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JP3736033B2 - 電子機器用銅合金材の製造方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置用リードフレーム材等に用いられる電子機器用銅合金材の製造方法に関し、特に、エッチングによる微細加工性、機械的強度、及び電気・熱伝導性の向上を図れるようにした電子機器用銅合金材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器用銅合金材である半導体装置用リードフレーム材は、搭載される半導体素子の高集積化の傾向から半導体素子で発生するジュール熱を効率良く発散させるために熱伝導性、つまり、導電率が高くなっていることが要求されている。また、半導体素子の高集積化に伴う多ピン化、及びピン幅、ピンピッチの縮小化によってリードフレームの薄板化が進められているため、同時に高い機械的強度を備えていることも要求されている。
【0003】
このような要求がある中、従来は半導体装置用リードフレーム材に、例えば、Cu(銅)−Ni−P系の銅合金材を使用している。この銅合金材は、析出硬化性を示し、適当な条件で溶体化処理、及び時効処理を行ってNiとPの化合物を微細に析出させると、高い機械的強度と良好な熱伝導性が得られることから、上記要求のある半導体装置用リードフレーム材として好適である。
【0004】
ところで、半導体装置用リードフレームを製造する場合、スタンピング、或いはエッチングによる外形加工が実施されているが、特に、200ピンを越えるような高密多ピンリードフレームの外形加工には、微細加工が容易なエッチング法が採用されている。こうした高密度多ピンリードフレームでは、インナーリードの幅がボンディングに必要な幅に対して限界値に近く、ピンピッチも非常に狭くなるため、エッチング時にリードの直線性や寸法精度を正確にコントロールすることが重要になる。リードの外形加工精度は、エッチングの処理条件以外にも材料そのものの特性が大きく関係している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の電子機器用銅合金材の製造方法によると、溶体化処理、及び時効処理を行っているため、結晶粒径や析出物が粗大化する恐れがあり、この場合にはエッチングによる微細加工性を低下させるという問題がある。即ち、結晶粒径が大きく粒界密度が低い銅合金材では、粒界部と粒内部のエッチングによる加工特性が異なるため、エッチング面に凹凸が生じ易い。また、析出物が粗大化した銅合金材でも同様となる。結晶粒が粗大化する恐れのある工程として、溶体化処理をあげることができる。適切な時効処理によって高い強度を得るためには、その前処理として高温での溶体化処理により析出元素を十分固溶させておく必要があり、この高温による熱処理の際に結晶粒の粗大化が生じ易い。一方、溶体化処理の熱処理の温度を低下させると、析出物の粗大化が生じ易く、強度、及び熱伝導性を良好にできないばかりでなく、エッチングによる微細加工性に影響を及ぼすことになる。
【0006】
従って、本発明の目的はエッチングによる微細加工性、機械的強度、及び電気・熱伝導性の向上を図れるようにした電子機器用銅合金材の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点に鑑み、エッチングによる微細加工性、機械的強度、及び電気・熱伝導性の向上を図れるようにするため、NiとPを含有する銅合金材を鋳造し、銅合金材に所定の温度の溶体化処理を施し、溶体化処理を施された銅合金材に第1の所定の加工率の第1の冷間加工を施し、第1の冷間加工を施された銅合金材に第1の所定の温度と第1の所定の時間の第1の時効処理を施し、第1の時効処理を施された銅合金材に第1の所定の加工率より小さい第2の所定の加工率の第2の冷間加工を施し、第2の冷間加工を施された銅合金材に第2の所定の温度と第2の所定の時間の第2の時効処理を施すようにした電子機器用銅合金材の製造方法を提供するものである。
【0008】
上記溶体化処理は、上記所定の温度を750〜900℃に設定して行い、上記第1の冷間加工は、上記第1の所定の加工率を60%以上の値に設定して行い、上記第1の時効処理は、上記第1の所定の温度を400〜500℃に、上記第1の所定の時間を30分〜3時間にそれぞれ設定して行い、上記第2の冷間加工は、上記第2の所定の加工率を50%以下の値に設定して行い、上記第2の時効処理は、上記第2の所定の温度を350〜500℃に、上記第2の所定の時間を30分〜3時間にそれぞれ設定して行うことが好ましい。
【0009】
また、上記鋳造は、1.0〜4.0mass%のNiと0.2〜0.8mass%のPを量比4〜6の範囲で含み、且つ、副成分として0.1〜5.0mass%のZnを含み、残部Cuからなる銅合金材とすることにより行うことが好ましい。
【0010】
以上述べた電子機器用銅合金材の製造方法によると、溶体化処理の温度を750〜900℃に設定しているため、結晶粒の粗大化を防止すると共に析出元素を十分に固溶させることができる。溶体化温度が750℃より低くなると、析出元素の固溶が十分に進まない。よって、後工程の時効処理で固溶し残った析出物の粗大化が生じ、高強度が得られないと共にエッチングによる微細加工性も低下する。一方、溶体化温度が900℃より高くなると、析出元素の固溶は進むが、結晶粒の粗大化が生じる。よって、最終材で微細な結晶粒が得られ難くなり、エッチングによる微細加工性が低下する。なお、上記範囲の中で800〜850℃に設定すると、上記した効果が顕著になる。
【0011】
また、溶体化処理と第1の時効処理の間に第1の冷間加工を施しているため、加工によって結晶粒を微細化すると共に、析出物形成の起点となる格子欠陥を導入することで第1の時効処理時に微細析出物の形成を促すことができる。前述したように、エッチングによる微細加工性を向上させるためには十分な結晶粒の微細化が必要であり、この冷間加工の加工率を高めることは結晶粒の微細化に対して大きい効果を有している。また、第1の冷間加工の加工率を60%以上に設定しているため、上記の効果を十分に得ることができる。
【0012】
また、第1の時効処理では、加工率の高い材料を時効するため、析出が進行し易く、粗大析出物が発生し易く、また、処理温度が高くなると、再結晶が進行して結晶粒径が大きくなるが、本発明では処理温度を400〜500℃、処理時間を30分〜3時間に設定しているため、粗大析出物の発生を抑え、結晶粒径を微細に保ちながら析出を進行させることができる。なお、上記範囲の中で処理温度を440〜480℃に、処理時間を1〜2時間に設定すると、上記した効果が顕著になる。
【0013】
また、第1の時効処理と第2の時効処理の間に第2の冷間加工を施しているため、析出物形成の起点となる格子欠陥を導入することで第2の時効処理時に新たな微細析出物の形成を促すことができる。即ち、第1の時効処理のみでは析出しきれずに固溶状態で残留する合金元素があり、このままでは良好な導電性の達成が不十分となるが、本発明ではこのような不具合を解決することができる。第2の冷間加工の加工率を高くした場合、第2の時効処理時に粗大析出物が発生し易くなると共に、第2の時効処理後の残留歪みが大きくなり、半導体装置用リードフレームの製造ではリード成形のときにリードの反りが発生する。本発明では第2の冷間加工の加工率を50%以下にしているため、こうした問題を抑えることができる。
【0014】
また、第2の時効処理において処理温度を350〜500℃に、保持時間を30分〜3時間に設定しているため、粗大析出物の発生を抑え、結晶粒径を微細に保ちながら新たな析出物を発生させ、固溶元素量を減らすことができる。即ち、処理条件が低温短時間になると、析出を十分に進行させることができない。また、残留歪みが残るため、半導体装置用リードフレームの製造では、リード成形のときにリードの反りが発生する。一方、処理条件が高温長時間になると、粗大析出物が発生すると共に再結晶が進行して結晶粒径が大きくなる。なお、上記範囲の中で処理温度を400〜480℃に、処理時間を1〜2時間に設定すると、上記した効果が顕著になる。
【0015】
更に、銅合金材においてNiの添加量を1.0〜4.0mass%に、Pの添加量を0.2〜0.8mass%に設定しているため、析出による高強度化が十分得られると共に、時効処理後の固溶元素量を減少させることができる。即ち、NiとPの添加量が上記範囲の下限値より低くなると、析出による高強度化が十分に起こらない。また、NiとPの添加量が上記範囲の上限値より高くなると、析出しきれない固溶元素量が増加する。また、Ni/Pの量比が4〜6に設定されているため、NiとPがNiを形成して析出したときに余剰分として存在するNi、或いはPの量を少なくすることができる。また、Znを0.1〜5.0mass%添加すると、はんだ付けのときの界面剥離を防ぐことができる。このとき、添加量が0.1mass%より少ないと、十分な効果が得られず、また、添加量が5.0mass%より多いと、導電性を低下させてしまう。なお、上記範囲の中で、Niの添加量を1.5〜2.5mass%に、Pの添加量を0.3〜0.5mass%に、Znの添加量を0.1〜2.0mass%に設定すると、上記した効果が顕著になる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の電子機器用銅合金材の製造方法を詳細に説明する。
【0017】
表1に示す組成を有する組成記号A〜Dの銅合金に対し、表2に示す製造条件に基づいて実施例と比較例の試料1〜15を製造した。
【0018】
【表1】
Figure 0003736033
【表2】
Figure 0003736033
【0019】
ここで、試料1の製造手順を説明する。まず、無酸素銅を母材にして表1に示す組成記号Aの組成を有する銅合金を高周波溶解炉で溶製し、直径30mm,長さ250mmのインゴットを鋳造した。次に、これを850℃に加熱して押出加工し、幅20mm,厚さ8mmの板状にした後、厚さ0.7mmまで冷間圧延した。続いて、冷間圧延した銅合金を800℃に加熱して10分間保持した後、水中に投入して急冷し、溶体化した。そして、これを加工率70%で冷間圧延して厚さ0.21mmにし、その後、これに470℃で1時間保持する第1次時効処理を施した。更に、第1次時効処理を施した銅合金を加工率30%で冷間圧延して厚さ0.15mmにし、その後、これに400℃で1時間保持する第2次時効処理を施して実施例である試料1を得た。
【0020】
また、実施例である試料2,3及び比較例である試料4〜11は、表1に示す記号組成Aの組成を有する銅合金に対して、溶体化処理の温度,溶体化処理後の冷間圧延の加工率,第1次時効処理の温度,第1次時効処理後の冷間圧延の加工率,及び第2次時効処理の温度をそれぞれ表2に示すように変えて試料1と同様に製造した。
【0021】
更に、実施例である試料12は、表1に示す記号組成Bの組成を有する銅合金に対して、試料1と同一な条件で各処理を施して製造した。
【0022】
更にまた、比較例である試料13〜15は、表1に示す記号組成C,D,Eの組成を有する銅合金に対して、試料1と同一な条件で各処理を施して製造した。
【0023】
次に、このようにして得た試料1〜15について引張強さ,導電率,結晶粒径を測定した。表3はその測定結果を示す。
【表3】
Figure 0003736033
表3から明らかなように、実施例である試料1〜3及び試料12は、強度、及び導電率が良好であると共に、結晶粒径の微細化、つまり、エッチングによる微細加工性の向上が達成されている。
【0024】
一方、試料4,5は溶体化処理の温度が本発明の範囲を外れた比較例であり、処理温度が高い試料4では結晶粒が大きくなり、処理温度が低い試料5では良好な強度、及び導電率が得られていない。試料6は溶体処理後の冷間圧延の加工率が本発明の範囲より低い比較例であり、結晶粒の微細化が不十分である。試料7,8は第1次時効処理の温度が本発明の範囲を外れた比較例であり、何れも強度が不十分である。試料9は第1次時効処理後の冷間圧延の加工率が本発明の範囲より高い比較例であり、強度が不十分である。試料10,11は第2次時効処理の温度が本発明の範囲を外れた比較例であり、処理温度が低い試料10では導電率が不十分であり、処理温度が高い試料11では強度、及び結晶粒の微細化が不十分である。試料13〜15は合金組成が本発明の範囲を外れた比較例であり、何れも強度、及び導電率が不十分である。
【0025】
以上述べた実施例による電子機器用銅合金材は、機械的強度、電気・熱伝導性、及びエッチングによる微細加工性が優れているため、より小形・多ピンの半導体装置用リードフレームとして好適な材料とすることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子機器用銅合金材の製造方法によると、NiとPを含む銅合金を溶体化処理した後、冷間加工と時効処理をそれぞれ2回繰り返し行い、且つ、溶体化処理の温度、冷間加工の加工率、及び時効処理の温度を所定の値に設定したため、エッチングによる微細加工性、機械的強度、及び電気・熱伝導性の向上を図ることができる。

Claims (1)

  1. 1.0〜4.0mass%のNiと0.2〜0.8mass%のPを質量比4〜6の範囲で含み、且つ、副成分として0.1〜5.0mass%のZnを含み、残部Cuからなる銅合金材を鋳造し、
    前記銅合金材に750〜900℃の溶体化処理を施し、
    前記溶体化処理が施された前記銅合金材に加工率60%以上の第1の冷間加工を施し、
    前記第1の冷間加工が施された前記銅合金材に400〜500℃で30分〜3時間の第1の時効処理を施し、
    前記第1の時効処理が施された前記銅合金材に加工率50%以下の第2の冷間加工を施し、
    前記第2の冷間加工が施された前記銅合金材に350〜500℃で30分〜3時間の第2の時効処理を施すことを特徴とする電子機器用銅合金材の製造方法。
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