JP3710119B2 - インバータ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として誘導電動機に使用するインバータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の誘導電動機のインバータ装置には、1省エネルギー(以下、省エネと称する)、2同期切替、3昇圧を目的とした技術があり、以下、1〜3の各事項についてそれぞれ説明する。
【0003】
1 省エネについて
インバータ装置は、V/f(V:電圧、f:周波数)−定制御を行うことによって、ファンやポンプのような逓減トルク負荷(速度の2乗に比例してトルクが変わる負荷)については、省エネが図れることはよく知られている。これは、インバータ装置による回転数制御により、ダンパやバルブの損失を除去するもので、大きな効果を上げている。
【0004】
しかし、最近では省エネモード付のインバータ装置が出現している。これは電圧制御機能を利用して更に効率の良い省エネ運転を図ろうとするものである。したがって、先ずこの効率のよい省エネモード付のインバータ装置(以下、Aインバータと称する)について説明する。
【0005】
誘導電動機の損失において、銅損Pcは電流の二乗に比例するので、軽負荷時には小さくなるが、鉄損Piは電圧の二乗に比例して電流には依存しないので変化しない。したがって、軽負荷時は効率が低下する。一定負荷における誘導電動機への印加電圧に対する鉄損Piと銅損Pcの関係は、図6に示すようになる。
【0006】
これから、鉄損Piと銅損Pcとが等しくなる電圧V0の時が損失が最小になる(但し、ここでVnは定格電圧)。そして、負荷が変化すれば最適電圧V0も変化する。
【0007】
Aインバータは、負荷を検出して、各負荷に応じた最適電圧を誘導電動機に供給するように動作する。すなわち、Aインバータでは、出力電圧と出力電流とから電力計算し、この電力と周波数とから、力率は一定という条件の下で、最大効率になる電圧V0を演算する。そして、この電圧V0によってパルス幅を変化させてトランジスタをスイッチング制御し、誘導電動機にこの電圧V0に対応した周波数と電圧をもつ電力を供給する。これによって、供給周波数や負荷にかかわらず誘導電動機を最大効率で運転することができる。
【0008】
このように、このAインバータは、誘導電動機への供給力率は常に一定(通常80%)として制御されていることが前提となっている。
【0009】
次に、最近開発されている省エネ制御高性能インバータ装置(以下、Bインバータと称する)は、上記のAインバータと異なり、負荷変動に応じて自動的に力率を変化させ、全負荷領域において省エネ効果が常に最大になるよう改善されたものである。
【0010】
すなわち、誘導電動機への入力電力は負荷率が低いと下がるため、最適力率は負荷の低下に応じて低下し、負荷の上昇に応じて増加する。したがって、例えば誘導電動機が低負荷で運転されているときでも最適力率は低い値にあるため、電動機電圧が低くなりすぎることがなく、誘導電動機のストールやゴギングを防止できる。しかも、このときの電動機電圧は最適レベルにあるため、誘導電動機の負荷電流、有効電力、無効電力、皮相電力を著しく改善できる。したがって、このBインバータはAインバータよりも省エネ効果が大きい。
【0011】
2 同期切替について
大容量の誘導電動機の省エネ運転では、高速運転時インバータの損失を削減するため、誘導電動機を停止させることなく、商用の交流電源の運転に切り換えることが要求される。このため、運転中にインバータから商用の交流電源へ、また逆に、商用の交流電源からインバータ装置の出力へとショックレスに切り換えなければならない。
【0012】
この同期切替を行うためには、インバータ装置の出力と商用の交流電源との周波数・位相・電圧を共に同期させ、撹乱のない状態にして切り換える必要がある。もしも、これらに一つに差があると、誘導電動機に過渡トルクが発生して機械を破壊させることがある。
【0013】
従来のインバータ装置において、このような同期切替の機能は、一般のPWMインバータには殆ど採用されておらず、大容量電流形のインバータ装置に装備される場合が多い。
【0014】
3 昇圧について
昇圧形インバータ装置としては、従来よりPAMインバータ(電圧波高値変調インバータ:Pulse Amplitude Modulation inverter)がある。
【0015】
一般のPWMインバータは、最大出力電圧がほぼ入力電圧に対応しているが、このPAMインバータでは、チョッパ部で可変の直流電圧を作り、インバータ出力電圧を制御するので、入力電圧よりも出力電圧を高くすることができる。
【0016】
このPAMインバータは、高周波インバータ(400〜3000Hz)に不可欠なものであるが、最近では高出力を目的に出力周波数を低く(120Hz以下)して用いる例が増加している。
【0017】
このPAMインバータのチョッパ部の出力電圧VDCは、次のようになる。
【0018】
【数1】
ここに、Vi:入力電圧、Ii:入力電流、η:効率、R:VDC側よりみた等価負荷抵抗である。
【0019】
したがって、誘導電動機へ供給する出力電圧VDCを高くするためには、Rを大、すなわち出力周波数を大きくすればよい。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
従来のインバータ装置において、上述した1省エネ、2同期切替、3昇圧の各技術については、それぞれ次の問題がある。
【0021】
1 省エネに関して
Aインバータにおいて、誘導電動機におけるトルクを一定とすると、銅損Pcと鉄損Piとは次の通りとなる。
【0022】
Pc=K1・f2/{(1−S)2・(Vcosφ)2} (2)
Pi=K2・V2 (3)
ここに、K1,K2:定数、S:すべり、cosφ:力率、V:電動機への印加電圧、f:周波数である。
【0023】
(2)式より、銅損Pcは、(1−S)2(Vcosφ)2に反比例するので、力率cosφが小さくなると急激に銅損Pcが大きくなるため、Aインバータでは、力率cosφを一定(0.8程度)にする。
【0024】
しかし、通常、すべりSは、Aインバータの出力電圧の低下と共に大きくなるため、結果として(1−S)2が小さくなり、銅損Pcは負荷が小さい時には急激に高くなる。
【0025】
前述のように、Aインバータは、鉄損Piと銅損Pcを等しくする電圧V0(図6参照)を、電力Pと周波数fにより演算しているが、この電圧V0を定める場合に、負荷変動があると定めにくく、不安定電圧となる。その理由は、Aインバータでは、力率cosφを一定に設定していても、電動機のすべりSが全く考慮されていないため、銅損Pcの値が定まらず、結果として、鉄損Piと銅損Pcを等しくする電圧V0が求まらず、最大効率になるように決められないからである。
【0026】
したがって、Aインバータの省エネ制御は、最小電力制御ではなくて、電動機の定速運転時の高効率制御となり、省エネ効果がBインバータよりも小さい。
【0027】
次に、Bインバータに関する問題点について説明する。
【0028】
上記(2)式を負荷トルクTを含む項で表示すると、
Pc=K3T2/{(1−S)2・(Vcosφ)2} (4)
(K3:定数)となる。
【0029】
また、このときの電力Pは、
【0030】
【数2】
(但し、ω=2πf,I=電流)となる。
【0031】
Aインバータのように、力率cosφを一定として制御すると、あるトルク以下の軽負荷においては、電力Pも小さくなるため、電圧Vもしくは電流Iが下がりすぎてしまい、誘導電動機の安定運転条件を示す次の式、
dTm/d(1−S)<dT1/d(1−S) (6)
(但し、Tm:電動機トルク、T1:負荷トルク)を満足しなくなり、電動機は停止する。
【0032】
これに対して、Bインバータは,Aインバータとは異なり、力率cosφを一定値以下の範囲で可変にする。すなわち、負荷トルクTが小さい時(負荷が小さい時)には、力率cosφを小さくして制御するので、誘導電動機の安定運転条件を示す(6)式を満たすように作用する。
【0033】
しかしながら、Bインバータにおいて、軽負荷で力率cosφを小さくして制御した場合には、負荷の増減時に高調波電流が振動的となってその波高値が大きくなり、インバータがトリップしたり、主回路素子の定格電流を超過する恐れが生じるため、短時間の負荷変動には適さない(以下、負荷変動耐量が小さいと表現する)という不都合が生じる。
【0034】
2 同期切替に関して
商用電源とインバータの同期切替技術は、電力系統の系統連系や発電機の並列運転に従来より使用されてきたが、大がかりで高価なものになるため、大容量電流形インバータのような高価なものに用途が限られていた。
【0035】
しかしながら、近年、カストマニーズが高まり、商用運転とインバータ運転の切替を誘導電動機を止めずに行う速度サーチ機能を有するものも出始めてきた。
【0036】
この速度サーチとは、インバータを指定周波数から始動し、同期点を自動検出して運転周波数に引き込む機能であるが、複雑な回路構成となるため、いかに簡略化した回路構成て負荷変動時にも安定して同期切替えするかが課題として残されている。
【0037】
3 昇圧に関して
PAMインバータは、入力電圧よりも出力電圧が高くなるように昇圧が可能であるが、チョッパ部で脈流をチョッピングしてインバータの出力電圧を制御しているので、断続的なスイッチングで効率が低下する。
【0038】
また、誘導電動機の起動時には、(1)式におけるVDC側よりみた等価負荷抵抗Rが小さく(つまり出力周波数が低く)、したがって、誘導電動機への出力電圧VDCも小さくて始動トルクが低くなる。
【0039】
これに加えて、特に軽負荷時には電流が振動的になりその波高値が高くなり、誘導電動機の電流が歪波となるので、主回路素子の破損原因にもなりうる。
【0040】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、前述した1省エネに関しては、Bインバータと同等で、かつ、負荷変動耐量がBインバータより大きくて安定度に優れ、2同期切替に関しては、速度サーチ機能付インバータより簡単な回路構成で、負荷変動時にも安定して同期切替が行え、3昇圧に関しては、従来のPAMインバータと異なる構成で、効率や起動トルクを大幅に改善でき、かつ軽負荷時にも安定した動作が行えるようにすることを課題とする。
【0041】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るインバータ装置(以下、ESC[Energy Saving Component]という)は、上記の課題を解決するため、次のようにしている。
【0042】
このESCの特徴を総合的にまとめると次の3つになる。
【0043】
(1) すべり制御
一般にベクトル制御では、最近では速度センサを必要としない“すべり周波数制御”が実用化されているが、これは、励磁電流Im、一次電流I1、トルク電流I2を検出して演算処理してすべり周波数fsを、
fs=(1/2πT2)・I2/Im
(但し、T2:二次回路時定数)を求め、電動機の回転速度(周渡数)fnを、
f1=fs十fn
(但し、f1:−次周波数)より求めるものである。
【0044】
しかし、ここで述べる“すべり制御”とは、このようなベクトル制御とは異なり、速度センサを用いないすべり検出の技術で、インバータ部の交流出力電力と交流出力電流より誘導電動機の回転時のすべりを演算する一方、誘導電動機の印加電圧を徐々に低減して誘導電動機の入力電力および入力電流の少なくとも一方を最小にする消費電力が最低となる電圧を見つけ、このときのすべりから誘導電動機の負荷に応じて予め定めた設定すべりの値を減じた運転点まで誘導電動機の印加電圧を上昇させて安定性を確保するものである。
【0045】
このことで、Bインバータと同等の省エネを実現し、かつ、負荷変動耐量がBインバータより大きくて安定度に優れたものとする。
【0046】
そのために、本発明のESCでは、入力される商用の交流電源を順変換するコンバータ部と、このコンバータ部の直流電力を逆変換して誘導電動機に供給するインバータ部とを有するインバータ装置であって、前記インバータ部の交流出力電流を検出する電流検出手段と、前記インバータ部の交流出力電圧を検出する電圧検出手段と、前記交流出力電流と前記交流出力電圧より交流出力電力を演算する電力演算手段と、前記誘導電動機の負荷率および前記交流出力電力より求められる電力負荷係数と、前記誘導電動機の定格電力と、前記誘導電動機の定格電流と、前記交流出力電流とより前記誘導電動機の回転時のすべりを演算するすべり演算手段と、前記誘導電動機の入力電力および入力電流の少なくとも一方を最小ならしめるべく、前記コンバータ部もしくは前記インバータ部の出力電圧を制御して前記誘導電動機の印加電圧を低減する手段と、前記誘導電動機の入力電力および入力電流の少なくとも一方を最小にする誘導電動機のすべりを前記すべり演算手段より算出し、このすべりから前記誘導電動機の負荷に応じて予め定めた設定すべりの値を減じた運転点まで前記誘導電動機の印加電圧を上昇さす手段と、運転中の誘導電動機の入力周波数を誘導電動機の設定すべりの値に相当する割合だけ低減さす手段とを備えている。
【0048】
(2) 同期切替
インバータの出力が商用の交流電源の周波数、電圧、位相に一致した時点でインバータから商用電源へ、逆に、商用電源からインバータヘ同期切替できるように、インバータ出力の周波数、電圧、位相制御を簡単な回路構成でもって実現する。
【0049】
そのために、本発明のESCでは、前記交流電源電圧と前記インバータ部の交流出力電圧との位相差を検出する位相差検出手段と、前記交流電源電圧と前記インバータ部の交流出力電圧との電圧差を検出する電圧差検出手段と、該電圧差検出手段で検出される電圧差に応じて基準電圧を変化させるよう構成した基準電圧発生手段からの基準電圧をその大きさに応じて前記インバータ部のスイッチング周波数を変換するV/F変換手段と、前記位相差検出手段で検出される位相差に応じて前記V/F変換手段の出力パルスの位相をシフトする移相手段と、前記位相差検出手段および電圧差検出手段で検出される位相差と電圧差が無いか、もしくは所定範囲内にある場合にのみ前記交流電源とインバータ部の出力とを切り替え動作する選択手段とを有している。
【0050】
(3) 誘導電動機の起動時の昇圧
誘導電動機の起動時において、インバータ部の出力電圧を商用の交流電源の電圧以上に高効率で上昇させることにより、従来のPAMインバータの欠点である始動トルク不足や電動機効率の低下を解決する。
【0051】
そのために、本発明のESCでは、交流電源電圧を昇圧して一定期間だけインバータ部に供給する昇圧手段を有し、この昇圧手段は、変圧器またはコンデンサと、整流器とを用いて昇圧するようにしている。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0053】
図1は、本発明の実施の形態におけるESCの制御回路の構成を示すブロック図である。なお、このブロック図は、ESCの動作を理解し易くするためのものであり、実際の各種演算は、A/D変換した後、CPUで処理される。
【0054】
1は交流電源、2はこの実施の形態のESCの制御対象となる誘導電動機である。3は交流を直流に変換するコンバータ部(順変換器)、5は直流を交流に変換するインバータ部(逆変換器)であり、コンバータ部3で直流に変化された出力は平滑回路4で平滑にされた後、インバータ部5において直流電力が可変電圧、可変周波数の交流電力に変換されて出力される。
【0055】
6は基準電圧発生器で、ここで発生される基準電圧によって誘導電動機2へ供給する交流出力の電圧と周波数とが基本的に設定される。すなわち、基準電圧発生器6からの基準電圧は、第1電圧調整器11に加わり、この第1電圧調整器11よってコンバータ部3の出力電圧が基本的に決定され、これに伴い、インバータ部5の出力電圧もこれにより決定される。また、基準電圧発生器6からの基準電圧は、V/F変換器13に加わり、このV/F変換器13の出力パルスがパルス分配器14で分配されてインバータ部5の出力周波数が基本的に決定される。なお、移相器15については同期切替のために必要となるもので、これについては後述する。
【0056】
次に、すべり制御の機能および動作について説明する。
【0057】
インバータ部5の出力電流は電流検出器16により、出力電圧は電圧検出器17によりそれぞれ検出される。電力演算器20は、両検出器16,17の出力から、ブロンデルの定理により電力を演算する。
【0058】
21は定数設定調整器で、誘導電動機の定格電力、定格電流、負荷率等の基本定数を設定する。
【0059】
定数設定調整器21にて初期値として設定する負荷率は、誘導電動機の商用運転時又は昇圧運転時電力を定格電力で除した値である。
【0060】
しかし、負荷率(Kw)は誘導電動機の負荷の変動によって変化するため、インバータ装置にて運転中の誘導電動機に負荷変動が生じた場合、電力演算器20の出力Pが変動するので、初期設定負荷率(Kwo)を、電力変動分(△P)で調整する。
【0061】
すなわち、負荷率Kw=Kwo±△Pとなる。ここで、正及び負符号はそれぞれ負荷の増加及び減少を表す。
【0062】
選択条件回路22には、電流検出器16の出力電流Iと電力演算器20の出力電力Pが入力されるが、ここで電流Iおよび電力Pの少なくとも一つを選択する。いま、電力Pを選択すると、選択条件回路22の出力の一つはすべり演算器の入力P2となる。
【0063】
すべり演算器23では、電流検出器16の出力Iと電力演算器20の出力P、および定数設定調整器21の出力から誘導電動機2のすべりSを次式によって算出する。
【0064】
【数3】
ここで、Pc2:二次銅損、P2:二次入力、P0:定格電力、
I0:定格電流、V0:定格電圧、cosφ0:定格力率、
r2:二次抵抗
上式中の二次諸量I2 2/P2を一次諸量で表すと次の通りとなる。
【0065】
I0 2I2 2/P2=A・Kv・I2
ここで、A:定数、Kv:電力負荷係数、I:一次電流(入力電流)
また、電力負荷係数は次式で表される。
【0066】
Kv=(aP2+bP+c)/P
ここで、a=−1、b=(P0Kw+1)、c=(1−Kw)
P:一次電力(入力電力)
また、Kw:負荷率(=Pc/P0)、Pc:商用時又は昇圧時の一次電力
従って、Sは次式により求まる。
【0067】
S=K・Kv・I2/P0・I0 (7)
ここで、Kは定数であるが、誘導電動機の設計値等より算出できる。
【0068】
選択条件回路22の出力P1m、P1はそれぞれすべり設定器24および調整電圧発生器27に入力されるが、ここでP1mは誘導電動機2の入力電力が最小になった時に出力される信号である。このP1mは次のようにして求める。
【0069】
調整電圧発生器27には、減算器25の出力Stと選択条件回路22の出力P1が入力されるが、誘導電動機2の入力電力の最小値が求まるまでは、減算器25からの出力Stは無出力となっている。すなわち、選択条件回路22の出力P1のみが調整電圧発生器27に入力されると、その出力Vpは順序回路28を経て、第2電圧調整器12に電圧低減指令を与えることで誘導電動機2の入力電力の最小値が求まる。
【0070】
すべり設定器24は、誘導電動機の負荷変動耐量を大きくする目的で、電力最小点のすべりを所定分小さくする。この所定分のすべりを設定すべり(S0)と呼ぶ。この設定すべりは負荷変動を勘案して予めすべり設定器24で設定する。
【0071】
このすべり設定器24の出力S0およびS0fは、誘導電動機2の入力電力最小時における選択条件回路22の出力P1mがすべり設定器24に入力された時に、それぞれ減算器25および周波数調整用電圧発生器26に入力される。
【0072】
誘導電動機2の入力電力が最小になるすべりは、すべり演算器23で演算され、その値Sから設定すべりS0を減じる演算が減算器25で実行され、すべりStを出力する。このすべりStが調整電圧発生器27に入力されると、その出力Vpは順序回路28を経て、第2電圧調整器12に電圧上昇指令を与える。
【0073】
以上の制御アルゴリズムを図7に示す。
【0074】
先ず、計測1では、電流検出器16および電圧検出器17で、電流Iおよび電圧Vを検出し、電力演算器20では、電力Pを演算するとともに、すべり演算器23で、上述の(7)式によりすべりを算出する(ステップn1)。
【0075】
調整電圧発生器27は、最小電力点が見出されて減算器25からすべりStが与えられるまで、一次電圧を低減させる(ステップn2)。
【0076】
計測2では、電流および電圧を検出するとともに、電力およびすべりを算出し(ステップn3)、計測2で算出された電力P2が、計測1で算出された電力P1を上回ったか否かを判断し(ステップn4)は、上回っていないときには、電力P2を電力P1に置き換え(ステップn42)、ステップn2に戻る。上回ったときには、最小電力点になったとして、ステップn5に移る。
【0077】
ステップn5では、最小電力点となったときのすべりからすべり設定器24で設定されたすべりを減算器25で減算し、調整電圧発生器27は、一次電圧を上昇させる(ステップn6)。
【0078】
次に計測3では、電流および電圧を検出するとともに、電力およびすべりを算出し(ステップn7)、算出したすべりが、ステップn5で算出したすべりを下回ったか否かを判断し(ステップn8)、下回っていないときには、ステップn6に戻り、下回ったときには、終了する。
【0079】
ここでは理解を容易にするために、コンバータ部3における電圧制御を行う場合について説明したが、インバータ部5のスイッチイング素子のベースドライブ制御によって出力電圧を制御するようにしてもよいのは勿論である。
【0080】
順序回路28は、調整電圧発生器27の出力Vpを優先して処理し電圧制御を終了する。更に、逓減トルク負荷で省エネ効果を上げたい場合には、周波数調整用電圧発生器26の出力Vfを処理してV/F変換器13の入力を減じ、インバータ部5の出力周波数を低減さす。すなわち、例えば設定すべりを2%、誘導電動機が54Hzでインバータ運転中の場合は、周波数調整用電圧発生器26の出力指令は、54−(54×0.02)=52.92(Hz)となり、この周波数で誘導電動機が運転することになる。
【0081】
図2は誘導電動機2に対する入力電力と入力電圧の関係を示す特性図である。誘導電動機の入力電力と入力電圧の関係は鉄損PIの増加と、銅損Pcおよび機械的な負荷分の減少とが相互に働き合って最小の入力電力の値をもつような特質となる。したがって、誘導電動機2に対する入力電圧を下げていけば、誘導電動機2の入力電力が最小となる値(図中、VaVbVc)が見つかるので、負荷変動のない理想的な場合は、この点を求めることが最適な最小電力制御となる。
【0082】
図3はこのような最適な最小電力制御を行う場合の説明図である。
【0083】
定格電圧Vn、定格周波数Fnの誘導電動機2を設定回転数に制御する場合を考えると、従来の通常のインバータ制御では、図3中の、V/F一定の直線上のある一点a(周波数Fr、電圧Vr)で運転する。
【0084】
しかし、このa点は誘導電動機2の入力電力を最小にする点ではない。本発明のESCでは、コンバータ部3の出力電圧値を低減して負荷に見合った分だけの電圧値(図3中のb点)に自動調整して、誘導電動機2の不必要な損失を発生させないようにしている。これは負荷率によっては非常に有効な働きとなる。
【0085】
また、この場合において、インバータ部5の出力周波数をほとんど下げないで、電圧値だけを低減させて最小電力制御を行うこともできる。これは負荷率が低い場合に有効で、十分な省エネ効果が得られる。
【0086】
次に,本発明のESCにおける負荷変動に対する安定度について述べる。
【0087】
いま、一定負荷で回転中の誘導電動機のすべりをSとすると、負荷変動分γがあるときのすべりはS十γとなるが、これがSにもどる回転力Tは、γが非常に小さいとき次式で表される。
【0088】
ここに、V:端子電圧、V0:内部電圧、ω:同期角速度、χ:リアクタンス、k=(3VV0/ωχ)cosSである。
【0089】
また、誘導電動機の制動係数をD、慣性モーメントをJとすると、負荷変動による安定度特性方程式は次の通りとなる。
【0090】
J(d2γ/dt2)+D(dγ/dt)+kγ=0
この解は、
γ=Aεαt+Bεβt (8)
ただし、
【0091】
【数4】
【0092】
【数5】
(8)式の解より、判別式D2−4kJ≧0なら安定、D2−4kJ<0なら不安定となる。
【0093】
また、(8)式は、
γ=ε-{D/(2J)}t{AεJzt+BεJzt}
但し、
【0094】
【数6】
と表記できるので、負荷変動による振動の周波数fは、次のようになる。
【0095】
【数7】
また、固有振動周波数f0は次のようになる。
【0096】
【数8】
すなわち、誘導電動機を安定運転するには、負荷変動による強制振動の周期と誘導電動機の固有振動の周期とを遠ざける必要があるが(±20%以上)、通常の誘導電動機の固有振動の周期は数秒以内のため、負荷変動が数秒以内の繰り返し周期となる場合には注意が必要である。
【0097】
ここで、すべりとトルクとの関係を説明する。
【0098】
誘導電動機(以下モータと記す)のトルクは、周知のように二次諸量で表せば次のようになる。
【0099】
T=m2E2 2Sr2/ω1・{r2 2+(sx2)2} [N−m] (9)
ここでm2:二次巻線の相数(かご形の場合 m2=スロット数/極対数)
E2:二次誘導起電力、S:すべり
ω1:同期回転角速度、r2:二次回路抵抗
x2:二次回路リアクタンス
(9)式において最大トルクをTm、その時のすべりをSmとすれば、それぞれ次式で表されることはよく知られている。
【0100】
Sm=r2/x2 (10)
Tm=m2E2 2/ω1・2x2 (11)
ここで、TmおよびSmを用いて(9)式のトルクTを表せば
T=2Tm/{(Sm/S)+(S/Sm)} (12)
となり、すべりとトルクとの関係がより一層明確になる。即ち、
(1)S>Smのときは、(Sm/S)《(S/Sm)となり、
T≒2TmSm/S (13)
(2)S<Smのときは、(Sm/S)》(S/Sm)となり、
T≒2TmS/Sm (14)
(3)S≒Smのときは、(Sm/S)≒(S/Sm)≒1となり、
T≒Tm (15)
以上の簡略式はトルクの特徴をよく表している。
【0101】
ところで、(9)式を一次側換算値を用い、簡易等価回路によってトルクを表すと次式のようになる。
【0102】
T=m1V1 2(r2’/S)/ω1・{(r2’/S)2+x’2 2} (16)
ここで、m1:一次巻線の相数
V1:一次供給電圧
(16)式をもとに、一次供給電圧を変えた場合のトルク速度特性を描くと図8の実線の様になる。即ち、この実線はモータトルクTMであり、V1nは電源電圧を表す。
【0103】
また、図8の破線は(13)、(14)、(15)式を示したものである。即ち、例えばV1=3/4V1n特性において、(13)式は双曲線abcを表し、(14)式は直線cdoを表す。両者の交点cでは、S=Sm 、T=2Tmである。また、(15)式は横軸に平行な直線bmdを表し、曲線abcとの交点bではS=2Sm、直線cdoの交点dではS=Sm/2となる。従って、(12)式の示すトルク速度曲線は、破線で示すabmdoの近似曲線でその特性の概要を表すことができる。
【0104】
この図8をもとにモータの安定性(負荷変動耐量)を定性的に説明する。いま負荷トルクをTLのようなものとすると、省エネ効果を最大にするにはV1=1/2V1nまで、モータへの一次供給電圧を下げればよい。このときのモータの安定運転点はE’s点である。(最大トルクより5%低減点)。この時のすべり及び最大トルクはそれぞれS’及びT’mとなるが、負荷変動(増加)時はT’m−E’sが非常に小さくストール現象を起こしモータは停止しやすくなる。そこで、この現象を回避し安定性を向上さすには、V1=1/31/2V1nまで一次供給電圧を上昇さすとする。これは設定すべりS1を1.0(%)とした場合に相当する。いま、このモータ(2.2KW)の停動トルク(ストーリングトルク)が定格トルクの240%と仮定すると(一般には200〜250%の範囲で設計される)、このモータの負荷率は約60%となる。従って、一次供給電圧上昇分を決めるすべりSvは次のようになる。
【0105】
Sv=Sr−S1 (17)
ここで、Sr:一次供給電圧が電力最小値になる時のすべり
S1:設定すべり
いま、2.2KW,負荷率60%のモータのSvを(7)式および(17)式により計算すると
Sv=1.74−1.0=0.74(%)
即ち、Sv値に相当する一次供給電圧は115V(200V系において)であり、その時のモータの安定運転点は図8のE”sとなる。負荷増量裕度はT”m−E”sとなり、すべりS時の裕度はT’m−E’sに比べ約20倍の耐量アップとなる。本例は図にて分かりやすくするために設定すべりを1.0%とした場合であり、設定すべり0.27%とした場合の負荷変動耐量は負荷トルクを図8のようなTnと仮定すれば約5倍となるが、この耐量は負荷の種類、負荷率によっても変化する。
【0106】
いま一例として、負荷変動の周期を3秒、負荷率80%(すベり4%),すべりの減少を2%とした場合の負荷変動とESCの安定度特性を図4に示す。
【0107】
この場合の誘導電動機の固有振動周期は2.8秒で負荷変動の周期に近いが、負荷変動増量190%が安定限界となっており、負荷変動耐量を150%と規定した場合でも、この程度の急激な負荷変動には十分耐えうるものとなる。これにより、安定度が向上する。
【0108】
なお、モータ負荷が増加して不安定になると、消費電力が増える。よって、消費電力を検出しておき、これが一定割合以上増加すると、同期切り替えを行い商用運転とすることで安定性を向上させることができる。
【0109】
次に、昇圧機能の構成および動作について説明する。
【0110】
従来のPAMインバータは、昇圧機能があるものの、特に、負荷の起動時には出力電圧が小さくて始動トルクが低い。また、コンバータ部の出力をチョッパ部でチョッピングして出力電圧を制御しているので、断続的なスイッチングで効率が低下するなどの問題がある。
【0111】
そこで、この実施の形態のESCでは、昇圧回路9と設定器10とを設け、交流電源1の交流電圧が昇圧回路9から設定器10を経て平滑回路4に印加されるようにしている。
【0112】
ここでの昇圧回路9は、たとえば変圧器、電流制限用抵抗、逆流防止用ダイオード(図示せず)などを組み合わせた整流回路より構成されており、コンバータ部3の出力をチョッピングすることなく昇圧する。なお、この昇圧回路9は、コンデンサと整流回路などを組み合わせて構成することも可能である。
【0113】
また、設定器10は、昇圧時間を設定するタイマー、または外部信号により動作するスイッチにより構成され、誘導電動機2の起動時には昇圧回路9の出力を平滑回路4に供給するが、起動時から所定時間が経過して定常状態に移行した時点で昇圧回路9の出力を遮断して、コンバータ部3の出力が平滑回路4に供給されるように動作する。なお、この設定器10は、昇圧回路9内に組み込むこともできる。
【0114】
次に、同期切替機能の構成および動作について説明する。
【0115】
同期切替のためには、インバータ部5の出力が、交流電源1に対して周波数、電圧、位相がいずれも一致するように制御を行う必要がある。
【0116】
そこで、インバータ部5の出力電圧Vivと交流電源1の出力電圧Vccは、それぞれ第1,第2ゼロクロス・コンパレータ30,31に入力される。
【0117】
第1,第2ゼロクロス・コンパレータ30,31は、交流信号がゼロ点を横切る時にパルスを発生し、方形波に変換する。
【0118】
第1,第2ゼロクロス・コンパレータ30,31の各出力は、第1,第2整流回路32,33でそれぞれ整流されて正側の方形波の信号eiv,eccのみが取り出される。
【0119】
位相比較器34は、たとえばEX−OR回路からなり、第1,第2ゼロクロス・コンパレータ30,31の両出力信号eiv,eccの位相を比較し、両信号の位相差の情報を方形波の形で出力する。
【0120】
積分器35は、この位相比較器34の出力を積分し(三角波状)、そのピーク値がピークホールド回路36で保持される。そして、このピークホールド回路36の出力Ecと第1整流回路32の出力eivは、共に位相調整器37に入力される。
【0121】
位相調整器37は、たとえば三角波発生器、コンパレータ、PLL回路(図示せず)で構成されている。
【0122】
ここで、ピークホ−ルド回路36の出力は位相調整器37に対してコントロール電圧Ecとして入力され、このコントロール電圧Ecの大きさにより第1整流回路32の出力電圧eivに対する位相調整器37の出力電圧e4の位相が変化する。
【0123】
すなわち、位相調整器37の出力e4は、入力信号eivに対して90°位相の進んだデューティ50%の方形波であるが、両信号eiv,eccの位相差に応じて位相調整器37の出力信号e4の位相が変化する。Ecとe4の位相差の関係を図5に示す。
【0124】
位相調整器37の出力信号e4と第1整流回路32の出力信号eivとが共に位相一致回路41に入力される。
【0125】
位相一致回路41は、両信号e4,eivの位相差を比較して、位相差があればその位相差の情報をD/Aコンバータ45を介して移相器15に与えるので、移相器15は、インバータ部5に入力されるパルス分配器14からのパルスを位相差がゼロになるようシフトさせる。
【0126】
そして、位相差ゼロ、すなわちインバータ部5の交流出力と交流電源1の交流出力との位相が一致すれば、位相一致回路41はハイレベルの信号を出力し、これが論理積回路42に与えられる。
【0127】
したがって、この実施の形態の場合には、誘導電動機2の起動時から定常状態、また同期切替のいずれの場合においても、インバータ部5の交流出力は、常に交流電源1の交流出力の位相に一致することになる。
【0128】
一方、電圧一致回路40には、交流電源1の交流電圧Vccとインバータ部5の出力電圧Vivが共に図示しない検波回路で検波されて入力される。
【0129】
電圧一致回路40は、両電圧Vcc,Vinの差を比較して電圧差ゼロ、すなわちインバータ部5の交流電圧Vivと交流電源1の交流電圧Vccとの電圧が一致すればハイレベルの信号を出力し、これが論理積回路42に与えられる。なお、電圧一致回路40における両電圧Vcc,Vinの差の情報は、同期切替のためのスイッチ48がオンされた場合にのみD/Aコンバータ44を介して基準電圧発生器6に与えられて基準電圧が変化される。
【0130】
開閉器43は、交流電源1の出力とインバータ部5の出力とを選択的に切り替えるもので、たとえばSSC(半導体接触器)で構成され、論理積回路42からハイレベルの信号が出力されたときに、交流電源1からの交流電力が誘導電動機2に供給するように動作する。
【0131】
次に、図1に示したこの実施の形態におけるESCの全体的な動作について説明する。
【0132】
同期切替を行う場合の外は、操作部46は操作されておらず、したがって同期切替用のスイッチ47、48は共にオフしている。したがって、このときには、論理積回路42の出力が開閉器43に加わらないため、開閉器43はインバータ部5の出力が誘導電動機2に供給されるように接続が切り替わっている。
【0133】
そして、誘導電動機2の起動時においては、交流電源1からの交流電力が昇圧回路9、設定器10、平滑回路4を介してインバータ部5に加わる。このとき、昇圧回路9によって、交流電源1の出力電圧が昇圧されているため、インバータ部5の出力電圧Vivも高くなり、これが開閉器43を介して誘導電動機2に供給される。したがって、従来のPAMインバータよりも誘導電動機2の始動トルクが十分に確保される。また、昇圧回路9は交流をチョッピングしていないため効率もよい。
【0134】
起動時から所定時間が経過して誘導電動機2が定常状態に移行した時点で、設定器10によって昇圧回路9の出力が遮断されるため、今度は、交流電源1の交流電力がコンバータ部3および平滑回路4を介してインバータ部5に供給されるようになる。
【0135】
このとき、スイッチ48はオフなので、基準電圧発生器6からは予め設定された所定の基準電圧が発生され、この基準電圧が第1電圧調整器11に加わって、これに応じた電圧V1がコンバータ部3に供給される。
【0136】
また、すべり制御による第2調整器12の出力V2もコンバータ部3に供給され、コンバータ部3は、誘導電動機2の印加電圧を徐々に低減して誘導電動機2の入力電力および入力電流の少なくとも一方を最小にし、このときのすべりから誘導電動機2の負荷に応じて予め定めた設定すべりの値を減じた運転点まで印加電圧を上昇させて安定性を確保して最適制御が行われる。その詳細は前述の通りである。
【0137】
また、基準電圧はV/F変換器13に入力されて周波数変換され、これによってインバータ部5の出力周波数が決定される。
【0138】
次に、同期切替を行うために、操作部46が操作されると、これに応じてスイッチ47,48が共にオンする。
【0139】
そこで、電圧一致回路40は、交流電源1の電圧Vccとインバータ部5の出力電圧Vivとの波高差を測り、波高差の情報をスイッチ48を介して基準電圧発生器6に出力する。
【0140】
基準電圧発生器6は、この波高差の情報に基づいて基準電圧が変化され、これによって、両電圧Vcc,Vinとの波高差がほぼゼロになるように第1電圧調整器11の出力電圧V1が変更される。波高差ゼロ、すなわち両電圧Vcc,Vivが一致すれば、電圧一致回路40よりハイレベルの信号が出力される。
【0141】
この場合、V/F変換器13は、V/F=一定の関係を保ってインバータ部5の出力周波数を変化させるので、交流電源1の周波数とインバータ部5の出力周波数も一致する。
【0142】
さらに、前述のように、位相一致回路41は、両信号e4,eivの位相差を比較して、位相差があればその位相差の情報をD/Aコンバータ45を介して移相器15に与えるので、移相器15は、インバータ部5に入力されるパルス分配器14からのパルスを位相差がゼロになるようシフトする。
【0143】
そして、位相差ゼロ、すなわちインバータ部5の交流出力と交流電源1の交流出力との位相が一致すれば、位相一致回路41はハイレベルの信号を出力し、これが論理積回路42に与えられる。
【0144】
電圧一致回路40の出力と位相一致回路41の出力が共にハイレベルとなったとき、論理積回路42の出力もハイレベルとなり、この信号がスイッチ47を介して開閉器43に入力される。
【0145】
これに応じて、開閉器43は、インバータ部5の出力から交流電源1出力への同期切替を実行し、これによって、誘導電動機2は途中制止することなくショックレスに回転を続ける。
【0146】
なお、上記の説明は、インバータ部5の出力を交流電源1の出力に切り替える場合であるが、その逆に、交流電源1よりインバータ部5の出力に切り替える場合も基本的な動作は同じである。
【0147】
このような機能を有する本発明のESCを用いれば、負荷の変動幅の大きな機械、たとえば真空蒸着装置等を使用する場合にも省エネを図ることができるので好適である。
【0148】
すなわち、このような真空蒸着装置は起動より所定の真空度に到達する迄(数分〜数十分)は極めて重負荷で、その後は1/10以下にまで負荷が減少する。
【0149】
そこで、このような用途にESCを適用するには、起動直後は、誘導電動機2の始動トルクを確保するために整流回路9を使用した運転を行い、次に、所定の真空度に短時間で到達させるために同期切替を行って商用の交流電源1を使用した運転に切替え、所定の真空度に到達した以後は、省エネを優先させるために、インバータ部5の出力を用いて周波数と電圧とを下げた運転をすることにより、大幅な省エネ化を図ることができる。
【0150】
【発明の効果】
本発明のインバータ装置(ESC)は、次のような効果を奏する。
【0151】
(1) 省エネ特性は、最近開発されているBインバータと同等であるが、この発明のESCは、Bインバータより格段に高頻度な運転・停止や急激な負荷の変動に対して負荷変動耐量が大きく安定度に優れている。したがって、ポンプや送風機等の逓減トルク負荷は勿論のこと、負荷変動の激しいコンベア等の定トルク負荷に適用しても大きな省エネ化が図れる。
【0152】
(2) 同期切替および昇圧機能は従来のインバータ装置にないものであり、これにより高出力、高効率化が図れ、用途が大幅に広がる。特に、同期切替に関しては、速度サーチ機能付インバータより簡単な回路構成で負荷変動時にも安定して同期切替を行うことができる。また、昇圧に関しては、従来のPAMインバータと異なる構成で、効率や起動トルクを大幅に改善でき、かつ軽負荷時にも安定した動作が行える。
【0153】
(3) すべり制御の安定度解析により、負荷変動耐量の概念を新しく導入でき、今後のインバータの標準仕様として信頼性の指標が確立できる。
【0154】
(4) このように、ESCは、省エネはもとより、工場ラインの生産性向上にも大きな効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るインバータ装置の構成を示すブロック図
【図2】誘導電動機に対する入力電圧と入力電力との関係を示す特性図
【図3】誘導電動機の最小電力制御の説明図
【図4】本発明の実施の形態のインバータ装置の負荷変動に対する安定度を示す特性図
【図5】位相調整器に入力されるコントロール電圧と位相調整器から出力される位相調整用の出力信号の関係を示す特性図
【図6】誘導電動機に対して供給される電圧と損失との関係を示す特性図
【図7】動作説明に供するフローチャート
【図8】一次供給電圧を変えた場合のトルク速度特性を示す図
【符号の説明】
1…交流電源、2…誘導電動機、3…コンバータ部、4…平滑回路、5…インバータ部、6…基準電圧発生器、9…昇圧回路、10…設定器、11,12…第1,第2電圧調整器、13…V/F変換器、14…パルス分配器、15…移相器、16…電流検出器、17…電圧検出器、20…電力演算器、23…すべり演算器、30,31…第1、第2ゼロクロス・コンパレータ、32,33…第1、第2整流回路、34…位相比較器、35…積分器、36…ピークホールド回路、37…位相調整器、40…電圧一致回路、41…位相一致回路、43…開閉器、46…操作部、47,48…スイッチ。
Claims (1)
- 入力される商用の交流電源を順変換するコンバータ部と、このコンバータ部の直流電力を逆変換して誘導電動機に供給するインバータ部とを有するインバータ装置であって、
前記インバータ部の交流出力電流を検出する電流検出手段と、
前記インバータ部の交流出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記交流出力電流と前記交流出力電圧より交流出力電力を演算する電力演算手段と、
前記誘導電動機の負荷率および前記交流出力電力より求められる電力負荷係数と、前記誘導電動機の定格電力と、前記誘導電動機の定格電流と、前記交流出力電流とより前記誘導電動機の回転時のすべりを演算するすべり演算手段と、
前記誘導電動機の入力電力および入力電流の少なくとも一方を最小ならしめるべく、前記コンバータ部もしくは前記インバータ部の出力電圧を制御して前記誘導電動機の印加電圧を低減する手段と、
前記誘導電動機の入力電力および入力電流の少なくとも一方を最小にする誘導電動機のすべりを前記すべり演算手段より算出し、このすべりから前記誘導電動機の負荷に応じて予め定めた設定すべりの値を減じた運転点まで前記誘導電動機の印加電圧を上昇さす手段と、
前記誘導電動機の入力周波数を前記誘導電動機の設定すべりの値に相当する割合だけ低減さす手段と、
前記交流電源電圧と前記インバータ部の交流出力電圧との位相差を検出する位相差検出手段と、
前記交流電源電圧と前記インバータ部の交流出力電圧との電圧差を検出する電圧差検出手段と、
該電圧差検出手段で検出される電圧差に応じて基準電圧を変化させるよう構成した基準電圧発生手段からの基準電圧をその大きさに応じて前記インバータ部のスイッチング周波数を変換するV/F変換手段と、
前記位相差検出手段で検出される位相差に応じて前記V/F変換手段の出力パルスの位相をシフトする移相手段と、
前記位相差検出手段および前記電圧差検出手段で検出される位相差と電圧差が無いか、もしくは所定範囲内にある場合にのみ前記交流電源とインバータ部の出力とを切替え動作する選択手段と、
前記交流電源電圧を変圧器またはコンデンサと整流器とを用いて昇圧して、一定期間だけインバータ部に供給する昇圧手段と、
を備えたことを特徴とするインバータ装置。
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