JP3728126B2 - 原虫類の検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水処理分野で実用可能な、クリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫類の検査方法に関する。
本発明は、水処理分野で実用可能な、従来法の問題点を克服した、感染力のある原虫類の存在量を定量評価する検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、クリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫による水系感染症の発生が上・下水道分野で大きな問題となっている(総説として例えば、保坂三継(1998)「水系原虫感染症−原因生物と流行発生−」,用水と廃水,第40巻,第2号,11頁;金子光美(1998)「原虫類やその他の病原性微生物の検出とその除去技術」,用水と廃水,第10巻,第4号,32頁など)。これらの原虫類は、環境中においてオーシストもしくはシストと呼ばれる胞子状の殻に包まれた形態で存在しているため、砂ろ過や塩素消毒といった従来の水処理法では防除しきれない。甚大な水系感染を未然に防ぐために、水処理プロセスにおける原虫類のモニタリングに基づく対策、もしくは、原虫類を確実に駆除できる新プロセスの開発などが強く求められている。
【0003】
クリプトスポリジウムのオーシストおよびジアルジアのシストの存在量を検査する方法として、染色法、免疫学的検査法、遺伝子検査法、動物実験法などがある。
染色法としては、細胞を色素で染色した後に光学顕微鏡で観察する方法(例えば、ギムザ染色、抗酸性染色など)や細胞をDAPI [4,6-diamidino-2-phenylindole] 、PI [propidium iodine] 、FITC [fluorescein isothiocyanate] 等の蛍光色素で染色した後に蛍光顕微鏡で観察する方法が挙げられる。これらは、微生物や原虫の種を問わず非特異的に細胞を染色し、顕微鏡観察で鑑別・計数する方法であり、混在する他種の細胞が明らかに形態や大きさの異なる場合には鑑別できるが、原虫類のうちの近縁種間の鑑別には熟練を要するため、一般に誤判定を招きやすい。
【0004】
免疫学的検査法としては、予め蛍光化合物で標識した抗体と細胞を反応させた後に、蛍光を発する細胞を蛍光顕微鏡で観察する方法や、フローサイトメーターを用いて粒子サイズ毎に分画して蛍光強度分布を計測する方法が挙げられる。あるいは、試料水中のオーシストを酵素抗体法で検出・定量する方法が挙げられる。これらはいずれも、所望のオーシストもしくはシストのみに特異的に結合する抗体を用いることによって、特異的に検出することができるといわれているが、空のオーシスト等を陽性と誤認しやすい、多量のオーシストを含む水試料が必要、分析に極めて高額な装置が必要など、操作性や定量性の点で満足のゆく検査方法とは言い難い。
【0005】
遺伝子検査法としては、オーシスト等を含む水試料から核酸を抽出し、所望の原虫類に特異的な遺伝子の塩基配列に基づいて調製したDNA断片を用いて検出する方法、抽出した核酸を鋳型として、所望の原虫類に特異的な遺伝子の塩基配列に基づいて調製したDNA断片セットをプライマーとしたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって試験管内で増幅した遺伝子を検出する方法が挙げられる。これらの方法は、着目する遺伝子に十分配慮すれば所望の原虫類のみを特異的に検出することが可能であるが、遺伝子解析に関する専門知識を必要とする上に、操作が煩雑であり、所望の原虫類の存在は判定できても、定量的な評価や生死の判定が困難である。
【0006】
クリプトスポリジウムの生死を判別する方法として現在盛んに用いられている動物実験法は、小動物を用いた感染試験である(例えば、貫上ら(1998)「オゾンによるCryptosporidium オーシストの不活化」,第32回 日本水環境学会講演集,467頁)。クリプトスポリジウムのオーシストを含んだ水試料をマウスやラット等の小動物へ経口接種すると、感染能を保持しているオーシストの場合、小動物の腸管組織に寄生してクリプトスポリジウムが増殖するため、糞便中にオーシストが排泄される。糞便中からオーシストを精製し、前記した染色法や免疫学的検査法等でオーシストを定量・評価するという方法である。この方法は、前記した染色法や免疫学的検査法の問題点を抱えているばかりでなく、免疫不全等の性質のある特殊な小動物を用いる必要があること、1検体当たり少なくとも1匹の小動物が必要であること、オーシストを接種した後に継続して2〜3週間の間定期的に糞便を調査する必要があること、感染能を保持したオーシスト数が104 個を下回ると糞便中にオーシストが排泄されないため検査には多量のオーシストを必要とすること、などの欠点がある。
【0007】
ところで、薬学分野において、クリプトスポリジウムに対する抗生剤をスクリーニングする方法として、培養細胞を用いた接種試験方法が報告された(例えば、K. M. Woods etal. (1995) "Development of a microtitre ELISA to quantify development of Cryptosporidium parvum in vitro" FEMS Microbiol. Lett., vol.128, p89 )。この方法は、マルチプレートで培養した培養細胞に、クリプトスポリジウムのオーシストと薬効を調べたい薬剤とを混和した試料を添加して、所定時間接触させた後に新鮮な増殖培地と交換してから更に2日間培養を続ける。クリプトスポリジウムが細胞に感染すると、クリプトスポリジウムは細胞内で寄生・増殖するため、増殖したオーシストを酵素抗体法で検出・定量する方法である。報告によると、1試料当たり5×104 〜1×105 個のクリプトスポリジウム・オーシストが必要であるが、薬効を精度良く評価できると報告している。操作性、再現性、定量性の点で、従来汎用されている前記動物実験法よりは優れた方法といえるが、水処理分野へ適用しようとした場合、1試料当たり5×104 〜1×105 個のクリプトスポリジウム・オーシストを必要とする該方法は検出感度の点で問題が残る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来知られている原虫類の検査方法は、前記したように、原虫類の鑑別に熟練を必要とする煩雑な方法、操作は簡便だが結果の正確さに欠く方法、原虫類の存在は検査できても生死の識別や感染力の有無までは評価できないなど問題点が多く、操作性、定量性、検出感度の点で満足のゆく方法がない。本発明においては、人体に対して問題となる感染力を保持した原虫類を簡便に定量評価する方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
原虫類に対する医薬品をスクリーニングするための方法として薬学分野で提案されている、動物培養細胞を用いた原虫類の検査方法に関して、細胞の培養条件、原虫類オーシストと培養細胞の接触条件、原虫類の検出試薬や反応条件等を最適化することによって、前記した動物実験では検出ができなかった原虫類濃度の水試料についても感度良く、定量的に判定できる。すなわち、前記した課題は以下の(1)〜(4)により解決できる。
【0010】
(1)被験水と培養細胞を接触さることによって被験水中の感染力のある原虫類を培養細胞に寄生させ、増殖した原虫類に、
(A)当該原虫に結合し、且つ蛍光色素化合物で標識した化合物からなる一次処理試薬を注入し、その後、蛍光分光光度計にて吸光度を測定して定量・評価する、
(B)当該原虫に結合し、且つ酵素蛋白質で標識した化合物からなる一次処理試薬を注入し、その後、発色操作した後、分光光度計にて吸光度を測定して定量・評価する、
又は、
(C)当該原虫に結合する化合物からなる一次処理試薬を注入し、次に、
a)当該一次処理試薬に結合し、且つ蛍光色素化合物で標識した化合物からなる二次処理試薬を注入し、その後、蛍光分光光度計にて吸光度を測定して定量・評価する、
若しくは、
b)当該一次処理試薬に結合し、且つ酵素蛋白質で標識した化合物からなる二次処理試薬を注入し、その後、発色操作した後、分光光度計にて吸光度を測定して定量・評価する、
ことを特徴とする原虫類の検査方法。
(2)原虫類の量を計測する酵素抗体法に用いる一次処理試薬と二次処理試薬の組合せとして、ビオチン化抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋ストレプトアビジン、ビオチン化抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋ストレプトアビジン・ビオチン複合体、ビオチン化抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋抗ビオチン抗体、フルオレセイン化抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋抗フルオレセイン抗体、非標識抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋抗イムノグロブリン抗体の中から選ばれる化合物を用いることを特徴とする、前記の原虫類の検査方法。
(3)原虫類の量を計測する酵素抗体法に用いる一次処理試薬と二次処理試薬の組合せとして、ビオチン化抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋ストレプトアビジン、ビオチン化抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋ストレプトアビジン・ビオチン複合体、ビオチン化抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋抗ビオチン抗体、フルオレセイン化抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋抗フルオレセイン抗体、非標識抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋抗イムノグロブリン抗体の中から選ばれる化合物を用いることを特徴とする、前記の原虫類の検査方法。
(4)原虫類の量を計測する蛍光抗体法に用いる一次処理試薬若しくは二次処理試薬として、フルオレセイン、テキサスレッド又はそれらの誘導体で標識した化合物を用いることを特徴とする、前記の原虫類の検査方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、以下の記載に先立ち、用語の説明を行う。
・一次処理試薬:検査しようとする原虫に結合する性質を有する化合物。
・一次処理溶液:一次処理試薬を含有する溶液。
・二次処理試薬:一次処理試薬に結合する性質を有する化合物。
・二次処理溶液:二次処理試薬を含有する溶液。
・発色試薬:一次処理試薬もしくは二次処理試薬に付加した酵素蛋白質の活性によって呈色反応を起こしうる化合物。
・発色溶液:発色試薬を含有する溶液。
【0012】
つぎに、本発明における原虫類の検査方法のフローを図1に示し、以下に詳述する。
▲1▼ 培養細胞の前培養工程:後述の感染工程で必要な量の培養細胞を確保し、感染工程に供するための培養細胞を調製する工程である。培養細胞の種類は、検査しようとする原虫類が感染しうる細胞株であればよく、例えば、マウス由来BALB/3T33細胞株、ヒト由来のBT−549細胞株、ヒト由来のCaco−2細胞株、ヒト由来のHCT−8細胞株、ヒト由来のHT−29細胞株、ヒト由来のHs−700T細胞株、ヒト由来のHT−1080細胞株、ヒト由来のLS−174T細胞株、ヒト由来のRL59−2細胞株、ウシ由来のMDBK細胞株、イヌ由来のMDCK細胞株などを用いることができるが、ヒトに対して感染性があるクリプトスポリジウム・パルバムを検査する場合、ヒト由来の細胞株、例えばヒト腸管内細胞由来のHCT−8を用いれば、ヒトへの感染性を正しく評価できる。細胞を培養するための培地組成、培養温度、湿度、炭酸ガス濃度、培養時間等の培養条件は、用いようとする細胞株に応じて選定することができる。
【0013】
後述の感染工程で必要な量の培養細胞を確保するための細胞培養において用いる培養容器は、調製すべき培養細胞の量に応じて選定すればよく、培養容器表面への細胞の接着性を高めるためにゼラチン、ポリ−L−リジン、コラーゲン等で表面処理されていてもよい。増殖した培養細胞を常法に従って回収して、細胞数を計数した後に新鮮な培地液等で103 〜105 個/mlとなるように細胞濃度を調整し、1ウェルあたり103 〜105 個、好ましくは1×104 〜5×104 個となるようマルチプレートへ分注して、再び1〜3日程度培養して後述の感染工程に備える。マルチプレートのサイズや規格は、検出工程で用いようとする分光分析装置の規格に合わせて選定すれば良く、96穴マルチプレートを用いることが汎用的である。また、マルチプレートは容器表面への細胞の接着性を高めるためにゼラチン、ポリ−L−リジン、コラーゲン等で表面処理されていてもよい。
【0014】
▲2▼ 培養細胞への感染工程:マルチプレートで培養した後に各ウェルから培地液を除去して、原虫オーシスト濃度を測定したい水試料を分注して、所定時間培養し、原虫を培養細胞へ感染させる。水試料は、好ましくは、培養細胞用の培地を添加したり、培養細胞用の培地で希釈したり、遠心分離後に沈殿物を培養細胞用の培地に再懸濁させたりすることによって、溶媒を培養細胞用の培地に置換した方がよい。さらに、水試料中に雑菌の生存が懸念された場合には、抗菌剤、防黴剤等を添加することができる。オーシストを含んだ水試料を分注した後、前記した細胞培養条件下で30分〜3時間程度、好ましくは1〜2時間程度培養する。培養後に各ウェルから培地液を除去してから、細胞をリン酸緩衝液やハンクス平衡塩溶液等の緩衝液もしくは細胞培養用培地で1乃至数回洗浄する。続いて、オーシストを含まない新鮮な細胞培養用培地を所定量分注して、1〜3日間、好ましくは24〜48時間程度、細胞を培養する。雑菌の生存が懸念された場合には、抗菌剤、防黴剤等を培地に添加することができる。
【0015】
▲3▼ 検出工程:検出工程は、1)固定操作、2)ブロッキング操作、3)一次処理操作、4)二次処理操作、5)発色操作、6)分析操作、の6つの単位操作からなる。
固定操作は、検出工程中の培養細胞や原虫の剥離を防止し、検出に用いる試薬と原虫との接触性を高めるために、細胞を固定する工程であり、前工程で調製したマルチプレートの各ウェルから培地液を除去して、メタノール等の有機溶媒やホルマリンを添加した細胞固定液を分注し、5分から3時間、好ましくは1〜2時間、静置して細胞を固定する。
ブロッキング操作は、細胞やウェル内壁に対する一次処理試薬や二次処理試薬等の非特異的な吸着を防止する工程であり、固定液を除去し、ウェルをリン酸緩衝液やハンクス平衡塩溶液等の緩衝液もしくは細胞培養用培地で1乃至数回洗浄した後に、ブロッキング液を分注して、30分以上静置してから、ブロッキング液を除去する。ブロッキング液は、細胞培養用培地、もしくは、ウシ血清アルブミン等を溶解させた緩衝液等を用いることができる。さらに、ブロッキング液は、Tween20等の界面活性剤を含んでいても良い。前工程において、血清成分を含んだ細胞培養培地を用いた場合には、ブロッキング操作を省略することもできる。
【0016】
一次処理操作は、検査したい原虫を検出可能な試薬(すなわち一次処理試薬)を含んだ一次処理溶液で処理する工程であり、前記した固定操作後のウェル、もしくはブロッキング操作後のウェルに一次処理溶液を分注し、所定時間反応させた後に一次処理溶液を除去し、ウェルをリン酸緩衝液やハンクス平衡塩溶液等の緩衝液もしくは細胞培養用培地で1乃至数回洗浄する。一次処理試薬としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、レクチン等を使用することができる。検査したい原虫を検出可能な一次処理試薬は、ビオチン、ストレプトアビジン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等の化合物で標識されていてもよい。一次処理試薬を溶解させる溶媒としては、一次処理試薬を変性させることなく、原虫との結合を阻害せず、細胞やウェル内壁に対する一次処理試薬の非特異的な吸着を引き起こさない性質であればいかなる溶液も使用することができるが、前記したブロッキング液を用いることが簡便である。
【0017】
二次処理操作は、一次処理試薬のみでは後述する分析操作が不可能な場合について、一次処理試薬を検出可能な試薬(すなわち二次処理試薬)を含んだ溶液で処理する工程であり、前記した一次処理操作後のウェルに二次処理溶液を分注し、所定時間反応させた後に二次処理溶液を除去し、ウェルをリン酸緩衝液やハンクス平衡塩溶液等の緩衝液もしくは細胞培養用培地で1乃至数回洗浄する。二次処理試薬としては、一次処理試薬の性質に応じて選定すれば良く、一次処理試薬に対する抗体やプロテインA、プロテインG、ビオチン、ストレプトアビジンを使用することはできる。さらに、二次処理試薬の結合状態をその結合量に応じて可視化・定量するためには、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート等の蛍光色素化合物もしくはアルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素蛋白質で標識した二次処理試薬を用いればよい。二次処理試薬を溶解させる溶媒としては、二次処理試薬を変性させることなく、一次処理試薬との結合を阻害せず、細胞やウェル内壁に対する二次処理試薬の非特異的な吸着を引き起こさない性質であればいかなる溶液も使用することができるが、前記したブロッキング液を用いることが簡便である。なお、一次処理試薬や二次処理試薬は独自に作成することもできるが、検査の再現性、特異性、汎用性等を鑑みた場合に、市販のビオチン化抗体を一次処理試薬とし、市販のストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ複合体を二次処理試薬として用いることが好ましく、さらに、ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体を二次処理試薬として用いれば検出感度を高めることもできる。
【0018】
発色操作は、検査したい原虫に対する一次処理試薬もしくは二次処理試薬の結合状態をその結合量に応じて可視化するための工程であり、前記した一次処理操作後のウェルもしくは二次処理操作後のウェルに発色溶液を分注し、所定時間反応させた後に、後述の分析操作に供する。但し、一次処理試薬もしくは二次処理試薬に付加した標識化合物が蛍光色素化合物であって、該蛍光色素化合物の発光強度を以て結合量を測定する場合には、該発色操作を省略することができる。発色溶液は、一次処理試薬もしくは二次処理試薬に付加した酵素蛋白質に応じて選定した基質(例えば、アルカリフォスファターゼに対してはONPP[o-nitrophenyl phosphate ]、PNPP[p-nitrophenyl phosphate ]等が挙げられ、ペルオキシダーゼに対してはABTS[2,2'-azino-bis(3-ethylbenz-thiazoline-6-sulfonic acid ]、OPD[o-phenylenediamine]、TMB[3,3',5,5'-tetramethylbenzidine]等が挙げられる)を所定の緩衝液に溶解したものを用いることができる。発色溶液を分注する前に、基質を添加していない緩衝液でウェルを洗浄するとよい。
分析操作は、前記した発色操作後のウェルにおける発色の程度を分光光度計もしくは蛍光分光光度計等の分析装置を用いて計測する工程であり、測定条件は発色の性質に応じて選定することができる。また、前記した発色操作を経ずに、一次処理試薬もしくは二次処理試薬に付加した標識化合物が蛍光色素化合物であって、該蛍光色素化合物の発光強度を以て結合量を測定する場合には、分析に至適な溶液をウェルに分注した後に、蛍光分光光度計等で計測すればよい。
【0019】
【実施例】
ヒト由来培養細胞HCT−8株(ATCC #CCL 244)を宿主細胞として原虫クリプトスポリジウム・パルバムを検査した。
0.2%重炭酸ナトリウム、10%ウマ血清、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1g/Lカナマイシンを添加したRPMI1640培地からなる維持培地にて培養したHCT−8細胞をトリプシン処理で培養容器から回収し、細胞濃度が2.5×105 個/mLとなるように新鮮な増殖培地に懸濁して、予めゼラチンでコートした96穴マルチプレートに200μLずつ分注し、炭酸ガス培養器内で24時間培養した。培養後のマルチプレートの培地を除去し、クリプトスポリジウム懸濁液を各々100μlずつ分注し、炭酸ガス培養器内で90分間培養して、感染させた。クリプトスポリジウム懸濁液は、前記した維持培地に、葉酸(1mg/L)、p−アミノ安息香酸(4mg/L)、パントテン酸(2mg/L)、アスコルビン酸(35mg/L)を添加した増殖培地に、株式会社ベリタスより購入したクリプトスポリジウム・パルバムのオーシストを0〜50万個/mlの濃度範囲で懸濁した溶液を用いた。感染後の各ウェルより培地を除去し、リン酸緩衝液で2回洗浄した後、オーシストを含まない増殖培地を100μlずつ分注し、炭酸ガス培養器内で2日間培養した。
【0020】
培養後の各ウェルより培地を除去し、4%ホルマリンを添加したリン酸緩衝液からなる固定液を100μlずつ分注して、室温で2時間反応させて固定した。固定液を除去し、リン酸緩衝液で3回洗浄した後、1%ウシ血清アルブミンと0.002%Tween20を添加したリン酸緩衝液からなるブロッキング液を100μlずつ分注して、室温で1時間反応させてブロッキングした。ブロッキング液を除去し、一次処理溶液を33μlずつ分注して、室温で1時間反応させた。一次処理溶液は、米国Waterbone Inc.より購入したビオチン化抗体(商品名Aqua−Glo G/C Indirect)を前記したブロッキング液で20倍に希釈した溶液を用いた。反応後の各ウェルから一次処理溶液を除去し、リン酸緩衝液で3回洗浄した後、二次処理溶液を33μlずつ分注して、室温で1時間反応させた。二次処理溶液は、アマシャム株式会社より購入したストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ複合体(商品名Streptoavidin−horseradish peroxidase complex)を前記したブロッキング液で400倍に希釈した溶液を用いた。反応後の各ウェルから二次処理溶液を除去し、リン酸緩衝液で3回洗浄し、過ホウ酸ナトリウム添加リン酸クエン酸緩衝液(Sigma)で1回洗浄した後、発色溶液を100μlずつ分注して、室温で1時間反応させて発色させた。発色溶液は、OPD[o-phenylenediamine dihydrochloride](Sigma)を発色試薬として0.4mg/mlとなるように過ホウ酸ナトリウム添加リン酸クエン酸緩衝液(Sigma)に溶解したものを用いた。発色反応後のマルチプレートは、マイクロプレートリーダー(バイオラド社製 モデル550)を用いて、波長595nmをリファレンスとして波長450nmの吸光度を測定した。
【0021】
結果を図2に示した。図2では、ウェルに添加したクリプトスポリジウム・オーシストの濃度を横軸として、各ウェルについての発色強度を示す吸光度を縦軸にプロットした。前記した実施例に関する結果を○印で示し、培養細胞が無いマルチプレートに関して同様の感染工程〜検出工程を行った結果を比較例として□印で示した。比較例においては、オーシストの濃度によらず吸光度が0.5で程度であったのに対して、実施例では、添加したオーシスト濃度に依存して吸光度の増加が認められた。但し、5万個のオーシストを添加した場合には吸光度の低下がみられ、これは培養細胞数に比較して添加したオーシスト数が多いために培養細胞のダメージが大きく、一部の細胞が死滅したことに起因すると考えられる。
本実施例の結果より、クリプトスポリジウム・オーシスト数が50〜5000個の範囲においてその添加濃度に応じた定量評価が可能であることが明らかである。本発明によれば、動物実験や培養細胞を用いた従来法において検出限界とされた104 個をはるかに凌駕した感度で検出することができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の顕微鏡観察では識別が困難であった原虫類のシストやオーシストの生死を識別することができる上に、動物実験や培養細胞を用いた従来法において検出限界とされた104 個よりも1桁から3桁低い数十から数千個の原虫類を極めて感度良く検出することができる。
本発明は原虫類の生死を識別することができるため、水処理プロセスや水処理装置における原虫類の除去性能ばかりでなく、原虫類の不活化の程度をも評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願における原虫類の検査方法の手順を示す図である。
【図2】クリプトスポリジウム・パルバムに関して本願の検査方法を用いて検出した実施例を示す図である。
Claims (4)
- 被験水と培養細胞を接触さることによって被験水中の感染力のある原虫類を培養細胞に寄生させ、増殖した原虫類に、
(A)当該原虫に結合し、且つ蛍光色素化合物で標識した化合物からなる一次処理試薬を注入し、その後、蛍光分光光度計にて吸光度を測定して定量・評価する、
(B)当該原虫に結合し、且つ酵素蛋白質で標識した化合物からなる一次処理試薬を注入し、その後、発色操作した後、分光光度計にて吸光度を測定して定量・評価する、
又は、
(C)当該原虫に結合する化合物からなる一次処理試薬を注入し、次に、
a)当該一次処理試薬に結合し、且つ蛍光色素化合物で標識した化合物からなる二次処理試薬を注入し、その後、蛍光分光光度計にて吸光度を測定して定量・評価する、
若しくは、
b)当該一次処理試薬に結合し、且つ酵素蛋白質で標識した化合物からなる二次処理試薬を注入し、その後、発色操作した後、分光光度計にて吸光度を測定して定量・評価する、
ことを特徴とする原虫類の検査方法。 - 原虫類の量を計測する酵素抗体法に用いる一次処理試薬と二次処理試薬の組合せとして、ビオチン化抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋ストレプトアビジン、ビオチン化抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋ストレプトアビジン・ビオチン複合体、ビオチン化抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋抗ビオチン抗体、フルオレセイン化抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋抗フルオレセイン抗体、非標識抗原虫抗体とペルオキシダーゼ架橋抗イムノグロブリン抗体の中から選ばれる化合物を用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 原虫類の量を計測する酵素抗体法に用いる一次処理試薬と二次処理試薬の組合せとして、ビオチン化抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋ストレプトアビジン、ビオチン化抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋ストレプトアビジン・ビオチン複合体、ビオチン化抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋抗ビオチン抗体、フルオレセイン化抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋抗フルオレセイン抗体、非標識抗原虫抗体とアルカリフォスファターゼ架橋抗イムノグロブリン抗体の中から選ばれる化合物を用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 原虫類の量を計測する蛍光抗体法に用いる一次処理試薬若しくは二次処理試薬として、フルオレセイン、テキサスレッド又はそれらの誘導体で標識した化合物を用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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1999
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