JP3738564B2 - 耐回転トルク用インサート部材を有する成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂や軽合金を母材とする型成形品において、ネジ部材を螺合する際にネジ受け部分がこの回転トルクに耐えうるように、受け部材をインサート部材にして一体的に固定する成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンのオイルパン等の薄板状の成形品は、最初の頃は金属板で成形され、底部にはオイルを抜くためのドレンプラグが設けられ、このドレンプラグは底部の金属板に溶接などで接合されたネジ部に螺合されていた。しかしながら、現在では、エンジンの軽量化に伴い、プラスチック等の樹脂、又は、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金を母材とする軽量の型成形品で製造されているものもある。
【0003】
この軽量の型成形品においては、このドレンプラグの螺合部分のように、構造的に強度を高める必要がある場合には、この強度が必要な部分を強固な素材、例えば鋼材等の補強用のインサート部材で制作して、このインサート部材を型成形後に圧入固定したり、型成形時にインサート成形したり、あるいは、鋳ぐるみ鋳造したりしている。
【0004】
そして、図5に示すようにエンジンのオイルパン40の下面に、雌ネジ部を有する受け部材であるインサート部材10を設け、このインサート部材10にドレンプラグ(閉止部材)3を螺合する場合に螺合時の回転トルクに負けて共回りしないように、図6に示すようにインサート部材10の形状を筒状部11と、これの一端に多角形平板状の鍔部12を形成している。
【0005】
一方、このようなオイルパンを樹脂製で製造する場合には、軽量化等のために可能な限り薄く作られる。特に、SMC(シートモールディングコンポジット)工法では、ガラス繊維等の強化用の繊維基材へ予めプラスチック等のマトリックスを含浸させてシート状にした成形材料を、金型に供給してこの金型で押圧及び加熱して成形して、全体的に薄い成形品としている。
【0006】
そのため、図5のようなオイルパン等の成形体2において、インサート部材10を設ける場合は、図7、図8、図9に示すように、このインサート部材10を受ける成形体本体(母材)40側の保持する部分を厚肉に成形して隆起保持部42で保持している。
そして、インサート部材10を型成形時に一体化成形したり、あるいは、型成形した後の成形体本体40の貫通孔44にインサート部材10を挿入して保持部42に係合した後、図8に示すように筒状部11の先端をK方向に拡径して、インサート部材10を堅固に固定している。
【0007】
この隆起保持部42は、型成形する際に、型側にこの隆起保持部42に相当するキャビティを設けて置き、シート状の成形材料を加熱した時に溶融した成形材料をこのキャビティに流入させて形成する。
そのため、強化用の繊維基材がこの厚肉部分42、45に配置されないために、シート状の成形材料から形成された薄肉部分41との連結が弱くなり易く、また、この厚肉部分42自体もシート状の成形材料で形成される薄肉部分41に比較して弱くなり易い。
【0008】
そこで、本発明者らは、この隆起保持部42に鍔部12が係合する部分は多角形状の凹部43となるが、この凹部43の多角形の中心から頂点43bに向かう放射線上にリブ45(以下放射状リブということにする)を延設して、この放射状リブ45によって、この隆起保持部42に加わる回転トルクを周辺の薄肉部分41に分散し、この隆起保持部42におけるインサート部材10の固定支持を強化する方法を検討し、かなりの成果を得ることができた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このオイルパン40はエンジンの下部にある上に、ドレンプラグ3は更にその底の部分にあるため、見えにくい車両の底部に位置することになり、通常は長いレンチを用いて取り外し及び装着を行っている。そのため、ドレンプラグ3の取り外しの際に、強い回転トルクが加えられることが多く、締めたり緩めたりを繰り返しているうちにガタ付いたり、インサート部材10の保持部42に、特に、放射状リブ45の根元の部分に亀裂などが発生することが考えられる。
【0010】
つまり、多角形状のインサート部材10を隆起保持部42で受け、この外周部に図9に示すように放射状リブ45を設けた場合には、図4の模式図に示すように、多角形の中心Oと頂点Aを結ぶ線の延長上に放射状リブAD(45)が設けられるため、回転トルクTによって発生する力F0 がこの放射状リブAD(45)と垂直な方向に作用することになり、法線方向力Fn がF0 と等しくなる。そのため、強い回転トルクTがかけられたときに、この放射状リブAD(45)を保持する薄肉部分41に大きな法線応力σFnが発生し、大きな応力値となるので、この放射状リブAD(45)の根元部分に亀裂が発生し易くなると考えられる。
【0011】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、インサート部材を保持する成形体本体側の隆起保持部の周辺部分に発生する応力を緩和して、インサート部材に作用する回転トルクによる隆起保持部の周辺部分の破損を防止できる耐回転トルク用インサート部材を有する成形体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上のような目的を達成するための耐回転トルク用インサート部材を有する成形体は、中央部にネジ孔を有する筒状部と該筒状部の一端に設けた多角形平板状の鍔部からなるインサート部材を成形品本体に一体的に固定し、前記ネジ孔に閉止部材を螺合するように構成した成形体であって、前記鍔部の外周部を前記成形品本体の厚肉に成形した隆起保持部で包囲すると共に、前記隆起保持部の外周から前記多角形の辺を延長した線上にリブを延設したことを特徴とする。
【0013】
また、更には、前記リブを前記多角形の辺を延長した線上で、かつ、この辺の延長線の双方向にそれぞれ設ける。
また、具体的な対象物として例示すると、前記成形体は型成形により樹脂成形されるオイルパンであり、前記閉止部材がドレンプラグであるが、このオイルパン以外にも例えば、樹脂製のタンクの配管継手部分やドレンプラグ部分等の同様な構造を有する多数の部品・製品に適用可能である。
【0014】
つまり、樹脂又は軽合金等の軽量の型成形品に対し、ドレンプラグなどの締め付け部品を取り付ける際に、螺合するネジ部を硬度の高いインサート部材で補強するが、この場合に、回転トルクに対抗するために、多角形平板状の鍔部を設けたインサート部材を一体的に固定し、更に、樹脂等の母材側のインサート部材を保持する部分に多角形の中心を通る放射線上ではなく、多角形の辺の延長線上にリブ(以下辺延長リブという)を設ける。
【0015】
以上の構成により、インサート部材を介して回転トルクを受ける成形体側のインサート部材の隆起保持部の周辺部に発生する応力の最大値を小さくすることができ、亀裂の発生や破損を防止でき、信頼性と耐久性の高い成形品を得ることができる。
本発明者らが実施した実験結果によれば、この多角形の辺の延長上に設けた辺延長リブを有した構造の場合には、先行技術の放射状に配置した放射状リブを有するものに比較して2倍の回転トルクに耐えられ、破壊に耐えられるトルクは2倍に向上する。
【0016】
以下に、この多角形の辺の延長線上に設けた辺延長リブの方が、多角形の中心と頂点を通る放射線上に設けられた放射状リブよりも、効果的に隆起保持部に加えられる回転トルクを周辺の薄肉部分に分散できることについて、図4の模式的な図を参考にして単純化して説明する。
即ち、インサート部材に回転トルクが発生すると、隆起保持部22、42内の多角形の角部Gの接線方向に接線方向力Fが加わり、この多角形の辺GHを押し拡げる方向に作用するが、放射状リブ45においては、この接線方向力Fに垂直に設けられているので、AB方向の放射状リブ45では対抗できず、効果が少ない。
【0017】
一方、辺延長リブ25は辺FGの延長線上に設けられており、接線方向力FによってFG方向に加わる分力Ftに対して、その延長上CDにある辺延長リブ25で対抗できる。また、この接線方向力Ftによって辺FGがFt方向に引張られる形となるので、辺GFの延長上C’D’にある辺延長リブ26によってこの引張力Ftに対抗できる。
【0018】
また、一方で、図4に示すように、隆起保持部22、42の外径をR2とし、同じ外径R3内にリブの先端を納める場合には、放射状リブ(AD)45の長さL1はL1=R3−R2となり最短の長さとなるので、辺延長リブ(CB)25、26の長さL2は、放射状リブ(AD)45の長さL1よりも、常に大きくなる。
従って、同じ外径R3内にリブの先端を納める場合には、辺延長リブ25、26の長さL2が放射状リブ45の長さL1より常に長くなるので、薄肉部分21、41とリブ25、45とが接続する部分が、辺延長リブ25、26のほうがより広くなる。そのため隆起保持部22、42が受ける力を薄肉部分21、41に伝達するする部分がより広くなり、より小さな応力の発生で回転トルクTを薄肉部分21、41に分散できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る耐回転トルク用インサート部材を有する成形体について、図5に示すようなエンジンのオイルパン1を例にして説明する。
このオイルパン1は、ドレンプラグ3を保持する受け部材10を一体成形する樹脂製の型成形体であり、このインサート部材10は、図6に示すように、筒状部11と多角形平板状に形成された鍔部12とから形成されている。この筒状部11の中心には、ドレンプラグ3を装着するためのネジ孔14が貫通して設けられ、螺合のために雌ネジ部13が設けられている。
【0020】
一方、インサート部材10を受ける母材側20には、図1や図2に示すように、オイルパン1の全体部分の板厚より肉厚を厚く形成して、中央にインサート部材10の筒状部11を挿入するための貫通孔24と、鍔部12を係合するための正六角形状の凹部23を有する隆起保持部22を設けて、鍔部12の外周部を成形品本体20の厚肉に成形した隆起保持部22で包囲する構成とする。
【0021】
そして、隆起保持部22の外周から、この凹部23の正六角形の辺23aを延長した線上で、かつ、この辺23aの延長線の双方向、即ち両側にそれぞれ辺延長リブ25、26を設ける。この延長リブ25、26は、閉止部材であるドレンプラグ3を締め付けたり、緩めたりする時に発生する回転トルクTをインサート部材10を介して隆起保持部22が受けた時に、この受けた回転トルクTによって発生する力を周辺の薄肉部分21に分散するために設ける。
【0022】
また、この辺延長リブ25、26は図1、図2及び図3(b)(c)に示すように、辺の両側の延長線上にそれぞれ設けることが好ましいが、図3(a)に示すように、凹部23の正六多角形の頂点23b部分、即ち、側辺部分がドレンプラグ3を締める際に圧縮を受ける側の延長方向の片側だけ延長して延長リブ25のみを設けることもできる。また、逆に反対側の延長線上の延長リブ26のみを設けることもできる。
【0023】
図3(c)に示す例の場合には、インサート部材10の配置場所の関係により、Y方向に延びる辺延長リブ25a、26aは長く、反対のZ方向に延びる辺延長リブ25d、26dは短く形成している。
また、この辺延長リブ25、26の側面視の形状は、図1、図2に示すように矩形としてもよいが、母材20の隆起保持部22との形状と係合の程度や見栄えを考慮して、図3(d)に示すようにテーパーを持たせた三角形形状にすることもできる。
【0024】
そして、この辺延長リブ25、26等の延長する長さや高さやテーパーの程度は実験や計算により求めて決定することができる。
また、このオイルパン1は、SMC工法により、ガラス繊維等の強化用の繊維基材へ予めプラスチック等のマトリックスを含浸させてシート状にした成形材料を、加熱した金型に供給してこの金型で押圧して成形される。インサート部材10は、オイルパン1を型成形時に母材20に一体化される場合もあり、また、型成形された後にオイルパン1に挿入される場合にある。そして、更に、インサート部材10の先端側を図2に示すようにK方向に拡径して、固定を堅固なものとする。
【0025】
そして、この成形体本体20に一体的に成形されたインサート部材10のネジ孔14の雌ネジ部13に、ドレンプラグ3を螺合してオイルパン1の底部を閉止し、ドレン抜きする時には、このドレンプラグ3の螺合を解除してドレン抜きを行う。
以上の構成の成形体1によれば、成形体本体20側の隆起保持部22において、凹部23の多角形の面を形成する辺23aの延長線上に形成した辺延長リブ25、26によって、隆起保持部22に作用する力を周辺部の薄肉部分21に分散できる。
【0026】
即ち、インサート部材を介して発生する回転トルクによって発生する、多角形の角部の接線方向の接線方向力Fが加わることになるが、この接線方向力Fに対して辺12aの延長線上に設けられた辺延長リブ25、26により、効果的に対抗できる。また、辺延長リブ25、26の長さが長くできるので薄肉部分21との接続部分を広くすることができ、辺延長リブ25、26に作用する力を薄肉部分21に効率よく分散できる。
【0027】
従って、ドレンプラグ3を締め付けたり、緩めたりする際の回転トルクによってインサート部材10を保持する隆起保持部22の周辺部に発生する応力の大きさを小さくすることができるので、この回転トルクによる周辺部の亀裂の発生を防止できる。
本発明者らが実施した実験結果によれば、図3の(c)と(d)に示すような辺延長リブ25、26を設けた成形体1と、正六角形の中心から頂点に向かって延びる放射線上に設けた放射状リブ45を設けた成形体2との破壊に至るトルクを比較した結果、辺延長リブ25、26を設けた成形体1の破壊トルクは放射状リブ45を設けた成形体2の約2倍となるという結果を得ており、効果のあることが実験的に確認されている。
【0028】
また、リブの位置を、辺延長リブ25、26の代わりに、図3(e)に示すように隆起保持部22の外周から正六角形の頂点22bを通り、かつ、正多角形が内接する円の接線となる線上にリブ(以下接線方向リブという)27、28を延設することもできる。この接線方向リブ27、28は辺延長リブ25、26と同様に、片側だけに設けてもよく、形状も矩形や三角形状にすることもできる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による耐回転トルク用インサート部材を有する成形体によれば、回転トルクが発生する多角形平板状のインサート部材を保持する隆起保持部に、この多角形の辺の延長上に隆起保持部の外周部から辺延長リブを延設しているので、この隆起保持部の周辺部分に発生する回転トルクに起因する応力を低減して、亀裂の発生及び破損を防止でき、信頼性と耐久性の高い成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る型生成体におけるインサート部材と型成形体本体との関係を示す一部断面を含む部分斜視図である。
【図2】図1のインサート部材を型成形体本体と一体化した状態を示す一部断面を含む部分斜視図である。
【図3】本発明に係る辺延長リブとインサート部材の保持部の多角形との関係を説明するための模式的平面図であり、(a)は多角形の辺の片側にのみに設けた辺延長リブを、(b)は多角形の辺の両側に設けた辺延長リブを、また、(c)は多角形の辺の両側に設けた長さが異なる辺延長リブを示し、(d)は(b)のX−X’部分の辺延長リブ部分の側面形状を示し、(e)は接線方向リブを示す。
【図4】辺延長リブと放射状リブの先端を同径の円上に配置した場合の作用力の関係を説明するための模式図である。
【図5】オイルパンとインサート部材の例を示す断面図である。
【図6】 型生成体にインサートするインサート部材を示す図で、(a)は一部断面形状を含む正面図で、(b)は平面図である。
【図7】先行技術の型成形体本体と図6のインサート部材との関係を示すW−W断面を含む部分斜視図である。
【図8】先行技術の型成形体本体に図6のインサート部材を挿入した状態を示すW−W断面を含む部分斜視図である。
【図9】先行技術の放射状リブとインサート部材の保持部の多角形との関係を説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
1、2 成形体 3 ドレンプラグ 10 インサート部材
11 筒状部 12 鍔部 13 雌ネジ部
14 ネジ孔 20 母材 21 薄肉部
22 隆起保持部 23 凹部 23a 多角形の辺
24 貫通孔 25、26 辺延長リブ 27、28 接線方向リブ
Claims (3)
- 中央部にネジ孔を有する筒状部と該筒状部の一端に設けた多角形平板状の鍔部からなるインサート部材を成形品本体に一体的に固定し、前記ネジ孔に閉止部材を螺合するように構成した成形体であって、前記鍔部の外周部を前記成形品本体の厚肉に成形した隆起保持部で包囲すると共に、前記隆起保持部の外周から前記多角形の辺を延長した線上にリブを延設したことを特徴とする耐回転トルク用インサート部材を有する成形体。
- 前記リブを前記多角形の辺を延長した線上で、かつ、この辺の延長線の双方向にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1記載の耐回転トルク用インサート部材を有する成形体。
- 前記成形体は型成形により樹脂成形されるオイルパンであり、前記閉止部材がドレンプラグであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐回転トルク用インサート部材を有する成形体。
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Applications Claiming Priority (1)
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|---|---|---|---|
| JP20258298A JP3738564B2 (ja) | 1998-07-17 | 1998-07-17 | 耐回転トルク用インサート部材を有する成形体 |
Publications (2)
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| JP6886359B2 (ja) * | 2016-12-01 | 2021-06-16 | 株式会社マーレ フィルターシステムズ | 合成樹脂製カバーのドレンナット取付構造 |
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