JP3731839B2 - ポリグリコール酸射出成形物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリグリコール酸を含有する熱可塑性樹脂材料から形成された射出成形物に関し、さらに詳しくは、土中崩壊性、耐衝撃性、強靭性、耐熱性などに優れたポリグリコール酸射出成形物、及びその製造方法に関する。本発明のポリグリコール酸射出成形物は、例えば、日用雑貨、文房具、電化製品、電子レンジ用容器類、熱湯注入型インスタント食品容器、使い捨て食器類など広範な分野で使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチック廃棄物の増大が大きな社会問題になっている。従来、高分子材料の多くは、高性能と長期安定性を目的に開発され、生産されてきたので、自然環境の中では容易に分解されない。したがって、不要となった大量のプラスチック廃棄物をどのように処分し、管理するかが世界的規模で社会問題となっている。これらのプラスチック廃棄物の中には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等の各種合成樹脂から形成された射出成形物が含まれている。
【0003】
このような状況の下で、自然の中の微生物によって分解される生分解性高分子が、環境に負荷を与えない高分子材料として注目を集めている。生分解性は、例えば、土壌中での崩壊性(土中崩壊性)試験によって評価することができる。しかしながら、プラスチック射出成形物には、耐衝撃性、強靭性、耐熱性、溶融加工性、経済性などが要求されるため、これらの要求を十分に満足し、かつ、生分解性を示すプラスチック射出成形物、いまだ得られていない。
【0004】
従来の生分解性プラスチック射出成形物の中で、例えば、でん粉をベースにした射出成形物は、強靭性、耐熱性等の点で不満足であり、しかも非結晶性のため射出成形が難しいという問題がある。セルロースをベースにした射出成形物は、耐衝撃性、強靭性、耐熱性等の点で不満足であり、しかも低結晶性のために射出成形が難しいという問題がある。微生物産生ポリエステルをベースにした射出成形物は、コストが非常に高いという大きな問題がある。ポリこはく酸エステルなどの合成物型ポリエステルをベースとした射出成形物は、耐衝撃性、強靭性、耐熱性の点で不満足であることに加えて、射出成形性も不満足であり、しかも原料のこはく酸やブタンジオールが相当高価であるという問題がある。
【0005】
半合成物型ポリエステルであるポリ乳酸をベースとした射出成形物は、原料として使用する光学活性体のL−乳酸には、高純度が要求されるため、発酵というバイオプロセスにより製造しなければならず、低コスト化には限界がある。さらに、ポリ乳酸は、ガラス転移温度Tgが高いため、通常のコンポスト化条件ではコンポスト化が難しいという問題点もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐衝撃性、強靭性、耐熱性などに優れ、かつ、土中崩壊性を示すプラスチック射出成形物を安価に提供することにある。
本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、特定の物性を有するポリグリコール酸を含有する熱可塑性樹脂材料から形成された射出成形物が、土壌分解性であると共に、耐衝撃性、強靭性、耐熱性等に優れ、従来よりプラスチック廃棄物の中で問題となっているプラスチック射出成形物に充分代替し得る物性を有するものであり、しかも比較的安価に製造できることを見いだした。
【0007】
ポリグリコール酸は、例えば、グリコリド(すなわち、グリコール酸の環状2量体エステル)を、触媒(例えば、有機カルボン酸錫、ハロゲン化錫、ハロゲン化アンチモン等のカチオン触媒)の存在下に加熱して、塊状開環重合または溶液開環重合することにより得ることができる。優れた物性のポリグリコール酸を得るには、モノマーとして高純度のグリコリドを使用することが好ましい。高純度のグリコリドは、グリコール酸オリゴマーを高沸点極性有機溶媒と混合して、常圧下または減圧下に、該オリゴマーの解重合が起こる温度に加熱し、該オリゴマーが溶液相を形成している状態で解重合させて、生成したグリコリドを高沸点極性有機溶媒と共に溜出させ、溜出物からグリコリドを回収する方法により、生産性よく得ることができる。
【0008】
ポリグリコール酸から射出成形物を作製する方法としては、例えば、ポリグリコール酸単独あるいはポリグリコール酸を含有する組成物をペレット化し、該ペレットを射出成形機に供給して射出成形する方法が挙げられる。
ポリグリコール酸は、CO、H2O、及びCH2O、あるいはエチレングリコールという極めて安価な原料を用いて、工業的に量産することができる。ポリグリコール酸射出成形物は、土中崩壊性を有するため、環境に対する負荷が小さい。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記式(1)
【0010】
【化3】
で表される繰り返し単位90重量%以上とシュウ酸エチレン及びラクチドから選ばれる環状モノマーの繰り返し単位10重量%以下とを含有し、
(a)溶融粘度η*〔温度(融点Tm+20℃)、剪断速度1000/秒で測定〕が100〜5,000Pa・s、
(b)融点Tmが190℃以上、
(c)溶融エンタルピーΔHmが20J/g以上、及び
(d)無配向結晶化物の密度が1.52g/cm3以上
であるポリグリコール酸100重量部に対して、無機フィラーを0〜50重量部の割合で含有する熱可塑性樹脂材料を射出温度Tm〜255℃の温度範囲で成形してなり、アイゾット衝撃強度(ノッチなし、25℃)が20kJ/m 2 以上、曲げ強度が100MPa以上、かつ、曲げ弾性率が5GPa以上であるポリグリコール酸射出成形物が提供される。
また、本発明によれば、下記式(1)
【0011】
【化4】
で表される繰り返し単位90重量%以上とシュウ酸エチレン及びラクチドから選ばれる環状モノマーの繰り返し単位10重量%以下とを含有し、
(a)溶融粘度η*〔温度(融点Tm+20℃)、剪断速度1000/秒で測定〕が100〜5,000Pa・s、
(b)融点Tmが190℃以上、
(c)溶融エンタルピーΔHmが20J/g以上、及び
(d)無配向結晶化物の密度が1.52g/cm3以上
であるポリグリコール酸100重量部に対して、無機フィラーを0〜50重量部の割合で含有する熱可塑性樹脂材料からなるペレットを、射出成形用金型を装着した射出成形機に供給し、シリンダー温度Tm〜255℃、金型温度0℃〜Tm、射出圧1〜104MPaで射出成形し、さらに必要に応じて、結晶化温度Tc1〜Tmの温度で1分間ないし10時間アニーリングすることを特徴とする前記のポリグリコール酸射出成形物の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の射出成形物において、アイゾット衝撃強度(ノッチなし、25℃)が20kJ/m2以上であるポリグリコール酸のニートレジンの射出成形物は、特に、耐衝撃性の大きなポリオレフィン、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート等の代替物になり得るものである。
本発明の射出成形物において、曲げ強度が100MPa以上で、曲げ弾性率が5GPa以上であるポリグリコール酸のニートレジンの射出成形物は、プラスチック廃棄物の中で問題となっている高剛性の射出成形物の代替物になり得るものである。
本発明の射出成形物において、引張強度が60MPa以上で、伸度が5%以上であるポリグリコール酸のニートレジンの射出成形物は、プラスチック廃棄物の中で問題となっている高強度の射出成形物の代替物になり得るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
ポリマー構造
本発明で使用するポリグリコール酸は、下記式(1)
【0014】
【化5】
で表される繰り返し単位を含有するポリマーである。ポリマー中、式(1)で表される繰り返し単位の割合は、90重量%以上である。式(1)で表される繰り返し単位の割合が90重量%未満であると、ポリグリコール酸本来の結晶性が損なわれ、射出成形物の耐衝撃性、強靭性、耐熱性等が著しく低下するおそれがある。
式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、例えば、下記式(2)
【0015】
【化6】
(式中、n=1〜10、m=0〜10)
で表される繰り返し単位、下記式(3)
【0016】
【化7】
(式中、j=1〜10)
で表される繰り返し単位、下記式(4)
【0017】
【化8】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。k=2〜10)
で表される繰り返し単位、下記式(5)
【0018】
【化9】
で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0019】
これらの繰り返し単位(2)〜(5)を1重量%以上の割合で導入することにより、ポリグリコール酸ホモポリマーの融点Tmを下げ、ポリマーの加工温度を下げることにより、溶融加工時の熱分解を低減することができる。また、共重合によりポリグリコール酸の結晶化速度を制御し、射出成形性を改良することもできる。一方、これらの繰り返し単位(2)〜(5)が10重量%を超過すれば、ポリグリコール酸が本来有する結晶性が損なわれるおそれがある。本発明でコモノマーとして使用するシュウ酸エチレン及びラクチドは、それぞれ式(2)及び式(3)で表される繰り返し単位に含まれる。
【0020】
ポリマー物性
〈分子量−溶融粘度〉
本発明の射出成形物の原料として使用するポリグリコール酸は、高分子量ポリマーである。溶融粘度を分子量の指標とすることができる。本発明で使用するポリグリコール酸は、温度(Tm+20℃)(すなわち、通常の溶融加工温度に相当する温度)及び剪断速度1000/秒において測定した溶融粘度η* が100〜5,000Pa・sである。
ポリグリコール酸の溶融粘度η*が100Pa・s未満では、これから得られる射出成形物の機械特性が不充分となるおそれがある。一方、ポリグリコール酸の溶融粘度η*が5,000Pa・s超過では、射出成形加工時に流動性が不足して、金型のキャビティへの充填がショートするおそれがある。
【0021】
〈熱的物性〉
本発明で使用するポリグリコール酸の融点Tmは、190℃以上、好ましくは210℃以上である。本発明で使用するポリグリコール酸の溶融エンタルピーΔHmは、20J/g以上、好ましくは30J/g以上、より好ましくは40J/g以上である。
Tmが190℃未満及び/またはΔHmが20J/g未満のポリグリコール酸は、分子内の化学構造の乱れ等により結晶化度が低下し、その結果、Tm及び/またはΔHmが低くなっていると推定される。したがって、このようなポリグリコール酸を用いて形成した射出成形物は、耐衝撃性、強靭性が低く、耐熱性も不充分のものとなるおそれがある。
【0022】
〈密度〉
本発明で使用するポリグリコール酸は、無配向結晶化物の密度が1.50g/cm3以上、好ましくは1.51g/cm3以上、より好ましくは1.52g/cm3以上である。この密度が1.50g/cm3未満のポリグリコール酸は、分子内の化学構造の乱れ等により結晶化度が低下し、その結果、密度が低下していると推定される。したがって、このような低密度のポリグリコール酸を用いて形成した射出成形物は、結晶化度が低く、耐衝撃性、強靭性、耐熱性等が不充分となるおそれがある。
【0023】
射出成形物の一般特性
〈土中崩壊性〉
本発明の射出成形物は、環境負荷の少ない土中崩壊性の成形物である。すなわち、本発明のポリグリコール酸の射出成形物は、土壌中、深さ10cmに埋設した場合、通常、24カ月以内、好ましくは12カ月以内に崩壊して、原形を失ってしまう。例えば、従来のポリ乳酸の射出成形物の場合は、ガラス転移温度Tgが高過ぎるため、通常の条件でコンポスト化が難しいという問題点がある。これに対して、本発明の射出成形物は、Tgがそれほど高くないポリグリコール酸から形成されているために、通常の条件によるコンポスト化が可能である。
【0024】
耐衝撃性射出成形物
本発明のポリグリコール酸ニートレジンの射出成形物の中で、アイゾット衝撃強度(ノッチなし、25℃)が高いものは、20kJ/m2以上、好ましくは30kJ/m2以上、より好ましくは40kJ/m2以上の極めて高い耐衝撃強度を有する。このような高水準のアイゾット衝撃強度を有する射出成形物は、従来のインパクトモディファイヤー(耐衝撃性改質剤)を含まない土中崩壊性のニートレジンの射出成形物の中では類を見ないものである。
このような耐衝撃性の高いポリグリコール酸をニートレジンとして、あるいはこれにインパクトモディファイヤー等を組み合わせることによって、衝撃に対して更に強い土中崩壊性の射出成形物を得ることができる。ポリグリコール酸ニートレジンではなく、これに各種フィラーや熱可塑性樹脂をブレンドした組成物、あるいはこれにインパクトモディファイヤーを配合した組成物を用いることにより、衝撃に対して極めて強い土中崩壊性射出成形物を得ることができる。なお、射出成形物のアイゾット衝撃強度が低すぎると、輸送中や使用中に破壊するおそれが生じる。
【0025】
強靭性射出成形物
前記特定のポリグリコール酸を用いることにより、曲げ応力に対して強い射出成形物を得ることが可能である。より具体的に、本発明によれば、曲げ強度が通常100MPa以上、好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは200MPa以上の射出成形物を得ることができる。曲げ弾性率については、通常5GPa以上、好ましくは6GPa以上、さらに好ましくは7GPa以上の射出成形物を得ることができる。ニートレジンであって、このように高い曲げ強度または曲げ弾性率を有する土中崩壊性射出成形物は、従来の土中崩壊性樹脂射出成形物の中に類を見ないものである。ポリグリコール酸をニートレジンとして、あるいはこれをベースレジンとする組成物からは、従来品にはないような極めて剛くて粘りのある土中崩壊性射出成形物が提供される。
【0026】
本発明によれば、引張応力に対して強い射出成形物を得ることが可能である。より具体的に、本発明によれば、引張強度が、通常60MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは100MPa以上射出成形物を得ることができる。引張伸度についても、通常5%以上、好ましくは7%以上、より好ましくは9%以上のものを得ることができる。このように高い引張強度または引張伸度を発現する射出成形物は、従来の生分解性プラスチック射出成形物の中に類を見ない。ポリグリコール酸をニートレジンとして、あるいはこれをベースレジンとする組成物からは、従来品にはないような極めて強くて、かつ粘りのある土中崩壊性射出成形物が提供される。
【0027】
射出成形物の製造方法
〈原料ポリマー〉
本発明の射出成形物の原料となるポリグリコール酸は、下記の方法によって製造することができる。
ポリグリコール酸は、グリコール酸の二量体エステルであるグリコリドを、少量の触媒(例えば、有機カルボン酸錫、ハロゲン化錫、ハロゲン化アンチモン等のカチオン触媒)の存在下に、約120〜250℃の温度に加熱して、開環重合する方法によって得ることができる。開環重合は、塊状重合法または溶液重合法によることが好ましい。
【0028】
ポリグリコール酸共重合体を得るには、上記方法において、コモノマーとして、例えば、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチドなどの環状モノマーを、グリコリド、グリコール酸、またはグリコール酸アルキルエステルと適宜組み合わせて共重合すればよい。
【0029】
前記方法において、モノマーとして使用するグリコリドとしては、従来のグリコール酸オリゴマーの昇華解重合法によって得られるものよりも、本発明者らが開発した「溶液相解重合法」(特願平8−48000号)によって得られるものの方が、高純度であり、しかも高収率で大量に得ることができるので好ましい。モノマーとして高純度のグリコリドを用いることにより、高分子量のポリグリコール酸を容易に得ることができる。
溶液相解重合法では、(1)グリコール酸オリゴマーと230〜450℃の範囲内の沸点を有する少なくとも一種の高沸点極性有機溶媒とを含む混合物を、常圧下または減圧下に、該オリゴマーの解重合が起こる温度に加熱して、(2)該オリゴマーの融液相の残存率(容積比)が0.5以下になるまで、該オリゴマーを該溶媒に溶解させ、(3)同温度で更に加熱を継続して該オリゴマーを解重合させ、(4)生成した2量体環状エステル(すなわち、グリコリド)を高沸点極性有機溶媒と共に溜出させ、(5)溜出物からグリコリドを回収する。
【0030】
高沸点極性有機溶媒としては、例えば、ジ(2−メトキシエチル)フタレートなどのフタル酸ビス(アルコキシアルキルエステル)、ジエチレングリコールジベンゾエートなどのアルキレングリコールジベンゾエート、ベンジルブチルフタレートやジブチルフタレートなどの芳香族カルボン酸エステル、トリクレジルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル等を挙げることができ、該オリゴマーに対して、通常、0.3〜50倍量(重量比)の割合で使用する。高沸点極性有機溶媒と共に、必要に応じて、該オリゴマーの可溶化剤として、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどを併用することができる。グリコール酸オリゴマーの解重合温度は、通常、230℃以上であり、好ましくは230〜320℃である。解重合は、常圧または減圧下に行うが、0.1〜90.0kPa(1〜900mbar)の減圧下に加熱して解重合を行うことが好ましい。
【0031】
〈熱可塑性樹脂材料〉
本発明では、熱可塑性樹脂材料として、ポリグリコール酸のニートレジンを単独で使用することができるが、本発明の目的を阻害しない範囲内において、無機フィラーを配合した組成物を使用することができる。
【0032】
無機フィラーとしては、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化鉄、酸化ホウ素、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、カオリン、タルク、マイカ、フェライト、炭素、ケイ素、窒化ケイ素、二硫化モリブデン、ガラス、チタン酸カリウム等の粉末、ウイスカー、繊維等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。無機フィラーは、ポリグリコール酸100重量部に対して、通常0〜50重量部の割合で使用されるが、耐衝撃性、強靭性等を考慮すると、好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.05〜10重量部の範囲で用いることが望ましい。
【0035】
本発明では、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、揆水剤、滑剤、離型剤、カップリング剤、顔料、染料などの各種添加剤を熱可塑性樹脂材料に添加することができる。これら各種添加剤は、それぞれの使用目的に応じて有効量が使用される。
組成物は、常法により、ポリグリコール酸と、必要に応じて、無機フィラー、その他の添加剤の一種以上を混練押出機に供給し、シリンダー温度Tm〜255℃(通常、150〜255℃)で溶融混練し、ストランド状に押出し、冷却、カットしてペレット状にして製造される。溶融混練温度が255℃超過では、ポリマーの熱分解が起こり易くなり、それに伴って分子量の急激な低下、発泡等が起こるおそれがある。
【0036】
〈射出成形物の製造〉
本発明の射出成形物は、上述のポリグリコール酸のニートレジンまたは該ポリグリコール酸を含有する組成物からなるペレットを、射出成形用金型を装着した射出成形機に供給し、シリンダー温度Tm〜255℃(通常、150〜255℃)、金型温度0℃〜Tm(通常、0〜190℃)、射出圧1〜104MPa(好ましくは10〜104MPa)で射出成形し、必要に応じて、結晶化温度Tc1〜Tm(通常、70〜220℃)の温度で1分間ないし10時間、アニーリングすることにより製造することができる。シリンダー温度が255℃超過では、ポリマーの熱分解が起こり易くなり、それに伴って分子量の急激な低下、発泡等が起こるおそれがあり、また、得られる射出成形物の機械的物性が著しく劣化するおそれがある。
【0037】
用途
本発明のポリグリコール酸射出成形物は、高衝撃性、高弾性・高強度、耐熱変形性等の特徴を活かして、各種の用途に使用することができる。例えば、日用雑貨(食器、箱・ケース類、びん類、台所用品、植木用ポット等)、文房具、電化製品(各種キャビネット等)、電子レンジ用容器類、熱湯注入型インスタント食器、各種使い捨て食器類(スープ皿、カップ等)、その他各種の射出成形品に使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に、合成例、実施例、及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
物性の測定法
(1)溶融粘度η*
ポリマーの分子量の指標として、溶融粘度η*を測定した。試料として、各ポリマーの厚み約0.2mmの非晶シートを約150℃で5分間加熱して結晶化させたものを用い、D=0.5mm、L=5mmのノズル装着キャピログラフ(東洋精機(株)製)を用いて、温度(Tm+20℃)、剪断速度1000/秒で測定した。
(2)ポリマーの熱的性質
試料として、各ポリマーの厚み約0.2mmの非晶シートを用い、示差走査熱量計(DSC;Mettler社製TC−10A型)を用い、窒素ガス気流下、10℃/分の速度で昇温し、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc1)、融点(Tm)、及び溶融エンタルピー(ΔHm)を測定した。ただし、ガラス転移温度(Tg)は、昇温速度5℃/分で測定した。
(3)無配向結晶化物の密度
試料として、各ポリマーの厚み約0.2mmの非晶シートを150℃で5分間熱固定したものを用いて、JIS R−7222(n−ブタノールを用いたピクノメーター法)に準拠して測定した。
(4)アイゾット衝撃強度(25℃、ノッチなし)
JIS K−7110の方法に準拠して測定した。
(5)曲げ強度及び曲げ弾性率
JIS K−7113の方法に準拠して測定した。
(6)引張強度及び伸度
JIS K−7113の方法に準拠して測定した。
(7)土中崩壊性
各ポリマーの引張物性測定用の試験片を、畑地の土壌中の深さ約10cmのところに埋設し、半月毎に掘り出して形状を観察した。形状がくずれ始める時期を観察し、24カ月以内に崩壊を始めた場合を土中崩壊性ありと評価した。
【0039】
[合成例1]モノマーの合成
10リットルオートクレーブに、グリコール酸〔和光純薬(株)製〕5.25kgを仕込み、撹拌しながら、170℃から200℃まで約2時間かけて昇温加熱し、生成水を溜出させながら、縮合させた。次いで、20kPa(200mbar)に減圧し2時間保持して、低沸分を溜出させ、グリコール酸オリゴマーを調製した。オリゴマーの融点Tmは、205℃であった。
グリコール酸オリゴマー1.26kgを10リットルのフラスコに仕込み、溶媒としてベンジルブチルフタレート5.25kg(純正化学(株)製)及び可溶化剤としてポリプロピレングリコール(純正化学(株)製、#400)158gを加え、窒素ガス雰囲気中、5kPa(50mbar)の減圧下、270℃に加熱し、当該オリゴマーの「溶液相解重合」を行い、生成したグリコリドをベンジルブチルフタレートと共溜出させた。
得られた共溜出物に約2倍容のシクロヘキサンを加えて、グリコリドをベンジルブチルフタレートから析出させ、濾別した。これを、酢酸エチルを用いて再結晶し、減圧乾燥した。約78%の収率でグリコリドを得た。
【0040】
[ポリマー調製例1]
合成例1で得たグリコリド210gを、PFA製シリンダーに仕込み、窒素ガスを吹き込みながら約30分間室温で乾燥した。次いで、触媒としてSnCl4・6.5H2Oを0.042g添加し、窒素ガスを吹き込みながら170℃に2時間保持して重合した。重合終了後、シリンダーを室温まで冷却し、シリンダーから取り出した塊状ポリマーを約3mm以下の細粒に粉砕し、約150℃、約0.1kPaで一晩減圧乾燥し、残存モノマーを除去してポリグリコール酸〔ポリマー(P−1)〕を得た。同じ方法を繰り返して、必要量のポリマー(P−1)を調製した。
【0041】
[ポリマー調製例2]
グリコリド210gに代えて、グリコリド200gとシュウ酸エチレン(1,4−ジオキサン・2,3−ジオン)10gとの混合物を用いたこと以外は、ポリマー調製例1と同様にして重合と後処理を行い、グリコール酸−シュウ酸エチレン共重合体〔ポリマー(P−2)〕を得た。同じ方法を繰り返して、必要量のポリマー(P−2)を調製した。
【0042】
[ポリマー調製例3]
グリコリド210gに代えて、グリコリド200gとL−(−)ラクチド10gとの混合物を用いたこと以外は、ポリマー調製例1と同様にして重合と後処理を行い、グリコール酸−ラクチド共重合体〔ポリマー(P−3)〕を得た。同じ方法を繰り返して、必要量のポリマー(P−3)を調製した。
【0043】
[ポリマー調製例4]
L−(−)ラクチド(東京化成(株)製)をエタノールで再結晶して精製した。精製したL−(−)ラクチド210gをPFA製シリンダーに仕込み、窒素ガスを吹き込みながら約30分間室温で乾燥した。次いで、触媒としてオクタン酸錫を0.053g添加し、窒素ガスを吹き込みながら130℃10時間保持して重合した。重合終了後、シリンダーを室温まで冷却し、シリンダーから取り出した塊状ポリマーを約3mm以下の細粒に粉砕し、約100℃、約0.1kPaで一晩減圧乾燥し、残存モノマーを除去してポリラクチド〔ポリマー(CP−1)〕を得た。同じ方法を繰り返して、必要量のポリマー(CP−1)を調製した。
【0044】
[ポリマー調製例5]
触媒のSnCl4・6.5H2Oを添加しなかったこと以外は、ポリマー調製例1と同様にして重合と後処理を行いポリグリコール酸〔ポリマー(CP−2)〕を得た。同じ方法を繰り返して、必要量のポリマー(CP−2)を調製した。
ポリマー調製例1〜5により得られた各ポリマーの物性を表1に示す。
【0045】
【表1】
(*1)GA=グリコリド、EX=シュウ酸エチレン、LA=L−ラクチド。
【0046】
[実施例1]
ポリマー(P−1)を3mmφのノズルを装着した小型二軸混練押出機に窒素ガス流下で供給し、溶融温度約230〜235℃でストランド状に押出し、空冷してカットし、ペレット(No.1)を得た。
このペレット(No.1)を射出成形機に供給し、シリンダー温度230℃、金型温度100℃、射出圧49MPaの射出条件で、物性測定用試験片を成形した。さらに、成形物を150℃で10分間アニーリングして、射出成形試験片(M1−1)を得た。
【0047】
[実施例2]
ポリマー(P−2)100重量部に炭素繊維〔径20μm、0.7mm長、呉羽化学工業(株)製M−107T〕5.0重量部及び無水硼酸0.1重量部を添加したものを用い、シリンダー温度を約225〜230℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、ペレット(No.2)を調製した。このペレット(No.2)を用いて、シリンダー温度を約225℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、射出成形片(M2−1)を得た。
【0048】
[実施例3]
ポリマー(P−3)100重量部にシリカ粉末0.1重量部を添加したものを用い、シリンダー温度を約225〜230℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット(No.3)を調製した。このペレット(No.3)を用いて、シリンダー温度を約225℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、射出成形片(M3−1)を得た。
【0049】
[比較例1]
ポリマー調製例4で得たポリマー(CP−1)を用いて、シリンダー温度を約185〜190℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、ペレット(No.C1)を調製した。該ペレット(No.C1)を用いて、シリンダー温度を約185℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、射出成形片(MC1−1)を得た。
【0050】
[比較例2]
ポリマー調製例5で得たポリマー(CP−2)を用いて、実施例1と同様にしてペレット(No.C2)を調製した。このペレット(No.C2)を用いて実施例1と同様にして射出成形試験片(MC2−1)を得た。
【0051】
[比較例3]
射出成形機のシリンダー温度を260℃に設定した点を除くほかは、実施例1と同様にして、射出成形を試みたが、射出中にポリマーの分解が激しくなり、正常な射出成形物を得ることができなかったので中止した。
これらの実施例及び比較例により得られた各射出成形試験片を用いて物性を測定し、その結果を表2に一括して示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、土壌分解性であると共に、耐衝撃性、強靭性、耐熱性等に優れ、従来よりプラスチック廃棄物の中で問題となっているプラスチック射出成形物に充分代替し得る物性を有するポリグリコール酸射出成形物を比較的安価に提供することができる。本発明の射出成形物は、これらの優れた特性を活かして、例えば、日用雑貨、文房具、電化製品、電子レンジ用容器類、熱湯注入型インスタント食品容器、使い捨て食器類など広範な分野で使用することができる。
Claims (5)
- 下記式(1)
で表される繰り返し単位90重量%以上とシュウ酸エチレン及びラクチドから選ばれる環状モノマーの繰り返し単位10重量%以下とを含有し、
(a)溶融粘度η*〔温度(融点Tm+20℃)、剪断速度1000/秒で測定〕が100〜5,000Pa・s、
(b)融点Tmが190℃以上、
(c)溶融エンタルピーΔHmが20J/g以上、及び
(d)無配向結晶化物の密度が1.52g/cm3以上
であるポリグリコール酸100重量部に対して、無機フィラーを0〜50重量部の割合で含有する熱可塑性樹脂材料を射出温度Tm〜255℃の温度範囲で成形してなり、アイゾット衝撃強度(ノッチなし、25℃)が20kJ/m 2 以上、曲げ強度が100MPa以上、かつ、曲げ弾性率が5GPa以上であるポリグリコール酸射出成形物。 - 土中崩壊性である請求項1記載の射出成形物。
- 引張強度が60MPa以上で、引張伸度が5%以上である請求項1または2記載の射出成形物。
- 下記式(1)
で表される繰り返し単位90重量%以上とシュウ酸エチレン及びラクチドから選ばれる環状モノマーの繰り返し単位10重量%以下とを含有し、
(a)溶融粘度η*〔温度(融点Tm+20℃)、剪断速度1000/秒で測定〕が100〜5,000Pa・s、
(b)融点Tmが190℃以上、
(c)溶融エンタルピーΔHmが20J/g以上、及び
(d)無配向結晶化物の密度が1.52g/cm3以上
であるポリグリコール酸100重量部に対して、無機フィラーを0〜50重量部の割合で含有する熱可塑性樹脂材料からなるペレットを、射出成形用金型を装着した射出成形機に供給し、シリンダー温度Tm〜255℃、金型温度0℃〜Tm、射出圧1〜104MPaで射出成形し、さらに必要に応じて、結晶化温度Tc1〜Tmの温度で1分間ないし10時間アニーリングすることを特徴とする請求項1記載のポリグリコール酸射出成形物の製造方法。 - 熱可塑性材料からなるペレットが、熱可塑性樹脂材料を一軸または二軸押出機に供給して、Tm〜255℃の温度範囲で溶融混練し、ストランド状に押し出し、該ストランドを切断することにより得られたものである請求項4記載の製造方法。
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