JP3731314B2 - 配向測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルムを含む高分子シートや紙などのシート状のものや、プラスチック、樹脂、ゴムなどの成型品のような立体的物品も含めて、それらの配向性をマイクロ波により測定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙の繊維配向性は繊維を構成する分子の連鎖方向に相当し、カール、ねじれ、NIP(Non-Impact Printer)用紙の傾斜などと密接に関係がある。特に、ここ数年は繊維配向における基準も厳しくなってきており、数種類の測定方法が用いられている。そのような測定方法としては、水拡散法、力学的破断強度法、超音波法、マイクロ波法などがあり、また現在ではワイヤパートでの操作と配向性との対応もほぼ解明されつつある。
【0003】
一方、高分子フィルムの場合には、フィルムを構成するものは繊維ではないが、分子鎖の配列の異方性が種々の物性、例えば、光学的、電気的、機械的強度などの異方性として把握できる。したがって、紙、高分子フィルムなどを含めて、分子鎖の配列の異方性(分子配向)として総括的に把握することができる。
【0004】
固体高分子においては、分子鎖が流動化した状態から固化する過程においてその形状ゆえに配向性をもつのが一般的である。その配向性により力学的、熱的、光学的または電磁気学的な物性において異方性が発現する。その結果、例えば弾性率の異方性、熱収縮率の異方性等が生じ、様々な品質上の問題が発生している。
【0005】
そのような異方性を測定する方法としては、X線回折法、赤外偏光法、蛍光偏光法、複屈折法、超音波法、マイクロ波法などが用いられている。
これらの方法のうち、X線回折法や蛍光偏光法は測定に時間と労力がかかり、また赤外偏光法は厚い試料では測定が難しい。複屈折法は屈折率の異方性に基づく屈折現象を利用して光学的に異方性を測定する方法であるが、測定には可視光または近赤外光に対する透明性が要求されるため、不透明試料は測定できない。超音波法は接触式のため移動体試料には向かない。
【0006】
マイクロ波の共振を用いた方法は、誘電率の異方性を利用したものであり、誘電率は屈折率とも一定の関係がある。マイクロ波を用いた方法は、紙や高分子フィルムを含めて光学的透明性の有無に関係なく、分子配向測定に利用されている。
【0007】
図1はマイクロ波空洞共振器を用いた従来の配向計の原理図を説明したものである。一端部にマイクロ波導入部2、他端部にマイクロ波検知部4を備え、その両端部間が一定の電界振動方向をもつ導波管にてなるマイクロ波共振器6となっている。共振器6には定在波の腹部の位置で共振器6の軸線を垂直方向に横断する方向にスリット8が設けられている。そのスリット8に試料10を配置し、マイクロ波導入部2からマイクロ波を導入し、マイクロ波検知部4によりマイクロ波強度を検出する。試料10を共振器6の軸線の周りに回転させ、各回転角度ごとの透過マイクロ波強度を検出して配向パターンを得る。またスリット8に試料10を配置したときの共振周波数と試料を配置していないときの共振周波数とのずれ量から各回転角度位置ごとの誘電率を得て誘電率パターンを得ることもできる。
【0008】
マイクロ波を用いて誘電率を測定する方法として、図2に示されるように、試料10を挾んで対向する一対の誘電体共振器12a,12bを備え、一方の誘電体共振器12aの側方に誘電体共振器12aを挾んで対向して配置された一対の端子14a,14bにより誘電体共振器12a,12bに試料10の面に平行な一方向をもつ電界ベクトルを発生させてその共振特性から誘電率を測定するようにしたものが提案されている(実開平3−70368号公報参照)。ここでは、端子14a,14bはループ状である。そして、端子14a,14bを複数対備え、その作動を切り換えることによって試料の誘電的異方性を測定することもできるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図1又は図2に示された測定装置では、空洞共振器又は誘電体共振器が試料10を挾んでその両側に対向して配置されているため、測定される試料10の形状はシート状のものに限定される。
そこで、本発明の第1の目的は、シート状の試料に限らず、立体的な成型品のような試料においてもその誘電的異方性を測定できるようにすることである。
【0010】
誘電的異方性を測定する際に要求される試料内平面における電界ベクトルは、より均一である方が望ましい。
図2に示された測定装置では、端子14a,14bがループ状であるが、本発明の第2の目的は、ループ状の端子よりもさらに電界ベクトルの均一性を達成できる端子形状を見つけて、誘電的異方性測定の感度を高めることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの局面は、試料に接近又は接触する平面を有する誘電体共振器と、試料が存在するときの誘電体共振器の共振周波数近傍の周波数で、かつ前記平面に平行な試料内平面において一方向成分をもつ電界ベクトルをその誘電体共振器に発生させるマイクロ波用励振装置と、その誘電体共振器による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する検出装置と、試料又は誘電体共振器を前記平面に平行な面内で回転させる回転機構と、その回転機構による回転にともなう検出装置の検出出力の変化から試料の誘電的異方性を求めるデータ処理装置とを備えている。
この局面は、試料の特定の部分の誘電的異方性を求めるのに適する。
【0012】
本発明の他の局面は、試料に接近又は接触する平面を備え、互いに接近して配置された複数の誘電体共振器と、試料が存在するときの誘電体共振器の共振周波数近傍の周波数で、かつ前記平面に平行な試料内平面において一方向成分をもつ電界ベクトルで、互いに異なる方向をもった電界ベクトルを各誘電体共振器に発生させるマイクロ波用励振装置と、それらの誘電体共振器による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する誘電体共振器ごとの検出装置と、複数の誘電体共振器からの方向の異なる電界ベクトルでの検出装置による検出出力の変化から試料の誘電的異方性を求めるデータ処理装置とを備えている。
この局面によれば、試料も誘電体共振器も回転する必要がなく、複数の誘電体共振器からの出力によって、試料の誘電的異方性を求めることができるので、オンラインで流れる試料を連続して測定するのに適する。
【0013】
本発明のさらに他の局面は、試料に接近又は接触する平面を有する誘電体共振器と、試料が存在するときの誘電体共振器の共振周波数近傍の周波数で、かつ前記平面に平行な試料内平面において一方向成分をもつ電界ベクトルをその誘電体共振器に発生させるマイクロ波用励振装置、及びその誘電体共振器による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する検出装置の組で、誘電体共振器に対する互いに異なった位置に配置された複数組と、マイクロ波用励振装置と検出装置の複数の組のうちの1組を選択して順次作動させる切換え駆動装置と、その切換え駆動装置による切換えにともなう検出装置の検出出力の変化から試料の誘電的異方性を求めるデータ処理装置とを備えている。
【0014】
この局面によれば、試料も誘電体共振器も回転する必要がなく、切換え駆動装置によりマイクロ波用励振装置と検出装置の組の作動を切り換えることによにって、試料の誘電的異方性を求めることができるので、この場合もオンラインで流れる試料を連続して測定するのに適する。
検出装置による検出出力の変化は、共振周波数の変化として測定することができ、共振周波数の変化は、周波数のシフト量自体として測定することができる。検出装置による検出出力の変化はまた、特定の周波数における検出エネルギーの変化として検出することもできる。
【0015】
マイクロ波用励振装置と検出装置の端子はループ状又はロッド状の端子とすることができるが、本発明は誘電体共振器を方形とするので、端子はループ状のものよりも棒状のロッド状のものの方が試料内平面における電界ベクトルの均一性が優れている。その際、そのロッド状端子は、誘電体共振器の試料に接近又は接触する平面に垂直な方向に配置する。
誘電体共振器の周囲は試料測定面を除いて導電性材料からなるシールド材で被われている。これにより、共振カーブのQ値を高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
検出装置により透過エネルギーを検出する場合は、励振装置と検出装置は誘電体共振器を挟んで対向して配置された一対のループ状又はロッド状の端子のそれぞれに接続される。
また、検出装置により反射エネルギーを検出する場合は、励振装置と検出装置は誘電体共振器に接近して配置された共通の1つのループ状又はロッド状の端子に接続される。
誘電体共振器は円柱状共振器又は方形共振器である。
【0018】
図3(A)に一実施形態を概略的に示す。
本発明は誘電体共振器として方形の誘電体共振器を使用するものである。以下に円柱状の誘電体共振器とループアンテナを使用して説明している箇所もあるが、本発明はそれらの円柱状誘電体共振器を方形誘電体共振器に置き換え、ループアンテナをロッドアンテナに置き換えたものである。誘電体共振器20に対し、適当なマイクロ波用ループアンテナ(又はロッドアンテナ)22a,22bを誘電体共振器20に対して適当な位置に適当な方向で配置することにより、誘電体共振器20を共振させ、かつ誘電体共振器20から外部にしみだした電界ベクトルが存在するような共振モードを作ることができる。その共振モードとしては、誘電体共振器20が方形の場合にはTMモードやTEモード、円柱形の場合にはHEMモードなどがある。電界ベクトル24の強度は誘電体共振器20から離れるにつれてほぼ指数関数的に減少していくが、誘電体共振器20から僅かな距離を離して、又は誘電体共振器20に接触させて試料25を置くことにより、電磁的結合により試料の誘電率に応じて共振周波数がシフトする。
【0019】
図3(A)は誘電体共振器20として円柱状誘電体共振器を用い、HEM11δモードにした場合の構成を概略的に示したものであるが、発振器26から出たマイクロ波はループアンテナ22aにより磁界を発生し、電磁気結合により誘電体共振器20が共振する。この場合の共振周波数は誘電体共振器20の寸法と誘電率によって決まる。誘電体共振器20の円柱の半径をa、長さをL、誘電率をεとすると、共振周波数f(GHz)は近似的に
f=34(a/L+3.45)/a/ε1/2
として求められる。
【0020】
図3(B)は図3(A)を等価回路として表わしたものである。試料を置かないときの共振周波数に対し、試料25を置いたときは試料25の誘電率に応じて容量Crが変化することにより、共振周波数がシフトする。また、試料25の誘電率に異方性があれば、試料25と電界ベクトル24の方向によっても共振周波数がシフトする。
【0021】
図4はHEM11 δモードにおける電界分布を示したものであり、(A)は誘電体共振器20の末端付近の水平面での電界分布を示したものであり、(B)はφ=0(φは水平面における基準方向からの角度)の経線面での電界分布を表わしたものである。
【0022】
図3に戻って説明すると、発振器26から出たマイクロ波はループアンテナ22aにより誘電体共振器20と磁気結合し、誘電体共振器20は共振状態となることができる。誘電体共振器20の電界ベクトルは試料25の面にほぼ平行な形で現われ、試料25のもつ双極子モーメントとの相互作用が起こる。ここで、試料25又は誘電体共振器20を試料25と誘電体共振器20との平行面内で回転させながら、検出器28に現われるマイクロ波強度をその回転角度に対応して検出することにより、その強度の角度依存性から配向状態を求めることができる。コントローラ30は発振器26から発生するマイクロ波の周波数を制御し、検出器28によるマイクロ波強度を取り込む。32はその検出されたマイクロ波強度の角度依存性から配向状態を求めるデータ処理装置としてのコンピュータである。
【0023】
さらに、配向測定の原理を説明する。誘電体共振器20において、透過マイクロ波強度と周波数との間には図5(A)に示されるような関係がある。この共振カーブをQカーブと呼ぶ。Qカーブは、試料25が置かれることによって、以下の関係により変化する。
【0024】
【数1】
【0025】
その変化を示したのが図5(B)である。試料25が誘電体共振器20と対向する平面内に異方性をもつ場合、試料25又は誘電体共振器20をその平面に平行な面内で回転させると、例えば図6(A)のように、誘電体共振器20に対する試料25の相対的な回転角度位置(S)ごとにQカーブのピーク周波数(共振周波数)が変化する。この回転の中で、例えば最も高周波側にシフトしたQカーブにおいて、そのピーク周波数での透過マイクロ波検出強度をIとし、高周波側での検出強度がI/2となる周波数をf1とする。周波数f1での各回転角度の透過マイクロ波検出強度は、図6(B)の断面として示されるものである。それを回転角度Sを横軸にして書き直すと、図7(A)に示されるようになる。さらにそれを極座標系に書き直すと、図7(B)のように楕円となり、この結果から配向角度(φ)及び配向度(a/b)を求めることができる。aはその楕円の長軸長さ、bは単軸長さである。
【0026】
【実施例】
図8は第1の実施例を表わしたものである。上部が開口した真鍮製の円筒状シールドケース35内に低誘電率の支持台38として発砲ポリエチレン成型品が入れられ、その支持台38上に円柱状の誘電体共振器20が底面を水平方向にして取りつけられている。誘電体共振器20はその上面がシールドケース35の開口縁とほぼ等しい高さに設定されており、シールドケース35の開口部に試料が置かれる。試料をその開口部で水平面内で回転させることによって、又は誘電体共振器20を水平面内で回転させることにより、試料の誘電率の配向を測定することができる。
【0027】
誘電体共振器20を挾んでその両側に一対のループアンテナ22a,22bが配置され、それらのループが垂直方向に固定されている。ループアンテナ22a,22bはセミリジッドケーブル36a,36bを介してそれぞれのコネクタ34a,34bに接続され、コネクタ34a,34bから発振器と検出器にそれぞれ接続される。
【0028】
この測定装置で、試料を置かないで共振特性を測定した例を図9に示す。横軸はマイクロ波周波数、縦軸は透過エネルギーを表わしている。(A)はマイクロ波周波数を1000MHzから6000MHzまで走査したときの透過エネルギースペクトルを表わし、(A)中に矢印で示した部分を拡大したのが(B)であり、共振している様子を表わしている。
【0029】
図10(A)は同実施例において、試料を置かなかったとき(ブランク測定時)のマイクロ波周波数5070.2MHzにおける共振ピークを表わしたものである。それに対し、図10(B)は試料として紙をシールドケース35の開口部に置いた場合の共振特性を示したものである。試料を置くことによってピーク位置が低周波数側にシフトしていることが分かる。矢印で示される位置に発信周波数を固定して測定すれば、試料を置くことによって出力が低下する。そして、試料又は誘電体共振器20を誘電体共振器20の平面に平行な面内で回転させることにより、試料に異方性があれば図5から図7で示したように配向を測定することができる。
【0030】
図11(A)は誘電体共振器20による反射エネルギーを測定するようにした実施例を表わしたものであり、(B)に示されるように誘電体共振器20の下面側にロッドアンテナ40が配置されている。ロッドアンテナ40は発振器からのマイクロ波を誘電体共振器20に供給するとともに、誘電体共振器20による反射エネルギーを検出する。
【0031】
図12は図11の実施例における反射エネルギーの測定結果を示したものであり、試料を置かなかった場合のブランク測定の例である。(A)はマイクロ波周波数を1000MHzから6000MHzまで走査したときの反射エネルギースペクトルを表わし、(A)中に矢印で示した部分を拡大したのが(B)であり、共振している様子を表わしている。反射スペクトルの場合は共振周波数の位置でエネルギーの吸収が起こり、(B)に示されるような吸収ピークが得られる。
【0032】
図13(A)は図11の実施例において、ブランク測定での4575.875MHzに極小点をもつピークを示している。それに対し、試料として1枚の紙をシールドケース35の開口部に置いた場合には、(B)に示されるようにピークの極小位置が低周波数側にシフトしている。この場合、仮に4575.875MHzの周波数で測定を行なうと、試料を置くことによって出力が低下することが分かる。そして、この場合も試料又は誘電体共振器20を誘電体共振器20の平面に平行な面内で回転させることにより、試料に誘電率の異方性があれば、図5から図7で示したように配向を測定することができる。
【0033】
図14は誘電体共振器20を回転させるようにした具体的な例を示したものである。誘電体共振器20及びシールドケース35がロータリージョイント42に取りつけられ、モータ46により回転させられるようになっている。コネクタ34a,34bはロータリージョイント42を介してジョイント44により発振器と検波器へそれぞれ接続されている。シールドケース35及び誘電体共振器20の上面に接近して試料48が配置される。
【0034】
この場合、誘電体共振器20とシールドケース35を回転させることにより、試料48の面内での各方向の透過エネルギーが測定され、その異方性から試料48の誘電的配向が求められる。
試料48は順次置かれるものであってもよく、または連続して移動するものであってもよい。試料48を連続して移動させればオンライン測定が可能となる。
【0035】
図15は異方性を求めるための他の実施例を概略的に示したものであり、誘電体共振器20も試料48も回転させるのではなく、誘電体共振器から発生する電界ベクトルの方向が異なるように設置された複数個の誘電体共振器20a,20b,20cを一平面内に配置し、それらの誘電体共振器上を試料48が移動するようにしたものである。図15では3個の誘電体共振器20a,20b,20cにより互いに120°ずつ異なる方向でのマイクロ波透過エネルギーが検出され、試料の誘電的配向性が求められる。
【0036】
図15の実施例では、誘電体共振器20も試料48も回転させないので、試料の誘電的配向性を迅速に求めることができる。誘電体共振器20a,20b,20cは図15のように試料48の進行方向(矢印の方向)に直交する方向に配置すれば互いに異なる部分を測定することになるが、互いに接近して配置することにより測定場所が異なることによる問題を抑えることができる。
また、誘電体共振器20a,20b,20cを試料48の進行方向に沿って一列に配列し、それぞれの誘電体共振器20a,20b,20cの検出のタイミングを試料48の移動速度とを同期させ、同一場所を測定するようにすることもできる。
【0037】
図11の実施例のように反射エネルギーを検出する場合も、図14のように誘電体共振器を回転させたり、図15のように複数個の誘電体共振器を電界ベクトルの方向を異ならせて配置することができる。
【0038】
誘電体共振器として試料測定面が正方形又は長方形である方形共振器を用いる場合は、マイクロ波用励振装置と検出装置の端子としてループアンテナよりも直線の棒状のロッドアンテナの方が、測定する試料内平面における電界ベクトルの方向の均一性が優れていることがわかった。このことを図16から図20により説明する。
【0039】
図16に方形共振器にロッドアンテナを適用した場合の電界分布と共振周波数を示す。(A)は試料測定面が長方形の方形共振器54を挾んで、一方の側に励振装置のロッドアンテナ56aを配置し、その反対側に検出装置のロッドアンテナ56bを配置する。方形共振器54の底面は導電性材料のシールド材58に接触して配置する。aとbは方形共振器54の試料測定面の短辺と長辺の長さ、lは高さを表す。各寸法a,b,lと方形共振器54における各共振モードでの電界ベクトル図、及び共振周波数の計算値と実測値を、図16(B)の表に示す。共振周波数の単位はGHzである。実測値のあるモードでは、共振周波数の計算値と実測値がほぼ一致しており、図示の共振モードが妥当であることを示している。
【0040】
次に、このような方形共振器を用いた場合にループアンテナとロッドアンテナの電界ベクトルの分布を比較して示す。図17(A)はループアンテナ60a,60bを用いた場合、同図(B)はロッドアンテナ56a,56bを用いた場合である。サンプル48が配置される面内で1点鎖線で示された方向を0度とする。
【0041】
図18は空洞共振器と誘電体共振器でループアンテナ又はロッドアンテナを用いた場合の電界分布を比較した結果である。方形共振器の場合は、図17に示されたように一点鎖線の方向を0度とし、電波吸収体を含浸させた細長い紙(50mm×1.5mm)を方形共振器の試料測定面上に30度ごとに角度を変えながら載せ、共振ピークレベルを測定した結果である。空洞共振器の場合は、試料が配置される隙間部分に、電波吸収体を含浸させたその細長い紙を30度ごとに角度を変えながら配置した。そのときは、マイクロ波用励振装置と検出装置の端子はロッドアンテナであるが、アンテナは垂直方向に配置されるとすると、水平方向を0度とした。
【0042】
空洞共振器の場合は、(A)に示されるように、電波吸収体を含浸させたその細長い紙を0度の方向と180度の方向に配置した場合にのみ共振ピークが得られている。このことから、空洞共振器では電界ベクトル方向の均一性が優れていることがわかる。
(B)は円形誘電体共振器とループアンテナを組み合わせた場合であり、一方向成分以外の電界ベクトルも存在することを示している。
【0043】
(C)は方形誘電体共振器とループアンテナを組み合わせた場合であり、この場合は電界ベクトルが各方向に向いており、均一性が劣っていることを示している。
(D)は方形誘電体共振器とロッドアンテナを組み合わせた場合であり、一方向成分以外の電界ベクトルも存在するが、ループアンテナを用いた(B)の場合よりも均一性のよい電界ベクトルをもっていることを示している。
【0044】
図19と図20はこのような誘電体共振器を用いて試料を測定した結果を示したものである。図19(A)のように、方形誘電体共振器54にループアンテナ60a,60bを組み合わせた測定装置で、ガラス繊維を試料48として、その方向を図19(B)と(C)のように90度異ならせて共振特性を測定したものである。その結果は、図19(D)に示されるように、周波数シフトが見られるものの、そのシフト量は約0.6MHzと小さい。
【0045】
それに対し、図20では、(A)のように方形誘電体共振器54とロッドアンテナ56a,56bを組み合わせたものであり、同様にガラス繊維を試料48として、方向を90度異ならせて測定した。その結果は図20(B)に示されるように、共振周波数シフトが大きく、1.7MHzに及んでおり、より高感度な測定ができることを示している。
【0046】
図21はシールド部材を備えた実施例を示したものであり、(A)に示すように、真鍮製の円筒容器からなるシールドケース64内に円形の誘電体共振器62が収容されており、誘電体共振器62の底面はシールドケース64と接触し、誘電体共振器62の上面とシールドケース64の開口部が同じ高さに形成されている。誘電体共振器62の側面とシールドケース64の内壁面との間には励振装置のロッドアンテナ56aと検出装置のロッドアンテナ56bが誘電体共振器62を挾んで対向する位置に配置されている。試料48は誘電体共振器62の上面に接近するように配置される。また、試料48の誘電体共振器62と反対側の面には真鍮製のシールド部材66が配置されている。
【0047】
シールド部材66を配置しない場合はこの誘電体共振器の共振周波数でのQが900であったの対し、シールドケース64の開口端から30mmの距離Lを離した位置にシールド部材66を配置した場合にはQが1700と向上した。
図21(B)はこの実施例の誘電体共振器62の電界ベクトルを示したものであり、モードはHEM11 δ +1である。電界は試料測定面で一方向成分を含んでいる。
【0048】
図22はこの実施例の誘電体共振器(シールド部材66を備えたもの)を用いて2軸性(bi axialy oriented)のPET(ポリエチレンテレフタレート)の厚さが192μmのシート状試料を測定した共鳴スペクトルを示したものである。
その共鳴スペクトル中の矢印で示したピークについて、試料を面内で回転させたときの共振周波数の変化を図23に示す。図23は、試料を置かなかったときのブランク測定時の共振周波数を基準にして、それからの周波数変化値を回転角に対して表わしたものである。半径方向の座標は、中心を6.5MHz、外周を7.0MHzとしている。この結果から、PETシートが面内に誘電率異方性を備えていることを明瞭に読み取ることができる。
【0049】
図24は誘電体共振器も試料も回転させることなく試料の誘電率異方性を測定する他の実施例を示したものである。円形誘電体共振器62の周囲に3対のロッドアンテナが配置されている。56a−1,56a−2,56a−3は励振装置のロッドアンテナ、56b−1,56b−2,56b−3は検出装置のロッドアンテナであり、ロッドアンテナ56a−1と56b−1が対をなして共振器62を挟むように配置され、56a−2と56b−2が対をなして共振器62を挟むように配置され、56a−3と56b−3が対をなして共振器62を挟むように配置されている。ロッドアンテナ56a−1により発生する電界ベクトルの方向とロッドアンテナ56a−2により発生する電界ベクトルの方向が60度をなし、ロッドアンテナ56a−2により発生する電界ベクトルの方向とロッドアンテナ56a−3により発生する電界ベクトルの方向が60度をなすように、各ロッドアンテナが配置されている。70は励振装置の発振器であり、発振器70とロッドアンテナ56a−1〜56a−3との接続は分配器65により順次切り換えられる。72は検出器であり、検出器72とロッドアンテナ56b−1〜56b−3との接続は分配器67により順次切り換えられる。分配器65と67は、切換え駆動装置68により各対のロッドアンテナを発振器70と検出器72にそれぞれ接続させるように同期して制御される。
【0050】
図24の実施例では、共振器62の試料測定面上に試料があるとき、作動するロッドアンテナ対を切換え駆動装置68により切り換えることにより、60度ずつ異なった3方向の共振スペクトルを測定することができ、試料も共振器62も回転させることなく、試料面内での誘電率異方性を測定することができる。
図24の実施例では、共振器62の試料測定面が円形であるが、発振器と検出器の端子としてロッドアンテナを用いる場合は、試料測定面は円形であるよりも多角形の方が電界ベクトルの均一性がよくなる。そのため、図24の実施例では共振器62の試料測定面の形状を正六角形とすることができる。
【0051】
図25は、A/D変換器によりデジタル信号に変換されて取り込まれたマイクロ波検出出力データを処理するデータ処理装置としてのコンピュータを概略的に示したものである。80はCPU、81は制御部、82はデータ記憶メモリ、83はCRT、液晶板などの表示装置、84はプリンタ、85はキーボードその他の入力装置である。
【0052】
制御部81において、制御プログラム格納部811は装置全体の動作を制御するプログラムの他、マイクロ波電力の供給のプログラムその他も含んでいる。試料制御プログラム格納部812は、例えば図14の実施例では試料又は誘電体共振器を回転させる動作を制御したり、図24の実施例では作動するロッドアンテナ対を切り換える動作を制御するプログラムを格納している。サンプリングプログラム格納部813は検出データのサンプリングプログラムを格納しており、サンプリングプログラムは検出データサンプリングのタイミング及びA/D変換器138によるA/D変換のタイミングを制御する。データ処理プログラム格納部814に格納されたデータ処理プログラムは、サンプリングされ、このデータ処理装置に導入された測定データ(透過又は反射マイクロ波強度検出データとこれに対応する測定マイクロ波周波数、使用番号、試料の回転角度などのデータを含む)の記憶、演算処理その他の処理を制御し、その測定データからの配向パターンの形成、配向方向、配向度の演算導出を行なう。
【0053】
出力プログラム格納部815に格納された出力プログラムは、配向パターン、配向方向、配向度などを随時選択して表示装置83又はプリンタ84に出力する動作を制御する。
【0054】
データ記憶メモリ82は、このデータ処理装置に導入された測定データを一時格納するための入力バッファメモリ領域821、これらのデータから配向方向、配向度、配向パターンその他を算出した処理データを格納する処理データ領域822、データ処理のための基礎データの格納領域823、表示又は印字するデータを随時格納したり更新する出力バッファメモリ領域824などを備えている。
【0055】
試料又は誘電体共振器の回転角度を検出するためにロータリーエンコーダ53が設けられている。52は周波数カウンターであり、例えばマイクロ波発振器に設けられる。ロータリーエンコーダ53による試料の回転角度信号及び周波数カウンター52による測定周波数信号は、A/D変換器による試料透過又は反射マイクロ波強度検出データと対応してこのデータ処理装置に導入される。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、試料に接近もしくは接触する平面を有する誘電体共振器を備え、試料が存在するときの誘電体共振器の共振周波数近傍の周波数で、かつその平面に平行な試料内平面において一方向成分をもつ電界ベクトルをその誘電体共振器に発生させながら、試料もしくは誘電体共振器をその平面内で回転させるか、電界ベクトルの方向を変化させたり、又は試料に接近もしくは接触する平面を有し互いに接近して配置された複数の誘電体共振器を備えて、試料が存在するときの誘電体共振器の共振周波数近傍の周波数で、かつその平面に平行な試料内平面において一方向成分をもつ電界ベクトルで、互いに異なる方向をもった電界ベクトルを各誘電体共振器に発生させるようにする。そして、試料もしくは誘電体共振器の回転又は電界ベクトルの変化にともなう共振エネルギーの検出値の変化、又は電界ベクトルの方向の異なる複数の誘電体共振器からの共振エネルギーの検出値から、試料の誘電的異方性を求めるようにしたので、試料の形状がシート状のものである場合に限らず、立体的な成型品のような試料においてもその誘電的異方性を測定できるようになる。
誘電体共振器を回転させるか、電界ベクトルの方向を変化させるか、又は電界ベクトルの方向の異なる複数の誘電体共振器を配置することにより、移動する試料を連続して測定できるようになり、生産現場におけるオンライン測定に適用することができるようになる。
そして、誘電体共振器として試料測定面が正方形又は長方形である方形共振器を用い、マイクロ波用励振装置と検出装置の端子として直線の棒状のロッドアンテナを用いるので、測定する試料内平面における電界ベクトルの方向の均一性が優れている。
また、試料が配置される部分を除いて誘電体共振器を導電性のシールド部材で被うようにしたので、共振スペクトルのQが上がり、S/N比のよい測定ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロ波空洞共振器を用いた従来の配向測定装置を示す概略斜視図である。
【図2】誘電体共振器を用いた従来の配向測定装置を示す断面図である。
【図3】(A)は本発明の原理を説明する一実施形態の概略斜視図、(B)はその等価回路図である。
【図4】誘電体共振器でのHEM11δモードにおける電界分布を示したものであり、(A)は誘電体共振器の末端付近の水平面での電界分布、(B)はφ=0の経線面での電界分布である。
【図5】(A)は誘電体共振器における透過マイクロ波強度と周波数との関係を示すQカーブの図であり、(B)は誘電率変化に伴なう共振周波数シフトを示す図である。
【図6】(A)は試料又は誘電体共振器を回転させたときのQカーブの変化を示す図であり、(B)は特定の周波数での断面を示す図である。
【図7】(A)は図6(B)の断面を回転角度Sを横軸にして書き直した図であり、(B)はさらにそれを極座標系に書き直した図である。
【図8】第1の実施例を表わす斜視図である。
【図9】(A)は同実施例の測定装置で試料を置かなかったときの透過エネルギースペクトルを示す図、(B)は(A)中に矢印で示した部分を拡大した図である。
【図10】同実施例における5070.2MHz付近の共振ピークを示す図であり、(A)は試料を置かなかったブランク測定時、(B)は試料として紙を置いた場合である。
【図11】(A)は誘電体共振器による反射エネルギーを測定する実施例を示す斜視図であり、(B)はそこでの誘電体共振器とロッドアンテナを示す正面図である。
【図12】(A)は図11の実施例におけるブランク測定時の反射エネルギースペクトルを示す図、(B)はその矢印で示したピークを示す図である。
【図13】図11の実施例における4575.875MHz付近のピークを示す図であり、(A)はブランク測定時、(B)は試料として紙を置いたとき場合である。
【図14】誘電体共振器を回転させるようにした実施例を示す正面断面図である。
【図15】発生する電界ベクトルの方向が異なるように設置された複数個の誘電体共振器をもつ実施例を示す概略斜視図である。
【図16】(A)は方形共振器とロッドアンテナを組み合わせた実施例を示す概略斜視図、(B)はその実施例における共振モードと共振周波数を示す図表である。
【図17】(A)は方形共振器とループアンテナを組み合わせた実施例を示す概略斜視図、(B)は方形共振器とロッドアンテナを組み合わせた実施例を示す概略斜視図である。
【図18】(A)〜(D)はそれぞれ空洞共振器と誘電体共振器でループアンテナ又はロッドアンテナを用いた場合の電界分布を示す図である。
【図19】(A)は方形共振器にループアンテナを組み合わせた測定装置を示す概略斜視図、(B),(C)は試料の方向を90度異ならせて測定する状態を示す平面図、(D)は試料の方向による共振スペクトルの変化を示す図である。
【図20】(A)は方形共振器にロッドアンテナを組み合わせた測定装置を示す概略斜視図、(B)は試料の方向による共振スペクトルの変化を示す図である。
【図21】(A)はシールド部材を備えた実施例を示す概略斜視図、(B)はこの実施例の誘電体共振器の電界ベクトルを示す概略斜視図である。
【図22】図21の実施例によりPET試料を測定した共鳴スペクトルを示す図である。
【図23】図21の実施例で試料を面内で回転させたときの共振周波数の変化を示す図である。
【図24】誘電体共振器も試料も回転させることなく試料の誘電率異方性を測定する他の実施例を示す概略構成図である。
【図25】データ処理装置としてのコンピュータを概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
20,20a,20b,20c,54,62 誘電体共振器
22a,22b,40,56a,56b,60a,60b,56a−1〜56a−3,56b−1〜56b−3 アンテナ
24 電界ベクトル
25,48 試料
26,70 発振器
28,72 検出器
30 コントローラ
32 コンピュータ
42 ロータリージョイント
48 試料
64,66 シールド部材
65,67 分配器
68 切換え駆動装置
Claims (7)
- 試料に接近又は接触する平面を備え、試料の一面側のみに配置された1個の方形誘電体共振器と、
試料測定面を除いて前記誘電体共振器の周囲を被う導電性材料からなるシールド材と、
前記平面に垂直な方向に配置された棒状のロッドアンテナを有し、試料が存在するときの前記誘電体共振器の共振周波数近傍の周波数で、かつ前記平面に平行な試料内平面において一方向成分をもつ電界ベクトルをその誘電体共振器に発生させるマイクロ波用励振装置と、
前記平面に垂直な方向に配置された棒状のロッドアンテナを有し、前記誘電体共振器による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する検出装置と、
前記試料又は前記誘電体共振器を前記平面に平行な面内で回転させる回転機構と、
前記回転機構による回転にともなう前記検出装置の検出出力の変化から試料の誘電的異方性を求めるデータ処理装置と、を備えたことを特徴とする配向測定装置。 - 試料に接近又は接触する平面を備え、互いに接近して試料の一面側のみに配置された複数の方形誘電体共振器と、
試料測定面を除いて前記誘電体共振器の周囲を被う導電性材料からなるシールド材と、
前記平面に垂直な方向に配置された棒状のロッドアンテナを有し、試料が存在するときの前記誘電体共振器の共振周波数近傍の周波数で、かつ前記平面に平行な試料内平面において一方向成分をもつ電界ベクトルで、互いに異なる方向をもった電界ベクトルを各誘電体共振器に発生させるマイクロ波用励振装置と、
前記平面に垂直な方向に配置された棒状のロッドアンテナを有し、それらの誘電体共振器による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する誘電体共振器ごとの検出装置と、
前記複数の誘電体共振器からの方向の異なる電界ベクトルでの前記検出装置による検出出力の変化から試料の誘電的異方性を求めるデータ処理装置と、を備えたことを特徴とする配向測定装置。 - 試料に接近又は接触する平面を備え、試料の一面側のみに配置された1個の方形誘電体共振器と、
試料測定面を除いて前記誘電体共振器の周囲を被う導電性材料からなるシールド材と、
前記平面に垂直な方向に配置された棒状のロッドアンテナを有し試料が存在するときの前記誘電体共振器の共振周波数近傍の周波数で、かつ前記平面に平行な試料内平面において一方向成分をもつ電界ベクトルをその誘電体共振器に発生させるマイクロ波用励振装置、及び前記平面に垂直な方向に配置された棒状のロッドアンテナを有し前記誘電体共振器による透過エネルギー又は反射エネルギーを検出する検出装置の組で、前記誘電体共振器に対する互いに異なった位置に配置された複数組と、
マイクロ波用励振装置と検出装置の前記複数の組のうちの1組を選択して順次作動させる切換え駆動装置と、
前記切換え駆動装置による切換えにともなう前記検出装置の検出出力の変化から試料の誘電的異方性を求めるデータ処理装置と、を備えたことを特徴とする配向測定装置。 - 前記検出出力の変化として共振周波数の変化を用いる請求項1から3のいずれかに記載の配向測定装置。
- 前記検出出力の変化として特定周波数における検出エネルギーの変化を用いる請求項1から3のいずれかに記載の配向測定装置。
- 前記励振装置と前記検出装置は誘電体共振器を挟んで対向して配置された端子対を備え、前記検出装置により透過エネルギーを検出する請求項1から5のいずれかに記載の配向測定装置。
- 前記励振装置と前記検出装置は誘電体共振器に接近して配置された共通の端子を備え、前記検出装置により反射エネルギーを検出する請求項1から5のいずれかに記載の配向測定装置。
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