層の軟磁気特性などの向上を適切に図ることが可能な高記録密度化に優れた磁気検出素子を容易に製造することが可能である。
【0093】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1実施形態の磁気検出素子(シングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子)の全体構造を記録媒体との対向面側から見た断面図である。なお、図1ではX方向に延びる素子の中央部分のみを破断して示している。
【0094】
このシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子は、ハードディスク装置に設けられた浮上式スライダのトレーリング側端部などに設けられて、ハードディスクなどの記録磁界を検出するものである。なお、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向はZ方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界の方向はY方向である。
【0095】
図1の最も下に形成されているのはTa,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上の元素などの非磁性材料で形成された下地層6である。この下地層6の上に、シードレイヤ22、反強磁性層4、固定磁性層3、非磁性中間層2、フリー磁性層1が積層されている。
【0096】
前記シードレイヤ22の上に形成された反強磁性層4は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成されることが好ましい。
【0097】
これら白金族元素を用いたX−Mn合金は、耐食性に優れ、またブロッキング温度も高く、さらに交換結合磁界(Hex)を大きくできるなど反強磁性材料として優れた特性を有している。特に白金族元素のうちPtを用いることが好ましく、例えば二元系で形成されたPtMn合金を使用することができる。
【0098】
また本発明では、前記反強磁性層4は、元素Xと元素X′(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成されてもよい。
【0099】
なお前記元素X′には、元素XとMnとで構成される空間格子の隙間に侵入し、または元素XとMnとで構成される結晶格子の格子点の一部と置換する元素を用いることが好ましい。ここで固溶体とは、広い範囲にわたって、均一に成分が混ざり合った固体のことを指している。
【0100】
侵入型固溶体あるいは置換型固溶体とすることで、前記X−Mn合金膜の格子定数に比べて、前記X−Mn−X′合金の格子定数を大きくすることができる。これによって反強磁性層4の格子定数と固定磁性層3の格子定数との差を広げることができ、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面構造を非整合状態にしやすくできる。ここで非整合状態とは、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面で前記反強磁性層4を構成する原子と前記固定磁性層3を構成する原子とが一対一に対応しない状態である。
【0101】
また特に置換型で固溶する元素X′を使用する場合は、前記元素X′の組成比が大きくなりすぎると、反強磁性としての特性が低下し、固定磁性層3との界面で発生する交換結合磁界が小さくなってしまう。特に本発明では、侵入型で固溶し、不活性ガスの希ガス元素(Ne,Ar,Kr,Xeのうち1種または2種以上)を元素X′として使用することが好ましいとしている。希ガス元素は不活性ガスなので、希ガス元素が、膜中に含有されても、反強磁性特性に大きく影響を与えることがなく、さらに、Arなどは、スパッタガスとして従来からスパッタ装置内に導入されるガスであり、ガス圧を適正に調節するのみで、容易に、膜中にArを侵入させることができる。
【0102】
なお、元素X′にガス系の元素を使用した場合には、膜中に多量の元素X′を含有することは困難であるが、希ガスの場合においては、膜中に微量侵入させるだけで、熱処理によって発生する交換結合磁界を、飛躍的に大きくできる。
【0103】
なお本発明では、好ましい前記元素X′の組成範囲は、原子%で0.2から10であり、より好ましくは、原子%で、0.5から5である。また本発明では前記元素XはPtであることが好ましく、よってPt−Mn−X′合金を使用することが好ましい。
【0104】
また本発明では、反強磁性層4の元素Xあるいは元素X+X′の原子%を45(原子%)以上で60(原子%)以下に設定することが好ましい。より好ましくは49(原子%)以上で56.5(原子%)以下である。これによって成膜段階において、固定磁性層3との界面が非整合状態にされ、しかも前記反強磁性層4は熱処理によって適切な規則変態を起すものと推測される。
【0105】
前記反強磁性層4の上に形成されている固定磁性層3は3層構造となっている。
【0106】
前記固定磁性層3は、Co膜11とRu膜12とCo膜13とで形成され、前記反強磁性層4との界面での交換結合磁界及びRu膜12を介した反強磁性的交換結合磁界(RKKY相互作用)により前記Co膜11とCo膜13の磁化方向は互いに反平行状態にされる。これは、いわゆるフェリ磁性結合状態と呼ばれ、この構成により固定磁性層3の磁化を安定した状態にでき、また前記固定磁性層3と反強磁性層4との界面で発生する交換結合磁界を見かけ上大きくすることができる。
【0107】
なお前記Co膜11は例えば20Å程度で形成され、Ru膜12は8Å程度で形成され、Co膜13は15Å程度で形成される。
【0108】
なお前記固定磁性層3は3層膜で形成されなくても良く、例えば単層膜で形成されてもよい。また各層11,12,13は、上記した磁性材料以外の材料によって形成してもよい。例えば層11及び層13には、NiFe合金、CoFe合金、あるいはCoFeNi合金などを選択することができる。また層12には、Rh、Ir、Cr、Re、Cuなどを選択することができる。
【0109】
前記固定磁性層3の上に形成された非磁性中間層2は、例えばCuで形成されている。なお本発明における磁気検出素子が、トンネル効果の原理を用いたトンネル型磁気抵抗効果素子(TMR素子)の場合、前記非磁性中間層2は、例えばAl23等の絶縁材料で形成される。
【0110】
さらに前記非磁性中間層2の上には2層膜で形成されたフリー磁性層1が形成される。
【0111】
前記フリー磁性層1は、NiFe合金膜9とCo膜10の2層で形成される。図1に示すように前記Co膜10を非磁性中間層2と接する側に形成することにより、前記非磁性中間層2との界面での金属元素等の拡散を防止し、ΔR/R(抵抗変化率)を大きくすることができる。
【0112】
なお前記NiFe合金膜9は、例えば前記Niを80(原子%)、Feを20(原子%)として形成する。また前記NiFe合金膜9の膜厚を例えば45Å程度、Co膜を5Å程度で形成する。また前記Co膜10に代えて、CoFe合金、CoFeNi合金などを用いてもよい。
【0113】
前記フリー磁性層1の上には、金属材料あるいは非磁性金属のCu,Au,Agからなるバックド層15が形成されている。例えば前記バックド層の膜厚は12〜20Å程度で形成される。
【0114】
前記バックド層15の上には、保護層7が形成されている。前記保護層7は、Taなどから成りその表面が酸化された酸化層が形成されていることが好ましい。
【0115】
前記バックド層15が形成されることによって、磁気抵抗効果に寄与する+スピン(上向きスピン:up spin)の電子における平均自由行程(meanfree path)を延ばし、いわゆるスピンフィルター効果(spin filter effect)によりスピンバルブ型磁気素子において、大きな抵抗変化率が得られ、高記録密度化に対応できるものとなる。
【0116】
図1に示す実施形態では、前記下地層6から保護層7までの積層膜の両側にはハードバイアス層5及び電極層8が形成されている。前記ハードバイアス層5からのバイアス磁界によってフリー磁性層1の磁化はトラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。
【0117】
前記ハードバイアス層5,5は、例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されており、電極層8,8は、α−Ta、Au、Cr、Cu(銅)やW(タングステン)などで形成されている。なお上記したトンネル型磁気抵抗効果素子の場合、前記電極層8,8は、フリー磁性層1の上側と、反強磁性層4の下側にそれぞれ形成されることになる。
【0118】
図1に示すスピンバルブ型薄膜素子では、下地層6から保護層7を積層後、熱処理を施し、これによって前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面に交換結合磁界を発生させる。このとき磁場を図示Y方向に向けることで、前記固定磁性層3の磁化は図示Y方向に向けられ固定される。なお図1に示す実施形態では前記固定磁性層3はフェリ構造であるため、層11及び層13のどちらかが図示Y方向に磁化され、他方は図示Y方向と逆方向に磁化される。
【0119】
次に図1に示す実施形態では前記反強磁性層4の下にシードレイヤ22が形成されているが、本発明では前記シードレイヤ22は元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrを含有した非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成される。具体的には前記シードレイヤ22はNiCr合金かFeNiCr合金で形成されることが好ましい。
【0120】
また本発明では、前記シードレイヤ22の組成式は(Ni100-XFeX)−Crで示され、組成比Xは、0原子%≦X≦70原子%であることが好ましい。より好ましくは、前記組成比Xは、0原子%≦X≦50原子%である。さらに好ましくは、前記組成比Xは、0原子%≦X≦30原子%である。Fe量が多くなりすぎると、前記シードレイヤ22が体心立方構造となりやすいため、上記の組成比を有することが好ましい。その他に上記組成であると反強磁性層4の結晶配向性を高め、結晶粒径、導電変化量、抵抗変化率の増大を期待することができる。なお最も好ましいのは組成比Xが20原子%である。
【0121】
また本発明における前記シードレイヤ22の前記反強磁性層4との界面(表面)での前記Crの組成比は40原子%以上である。従来では前記シードレイヤのCrの組成比は40原子%以下であったが、本発明では、前記反強磁性層4との界面における前記Crの組成比を40原子%以上に設定することで、前記界面での表面エネルギーを増大させ界面活性状態にでき、いわゆる濡れ性(wettability)を従来に比べて向上させることができる。
【0122】
しかも本発明では前記シードレイヤ22の結晶構造は前記反強磁性層4との界面で面心立方構造(fcc構造)である。
【0123】
既に図7で説明したように前記濡れ性の向上により、前記シードレイヤ22上に反強磁性層4をスパッタ成膜したとき、前記反強磁性層4を構成する各原子が前記界面上で十分な界面移動を起すことができ、しかも前記シードレイヤ22表面が面心立方構造であることから、前記反強磁性層4の膜面と平行な方向(X−Y面と平行)の結晶配向を、最稠密面である[111]配向に強く配向させることができる。
【0124】
また前記反強磁性層4が[111]配向することで、その上に形成される各層の膜面と平行な方向(図示X方向)の結晶配向を、最稠密面である[111]配向に配向させることができる。
【0125】
また本発明では、前記シードレイヤ22表面の濡れ性が良好であり、且つ面心立方構造であることで、前記シードレイヤ22上に形成される各層には、前記各層を貫くほどの大きな結晶粒が形成され、前記結晶粒の結晶粒径は膜面と平行な方向(X−Y面と平行な方向)にも大きくなる。本発明では膜面と平行な方向における前記結晶粒径は、100Å以上であることが好ましく、より好ましくは150Å以上である。これにより電気伝導性を良好にできる。
【0126】
ところで本発明では、前記シードレイヤ22の反強磁性層4との界面でのCrの組成比は40原子%以上で、しかも面心立方構造となっているが、このような表面状態にするためには、前記シードレイヤ22の下側(すなわち前記反強磁性層4から遠ざかる側)のCrの組成比を、前記シードレイヤ22表面のCr組成比よりも小さくして、前記シードレイヤ22の下側がしっかりと面心立方構造を保っている必要がある。このように前記シードレイヤ22の下側がしっかりと面心立方構造を保っていると、前記シードレイヤ22表面のCrの組成比がたとえ40原子%以上となっても体心立方構造(bcc構造)が混在せず、前記表面での結晶構造を面心立方構造のみで構成することができるのである。
【0127】
このため本発明におけるシードレイヤ22を組成分析すると、前記シードレイヤ22には組成変調が起きている。すなわち本発明では前記シードレイヤ22には前記反強磁性層4側に向かうにしたがって前記Crの組成比が増加する領域が存在し、さらに前記シードレイヤ22表面での前記Crの組成比は、前記表面と反対側の面(下面)でのCrの組成比よりも大きくなっているのである。
【0128】
上記のようなシードレイヤ22の表面状態、及び組成変調を起させるには製造方法を工夫する必要性がある。以下に前記シードレイヤ22の製造方法の代表例について図9を参照しながら説明する。図9は下地層6から保護層7までの各層を記録媒体との対向面側から見た模式図である。
【0129】
図9に示すように基板25上に前記下地層6を形成する。なお前記下地層6は、前記Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上の元素で形成されていることが好ましい。下地層6の形成により、その上に形成されるシードレイヤ22の結晶構造を面心立方構造にしやすくできるとともにシードレイヤ22の[111]面の優先配向度を高めることができる。
【0130】
次に前記下地層6上にシードレイヤ22としてまず下層23をスパッタ成膜する。
【0131】
このとき前記下層23をCrの組成比が20原子%以上で40原子%より小さいNiFeCr合金あるいはNiCr合金でスパッタ成膜することが好ましい。また前記下層23の膜厚を20Å以上で60Å以下で形成する。
【0132】
前記下層23のCrの組成比を20原子%以上で40原子%より小さくすることで、前記下層23の結晶構造を面心立方構造(fcc構造)のみで構成することができる。また前記下層23の膜厚はある程度厚くないと、前記下層23の結晶構造を適切に面心立方構造にして{111}配向させることはできないため前記下層23の膜厚を20Å以上に設定したが、あまり膜厚が厚すぎると、前記下層23に流れるセンス電流量が多くなり、センス電流の分流ロスが大きくなる。そこで本発明では、前記下層23の膜厚の上限を60Å以下とした。これによって前記下層23の結晶構造を面心立方構造のみで構成することができる。
【0133】
またこの製造方法のようにTaなどで形成された下地層6を敷いて、その上に前記下層23を形成することで前記下層23の結晶構造を面心立方構造のみで構成しやすくできる。
【0135】
また前記下層23の膜厚を20Å以上で40Å以下にすることが好ましい。これにより前記下層23の結晶構造をより確実に面心立方構造にすることができると同時に、センス電流の分流ロスをより適切に低減させることができる。
【0137】
なお前記下層23のスパッタ成膜時における基板25の温度を20〜100℃とし、また基板25とターゲット間の距離を40〜80mmとし、またスパッタ成膜時に導入されるArガスの圧力を0.5〜3mTorr(0.067〜0.4Pa)とすることが好ましい。これにより前記下層23の結晶構造をより適切に面心立方構造にできる。
【0138】
次に前記下層23の上に、前記下層23よりもCrの組成比が大きく、且つ前記Crの組成比が40原子%以上で70原子%以下となるFeNiCr合金あるいはNiCr合金で形成された上層24をスパッタ成膜する。また前記上層24の膜厚を3Å以上で20Å以下に調整する。
【0139】
前記上層24の膜厚は下層23に比べて3Å以上20Å以下と非常に薄いことがわかる。このように前記上層24の膜厚が薄いと前記上層24の結晶構造は前記下層23側の結晶構造に引きずられて前記下層23と同じ結晶構造になりやすい。またバルクのときはCrの組成比を40原子%以上とすると結晶構造に体心立方構造が混在してくることが知られているが、本発明では前記上層24をスパッタ成膜しているため、特に前記上層24を薄く成膜したときは、前記バルクのときの平衡状態と同じにはならず準安定状態になりやすい。
【0140】
上記した作用が働くことで、前記上層24はCrの組成比が40原子%以上と高い含有量であっても前記上層24に体心立方構造(bcc構造)が混在せず、面心立方構造のみで構成されるのである。
【0141】
また本発明では前記上層24のCrの組成比を45原子%以上で60原子%以下にすることが好ましい。これにより前記上層24の表面の濡れ性をより適切に向上させることができる。
【0142】
また本発明では、前記下層23及び上層24の組成式は(Ni100-XFeX)−Crで示され、組成比Xを、0原子%≦X≦70原子%とすることが好ましい。より好ましくは、前記組成比Xを、0原子%≦X≦50原子%とすることである。さらに好ましくは、前記組成比Xを、0原子%≦X≦30原子%とすることである。Fe量が多くなりすぎると、前記下層23及び上層24が体心立方構造となりやすいため、上記の組成比を有することが好ましい。その他に上記組成であると反強磁性層4の結晶配向性を高め、結晶粒径、導電変化量、抵抗変化率の増大を期待することができる。なお最も好ましいのは組成比Xが20原子%である。
【0143】
また本発明では、前記上層24の膜厚を5Å以上で10Å以下にすることが好ましい。これにより、より確実に前記上層24の結晶構造を面心立方構造にすることができる。
【0144】
なお前記上層24のスパッタ成膜時における基板25の温度を20〜100℃とし、また基板25とターゲット間の距離を40〜80nmとし、またスパッタ成膜時に導入されるArガスの圧力を0.5〜3mTorr(0.067〜0.4Pa)とすることが好ましい。これにより前記上層24表面の濡れ性を向上させることができ、また結晶構造を面心立方構造にしやすくできる。
【0145】
次に前記上層24の上に反強磁性層4をスパッタ成膜する。
本発明では、前記反強磁性層4を、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料でスパッタ成膜することが好ましい。
【0146】
また本発明では前記反強磁性層4を、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Ir,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)でスパッタ成膜してもよい。
【0147】
また本発明では、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比を、45(原子%)以上60(原子%)以下とすることが好ましい。
【0148】
さらに前記反強磁性層4の上に固定磁性層3、非磁性中間層2、フリー磁性層1、バックド層15及び保護層7を成膜する。
【0149】
本発明では上記したように、前記上層24の表面はCrの組成比が40原子%以上に高いため濡れ性が良好で、しかも面心立方構造であるため前記反強磁性層4の膜面と平行方向の結晶配向を良好に[111]配向させることができる。また前記反強磁性層4が[111]配向することで、その上に成膜される各層の膜面と平行方向の結晶配向を良好に[111]配向させることができる。
【0150】
次に熱処理を施す。反強磁性層4は上記したX−Mn合金やX−Mn−X′合金で形成されることが好ましいが、これら反強磁性材料を使用する場合には、熱処理をしないと前記固定磁性層3との界面で交換結合磁界を発生しない。したがって本発明では熱処理を施すことで前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面で交換結合磁界を発生させることができる。またこのとき図示Y方向に磁場をかけることで前記固定磁性層3の磁化を図示Y方向に向け固定することができる。
【0151】
また前記熱処理によって、シードレイヤ22上には、前記シードレイヤ22上に形成された各層を貫くほどの結晶粒が成長し、特に本発明では前記結晶粒の膜面と平行方向における結晶粒径の大きさを100Å以上に大きくすることができる。
【0152】
また前記熱処理によって、前記下層23と上層24との界面では拡散が生じるため前記下層23と上層24との界面の存在が熱処理後には判別できなくなる場合があり、前記シードレイヤ22はあたかも単一層で形成された状態になる。
【0153】
このように熱処理によって前記下層23と上層24との界面で拡散が生じた結果、熱処理後にシードレイヤ22の組成分析を行うと、前記界面であった付近に組成変調が見られ、従って前記シードレイヤ22には、前記反強磁性層4側に向かうにしたがってCrの組成比が増加する領域が存在するのである。また図1に示す前記シードレイヤ22表面は図9の製造工程における上層24の上面に相当し、図1に示す前記シードレイヤ22の下面は図9の製造工程における下層23の下面に相当するため、前記シードレイヤ22上面のCrの組成比が前記シードレイヤ22の下面のCrの組成比よりも大きくなるのである。
【0154】
あるいは本発明では以下の方法で前記シードレイヤ22を形成することも可能である。製造方法については主として図10を参照しながら説明する。図10は下地層6から保護層7までの積層膜を記録媒体との対向面側から見た模式図である。
【0155】
図10では基板25上に下地層6をスパッタ成膜し、さらに前記下地層6上にシードレイヤ22をスパッタ成膜する。前記シードレイヤ22をNiFeCr合金あるいはNiCr合金でスパッタ成膜する。
【0156】
本発明では、前記シードレイヤ22の組成式は(Ni100-XFeX)−Crで示され、組成比Xを、0原子%≦X≦70原子%とすることが好ましい。またより好ましくは、前記組成比Xを、0原子%≦X≦50原子%とする。あるいはさらに好ましくは、前記組成比Xを、0原子%≦X≦30原子%とする。
【0157】
ここで本発明ではスパッタ成膜の際に使用されるターゲットを例えば2つ用意する。前記シードレイヤ22をNiFeCr合金で形成するとき、例えば一方のターゲットをNiFe合金とし、他方のターゲットをCrとする。
【0158】
まず本発明では、前記下地層6上から前記シードレイヤ22を成膜する初期段階において、前記シードレイヤ22の下面でのCrの組成比が20原子%以上で40原子%より小さくなるように、前記2つのターゲットの供給電力を調整する。そして前記シードレイヤ22の膜厚が厚くなるにつれて前記Crターゲットの供給電力を上げていき、前記Crが徐々に多くスパッタされるようにする。そして前記シードレイヤ22を23Å以上で80Å以下の範囲内となるまで成膜し、最終段階において、前記シードレイヤ22表面のCrの組成比が40原子%以上で70原子%以下となるように、前記2つのターゲットの供給電力を調整するのである。
【0159】
上記方法により成膜されたシードレイヤ22のCr組成比を組成分析すると、前記Crの組成比は、前記シードレイヤ22の下面から上面にかけて徐々に大きくなっている。
【0160】
このように本発明ではまずシードレイヤ22成膜の初期段階ではCr組成比を小さくしているから初期段階で成膜されたシードレイヤ22の結晶構造は適切に面心立方構造となっている。従って前記シードレイヤ22のCrの組成比が膜厚が厚くなるにつれて徐々に大きくなっていっても、前記シードレイヤ22の結晶構造は初期段階での結晶構造に引きずられて適切に面心立方構造になり、前記シードレイヤ22表面のCrの組成比が40原子%以上で70原子%の高い数値であっても適切に前記表面の結晶構造を面心立方構造に保つことができるのである。前記シードレイヤ22表面のCr組成比が40原子%以上で70原子%以下とされることで、前記シードレイヤ22表面の濡れ性を従来に比べて向上させることが可能である。
【0161】
その後、前記シードレイヤ22上に反強磁性層4、固定磁性層3、非磁性中間層2、フリー磁性層1、バックド層15及び保護層7を成膜していき、熱処理を施して前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面に交換結合磁界を発生させる。
【0162】
なお本発明では図10の工程において前記シードレイヤ22の膜厚を25Å以上で50Å以下で成膜することが好ましい。これにより前記シードレイヤ22の結晶構造を適切に面心立方構造にすることができるとともに、前記シードレイヤ22へのセンス電流の分流ロスを低減させることができる。
【0163】
なおこの製造方法において前記シードレイヤ22の膜厚を23Å以上で80Å以下でスパッタ成膜するとしているが、前記シードレイヤ22の下面から上面にかけて全膜厚の75%程度までの膜厚内のCr組成比が40原子%より小さくなるようにターゲットに供給される供給電力を調整することが好ましい
【0164】
すなわちシードレイヤ22の大部分を低いCr組成で形成し、表面層のみを40原子%以上から7原子%以下の高いCr組成を有する層とすることで、前記シードレイヤ22全体を適切に面心立方構造に保つことができる。
【0165】
なお前記シードレイヤ22の膜厚を25Å以上で50Å以下とすることが好ましい。
【0166】
なお前記シードレイヤ22のスパッタ成膜時における基板25の温度を20〜100℃とし、また基板25とターゲット間の距離を40〜80mmとし、またスパッタ成膜時に導入されるArガスの圧力を0.5〜3mTorr(0.067〜0.4Pa)とすることが好ましい。
【0167】
以上のようにして形成された図1のシードレイヤ22は、前記反強磁性層4との界面(表面)での前記Crの組成比が40原子%以上で70原子%以下であることが好ましい。このCrの組成比は図9における上層24のCrの組成範囲と同じである。これにより前記シードレイヤ22表面の濡れ性をより適切に向上させることができる。
【0168】
また本発明では前記シードレイヤ22表面のCrの組成比を45原子%以上で60原子%以下にすることがより好ましい。このCrの組成比は図9における上層24のCrの組成比の好ましい範囲である。これにより前記シードレイヤ22表面の濡れ性をさらに向上させることができる。
【0170】
また本発明では、前記シードレイヤ22の下面のCrの組成比は20原子%以上で40原子%より小さい。このCrの組成比は図9における下層23でのCr組成比の好ましい範囲と同じである。これにより前記シードレイヤ22の下側の結晶構造を確実に面心立方構造にすることができる。
【0171】
また本発明では前記シードレイヤ22の膜厚は23Å以上で80Å以下であることが好ましい。この膜厚は図9における下層23と上層24の膜厚を足し合わせた数値である。なお上記で図9における前記下層23の膜厚は20Å以上で60Å以下が好ましいと説明したが、この膜厚はシードレイヤ22の全膜厚の75%以上を占める。従って図1のシードレイヤ22の組成分析を行うと本発明では、前記シードレイヤ22の下面から全膜厚の75%以上の膜厚内のCr組成比は20原子%以上で40原子%より小さくなっており、表面層のみが40原子%以上で70原子%以下、好ましくは45原子%以上の高いCr組成を有するものとなっている。
【0172】
上記膜厚により前記シードレイヤ22の結晶構造を適切に面心立方構造にすることができると同時に前記シードレイヤ22へのセンス電流の分流ロスを低減させることができる。
【0173】
また本発明では、前記シードレイヤ22の膜厚は25Å以上で50Å以下であることがより好ましい。この膜厚は図9における下層23と上層24の好ましい膜厚を足しあわせた数値である。これにより前記シードレイヤ22の結晶構造を確実に面心立方構造にすることができると同時に、前記シードレイヤ22へのセンス電流の分流ロスをより低減させることができる。
【0174】
以上説明した本発明では、従来よりもシードレイヤ22表面のCrの組成比を大きくすることができると共に、前記シードレイヤ22の結晶構造を面心立方構造に適切に保つことができるから、前記シードレイヤ22上に積層される各層の膜面と平行方向の結晶配向を良好に{111}配向させることができると共に、前記膜面と平行方向の結晶粒の平均結晶粒径を大きくすることができる。
【0175】
これによりスピンバルブ型薄膜素子の抵抗値の増加及び各層間の拡散が生じないようにでき、耐エレクトロマイグレーションの向上を図ることができ通電信頼性を向上させることが可能である。
【0176】
また本発明では抵抗変化率(ΔR/R)を向上させることができ、また電気伝導度の変化量(ΔG)を大きくできる。またサーマルノイズの低減を図ることが可能である。
【0177】
さらに本発明では前記スピンバルブ型薄膜素子を構成するフリー磁性層1の軟磁気特性を向上させることができる。具体的には前記フリー磁性層1の保磁力Hcを低減させることができ、前記保磁力Hcと比例関係にある膜面内の結晶磁気異方性エネルギーKを小さくでき、したがって外部磁界に対する前記フリー磁性層1の磁化回転を良好にすることができ感度の良いスピンバルブ型薄膜素子を製造できる。
【0178】
上記した効果を有する本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子では、今後の高記録密度化において、前記スピンバルブ型薄膜素子に流れるセンス電流密度が大きくなっても前記高記録密度化に十分に対応可能なスピンバルブ型薄膜素子を製造することが可能である。
【0179】
図2は別の実施形態のスピンバルブ型薄膜素子の構造である。図2は前記スピンバルブ型薄膜素子を記録媒体との対向面と平行な方向から切断した部分断面図である。
【0180】
図1との違いはシードレイヤ22の構造にある。図2では前記シードレイヤ22が下層27と上層28の2層構造である。前記下層27及び上層28のそれぞれは元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrとを含有した非磁性材料あるいは一部が強磁性材料(下層のみ)で形成される。前記下層27及び上層28はNiFeCr合金、NiCr合金で形成されることが好ましい。
【0181】
また前記下層27及び上層28の組成式は(Ni100-XFeX)−Crで示され、組成比Xは、0原子%≦X≦70原子%であることが好ましい。より好ましくは、前記組成比Xは、0原子%≦X≦50原子%である。さらに好ましくは、前記組成比Xは、0原子%≦X≦30原子%である。Fe量が多くなりすぎると、前記下層27及び上層28が体心立方構造となりやすいため、上記の組成比を有することが好ましい。その他に上記組成であると反強磁性層4の結晶配向性を高め、結晶粒径、導電変化量、抵抗変化率の増大を期待することができる。なお最も好ましいのは組成比Xが20原子%である。
【0182】
またこの実施形態では前記上層28のCrの組成比は40原子%以上で、前記Crの組成比は下層27のCrの組成比よりも大きくなっている。また前記上層28の表面、すなわちシードレイヤ22表面の結晶構造は面心立方構造となっている。
【0183】
また前記上層28の膜厚は下層27の膜厚に比べて小さくなっている。
従って本発明ではCrの組成比が小さくされ、また膜厚が厚くされた下層27は適切に面心立方構造を保っている。そして前記下層27の上に形成された上層28はCrの組成比が40原子%以上と大きく、また膜厚が薄いことで、前記上層28の結晶構造は前記下層27の結晶構造に引きずられて面心立方構造となり、また前記上層28表面の濡れ性を従来よりも向上させることが可能になっている。
【0184】
なお図2に示すシードレイヤ22の形成方法の一つは図9と同じである。ただし図9では後に熱処理を施すことで、下層23と上層24との界面が拡散を生じ、前記界面を判別できなくなる場合があると説明したが、前記熱処理温度が低い場合や熱処理時間が短い場合には、前記拡散はさほど起きず、図2に示す下層27と上層28の界面を判別できるものと考えられる。また前記反強磁性層4に熱処理を施さなくても固定磁性層3との界面で交換結合磁界を発生する反強磁性材料、例えばFeMnやIrMnなどを使用した場合には、元々熱処理は必要ないから上記した拡散は生じず、前記下層27と上層28との界面をはっきりと判別することは可能である。
【0185】
本発明では図2に示す上層28のCrの組成比は40原子%以上で70原子%以下であることが好ましい。これにより前記上層28の結晶構造を面心立方構造に適切に調整できると共に、前記上層28表面の濡れ性を従来よりも高めることができる。
【0186】
また本発明では前記上層28のCrの組成比は45原子%以上で60原子%以下であることがより好ましい。これにより前記上層28の結晶構造を確実に面心立方構造にできると共に、前記上層28表面の濡れ性をさらに高めることが可能である。
【0188】
また前記下層27のCrの組成比は20原子%以上で40原子%より小さい。これにより前記下層27の結晶構造を確実に面心立方構造にすることができる。
【0189】
また前記上層28の膜厚は3Å以上で20Å以下であることが好ましい。これにより、前記上層28の結晶構造を適切に面心立方構造にすることができる。
【0190】
また前記上層28の膜厚は5Å以上で10Å以下であることがより好ましい。これにより、前記上層28の結晶構造をより確実に面心立方構造にすることができる。
【0191】
また本発明では前記下層27の膜厚は20Å以上で60Å以下であることが好ましい。これにより前記下層27の結晶構造を適切に面心立方構造にできると共に、前記下層27へのセンス電流の分流ロスを低減させることができる。
【0193】
また本発明では前記下層27の膜厚は20Å以上で40Å以下であることが好ましい。これにより前記下層27の結晶構造をより確実に面心立方構造にできると共に前記下層27へのセンス電流の分流ロスをより適切に低減させることができる。
【0194】
また本発明では前記下層27と上層28との間には、1層以上の中間層が形成されてもよく、前記中間層は元素α(ただし元素αはFe、Ni、Coのうち1種または2種以上)とCrとを含有する非磁性材料あるいは一部が強磁性材料で形成されることが好ましい。具体的にはNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成されることが好ましい。あるいはNiFe合金で形成されてもよい。
【0195】
なお中間層は、結晶構造が適切に面心立方構造になっていればよいが、前記中間層にCrが含有されている場合、前記Crの組成比は上層28よりも小さい方がよい。前記中間層のCrの組成比が上層28と同等程度であると、高いCr組成比を有する膜が中間層と上層28とを足した膜厚になり、前記膜厚が厚くなることで前記上層28は、下層27の結晶構造の影響を受け難くなり、結晶構造に面心立方構造のみならず体心立方構造が混在する可能性があるからである。例えば前記中間層のCrの組成比は上層28のCrの組成比よりも小さく、また下層27のCrの組成比よりも大きくなるように調整される。
【0197】
図2におけるスピンバルブ型薄膜素子では、従来よりもシードレイヤ22表面のCrの組成比を大きくすることができると共に、前記シードレイヤ22の結晶構造を面心立方構造に適切に保つことができるから、前記シードレイヤ22上に積層される各層の膜面と平行方向の結晶配向を良好に{111}配向させることができると共に、前記膜面と平行方向の結晶粒の平均結晶粒径を大きくすることができる。
【0198】
これによりスピンバルブ型薄膜素子の抵抗値の増大及び各層間の拡散を生じにくくでき、耐エレクトロマイグレーションの向上を図ることができ通電信頼性を向上させることが可能である。
【0199】
また本発明では抵抗変化率(ΔR/R)を向上させることができ、また電気伝導度の変化量(ΔG)を大きくすることができる。またサーマルノイズの低減を図ることが可能である。
【0200】
さらに本発明では前記スピンバルブ型薄膜素子を構成するフリー磁性層1の軟磁気特性を向上させることができる。具体的には前記フリー磁性層1の保磁力Hcを低減させることができ、前記保磁力Hcと比例関係にある膜面内の結晶磁気異方性エネルギーKを小さくでき、したがって外部磁界に対する前記フリー磁性層1の磁化回転を良好にすることができ感度の良いスピンバルブ型薄膜素子を製造できる。
【0201】
上記した効果を有する本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子では、今後の高記録密度化において、前記スピンバルブ型薄膜素子に流れるセンス電流密度が大きくなっても前記高記録密度化に十分に対応可能なスピンバルブ型薄膜素子を製造することが可能である。
【0202】
図3は、本発明における他のスピンバルブ型薄膜素子の構造を示す部分断面図である。
【0203】
図3に示すスピンバルブ型薄膜素子では、下地層6上にトラック幅方向(図示X方向)にトラック幅Twの間隔を開けた一対のシードレイヤ22が形成され、前記シードレイヤ22の上にエクスチェンジバイアス層16,16が形成されている。
【0204】
前記一対のシードレイヤ22及びエクスチェンジバイアス層16間は、SiO2やAl23等の絶縁材料で形成された絶縁層17によって埋められている。
【0205】
そして前記エクスチェンジバイアス層16及び絶縁層17上にはフリー磁性層1が形成されている。
【0206】
前記エクスチェンジバイアス層16はX−Mn合金、あるいはX−Mn−X′合金で形成され、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比は45(原子%)以上60(原子%)以下であることが好ましく、より好ましくは49(原子%)以上56.5(原子%)以下である。
【0207】
前記フリー磁性層1の両側端部では、エクスチェンジバイアス層16間での交換結合磁界により図示X方向に単磁区化され、フリー磁性層1のトラック幅Tw領域の磁化は、外部磁界に対して反応する程度に図示X方向に適性に揃えられている。
【0208】
図3に示すように前記フリー磁性層1の上には非磁性中間層2が形成され、さらに前記非磁性中間層2の上には固定磁性層3が形成されている。さらに前記固定磁性層3の上には反強磁性層4、保護層7が形成される。
【0209】
この実施形態においても前記シードレイヤ22は、元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrを含有した非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成される。
【0210】
また前記シードレイヤ22には、前記エクスチェンジバイアス層16側に向かうにしたがって、前記Crの組成比が増加する領域が存在している。
【0211】
さらに前記シードレイヤ22の前記エクスチェンジバイアス層16との界面での前記Crの組成比は40原子%以上で、この組成比は前記シードレイヤ22の前記エクスチェンジバイアス層16と反対側の面でのCrの組成比よりも大きくなっており、また前記シードレイヤ22の結晶構造は前記エクスチェンジバイアス層16との界面で面心立方構造(fcc構造)となっている。
【0212】
あるいは図2と同様に、前記シードレイヤ22は元素α(Fe、Ni、Coのいずれか1種または2種以上)とCrを含有した上層と下層とで構成され、前記上層の前記エクスチェンジバイアス層16との界面でのCrの組成比は40原子%以上で、しかも結晶構造が面心立方構造であり、また前記上層側のCrの組成比は下層側のCrの組成比よりも大きくなっている。さらに前記上層の膜厚は下層の膜厚よりも小さくなっている。
【0213】
このように図3におけるスピンバルブ型薄膜素子では、従来よりもシードレイヤ22表面のCrの組成比を大きくすることができると共に、前記シードレイヤ22の結晶構造を面心立方構造に適切に保つことができるから、前記シードレイヤ22上に積層される各層の膜面と平行方向の結晶配向を良好に{111}配向させることができると共に、前記膜面と平行方向の結晶粒の平均結晶粒径を大きくすることができる。
【0214】
これによりスピンバルブ型薄膜素子の抵抗値の増大及び各層間の拡散を生じにくくでき、耐エレクトロマイグレーションの向上を図ることができ通電信頼性を向上させることが可能である。
【0215】
また本発明では抵抗変化率(ΔR/R)を向上させることができ、また電気伝導度の変化量(ΔG)を大きくすることができる。またサーマルノイズの低減を図ることが可能である。
【0216】
さらに本発明では前記スピンバルブ型薄膜素子を構成するフリー磁性層1の軟磁気特性を向上させることができる。具体的には前記フリー磁性層1の保磁力Hcを低減させることができ、前記保磁力Hcと比例関係にある膜面内の結晶磁気異方性エネルギーKを小さくでき、したがって外部磁界に対する前記フリー磁性層1の磁化回転を良好にすることができ感度の良いスピンバルブ型薄膜素子を製造できる。
【0217】
上記した効果を有する本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子では、今後の高記録密度化において、前記スピンバルブ型薄膜素子に流れるセンス電流密度が大きくなっても前記高記録密度化に十分に対応可能なスピンバルブ型薄膜素子を製造することが可能である。
【0218】
なお図3におけるシードレイヤ22は既に説明した図9及び図10と同じ製造方法で形成することができる。
【0219】
図4は本発明におけるデュアルスピンバルブ型薄膜素子の構造を示す部分断面図である。
【0220】
図4に示すように、下から下地層6、シードレイヤ22、反強磁性層4、固定磁性層3、非磁性中間層2、およびフリー磁性層1が連続して積層されている。前記フリー磁性層1は3層膜で形成され、例えばCo膜10,10とNiFe合金膜9で構成される。さらに前記フリー磁性層1の上には、非磁性中間層2、固定磁性層3、反強磁性層4、および保護層7が連続して積層されている。
【0221】
また、下地層6から保護層7までの多層膜の両側にはハードバイアス層5,5、電極層8,8が積層されている。なお、各層は図1で説明した材質と同じ材質で形成されている。
【0222】
この実施例では、フリー磁性層1よりも図示下側に位置する反強磁性層4の下にはシードレイヤ22が形成されている。さらに前記反強磁性層4を構成する元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、45(原子%)以上60(原子%)以上で形成されることが好ましく、より好ましくは49(原子%)以上56.5(原子%)以下である。
【0223】
この実施形態においても前記シードレイヤ22は、元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrを含有した非磁性材料あるいは一部が強磁性材料で形成される。
【0224】
また前記シードレイヤ22には、前記反強磁性層4側に向かうにしたがって、前記Crの組成比が増加する領域が存在している。
【0225】
さらに前記シードレイヤ22の前記反強磁性層4との界面での前記Crの組成比は40原子%以上で、この組成比は前記シードレイヤ22の前記反強磁性層4と反対側の面でのCrの組成比よりも大きくなっており、また前記シードレイヤ22の結晶構造は前記反強磁性層4との界面で面心立方構造(fcc構造)となっている。
【0226】
あるいは図2と同様に、前記シードレイヤ22は元素α(Fe、Ni、Coのいずれか1種または2種以上)とCrを含有した上層と下層とで構成され、前記上層の前記反強磁性層4との界面でのCrの組成比は40原子%以上で、しかも結晶構造が面心立方構造であり、また前記上層側のCrの組成比は下層側のCrの組成比よりも大きくなっている。さらに前記上層の膜厚は下層の膜厚よりも小さくなっている。
【0227】
このように図4におけるスピンバルブ型薄膜素子では、従来よりもシードレイヤ22表面のCrの組成比を大きくすることができると共に、前記シードレイヤ22の結晶構造を面心立方構造に適切に保つことができるから、前記シードレイヤ22上に積層される各層の膜面と平行方向の結晶配向を良好に{111}配向させることができると共に、前記膜面と平行方向の結晶粒の平均結晶粒径を大きくすることができる。
【0228】
これによりスピンバルブ型薄膜素子の抵抗値の増大及び各層間の拡散を生じにくくでき、耐エレクトロマイグレーションの向上を図ることができ通電信頼性を向上させることが可能である。
【0229】
また本発明では抵抗変化率(ΔR/R)を向上させることができ、また電気伝導度の変化量(ΔG)を大きくできる。またサーマルノイズの低減を図ることが可能である。
【0230】
さらに本発明では前記スピンバルブ型薄膜素子を構成するフリー磁性層1の軟磁気特性を向上させることができる。具体的には前記フリー磁性層1の保磁力Hcを低減させることができ、前記保磁力Hcと比例関係にある膜面内の結晶磁気異方性エネルギーKを小さくでき、したがって外部磁界に対する前記フリー磁性層1の磁化回転を良好にすることができ感度の良いスピンバルブ型薄膜素子を製造できる。
【0231】
上記した効果を有する本発明におけるスピンバルブ型薄膜素子では、今後の高記録密度化において、前記スピンバルブ型薄膜素子に流れるセンス電流密度が大きくなっても前記高記録密度化に十分に対応可能なスピンバルブ型薄膜素子を製造することが可能である。
【0232】
図5は本発明における異方性磁気抵抗効果型素子(AMR素子)を記録媒体との対向面と平行な方向から切断した部分断面図である。
【0233】
図5では、下地層6上にトラック幅方向(図示X方向)にトラック幅Twの間隔を開けて一対のシードレイヤ22が形成されている。前記シードレイヤ22上にはエクスチェンジバイアス層21,21が形成され、前記一対のシードレイヤ22及びエクスチェンジバイアス層21,21間がSiO2やAl23等の絶縁材料で形成された絶縁層26によって埋められている。
【0234】
そして前記エクスチェンジバイアス層21,21及び前記絶縁層26上に、磁気抵抗層(MR層)20、非磁性層(SHUNT層)19、及び軟磁性層(SAL層)18が積層される。
【0235】
上記した図5に示すAMR型薄膜素子では、前記エクスチェンジバイアス層21,21と磁気抵抗層20との界面で発生する交換結合磁界により、図5に示す磁気抵抗層20のE領域が、図示X方向に単磁区化される。そしてこれに誘発されて前記磁気抵抗層20のD領域の磁化が図示X方向に揃えられる。また、検出電流が磁気抵抗層20を流れる際に発生する電流磁界が、軟磁性層18にY方向に印加され、軟磁性層18がもたらす静磁結合エネルギーにより、磁気抵抗層20のD領域に横バイアス磁界がY方向に与えられる。X方向に単磁区化された磁気抵抗層20のD領域にこの横バイアス層が与えられることにより、磁気抵抗層20のD領域の磁界変化に対する抵抗変化(磁気抵抗効果特性:H―R効果特性)が直線性を有する状態に設定される。
【0236】
記録媒体の移動方向はZ方向であり、図示Y方向に漏れ磁界が与えられると、磁気抵抗層20のD領域の抵抗値が変化し、これが電圧変化として検出される。
【0237】
この実施形態においても前記シードレイヤ22は、元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrを含有した非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成される。
【0238】
また前記シードレイヤ22には、前記エクスチェンジバイアス層21側に向かうにしたがって、前記Crの組成比が増加する領域が存在している。
【0239】
さらに前記シードレイヤ22の前記エクスチェンジバイアス層21との界面での前記Crの組成比は40原子%以上で、この組成比は前記シードレイヤ22の前記エクスチェンジバイアス層21と反対側の面でのCrの組成比よりも大きくなっており、また前記シードレイヤ22の結晶構造は前記エクスチェンジバイアス層21との界面で面心立方構造(fcc構造)となっている。
【0240】
あるいは図2と同様に、前記シードレイヤ22は元素α(Fe、Ni、Coのいずれか1種または2種以上)とCrを含有した上層と下層とで構成され、前記上層の前記エクスチェンジバイアス層16との界面でのCrの組成比は40原子%以上で、しかも結晶構造が面心立方構造であり、また前記上層側のCrの組成比は下層側のCrの組成比よりも大きくなっている。さらに前記上層の膜厚は下層の膜厚よりも小さくなっている。
【0241】
このように図5におけるAMR型薄膜素子では、従来よりもシードレイヤ22表面のCrの組成比を大きくすることができると共に、前記シードレイヤ22の結晶構造を面心立方構造に適切に保つことができるから、前記シードレイヤ22上に積層される各層の膜面と平行方向の結晶配向を良好に{111}配向させることができると共に、前記膜面と平行方向の結晶粒径を大きくすることができる。
【0242】
これによりスピンバルブ型薄膜素子の抵抗値の増大及び各層間の拡散を生じにくくでき、耐エレクトロマイグレーションの向上を図ることができ通電信頼性を向上させることが可能である。
【0243】
また本発明では抵抗変化率(ΔR/R)を向上させることができ、また電気伝導度の変化量(ΔG)を大きくできる。またサーマルノイズの低減を図ることが可能である。
【0244】
さらに本発明では前記AMR型薄膜素子を構成する磁気抵抗層20の軟磁気特性を向上させることができる。具体的には前記磁気抵抗層20の保磁力Hcを低減させることができ、前記保磁力Hcと比例関係にある膜面内の結晶磁気異方性エネルギーKを小さくでき、したがって外部磁界に対する前記磁気抵抗層20の磁化回転を良好にすることができ感度の良いスピンバルブ型薄膜素子を製造できる。
【0245】
上記した効果を有する本発明におけるAMR型薄膜素子では、今後の高記録密度化において、前記AMR型薄膜素子に流れるセンス電流密度が大きくなっても前記高記録密度化に十分に対応可能なAMR型薄膜素子を製造することが可能である。
【0246】
なお図5におけるシードレイヤ22は既に説明した図9及び図10と同じ製造方法で形成することができる。
【0247】
次に図1ないし図5に示す磁気検出素子では、いずれも下地層6が形成されているが、前記下地層6が形成されていなくてもよい。ただし下地層6が形成されない場合、その上に形成されるシードレイヤ22はある程度、厚い膜厚で形成されないと結晶構造を適切に面心立方構造にしつつ{111}面の優先配向を向上できないと考えられる。前記シードレイヤ22のうちCrの組成比が小さくされる下層(図2の符号27や図9の符号23)は20Å以上であることが好ましい。上記したように本発明では、前記下層の膜厚の好ましい範囲として20Å以上としており、前記下地層6が無くても前記下層の結晶構造を面心立方構造にしつつ良好な{111}配向を得ることができる。ただしあまり膜厚が厚くなりすぎると、センス電流の分流量が大きくなるので、前記下層の膜厚は100Å以下であることが好ましい。また前記下層のCr組成比を0〜40原子%より小さい値で形成する場合、前記下地層6を設けた方がより薄い下層の膜厚でも良好な{111}面の優先配向度を得ることができる。
【0248】
従って下地層6を設ける方が前記シードレイヤ22の結晶構造をより確実に面心立方構造にでき[111]面の優先配向度も良好にすることができて好ましい。前記下地層6は例えば30Å程度の膜厚で形成される。また前記下地層6を設けることでシードレイヤ22の膜面と平行な方向の結晶配向を、よりいっそう適切に{111}配向させることができる。
【0249】
また本発明では図1ないし図5に示す磁気検出素子において、前記磁気検出素子を膜厚方向に平行に切断したときに現れる反強磁性層4(図3及び図5ではエクスチェンジバイアス層16、21)の結晶粒界と前記固定磁性層3(図3ではフリー磁性層1、図5では磁気抵抗層20)の結晶粒界が前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面の少なくとも一部で不連続な状態になっていることが好ましい。
【0250】
また図1ないし図5に示す磁気検出素子において、前記磁気検出素子を膜厚方向に平行に切断したときに現れる反強磁性層4(図3及び図5ではエクスチェンジバイアス層16、21)の結晶粒界と前記シードレイヤ22の結晶粒界が前記反強磁性層4とシードレイヤ22との界面の少なくとも一部で不連続な状態になっていることが好ましい。
【0251】
また図1ないし図5に示す磁気検出素子において、前記反強磁性層4(図3及び図5ではエクスチェンジバイアス層16、21)と固定磁性層3(図3ではフリー磁性層1、図5では磁気抵抗層20)の界面と平行な結晶面は、互いに、代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、前記結晶面内に存在する、同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層及び固定磁性層とで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
【0252】
また図1ないし図5に示す磁気検出素子において、前記反強磁性層4(図3及び図5ではエクスチェンジバイアス層16、21)とシードレイヤ22の界面と平行な結晶面は、互いに代表的に{111}面として表される等価な結晶面が優先配向し、前記結晶面内に存在する、同じ等価な結晶軸の少なくとも一部が、前記反強磁性層及びシードレイヤとで互いに異なる方向を向いていることが好ましい。
【0253】
上記のような関係にある場合、反強磁性層4と固定磁性層3との界面、および反強磁性層4とシードレイヤ22との界面では、いわゆる非整合状態が保たれ、前記反強磁性層4は熱処理によって不規則格子から規則格子に適切な規則変態がなされており、大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
【0254】
上記した関係を得るには、シードレイヤ22表面の濡れ性が高いこと及び結晶構造が面心立方構造に保たれることのほかに、反強磁性層4の組成比や前記シードレイヤ22の上に形成される各層の成膜条件を適切に調整することが必要である。
【0255】
既に説明したように前記反強磁性層4を構成する元素Xあるいは元素X+X′の組成比は45(原子%)以上60(原子%)以下であることが好ましい。
【0256】
また成膜条件としては、例えばスパッタ成膜の際に使用されるArガスの圧力を3mTorrとする。また反強磁性層4と固定磁性層3間に交換結合磁界を発生させるための熱処理温度を200℃以上で300℃以下とし、熱処理時間を2時間以上で10-6Torr以下の真空中で磁場中熱処理をする。また前記基板とターゲット間の距離を80mmとする。
【0257】
上記の反強磁性層4の組成比及び成膜条件などにより、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面、反強磁性層4とシードレイヤ22との界面を適切に非整合状態にでき、1.58×104(A/m)以上の高い交換結合磁界を得ることが可能である。
【0258】
図8は、図1から図5に示す磁気検出素子が形成された読み取りヘッドの構造を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0259】
符号40は、例えばNiFe合金などで形成された下部シールド層であり、この下部シールド層40の上に下部ギャップ層41が形成されている。また下部ギャップ層41の上には、図1ないし図5に示す磁気検出素子42が形成されており、さらに前記磁気検出素子42の上には、上部ギャップ層43が形成され、前記上部ギャップ層43の上には、NiFe合金などで形成された上部シールド層44が形成されている。
【0260】
前記下部ギャップ層41及び上部ギャップ層43は、例えばSiO2やAl23(アルミナ)などの絶縁材料によって形成されている。図8に示すように、下部ギャップ層41から上部ギャップ層43までの長さがギャップ長Glであり、このギャップ長Glが小さいほど高記録密度化に対応できるものとなっている。
【0261】
本発明では前記反強磁性層4の膜厚を小さくしてもなお大きな交換結合磁界を発生させることができる。前記反強磁性層4の膜厚は、例えば70Å以上で形成され、300Å程度の膜厚であった従来に比べて前記反強磁性層4の膜厚を十分に小さくできる。よって狭ギャップ化により高記録密度化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを製造することが可能になっている。
【0262】
なお本発明における磁気検出素子は、ハードディスク装置内に内臓される磁気ヘッド以外にも磁気センサなどに利用可能である。
【0263】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明における交換結合膜では、シードレイヤ表面のCr組成比を大きくして濡れ性を向上させることができると共に結晶構造を面心立方構造にすることができる。従って前記シードレイヤ上に積層される各層の膜面と平行方向の結晶配向を良好に{111}配向させることができると共に、前記膜面と平行方向の結晶粒径を大きくすることができる。
【0264】
また本発明の製造方法では、前記シードレイヤをCrの組成比が低い下層とCrの組成比が高い上層でスパッタ成膜し、しかも前記下層の膜厚よりも上層の膜厚を薄く形成する。これにより、容易に前記シードレイヤ表面の濡れ性を向上させることができると共に適切に結晶構造を面心立方構造にすることができる。
【0265】
本発明では上記の交換結合膜を磁気検出素子に適用でき、上記交換結合膜を有する磁気検出素子では、耐エレクトロマイグレーションの向上を図ることができ通電信頼性を向上させることが可能である。
【0266】
また本発明では抵抗変化率(ΔR/R)を向上させることができ、また電気伝導度の変化量(ΔG)を大きくできる。またサーマルノイズの低減を図ることが可能である。
【0267】
さらに本発明ではフリー磁性層や磁気抵抗層の軟磁気特性を向上させることができる。
【0268】
前記交換結合膜を有する磁気検出素子であると、今後の高記録密度化に適切に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の磁気検出素子(シングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子)の構造を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図2】本発明の第2実施形態の磁気検出素子(シングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子)の構造を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図3】本発明の第3実施形態の磁気検出素子(シングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子)の構造を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図4】本発明の第4実施形態の磁気検出素子(デュアルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子)の構造を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図5】本発明の第5実施形態の磁気検出素子(AMR型磁気抵抗効果素子)の構造を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図6】シードレイヤの濡れ性が悪い場合の前記シードレイヤ上にスパッタされる反強磁性層の原子状態を示す模式図、
【図7】シードレイヤの濡れ性が良い場合の前記シードレイヤ上にスパッタされる反強磁性層の原子状態を示す模式図、
【図8】磁気検出素子を有する薄膜磁気ヘッドの部分断面図、
【図9】本発明における磁気検出素子の製造方法を説明するための一工程図、
【図10】本発明における磁気検出素子の他の製造方法を説明するための一工程図、
【図11】従来における磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【符号の説明】
1 フリー磁性層
2 非磁性中間層
3 固定磁性層(強磁性層)
4 反強磁性層
5 ハードバイアス層
6 下地層
7 保護層
8 電極層
15 バックド層
22 シードレイヤ
23、27 下層
24、28 上層
25 基板

Claims (49)

  1. 下から非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成されたシードレイヤ、反強磁性層、強磁性層の順に積層され、前記反強磁性層と強磁性層との界面で交換結合磁界が発生することで、前記強磁性層の磁化方向が一定方向にされる交換結合膜において、
    前記シードレイヤは元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrを含有し、前記シードレイヤの前記反強磁性層との界面での前記Crの組成比は40原子%以上で70原子%以下であり、前記シードレイヤの前記反強磁性層と反対側の面でのCrの組成比(原子%)は20原子%以上で40原子%より小さく
    前記シードレイヤには、前記反強磁性層側に向かうにしたがって、前記Crの組成比(原子%)が増加する領域が存在し、
    前記シードレイヤの結晶構造は前記反強磁性層との界面で面心立方構造(fcc構造)であることを特徴とする交換結合膜。
  2. 前記シードレイヤの前記反強磁性層との界面での前記Crの組成比は45原子%以上で60原子%以下である請求項1記載の交換結合膜。
  3. 前記シードレイヤはNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成される請求項1又は2のいずれかに記載の交換結合膜。
  4. 前記シードレイヤの組成式は(Ni100−XFe)−Crで示され、組成比Xは、0原子%≦X≦70原子%である請求項記載の交換結合膜。
  5. 前記組成比Xは、0原子%≦X≦50原子%である請求項記載の交換結合膜。
  6. 前記組成比Xは、0原子%≦X≦30原子%である請求項記載の交換結合膜。
  7. 前記シードレイヤの膜厚は、23Å以上で80Å以下である請求項1ないしのいずれかに記載の交換結合膜。
  8. 前記シードレイヤの膜厚は、25Å以上で50Å以下である請求項記載の交換結合膜。
  9. 下から非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成されたシードレイヤ、反強磁性層、強磁性層の順に積層され、前記反強磁性層と強磁性層との界面で交換結合磁界が発生することで、前記強磁性層の磁化方向が一定方向にされる交換結合膜において、
    前記シードレイヤは上層と下層の積層構造で形成され、前記上層及び下層はそれぞれ、元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrとを含有した非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成され、
    前記シードレイヤのうち前記上層のCrの組成比は40原子%以上で70原子%以下であり、前記反強磁性層との界面での結晶構造は、面心立方構造(fcc構造)であり、
    前記下層のCrの組成比は20原子%以上で40原子%より小さく、
    前記上層の膜厚は、前記下層の膜厚よりも小さいことを特徴とする交換結合膜。
  10. 前記上層及び下層はそれぞれ、FeNiCr合金あるいはNiCr合金で形成される請求項に記載の交換結合膜。
  11. 前記上層及び下層の組成式は(Ni100−XFe)−Crで示され、組成比Xは、0原子%≦X≦70原子%である請求項10記載の交換結合膜。
  12. 前記組成比Xは、0原子%≦X≦50原子%である請求項11記載の交換結合膜。
  13. 前記組成比Xは、0原子%≦X≦30原子%である請求項12記載の交換結合膜。
  14. 前記上層の前記Crの組成比は45原子%以上で60原子%以下である請求項9ないし13のいずれかに記載の交換結合膜。
  15. 前記上層の膜厚は3Å以上で20Å以下である請求項9ないし14のいずれかに記載の交換結合膜。
  16. 前記上層の膜厚は5Å以上で10Å以下である請求項15記載の交換結合膜。
  17. 前記下層の膜厚は20Å以上で60Å以下である請求項9ないし16のいずれかに記載の交換結合膜。
  18. 前記下層の膜厚は20Å以上で40Å以下である請求項17記載の交換結合膜。
  19. 前記上層と下層との間には、1層以上の中間層が形成され、前記中間層は元素α(Fe、Ni、Coのうちいずれか1種または2種以上)とCrを含有した非磁性あるいは一部が強磁性材料で形成され、前記Crの組成比は前記上層のCrの組成比よりも小さい請求項9ないし18のいずれかに記載の交換結合膜。
  20. 前記シードレイヤの下には、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上の元素で形成された下地層が形成されている請求項1ないし19のいずれかに記載の交換結合膜。
  21. 前記シードレイヤはスパッタ成膜される請求項1ないし20のいずれかに記載の交換結合膜。
  22. 前記反強磁性層は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成される請求項1ないし21のいずれかに記載の交換結合膜。
  23. 前記反強磁性層は、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Ir,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)で形成されている請求項1ないし21のいずれかに記載の交換結合膜。
  24. 前記X―Mn―X′合金は、元素XとMnとで構成される空間格子の隙間に元素X′が侵入した侵入型固溶体であり、あるいは、元素XとMnとで構成される結晶格子の格子点の一部が、元素X′に置換された置換型固溶体である請求項23記載の交換結合膜。
  25. 前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、45(原子%)以上60(原子%)以下である請求項22ないし24のいずれかに記載の交換結合膜。
  26. 下からシードレイヤ、反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、およびフリー磁性層の順に積層され、前記フリー磁性層の磁化が前記固定磁性層の磁化と交叉する方向に揃えられた磁気検出素子において、
    前記シードレイヤ、反強磁性層及び固定磁性層が請求項1ないし25のいずれかに記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とする磁気検出素子。
  27. 下から、シードレイヤ、反強磁性のエクスチェンジバイアス層、フリー磁性層、非磁性中間層、固定磁性層、および反強磁性層の順に積層され、前記フリー磁性層の磁化が前記固定磁性層の磁化と交叉する方向に揃えられた磁気検出素子において、
    前記シードレイヤ、エクスチェンジバイアス層及びフリー磁性層が請求項1ないし25のいずれかに記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とする磁気検出素子。
  28. フリー磁性層の上下に積層された非磁性中間層と、一方の前記非磁性中間層の上および他方の非磁性中間層の下に位置する固定磁性層と、一方の前記固定磁性層の上および他方の固定磁性層の下に位置する反強磁性層とを有し、前記フリー磁性層よりも下側に形成された反強磁性層の下側にはシードレイヤが形成され、前記フリー磁性層の磁化が前記固定磁性層の磁化と交叉する方向に揃えられた磁気検出素子において、
    前記シードレイヤ、その上に接合された反強磁性層及び固定磁性層が請求項1ないし25のいずれかに記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とする磁気検出素子。
  29. 下から、シードレイヤ、反強磁性のエクスチェンジバイアス層、磁気抵抗層、非磁性層、および軟磁性層の順で積層された磁気検出素子において、
    前記シードレイヤ、エクスチェンジバイアス層及び磁気抵抗層が請求項1ないし25のいずれかに記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とする磁気検出素子。
  30. 下からシードレイヤ、反強磁性層、および強磁性層の順に積層し、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界を発生させて、前記強磁性層の磁化方向を一定方向に向ける交換結合膜の製造方法において、
    (A)Crの組成比が20原子%以上で40原子%より小さいNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成された前記シードレイヤの下層を20Å以上で60Å以下の膜厚でスパッタ成膜する工程と、
    (B)前記下層の上に、前記下層よりもCrの組成比が大きく、且つ前記Crの組成比が40原子%以上で70原子%以下となるNiFeCr合金あるいはNiCr合金で形成された前記シードレイヤの上層を3Å以上で20Å以下の膜厚でスパッタ成膜する工程と、
    (C)前記シードレイヤの上に反強磁性層、強磁性層を順次積層し、熱処理を施して、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界を発生させ、磁場方向に前記強磁性層を磁化する工程と、
    を有することを特徴とする交換結合膜の製造方法。
  31. 前記上層のCrの組成比を45原子%以上で60原子%以下とする請求項30記載の交換結合膜の製造方法。
  32. 前記上層の膜厚を5Å以上で10Å以下にする請求項30または31に記載の交換結合膜の製造方法。
  33. 前記上層及び下層の組成式は(Ni100−XFe)−Crで示され、組成比Xを、0原子%≦X≦70原子%とする請求項30ないし32のいずれかに記載の交換結合膜。
  34. 前記組成比Xを、0原子%≦X≦50原子%とする請求項33記載の交換結合膜。
  35. 前記組成比Xを、0原子%≦X≦30原子%とする請求項34記載の交換結合膜。
  36. 前記下層の膜厚を20Å以上で40Å以下にする請求項30ないし35のいずれかに記載の交換結合膜の製造方法。
  37. 下からシードレイヤ、反強磁性層、および強磁性層の順に積層し、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界を発生させて、前記強磁性層の磁化方向を一定方向に向ける交換結合膜の製造方法において、
    (E)前記シードレイヤをNiFeCr合金あるいはNiCr合金で23Å以上で80Å以下の膜厚でスパッタ成膜し、このとき下面でのCr組成比を20原子%以上で40原子%より小さくして前記下面から上面にかけて徐々にCrの組成比が大きくなるようにスパッタ成膜し、さらに前記上面でのCrの組成比を40原子%以上で70原子%以下にする工程と、
    (F)前記シードレイヤの上に反強磁性層、強磁性層を順次積層し、熱処理を施して、前記反強磁性層と強磁性層との界面に交換結合磁界を発生させ、磁場方向に前記強磁性層を磁化する工程と、
    を有することを特徴とする交換結合膜の製造方法。
  38. 前記シードレイヤの組成式は(Ni100−XFe)−Crで示され、組成比Xを、0原子%≦X≦70原子%とする請求項37記載の交換結合膜の製造方法。
  39. 前記組成比Xを、0原子%≦X≦50原子%とする請求項38記載の交換結合膜の製造方法。
  40. 前記組成比Xを、0原子%≦X≦30原子%とする請求項39記載の交換結合膜の製造方法。
  41. 前記シードレイヤを25Å以上で50Å以下の膜厚でスパッタ成膜する請求項37ないし40のいずれかに記載の交換結合膜の製造方法。
  42. 前記シードレイヤの下に、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上の元素で形成された下地層を形成する請求項30ないし41のいずれかに記載の交換結合膜の製造方法。
  43. 前記反強磁性層を、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料でスパッタ成膜する請求項30ないし42のいずれかに記載の交換結合膜の製造方法。
  44. 前記反強磁性層を、X−Mn−X′合金(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Ir,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)でスパッタ成膜する請求項30ないし42のいずれかに記載の交換結合膜の製造方法。
  45. 前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比を、45(原子%)以上60(原子%)以下とする請求項43または44記載の交換結合膜の製造方法。
  46. 下からシードレイヤ、反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、およびフリー磁性層の順に積層して成る磁気検出素子の製造方法において、
    前記シードレイヤ、反強磁性層及び固定磁性層を請求項30ないし45のいずれかに記載された交換結合膜により形成することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
  47. 下からシードレイヤ、反強磁性のエクスチェンジバイアス層、フリー磁性層、非磁性中間層、固定磁性層、および反強磁性層の順に積層する磁気検出素子の製造方法において、
    前記シードレイヤ、エクスチェンジバイアス層及びフリー磁性層を請求項30ないし45のいずれかに記載された交換結合膜により形成されていることを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
  48. フリー磁性層の上下に積層された非磁性中間層と、一方の前記非磁性中間層の上および他方の非磁性中間層の下に位置する固定磁性層と、一方の前記固定磁性層の上および他方の固定磁性層の下に位置する反強磁性層とを有し、前記フリー磁性層よりも下側に形成された反強磁性層の下側にシードレイヤを形成して成る磁気検出素子の製造方法において、
    前記シードレイヤ、その上に接合する反強磁性層及び固定磁性層を請求項30ないし45のいずれかに記載された交換結合膜により形成することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
  49. 下からシードレイヤ、反強磁性のエクスチェンジバイアス層、磁気抵抗層、非磁性層、および軟磁性層の順で積層した磁気検出素子の製造方法において、
    前記シードレイヤ、エクスチェンジバイアス層及び磁気抵抗層を請求項30ないし45のいずれかに記載された交換結合膜により形成することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
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