JP3729033B2 - エネルギー閉じ込め型圧電共振子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、共振子や発振子として用いられるエネルギー閉じ込め型の圧電共振子及びその製造方法に関し、より詳細には、高次モードに起因するスプリアスを抑制する構造が備えられたエネルギー閉じ込め型共振子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々のエネルギー閉じ込め型圧電共振子が、発振子やフィルタ等に広く用いられている。
【0003】
特開平6−164300号公報には、厚み縦振動の高次モードを利用したエネルギー閉じ込め型の圧電共振子が開示されている。ここでは、圧電基板の両主面に励振電極が形成されており、中心線平均表面荒さRaを波長λで規格化した値Ra/λが0.0001〜0.0033の範囲となるよう圧電基板表面が荒らされていることにより、帯域内リップルが改善されると記載されている。
【0004】
しかしながら、エネルギー閉じ込め型の圧電共振子では、帯域内リップルだけでなく、利用するモードよりも高次のモードがスプリアスとなって現れるという問題があった。
【0005】
従来、励振電極上に金属薄膜、インクまたは樹脂等を付与し、質量付加作用により高次モードスプリアスを抑制する方法が広く用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、質量付加による高次モードの抑制は抑制効果が低く、十分な効果を得るには、多くの質量付加用材料を用いなければならなかった。そのため、コストが高くついたり、必要とする周波数帯域の振動を大きくダンピングするという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、厚みモードを利用したエネルギー閉じ込め型の圧電共振子において、使用するモードよりも高次のモードのスプリアスを効果的に抑圧することができ、かつ安価に提供し得る、エネルギー閉じ込め型圧電共振子及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の広い局面によれば、圧電セラミックスよりなる圧電基板と、圧電基板の両主面に形成されており、圧電基板を介して対向する第1,第2の振動電極とを備える厚みモードを利用したエネルギー閉じ込め型の圧電共振子であって、圧電基板の少なくとも一方主面において、少なくとも圧電振動部を含む領域の表面が、該圧電基板のサンドブラストまたはラッピングにより形成されており、かつ高次モードスプリアスを抑制するための加工変質層により構成されており、前記加工変質層が、圧電セラミックスの粒界及び粒内に微小クラックを有し、前記加工変質層の深さをD〔μm〕、共振周波数をfr〔Hz〕としたときに、D×√frが、2.91×10 3 〜2.91×10 4 〔μm・Hz 1/2 〕の範囲とされていることを特徴とする、エネルギー閉じ込め型圧電共振子が提供される。
【0011】
本発明に係るエネルギー閉じ込め型圧電共振子の製造方法は、圧電基板を用意する工程と、前記圧電基板の少なくとも一方主面において、サンドブラスト加工により少なくとも圧電振動部が構成される領域を含む領域に加工変質層の深さをD〔μm〕、共振周波数をfr〔Hz〕としたときに、D×√frが2.91×10 3 〜2.91×10 4 〔μm・Hz 1/2 〕の範囲となるようにサンドブラスト処理を行うことにより加工変質層を形成する工程と、前記加工変質層が形成されている領域において、圧電基板を介して対向するように振動電極を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0014】
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施例に係るエネルギー閉じ込め型圧電共振子の正面断面図及び外観を示す斜視図である。
圧電共振子1は、矩形板状の圧電基板2を有する。圧電基板2は、チタン酸ジルコン酸鉛系、チタン酸鉛系などの圧電セラミックスにより構成されている。
【0015】
圧電基板2の上面2aの中央には、平面形状が円形の第1の振動電極3が形成されている。圧電基板2の下面2bには、振動電極3と圧電基板2を介して対向するように第2の振動電極4が形成されている。
【0016】
第1,第2の振動電極3,4に連ねられるように、第1,第2の引き出し電極5,6が、それぞれ、圧電基板2の上面及び下面に形成されている。
圧電基板2は、本実施例では厚み方向に分極処理されており、振動電極3,4間に交流電圧を印加することにより、厚み縦振動モードの3倍波を利用した共振特性を得ることができる。
【0017】
本実施例の特徴は、圧電基板2の上面2a及び下面2bにおいて、全面に高次モードスプリアスを抑制するための加工変質層2c,2dが形成されていることにある。本実施例では、加工変質層2c,2dは、圧電基板2の上面2a及び下面2bの全面に形成されているが、少なくとも振動電極3,4が対向されている圧電振動部を含む領域に形成されていればよい。また、加工変質層は、上面2aまたは下面2bの一方面にのみ形成されていてもよい。
【0018】
加工変質層2c,2dは、振動電極3,4を形成する前に、圧電基板2の上面2a及び下面2bを、例えばサンドブラスト加工することにより形成される。このサンドブラスト処理は、単に上面2a及び下面2bを荒らすだけでなく、圧電セラミックの粒界及び粒内に微小クラックを有するように施される。
【0019】
具体的には、例えば圧電基板2がチタン酸鉛系セラミックスからなる場合、空気圧0.2MPa及び砥粒径♯220の条件にてサンドブラスト処理を行うことにより加工変質層2c,2dが形成される。
【0020】
なお、このサンドブラスト処理に際しての条件及び処理時間等については、圧電共振子1の共振周波数に応じて適宜設定すればよい。すなわち、後述の実験例から明らかなように、加工変質層2c,2dの厚みによって、高次モードをスプリアスとなる5倍波を、抑制する程度が異なるが、加工変質層2c、2dの厚みについては、所望とする周波数によって異なるため、所望とする周波数に応じて加工変質層を形成する条件を選択すればよい。
【0021】
本実施例の圧電共振子1では、上記加工変質層2c,2dが形成されているため、5倍波のスプリアスを効果的に抑圧することができる。これを、具体的な実験例に基づき説明する。
【0022】
まず、チタン酸鉛系セラミックスからなり、厚み方向に分極処理された厚み0.22mmでfr≒34MHz相当のマザーの圧電基板を用意した。このマザーの圧電基板の表面に、砥粒径♯220の条件でサンドブラスト処理を下記の表1に示す所定の空気圧で、所定の時間行い、加工変質層が形成された実施例1〜3のマザーの圧電基板を用意した。
【0023】
比較のために、上記サンドブラスト処理を行わなかったマザーの圧電基板を比較例1として用意した。
上記実施例1〜3及び比較例1のマザーの圧電基板の上面及び下面に、下地がNi合金、表面がAgからなる導電膜を約1.0μmの厚みとなるように形成し、パターニングすることにより、複数の振動電極3,4及び引き出し電極5,6をマトリックス状に形成し、しかる後、マザーの圧電基板を個々の圧電共振子単位に切断し、圧電共振子を得た。
【0024】
上記のようにして得られた実施例1〜3及び比較例1の圧電共振子における3倍波及び5倍波の位相回転角を下記の表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1から明らかなように、比較例1の圧電共振子では、5倍波の位相回転角が80度と大きく、3倍波の位相回転角とさほどかわらないことがわかる。
これに対して、実施例1〜3では、加工変質層の形成により、5倍波の位相回転角を比較例1に比べて小さくすることができ、すなわち5倍波スプリアスを効果的に抑圧し得ることがわかる。
【0027】
本願発明者らは、上記加工変質層2c,2dの状態を走査型電子顕微鏡で確認したところ、加工変質層において、セラミックスの粒界及び粒内に、微小クラックが多数形成されていることが認められた。すなわち、加工変質層の形成により高次モードを抑圧し得るのは、単に圧電基板2の表面が荒らされているだけでなく、所定の深さの加工変質層内において上記のような微小クラックが形成されているためと考えられる。
【0028】
また、実施例2では、3倍波の位相回転角をさほど抑圧することなく、5倍波を効果的に抑圧し得ることがわかる。本願発明者の実験によれば、図2に示すように、上記加工変質層の深さD〔μm〕の圧電共振子1の共振周波数fr〔Hz〕で規格化された値、D×√frが2.91×103 〜2.91×104 〔μm・Hz1/2〕の範囲の場合、3倍波の位相回転角を80°以上とすることができ、5倍波の位相回転角を75°以下とすることができ、従って、3倍波をさほど抑圧することなく、5倍波を効果的に抑圧し得ることが確かめられた。従って、好ましくは、上記D×√frを2.91×103 〜2.91×104 〔μm・Hz1/2〕の範囲とすることにより、利用しようとするモードをさほど抑圧することなく、利用する厚みモードよりも高次のモードを効果的に抑圧することができる。
【0029】
上記実施例では、圧電基板2の両面に第1、第2の振動電極3,4が形成された圧電共振子につき説明したが、一方の振動電極がギャップを隔てて分割された複数の振動電極からなる圧電共振子や圧電フィルタにも本発明を適用することができる。
【0030】
また、上記実施例では、加工変質層の形成にあたり、サンドブラスト処理が用いられていたが、サンドブラスト処理に代えて、ラッピング法を用いてもよい。
【0031】
【発明の効果】
本発明の係るエネルギー閉じ込め型圧電共振子では、圧電基板の少なくとも一方主面において、少なくとも圧電振動部を含む領域の表面に上記加工変質層が形成されているので、利用しようとするモードよりも高次のモードのスプリアスを効果的に抑圧することができる。従って、共振特性に優れたエネルギー閉じ込め型圧電共振子を提供することが可能となる。
【0032】
上記加工変質層の深さをD〔μm〕、共振周波数をfr〔Hz〕としたときに、D×√frが2.91×103 〜2.91×104 〔μm・Hz1/2〕の範囲とされているので、利用しようとするモードをさほど抑圧することなく、高次モードスプリアスを効果的に抑圧することができる。
【0033】
本発明に係るエネルギー閉じ込め型圧電共振子の製造方法によれば、圧電基板の少なくとも一方主面においてサンドブラストまたはラッピング加工により少なくとも圧電振動部が構成される領域を含む領域に加工変質層が形成され、該加工変質層が形成されている領域において圧電基板を介して対向するように振動電極が形成されるので、本発明に従って、高次モードスプリアスを効果的に抑圧することが可能な圧電共振子を提供することができる。この場合、単に圧電基板表面にサンドブラスト加工により加工変質層を形成するだけでよいため、工程をさほど増加させることなく、高次モードスプリアスを効果的に抑圧することができる。
【0034】
本発明に係る製造方法においても、加工変質層の深さをD〔μm〕、共振周波数をfr〔Hz〕としたときに、D×√frが2.91×103 〜2.91×104 〔μm・Hz1/2〕の範囲とするようにサンドブラストまたはラッピング処理が行われるので、利用しようとするモードをさほどダンピングすることなく、高次モードスプリアスを効果的に抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施例に係るエネルギー閉じ込め型圧電共振子の正面断面図及び外観を示す斜視図。
【図2】加工変質層の深さDの共振周波数frに対する比D×√frと、利用しようとする3倍波の位相回転角と、スプリアスとなる5倍波の位相回転角との関係を示す図。
【符号の説明】
1…エネルギー閉じ込め型圧電共振子
2…圧電基板
2a…上面
2b…下面
2c,2d…加工変質層
3,4…振動電極
Claims (2)
- 圧電セラミックスよりなる圧電基板と、
前記圧電基板の両主面に形成されており、圧電基板を介して対向する第1,第2の振動電極とを備える厚みモードを利用したエネルギー閉じ込め型の圧電共振子であって、
前記圧電基板の少なくとも一方主面において、少なくとも圧電振動部を含む領域の表面が、該圧電基板のサンドブラストまたはラッピングにより形成されており、かつ高次モードスプリアスを抑制するための加工変質層により構成されており、前記加工変質層が、圧電セラミックスの粒界及び粒内に微小クラックを有し、前記加工変質層の深さをD〔μm〕、共振周波数をfr〔Hz〕としたときに、D×√frが、2.91×10 3 〜2.91×10 4 〔μm・Hz 1/2 〕の範囲とされていることを特徴とする、エネルギー閉じ込め型圧電共振子。 - 圧電基板を用意する工程と、
前記圧電基板の少なくとも一方主面において、サンドブラスト加工により少なくとも圧電振動部が構成される領域を含む領域に加工変質層の深さをD〔μm〕、共振周波数をfr〔Hz〕としたときに、D×√frが2.91×10 3 〜2.91×10 4 〔μm・Hz 1/2 〕の範囲となるようにサンドブラスト処理を行うことにより加工変質層を形成する工程と、
前記加工変質層が形成されている領域において、圧電基板を介して対向するように振動電極を形成する工程とを備えることを特徴とする、厚みモードを利用したエネルギー閉じ込め型圧電共振子の製造方法。
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