JP3733596B2 - 内燃機関の弁動作タイミング調整装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関における吸気弁,排気弁の動作時期を変えるための弁動作タイミング調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
弁動作タイミング調整装置は、吸気弁,排気弁の動作時期を早くしたり遅くしたりする進角制御のために用いられている。係る装置は、例えば特開平1−134010号公報に示されている。この装置はクランク軸とカム軸との間に位相調整部材を嵌合させて、この位相調整部材を油圧で摺動させることにより両軸間の回転位相を変化させ、カム軸上のロータで駆動される吸気弁,排気弁の動作時期を変化させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記装置は、位相調整部材を摺動させるために2つの油圧系を必要とするので構造が複雑であり、また電磁弁の単なる開閉制御によりクランク軸,カム軸間の位相角を変化させるだけなので微小角度の進角制御が難しいという問題があった。
【0004】
そこで本出願人は、上記問題を解決するために、先行例として係る装置の油圧系を1つにして構造を簡略化し、またその電磁弁の開度を連続的に制御すると共に、電磁弁の開度制御にフィードバック学習制御を採用することにより、微小角度の進角制御を高い精度で実現できる弁動作タイミング調整装置を提案した。
しかし当該先行例においては、その学習制御の過程で学習値を生成するのに学習操作を繰り返し行う必要があったので、学習値を算出するのに時間がかかるという改良点があった。
そこで本発明は、上記先行例の改良点を解消するためになされたものであり、弁動作タイミング調整制御においてフィードバック学習制御を行う際、その学習値を短時間で算出することができる弁動作タイミング調整装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、制御対象が積分要素を含むときの閉ループ制御系の性質に着目し、定常状態のコントローラ出力を学習することにより上記目的を達成するものであり、その手段として図1に示すような形態を採用する。
本発明によれば、内燃機関内のクランク軸からカム軸に至る回転伝達系内に設けられ、両軸間の回転位相差を変えるための位相調整機構1と、位相調整機構を駆動するための駆動手段2と、内燃機関各部に設けられ、機関の運転状態を表す複数の状態量を検知する各種センサ3と、センサによって検出された運転状態量に基づいて両軸間の実位相差角を算出する回転位相差検出手段4と、センサによって検出された運転状態量に基づいて回転位相差の目標値を決定する目標値決定手段5と、実位相差角を回転位相差の目標値に一致させるための操作値を生成して駆動手段に出力する制御手段6とを具備する弁動作タイミング調整装置において、
上記制御手段が、積分器を含まないコントローラ7と、上記目標値が所定時間一定値にあるときに当該コントローラから出力される操作値を学習値として記憶する学習手段8とを備え、学習手段に記憶された学習値を用いて、上記操作値を生成し、その操作値により、積分要素を含んでいる制御対象を制御することを特徴とする弁動作タイミング制御装置が提供される。
【0006】
【作用】
ここでまず図2を用いて上記閉ループ制御系の性質を説明する。
図2は、電磁弁の開度を調節して回転位相角、すなわちカム軸進角値をフィードバック制御するための制御系ブロック線図の例を示している。
図2(a)の106は、例えば積分動作を含まないPD動作コントローラ、107は制御対象として例えば電磁弁の製造公差,経時変化等により特性が変動するような油圧装置を示している。図2(a)における電磁弁の静特性は、以下の説明を簡単に行えるようにu1 =0近傍の特性がリニアなものを用いている。またrは目標進角値、uはコントローラから出力される操作値、u1 は上記静特性により決定される操作値、yは制御による現在のカム軸進角値である。ここで制御対象107は積分要素を含み、電磁弁における操作値(以下、操作量とも呼ぶ)uとカム軸進角速度との間の静特性は、製造公差,経時変化等により変動するものとする。よって図2(a)中のdの値(u1 =0となるuの値)は変動するが、その変動速度は遅く、その値は未知であるとする。
【0007】
上記制御対象の静特性を傾きKで近似すると、この制御系は図2(b)のように表わすことができ、以下のような関係式が得られる。このとき、上記dは制御対象の入力部に加えられる外乱と見なすことができる。
Y(s) = [ K/s ]・G(s)・[ U(s) + D(s) ] (1)
U(s) = Gc(s)・E(s) (2)
E(s) = R(s) - Y(s) (3)
そして式(3)における目標値rを一定とすると、上記各式より式(4)が導かれる。
E(s) = [-K・G(s)] ・D(s) / [ s + K・ Gc(s)・G(s)] (4)
ここで外乱dを大きさd0 のステップ入力とすると「 D(s) = d0/s」で表わされ、これを式(4)に代入してラプラス変換の最終値の定理を適用すると、式(5)が導かれる。
E(∞) = -d0 / Gc(0) (5)
【0008】
例えばコントローラ106が「比例+微分動作」であれば、その伝達関数は式(6)で与えられる。コントローラのゲインは Gc(0)=Kcとなり上記式(5)は式(7)のようになる。
Gc(s) = Kc・( 1 + TD s ) (6)
e(∞) = -d0 / Kc (7)
従って目標値rが一定であるとすると、偏差eは一定値に収束することになる。ここで進角値yの定常時には「 u1 = 0 」であることが成立しているので、このときのコントローラの操作値は「 u = d0 」となる。つまりコントローラの出力が外乱dの大きさを表していることになり、この出力値を学習して以後の制御に用いることができる。
【0009】
そこで上記図1の形態によれば、制御手段6のコントローラ7は積分器を含んでおらず、また制御対象である油圧アクチュエータは積分要素を含んでいる。したがって上記閉ループ制御系の性質で説明したように、アクチュエータに外乱要素dが存在する場合、目標値rが所定時間一定値にあり且つ実位相差角yが一定値に収束しているときにコントローラから出力された操作値uを以て外乱要素dを補償することができる。
すなわち弁動作タイミング調整制御中、回転位相角の目標値が所定時間一定にあり且つ実位相差角が一定値に収束したと推測された時点において、コントローラから出力される操作値が学習手段8によって記憶されて、制御手段6内で制御値を生成する際に反映されるので、制御手段6で生成される制御値は外乱要素dが補償されたものとなる。
そして上記操作値は、目標値が上記所定時間継続される毎に更新されて学習され得るので、学習操作が容易であり、且つ学習操作が短時間に行われ得る。
【0010】
【実施例】
以下、本弁動作タイミング調整装置の一実施例を図面とともに説明する。
図3は本装置をDOHCエンジンに適用した場合の構成図である。
図3において、10はエンジン本体、20はエンジン10内に設けた位相調整機構(斜線部分)、50は位相調整機構20を駆動するための油圧装置、70はエンジン10等に設けた各種センサの信号からエンジン運転状態を把握し、油圧装置50に制御信号を出力する制御部を示している。
【0011】
エンジン10のクランクシャフト11,排気弁用スプロケット12及び吸気弁用スプロケット13にはタイミングチェーン14が架けられており、クランクシャフト11の回転が各カムシャフト15,16に伝達されている。
本実施例は、このスプロケット13−カムシャフト16間に調整機構20を設けてスプロケット13をカムシャフト回転軸方向に摺動させ、スプロケット13−カムシャフト16間の回転位相を変化させることにより、吸気弁の進角制御を行う場合を示している。勿論、上記調整機構20を排気弁側、あるいはこれら両方に設けて同様な制御を行うことも可能である。
【0012】
クランクシャフト11近傍にはクランク位置検出センサ17、カムシャフト16近傍にはカムシャフト位置検出センサ18が設けられており、これらは例えば電磁ピックアップ型のセンサが用いられている。各センサ17,18は、それぞれ各シャフト11,16の回転に従って制御部70にパルス状の検出信号を出力する。位置検出センサ17は、クランクシャフト1回転あたりN個の信号を発生し、位置検出センサ18は、カムシャフト1回転あたり2N個の信号を発生する。制御部70は、これら検出信号を基にクランクシャフト11−カムシャフト16間の回転位相θを計測する。尚、上記Nは、回転位相角θの最大値をθMAX としたとき、「N<360/θMAX 」となるように設定される。
【0013】
制御部70は、例えば空燃費制御及びアイドル回転制御等を行う電子制御装置(通称「ECU」)と組合わされており、CPU,RAM,ROM,入出力回路及び電流制御回路を備えて構成されている。制御部70は上記検出信号の他に、エンジンの冷却水温信号,スロットル開度信号等を取り込み、後に詳細する制御演算により制御値を算出して油圧装置50に出力する。
【0014】
次に、図4は位相調整機構20,スプロケット13,及びカムシャフト16との間の結合状態を断面図で示したものである。
調整機構20は、エンジン10のシリンダヘッド21に固定されたハウジング22内に構成されている。
図面右側から延びたカムシャフト16の端部には、略円筒状のカムシャフトスリーブ23がピン24及びボルト25によって固定されている。スリーブ23がカムシャフト16を支持している部分にはスプロケット13が嵌合されており、スプロケット13はその回転軸方向の動きが阻止されているが、回転方向には摺動できるようされている。
一方、スプロケット13には略円筒状のスプロケットスリーブ26がピン27及びボルト28によって固定されており、スリーブ26の他端にはエンドプレート29が固定されている。このようにスリーブ23とカムシャフト16,及びスリーブ26とスプロケット13は各々一体となり、ハウジング22にノックピン30で固定されたリングプレート31内で回動可能とされている。
【0015】
また、カムシャフトスリーブ23外周側の一部には外歯ヘリカルスプライン32aが形成されており、一方のスプロケットスリーブ26内周側の一部には内歯ヘリカルスプライン33aが形成されている。各スリーブ23,26間にはシリンダ34が嵌合されており、上記各スリーブ23,26のヘリカルスプライン32a,33aは、シリンダ34の内周側に形成された内歯ヘリカルスプライン32b、同じくその外周側に形成された外歯ヘリカルスプライン33bと各々噛合している。これによりスリーブ23,26及びシリンダ34は一体となって回転してスプロケット13の回転がカムシャフト16に伝達される。
そしてこれらはヘリカルスプライン噛合していることにより、シリンダ34が回転軸方向に摺動したときには上記噛合部にスラストが発生され、カムシャフト16が回転方向に摺動され得るようになっている。つまりスプロケット13−カムシャフト16間の回転位相が変化され得るようにされている。
【0016】
本実施例ではシリンダ34を摺動させるために油圧装置50を用いており、そのために調整機構20内部には2つの油圧室35,36が形成されている。
図4において左側が進角動作用の油圧室35、右側が遅角動作用の油圧室36であり、シリンダ34は各油圧室に供給される作動油量に応じて軸方向に摺動され得る。尚、各油圧室35,36を形成する領域各部には適宜オイルシールが施されている。
【0017】
油圧装置50は、作動油を蓄えているオイルパン51(図3参照),エンジン動力で駆動される油圧ポンプ52,油圧ポンプ52から圧送される作動油を各油圧室に分配するスプール弁53,及びこれらの各間を連通する油圧路とを備えている。図4において37は油圧ポンプ52−スプール弁53間の油圧路、38はスプール弁53−オイルパン間の油圧路、39はスプール弁53−油圧室35間の油圧路、40はスプール弁53−油圧室36間の油圧路を示している。
尚、油圧路40の経路は、リングプレート31をハウジング22に固定するボルト41内に形成されたT字型の連通路40aから、ボルト41とカムシャフトスリーブ23とで囲まれた領域40bを経由し、カムシャフトスリーブ23内に形成された油圧路40cを通して油圧室36に至っている。
【0018】
次に、図5を用いてスプール弁53の動作について説明する。
図5において54はシリンダ、55はシリンダ54内を摺動するスプール、56は上記制御部70からの制御信号に従ってスプール55を摺動させるリニアソレノイド、57はリニアソレノイド56による駆動方向と反対にスプール55を付勢するスプリングである。
シリンダ54には、油圧ポンプ52と連通された作動油供給ポート58,オイルパンと連通された作動油排出ポート59,油圧室35と連通された油圧ポート60,及び油圧室36と連通された油圧ポート61が形成されている。
【0019】
上記各油圧室35,36の作動油量は、スプール55が摺動して各油圧ポートの開度が連続的に変えられることにより増減され、その開度はリニアソレノイド56に供給される電流値で決定される。そのために上記制御部70は、制御信号をデューティー値で生成して電流制御回路に出力し、電流制御回路からリニアソレノイド56に上記デューティー値に対応する電流を供給している。
【0020】
以下、図5にスプール弁53の代表的な状態例を示す。
図5(a)は、制御部70における制御信号のデューティー値が約100%のときの例であり、スプール55がリニアソレノイド56によりシリンダ右端に駆動され、供給ポート58−油圧ポート60間、及び油圧ポート61−排出ポート59間が連通した状態を示している。このとき上記油圧室35には油圧路39を通して作動油が供給される一方、油圧室36からは作動油が排出される。これにより図4のシリンダ34が図面右方向に動き、スプロケット13に対するカムシャフト16の位相が進んで進角制御となる。
【0021】
図5(b)は、同デューティー値が約50%のときの例であり、相対するリニアソレノイド55とスプリング57との力が釣り合い、スプール55が両方の油圧ポート60,61を閉鎖する位置に維持され、油圧室35,36の作動油の供給及び排出が行われていない状態を示している。このとき油圧室35,36から作動油の漏れがない場合には上記シリンダ34は現在位置に保持され、スプロケット13,カムシャフト16間の位相は現状に維持される。
【0022】
図5(c)は、デューティー値が約0%のときの例であり、スプール55がスプリング57によりシリンダ左端に付勢され、供給ポート58−油圧ポート61間、及び油圧ポート60−排出ポート59間とが連通した状態を示している。このとき油圧室36には作動油が供給される一方、油圧室35からは作動油が排出されるのでシリンダ34は図面左方向に動き、スプロケット13に対するカムシャフト16の位相が遅れて遅角制御となる。
【0023】
次に図6を用いて制御部70の制御動作について説明する。
図6(a)は制御部70で実行される制御系を表している。
コントローラ72はPD動作のコントローラで構成されており、エンジンの運転状態に基づいて決定された目標カム軸進角値rと、現在のカム軸進角値yと、RAMを備えて構成された学習回路73からの学習値d’とが入力される。コントローラ72は、後述するフローチャートに基づいて操作量uをデューティー値で決定し、油圧装置及び位相調整機構からなる制御対象74に出力する。操作量uはパルス幅変調信号で生成され、上記電流制御回路を経由してリニアソレノイドに供給される。これにより上記油圧室の作動油が調節され、作動油量に応じてカムシャフトがその回転方向に変位される。このときのカム軸進角値yが制御対象74から検出される。
このように制御対象74は油圧機構を備えているので積分要素を含んでおり、更に実験により「むだ時間」を含んでいることが判明した。よって制御対象74の動特性は「積分+むだ時間」で表わすことができ、操作量uとカム軸進角速度間の静特性は図6(b)のように表され得る。
【0024】
図6(b)の静特性は不感帯75をもち、その右肩部分を保持デューティー値da、一方の左肩部分を遅角デューティー値drと呼ぶ。前者はカム軸進角速度が「0」となるときのデューティー値であり、言い換えると現状のカム軸進角値を維持するための値である。また後者は上記シリンダ34が摺動したとき実際に遅角動作を開始させるときの値である。上記各デューティー値da,drは、いずれも実験等により予め設定され、後述する操作値uの決定の際に用いられるが、例えばスプール弁の製造公差又は経時変化,あるいは油圧値又は油圧温度等によりその値が変動し得るものである。尚、上記デューティー値daと,drとの間のデューティー値は、油圧室35,36における作動油の漏れ,またはカムシヤフト上のカムプーリが吸気弁を駆動するときの摩擦力等に起因してカム軸進角速度が完全に「0」となるものではなく、長い時間で見ると、カム軸進角値を遅方向に少しずつ推移させる。
【0025】
このように上記デューティー値da,drは、上記スプール弁の製造公差又は経時変化等の外乱要素により変動し得るので、係る弁動作タイミング調整制御においてはda,drを補償しながら制御を行う必要がある。
そこで本実施例では保持デューティー値daを学習しながら補償して弁動作タイミング調整制御を行う場合を説明する。
【0026】
図7はその学習制御フローチャートを示している。
まずステップ100からステップ120では、上述の各種のセンサからエンジン内の各状態信号を取込み、エンジン運転状態及び現在のカム軸進角値 y(k) を把握して(ステップ110)、当該運転状態に基づいて目標進角値 r(k) を決定する。そしてステップ130では目標進角値 r(k) 及びカム軸進角値 y(k) から偏差 e(k) を算出する。更にステップ140では、上記目標進角値 r(k) と過去の目標進角値 ra とを比較して、その差が所定範囲Δr内、例えば±1度以内であれば、今回の目標進角値 r(k) と以前の目標進角値 ra との間には変化がなく一定であると判別する。
【0027】
ステップ140にて目標値 r(k) に変化があると判別された場合には、ステップ150において当該目標進角値 r(k) が目標進角値 ra に設定される。そしてステップ160において現在の偏差 e(k) の量が判別され、「 e(k) ≧0」の場合には現在のカム軸進角値を進角するために、式(8)に従って操作量 u(k) を決定し(ステップ170)、一方「 e(k) <0」の場合には現在のカム軸進角値を遅角するために、式(9)に従って操作量 u(k) を決定する(ステップ180)。
u(k) = K P ・ e(k) + KD ・[ e(k) - e(k-1) ] + da (8)
u(k) = K P ・ e(k) + KD ・[ e(k) - e(k-1) ] + dr (9)
ここでKP ,KD はフィードバックゲインである。本例では両式に同じゲイン値KP ,KD を用いているが、弁動作タイミング調整に要する負荷に応じて各々別個の値で設定されても構わない。
【0028】
このように目標値 r(k) に変化があるときには保持デューティー値daの学習は行わず、上記各ステップにて偏差 e(k) の量に応じた操作値 u(k) が決定される。すなわち進角側に制御する場合には、進角させるためのデューティー値に保持デューティー値daが重畳されて操作値 u(k) が決定され、一方、遅角させる場合には、遅角させるためのデューティー値に遅角デューティー値drが重畳されて操作値 u(k) が決定される。そして決定された操作値 u(k) は制御信号として上記電流制御回路を経由してリニアソレノイドに出力される。
【0029】
一方、ステップ140において目標値 r(k) に変化がないと判別されたきには、以下のステップに従って保持デューティー値daの学習を実行する。
本装置は、制御対象に外乱要素が存在すると一定量の定常偏差が発生するという閉ループ制御系の性質を保持デューティー値daの学習に適応させており、弁動作タイミング調整制御の際に目標進角値 r(k) または偏差 e(k) の値を監視して、その値が所定時間一定であるとき、そのときのコントローラ出力 u(k) を新しい保持デューティー値daとして学習する。
【0030】
上記ステップ140にて目標値 r(k) が所定範囲Δr内にあると判別したとき、ステップ190にて目標値 r(k) が所定範囲Δr内にある継続時間Mを計測し、ステップ200で当該継続時間Mを所定時間t1 と比較する。そして継続時間Mが所定時間t1 に到達している場合にのみ学習操作を開始する。一方、継続時間Mが所定時間t1 に達していない場合には学習操作を行わずに上記一連の操作を実行する
【0031】
次にステップ210にて、上記カム軸進角値を進角させる際に用いた計算式(8)に従って操作値 u(k) を算出する。つまり目標進角値 r(k) が一定で且つその値 r(k) が所定時間t1 以上継続しているとき、偏差 e(k) の符号に関係なく、現在の保持デューティー値daを基に操作量 u(k) を算出し、これを制御信号として制御を開始する。
続いてステップ220では、ステップ210に従って弁動作タイミング制御を行った時間t2 を判別する。すなわち目標進角値 r(k) が継続的に一定であるなかで、現在の保持デューティー値daを基に生成した制御信号で弁動作タイミング制御を開始したとき、上記目標進角値 r(k) が一定であると判別された時からの継続時間が所定時間t2 となる時点を検出する。
そしてステップ220にて所定時間t2 を検出したとき、ステップ230ではそのときの操作値 u(k) を新しい保持デューティー値daとして更新した後、ステップ240にてカウンタMをリセットする。
更新された保持デューティー値daは、以後上記ステップ170及び210に反映される。
【0032】
このように制御部70では、目標進角値 r(k) が所定時間一定値にあるとき、偏差 e(k) が一定値に収束したと推定される時点t2 に現在の保持デューティー値daを当該操作値 u(k) に更新して保持デューティー値daの学習を行う。
【0033】
本弁動作タイミング調整装置を用いてカム軸進角値を目標値にする実験を行った例を図8乃至図11に示す。
各図はいずれも保持デューティー値daがその真値から外れた状態を模擬的に形成させた例であり、図8,図9は真値より下に外れた場合、図10,図11は真値より上に外れた場合である。そして図8,図10は保持デューティー値daを学習せずに制御した場合、図9,図11は上記保持デューティー値daを学習しながら制御する場合を示している。尚、各図において(a)は係る制御によるカム軸進角値の推移を示しており、(b)は係る制御におけるデューティー値の推移を示している。
【0034】
図8及び図9において、スプール弁の実際の保持デューティー値daは約51%であるが、実験に際し当初模擬的に約48%に設定してある。
図8(a)において学習操作を行わずに制御すると、カム軸進角値つまりカム軸進角位置 y(k) は時間とともに目標値 r(k) に近づくが定常偏差e1 を残して一定値に収束している。一方、図9(a)に示すように学習操作を行いながら制御した場合では、当初は学習操作を行わないときと同様、カム軸進角位置 y(k) は定常偏差e1 を残して一定値に収束されるが、目標値 r(k) が所定時間t1 例えば600ms継続した時点で学習操作が開始され、その後、例えば目標値 r(k) が一定になってから1200ms継続したt2 において進角デューティー値daが更新されることにより、カム軸進角位置 y(k) は速やかに目標値 r(k) に到達している。
【0035】
また、図10及び図11においては、スプール弁の実際の保持デューティー値da約51%に対して当初模擬的に約54%に外してある。
図10(a)ではステップ状の目標値 r(k) 入力に対してオーバーシュートが発生しており、上記図8(a)のように保持デューティー値daが下に外れた場合と比べて収束するまでの時間が長い。
一方、図11(a)のように学習操作を実行する場合、当初は図10(a)と同様にオーバーシュートが発生するが、上記図9と同様にt1 の時点で学習操作が開始され、その後、上記進角側の操作値算出式(8)を以て制御される。このとき当該保持デューティー値daは当初約3%外されているため、カム軸進角値 y(k) は当初に外されたデューティー値3%分だけ定常偏差e2 を発生して収束しているが、図11(b)のデューティー値は定常偏差e2 に相応して減少している。したがって上記図9と同様にt2 の時点で進角デューティー値daが更新されると、カム軸進角位置 y(k) は速やかに目標値 r(k) に収束される。
【0036】
尚、上記弁動作タイミング制御は、積分動作を含むコントローラ(例えばPIDコントローラ)を用いて行うことも可能であるが、積分要素を含む制御対象に積分動作を備えたコントローラを組合わせて制御系を構成すると、例えば目標値がステップ状に変化する場合、保持デューティー値が正しく設定されていてもカム軸進角値にオーバーシュートが発生し、結果的に目標値への収束が遅れる等、当該進角制御には好ましい結果とならない。
本弁動作タイミング調整装置は、以上のように積分動作を含まないコントローラを用いることにより、当該コントローラの出力から保持デューティー値を速やかに得ることができ、これによりスプール弁の動作変動による外乱を速やかに補償し、以後の制御において定常偏差をなくすことができるものである。
【0037】
このように本発明の具体例を上記に示したが、係る原理に基づいて保持デューティー値等の基準値を学習するという願発明の精神は種々の応用が可能であり、例えば上記制御部を最適レギュレータで構成した場合、最適値のズレを補償するためにも応用が可能である。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば油圧装置等の積分要素を含む制御対象をフィードバック学習制御して吸気弁,排気弁の動作タイミングを調節する際、閉ループ系の性質を適応させることにより、スプール弁等の変動による影響を迅速に解決し、弁動作タイミング調整における制御性を向上させることができる。これによりエンジンの運転状態に応じて適切な吸気,排気が行われ、エンジンの運転性能が向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る弁動作タイミング調整装置の一形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に用いる閉ループ系の性質を説明するためのブロック線図であり、(a)は制御系のブロック線図、(b)は(a)を近似したブロック線図である。
【図3】本発明に係る弁動作タイミング調整装置の一実施例を示す構成図である。
【図4】図3の調整装置の位相調整機構を示す断面図である。
【図5】図3の調整装置におけるスプール弁53の各状態例を示す断面図であり、(a)はデューティー値100%、(b)は同50%、(c)は同0%の状態である。
【図6】図3の調整装置の制御系を表す図であり、(a)はブロック線図、(b)はデューティー値とカム軸進角速度の静特性である。
【図7】図3の調整装置の制御部で実行される学習制御フローチャートである。
【図8】図3の調整装置において学習制御を行わずに弁動作タイミングを調整したときの一タイムチャートであり、(a)はカム軸進角位置と時間との関係、(b)はデューティー値と時間との関係を示す。
【図9】図3の調整装置において学習制御を行いながら弁動作タイミングを調整したときの一タイムチャートであり、(a)はカム軸進角位置と時間との関係、(b)はデューティー値と時間との関係を示す。
【図10】図3の調整装置において学習制御を行わずに弁動作タイミングを調整したときのもう1つのタイムチャートであり、(a)はカム軸進角位置と時間との関係、(b)はデューティー値と時間との関係を示す。
【図11】図3の調整装置において学習制御を行いながら弁動作タイミングを調整したときのもう1つのタイムチャートであり、(a)はカム軸進角位置と時間との関係、(b)はデューティー値と時間との関係を示す。
【符号の説明】
10…エンジン
11…クランクシャフト
13…吸気弁用スプロケット
16…吸気弁用カムシャフト
17…クランク位置検出センサ
18…カムシャフト位置検出センサ
20…位相調整機構
23…カムシャフトスリーブ
26…スプロケットスリーブ
32a…カムシャフトスリーブの外歯ヘリカルスプライン
32b…シリンダの内歯ヘリカルスプライン
33a…スプロケットスリーブの内歯ヘリカルスプライン
33b…シリンダの外歯ヘリカルスプライン
34…シリンダ
35,36…油圧室
37,38,39,40…油圧路
50…油圧装置
52…油圧ポンプ
53…スプール弁
54…シリンダ
55…スプール
56…リニアソレノイド
57…スプリング
70…制御部
Claims (1)
- 内燃機関内のクランク軸からカム軸に至る回転伝達系内に設けられ、両軸間の回転位相差を変えるための位相調整機構(1)と、
前記位相調整機構を駆動するための駆動手段(2)と、
内燃機関各部に設けられ、機関の運転状態を表す複数の状態量を検知する各種センサ(3)と、
前記センサによって検出された運転状態量に基づいて前記両軸間の実位相差角を算出する回転位相差検出手段(4)と、
前記センサによって検出された運転状態量に基づいて回転位相差の目標値を決定する目標値決定手段(5)と、
前記実位相差角を回転位相差の目標値に一致させるための操作値を生成して前記駆動手段に出力する制御手段(6)とを具備する弁動作タイミング調整装置において、
前記制御手段は、積分器を含まないコントローラ(7)と、前記目標値が所定時間一定値にあるときに当該コントローラから出力される操作値を学習値として記憶する学習手段(8)とを備え、前記学習手段に記憶された学習値を用いて、前記操作値を生成し、該操作値により、積分要素を含んでいる制御対象を制御することを特徴とする弁動作タイミング制御装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP08632193A JP3733596B2 (ja) | 1993-04-13 | 1993-04-13 | 内燃機関の弁動作タイミング調整装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP08632193A JP3733596B2 (ja) | 1993-04-13 | 1993-04-13 | 内燃機関の弁動作タイミング調整装置 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH06299813A JPH06299813A (ja) | 1994-10-25 |
| JP3733596B2 true JP3733596B2 (ja) | 2006-01-11 |
Family
ID=13883577
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP08632193A Expired - Lifetime JP3733596B2 (ja) | 1993-04-13 | 1993-04-13 | 内燃機関の弁動作タイミング調整装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3733596B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP3733600B2 (ja) * | 1994-08-31 | 2006-01-11 | 株式会社デンソー | エンジンの弁動作タイミング調整装置 |
| JP5386902B2 (ja) * | 2008-09-19 | 2014-01-15 | いすゞ自動車株式会社 | アクチュエータのストローク制御装置 |
-
1993
- 1993-04-13 JP JP08632193A patent/JP3733596B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH06299813A (ja) | 1994-10-25 |
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