JP3720779B2 - 側鎖にビニルフェニル構造を有する新規なポリヒドロキシアルカノエート型ポリエステル、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なユニットを含むポリヒドロキシアルカノエート(PHA)型のポリエステルと、微生物を利用するその製造方法に関し、より具体的には、構成ユニットとして、3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルと、ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を原料として、PHAの産生能を有する微生物を利用し、構成ユニットとして、3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHAの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、多くの微生物が、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)あるいはその他のPHAを生産し、その菌体内に蓄積することが報告されている(「生分解性プラスチックハンドブック」,生分解性プラスチック研究会編,(株)エヌ・ティー・エス, P178−197 (1995))。これらPHAなどの微生物が産生するポリマーは、従来のプラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品の生産に利用することができる。さらに、微生物が産生するポリマー、例えば、PHAなどは、生分解性を有しており、自然界の微生物により完全分解されるという利点を有している。従って、例えば、微生物が産生するPHAは、廃棄した際、従来の多くの合成高分子化合物のように自然環境にそのまま残留し、汚染を引き起こす要因となることがない。また、微生物が産生するPHAは、一般に生体適合性にも優れており、医療用軟質部材等としての応用も期待されている。
【0003】
この微生物産生PHAは、その生産に用いる微生物の種類、ならびに、培地組成、培養条件等により、様々な組成や構造のものとなり得ることも知られている。これまで、主にPHAの物性の改良という観点から、微生物産生PHAの組成や構造の制御を試みる研究がなされてきた。
【0004】
微生物産生PHAの組成や構造の制御を目的とする研究の一つとして、近年、ユニット中に芳香環を有するPHAを微生物に生産させる研究が盛んになされている。
【0005】
Makromol. Chem., 191, 1957−1965 (1990)及びMacromolecules, 24, 5256−5260 (1991)には、5−フェニル吉草酸を基質として、シュードモナス オレオボランス (Pseudomonas oleovorans)が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸をユニットとして含むPHAを生産することが報告されている。
【0006】
Macromolecules, 29, 1762−1766 (1996)には、5−(p−トリル)吉草酸を基質として、シュードモナス オレオボランス (Pseudomonas oleovorans)が3−ヒドロキシ−5−(p−トリル)吉草酸ユニットを含むPHAを生産することが報告されている。
【0007】
Macromolecules, 32, 2889−2895 (1999)には、5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸を基質として、シュードモナス オレオボランス (Pseudomonas oleovorans)が3−ヒドロキシ−5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸ユニット、及び3−ヒドロキシ−5−(p−ニトロフェニル)吉草酸ユニットを含むPHAを生産することが報告されている。
【0008】
Macromol. Chem. Phys., 195, 1665−1672 (1994)には、11−フェノキシウンデカン酸を基質として、シュードモナスオレオボランス (Pseudomonas oleovorans)が3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットと3−ヒドロキシ−9−フェノキシノナン酸ユニットを含むPHAコポリマーを生産することが報告されている。
【0009】
特許掲載公報 第2989175号には、3−ヒドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)ペンタノエート(3H5(MFP)P)ユニット、あるいは3−ヒドロキシ−5−(ジフルオロフェノキシ)ペンタノエート(3H5(DFP)P)ユニットからなるホモポリマー;少なくとも、3H5(MFP)Pユニットあるいは3H5(DFP)Pユニットを含有するコポリマー;これらのポリマーの産生能を有するシュードモナス・プチダ;シュードモナス属を用いた、前記のポリマーの製造法に関する発明が開示されている。加えて、その発明の効果として、置換基を有する長鎖脂肪酸を資化して、側鎖末端に、1から2個のフッ素原子が置換したフェノキシ基をもつポリマーを合成することができ、また、かかるポリマーは、融点が高い上、良い加工性を保持しつつ、加えて、立体規則性、撥水性を与えることができる点を記載している。
【0010】
このユニット中の芳香環上にフッ素置換を有するフッ素置換PHA以外に、ユニット中の芳香環上にシアノ基やニトロ基が置換したPHAの研究もなされている。
【0011】
Can. J. Microbiol., 41, 32−43 (1995)及びPolymer International, 39, 205−213 (1996)には、シュードモナス オレオボランス (Pseudomonas oleovorans)ATCC29347株及びシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)KT2442株を用いて、オクタン酸と6−(p−シアノフェノキシ)ヘキサン酸あるいは6−(p−ニトロフェノキシ)ヘキサン酸を基質として、3−ヒドロキシ−6−(p−シアノフェノキシ)ヘキサン酸あるいは3−ヒドロキシ−6−(p−ニトロフェノキシ)ヘキサン酸をモノマーユニットとして含むPHAの生産が報告されている。
【0012】
これら環状に置換基を持つ芳香環を有するユニットを含むPHAは、ガラス転移温度が高く、加工性も良いという、芳香環に由来するポリマー性状を維持しつつ、芳香環上に存在している置換基に由来する新たな機能も付与された、多機能のPHAとなる。
【0013】
また、その一方で、ユニット中にビニル基を有するPHAを基に、生産ポリマーに対して、前記ビニル基を利用する化学変換により任意の官能基をポリマー側鎖に導入し、多機能のPHAを得ることを目的とした研究も盛んに行われている。
【0014】
Polymer, 41, 1703−1709 (2000)には、シュードモナス オレオボランス (Pseudomonas oleovorans)を用いて、側鎖にビニル基を有するポリエステルを生産し、ポリエステル分子内のビニル基を酸化することにより、水酸基を側鎖に有するポリエステルを生産したことが報告されている。
【0015】
同じく、Macromolecules, 31, 1480−1486 (1998)には、シュードモナス オレオボランス (Pseudomonas oleovorans)を用いて、側鎖にビニル基を有するポリエステルを生産し、ビニル基をエポキシ化することにより、エポキシ基を側鎖に有するポリエステルを生産したことが報告されている。
【0016】
更に、Polymer, 40, 3787−3793 (1999)には、同様の方法で得られたエポキシ基を側鎖に有するポリマーを、ヘキサメチレンジアミンとともに加熱することで架橋反応を行い、その反応と、生成物についての解析が報告されている。
【0017】
また、Polymer, 35, 2090−2097 (1994)には、ポリエステル側鎖のビニル基を利用し、ポリエステル分子内の架橋反応を行い、ポリエステルの物性を改良した研究に関する報告がなされている。
【0018】
上に紹介した研究からも示されるように、ビニル基は、不飽和炭化水素基であるがゆえに、付加反応などにおける、反応性が高く、様々な官能基の導入や化学的変換を施すことが可能である。また、ポリマーの架橋反応の足がかり、架橋点ともなりうる。従って、PHAを構成するユニット内にビニル基を有することは、ポリマーの機能材料としての応用を考える上で、非常に有用であると言うことができる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
従来報告されている、これらビニル基を有するポリエステルは、いずれもポリエステル骨格に直接結合した側鎖のアルキル鎖の先端にビニル基が置換した構造を有している。しかしながら、アルキル鎖からなる側鎖を有するポリエステルは、一般的に、ガラス転移温度や融点はそれ程高くなく、溶融加工する上では、熱的性質は必ずしも好ましいものでなく、フィルムや加工品等としては、優れた性状を有している材料は必ずしも多くない。一方、側鎖に芳香環を有するポリエステルは、既に述べたように、一般的に、ガラス転移温度や融点が高く加工品としての性状が良好であるという特色を有している。
【0020】
すなわち、優れた加工性を有する、新たな機能性ポリマーを開発していく上では、芳香環とビニル基とを側鎖に併せ持つポリエステルの利用が望まれる。しかしながら、これまで、ポリエステルにおいて、芳香環とビニル基のような官能基を側鎖に導入したという報告はなされていない。
【0021】
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、側鎖上に芳香環及びビニル基を有するポリエステル、特には、生分解性を有するPHA型のポリエステルと、その製造方法を提供することにある。より具体的には、側鎖に、その環上にビニル基が置換している芳香環を有しているPHA型のポリエステルと、それを、微生物を利用して製造する方法の提供が、本発明の目的である。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を進めたところ、以下に示すような発明に至った。
【0023】
すなわち、本発明のポリエステルは、ポリヒドロキシアルカノエート型のポリエステルであって、下記化学式(1):
【0024】
【化8】
【0025】
(式中、nは0〜7の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを分子中に含み、その含有比率の総和は、1ユニット%以上であることを特徴とするポリエステルである。
【0026】
本発明のポリエステルは、場合によっては、前記化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットユニット以外に、下記化学式(2):
【0027】
【化9】
【0028】
(式中、mは、0〜8の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示される3−ヒドロキシ−アルカン酸ユニットを含んでいても良い。
【0029】
このようなポリエステルの一例として、下記化学式(3):
【0030】
【化10】
【0031】
で示される3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを分子中に含み、その含有比率の総和は、1ユニット%以上であることを特徴とするポリエステルを挙げることができる。
【0032】
上に述べた、本発明のポリエステルでは、数平均分子量は、3000〜500000の範囲にあるものが好ましい。
【0033】
加えて、本発明は、上記の3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHA型ポリエステルを、微生物を利用して製造する方法をも提供しており、すなわち、本発明の微生物を用いたポリエステルの製造方法は、下記化学式(4):
【0034】
【化11】
【0035】
(式中、pは、0〜7の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示されるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を原料とし、化学式(4)で示されるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸から化学式(1):
【0036】
【化12】
【0037】
(式中、nは、0〜7の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを分子中に含み、その含有比率の総和は、1ユニット%以上であることを特徴とするポリエステルを生産する能力を有する微生物により、化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを分子中に含み、その含有比率の総和は、1ユニット%以上であることを特徴とするポリエステルを製造することを特徴とする、化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを分子中に含み、その含有比率の総和は、1ユニット%以上であることを特徴とするポリエステルの製造方法である。
【0038】
更に詳しくは、化学式(4)で示されるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を含む培地中で、前記微生物を培養することを特徴とする前記ポリエステルの製造方法である。
【0039】
本発明のポリエステルの製造方法においては、前記化学式(4)で示すω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸に加えて、ペプチド類をも含む培地中で、前記微生物を培養することを特徴とするポリエステルの製造方法とすることができる。その際、培地中に含める前記ペプチド類として、ポリペプトンを用いることを特徴とするポリエステルの製造方法とすることが好ましい。
【0040】
また、本発明のポリエステルの製造方法においては、前記化学式(4)で示すω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸に加えて、酵母エキスをも含む培地中で、前記微生物を培養することを特徴とするポリエステルの製造方法とすることが好ましい。
【0041】
本発明のポリエステルの製造方法においては、(4)で示すω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸に加えて、有機酸またはその塩をも含む培地中で、前記微生物を培養することを特徴とするポリエステルの製造方法とすることができる。その際、例えば、培地中に含める前記有機酸またはその塩として、ピルビン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、イソクエン酸、ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸、ならびにこれら有機酸の塩からなる群より選択される1つ以上を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法とすることが好ましい。
【0042】
本発明のポリエステルの製造方法においては、(4)で示すω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸に加えて、アミノ酸またはその塩をも含む培地中で、前記微生物を培養することを特徴とするポリエステルの製造方法とすることができる。その際、例えば、培地中に含める前記アミノ酸またはその塩として、グルタミン酸、アスパラギン酸、ならびにこれらアミノ酸の塩からなる群より選択される1つ以上を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法とすることが好ましい。
【0043】
本発明のポリエステルの製造方法においては、前記化学式(4)で示すω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸に加えて、糖類をも含む培地中で、前記微生物を培養することを特徴とするポリエステルの製造方法とすることもできる。その際、例えば、培地中に含める前記糖類として、グリセロアルデヒド、エリトロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、グリセロール、エリトリトール、キシリトール、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マルトース、スクロース、ラクトースからなる群より選択される1つ以上の糖類を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法とすることが好ましい。
【0044】
本発明のポリエステルの製造方法においては、前記化学式(4)で示すω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸に加えて、炭素数4〜12の直鎖アルカン酸またはその塩をも含む培地中で、前記微生物を培養することを特徴とするポリエステルの製造方法とすることもできる。
【0045】
なお、上記する種々の構成を有する本発明のポリエステルの製造方法では、前記化学式(4)で示すω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を含む培地中で、前記微生物を培養し、前記微生物が産生した前記化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むポリエステルを微生物細胞から回収する工程を有することを特徴とするポリエステルの製造方法とするのが一般的である。
【0046】
なお、本発明のポリエステルの製造方法では、前記微生物として、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法とすることが好ましい。例えば、その際、前記微生物として、シュードモナス チコリアイ YN2株(Pseudomonas cichorii YN2;FERM BP−7375)、シュードモナス チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45;FERM BP−7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161;FERM BP−7376)、シュードモナス プチダ P91株(Pseudomonas putida P91;FERMBP−7373)のいずれが1つ以上の株を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法とするとより好ましいものとなる。
【0047】
【発明の実施の形態】
本発明は、側鎖に、その環上にビニル基が置換している芳香環を有しているPHA型の新規なポリエステルとして、下で述べる微生物を利用する製造方法によって製造可能な、下記化学式(1):
【0048】
【化13】
【0049】
(式中、nは、0〜7の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むポリエステルを提供している。この3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットには、付加反応などにおける、反応性が高く、様々な官能基の導入や化学的変換を施すことが可能なビニル基が、芳香環であるフェニル基上、p位に存在しており、フェニル基の存在によって、ガラス転移温度や融点が高く、加工性も良いとうい加工特性を有する上に、前記ビニル基を利用して、様々な官能基の導入や化学的変換を施すことで、新規な機能を付与する上でも有用なものとなる。
【0050】
なお、化学式(1)の3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルにおいて、その他のユニットを含むものであってもよく、通常、3−ヒドロキシアルカン酸ユニットをも若干含有するPHA型のポリエステルであってもよい。但し、化学式(1)の3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットの含有比率は、少なくとも、1ユニット%以上、通常は、主成分、すなわち、少なくとも50ユニット%以上、できれば、70ユニット%以上となるものがガラス転移温度や融点の高さ、加工性の良さを付与する上では好ましい。
【0051】
具体的には、化学式(1)のユニットの含有比率は、その他のユニットとして、化学式(2):
【0052】
【化14】
【0053】
(式中、mは、0〜8の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示される3−ヒドロキシアルカン酸ユニットのみを含むPHAである場合には、70ユニット%以上であることが望ましい。しかしながら、化学式(1)のユニット以外のユニットとして、同じくフェニル基をその側鎖に有するユニットを含む際には、化学式(1)のユニットとそれらフェニル基をその側鎖に有するユニットの含有率の総和が、70ユニット%以上となることが望ましい。なお、PHAの用途や、化学式(1)のユニットの利用目的によっては、必ずしも、化学式(1)のユニット自体の含有比率は、高い含有比率を必要としないこともある。ただし、化学式(1)のユニットの含有比率が、1ユニット%に満たないものでは、ポリマー全体にかかるユニットが存在することによる特性が発揮されなくなる。
【0054】
化学式(1)のユニットと類似するフェニル基をその側鎖に有するユニット以外に、その他の成分として含有される3−ヒドロキシアルカン酸ユニットは、その側鎖は、炭素数1〜9の範囲の直鎖アルキル基である、上記の化学式(2)で示される3−ヒドロキシアルカン酸ユニットであることが望ましい。この種の飽和な側鎖を有する3−ヒドロキシアルカン酸ユニットは、ビニル基のような高い反応性を有していないので、様々な官能基の導入や化学的変換を施す際、不要な反応を起こさず、目的とするビニル基に選択的に反応を起こすことを可能とする。なお、本発明のPHA型のポリエステルは、溶融成形して、種々の最終製品に加工するが、その分子量が過度に大きいものであると、フェニル基によるガラス転移温度や融点の上昇作用が必要以上に働き、適度な溶融温度範囲を超えてしまうものとなる。その点をも考慮すると、数平均分子量が、3000〜500000の範囲のものは、好適なものとなる。
【0055】
以下に、本発明のポリエステルを製造する方法について、より詳細に説明する。本発明では、上記化学式(1)の3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルを、微生物を利用して、生分解性を有するPHA型のポリエステルとして生産することができる。具体的には、原料として、下記化学式(4):
【0056】
【化15】
【0057】
(式中、pは、0〜7の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示されるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を用い、PHA産生能を有する微生物により、対応する化学式(1)の3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットに変換させ、それを含むPHA型のポリエステルを生産・蓄積させる。
【0058】
例えば、下記化学式(5):
【0059】
【化16】
【0060】
に示す5−(4−ビニルフェニル)吉草酸を原料として用いる場合には、化学式(3):
【0061】
【化17】
【0062】
で示される3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを含むPHA型のポリエステルが、PHA産生能を有する微生物により、生産・蓄積される。
【0063】
また、下記化学式(6):
【0064】
【化18】
【0065】
に示す8−(4−ビニルフェニル)オクタン酸を原料として用いる場合には、化学式(7):
【0066】
【化19】
【0067】
で示される3−ヒドロキシ−8−(4−ビニルフェニル)オクタン酸ユニット、ならびに化学式(8):
【0068】
【化20】
【0069】
で示される3−ヒドロキシ−6−(4−ビニルフェニル)ヘキサン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルが、PHA産生能を有する微生物により、生産・蓄積される。
【0070】
また、下記化学式(9):
【0071】
【化21】
【0072】
で示される10−(4−ビニルフェニル)デカン酸を原料として用いる場合には、化学式(10):
【0073】
【化22】
【0074】
で示される3−ヒドロキシ−10−(4−ビニルフェニル)デカン酸ユニット、化学式(7):
【0075】
【化23】
【0076】
で示される3−ヒドロキシ−8−(4−ビニルフェニル)オクタン酸ユニット、ならびに化学式(8):
【0077】
【化24】
【0078】
で示される3−ヒドロキシ−6−(4−ビニルフェニル)ヘキサン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルが、PHA産生能を有する微生物により、生産・蓄積される。
【0079】
更に、下記化学式(11):
【0080】
【化25】
【0081】
で示される11−(4−ビニルフェニル)ウンデカン酸を原料として用いる場合には、化学式(12):
【0082】
【化26】
【0083】
で示される3−ヒドロキシ−9−(4−ビニルフェニル)ノナン酸ユニット、化学式(13):
【0084】
【化27】
【0085】
で示される3−ヒドロキシ−7−(4−ビニルフェニル)ヘプタン酸ユニット、ならびに化学式(3):
【0086】
【化28】
【0087】
で示される3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを含むPHA型のポリエステルが、PHA産生能を有する微生物により、生産・蓄積される。
【0088】
以上に例示するように、本発明の製造方法を利用すると、原料に用いるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸に対して、生産されるPHA型のポリエステルに含有される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットは、対応する炭素鎖長を保持するものに加えて、側鎖の炭素鎖長が、炭素数2づつ短縮されたユニットをも含むPHA型のポリエステルも得られる。
【0089】
一般に、生産されるPHA型のポリエステルは、側鎖に、3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットの4−ビニルフェニル基など疎水性の原子団を有するので、水溶性は乏しく、PHA産生能を有する微生物の菌体内に蓄積されるので、培養により増殖させ、目的のPHA型のポリエステルを生産・蓄積している菌体を集菌することで、培地と分離が容易になされる。集菌した培養菌体を、洗浄・乾燥した後、目的のPHA型のポリエステルを回収することができる。
【0090】
培養された微生物細胞から目的のPHAを回収する方法としては、通常行なわれている方法を適用することができる。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトンなどの有機溶媒による抽出が最も簡便ではあるが、それ以外にジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルが用いられる場合もある。また、有機溶媒が使用しにくい環境中においては、SDS等の界面活性剤による処理、リゾチーム等の酵素による処理、次亜塩素酸塩、アンモニア、EDTA等の薬剤による処理、あるいは超音波破砕法、ホモジナイザー法、圧力破砕法、ビーズ衝撃法、摩砕法、擂潰法、凍結融解法のいずれかの方法を用いて微生物細胞を物理的に破砕することによって、PHA以外の菌体成分を除去して、PHAを回収する方法を用いることもできる。
【0091】
本発明のポリエステルの製造方法で用いる微生物は、PHA産生能を有する微生物、この場合、化学式(4)で示されるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を含む培地中で培養することにより、化学式(1)で示す3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルを生産し得る微生物であれば、いかなる微生物であってもよい。利用可能なPHA産生能を有する微生物の一例としては、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物を挙げることができる。なかでも、PHA産生能を有するものの、フェニル基上に置換しているビニル基に対しては、それを酸化する、あるいは、エポキシ化するなどの酵素反応性を示さない菌株がより好ましいものである。かかる微生物の一例として、シュードモナス チコリアイ(Pseudomonas cichorii)、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorecense)、シュードモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)、シュードモナス アルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス ジェッセニイ(Pseudomonas jessenii)等に属するある種の微生物を挙げることができる。例えば、より好適な菌株として、シュードモナス チコリアイ YN2株(Pseudomonas cichorii YN2;FERM BP−7375)、シュードモナス チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45;FERM BP−7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161;FERM BP−7376)、シュードモナス プチダ P91株(Pseudomonas putida P91;FERM BP−7373)を挙げることができる。
【0092】
これら4種の菌株は、独立行政法人 産業技術総合研究所(旧 通商産業省 工業技術院) 生命工学工業技術研究所 特許微生物寄託センターに寄託されており、特開2001−288256号公報に記載されている微生物である。
【0093】
また、これら4種の微生物は、側鎖に、芳香環部分に置換基を有する3−ヒドロキシフェニルアルカン酸、3−ヒドロキシ−フェノキシアルカン酸、3−ヒドロキシフェニルスルファニルアルカン酸等のユニットを含むポリヒドロキシアルカノエート型のポリエステルを生産する能力を有する微生物である。
【0094】
なお、本発明のPHA型のポリエステルは、それを構成する化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニット、また、副次的に含有されるその他のユニット、例えば、化学式(2)で示される3−ヒドロキシ−アルカン酸ユニットは、共に、その3位の炭素原子は、不斉炭素となっている。この不斉中心に由来して、互いに絶対配置の異なる立体異性体が存在するものの、生分解性の観点では、含まれる全てのユニットにおいて、その立体異性体がR体となるものが最適である。
【0095】
微生物を利用して、対応するアルカン酸から3−ヒドロキシ−アルカン酸へと変換しており、本発明の製造方法で得られるPHA型のポリエステルは、全てのユニットにおいてその立体異性体がR体となる特徴を有している。
【0096】
本発明の製造方法では、上記するPHA産生能を有する微生物を、基質を含む培地中で培養するが、その際、微生物の培養条件は、下記するように選択することが望ましい。
【0097】
目的とする化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルを生産するための基質、化学式(4)で示されるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を培地に含ませる際、培地中におけるその濃度は、0.01%〜1%(w/v)の範囲、好ましくは、0.02%〜0.2%(w/v)の範囲に選択することが望ましい。なお、化学式(1)で示す3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットの他、それ以外の3−ヒドロキシアルカン酸型のユニットをも含有するPHA型のポリエステルを生産させる際には、それ以外の3−ヒドロキシアルカン酸型のユニットに対応する基質、すなわち、対応するアルカン酸を培地に添加することができる。
【0098】
また、培地には、微生物の増殖を促す基質として、酵母エキスやポリペプトン、肉エキスといった栄養素を添加することが可能である。すなわち、酵母エキスやポリペプトン、肉エキスといった栄養素の形態で、ペプチド類をエネルギー源、炭素源として、添加することができる。
【0099】
あるいは、培地には、微生物の増殖により消費されるエネルギー源、炭素源として、糖類、例えば、グリセロアルデヒド、エリトロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースといったアルドース、
グリセロール、エリトリトール、キシリトール等のアルジトール、
グルコン酸等のアルドン酸、
グルクロン酸、ガラクツロン酸等のウロン酸、
マルトース、スクロース、ラクトースといった二糖等を用いることができる。
【0100】
前記糖類に代えて、有機酸またはその塩、より具体的には、TCAサイクルに関与する脂肪酸、ならびに、TCAサイクルから1段階や2段階の少ない生化学的反応により誘導される脂肪酸、またはそれらの水溶性の塩を利用することができる。有機酸またはその塩として、例えば、ピルビン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、イソクエン酸、ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸などのヒドロキシカルボン酸やオキソカルボン酸類またはその水溶性の塩を用いることが可能である。あるいは、アミノ酸またはその塩、例えば、アスパラギン酸やグルタミン酸等のアミノ酸またはその塩を用いることが可能である。有機酸またはその塩を添加する際には、ピルビン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、イソクエン酸、ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸、ならびにその塩からなる群から、一種または複数種を選択し、培地に添加し、溶解させることがより好ましい。あるいは、アミノ酸またはその塩を添加する際には、アスパラギン酸、グルタミン酸ならびにそれらの塩からなる群から、一種または複数種を選択し、培地に添加し、溶解させることがより好ましい。その際、必要に応じて、全部または一部を水溶性の塩の形状で添加し、培地のpHに影響を与えず、均一に溶解させることもできる。
【0101】
微生物の増殖を促す基質として、培地に添加する、ペプチド類、糖類、有機酸またはその塩は、いずれを用いてもよく、二種以上を混用してもよい。なお、培地に対する、その添加量は、通常、0.1%〜5%(w/v)の範囲、より好ましくは、0.2%〜2%(w/v)の範囲に選択することが望ましい。有機酸の塩を用いる際には、対応する有機酸に換算した添加量を意味する。二種以上を混用する際には、その添加量の合計を前記の範囲とすることが望ましい。
【0102】
本発明で用いる培地としては、リン酸塩、ならびにアンモニウム塩または硝酸塩等の窒素源を含む無機塩培地ならば、いかなる無機塩培地をも利用可能である。なお、培地に含有される、窒素源の濃度を調節することで、PHAの生産性を向上せしめることが可能である。
【0103】
培養温度は、利用する菌株に応じて、その菌株が良好に増殖可能な温度であれば、特に問題はないが、通常、15℃〜30℃の範囲に選択することが適当である。培養は、液体培地、固体培地を用いる培養など、培地中に基質を保持でき、また、用いる微生物の増殖が可能で、PHAの生産を行うことができる培養形態である限り、いかなる培養方法を用いることもできる。さらに、バッチ培養、フェド・バッチ培養、半連続培養、連続培養等の種類も問わない。液体バッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって振とうさせて、培地に酸素を供給する方法、ジャー・ファーメンターによる攪拌通気方式の酸素供給方法が好適に利用できる。
【0104】
微生物にPHAを生産・蓄積せしめる手法としては、上述する、所定の濃度で基質を添加した、リン酸塩、ならびにアンモニウム塩または硝酸塩等の窒素源を含む無機塩培地において、微生物を培養する、一段階培養法の他に、培養を二段階に分けて行う二段階培養法を採用することもできる。この二段階培養法では、一次培養として、所定の濃度で基質を添加した、リン酸塩、ならびにアンモニウム塩または硝酸塩等の窒素源を含む無機塩培地において、微生物を一旦十分に増殖させた後、二次培養として、培地に含まれる塩化アンモニウムのような窒素源を制限した上で、所定の濃度で基質を添加した培地に、一次培養で得られた菌体を移し、更に培養して、微生物にPHAを生産・蓄積せしめる。この二段階培養法を採用すると、目的とするPHAの生産性が向上する場合がある。
【0105】
本発明の製造方法に利用可能な無機塩培地の一例として、後に述べる実施例において利用している無機塩培地(M9培地)の組成を以下に示す。
【0106】
(M9培地の組成)
Na2HPO4 :6.3
KH2PO4 :3.0
NH4Cl :1.0
NaCl :0.5 g/L、
pH=7.0
更には、良好な菌体の増殖、それに伴うPHAの生産性の向上を図るためには、前記M9培地などの無機塩培地に対して、必須な微量金属元素などの必須微量元素を適量添加することが必要であり、以下に組成を示す微量成分溶液を0.3%(v/v)程度添加することが極めて有効である。かかる微量成分溶液の添加は、微生物の増殖に際して使用される微量金属元素などを供給するものである。
【0107】
(微量成分溶液の組成)
ニトリロ 三酢酸:1.5;
MgSO4:3.0; MnSO4:0.5; NaCl:1.0;
FeSO4:0.1; CaCl2:0.1; CoCl2:0.1;
ZnSO4:0.1; CuSO4:0.1; AlK(SO4)2:0.1;
H3BO3:0.1; Na2MoO4:0.1; NiCl2:0.1 g/L
【0108】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。これら実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、かかる実施例により限定を受けるものではない。
【0109】
(実施例1)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、ペプチド類としてポリペプトンを添加し、一段階培養法を適用して、YN2株を培養して、PHAの生産を行わせた。
【0110】
500 mL容振とうフラスコを用いて、ポリペプトン0.5%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.05%(w/v)を含むM9培地200mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、48時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄した。凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0111】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、40℃で24時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は139 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は22 mgであった。
【0112】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=3700,重量平均分子量 Mw=8900であった。
【0113】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。図1に、1H−NMRスペクトルチャートを示す。また、図1に示す1H−NMRスペクトルの各共鳴シグナルを与える水素原子の帰属を、表1(1H−NMR)に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
1H−NMRの帰属の結果、図1に示される各シグナルは、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットに由来することが確認された。また、得られたPHAは、主構成ユニットとして、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを含み、その含有率は、少なくとも73ユニット%以上であることが示された。なお、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニット以外の含まれるユニットは、芳香環(ベンゼン環)を有してなく、化学式(4)で示すことができる3−ヒドロキシアルカン酸ユニットと推定される。
【0116】
(実施例2)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、糖類としてグルコースを添加し、二段階培養法を適用して、YN2株を培養して、PHAの生産を行わせた。
【0117】
500 mL容振とうフラスコを用いて、グルコース0.5%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.05%(w/v)を含むM9培地200mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、48時間一次培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌した。
【0118】
次いで、500 mL容振とうフラスコを用いて、窒素源のNH4Cl成分を含まないM9培地に対して、グルコース0.5%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.05%(w/v)を添加して調製した培地200 mLに前記菌体を移し、30℃、48時間二次培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄した。凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0119】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、40℃で24時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は203 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は17 mgであった。
【0120】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=8100,重量平均分子量 Mw=17000であった。
【0121】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、上記実施例1に記載する1H−NMRシグナルに相当するスペクトルが観測され、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを主構成ユニットとするPHAであることが判明した。また、その強度から、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットの含有比率は、少なくとも97ユニット%以上であることが示された。
【0122】
(実施例3)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、有機酸としてピルビン酸ナトリウムを添加し、二段階培養法を適用して、微生物YN2株を培養して、PHAの生産を行わせた。
【0123】
実施例2で利用したグルコースに代えて、有機酸の一つであるピルビン酸ナトリウムを用い、培地に0.5%(w/v)添加し、この変更点以外の条件は、実施例2と同様にして、菌体を培養して、PHAを生産させた。なお、ピルビン酸は、グルコースの解糖系(または糖新生系)の経路に含まれるα−オキソカルボン酸である。また、乾燥菌体とした後、同じ手順・条件で、ポリマーを回収した。乾燥菌体の重量は145 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は29 mgであった。
【0124】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=7300,重量平均分子量 Mw=16000であった。
【0125】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、上記実施例1に記載する1H−NMRシグナルに相当するスペクトルが観測され、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを主構成ユニットとするPHAであることが判明した。また、その強度から、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットの含有比率は、少なくとも99ユニット%以上であることが示された。
【0126】
(実施例4)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、ペプチド類としてポリペプトンを添加し、一段階培養法を適用して、YN2株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0127】
500 mL容振とうフラスコを用いて、ポリペプトン0.5%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.05%(w/v)を含むM9培地200 mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、72時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0128】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は155 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は20 mgであった。
【0129】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=9900,重量平均分子量 Mw=39000であった。
【0130】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、上記実施例1に記載する1H−NMRシグナルに相当するスペクトルが観測され、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを主構成ユニットとするPHAであることが判明した。また、その強度から、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットの含有比率は、少なくとも99ユニット%以上であることが示された。
【0131】
更に、得られたポリマーの示差走査熱量測定(DSC)を行った。装置はPerkin−Elmer社Pyris1を用い、測定は−50℃で1分保持→20℃/分の速度で350℃まで昇温の条件で行った。得られたグラフを図2に示す。
【0132】
(実施例5)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、酵母エキスを添加し、一段階培養法を適用して、P161株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0133】
500 mL容振とうフラスコを用いて、酵母エキス0.5%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.05%(w/v)を含むM9培地200mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したP161株のコロニーを植菌し、30℃、72時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0134】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は135 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は16 mgであった。
【0135】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=8900,重量平均分子量 Mw=32000であった。
【0136】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、上記実施例1に記載する1H−NMRシグナルに相当するスペクトルが観測され、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを主構成ユニットとするPHAであることが判明した。また、その強度から、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットの含有比率は、少なくとも99ユニット%以上であることが示された。
【0137】
(実施例6)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、酵母エキスを添加し、一段階培養法を適用して、H45株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0138】
500 mL容振とうフラスコを用いて、酵母エキス0.5%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.05%(w/v)を含むM9培地200 mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したH45株のコロニーを植菌し、30℃、72時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0139】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は122 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は12 mgであった。
【0140】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=9000,重量平均分子量 Mw=29000であった。
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、上記実施例1に記載する1H−NMRシグナルに相当するスペクトルが観測され、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを主構成ユニットとするPHAであることが判明した。また、その強度から、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットの含有比率は、少なくとも99ユニット%以上であることが示された。
【0141】
(実施例7)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、酵母エキスを添加し、一段階培養法を適用して、P91株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0142】
500 mL容振とうフラスコを用いて、酵母エキス0.5%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.05%(w/v)を含むM9培地200mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、96時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0143】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は105 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は11 mgであった。
【0144】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=9200,重量平均分子量 Mw=31000であった。
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、上記実施例1に記載する1H−NMRシグナルに相当するスペクトルが観測され、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを主構成ユニットとするPHAであることが判明した。また、その強度から、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットの含有比率は、少なくとも99ユニット%以上であることが示された。
【0145】
(実施例8)
M9培地に、8−(4−ビニルフェニル)オクタン酸と、ペプチド類としてポリペプトンを添加し、一段階培養法を適用して、YN2株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0146】
500 mL容振とうフラスコを用いて、ポリペプトン0.5%(w/v)及び8−(4−ビニルフェニル)オクタン酸0.1%(w/v)を含むM9培地200 mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、96時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0147】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は170 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は26 mgであった。
【0148】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=12000,重量平均分子量 Mw=38000であった。
【0149】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、下記化学式(7)に示す3−ヒドロキシ−8−(4−ビニルフェニル)オクタン酸ユニット及び化学式(8)に示す3−ヒドロキシ−6−(4−ビニルフェニル)ヘキサン酸ユニットを30:70の割合で含むPHAであることが判明した。また、その強度から、前記二種のユニットの含有比率の合計は、少なくとも95ユニット%以上であることが示された。
【0150】
【化29】
【0151】
【化30】
【0152】
(実施例9)
M9培地に、10−(4−ビニルフェニル)デカン酸と、ペプチド類としてポリペプトンを添加し、一段階培養法を適用して、YN2株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0153】
500 mL容振とうフラスコを用いて、ポリペプトン0.5%(w/v)及び10−(4−ビニルフェニル)デカン酸0.1%(w/v)を含むM9培地200 mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、96時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0154】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は160 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は23 mgであった。
【0155】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=10000,重量平均分子量 Mw=36000であった。
【0156】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、下記化学式(10)に示す3−ヒドロキシ−10−(4−ビニルフェニル)デカン酸ユニット及び化学式(7)に示す3−ヒドロキシ−8−(4−ビニルフェニル)オクタン酸ユニット及び化学式(8)に示す3−ヒドロキシ−6−(4−ビニルフェニル)ヘキサン酸ユニットを20:30:50の割合で含むPHAであることが判明した。また、その強度から、前記三種のユニットの含有比率の合計は、少なくとも97ユニット%以上であることが示された。
【0157】
【化31】
【0158】
【化32】
【0159】
【化33】
【0160】
(実施例10)
M9培地に、11−(4−ビニルフェニル)ウンデカン酸と、ペプチド類としてポリペプトンを添加し、一段階培養法を適用して、YN2株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0161】
500 mL容振とうフラスコを用いて、ポリペプトン0.5%(w/v)及び11−(4−ビニルフェニル)ウンデカン酸0.1%(w/v)を含むM9培地200 mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、120時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0162】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は170 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は26 mgであった。
【0163】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=11000,重量平均分子量 Mw=37000であった。
【0164】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、下記化学式(12)に示す3−ヒドロキシ−9−(4−ビニルフェニル)ノナン酸ユニット及び化学式(13)に示す3−ヒドロキシ−7−(4−ビニルフェニル)ヘプタン酸ユニット及び化学式(3)に示す3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを10:20:70の割合で含むPHAであることが判明した。また、その強度から、前記三種のユニットの含有比率の合計は、少なくとも95ユニット%以上であることが示された。
【0165】
【化34】
【0166】
【化35】
【0167】
【化36】
【0168】
(実施例11)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、アミノ酸類としてグルタミン酸ナトリウムを添加し、一段階培養法を適用して、YN2株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0169】
500 mL容振とうフラスコを用いて、グルタミン酸ナトリウム0.5%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.05%(w/v)を含むM9培地200 mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、72時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0170】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は145 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は18 mgであった。
【0171】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=9800,重量平均分子量 Mw=37000であった。
【0172】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、上記実施例1に記載する1H−NMRシグナルに相当するスペクトルが観測され、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを主構成ユニットとするPHAであることが判明した。また、その強度から、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットの含有比率は、少なくとも97ユニット%以上であることが示された。
【0173】
(実施例12)
M9培地に、5−(4−ビニルフェニル)吉草酸と、直鎖アルカン酸類としてn−ノナン酸を添加し、一段階培養法を適用して、YN2株を培養して、PHAの生産を行わせたのち、クロロホルム抽出、アセトン抽出を行った。
【0174】
500 mL容振とうフラスコを用いて、n−ノナン酸0.1%(w/v)及び5−(4−ビニルフェニル)吉草酸0.1%(w/v)を含むM9培地200mLに、予め寒天プレート上で種菌培養したYN2株のコロニーを植菌し、30℃、90時間培養を行った。培養後、遠心分離により培養菌体を集菌し、メタノールで洗浄し、凍結乾燥した後、乾燥菌体重量を秤量した。
【0175】
乾燥菌体に、クロロホルムを加え、25℃で72時間ポリマーを抽出した。抽出後の破砕菌体を除去するため、ポリマーが抽出されたクロロホルムをろ過した。ポリマーの溶解するクロロホルム層を、エバポレーターにより濃縮した後、更にアセトンに溶解させ、不溶部分をろ過で除去し、エバポレーターにより濃縮した後、冷メタノールで沈澱固化した部分を回収した。回収された沈澱物を減圧乾燥して、目的とするポリマーを得た。乾燥菌体の重量は165 mg、得られたポリマーの重量(回収量)は26 mgであった。
【0176】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した(東ソー HLC−8220 GPC、カラム:東ソー TSK−GEL SuperHM−H、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)。その結果、得られたポリマーは、数平均分子量 Mn=11000,重量平均分子量 Mw=38000であった。
【0177】
得られたポリマーの構造決定は、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400; 共鳴周波数:400MHz; 測定核種:1H; 使用溶媒:CDCl3; reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3; 測定温度:室温)によって行った。その結果、上記実施例1に記載する1H−NMRシグナルに相当するスペクトルが観測され、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットを主構成ユニットとするPHAであることが判明した。また、その強度から、3−ヒドロキシ−5−(4−ビニルフェニル)吉草酸ユニットの含有比率は、少なくとも71ユニット%以上であることが示された。
【0178】
【発明の効果】
本発明のポリエステルは、上記する化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルであり、かかる側鎖に、ビニル基をその環上に置換基として有するベンゼン環を有しているPHA型のポリエステルは、従来報告されていないものである。本発明では、この新規な構成を有するPHA型のポリエステルを、基質として、対応するω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を用い、微生物により生分解性のPHA型のポリエステルとして生産させることを可能としている。かかる微生物により生産される、化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むPHA型のポリエステルは、その他に若干含有される他の3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含め、その3位の不斉炭素における立体配置は、全てR体のものとなっており、立体異性の乱れによる加工性の低下もなく、生分解性を有する有用な材料となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で取得されたPHAポリマーの1H−NMRスペクトルを示す。
【図2】実施例4で取得されたPHAポリマーのDSCチャートを示す。
Claims (5)
- 下記化学式(4):
(式中、pは、0〜7の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示されるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸を含む培地中において、
化学式(4)で示されるω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸から化学式(1):
(式中、nは、0〜7の範囲から任意に選ばれる1つ以上の整数である)
で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを分子中に含むポリエステルを生産する能力を有する微生物を培養する工程と、
前記微生物が産生する前記化学式(1)で示される3−ヒドロキシ−ω−(4−ビニルフェニル)アルカン酸ユニットを含むポリエステルを前記微生物から回収する工程とを有する
ことを特徴とするポリエステルの製造方法。 - 前記微生物として、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物を用いる
ことを特徴とする請求項3に記載のポリエステルの製造方法。 - 前記微生物として、シュードモナス チコリアイ YN2株(Pseudomonas cichorii YN2;FERM BP−7375)、シュードモナス チコリアイ H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・ジェッセニイ P161株(Pseudomonas jessenii P161;FERM BP−7376)、シュードモナス プチダ P91株(Pseudomonas putida P91;FERM BP−7373)のいずれが1つ以上の株を用いる
ことを特徴とする請求項4に記載のポリエステルの製造方法。
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