JP3720007B2 - 膜の評価方法,温度測定方法及び半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器に搭載される各種のトランジスタや半導体メモリ等の半導体装置を製造するために利用することができる、膜の評価方法,温度測定方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置の高集積化及び高性能化に伴い、多層配線の層間絶縁膜には比誘電率の低いフッ素添加シリコン酸化膜(以下、FSG膜と称する)が用いられている。このFSG膜の形成は、微細な配線間の埋め込みに適しているHDP−CVD(High Density Plasma-Chemical Vapor Deposition)装置で成膜されることが一般的である。
【0003】
しかしながら、HDP−CVD装置は、静電チャックによりウエハを保持する構造となっていることから、成膜温度のモニタリングが不可能であるという不具合がある。さらに、HDP−CVD装置の成膜温度は成膜時のRFパワー等により決定されるが、熱電対付きシリコン基板等による実温度の測定が困難であるため、HDP−CVD装置の成膜温度は正確には分からない。
【0004】
そこで、本出願人は、国際公開WO99/57146号公報に記載されたシリコン基板上のアモルファスシリコン層の回復レートによる温度測定技術を用いて、HDP−CVD装置の成膜温度を測定していた。
【0005】
なお、エリプソメトリ分光法に関連する文献としては、上記国際公開公報の他に、
▲1▼ Nuclear Insruments and Methods in Physics Research B19/20(1987)p.577-581
▲2▼ 特開平06−077301号公報
▲3▼ Siemens Forsch.-u.Entwickl.-Ber.Bd.10(1981)Nr.1,p.48-52
▲4▼ 特開平05−249031号公報
などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のアモルファスシリコン層の回復レートによる成膜温度の測定方法では、予めシリコン基板上にアモルファスシリコン層を形成する工程が必要なことなど、事前準備が必要であった。また、HDP−CVD装置の成膜温度を測定するには、HDP−CVD装置のプロセスでの稼働を停止させて、温度測定専用の条件で膜の形成を行なう必要があった。つまり、CVD装置をオフラインにする必要があった。
【0007】
本発明の目的は、成膜装置をオフラインにすることなく、つまり、成膜装置の生産性を劣化させることなく、容易に成膜装置によって形成された膜の特性や成膜温度を測定することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の膜の評価方法は、膜が形成された基板に電磁波を入射して上記電磁波の吸収スペクトルを測定するステップ(a)と、上記吸収スペクトルの形状から上記膜の膜質に対応する特定の値を算出するステップ(b)とを備えている。
【0009】
この方法により、電磁波の吸収スペクトルを利用して、膜の特性を検知することができるので、成膜装置の制御や半導体装置などの膜の良否の判定に利用しうる資料が得られる。
【0010】
上記ステップ(a)では、上記電磁波として赤外線を入射し、上記ステップ(b)では、上記赤外線の吸収スペクトルの形状から上記特定の値を算出することができる。
【0011】
その場合には、予め、膜の膜質のレベルに対応させて参照用赤外線吸収スペクトルを複数個準備しておき、上記ステップ(b)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと、上記膜の上記赤外線吸収スペクトルとを比較して、上記特定の値を算出することにより、簡便に特定の値を得ることができる。
【0012】
上記ステップ(b)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと上記赤外線吸収スペクトルの形状に基づいて多変量解析を行なって、上記特定の値を算出することにより、PLS法(Partial Least Squres Regression )などの手法を利用して、高精度で特定の値を算出することが可能になる。
【0013】
上記ステップ(a)では、上記膜及び基板の赤外線吸収スペクトルから予め測定しておいた上記基板の赤外線吸収スペクトルを差し引くことにより、上記膜のみの赤外線吸収スペクトルを求めることが好ましい。
【0014】
本発明の温度測定方法は、膜が形成された基板に電磁波を入射して上記電磁波の吸収スペクトルを測定するステップ(a)と、上記吸収スペクトルの形状から上記膜の成膜温度を算出するステップ(b)とを備えている。
【0015】
この方法により、電磁波の吸収スペクトルを利用して、膜の成膜温度を検知することができるので、成膜装置の制御や半導体装置などの膜の良否の判定に利用しうる資料が得られる。
【0016】
上記ステップ(a)では、上記電磁波として赤外線を入射し、上記ステップ(b)では、上記赤外線の吸収スペクトルの形状から上記成膜温度を算出することができる。
【0017】
予め、膜の成膜温度に対応させて参照用赤外線吸収スペクトルを複数個準備しておき、上記ステップ(b)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと、上記膜の上記赤外線吸収スペクトルとを比較して、上記成膜温度を算出することにより、簡便に成膜温度を算出することができる。
【0018】
上記ステップ(b)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと上記赤外線吸収スペクトルとの形状に基づいて多変量解析を行なって、上記成膜温度を算出することにより、PLS法などの手法を利用して、高精度で成膜温度を算出することが可能になる。
【0019】
上記ステップ(a)では、上記膜及び基板の赤外線吸収スペクトルから予め測定しておいた上記基板の赤外線吸収スペクトルを差し引くことにより、上記膜のみの赤外線吸収スペクトルを求めることが好ましい。
【0020】
上記ステップ(a)では、予め、上記基板を成膜装置内に配置して、上記基板上に上記膜を形成し、上記ステップ(b)では、上記膜の成膜温度を上記成膜装置内の温度として算出することにより、ウエハにセンサを貼り付ける等の手段を講じることなく、インラインで流れているウエハや、管理用ウエハを利用して迅速に成膜装置(チャンバ)内の温度を測定することができる。
【0021】
本発明の第1の半導体装置の製造方法は、膜を構成要素として有する半導体装置の製造方法であって、成膜装置内に配置された下地ウエハ上に上記膜を形成するステップ(a)と、上記膜が形成されたウエハに赤外線を入射して赤外線吸収スペクトルを測定するステップ(b)と、上記赤外線吸収スペクトルの形状から上記膜の膜質に対応する特定の値を算出するステップ(c)と、上記ステップ(c)で算出された上記特定の値に応じて上記成膜装置の設定条件を制御するステップ(d)とを備えている。
【0022】
この方法により、電磁波の吸収スペクトルを利用して、インラインで非破壊的に膜の特性を検知し、その結果を成膜装置の制御に利用することができるので、生産性を低下させることなく、全ての成膜処理に対して特定の値の測定を行なって、成膜装置の条件を制御することが可能になる。
【0023】
予め、膜の膜質のレベルに対応させて参照用赤外線吸収スペクトルを複数個準備しておき、上記ステップ(c)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと、上記ステップ(b)で測定された上記膜の上記赤外線吸収スペクトルとを比較して、上記特定の値を算出することにより、簡便にプロセス制御を行なうことができる。
【0024】
上記ステップ(c)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと上記赤外線吸収スペクトルとの形状に基づいて多変量解析を行なって、上記特定の値を算出することにより、正確にプロセス制御を行なうことができる。
【0025】
本発明の第2の半導体装置の製造方法は、膜を構成要素として有する半導体装置の製造方法であって、成膜装置内に配置された下地ウエハ上に上記膜を形成するステップ(a)と、上記膜が形成されたウエハに赤外線を入射して赤外線吸収スペクトルを測定するステップ(b)と、上記赤外線吸収スペクトルの形状から上記膜の成膜温度を算出するステップ(c)と、上記ステップ(c)で算出された上記成膜温度に応じて上記成膜装置の設定条件を制御するステップ(d)とを備えている。
【0026】
この方法により、電磁波の吸収スペクトルを利用して、インラインで非破壊的に膜の成膜温度を検知し、その結果を成膜装置の制御に利用することができるので、生産性を低下させることなく、全ての成膜処理に対して成膜温度の測定を行なって、成膜装置の温度制御が可能になる。
【0027】
予め、膜の成膜温度に対応させて参照用赤外線吸収スペクトルを複数個準備しておき、上記ステップ(c)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと、上記ステップ(b)で測定された上記膜の上記赤外線吸収スペクトルとを比較して、上記成膜温度を算出することにより、簡便にプロセス制御を行なうことができる。
【0028】
上記ステップ(c)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと上記赤外線吸収スペクトルとの形状に基づいて多変量解析を行なって、上記成膜温度を算出することにより、正確にプロセス制御を行なうことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下の実施形態においては、FT−IR法(Fourier-transform Infrared Spectroscopy)により膜が形成された基板の赤外線吸収スペクトルを測定し、PLS法(Partial Least Squares Regression)により上記赤外線吸収スペクトルにパターン認識を基にした多変量解析を行なう手法を用いる。
【0030】
−第1の実施形態−
図1(a),(b)は、それぞれ順に、HDP−CVD装置による成膜温度をパラメータとして、FT−IR法によるFSG膜(フッ素含有シリコン酸化膜)の赤外線吸収スペクトル図及びそのピーク部付近を拡大して示す図である。
【0031】
図1(a),(b)に示すFSG膜の赤外線吸収スペクトルは、シリコン基板上に成膜されたFSG膜の赤外線吸収スペクトルであり、以下の手順で測定される。
【0032】
一般に、シリコン基板は赤外線を透過させる性質があるので、シリコン基板の一方の面に赤外線を入射すると、赤外線はシリコン基板によってある割合だけ吸収された後、シリコン基板を透過した赤外線がシリコン基板の他方の面から出力される。そこで、FT−IR法により、例えば直径5mm程度の赤外線干渉光をウエハの裏面又は表面に垂直方向から入射し、ウエハを透過した赤外線の強度と入射した赤外線の強度との干渉光を検知し、その強度の光路差に対する関数をフーリエ変換することにより、波数に対する関数を計算し、これを第1の赤外線吸収スペクトルとする。
【0033】
次に、HDP−CVD装置内にシリコン基板を設置して、シリコン基板上に、所定厚みのFSG膜を成膜する。その後、FT−IR法により、上述とほぼ同じ条件でウエハの同じ箇所に赤外線を入射し、FSG膜及びシリコン基板に入射した赤外線の強度と、両者を透過させた赤外線の強度との比を各波長ごとに測定して、これを第2の赤外線吸収スペクトルとする。そして、第2の赤外線吸収スペクトルから第1の赤外線吸収スペクトルを差し引いて、FSG膜のみの赤外線吸収スペクトルを算出する。このようにして、FSG膜とシリコン基板とが合成された赤外線吸収スペクトルからシリコン基板の赤外線吸収スペクトルの差分を計算することにより、所望とするFSG膜のみの赤外線吸収スペクトルを求めることができる。
【0034】
以下の説明においても、特に断りがない限り、FSG膜の赤外線吸収スペクトルは同様の手順で測定する。ただし、本発明における赤外線吸収スペクトルの測定対象となる薄膜は、FSG膜に限定されるものではなく、薄半導体装置の製造方法もHDP−CVD装置に限定されるものではない。また、薄膜の下地となる基板は、シリコン基板に限定されるものではない。さらに、赤外線吸収スペクトルの測定方法は、FT−IR法に限定されるものではない。
【0035】
さらに、シリコン基板の厚み,リン濃度,酸素濃度を同一にすれば、第2の赤外線吸収スペクトルのみの測定でも、第2の赤外線吸収スペクトルから第1の赤外線吸収スペクトルを差し引いたときと同様の結果が得られる。
【0036】
また、本発明の赤外線吸収スペクトルの測定は、FT−IR装置として、ニューリーインスツルメンツ(株)製の半導体用赤外分光解析装置(IR−EPOCH 2000)を用いて行なっている。
【0037】
ここで、図1(a),(b)からわかるように、FSG膜の成膜温度が異なると、赤外線吸収スペクトルの形状が異なっており、特に、ピーク部の最大吸収及び最大吸収を示す波長が異なっている。本発明者は、上述の従来のアモルファスシリコン膜の回復レートによる温度測定技術以外に、HDP−CVD装置の成膜温度をモニタリングする方法がないか種々の検討を重ねた結果、薄膜の成膜温度(この実施形態では、HDP−CVD装置の成膜温度)によって、赤外線吸収スペクトル(この実施形態では、FT−IR法による赤外線吸収スペクトル)が異なることを見いだした。
【0038】
以下、HDP−CVD装置の成膜温度によってFT−IR法の赤外線吸収スペクトルが異なる理由について説明する。
【0039】
HDP−CVD装置により形成されたFSG膜は、成膜温度を高くすると、より完全なシリコン酸化膜になると推定される。つまり、同一膜厚で異なった成膜温度のFSG膜をFT−IR法で分析すると、完全なシリコン酸化膜によるSi−Oボンド等の吸収総量を示すピーク高さの変化(αa)(図1(a)参照)と、成膜温度の相違に基づく膜質の相違によるSi−Oボンド等のピーク位置のシフト(αb)(図1(b)参照)とが存在することを突き止めた。
【0040】
図2は、図1(a),(b)に示す赤外線吸収スペクトルにおけるピーク部の最大吸収を示す波長と、最大吸収値とを表にして示す図である。同図に示す範囲では、成膜温度が高くなるほど最大吸収が大きくなり、成膜温度が高くなるほど最大吸収を示す波数が大きくなる。
【0041】
すなわち、本発明者は、異なる成膜温度でFSG膜を成膜すると、Si−Oボンド等のピーク高さとピーク位置、即ち吸収ピークの形状が異なるポイントに着目し、従来にないFT−IR法を用いた新たな手法でHDP−CVD装置の成膜温度を検出できることを導きだした。異なる成膜温度で吸収スペクトルの形状が異なる理由は、酸化シリコン中のSi−O,Si=O,Si≡O等の結合の存在割合が成膜温度によって異なるためと推定される。
【0042】
次に、異なった赤外線吸収スペクトルで薄膜の成膜温度を解析する手順について説明する。ここでは、異なった赤外線吸収スペクトルから成膜温度を解析するために、PLS法によるパターン認識を基にした解析技術を用いる。
【0043】
図3(a)〜(c)は、それぞれ順に、パターン認識を基にした多変量解析技術の解法モデルにおける参照用赤外線吸収スペクトル図、被測定膜の赤外線吸収スペクトル図(以下、被測定膜の赤外線吸収スペクトル図という)、及びPLS法による成膜温度決定方法を示す図である。図3(a),(b)において、ピークOはSiO2 等の吸収によるピークを示し、ピークFはSiFの吸収によるピークを示している。同図に示すように、ピークO,F同士の間隔は、成膜温度に応じて変化している。
【0044】
まず、図3(a)に示すように、予め、FT−IR法により、互いに異なる成膜温度(T1<T2<T3)で形成された複数(本実施形態では3つ)のFSG膜の参照用赤外線吸収スペクトルパターンSPT1 ,SPT2 ,SPT3 を測定し、これをデータベースとして記憶装置に格納しておく。
【0045】
次に、図3(b)に示すように、被測定膜の赤外線吸収スペクトルパターンSPTA を測定する。
【0046】
図4(a)〜(d)は、それぞれ順に、380℃,430℃,480℃で成膜されたFSG膜の赤外線吸収スペクトル図、及び測定対象のFSG膜の赤外線吸収スペクトル図である。すなわち、図4(a)〜(c)は、図3(a)に示す成膜温度が互いに異なる3つのFSG膜の赤外線吸収スペクトルパターンSPT1 ,SPT2 ,SPT3 の具体例であり、図4(d)は、図3(b)に示す被測定膜の赤外線吸収スペクトルパターンSPTA の具体例である。
【0047】
次に、パターン解析により、3つの参照用赤外線吸収スペクトルパターンSPT1 ,SPT2 ,SPT3 と、被測定膜の赤外線吸収スペクトルパターンSPTA との偏差の自乗和Χi 2を下記式(1)
Χi 2=Σ(SPTi −SPTA )2 (1)
から求める。式(1)の右辺のΣ(SPTi −SPTA )2 は、参照用赤外線吸収スペクトルパターン及び被測定膜の赤外線吸収スペクトルパターン間の各波長における吸収の差を2乗したものを、各波長について積算したもの,つめり、偏差の自乗和である。そして、式(1)のΧi 2には、参照用赤外線吸収スペクトルパターン及び被測定膜の赤外線吸収スペクトルパターン間のピーク部の最大吸収値の差や、最大吸収値を示す波長の差と、図3(a)に示すピークO,Fの間隔の差などに起因するパターンのずれが含まれている。
【0048】
その結果、図3(c)に示すように、偏差の自乗和を示す3つの点Χ1 2,Χ2 2,Χ3 2が求められるので、この3点Χ1 2,Χ2 2,Χ3 2を通る曲線LA (この例では、簡単のために二次曲線としている)が定まる。そこで、この曲線LA から偏差の自乗和Χ2 が最小になる温度TA を求めて、この温度をFSG膜の成膜温度として推定する。以下、この手順について、例示しながら具体的に説明する。
【0049】
図12(a),(b)は、それぞれ順に、構築したデータベースの設定内容の例を表で示す図、及び計算結果を示す図である。PLS法における解法は、コンピュータを用いた数値計算法により解を得て、PLS法による重回帰分析を行なった特のデータベース内温度とデータベースのPLSモデルとの正確度が1.0に近づくよう各パラメータを調整する方法である。今回、発明者が行なった数値計算の結果によると、最大波数1600cm-1から最小波数700cm-1の赤外線吸収スペクトルを用い、赤外線吸収スペクトルの分割点数を467点に設定したとき、正確度(Correct Coefficient )が最も高くなり、正確度0.98を得ることができた。
【0050】
図13は、構築したデータベース内の温度と分析温度との検証結果を表にして示す図である。同図には、それぞれ、データベース内温度(図3(a)に示すスペクトルパターンSPTi に対応する成膜温度Ti に相当),分析温度(図3(c)に示す成膜温度TA に相当),差異(データベース内温度と分析温度との差分),エラー率(差分をデータベース内温度で割り算して得られた商に100を乗じたもの),スペクトル残差(図3(c)内のΧ2 に相当)及び分析値の信頼性が表示されている。
【0051】
同図において、スペクトル残差及び分析値の信頼性が小さな値ほど好ましく、分析温度の信頼性は高くなる。そして、同図に示されるように、スペクトル残差及び分析温度の信頼性を示す数値は、データベース内の設定温度に対して十分に小さいので、実用上、問題はないと判断することができる。さらに、今回作成されたデータベースを用いて検証した結果では、FSG膜の成膜温度のエラー率が±1.0%以下という結果が得られている。すなわち、今回の計算結果から384.2℃から504.5℃の温度領域において、±1.0%以下の精度で温度の推定ができるPLSモデルを得ることができた。
【0052】
−第2の実施形態−
上述の例では、理解を容易にするために、成膜温度のみをパラメータとして推定する方法について説明した。しかし、現実のプロセスでは、形成される薄膜の膜厚,不純物濃度(例えばフッ素濃度)などが一定ではなく、ウエハ間及びウエハ内でこれらのパラメータのばらつきが存在している。そして、膜厚や不純物濃度などのばらつきによって、成膜温度の推定精度が悪化するおそれがある。したがって、現実のプロセスにおいては、目的が成膜温度の推定であっても、膜厚,不純物濃度などのパラメータを含めた多変量解析を行なう必要がある。
【0053】
次に、薄膜の成膜温度だけでなく、膜質や膜厚をも含めた多次元のパラメータの推定を行なう方法について説明する。ここでは、HDP−CVD装置で成膜したFSG膜の赤外線吸収スペクトルパターンを例にとって説明する。
【0054】
図5は、FSG膜の赤外線吸収スペクトルパターンからなるデータベースの構築方法を示す図である。まず、FSG膜の膜質を決定する成膜条件として、HDP−CVD装置の成膜温度、FSG膜に含まれるフッ素濃度及びFSG膜の膜厚について、それぞれが複数の条件(例えば、3通り)を設定した成膜条件のマトリックスを作成する。そのマトリックスの全条件でFSG膜を成膜し、FT−IR法により赤外線吸収スペクトルを測定して、赤外線吸収スペクトルパターンのデータベースを構築する。
【0055】
図5に示す例では、3種類の膜厚300nm,600nm,900nmと、3種類の成膜温度370℃,430℃,490℃と、3種類のフッ素濃度0.4%,1.4%,2.4%とについて、合計27個の赤外線吸収スペクトルパターンがデータベース化されている。また、同図には、膜厚が600nm,成膜温度が約370℃で、フッ素濃度がそれぞれ約1.4%,2.4%である条件k2,k3についての赤外線吸収スペクトルパターンが例示されている。
【0056】
次に、図5に示すような多数のデータベースを用いて、被測定膜が示す赤外線吸収パターンから被測定膜の膜厚,成膜温度,フッ素濃度を算出する。その際、図3(a),(b)に示す手順と同様の手順で多変量解析を行なうことにより、最終的に、多次元空間において図3(c)に示すような偏差の自乗和を示す多数の点Χi 2が得られる。この場合には、多次元空間での解析を行なう必要があるので、図3(c)に示すようなグラフ表示はできない。そして、これらの多数の点Χi 2を通ることが最も確からしい多次元図形を求め、この多次元図形中の最小値を示す点における膜厚,成膜温度,フッ素濃度を、被測定膜の膜厚,成膜温度,フッ素濃度と算出することになる。
【0057】
なお、上述の推定方法の変わりに、横軸が成膜温度,膜厚,フッ素濃度である3つのグラフを作成し、各グラフにおいて、多数の点Χi 2を通る二次曲線の最小値を示す横軸Χ位置を、被測定膜の成膜温度,膜厚,フッ素濃度と近似することも可能である。
【0058】
以上のように、パターン認識を基にした多変量解析技術の解法モデルを用いて、被測定膜の赤外線吸収スペクトルパターンが、構築したデータベースのどの赤外線吸収スペクトルパターンに近いか推定し、多変量解析技術により成膜温度、フッ素濃度及び膜厚を求めることができる。
【0059】
図6は、多変量解析による被測定膜(FSG膜)の成膜温度を推定する手順を示すフローチャート図である。
【0060】
まず、ステップST11で、参照用赤外線吸収スペクトルパターン(例えば図6に示す27個の条件についてのパターン)を作成し、これをデータベースとして記憶装置に格納しておく。
【0061】
次に、ステップST12で、FT−IR法により、被測定膜の赤外線吸収パターンを測定する。ただし、本発明における赤外線吸収パターンの測定には、FT−IR法以外の方法を用いることができる。
【0062】
次に、ステップST13で、多変量解析を行なう。図2(a)〜(c)に示す例では、3つの参照用赤外線吸収スペクトルパターンSPT1 ,SPT2 ,SPT3 と、被測定膜の赤外線吸収スペクトルパターンSPTA との偏差の自乗和に相当するΧi 2を求めているが、本実施形態においては、27個の参照用赤外線吸収スペクトルパターンと、被測定膜の赤外線スペクトルパターンとの各波長における吸収値の偏差の自乗を各波長について積算した解析(多変量解析)を行なう。
【0063】
次に、ステップST14で、パターン解析の結果に基づいて、成膜温度などを算出する。第1の実施形態では、図3(c)に示す3つの点Χ1 2,Χ2 2,Χ3 2を通る曲線LA から偏差の自乗和Χ2 が最小になる温度TA を求めて、この温度をFSG膜の成膜温度として算出しているが、本実施形態では、多次元空間において図3(c)に示すような偏差の自乗和を示す27個の点Χi 2が得られるので、各点Χi 2を通ることが最も確からしい多次元図形を求め、その多次元図形の最小値を示す点の成膜温度を被測定膜の成膜温度と算出する。
【0064】
図7は、本実施形態の方法で推定したHDP−CVD装置の成膜温度と、上記国際公開WO99/57146号公報に記載された方法を応用した方法で測定した成膜温度との相関関係を示す図である。ここで、上記WO99/57146号公報に記載された方法を用いると、500℃以下においてはアモルファス層の回復レートの把握が困難となるので、それを応用した別の方法を用いている。図7に示すように、本発明の成膜温度と従来の方法を応用して得られた成膜温度とは、ほぼ1:1の相関関係が得られており、FT−IR法によるHDP−CVD装置の成膜温度の測定結果は良好であることが分かる。
【0065】
本実施形態によると、FT−IR法による薄膜の膜厚,不純物濃度,成膜温度などをパラメータとする多変量解析を行なうことにより、薄膜の成膜温度を精度よく測定することが可能となる。特に、上述のように、国際公開WO99/57146号公報に記載された方法では、500℃以下の範囲での成膜温度の測定は困難となるが、本発明の方法では、500℃以下の範囲での成膜温度を測定でき、しかも、容易かつ迅速(具体的には、2〜3分程度)に測定することができるという利点がある。
【0066】
ただし、本発明による温度測定によって測定可能な成膜温度の範囲は、500℃以下に限定されるものではない。国際公開WO99/57146号公報に記載された方法とほぼ同じ温度範囲を含め、さらに、より低温の範囲においても成膜温度を測定しうる。本発明は、最近のように、半導体プロセスの低温化が進む中で、特に半導体装置の配線工程で実施されるプロセス温度350℃〜500℃の範囲で温度測定をすることができるという著効を発揮することができる。
【0067】
また、この方法では、成膜装置をプロセスと同じ条件で使用しながら、赤外線吸収スペクトルのインラインでの条件からモニターから容易に成膜温度が測定できるため、生産性を低下させることなく、全ての成膜処理に対して成膜温度を測定することが可能となる。
【0068】
−第3の実施形態−
次に、本発明による薄膜の評価方法の応用例として、生産ラインでの薄半導体装置の製造方法について説明する。
【0069】
図8は、第3の実施形態において形成した半導体装置の構造を示す断面図である。シリコン基板11には、活性領域を区画するトレンチ分離領域12が設けられており、トレンチ分離領域12で囲まれる活性領域には、多数のMISFET13が設けられている。各MISFET13のソース・ドレイン領域(図示せず)及びゲート電極の各上部には、サリサイドプロセスによって形成されたシリサイド層14a,14bがそれぞれ設けられている。
【0070】
本実施形態の製造方法においては、まず、多数のMISFET13が設けられているシリコン基板11の上に、BPSG膜からなる第1の層間絶縁膜20を堆積する。この第1の層間絶縁膜20の厚みは約800nmである。
【0071】
次に、第1の層間絶縁膜20を貫通して、各ソース・ドレイン領域や各ゲート電極のシリサイド層14a,14bに到達するコンタクトホールを形成し、コンタクトホールをタングステン(W)で埋めてプラグ24を形成する。図8にはゲート電極上のプラグは図示されていないが、図8に示す断面とは異なる断面に、ゲート電極に接続されるプラグが設けられている。各プラグ24の径は、約0.25μmである。
【0072】
次に、第1の層間絶縁膜20の上にAl膜を堆積した後、Al膜をパターニングすることにより、各プラグに接続されるAl配線33(1層目配線)を形成する。Al配線33の厚みは、約400nmである。その後、第1の層間絶縁膜20及びAl配線33の上に、第2の層間絶縁膜30を堆積する。第2の層間絶縁膜30は、FSG膜からなる下部膜31と、P−TEOS膜(プラズマTEOS膜)からなる上部膜32とによって構成されている。下部膜31の厚みは、約500nmであり、上部膜32の厚みは、約300nmである。
【0073】
ここで、本発明では、第2の層間絶縁膜30の下部膜31を堆積する前に、ウエハの測定したい領域(測定領域)に赤外線ビームを入射して、下部膜31の下地となる基板全体の赤外線吸収スペクトルを測定しておく。そして、HDP−CVD法により下部膜31を堆積する。このとき、FSG膜からなる下部膜31の成膜条件は、成膜装置のチャンバ内圧力が6mTorr(約0.8Pa)、プラズマCVD装置のRFパワーが900W/2300W、バイアスパワーが2350W、ウエハ裏面のHe圧力がIN側で2mTorr(約0.27Pa)、アルゴンガスのTOP流量が9(ml/min)、アルゴンガスのSIDE流量が46(ml/min)、酸素のTOP流量が53(ml/min)、酸素のSIDE流量が73(ml/min)、シランのTOP流量が4(ml/min)、シランのSIDE流量が40(ml/min)、4フッ化シランの流量が28ml/min)である。
【0074】
そして、下部膜31を堆積した後に、ウエハの測定領域に赤外線を入射して、赤外線吸収スペクトルを測定する。そして、両赤外線吸収スペクトルの差分から下部膜31単独の赤外線吸収スペクトルを測定する。さらに、第2の実施形態で説明した参照用赤外線吸収スペクトルパターン(図5参照)を用いて、成膜温度,膜厚,フッ素濃度をパラメータとして、下部膜31の赤外線吸収スペクトルパターンの多変量解析を行なう。これにより、下部膜31の成膜温度,膜厚,フッ素濃度を測定し、下部膜31の堆積条件が適正であるか否かを判定することができる。
【0075】
次に、第2の層間絶縁膜30の上部膜32を堆積した後、第2の層間絶縁膜30に第1の層間絶縁膜20上のAl配線33に到達するビアホールを形成し、ビアホールをタングステン(W)で埋めて、プラグ34を形成する。第2の層間絶縁膜30の上部膜32の厚みは約300nmであり、プラグ34の径は約0.3μmである。
【0076】
その後、第2の層間絶縁膜30の上に、上述と同様の手順により、Al配線43(2層目配線)と、第3の層間絶縁膜40とを形成する。第3の層間絶縁膜40は、FSG膜からなる下部膜41と、P−TEOS膜からなる上部膜42とを有しており、下部膜41を形成する際に、赤外線吸収スペクトルを利用した多変量解析を行なって、成膜温度,膜厚,フッ素濃度などの管理を行なう。
【0077】
その後、第3の層間絶縁膜40の上に、上述と同様の手順により、Al配線53(3層目配線)と、第4の層間絶縁膜50とを形成する。第4の層間絶縁膜50は、FSG膜からなる下部膜51と、P−TEOS膜からなる上部膜52とを有しており、下部膜51を形成する際に、赤外線吸収スペクトルを利用した多変量解析を行なって、成膜温度,膜厚,フッ素濃度などの管理を行なう。
【0078】
その後、第4の層間絶縁膜50の上に、Al配線63(4層目配線)と、P−SiN膜からなるパッシベーション膜60とを形成する。
【0079】
この実施形態においては、BPSG膜からなる第1の層間絶縁膜20や、P−TEOS膜からなる第2〜第4の層間絶縁膜の各上部膜32,42,52や、P−SiN膜からなるパッシベーション膜60の成膜温度の測定の際には、赤外線吸収スペクトルを利用した多変量解析を行なってはいない。その理由は、BPSG膜,P−TEOS膜,P−SiN膜は、高密度プラズマを利用するHDP−CVD装置ではなく、通常のプラズマもしくは熱反応を利用するCVD装置を用いているので、HDP−CVD装置のようにいぇはを静電チャックし、ウエハ裏面のHeでクリーニングする機構がないので、例えば通常のプラズマCVD装置の下部電極に熱電対を埋め込み、下部電極の温度を測定することにより、ウエハ温度を間接的に測定することができるからである。ただし、BPSG膜,P−TEOS膜,P−SiN膜などを形成する際にも、赤外線吸収スペクトルを利用した多変量解析を行なうことにより、不純物濃度(BPSG膜におけるボロン,リンなど)や、膜厚の測定も可能になるので、工程管理を厳密に行なうことが可能になる。
【0080】
また、トレンチ分離領域12も、HDP−CVD装置を用いて堆積されたUSG(Undoped Silicate Glass)によって構成されることがあるので、赤外線吸収スペクトルを利用した多変量解析を行なうことができる。
【0081】
図9は、本実施形態の製造工程のうち、FSG膜の形成前後の処理手順を示すフローチャート図である。
【0082】
まず、ステップST21で、下地ウエハの赤外線吸収スペクトルを測定する。この下地ウエハとは、第2の層間絶縁膜30の下部膜31を形成する際には、第1の層間絶縁膜20やプラグ24が既に形成されたウエハであり、第3の層間絶縁膜40の下部膜41を形成する際には、第2の層間絶縁膜30やプラグ34が既に形成されたウエハであり、第4の層間絶縁膜50の下部膜51を形成する際には、第3の層間絶縁膜40やプラグ44が既に形成されたウエハである。
【0083】
次に、ステップST22で、上述の条件でHDP−CVD装置を用いて、FSG膜(この例では、各下部膜31,41,51)を堆積する。
【0084】
次に、ステップST23で、FSG膜を堆積した後のウエハの赤外線吸収スペクトルを測定する。つまり、FSG膜と下地ウエハとを通過した赤外線の吸収スペクトルを測定する。
【0085】
次に、ステップST24で、ステップST23で測定された赤外線吸収スペクトルと、ステップST21で測定された赤外線吸収スペクトルとの差を各波長ごとに算出して、FSG膜単独の赤外線吸収スペクトルパターンを作成する。
【0086】
次に、ステップST25で、予めデータベースに格納されている参照用赤外線吸収スペクトルパターン(例えば図5に示すような成膜温度,膜厚,フッ素濃度をパラメータとする多数のスペクトルパターン)を用いて、第2の実施形態で説明した方法により、多変量解析を行なう。その結果、図3(c)に示す曲線を多次元図形ないし多次元関数に置き換えたグラフ又は関数が得られる。
【0087】
次に、ステップST26で、ステップST25で得られた多次元関数又は多次元図形から、その最小値を与えるFSG膜の成膜温度,膜厚,フッ素濃度などを推定する。
【0088】
次に、ステップST27で、ステップST26で推定された成膜温度,膜厚,フッ素濃度が適正範囲内あるか否かを判別する。成膜温度が低すぎると、そのFSG膜の下方にある層間絶縁膜に形成されたプラグとそのプラグに接触する下方の導体層との接触状態(具体的にはコンタクト抵抗)が悪化するおそれがある。また、成膜温度が低すぎると、以下のような不具合もある。
【0089】
図10は、FSG膜のエッチングレートの成膜温度依存性を示す図である。同図において、縦軸は熱酸化膜とのエッチングレート比としてエッチングレートを現している。同図に示すように、成膜温度が低すぎると、エッチングレートが高くなるので、工程上、エッチング時間等の管理が困難になる。つまり、薄膜のエッチングレートが大きくなると、オーバーエッチングを生じるなどの不具合が生じるからである。
【0090】
言い換えると、FSG膜等の膜質として、エッチングレートを多変量解析のパラメータに組み入れることもできることになる。
【0091】
一方、成膜温度が高すぎると、FSG膜の下方で既に形成されているAl膜の特性が劣化するおそれがある。したがって、FSG膜の成膜温度には適正範囲があり、この例では、380℃以上で480℃以下の範囲に入っていることが好ましい。また、膜厚が大きすぎるとビアホールの形成やプラグの埋込が困難になり、膜厚が薄すぎると、層間絶縁膜を挟む配線間の容量が増大したり層間絶縁膜の絶縁性が劣化するおそれがあるので、膜厚にも適正範囲がある。さらに、フッ素濃度が低すぎると層間絶縁膜の比誘電率を十分小さくすることができず、フッ素濃度が高すぎるとFの拡散によるAl膜の剥がれが生じるおそれがあるので、フッ素濃度にも適正範囲がある。
【0092】
その結果、成膜温度,膜厚,フッ素濃度などが適正範囲にあれば、そのままで次工程に進む一方、成膜温度,膜厚,フッ素濃度などが適正範囲になければ、ステップST27に移行して、HDP−CVDにおける条件を変更してから、FSG膜をエッチングにより除去して、再度FSG膜の堆積を行なう。
【0093】
なお、ステップST27の条件変更の後で、そのまま次工程に進んでもよい。その場合にも、第2の層間絶縁膜30の下部膜31を形成した後に、第3の層間絶縁膜40の下部膜41を形成する際には、適正な条件でFSG膜の堆積を行なうことができる。
【0094】
このように、半導体装置のプロセスにおいて、FSG膜の成膜温度,膜厚,フッ素濃度などのパラメータを適正範囲に維持することが容易となるので、半導体装置の製造工程の管理を厳密かつ容易に行なうことができる。しかも、薄膜の形成をやり直すことにより、歩留まりの向上を図ることもできる。
【0095】
なお、図1に示すFT−IR法の赤外線吸収スペクトルは、HDP−CVD装置で成膜したFSG膜のみの赤外線吸収スペクトルのデータを示したが、FSG膜とシリコン基板とが合成された赤外線吸収スペクトルの場合でも、図7と同様に、HDP−CVD装置の成膜温度を測定できることが確認されている。
【0096】
さらに、本方法によると、差分を算出することにより、薄膜の赤外線吸収スペクトル成分のみを検出することができるため、インラインモニターだけでなく、基板の裏面構造が複雑な実デバイスの成膜温度も的確に測定することができる。
【0097】
また、上記各実施形態においては、HDP−CVD装置で成膜したFSG膜を用いて説明したが、他のシリコン酸化膜、例えばリン添加シリコン酸化膜(PSG膜)やボロン・リン添加シリコン酸化膜(BPSG膜),シリコン窒化膜等を成膜する場合にも適用できる。さらに、FSG膜等のシリコン酸化膜の成膜にはHDP−CVD装置を用いて説明したが、他の成膜装置、例えば通常のプラズマCVD装置(P−CVD)や減圧CVD装置(LP−CVD)等を用いて成膜する場合にも適用できる。
【0098】
−第4の実施形態−
本実施形態では、成膜温度の測定を利用してチャンバー内の温度を測定する方法について説明する。
【0099】
上述のように、FSG膜等の赤外線吸収スペクトルを利用して、成膜温度を測定することができるので、チャンバーの温度を測定することができる。そして、チャンバーの温度がわかると、CVDだけでなく、半導体装置の製造工程における各種処理のために利用することが可能になる。
【0100】
従来のチャンバー内における温度測定は、熱電対付きウエハの裏面に取り付けた温度センサにより行なわれてきた。しかし、熱電対付きウエハを用いても、ウエハの裏面の温度はわかるものの、ウエハの表面の温度、つまりアモルファス領域が熱処理を受けている実際の温度を測定することはできなかった。また、温度の測定範囲にも限界があり、ある程度高温になると測定が困難になる。
【0101】
また、上記従来の国際公開WO99/57146号公報に記載されている技術の場合、500℃以下になると、アモルファス状態からの回復レートが不明となる。それは、低温では、アモルファス状態からの回復は極めて初期の段階で終了し、それ以上時間を費やしても回復が進まないからである。
【0102】
それに対し、本発明の赤外線吸収スペクトルを利用する方法の場合には、CVDが可能な温度範囲であれば、どの温度でも測定することができる利点がある。特に、国際公開WO99/57146号公報に記載されている技術では測定が困難な500℃以下の範囲において効果が大きいといえる。
【0103】
図11は、HDP−CVD装置を用いて形成されたFSG膜について得られたウエハ面内の温度分布を示すデータである。赤外線ビームは径が5mm程度であるので、ウエハ内の多数の箇所について赤外線吸収スペクトルを測定することができる。その場合、膜を形成する前のウエハについて赤外線吸収スペクトルを測定した個所と、膜を形成した後の上について赤外線吸収スペクトルを測定した個所とがほぼ一致している必要があるが、現在の赤外線測定装置の位置決め精度は非常に向上しているので、実用上の不具合はなかった。
【0104】
同図に示すように、本発明の赤外線吸収スペクトルを利用した多変量解析を行なうことにより、ウエハ面内の温度分布を測定することができることから、これを利用して、CVD装置のチャンバ内の温度分布を測定することができる。この温度の測定に用いられるウエハは、製造ラインを流れている製品用ウエハでもよいし、工程管理のために用いる管理用ウエハでもよい。
【0105】
−その他の実施形態−
上記各実施形態においては、被測定膜に赤外線を入射して、FT−IR法により、赤外線吸収スペクトルを測定することにより、被測定膜の評価を行なったが、多の分光法、例えば分散型赤外分光法,レーザーラマン分光法,X線光電子分光法などを用いて、薄膜を構成する原子間の結合状態を観測する吸収スペクトルを測定する場合にも、本発明を適用することができる。
【0106】
【発明の効果】
本発明によると、成膜装置のインラインモニターから成膜温度や膜の特性が測定できるため、生産性を低下させることなく、全ての成膜処理に対して成膜温度を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は、それぞれ順に、FT−IR法によるFSG膜の赤外線吸収スペクトル図及びそのピーク部付近を拡大して示す図である。
【図2】図1(a),(b)に示す赤外線吸収スペクトルにおけるピーク部の最大吸収を示す波長と、最大吸収値とを表にして示す図である。
【図3】(a)〜(c)は、それぞれ順に、参照用赤外線吸収スペクトル図、被測定膜の赤外線吸収スペクトル図、及びPLS法による成膜温度決定方法を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は、それぞれ順に、380℃,430℃,480℃で成膜されたFSG膜の赤外線吸収スペクトル図、及び測定対象のFSG膜の赤外線吸収スペクトル図である。
【図5】FSG膜の赤外線吸収スペクトルパターンからなるデータベースの構築方法を示す図である。
【図6】多変量解析による被測定膜(FSG膜)の成膜温度を推定する手順を示すフローチャート図である。
【図7】第2の実施形態の方法で推定したHDP−CVD装置の成膜温度と、従来の方法を応用した方法で測定した成膜温度との相関関係を示す図である。
【図8】第3の実施形態において形成した半導体装置の構造を示す断面図である。
【図9】第3の実施形態の製造工程のうち、FSG膜の形成前後の処理手順を示すフローチャート図である。
【図10】FSG膜のエッチングレートの成膜温度依存性を示す図である。
【図11】HDP−CVD装置を用いて形成されたFSG膜について得られたウエハ面内の温度分布を示すデータである。
【図12】(a),(b)は、それぞれ順に、構築したデータベースの設定内容の例を表で示す図、及び計算結果を示す図である。
【図13】構築したデータベース内の温度と分析温度との検証結果を表にして示す図である。
【符号の説明】
11 シリコン基板
12 トレンチ分離領域
13 MISFET
14 シリサイド層
20 第1の層間絶縁膜
24 プラグ
30 第2の層間絶縁膜
31 下部膜
32 上部膜
33 Al配線
34 プラグ
40 第3の層間絶縁膜
41 下部膜
42 上部膜
43 Al配線
44 プラグ
50 第4の層間絶縁膜
51 下部膜
52 上部膜
53 Al配線
54 プラグ
60 パッシベーション膜
63 Al配線
Claims (15)
- 膜が形成された基板に電磁波を入射して上記電磁波の吸収スペクトルを測定するステップ(a)と、
上記吸収スペクトルの形状から上記膜の成膜温度を算出するステップ(b)とを備え、
上記ステップ(b)では、上記吸収スペクトルにおける吸収ピークのピーク高さの変化とピーク位置のシフトとから上記成膜温度を算出することを特徴とする温度測定方法。 - 膜が形成された基板に電磁波を入射して上記電磁波の吸収スペクトルを測定するステップ(a)と、
上記吸収スペクトルの形状から上記膜の成膜温度を算出するステップ(b)とを備え、
上記膜はフッ素添加シリコン酸化膜であり、
上記ステップ(b)では、上記吸収スペクトルにおける酸化シリコン(SiO 2 )の吸収ピークとフッ化シリコン(SiF)の吸収ピークとの間隔の変化から上記成膜温度を算出することを特徴とする温度測定方法。 - 請求項1又は2に記載の温度測定方法において、
上記ステップ(a)では、上記電磁波として赤外線を入射し、
上記ステップ(b)では、上記赤外線の吸収スペクトルの形状から上記成膜温度を算出することを特徴とする温度測定方法。 - 請求項3記載の温度測定方法において、
予め、膜の成膜温度に対応させて参照用赤外線吸収スペクトルを複数個準備しておき、
上記ステップ(b)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと、上記膜の上記赤外線吸収スペクトルとを比較して、上記成膜温度を算出することを特徴とする温度測定方法。 - 請求項4記載の温度測定方法において、
上記ステップ(b)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと上記赤外線吸収スペクトルとの形状に基づいて多変量解析を行なって、上記成膜温度を算出することを特徴とする温度測定方法。 - 膜が形成された基板に赤外線を入射して上記赤外線吸収スペクトルを測定するステップ(a)と、
上記赤外線吸収スペクトルの形状から上記膜の成膜温度を算出するステップ(b)とを備え、
上記膜はフッ素添加シリコン酸化膜であって、
予め、膜の成膜温度に対応させて参照用赤外線吸収スペクトルを複数個準備しておき、
上記ステップ(b)では、上記参照用赤外線吸収スペクトル及び上記膜の上記赤外線吸収スペクトル間のピーク部の最大吸収値の差と、最大吸収値を示す波長の差と、酸化シリコン(SiO 2 )の吸収ピークとフッ化シリコン(SiF)の吸収ピークとの間隔の差とに起因するパターンのずれを比較して、上記成膜温度を算出することを特徴とする温度測定方法。 - 請求項6記載の温度測定方法において、
上記ステップ(b)では、上記パターンのずれに基づいて多変量解析を行なって、上記成膜温度を算出することを特徴とする膜の評価方法。 - 請求項3〜7のうちいずれか1つに記載の温度測定方法において、
上記ステップ(a)では、上記膜及び基板の赤外線吸収スペクトルから予め測定しておいた上記基板の赤外線吸収スペクトルを差し引くことにより、上記膜のみの赤外線吸収スペクトルを求めることを特徴とする温度測定方法。 - 請求項1〜8のうちいずれか1つに記載の温度測定方法において、
上記ステップ(a)では、予め、上記基板を成膜装置内に配置して、上記基板上に上記膜を形成し、
上記ステップ(b)では、上記膜の成膜温度を上記成膜装置内の温度として算出することを特徴とする温度測定方法。 - 膜を構成要素として有する半導体装置の製造方法であって、
成膜装置内に配置された下地ウエハ上に上記膜を形成するステップ(a)と、
上記膜が形成されたウエハに赤外線を入射して赤外線吸収スペクトルを測定するステップ(b)と、
上記赤外線吸収スペクトルの形状から上記膜の成膜温度を算出するステップ(c)と、
上記ステップ(c)で算出された上記成膜温度に応じて上記成膜装置の設定条件を制御するステップ(d)とを備え、
上記ステップ(c)では、上記赤外線吸収スペクトルにおける吸収ピークのピーク高さの変化とピーク位置のシフトとから上記成膜温度を算出することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 膜を構成要素として有する半導体装置の製造方法であって、
成膜装置内に配置された下地ウエハ上に上記膜を形成するステップ(a)と、
上記膜が形成されたウエハに赤外線を入射して赤外線吸収スペクトルを測定するステップ(b)と、
上記赤外線吸収スペクトルの形状から上記膜の成膜温度を算出するステップ(c)と、
上記ステップ(c)で算出された上記成膜温度に応じて上記成膜装置の設定条件を制御するステップ(d)とを備え、
上記膜はフッ素添加シリコン酸化膜であり、
上記ステップ(c)では、上記赤外線吸収スペクトルにおける酸化シリコン(SiO 2 )の吸収ピークとフッ化シリコン(SiF)の吸収ピークとの間隔の変化から上記成膜温度を算出することを特徴とする温度測定方法。 - 請求項10又は11に記載の半導体装置の製造方法において、
予め、膜の成膜温度に対応させて参照用赤外線吸収スペクトルを複数個準備しておき、
上記ステップ(c)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと、上記ステップ(b)で測定された上記膜の上記赤外線吸収スペクトルとを比較して、上記成膜温度を算出することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
上記ステップ(c)では、上記参照用赤外線吸収スペクトルと上記赤外線吸収スペクトルとの形状に基づいて多変量解析を行なって、上記成膜温度を算出することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 膜を構成要素として有する半導体装置の製造方法であって、
成膜装置内に配置された下地ウエハ上に上記膜を形成するステップ(a)と、
上記膜が形成されたウエハに赤外線を入射して赤外線吸収スペクトルを測定するステップ(b)と、
上記赤外線吸収スペクトルの形状から上記膜の成膜温度を算出するステップ(c)と、
上記ステップ(c)で算出された上記成膜温度に応じて上記成膜装置の設定条件を制御するステップ(d)とを備え、
上記膜はフッ素添加シリコン酸化膜であって、
予め、膜の成膜温度に対応させて参照用赤外線吸収スペクトルを複数個準備しておき、
上記ステップ(c)では、上記参照用赤外線吸収スペクトル及び上記ステップ(b)で測定された上記膜の上記赤外線吸収スペクトル間のピーク部の最大吸収値の差と、最大吸収値を示す波長の差と、酸化シリコン(SiO 2 )の吸収ピークとフッ化シリコン(SiF)の吸収ピークとの間隔の差とに起因するパターンのずれを比較して、上記成膜温度を算出することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項14記載の半導体装置の製造方法において、
上記ステップ(c)では、上記パターンのずれに基づいて多変量解析を行なって、上記成膜温度を算出することを特徴とする半導体装置の製造方法。
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