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JP3741860B2 - 酸化物超電導導体の製造装置および製造方法 - Google Patents
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JP3741860B2 - 酸化物超電導導体の製造装置および製造方法 - Google Patents

酸化物超電導導体の製造装置および製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物超電導導体の製造装置および製造方法に係り、基材上に薄膜を形成するCVD反応装置を利用した酸化物超電導体の製造装置とそれを用いた酸化物超電導体の製造方法に用いて好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電力ケーブル、マグネット、エネルギー貯蔵、発電機、医療機器、電流リード等には、酸化物超電導薄膜が利用されており、その製造においては、化学気相堆積法(CVD法)が利用されている。このCVD法は、スパッタなどの物理的気相堆積法(PVD法)や真空蒸着等の気相法に比べて、基材形状の制約が少なく、大面積の基材に高速で薄膜形成が可能な手法として広く知られている。ところが、このCVD法にあっては、原料ガスの仕込み組成や供給速度、キャリアガスの種類や反応ガスの供給量、あるいは、反応リアクタの構造に起因する成膜室でのガスの流れの制御など、他の成膜法には見られない独特の制御パラメータを数多く有しているがために、CVD法を用いて良質な薄膜形成を行うための条件の最適化が難しいという欠点を有している。
【0003】
一般にこの種のCVD反応装置は、反応生成室を構成するリアクタと、このリアクタの内部に設けられた基材と、このリアクタの内部を所望の温度に加熱する加熱装置と、このリアクタに反応生成用の原料ガスを供給する原料ガス供給装置と、リアクタ内部で反応した後のガスを排気する排気装置を主体として構成されている。
そして、この構成のCVD反応装置を用いて基材上に目的の薄膜を形成するには、リアクタの内部を減圧雰囲気とするとともに所望の温度に加熱し、原料ガス供給装置から目的の薄膜に応じた原料ガスをリアクタの内部に導入し、リアクタの内部で原料ガスを分解反応させて反応生成物を基材上に積層し、反応後のガスを排気装置で排出することで行っている。
また、このような構成のCVD反応装置を用いてチップ状の基材の表面に均一な特性と厚さを有する薄膜を形成する場合、チップ状の基材を平面運動させながら成膜する方法が一般に採用されており、例えば、図13に示すように複数枚のチップ状の基材1を、リアクタ(図示略)内に設けられた円盤状の基材ホルダ2上にこれの円周に沿って並べ、基材ホルダ2の中心軸Gを回転軸として回転させながら成膜したり、あるいは図14に示すようにチップ状の基材1を縦方向(X1−X2間)や横方向(Y1−Y2間)にトラバースさせたり、またはチップ状の基材1を偏心回転させながら成膜する方法が挙げられる。なお、図13ないし図14中、符号3は原料ガス供給ノズルであり、4はこのノズル3から供給された原料ガス4である。
【0004】
ところが、図13に示したような複数枚のチップ状の基材1を並べた基材ホルダ2を回転させる方法は大量生産に適しているが、回転軸Gに対して同心円状に膜厚分布が発生し易いため、形成された薄膜の膜厚の分布が均一でなく、超電導特性にバラツキが生じてしまう。また、図14に示したようなチップ状の基材1を縦横にトラバースしたり、偏心回転させる方法は、厚みが均一な薄膜が得られるが、成膜装置が大型になってしまううえ、生産効率が悪いという問題がある。また、CVD反応装置を用いてテープ状の基材上に酸化物超電導薄膜を堆積させて長尺の酸化物超電導体を製造する場合には、リアクタ内にテープ状の基材を一方向に送り出すとともに巻取りながら薄膜を成膜する必要があるため、上述のような基材を平面運動させながら成膜する方法を適用することができなかった。
【0005】
そこで、従来は図15ないし図16に示すようなCVD反応装置10を用いて長尺の酸化物超電導体を製造していた。このCVD反応装置10は、筒型のリアクタ11を有し、該リアクタ11は隔壁12、13によって基材導入部14と反応生成室15と基材導出部16に区画されている。上記隔壁12、13の下部中央には、テープ状の基材18が通過可能な通過孔19がそれぞれ形成されている。上記反応生成室15には、ガス拡散部20が取り付けられている。このガス拡散部20には、スリットノズル20aを先端に有する供給管20bが接続されており、供給管20bから原料ガスや酸素がガス拡散部20を経て反応生成室15内に供給できるようになっている。
また、リアクタ11内の反応生成室15の下方には、該リアクタ11内に通されたテープ状の基材18の長さ方向に沿って排気室17が設けられている。この排気室17の上部には、リアクタ11内に通されたテープ状の基材18の長さ方向に沿って細長い長方形状のガス排気孔21a、21aがそれぞれ形成されている。また、上記排気室17の下部には2本の排気管23の一端がそれぞれ接続されており、一方、これら2本の排気管23の他端は真空ポンプ(図示略)に接続されている。上記2本の排気管23の排気口23aは、リアクタ11内に通されたテープ状の基材18の長さ方向に沿って設けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のCVD反応装置10においては、長尺の酸化物超電導体を製造する際、スリットノズル20aから導入された原料ガスが反応生成室15内でテープ状の基材18上に薄膜を形成後、導入されたテープ状の基材18の長さ方向に沿って設けられた排気口23a、23aから未反応のガス(残渣ガス)がCVD反応装置10外に排出されるようになっているため、テープ状の基材18の長さ方向に対し厚さや組成が均一な酸化物超電導薄膜を形成できる。しかし、反応生成室15内でテープ状の基材18上に形成される酸化物超電導薄膜の膜厚が、反応生成室15に供給される反応ガスの量によって規定されており、供給される原料ガスの量が反応生成室15の形状や大きさによって規定されるため、多量の原料ガスを導入することが困難であった。そのため、形成される酸化物超電導薄膜の膜厚や酸化物超電導薄膜の形成速度にも限界が生じてしまい、得られる酸化物超電導体における、例えば臨界電流と臨界電流密度といった超電導特性に不満があった。
また、スリットノズル20aから導入される原料ガスの供給状態を制御できないため、酸化物超電導薄膜の厚さの分布や組成にバラツキが生じ、これによって例えばテープ状の基材18の幅方向に対し臨界電流密度にバラツキが生じてしまうため、得られる酸化物超電導体の超電導特性に不満があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
▲1▼酸化物超電導薄膜の形成速度の向上を図ること。
▲2▼形成される酸化物超電導薄膜の膜厚の向上を図ること。
▲3▼反応ガスの供給状態の改善を図ること。
▲4▼厚さの分布や組成が均一な酸化物超電導薄膜を形成すること。
▲5▼超電導特性の優れた酸化物超電導体を効率良く製造すること。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸化物超電導体の原料ガスを移動中のテープ状の基材表面に化学反応させて酸化物超電導薄膜を堆積させるCVD反応を行うリアクタと、該リアクタに原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、上記リアクタ内のガスを排気するガス排気手段と、これらを制御する制御手段とが備えられてなる酸化物超電導体の製造装置において、前記リアクタは、基材導入部と反応生成室と基材導出部とにそれぞれ隔壁を介して区画され、該反応生成室がテープ状の基材の移動方向に直列に複数設けれられて、これら反応生成室の間に境界室が設けられ、各隔壁に基材通過孔が形成され、前記リアクタの内部に基材導入部と反応生成室と境界室と基材導出部とを通過する基材搬送領域が形成されるとともに、前記原料ガス供給手段が、原料ガス供給源と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段とを具備して、リアクタの各反応生成室ごとに設けられ、前記境界室には、両側の反応生成室どうしを遮断するための遮断ガスを供給する遮断ガス供給手段が接続され、前記ガス排気手段が、ガスの排気量を調整するための流量調整機構がそれぞれ設けられた複数本の排気管と、前記テープ状の基材の長さ方向および幅方向に沿って前記リアクタに設けられた前記複数本の排気管の排気口とを有し、前記排気口が、前記基材導入部と前記反応生成室とを区画する隔壁の上流側および前記反応生成室と前記基材導出部とを区画する隔壁の下流側、前記境界室の両側の隔壁に亘って位置し、前記制御手段により前記リアクタ内を移動中の前記テープ状の基材の長さ方向及び幅方向へのガスの流れ状態を制御可能な構成とされることを特徴とする酸化物超電導体の製造装置を上記課題の解決手段とした。
また、本発明は、前記原料ガス供給手段が、原料ガス供給源と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段と、リアクタの直上流側に設けられ原料ガスと酸素ガスとを混合するガスミキサと、リアクタの各反応生成室の一側にガスミキサに接続されて設けられたガス拡散部とを具備して構成され、ガスミキサが、ガスの流通する流路の内側にその全周に亘って複数設けられガスを混合するための突出部と、該ガスミキサの内部を加熱するための加熱手段とを有し、前記ガス排気手段が、前記ガス拡散部形成側と反対側に前記基材搬送領域の両側に位置して設けられたガス排気孔とこのガス排気孔に接続されたガス排気装置とを具備して構成され、前記ガス拡散部と前記ガス排気孔が基材搬送領域を挟んで対向され、前記境界室には、両側の反応生成室どうしを遮断するための遮断ガスを供給する遮断ガス供給手段が遮断ガス噴出部を介して接続され、遮断ガスとしてアルゴンガスが選択され、前記ガス排気手段の排気孔が、前記リアクタ内を移動中のテープ状の基材の長さ方向及び幅方向に沿ってそれぞれ一箇所以上設けられるとともに、前記遮断ガス噴出部と対向する位置に反応生成室と境界室とを区画する隔壁に亘って設けられ、前記ガス排気手段に各排気孔から排出されるガスの排気量を調整する流量調整機構が設けられて、前記制御手段により前記リアクタ内を移動中のテープ状の基材の長さ方向及び幅方向へのガスの流れ状態を制御可能な構成とされ、各原料ガス供給手段が制御手段により独立に制御可能とされて、各反応生成室に供給される原料ガス中の酸素分圧が独立に制御可能とされ、かつ、テープ状の基材の移動方向上流の反応生成室の酸素分圧よりも、テープ状の基材の移動方向下流の反応生成室の酸素分圧が高く設定されることを特徴とする酸化物超電導体の製造装置を上記課題の解決手段とした。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る酸化物超電導導体の製造装置および製造方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明に係る酸化物超電導体の製造装置の一例を示すもので、この例の製造装置には、略同等の構造を有する3つのCVDユニットA,B,Cが組み込まれ、各CVDユニットA,B,Cには、図2ないし図7に詳細構造を示すようなCVD反応装置30が組み込まれ、このCVD反応装置30内においてテープ状の基材に酸化物超電導薄膜が形成されるようになっている。
この例の製造装置で用いられる図2ないし図7に示すCVD反応装置30は、横長の両端を閉じた筒型の石英製のリアクタ31を有し、このリアクタ31は、隔壁32、33によって図2の左側から順に基材導入部34と反応生成室35と基材導出部36に区画されているとともに、隔壁37によって、反応生成室35,35が3分割されて、それぞれが前述のCVDユニットA,B,Cの一部分を構成するとともに、この反応生成室35,35の間には、境界室38が区画されている。なお、リアクタ31を構成する材料は、石英に限らずステンレス鋼などの耐食性に優れた金属であっても良い。
【0011】
上記隔壁32,33,37の下部中央には、図2ないし図4に示すように、長尺のテープ状の基材Tが通過可能な通過孔39がそれぞれ形成されていて、リアクタ31の内部には、その中心部を横切る形で基材搬送領域Rが形成されている。さらに、基材導入部34にはテープ状の基材Tを導入するための導入孔が形成されるとともに、基材導出部36には基材Tを導出するための導出孔が形成され、導入孔と導出孔の周縁部には、基材Tを通過させている状態で各孔の隙間を閉じて基材導入部34と基材導出部36を気密状態に保持する封止機構(図示略)が設けられている。
【0012】
上記各反応生成室35の天井部には、図2に示すように角錐台型のガス拡散部40が取り付けられている。このガス拡散部40は、リアクタ31の長手方向に沿って配置された台形型の側壁41、41と、これら側壁41、41を相互に接続する前面壁42および後面壁43と、天井壁44とからなるガス拡散部材45を主体として構成され、更に天井壁44に接続された供給管53を具備して構成されている。また、供給管53の先端部には、スリットノズル53aが設けられている。なおまた、ガス拡散部材45の底面は、長方形状の開口部46とされ、この開口部46を介してガス拡散部材45が反応生成室35に連通されている。
【0013】
上記境界室38の天井部には、遮断ガス供給手段38Bが供給管38Aを介して接続され、遮断ガス供給手段38Bが、境界室の38の両側の反応生成室35,35どうしを遮断するための遮断ガスを供給し、前記供給管38Aの接続部分が、遮断ガス噴出部38aを介して接続され、遮断ガスとしてたとえばアルゴンガスが選択される。
【0014】
一方、各反応生成室35および境界室38の下方には、図4に示すように上記基材搬送領域Rの長さ方向に沿って各反応生成室35および境界室38を貫通するように排気室70が設けられている。この排気室70の上部には図2、図4に示すように基材搬送領域Rに通されたテープ状の基材Tの長さ方向に沿って細長い長方形状のガス排気孔70a、70aが各反応生成室35および境界室38を貫通するようにそれぞれ形成されており、このガス排気孔70a,70aには、図3,図4に示すように、隔壁32,33,37の基材搬送領域Rの両側下端部が貫通状態とされている。
また、排気室70の下部には複数本(図面では10本)の排気管70bの一端がそれぞれ接続されており、一方、これら複数本の排気管70bの他端は真空ポンプ71を備えた圧力調整装置72に接続されている。また、図4ないし図5に示すようにこれら複数本の排気管70bのうちの複数本(図面では4本)の排気管70bの排気口70c,70eは、基材搬送領域Rに通されたテープ状の基材Tの長さ方向に沿って設けられており、排気口70cは排気室70における基材搬送領域Rに通されたテープ状の基材Tの長さ方向の隔壁32の上流および隔壁33の下流側に位置され、排気口70eは境界室38の両側の隔壁37,37に亘って位置するように基材搬送領域Rに通されたテープ状の基材Tの長さ方向に延長されている。
また、上記複数本の排気管70bのうち残り(図面では6本)の排気管70bの排気口70fは、基材搬送領域Rに通されたテープ状の基材Tの幅方向に沿って設けられている。上記複数本の排気管70bには、上記ガスの排気量を調整するためのバルブ(流量調整機構)70dがそれぞれ設けられている。従って、ガス排気孔70a,70aが形成された排気室70と、排気口70c,70e,70fを有する複数本の排気管70b・・・と、バルブ70dと、真空ポン プ71と、圧力調整装置72によってガス排気機構80が構成される。このような構成のガス排気機構80は、CVD反応装置30の内部の原料ガスや酸素ガスや不活性ガス、および遮断ガスなどのガスをガス排気孔70a、70aから排気室70、排気口70c,70e,70f、排気管70bを経て排気できるようになっている。
【0015】
上記CVD反応装置30の外部には、図1に示すように、基材導入部34の反応生成室35側の部分から基材導出部36の反応生成室35側の部分までを覆う加熱ヒータ47が設けられる。図1に示す例では、3つの反応生成室35に亘って連続状態の加熱ヒータ47としたが、該加熱ヒータ47を、各反応生成室35に対して独立の構造とすることも可能である。
さらに、上記CVD反応装置30の外部には、基材導入部34が不活性ガス供給源51Aに、また、基材導出部36が酸素ガス供給源51Bにそれぞれ接続されている。また、ガス拡散部40の天井壁44に接続された供給管53は、図1,図6に示すように、後述のガスミキサ48を介して、後述する原料ガス供給手段50の原料ガスの気化器(原料ガスの供給源)55に接続されている。
原料ガス供給手段50においては、さらに、供給管53におけるガスミキサ48の上流部分には、酸素ガスの流量調整機構54を介して酸素ガス供給源52が分岐して接続され、供給管53に酸素ガスを供給できるように構成されている。この際、ガスミキサ48および酸素ガス供給源52は、供給管53のできるだけ下流に接続されることが望ましい。
【0016】
上記原料ガス供給手段50において、原料ガスの気化器55は、球状の胴部55aと円筒状の頭部55bを具備して構成され、胴部55aと頭部55bは隔壁56により区画されるとともに、胴部55aと頭部55bは、上記隔壁56を貫通して設けられた針状のニードル管57により連通されている。また、この頭部55bの中には原料溶液タンク60から供給管61を介して原料溶液が供給されるようになっていて、頭部55b内の原料溶液は上記ニードル管57の上端部近傍まで満たされるとともに、上記ニードル管57の上端部は傾斜切断されていて、上記原料溶液がこの傾斜された切断部分から液滴状になって胴部55a側に供給されるようになっている。
なお、図5において符号62は気化器55の頭部55bに接続された流量計、63は流量計62に接続された調整ガスタンク、64はArガス供給源65に接続された流量調整器をそれぞれ示している。
【0017】
さらに、CVD反応装置30の基材導出部36の側方側には、CVD反応装置30内の基材搬送領域Rを通過するテープ状の基材38を巻き取るためのテンションドラム73と巻取ドラム74とからなる基材搬送機構75が設けられている。また、基材導入部34の側部側には、テープ状の基材38をCVD反応装置30に供給するためのテンションドラム76と送出ドラム77とからなる基材搬送機構78が設けられている。
【0018】
ガスミキサ48は、図7に示すように、石英からなる供給管53と略同径の管体とされ、該ガスミキサ48が、ガスの流通する流路の内側にその全周に亘って原料ガスおよび酸素ガス等のガスを混合するための突出部48aを複数有し、また、ガスミキサ48の周囲には、該ガスミキサ48の内部を加熱するための加熱手段としての加熱ヒータ48bが付設されている。この突出部48aは、図7(a)に示すように、矢印Gで示すガス流れ方向に対して、上流から下流に向けて湾曲した状態で管内壁に固定される平板形状とされるか、または、図7(b)に示すように、矢印Gで示すガス流れ方向に対して、流線型とされるいわゆるドロップ形状とすることが可能である。
なお、ガスミキサ48を構成する材料は、石英に限らずステンレス鋼(SUS304),インコネル,ハステロイなどの原料ガス等との反応性の低い材質であっても良い。
【0019】
また、リアクタ31の基材搬送領域R内には原料ガスや酸素ガスなどのガスの流れを測定する流量計(図示略)が取り付けられ、さらに該流量計および上記バルブ70dに制御手段82が電気的に接続されている。この制御手段82は、上記流量計の計測結果に基づいて各バルブ70dを調整し、リアクタ31内を移動中のテープ状の基材38の長さ方向及び幅方向への原料ガスや酸素ガスなどのガスの流れ状態を制御できるとともに、遮断ガス供給手段38Bに接続され、該境界室38に供給される遮断ガスの流れ状態を制御できるようになっている。
さらに、上記制御手段82は酸素ガス流量調整機構54に電気的に接続されることにより、上記基材搬送領域R内の流量計の計測結果に基づいて酸素ガス流量調整機構54を作動調整し、供給管53を介してCVD反応装置30へ送る酸素ガス量も調整できるようになっている。この原料ガス供給手段50においては、CVDユニットA,B,Cごとに独立して原料ガス,酸素ガス等のガス量および流れ状態を制御できることがことが好ましい。
【0020】
次に上記のように構成されたCVD反応装置30を備えたCVDユニットA,B,Cを有する酸化物超電導体の製造装置を用いてテープ状の基材38上に酸化物超電導薄膜を形成し、酸化物超電導体を製造する場合について説明する。
【0021】
図1に示す製造装置を用いて酸化物超電導体を製造するには、まず、テープ状の基材Tと原料溶液を用意する。
この基材Tは、長尺のものを用いることができるが、特に、熱膨張係数の低い耐熱性の金属テープの上面にセラミックス製の中間層を被覆してなるものが好ましい。上記耐熱性の金属テープの構成材料としては、銀、白金、ステンレス鋼
、銅、ハステロイ(C276等)などの金属材料や合金が好ましい。また、上記金属テープ以外では、各種ガラステープあるいはマイカテープなどの各種セラミックスなどからなるテープを用いても良い。
次に、上記中間層を構成する材料は、熱膨張係数が金属よりも酸化物超電導体の熱膨張係数に近い、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SrTiO3 、MgO、Al23、LaAlO3、LaGaO3、YAlO3、ZrO2などのセラミックスが好ましく、これらの中でもできる限り結晶配向性の整ったものを用いることが好ましい。
【0022】
次に酸化物超電導体をCVD反応により生成させるための原料溶液は、酸化物超電導体を構成する各元素の金属錯体を溶媒中に分散させたものが好ましい。具体的には、Y1Ba2Cu37-xなる組成で広く知られるY系の酸化物超電導薄膜を形成する場合は、Ba-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン-ビス-1,10-フェナントロリン(Ba(thd)2(phen)2)と、Y(thd)2 と、Cu(thd)2などを使用することができ、他にはY-ビス-2,2,6,6-テト ラメチル-3,5-ヘプタンジオナート(Y(DPM)3)と、Ba(DPM)2と、 Cu(DPM)2などを用いることができる。
【0023】
なお、酸化物超電導薄膜には、Y系の他に、La2-xBaxCuO4の組成で代 表されるLa系、Bi2Sr2Can-1Cun2n+2(nは自然数)の組成で代表さ れるBi系、Tl2Ba2Can-1Cun2n+2(nは自然数)の組成で代表される Tl系のものなど多種類の超電導薄膜が知られているので、目的の組成に応じた金属錯塩を用いてCVD法を実施すれば良い。
ここで例えば、Y系以外の酸化物超電導薄膜を製造する場合には、必要な組成系に応じて、トリフェニルビスマス(III)、ビス(ジピバロイメタナト)ストロンチウム(II)、ビス(ジピバロイメタナト)カルシウム(II)、トリス(ジピバロイメタナト)ランタン(III)、などの金属錯塩を適宜用いてそれぞれの系の酸化物超電導薄膜の製造に供することができる。
【0024】
上記のようなテープ状の基材Tを用意したならば、これを酸化物超電導体の製造装置内の基材搬送領域Rに基材搬送機構78により基材導入部34から所定の移動速度で送り込むとともに基材搬送機構68の巻取ドラム74で巻き取り、更に反応生成室35内の基材Tを加熱ヒータ47で所定の温度に加熱するとともに、加熱ヒータ48bによりガスミキサ48を所定の温度に加熱する。なお、基材Tを送り込む前に、不活性ガス供給源51Aから不活性ガスをパージガスとしてCVD反応装置30内に送り込むとともに、境界室38内に遮断ガス噴出部38aを介して遮断ガスを送り込み、同時にCVD反応装置30の内部のガスを圧力調整装置72でガス排気孔70a、70aから排気室70、排気口70c,70e,70f、排気管70bを経て抜くことでCVD反応装置30内の空気等の不用ガスを排除して内部を洗浄しておくことが好ましい。
【0025】
基材TをCVD反応装置30内に送り込んだならば、酸素ガス供給源51BからCVD反応装置30の内部に酸素ガスを送り、さらに各原料ガス供給手段50において原料溶液タンク60から原料溶液を気化器55の頭部55bに送るとともに、調整タンク63からキャリアガスとしてArガスを気化器55の頭部55bに送る。同時にCVD反応装置30の内部のガスを圧力調整装置72でガス排気孔70a、70aから排気室70、排気口70c、排気管70bを経て排気する。これにより気化器55の頭部55b内の圧力と胴部55aの圧力に差異を生じさせ、この気圧差により頭部55b内の原料溶液をニードル管57先端部からニードル管57の内部側に引き込むことができ、これにより原料溶液を液滴状に変換することができる。
【0026】
そして、以上の操作により液滴状の原料をキャリアガス中に含ませた原料ガスを生成させることができ、この原料ガスを気化器55の胴部55aから供給管53を介してガス拡散部40に供給する。また、これと同時に酸素ガス供給手段52から酸素ガスを供給して原料ガス中に酸素を混合する操作も行う。
この際、上述の原料ガスと酸素ガスは、供給管53の途中のガスミキサ48内部において、その突起部48aによって撹拌されて均一に混合した状態とされるとともに、直ちに供給管53先端部のスリットノズル53aから、ガス拡散部40に噴出される。
【0027】
次に、CVD反応装置30の内部においては、供給管53の出口部分からガス拡散部40に出た原料ガスが、ガス拡散部40の前面壁42と後面壁43に沿って拡散しながら反応生成室35側に移動し、反応生成室35の内部を通り、次いで基材Tを上下に横切るように移動してガス排気孔70a、70aに引き込まれるように移動させることにより、加熱された基材38の上面側で原料ガスを反応させて反応生成物を堆積させる。
ここで基材T上に反応生成物を堆積させるときに、制御手段82により、ガス排気機構80に設けられた圧力調整装置72でガス排気孔70a、70aから排気室70、排気口70c,70e,70f、排気管70bを経て排気するとともに各バルブ70dを調整して各排気管70b内のガス流れを調整することにより、基材搬送領域Rを移動中のテープ状の基材Tの長さ方向及び幅方向への原料ガスの流れ状態を制御しながらCVD反応を行う。同時に、遮断ガス供給手段38Bにより境界室38に遮断ガスを供給して、ガス排気孔70a、70aから排気室70、排気口70e,70f、排気管70bを経て排気することにより反応生成室35,35どうしの反応ガスの流通を遮断して反応生成室35内における酸素分圧等のガス状態の独立を維持する。
また、CVD反応装置30内で反応が進行する間に、基材搬送領域Rを移動中のテープ状の基材Tの長さ方向及び幅方向への原料ガスや酸素ガスなどのガスの流れ状態が変化して酸化物超電導薄膜に悪影響を与える恐れがでることがあるので、リアクタ31の基材搬送領域R内に設けられた流量計でガスの流量変化を測定し、この測定結果に基づいて制御手段82により各バルブ70dや酸素ガス供給手段52から供給する酸素ガス量を調整し、ガス流れ状態が常に好ましい流れ状態になるように制御し、これによってテープ状の基材Tの長さ方向および幅方向に対し厚さの分布や組成が均一な酸化物超電導薄膜を常に形成することができる。
【0028】
また、CVD反応装置30内で反応が進行する間に、反応生成室35の内部などにおいて堆積物が増加し、この堆積物が加熱により分解反応を起こしてガスを放出すると、反応生成室35内の酸素ガス分圧が目的の分圧と異なるようになることがある。このような場合は、排気管70bを介して排出される排気ガス中の酸素濃度が変わるので、この濃度変化を排気管70bの途中に設けられた酸素濃度計測装置(図示略)で検出し、酸素濃度が低下した場合は、不足分に応じて所定の割合で制御手段82が、CVD反応装置30に送る酸素ガス量を増加させ、酸素濃度が増加した場合は、増加分に応じて所定の割合で制御手段82がCVD反応装置30に送る酸素ガス量を減少させる。このような制御手段82の作用により反応生成室35内の酸素分圧を常に一定に維持することができ、これにより、常に一定の酸素分圧でCVD反応を起こすことができるようになる。従って、テープ状の基材38上に均一の酸化物超電導層を生成できるようになる。
さらに、制御手段82は、CVDユニットA,B,Cごとに酸素分圧を独立に制御して、各反応生成室35内において所定の酸素分圧を維持するように各原料ガス供給手段50を制御する。この際、制御手段82は、例えば各CVDユニットA,B,Cの反応生成室35,35における酸素分圧が、テープ状の基材Tの移動方向の反応生成室35の酸素分圧よりも、テープ状の基材Tの移動方向下流の反応生成室35の酸素分圧が高くなるように各原料ガス供給手段50を制御することが好ましい。
【0029】
本実施形態の酸化物超電導体の製造装置にあっては、リアクタ31に反応生成室35,35がテープ状の基材Tの移動方向に直列に複数設けられているため、複数回のCVD反応を連続して行うことができる。また、これら反応生成室35,35の間に境界室38が設けられ、境界室38に、遮断ガス供給手段38Bにより遮断ガスを供給する構造であるために、反応生成室35,35どうしを遮断して、各反応生成室35,35の内部の反応ガス濃度,酸素分圧等の薄膜形成条件を独立に設定することができるとともに、各原料ガス供給手段50が制御手段82により独立に制御可能とされて、各反応生成室35,35に供給される原料ガス中の酸素分圧が独立に制御可能とされたものであるので、この装置を用いて酸化物超電導体の製造を行うと、リアクタ31内を移動中のテープ状の基材Tに異なる酸素分圧等のCVD条件を維持しながら、複数回のCVD反応を連続して行うことができる。
また、上記構成のガスミキサ48が反応生成室35の直上流に設けられ、かつ該ガスミキサ48の直上流に酸素ガス供給手段52を接続したことにより、原料ガスが輸送中に酸素ガス等と不要な反応をする可能性が少なくなるとともに、反応生成室35内に供給される原料ガスおよび酸素ガスが良く混合され、かつ、その混合状態が不均一になる可能性が少なくなり、反応生成室35内での薄膜形成が不均一になる等悪影響を及ぼすおそれも少なくなる。
【0030】
また、上記構成のガス排気機構80において、ガス排気口70e,70fからが境界室38下方に位置して設けられているため、遮断ガスを排出するとともに、境界室38によって遮断される反応生成室35,35内の未反応ガス等を外に排出し、反応後の残余ガスを基材Tに長い時間触れさせることなく成膜処理できる。
【0031】
従って、本実施形態の酸化物超電導導体の製造装置および製造方法によれば、複数の反応生成室35,35により、連続してCVD反応を行うことができるので、1つの反応生成室のみの製造時に比べて、酸化物超電導薄膜の形成速度の向上と、形成される酸化物超電導薄膜の膜厚の向上を図ることができる。また、ガスミキサ48により反応ガスの供給状態の改善を図り、かつ、境界室38下方の排気口70e,70fにより反応生成室35と境界室38の排ガスをおこなうことで、反応生成室35内に反応に寄与しない不用成分や不用ガスが混入するのを低減できるうえ、反応後の残余ガスをテープ状の基材Tに長い時間触れさせることなく成膜処理でき、しかも基材搬送領域Rを移動中のテープ状の基材38の長さ方向及び幅方向への原料ガスや酸素ガスなどのガスの流れ状態を制御しながらCVD反応を行うことができるので、テープ状の基材Tの長さ方向および幅方向に対し厚さの分布や組成が均一な酸化物超電導薄膜を形成することができ、臨界電流密度等の超電導特性の優れた酸化物超電導体T1を効率よく製造できる。
【0032】
なお、本実施形態の酸化物超電導体の製造装置においては、横長型のリアクタを用い、水平位置に反応生成室を接続する構成の装置について説明したが、リアクタ内を移動中のテープ状の基材のガスの流れ状態を制御できれば、リアクタは横型に限らす縦型であっても良いし、また、原料ガスを流す方向は上下方向に限らす左右方向や斜めの方向でも良く、基材の搬送方向も左右方向あるいは上下方向のいずれでも良いのは勿論である。また、リアクタ自体の形状も筒型のものに限らず、ボックス型や容器型、球形連続型などのいずれの形状でも差し支えないのは勿論である。
本発明の酸化物超電導体の製造装置は、酸化物超電導導体の製造装置に好適 に用いることができる。また、本発明の酸化物超電導体の製造方法は、酸化物超電導導体の製造方法に好適に用いることができる。
【0033】
以下、本発明に係る酸化物超電導導体の製造装置および製造方法の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0034】
図8に示す本実施形態において、図1ないし図7に示す第1実施形態と異なるところは、原料ガス供給手段50´において、液体原料供給装置100が、図8に示すように、筒状の原料溶液供給部102と、該供給部102の外周を取り囲んで設けられた筒状で先細り状のアトマイズガス供給部103と、該アトマイズガス供給部103の先端部を除いた外周を取り囲んで設けられた筒状のシールドガス供給部104とから概略構成された3重構造のものであり、気化器130の外側に、ヒータ131が設けられた点である。
【0035】
原料溶液供給部102は、図8に示すように、後述する原液供給装置120から送り込まれてくる液体原料111が内部に供給されるものであり、中央部には供給された液体原料111を一時的に貯留するため液だまり105が設けられている。この液だまり105の内径は、原料溶液供給部102の上部や下部の毛細管102aの内径よりも大きくなっており、原液供給装置120から送り込まれた液体原料111がたまりつつ連続的に先端に送り込まれる。また、液だまり105の上部には分岐管105aが設けられ、該分岐管105aには、充填ガス用MFC(流量調整器)105cを介して充填ガス供給源105bが接続され、液だまり105内に充填ガスを供給する。ここで、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの充填ガスを供給することで、液だまり105内の圧力はほぼ大気圧に近い状態に保たれるようになっている。
【0036】
アトマイズガス供給部103は、図8に示すように、原料溶液供給部102との隙間に前述の液体原料11を霧化するためのアトマイズガスが供給されるものである。ここで用いられるアトマイズガスは、例えばアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどである。さらに、アトマイズガス供給部103の上部には、アトマイズガス用MFC103bを介してアトマイズガス供給源103aが接続され、アトマイズガス供給部103内にアトマイズガスを供給可能とされている。そして、この例の液体原料供給装置100では、アトマイズガス供給部103の先端部と原料溶液供給部102の先端部とからノズル106が構成されている。
【0037】
シールドガス供給部104は、図8に示すように、アトマイズガス供給部103との隙間にシールドガスを供給するものであり、このシールドガスの供給により前記アトマイズガス供給部103を冷却するとともにノズル106をシールドするためのものである。ここで、シールドガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどが適用される。また、シールドガス供給部104の中央部より下方の部分には、外方に突出するテーパ部107が設けられており、また、シールドガス供給部104の上部には、シールドガス用MFC104bを介してシールドガス供給源104aが接続されて、シールドガス供給部104内にシールドガスを供給できるように構成されている。
【0038】
前記構成の液体原料供給装置100においては、アトマイズガスをアトマイズガス供給部103に一定流量で送りこむとともに液体原料111を原料溶液供給部102内に一定流量で送り込むと、液体原料111は液だまり105にたまりつつ原料溶液供給部102の先端に達し、かつ、該先端の外側のアトマイズガス供給部103の先端からアトマイズガスが流れてくることにより、ノズル106の先端部分において、液体原料111は噴出時に前記アトマイズガスにより直ちに霧化され、一定量のミスト状の液体原料111が、気化器130内に連続的に供給できる。
ノズル106の先端部分である気化器130内は、数Torr〜数10Torr程度に減圧されており、液だまり105には分岐管105aから充填ガスが供給されているので、この液だまり105内の圧力はほぼ大気圧に近い状態に保たれ、液体原料111が液だまり105内や毛細管102a内で気化するのを防止できる。
また、ノズル106の外側で、かつ上方のシールドガス供給部104の先端からシールドガスが流れてくることにより、該シールドガスによりノズル106の周囲がシールドされ、気化器130内で液体原料111が気化した原料ガスがノズル106に付着して固体原料となって再析出するのを防止できる。
【0039】
このような液体原料供給装置100の原料溶液供給部102には、図8に示すように、原液供給装置120が液体原料用MFC121aを備えた接続管121を介して接続されている。この接続管121は、内面がフッ素樹脂でコートされたパイプなどの耐薬品性に優れたものが使用される。
原液供給装置120は、収納容器122と、加圧源123を具備し、収納容器122の内部には液体原料111が収納されている。収納容器122は、ガラス瓶などの耐薬品性に優れたものが使用される。前記加圧源123は、収納容器122内にHeガスなどを供給することにより収納容器122内を加圧して、収納容器22内の液体原料111を接続管121に一定流量で排出可能とする。
【0040】
収納容器122に収納されている液体原料111は、第1実施形態における図6の原料溶液タンク60に収納されているものと同様のものとされる。
【0041】
液体原料供給装置100の下方には、図8に示すように、容器状の気化器130が配設されており、液体原料供給装置100の中央部から先端部が該気化器130内に収納されて液体原料供給装置100と気化器130とが接続されている。
この気化器130の外周部には、気化器130の内部を加熱するためのヒータ131が付設されていて、このヒータ131により前記ノズル106から噴霧されたミスト状の液体原料111を所望の温度に加熱して気化させ、原料ガスが得られるようになっている。この気化器130は、供給管53およびガスミキサ48を介してリアクタ30に接続されている。
【0042】
次に、前記のように構成された原料ガス供給手段50´を備えた酸化物超電導導体の製造装置を用いて液体原料111を気化させた原料ガスを反応生成室35に送り、該反応生成室35においてテープ状の基材T上に酸化物超電導薄膜を形成し、酸化物超電導導体を製造する。
【0043】
液体原料111を収納容器22に満たし、加圧源123ならびにMFC121aにより収納容器122から液体原料111を流量0.1〜1.0ccm程度で原料溶液供給部102内に送液し、これと同時にアトマイズガスをアトマイズガス供給部103に流量200〜300ccm程度で送り込むとともにシールドガスをシールドガス供給部104に流量200〜300ccm程度で送り込む。この際、シールドガスの温度は、室温程度になるように調節しておく。また、気化器130の内部温度が前記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるようにヒータ131により調節しておく。
【0044】
すると、液体原料111は液だまり105にたまりつつ原料溶液供給部102の先端に達し、この後、ノズル106から吹き出る際、アトマイズガス供給部103から流れてくるアトマイズガスにより直ちに霧化されるので、一定流量のミスト状の液体原料111が気化器130内に連続的に供給される。そして、気化器130の内部に供給されたミスト状の液体原料111は、ヒータ131により加熱されて気化し、原料ガスとなり、さらにこの原料ガスは供給管53を介してガス拡散部40に連続的に供給される。この時、供給管53の内部温度が前記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるように前記加熱手段により調節しておく。また、この時、酸素ガス供給源54から酸素ガスを供給してガスミキサ48により原料ガスと酸素ガスとを混合する操作も行う。
【0045】
以後、CVD反応装置30における酸化物超電導導体の製造を第1実施形態と同様におこなう。
【0046】
本実施形態においては、前述の構成の液体原料供給装置100が備えられたものであるので、液体原料111を原料溶液供給部102内に一定流量で送り込むとともにアトマイズガスをアトマイズガス供給部103に一定流量で送りこむと、液体原料11は液だまり105にたまりつつ原料溶液供給部102の先端に達し、ノズル106から吹き出る際、アトマイズガス供給部103から流れてくるアトマイズガスにより直ちに霧化されるので、一定量のミスト状の液体原料111を気化器130内に連続的に供給することができる。また、気化器130内は、数Torr〜数10Torr程度に減圧されているが、液だまり105には分岐管105aから充填ガスが供給されているので、この液だまり105内の圧力はほぼ大気圧に近い状態に保たれ、液体原料111が液だまり105内や毛細管102a内で気化するのを防止できる。また、前記シールドガスによりノズル106の周囲がシールドされているので、気化器130内で原料ガスがノズル106に付着して液体原料111となって析出するのを防止できる。
【0047】
従って、本実施形態の酸化物超電導導体の製造装置によれば、第1実施形態と同様の効果を呈する上に、一定量のミスト状の液体原料111を気化器130内に連続的に安定して供給することができるので、この液体原料111が気化した原料ガスも反応生成室35に一定量連続的に供給することができ、反応生成室35の圧力や温度が変動しにくくなり、テープ状の基材Tの長さ方向に対して膜質や超電導特性の安定した良好な酸化物超電導薄膜を形成することができる。
また、前記製造装置によれば、気化器130内に供給される液体原料111がミスト状のものであるので、気化効率が向上するので、さらに液体原料111の供給速度を速くすることができ、成膜効率が向上するという利点がある。
【0048】
以下、本発明に係る酸化物超電導導体の製造装置および製造方法の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0049】
図9に示す本実施形態において、図1ないし図7に示す第1実施形態と異なるところは、原料ガス供給手段50”において、原料溶液供給装置230は、図8に示す第2実施形態における液体原料供給装置100において分岐管105a,充填ガス用MFC(流量調整器)105c,充填ガス供給源105bが接続されない以外は略同様の構成とされ、原料溶液気化装置250が設けられた点である。
【0050】
前記構成の原料溶液供給装置230では、原料溶液111を原料溶液供給部102内に一定流量で送り込むとともにアトマイズガスをアトマイズガス供給部103に一定流量で送りこむと、原料溶液111は液だまり105に溜まりつつ原料溶液供給部102の先端に達するが、該先端の外側のアトマイズガス供給部103の先端からアトマイズガスが流れてくるので、ノズル106の吹き出し口237aから吹き出る際、原料溶液111は前記アトマイズガスにより直ちに霧化され、一定量のミスト状の原料を原料溶液気化装置250の気化器本体251内に連続的に供給することができるようになっている。
また、これとともにシールドガスをシールドガス供給部104に一定流量で送り込むと、アトマイズガス供給部103ならびに原料溶液供給部102が冷却されるので該原料溶液供給部102内を流れる原料溶液111も冷却され、該原料溶液111が途中で気化するのを防止できるようになっている。さらにまた、ノズル106の外側で、かつ上方のシールドガス供給部104の先端からシールドガスが流れてくるので、該シールドガスによりノズル106の周囲がシールドされ、CVD用原料溶液気化装置内で原料溶液111が気化した原料ガスがノズル106に付着して固体原料となって再析出するのを防止できるようになっている。
【0051】
このような原料溶液供給装置230の原料溶液供給部102には、原液供給装置120が接続されている。
一方、原料溶液供給装置230の下方には原料溶液気化装置250が配設されている。
この原料溶液気化装置250は、図9に示すように、容器状の気化器本体251を備ている。この気化器本体251の上部には取り付け口252が形成されており、この取り付け口252から原料溶液供給装置230の中央部から先端部のノズル106にかけて気化器本体251内に収納されて、原料溶液供給装置230の吹き出し口237aからミスト状の原料溶液111が気化器本体251内に噴霧されるようになっている。
【0052】
この気化器本体251の外部には、図9に示すように、気化器本体251の内部を加熱するための第一の加熱手段としてヒータ253が付設されている。
また、気化器本体251内に配設された原料溶液供給装置230の吹き出し口237aの前方で、気化器本体251の中央には、第二の加熱手段254が配設されている。第二の加熱手段254は、吹き出し口237aから噴霧されたミスト状の原料溶液111を気化させるためのものであり、熱容量の大きい多数の塊254aの集合体からなり、その材質としては、原料溶液111に対して不活性であり、しかも酸化や熱に対して安定な金属やセラミックスなどが用いられ、例えば、ステンレス鋼球、ハステロイ球、Ag球、Au球、アルミナ球を用いることができるが、この中でも低コストの点からステンレス鋼球を用いるのが好ましい。
塊254aの形状としては、特に限定されず、球状以外に、四角ブロック状や柱状、錐状などであってもよい。塊254aの大きさは、球状である場合、径1〜5mm程度とされる。
【0053】
この第二の加熱手段254は、熱容量が大きいものであるので、前述のヒータ253により気化器本体251内が原料溶液111の気化温度以上の一定温度に加熱されると、該第二の加熱手段254も原料溶液111の気化温度以上の一定温度に加熱されるので、原料溶液供給装置230の吹き出し口237aからミスト状の原料溶液111を噴霧されると、ミスト状の原料溶液111が第二の加熱手段253に接触して直ちに気化し、原料ガスが得られる。
このような第二の加熱手段254が、気化器本体51内に配設されていないと、気化器本体251内に供給するミスト状の原料溶液111の供給速度を速くした場合、原料溶液111を十分に気化させることができず、気化効率をあまり向上させることができないだけでなく、長時間に渡って良好な酸化物超電導薄膜を成膜することが困難である。
【0054】
前記多数の塊254aは、受け皿255に収容されている。この受け皿255は、原料溶液111がこれら多数の塊254aに接触して得られた原料ガスが透過し、効率よくCVD反応装置30に供給できるようにするために、網目状であることが好ましい。この受け皿2255の材質としては、原料溶液111に対して不活性であり、しかも酸化や熱に対して安定な金属が用いられる。
【0055】
また、気化器本体251の取り付け口252には、図9に示すように、気化器本体251内に配設された原料溶液供給装置230の吹き出し口237aに原料ガスが到達するのを防止するカバー256が設けられている。このカバー256は、外方に広がる先端部を有した管状のものであり、気化器本体251内に配設された原料溶液供給装置230の中央部および先端部の周囲を取り囲んでいる。このカバー256の材質としては、原料溶液111に対して不活性であり、しかも酸化や熱に対して安定な金属が用いられる。
本実施形態では、気化器本体251から原料ガスをCVD反応装置30に取り出す取り出し口が小さいため、気化器本体251内では図9の矢印で示すような原料ガス等の循環渦が形成されていると考えられるが、前述のようなカーバー256が設けられていないと、原料ガスの循環渦が吹き出し口237aに付着して固体原料となって再析出してしまう恐れがある。
このような原料溶液気化装置250は、供給管257を介してCVD反応装置30に接続されている。
この輸送管257の周囲には、図9に示すように、原料ガスが原料溶液111となって析出するのを防止するためのヒータ257aが設けられている。なお、供給管257の途中部分には、酸素ガス供給源54が分岐接続され、供給管257内に酸素ガスを供給するとともに、ガスミキサ48が接続されて、原料ガスおよび酸素ガスを混合できるように構成されている。
【0056】
本実施形態のように構成された原料溶液気化装置250を備えた酸化物超電導導体の製造装置を用いて原料溶液111を気化させた原料ガスを反応生成室35に送り、第1実施形態と同様にして反応生成室35においてテープ状の基材T上に酸化物超電導薄膜を形成し、酸化物超電導導体を製造する。
【0057】
加圧源123ならびにMFC121aにより収納容器122から原料溶液111を流量0.1〜1.0ccm程度で原料溶液供給部102内に送液し、これと同時にアトマイズガスをアトマイズガス供給部103に流量200〜300ccm程度で送り込むとともにシールドガスをシールドガス供給部104に流量200〜300cc程度で送り込む。この際、シールドガスの温度は、室温程度になるように調節しておく。また、原料溶液気化装置250の気化器本体251の内部温度が前記原料のうちの最も気化温度の高い原料の気化に適した200〜300℃程度の範囲内の一定温度になるようにヒータ253により調節することにより、第二の加熱手段54も最も気化温度の高い原料の気化に適した200〜300℃程度の範囲内の一定温度に加熱する。
【0058】
すると、原料溶液111は液だまり105に溜まりつつ原料溶液供給部102の先端に達し、この後、吹き出し口237aから吹き出る際、アトマイズガス供給部103から流れてくるアトマイズガスにより直ちに霧化されるので、一定流量のミスト状の原料溶液111が気化器本体251内に連続的に供給される。そして、吹き出し口237aから気化器本体251内に噴霧されたミスト状の原料溶液111は第二の加熱手段254に接触して直ちに気化し、原料ガスが得られる。さらにこの原料ガスは供給管257を介してガス拡散部40に連続的に供給される。この時、供給管257の内部温度が前記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるようにヒータ257aにより調節しておくとともにガスミキサ48を同様に前記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるように過滅ヒータ48bにより調節しておく。さらに、酸素ガス供給源54から酸素ガスを供給してガスミキサ48により原料ガスと酸素ガスとを混合する操作もおこなう。
【0059】
次に、第1実施形態と同様にして、加熱されたテープ状の基材Tの上面側で原料ガスを反応させて酸化物超電導薄膜を生成させることができる。
以上の成膜操作を所定時間継続して行なうことにより、基材T上に所望の厚さの膜質の安定した酸化物超電導薄膜を備えた酸化物超電導導体T1を得ることができる。
【0060】
本実施形態においては、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、前述の構成の原料溶液気化装置(原料気化手段)250が備えられているので、独立した原料溶液供給装置(原料供給手段)230の吹き出し口237aからミスト状の原料溶液234を供給量を制御しながら気化器本体251内に送り込むことで、順次原料溶液234を気化させることができるため、酸化物超電導薄膜の成膜速度制御が容易で、長時間に渡って良好な酸化物超電導薄膜を成膜することができる。
また、原料溶液気化装置250にあっては、気化器本体251の外部に気化器本体51内を加熱するためのヒータ253が設けられ、かつ、気化器本体251内に配設された原料溶液供給装置230の吹き出し口237aの前方に第二の加熱手段254が設けられたことにより、ヒータ253により気化器本体251内が原料溶液111の気化温度以上の一定温度に加熱すると、該第二の加熱手段254も原料溶液111の気化温度以上の一定温度に加熱することができるので、原料溶液供給装置230の吹き出し口237aからミスト状の原料溶液111が噴霧されると、ミスト状の原料溶液111が第二の加熱手段253に接触して直ちに気化するので、気化効率が向上し、従って、従来より原料溶液111の供給速度を速くしても、原料溶液111を十分気化させることができるので、酸化物超電導薄膜の成膜効率を向上させることができる。
さらに、この原料溶液気化装置250にあっては、酸化物超電導導体の製造装置に備えられると、前述のように原料溶液111を十分気化させることができるので、気化器本体251内に一定量のミスト状の原料溶液111を連続的に供給することによって、原料ガスも反応生成室35に一定量連続的に供給することができるので、反応生成室35の反応圧力や温度等の条件が変動しにくくなり、テープ状の基材Tの長さ方向に対して膜質や超電導特性の安定した良好な酸化物超電導薄膜を形成することができる。
また、この原料溶液気化装置250にあっては、気化器本体251の取り付け口252にカバー256が設けられたことにより、原料溶液供給装置230の吹き出し口237aに原料ガスが到達するのを防止でき、よって原料ガスの循環渦がノズル237に付着して固体原料となって再析出することがなく、吹き出し口237aに液づまり等が発生することを防止することができ、長時間に渡って連続蒸着が可能である。
また、気化器本体251内に原料溶液を供給する原料溶液手段として前述の構成の原料溶液供給装置230を用いたことにより、ミスト状の原料溶液111を供給量を制御しながら気化器本体251内に送り込むことが可能で、一定量のミスト状の原料溶液234を連続的に供給することができる。
【0061】
以下、本発明に係る酸化物超電導導体の製造装置および製造方法の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0062】
図10に示す本実施形態において、図1ないし図7に示す第1実施形態と異なるところは、CVD反応装置30において、リアクタ30が筒形ではなく立方体形状とされ、かつ、ガス拡散部40にシャワーノズル45aが設けられた点である。
【0063】
反応生成室35の天井部には、図10に示すように、第1実施形態と同様に末広がり状の角錐台型のガス拡散部40が取り付けられている。
ガス拡散部40は、図10に示すように、台形型の側壁41,41と、前面壁42および後面壁43と、天井壁44とからなるガス拡散部材45を主体として構成され、更に少なくとも2以上の原料ガス噴出口45b…を有する板状のシャワーノズル45aと、天井壁44に接続された供給管53とを具備して構成されている。なおまた、ガス拡散部材45の底面は、細長い長方形状の開口部46とされ、この開口部46を介してガス拡散部材45が反応生成室35に連通されている。
シャワーノズル45aは、図10においては、板に多数の原料ガス噴出口45bが設けられたものであり、シャワーノズル45aの4つの辺と、側壁41、41、前面壁42及び後面壁43とが当接して、ガス拡散部材45の天井壁44から反応生成室35に至る間の任意の位置に固定されている。また、シャワーノズル45aは、2以上の原料ガス噴出口45bを有するものであれば、上述のものに限るものではない。例えば、多数の線材を一定の間隔をあけて縦横に組み上げた係合部材であっても良い。
【0064】
次に本実施形態のCVD反応装置30を用いてテープ状の基材T上に薄膜を形成する際に、原料ガス供給手段50等においては、第1実施形態と同様に運転をする。
CVD反応装置30の内部においては、供給管53の出口部分からガス拡散部40に出た原料ガスが、ガス拡散部40の天井壁44と前面壁42と後面壁43に沿って拡散しながら反応生成室35側に移動してシャワーノズル45aに達する。シャワーノズル45aは、前述のように、天井壁44から反応生成室35に至る間の任意の位置において側壁41、41、前面壁42及び後面壁43と当接して固定されているので、供給管53から移動してきた原料ガスは、シャワーノズル45aの全面に設けられた多数の原料ガス噴出口45bを通過する。このとき原料ガスは、シャワーノズル45aの全面に渡って強制的に拡散されるので、一点集中型のスリットノズルの場合に比べて原料ガスが広い範囲に渡って均一に拡散する。シャワーノズル45aを通過した原料ガスは、ガス拡散部40の前面壁42と後面壁43に沿って更に拡散しながら反応生成室35の内部を通り、次いで基材35を上下に横切るように移動してガス排気孔70a、70aに引き込まれるように移動させることにより、加熱されたテープ状の基材Tの上面側で原料ガスを反応させて反応生成物を堆積させる。
【0065】
本実施形態のCVD反応装置30においては、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、ガス拡散部40に設けられたシャワーノズル45aにより原料ガスが反応生成室35内の広い範囲に渡って均一に拡散されて、この拡散された原料ガスがテープ状の基材Tの上面側で反応して反応生成物が堆積するので、テープ状の基材Tの幅方向に対して均一な厚みと組成を有する薄膜を形成させることができる。
また、原料ガスが反応生成室35内の広い範囲に渡って均一に拡散して、反応生成室35内にあるテープ状の基材Tの上面側の全範囲において反応するために、広い範囲に渡って薄膜が生成させることができると共に、原料ガスの反応効率が高くなるので、薄膜の生成速度を向上させることができる。
【0066】
以下、本発明に係る酸化物超電導導体の製造装置および製造方法の第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0067】
図11ないし図12に示す本実施形態において、図10に示す第4実施形態と異なるところは、CVD反応装置30のガス拡散部40に、シャワーノズル45aを加熱して所定の温度に保つための恒温機構90が備えられている点である。
【0068】
図11及び図12に示す恒温機構90は、加熱した液状の媒体をシャワーノズル45aの近傍に循環させて、媒体の熱をシャワーノズル45aに伝導させてシャワーノズル45aを所定の温度に加熱するものであり、媒体を加熱して循環させる加熱循環装置91と、加熱した媒体をシャワーノズル45aの近傍に送る送り管92と、シャワーノズル45aの上面に接してシャワーノズル45aに送り管92より送られた媒体の熱を伝導させてシャワーノズル45aを加熱する熱交換器94と、熱交換器94を通過した媒体を加熱循環装置91に送る戻り管93とから構成されている。
熱交換器94には、原料ガス通過孔94aが設けられている。この原料ガス通過孔94aは、シャワーノズル45aのそれぞれの原料ガス噴出口45b…と連通するように設けられており、供給管53から供給された原料ガスが、熱交換器94とシャワーノズル45aを通過して反応生成室35に供給できるようになっている。
【0069】
媒体は、液体若しくは気体であればどのようなものであっても良く、例えばシリコンオイル、水(水蒸気を含む)等が適用される。
ここで、恒温機構90により加熱されるシャワーノズル45aの温度は、前記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になる温度と同等程度かそれ以下に設定される。
【0070】
上述のCVD反応装置30によれば、恒温機構90によりシャワーノズル45aが所定の温度まで加熱されるので、原料ガス噴出口45b…において原料ガスが反応して堆積することがなく、原料ガス噴出口45b…の目詰まりが防止されるので、原料ガスを反応生成室35に向けて安定して供給することができる。
なお、恒温機構90は上述のものに限られるものではなく、シャワーノズル45aを加熱できるものであればどのような手段であっても良く、例えば、媒体による加熱に代えて、抵抗体に電流を流して得られるジュール熱による手段であっても良い。
【0071】
【実施例】
以下、本発明を、実施例および比較例により、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例)
1Ba2Cu37-xなる組成で知られるY系の酸化物超電導薄膜を形成するために、CVD用の原料溶液としてBa-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタ ンジオン-ビス-1,10-フェナントロリン(Ba(thd)2(phen)2)と、 Y(thd)2と、Cu(thd)2を用いた。これらの各々をY:Ba:Cu=1.0:1.9:2.7のモル比で混合し、テトラヒドロフラン(THF)の溶媒中に3.0重量%になるように添加したものを原料溶液とした。
【0072】
基材テープはNi合金の1種であるハステロイC276(米国、Haynes Stellite Co.の商品名で、Cr14.5〜16.5%、Mo15.0〜17.0%、Co 2.5%以下、W3.0〜4.5%、Fe4.0〜7.0%、C0.02%以下、Mn1.0%以下、残部Niの組成)からなる長さ100mm、幅10mm、厚さ0.2mmのハステロイテープを鏡面加工し、このハステロイテープの上面にイオンビームアシストスパッタリング法により厚さ0.5μmのYSZ(Y23安定化 ジルコニア)面内配向中間膜を形成したものを用いた。
【0073】
次に、図2〜図7に示す構造の石英製のCVD反応装置30に3段階の反応生成室35を有するようにCVDユニットA,B,Cを図1に示す酸化物超電導体の製造装置に組み込んだ装置を用いて、以下の条件により反応生成室35内の酸素分圧を酸素濃度計測装置で一定になるように独立に制御し、リアクタ31内のガスをガス排気機構80の排気口70cから排気するとともに各バルブ70dを調整して基材搬送領域Rを移動中の基材テープTの長さ方向及び幅方向への原料ガスの流れ状態を制御することにより連続蒸着を行い、イオンビームアシストスパッタ法を用いてYSZ面内配向中間膜上に長さ30cm幅1cmのY1Ba2Cu37-xなる組成の酸化物超電導薄膜を形成した。
ガス気化器の温度;230℃
原料溶液の供給速度;0.2ml/分
CVD反応装置内の基材テープの移動速度;1m/時間
基材テープ加熱温度;800℃
リアクタ31内の圧力;5Toor
酸素ガス供給源からの酸素ガス流量;45〜55ccm
CVDユニットA酸素分圧;1.5Torr
CVDユニットB酸素分圧;1.6Torr
CVDユニットC酸素分圧;1.7Torr
【0074】
(比較例1)
実施例と同様の条件で、酸素分圧のみを以下の条件に設定して同様の酸化物超電導導体薄膜を形成した。
CVDユニットA酸素分圧;1.5Torr
CVDユニットB酸素分圧;1.5Torr
CVDユニットC酸素分圧;1.5Torr
【0075】
(比較例2)
比較例1と同様に酸素分圧を以下の条件に設定し、1段階の反応生成室35のみを用いて酸化物超電導導体薄膜を形成した。
CVDユニット酸素分圧;1.5Torr
【0076】
(比較例3)
実施例と同様の条件に設定し、図2〜図7に示す構造の石英製のCVD反応装置30において、ガスミキサ48を設けない装置を用いて酸化物超電導導体薄膜を形成した。
【0077】
(比較例4)
実施例と同様の条件に設定し、図2〜図7に示す構造の石英製のCVD反応装置30において、遮断ガス供給手段38Bを作動させない装置を用いて酸化物超電導導体薄膜を形成した。
【0078】
上記実施例で得られた酸化物超電導導体と、比較例1ないし比較例4で得られた酸化物超電導導体において、酸化物超電導薄膜を積層した表面に厚さ10μmのAg安定化層をスパッタ形成し、該Ag安定化層の表面にAgの電極を形成し、Agコーティング後に純酸素雰囲気中にて500℃で2時間熱処理を施して測定資料とし、以下の条件で測定実験を行った。
外部磁場:0T
温度:77K
【0079】
実施例および比較例1ないし比較例4で得られた酸化物超電導体の酸化物超電導薄膜の厚さおよび臨界電流値を測定した結果を以下に示す。
Figure 0003741860
ここで、Icは臨界電流値、Jcは臨界電流密度である。
【0080】
上記の結果から、3つの反応生成室内部の酸素分圧を独立に制御して3段階に酸素分圧を上昇することにより、1つの反応生成室で形成した場合に比べて3倍の膜厚と3倍の臨界電流値Icを得た。一方、3つの反応生成室内部の酸素分圧を同等に設定した場合には、1つの反応生成室で形成した場合に比べて3倍の膜厚を得たが約1.5倍の臨界電流値Icを得るに留まった。
また、ガスミキサにより原料ガスと酸素ガスとを混合して反応生成室に供給した場合には、ガスミキサのない場合に比べ、厚さ1.1倍,JC 1.4倍となることがわかった。
また、遮断ガス供給手段により遮断ガスを境界室に供給して、各反応生成室のガス条件を厳密に独立状態とした場合には、遮断ガスのない場合に比べて、厚さ1.5倍,JC 1.6倍となることがわかった。
【0081】
以上のことから、複数の反応生成室を直列にn段設け(nは自然数)、連続してCVD反応を行うことで、1つの反応生成室のみの製造時に比べて、n倍の酸化物超電導薄膜の形成速度と、n倍の酸化物超電導薄膜の膜厚を得ることができる。
また、ガスミキサにより反応ガスの供給状態の改善を図り、かつ、境界室下方の排気口により反応生成室と境界室の排ガスをおこなうことで、反応生成室内における原料ガスや酸素ガスなどのガスの状態を独立に制御しながらCVD反応を行うことができるので、テープ状の基材厚さの分布や組成が均一な酸化物超電導薄膜を形成することができ、臨界電流密度等の超電導特性の優れた酸化物超電導体を効率よく製造できることがわかる。
【0082】
【発明の効果】
本発明の酸化物超電導導体の製造装置および製造方法によれば、以下の効果を奏する。
(1)複数の反応生成室を直列に並べ、各反応生成室内の原料ガス濃度および酸素分圧等のガス条件を独立に制御可能とすることにより、酸化物超電導薄膜の形成速度の向上と、形成される酸化物超電導薄膜の膜厚の向上を図ることができる。
(2)ガスミキサにより、原料ガスと酸素ガスとの混合状態を向上すること、および、境界室に遮断ガスを供給して、核反応生成室間のガス状態の干渉を排除することにより、反応ガスの供給状態の改善を図ることができる。
(3)上記の反応ガスの供給状態の改善により、厚さの分布や組成が均一な酸化物超電導薄膜を形成することができる。
(4)上記により、超電導特性の優れた酸化物超電導体を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における酸化物超電導導体の製造装置および製造方法の第1実施形態の酸化物超電導体の製造装置の全体構成を示す図である。
【図2】 図1の酸化物超電導体の製造装置に備えられたCVD反応装置の構造例を示す斜視図である。
【図3】 図2に示すCVD反応装置の詳細構造を示す側断面図である。
【図4】 図2に示すCVD反応装置の詳細構造を示す正断面図である。
【図5】 図2に示すCVD反応装置の詳細構造を示す平面図である。
【図6】 図1に示す原料ガス供給手段および反応生成室を示す図である。
【図7】 図1に示すガスミキサを示す断面図である。
【図8】 本発明の第2実施形態の酸化物超電導体の製造装置における原料ガス供給手段および反応生成室を示す図である。
【図9】 本発明の第3実施形態の酸化物超電導体の製造装置における原料ガス供給手段および反応生成室を示す図である。
【図10】 本発明の第4実施形態の酸化物超電導体の製造装置における反応生成室およびシャワーノズルの詳細構造を示す斜視図である。
【図11】 本発明の第5実施形態の酸化物超電導体の製造装置における反応生成室,シャワーノズルおよび恒温機構を示す図である。
【図12】 図11に示す反応生成室,シャワーノズルおよび恒温機構を示す正断面図である。
【図13】 従来のCVD反応装置を用いてチップ状の基材の表面に薄膜を形成する方法の例を示す図である。
【図14】 従来のCVD反応装置を用いてチップ状の基材の表面に薄膜を形成する方法のその他の例を示す図である。
【図15】 長尺の基材の表面に酸化物超電導薄膜を形成する従来のCVD反応装置の詳細構造を示す断面図である。
【図16】 図15のCVD反応装置の詳細構造を示す平面図である。
【符号の説明】
A,B,C…CVDユニット、T…基材、30…CVD反応装置、31…リアクタ、38…境界室、38B…遮断ガス供給手段、48…ガスミキサ、50…原料ガス供給手段、52…酸素ガス供給手段、54…酸素ガス流量調整機構、70b…排気管、70c,70e,70f…排気口、70d…バルブ(流量調整機構)、71…真空ポンプ、72…圧力調整装置、80…ガス排気機構、82…制御手段、T1…酸化物超電導体。

Claims (6)

  1. 酸化物超電導体の原料ガスを移動中のテープ状の基材表面に化学反応させて酸化物超電導薄膜を堆積させるCVD反応を行うリアクタと、該リアクタに原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、上記リアクタ内のガスを排気するガス排気手段と、これらを制御する制御手段とが備えられてなる酸化物超電導体の製造装置において、
    前記リアクタは、基材導入部と反応生成室と基材導出部とにそれぞれ隔壁を介して区画され、該反応生成室がテープ状の基材の移動方向に直列に複数設けれられて、これら反応生成室の間に隔壁を介して境界室が設けられ、各隔壁に基材通過孔が形成され、前記リアクタの内部に基材導入部と反応生成室と境界室と基材導出部とを通過する基材搬送領域が形成されるとともに、
    前記原料ガス供給手段が、原料ガス供給源と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段とを具備して、リアクタの各反応生成室ごとに設けられ、
    前記境界室には、両側の反応生成室どうしを遮断するための遮断ガスを供給する遮断ガス供給手段が接続され、
    前記ガス排気手段が、ガスの排気量を調整するための流量調整機構がそれぞれ設けられた複数本の排気管と、前記テープ状の基材の長さ方向および幅方向に沿って前記リアクタに設けられた前記複数本の排気管の排気口とを有し、前記排気口が、前記基材導入部と前記反応生成室とを区画する隔壁の上流側および前記反応生成室と前記基材導出部とを区画する隔壁の下流側、前記境界室の両側の隔壁に亘って位置し、
    前記制御手段により前記リアクタ内を移動中の前記テープ状の基材の長さ方向及び幅方向へのガスの流れ状態を制御可能な構成とされることを特徴とする酸化物超電導導体の製造装置。
  2. 前記原料ガス供給手段には、リアクタの直上流側に設けられ原料ガスと酸素ガスとを混合するガスミキサを具備するものとされることを特徴とする請求項1記載の酸化物超電導導体の製造装置。
  3. 各原料ガス供給手段が制御手段により独立に制御可能とされて、各反応生成室に供給される原料ガス中の酸素分圧が独立に制御可能とされることを特徴とする請求項1記載の酸化物超電導導体の製造装置。
  4. 請求項1記載の製造装置を用いて酸化物超電導体を製造するに際し、遮断ガス供給手段により、境界室に両側の反応生成室どうしを遮断するための遮断ガスを供給し、各反応生成室を独立した雰囲気として製造することを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。
  5. 各原料ガス供給手段が制御手段により独立に制御可能とされて、各反応生成室に供給される原料ガス中の酸素分圧が独立に制御可能とされることを特徴とする請求項4記載の酸化物超電導導体の製造方法。
  6. 酸化物超電導体の原料ガスを移動中のテープ状の基材表面に化学反応させて酸化物超電導薄膜を堆積させるCVD反応を行うリアクタと、該リアクタに原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、上記リアクタ内のガスを排気するガス排気手段と、これらを制御する制御手段とが備えられてなる酸化物超電導体の製造装置において、
    前記リアクタは、基材導入部と反応生成室と基材導出部とにそれぞれ隔壁を介して区画され、該反応生成室がテープ状の基材の移動方向に直列に複数設けれられて、これら反応生成室の間に境界室が設けられ、各隔壁に基材通過孔が形成され、前記リアクタの内部に基材導入部と反応生成室と境界室と基材導出部とを通過する基材搬送領域が形成されるとともに、
    前記原料ガス供給手段が、原料ガス供給源と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段とを具備して、リアクタの各反応生成室ごとに設けられ、
    前記境界室には、両側の反応生成室どうしを遮断するための遮断ガスを供給する遮断ガス供給手段が接続され、前記制御手段により前記リアクタ内のガスの流れ状態を制御可能な構成とされる酸化物超電導導体の製造装置を用いて酸化物超電導体を製造するに際し、
    前記遮断ガス供給手段により、境界室に両側の反応生成室どうしを遮断するための遮断ガスを供給し、各反応生成室を独立した雰囲気として製造し、
    各原料ガス供給手段が制御手段により独立に制御可能とされて、各反応生成室に供給される原料ガス中の酸素分圧が独立に制御可能とされ、
    テープ状の基材の移動方向上流の反応生成室の酸素分圧よりも、テープ状の基材の移動方向下流の反応生成室の酸素分圧が高く設定されることを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。
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