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JP3742885B2 - 高速回転機器用の転がり軸受装置 - Google Patents
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JP3742885B2 - 高速回転機器用の転がり軸受装置 - Google Patents

高速回転機器用の転がり軸受装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用、食品製造用、航空宇宙機器用等の高速かつ高い安全性が要求される分野において使用される高速回転機器用の転がり軸受装置に関する。
更に詳しくは、本発明は、例えば、歯科用高速回転切削機器(歯科用エアータービンハンドピース)のように安定した高速回転を確保し、かつ高い生体安全性を有し、更に高温高圧下での滅菌処理(オートクレーブ処理)にも耐える耐久性のある転がり軸受装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速回転機器、特に切削工具を高速に回転させるための高速切削器は、概略的には、切削工具を固定保持する回転軸、前記回転軸を回動駆動させるための回転駆動装置、及び前記回転軸を回転自在に支承する軸受部、とから構成されるものである。
【0003】
この種の高速切削器として、例えば医療歯科用の高速切削器(エアータービンハンドピース)を示すことができる。
そして、前記した医療歯科用高速切削器(エアータービンハンドピース)の軸受け部は、ボール(転動体)を使用した玉軸受機構を有するものとエアーベアリングを使用した(無接触型の)空気軸受け機構を有するものとが知られている。
【0004】
例えば、歯科用のエアータービンハンドピースの軸受け機構に注目すると、ボールベアリングタービン型、及びエアーベアリングタービン型の2種類のエアータービンハンドピースが知られている。
なお、前者のボールベアリングタービン型のものは約20〜40万rpm程度の高速回転の機種であり、後者のエアーベアリングタービン型のものは約30〜50万rpm程度の超高速回転の機種であるということができる。
前記したボールベアリングタービン型、及びエアーベアリングタービン型の機種の回転数は、一般的な値であり、例えば本発明者らが先に提案した歯科用エアータービンハンドピース(特願平6−36404号、U.S.Patent No.5,562,446)は、ボールベアリングタービン型のものであるが超高速回転を実現することができる高性能のものである。
【0005】
ここで、従来技術及び本発明の理解を助けるために、本発明の潤滑油が適用される一つの応用機器、即ち、歯科用の高速切削器(歯科用エアータービンハンドピース)の構造について説明する。
【0006】
図1〜図2は、歯科用エアータービンハンドピースの構造を説明する図である。なお、図1は、全体構造を説明する図(斜視図)であり、図2は、特にヘッド部とネック部の内部構造を説明する図(断面図)である。
【0007】
図1に示されるように、歯科用エアータービンハンドピース(A)は、エアータービンのロータ軸(駆動軸)に固定保持される切削工具(B)(5)を有するヘッド部(H)とグリップ部(G)からなるものである。
そして、前記グリップ部(G)のネック部(N)は、前記ヘッド(H)に連接されると共に、ヘッド部(H)内に配設されたエアータービンに加圧空気を供給、排出する手段を内部に有するものである。
【0008】
図2は、歯科用エアータービンハンドピース(A)のヘッド部(H)とネック部(N)の内部構造を示す。
図示されるように、ヘッド部(H)において、ヘッド(1)のチャンバー(11)の内部に周縁部にタービンブレード(2)を有するタービンロータ軸(3)が配設されると共に、前記タービンロータ軸(3)はヘッド(1)の内部において軸受部(4)を介して回動自在に支承されている。
前記ヘッド(1)は、ヘッド本体部(12)とキャップ部(13)からなる。そして、前記ヘッド本体部(12)の内部に、前記タービンロータ軸(3)を回転自在に支承するための軸受部(4)が配設される。タービンロータ軸(3)の軸心穴には、切削工具(5)が固定保持され、治療行為が行なわれる。なお、切削工具(5)の周側部には、切削工具(5)を軸心穴中に把持するためのチャック(51)が配設されている。
軸受部(4)は、内輪(41)、外輪(42)、転動体(43)及び保持器(44)からなるボールベアリング方式のもので構成されている。なお、軸受部(4)の外周や側部には、求軸心のためのO−リングや軸剛性を高めるための公知のウェーブワッシャなどを配設しても良いものである。
ネック部(N)には、そのネック本体部(6)がチャンバー(11)内に配設されたタービンブレード(2)に加圧空気を供給するための給気路(7)と給気口(71)、及びチャンバー(11)内の加圧空気を排出するための排気路(8)(9)と排気口(81)、(91)を有する。
【0009】
前記図2に示される歯科用エアータービンハンドピース(A)の内部構造において、加圧空気の給気・排気手段は、本発明者らが、先に提案したものであり(特願平6−36404号、U.S.Patent No.5,562,446)、従来技術においては全く見られない新しい構成のものである。
このため、図2には、前記した各要素(部材)を説明するための参照符号に加えて他の参照符号(記号)も示されている。これらの参照符号(記号)の説明は省略するが、図2により従来の歯科用エアータービンハンドピースの構成が容易に理解することができる。
なお、図2に示される本発明者らが先に提案した給気・排気手段をもつ歯科用エアータービンハンドピース(A)は、従来の転がり軸受装置を内蔵するハンドピースのカテゴリーに属するものであるが、極めて高速の回転、従って大トルクが得られることは先に説明した通りである。
【0010】
前記したボールベアリング式の歯科用エアータービンハンドピースにおいて、その軸受部は、ミニアチュア型軸受部により構成されている。そして、前記タービンロータ軸は、毎分20〜40万rpm程度で高速回転するため、軸受部内部の温度も高くなり、かつ軸受部にかかる応力も大きなものとなる。このため、前記した過酷な条件のもとで使用される軸受部用の潤滑油の品質、特性の管理は極めて重要である。
【0011】
また、前記したボールベアリング式の歯科用エアータービンハンドピースは、口腔内で使用されるため、使用前に軸受け部に潤滑油をスプレー、あるいは滴下して使用され、別言すれば稀薄潤滑の環境下において使用され、かつ滅菌消毒のために高圧高温処理(オートクレーブ処理ともいわれ、その処理条件は、例えば蒸気圧2.4kgf/cm2、温度135℃、時間5分である。)される。
このため、前記歯科用エアタービンハンドピースに使用される転がり軸受装置も、前記したと同様の条件を満足するものが要求されている。特に、潤滑系において重要な構成要素となる保持器(リテーナ、retainer)の特性として、前記したと同様の条件を満足するものが要求されている。
【0012】
従来、前記した歯科用エアタービンハンドピースの転がり軸受装置の重要な構成要素である転動体(ボール)の保持器(リテーナ)は、前記した要求特性の観点から、ポリアミド樹脂系のものや繊維層を有するフェノール樹脂系のものなどで構成されているが、十分なものであるとはいえない。
【0013】
一方、前記した歯科用エアータービンハンドピースの転がり軸受装置に対して、各種の潤滑油が使用もしくは提案されている。
【0014】
例えば、潤滑油をフロンやLPGを用いてスプレー方式により供給することが広く行われており、前記した潤滑油としてパラフィン等の精製鉱油系のものが知られている。
前記した潤滑油は、典型的には石油系のものであり、石油を各種留分に分留精製し、これに必要な酸化防止剤などの添加剤を配合して調製されたものである。なお、前記した潤滑油の基油成分は、天然の鉱油系のもののほか、グリコール、エステル、低分子量のポリオレフィンなどの合成系のものも知られている。
【0015】
このほか、動物油や植物油の食用油も精密機械、工作機械、船舶機関などの潤滑油として使用されることが知られている。しかしながら、前記食用油は、一般的には鉱油系潤滑油に10〜20重量%配合して使用されるものである。
なお、前記食用油は、耐酸化性に問題があるため、各種の酸化安定剤(酸化防止剤)を併用して使用されるのが常態である。
【0016】
最近、歯科用エアータービンハンドピースの前記した過酷な使用条件を考慮して、耐熱性に優れ、従って、滅菌消毒(オートクレーブ処理)が可能であり、かつ潤滑性に優れたフッ素化オイルを含浸させた保持器(リテーナ)を有する歯科用エアータービンハンドピースが、特公平5−43884号、実開平7−10553号に提案されている。
なお、前記保持器(リテーナ)は、ポリイミド樹脂の粉末体を焼結して得た多孔質体から成るものである。
前記した提案の歯科用エアータービンハンドピースは、フッ素化オイルが不活性であり、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性に優れ、高温に晒されても固体状劣化物を生成しないという特性を有しており、これらの特性保持器(リテーナ)に利用したということができる。
【0017】
また、特開平6−165790号は、直接的には、以下に概略説明する歯科用エアータービンハンドピースの軸受装置における玉軸受の冠型保持器(リテーナ)に関するものであるが、前記保持器に潤滑油を含浸する態様を開示している。
即ち、前記特開平6−165790号に開示の歯科用エアータービンハンドピースにおいて、玉軸受の保持器(リテーナ)は、
(i).内部に布製の繊維層を有する合成樹脂製筒体の一側に玉保持用ポケットが形成されるとともに、前記ポケットの開口側端面に面取り部が形成された冠型保持器であって、かつ、
(ii).前記保持器の繊維層に潤滑油が含浸されたこと、
を特徴とするものである。
前記特開平6−165790号に開示の玉軸受の冠型保持器(リテーナ)は、前記(i)の構成により回転バランスを良くし、保持器と外輪の接触による保持器の摩耗や回転トルクの増大を防止しようとするものである。
なお、前記特開平6−165790号において、潤滑油の具体的な構成については不明である。また、前記特開平6−165790号は、従来技術の説明において、ハウジング内に食用油を注油する態様を説明しているが、ここでいう食用油の具体的な構成も不明である。本発明者らは、前記特開平6−165796号に開示の潤滑油は、当業界の技術水準からみて従来から提案されてきている潤滑油の域を出るものではないと考える。
【0018】
更に、特開平6−212179号は、歯科用エアータービンのベアリングに対する潤滑油の補給回数を少なくするために、潤滑油にセラミック粉末を混入させることを開示している。これは、潤滑油内にセラミック粉末を混入しておくと、潤滑油の持ちが良くなるという知見をベースにした提案である。
【0019】
前記した従来から提案されている各種の潤滑油は、転がり軸受機構を有する医療歯科用エアータービンハンドピースなどの高速回転機器におけるそれらの適用を可能にするためには、種々の改善すべき課題を有すものである。
例えば、前記した流動パラフィンなどの鉱油系または合成油系の潤滑油、あるいはこれらに食用油を配合した潤滑油は、高速回転系での持続的な潤滑特性の発現という観点から、改善すべき点が残されているものである。
【0020】
また、前記特公平5−43884号及び実開平7−10553号に提案されているパーフルオロポリエーテル(PFPE)やパーフルオロポリアルキルエーテル(PFAE)などのフッ素化オイルは、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性に優れ、高温に晒されても固体状劣化物を生成しないため、高速切削器(エアータービンハンドピース)の潤滑油として好ましいものであるが、高速回転系での持続的な潤滑特性の発現という観点から、改善すべき点が残されているものである。
【0021】
更に、前記特開平6−165790号は、繊維層を有するフェノール樹脂製の成形体で構成される軸受装置の保持器(リテーナ)に潤滑油を含浸させることを開示し、かつ前記潤滑油として食用油の使用を示唆しているが、詳しくは後述するが、一般の食用油は、大半が乾性油であり、油が乾燥すると樹脂状の固体となり、耐久性のある軸受用の潤滑油としては不適当なものである。
【0022】
一般の食用油は、前記したように、大半が乾性油であり、酸化され易く、そのために合成の酸化防止剤を添加配合して使用するのが常態である。前記乾性油を主体とし、かつ酸化防止剤を配合した食用油系の潤滑油においては、前記酸化防止剤と軸受装置系から溶出する金属との反応生成物が生体為害性物質となる場合があることに留意しなければならない。
【0023】
また、前記特開平6−212179号は、潤滑油にセラミック粉体を混入させ、潤滑油の持ち(ライフタイム)を良くし潤滑系への補給回数を低減化しようとするものであるが、高速回転系の医療歯科用切削器(エアータービンハンドピース)においては、軸受のレース(保持器)やボールが前記セラミック粉体により削られて生体に有害な金属を溶出したり、あるいは稀薄潤滑環境下において潤滑油が少なくなると軸受機構に致命的な損傷を与えることになる。
【0024】
前記したように、高速回転機器、例えば医療歯科用の高速回転機器(エアータービンハンドピース)において使用される従来の転がり軸受装置用の潤滑油は、
(i).生体安全性(生体に対する為害性が少ないこと。)、
(ii).環境の保全性(安全性)、
(iii).耐熱性(オートクレーブ処理による滅菌消毒が可能であること。)、
(iv).耐久性のある潤滑系、
などの面から評価すると課題を残すものである。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来技術の高速回転機器用の転がり軸受装置における問題点に鑑み創案されたものである。
なお、本発明の直接の契機は、本発明者らが先に提案した高性能、超高速回転のボールベアリングタービン型の歯科用エアータービンハンドピース(特願平6−36404号、U.S.Patent No.5,562,446)に対して、優れた特性の転がり軸受装置が存在していなかったことにあった。
本発明は、高速回転機器用の転がり軸受装置において、特に軸受機構の重要な構成要素である転動体(ボール)の保持器(リテーナ)において、前記保持器を特定の多孔質樹脂成形体で構成するとともに、前記多孔質樹脂成形体に特定の潤滑油、詳しくは、吸油性樹脂粒子からなる吸油剤を含有した潤滑油を含浸させて構成したとき、従来にない優れた特性の潤滑系が実現できる、という知見をベースにして完成されたものである。
【0026】
本発明は、転がり軸受機構を内蔵する歯科用エアータービンハンドピースなどの高速切削機器において、高速回転下において十分な耐久性を有し、オートクレーブ滅菌などの高温高圧にも耐える耐熱性を持ち、また高速回転の雰囲気下において、安定かつ持続的な潤滑特性を発現するなど、高性能の転がり軸受装置を提供するものである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、外輪、内輪、転動体、及び保持器(リテーナ)からなる転がり軸受要素を有する高速回転機器用の転がり軸受装置において、
(i).前記保持器(リテーナ)が、少なくとも一部に連通構造の気孔部(連通気孔部)を有する合成樹脂成形体で構成され、かつ、
(ii).前記保持器(リテーナ)の連通気孔部が、吸油性樹脂粒子からなる吸油剤を含有した植物性不乾性油で含浸処理されて構成されたものであって、
iii). 前記植物性不乾性油が
iii) 11分子当たり1個の不飽和結合を有する少なくとも一種の1価の不飽和脂肪酸、60重量%以上と
iii) 2. 1分子当たり少なくとも2個の不飽和結合を有する多価の不飽和脂肪酸、30重量%以下、
とから成るものであること
を特徴とする高速回転機器用の転がり軸受装置に関するものである。
【0028】
以下、本発明の技術的構成及び実施態様について詳しく説明する。
【0029】
本発明の高速回転機器用の転がり軸受装置は、第一に、軸受装置の重要な構成要素である転動体(ボール)の保持器(リテーナ)を、特定のマトリックス材からなる多孔質体により構成する点に特徴点がある。
また、本発明の高速回転機器用の転がり軸受装置は、第二に、前記した特定のマトリックス材からなる多孔質体に対して特定の潤滑油、より具体的には、吸油性樹脂粒子からなる吸油剤を含有した潤滑油を含浸して保持器(リテーナ)を構成する点に特徴点がある。
以下、前記した本発明の第一〜第二の特徴点の順に、本発明の技術的構成を説明する。
【0030】
本発明の保持器(リテーナ)の第一実施態様は、次の通りである。
本発明の保持器(リテーナ)の第一実施態様は、多孔質のポリイミド樹脂成形体で構成される。
図3は、前記多孔質ポリイミド樹脂成形体からなる保持器(44)の斜視図を示す。図中、(44a)は保持器本体を示し、(44b)は孔部(気孔部)を示す。
なお、前記保持器(44)は、図1〜図2を参照して説明したボールベアリング式の歯科用エアータービンハンドピースに適用されるものである。
【0031】
本発明の多孔質ポリイミド樹脂成形体で構成される保持器(リテーナ)において、前記ポリイミド樹脂(以下、PI樹脂と略記する。)は、芳香族カルボン酸と芳香族アミンを縮重合して得られる主鎖にイミド結合を有する樹脂(熱可塑のものであっても、あるいは熱硬化性のものであってもよい。)であって、耐熱性、耐薬品性、機械的性質、電気的特性に優れたものである。
なお、本発明において、PI樹脂なる用語は、主鎖にイミド結合及びアミド結合を有するポリアミドイミド樹脂(以下、PAI樹脂と略記する。)も包含するものであると理解されるべきである。
【0032】
本発明において、前記リテーナを構成するPI樹脂及びPAI樹脂は、市販されているものが好都合に使用することができる。例えば、市販されているPI樹脂及びPAI樹脂としてその化学構造式を含めて以下のものを例示することができる。
(i).PI樹脂:
(1).オーストリア国レンジング社製、P84−HT(下記化1で示されるもの。なお、化1において、Rはアルキレン基を表わす。)
(2).東レ社製、TI−3000(下記化2で示されるもの。)
(3).宇部興産社製、UIP−S(下記化3で示されるもの。)
(4).デュポン社製、ベスペル(下記化2で示されるもの。)
(5).三井東圧化学社製、オーラム(下記化4で示されるもの。)
(6).その他、米国ヒューロン社製、メルディン8100,900などがある。
(ii).PAI樹脂:
(1).アモコ社製、トーロン4000TF(下記化5で示されるもの。なお、化5において、Arはフェニレン基を表わす)。
【0033】
【化1】
Figure 0003742885
【0034】
【化2】
Figure 0003742885
【0035】
【化3】
Figure 0003742885
【0036】
【化4】
Figure 0003742885
【0037】
【化5】
Figure 0003742885
【0038】
前記多孔質のPAI樹脂成形体からなる保持器は、特公平5−43884号に示されるように、平均粒径が15〜50μmに分級整粒したPAI樹脂粉末を加圧焼成して製造するすることができる。
前記焼結成形において、樹脂粉末の平均粒径や圧力などを所望に調整して、体積比5〜20%の連通気孔を有するポーラスな構造の保持器を調製する。次いで、前記連通気孔に、詳しくは後述するが特定の潤滑油(基油:植物性不乾性油)を含浸し本発明の保持器を製造する。
【0039】
前記、多孔質ポリアミドイミド(PAI)成形体からなる保持器において、原料の樹脂粉末に15μm未満の微小粒径の粉末が混入している場合、孔、即ち、空間部が前記微小粉末により閉塞されてしまうので、製品の気孔率のバラツキを招来させる。このため、前記した分級整粒が必要となる。
また、逆に50μmを超える大きな粒径の粉末が混入する場合、粒子間の空隙が大きくなり、高速回転時の含浸油の保持率(保油率)が低下するため、前記した大きな粒径の混入は好ましくない。
【0040】
図4〜図5は、多孔質PAI樹脂成形体からなる保持器(44)の別の態様を説明する図である。
なお、図4は保持器(44)の応用例である前記図2に示されるものとは別の構造の歯科用エアータービンハンドピースを説明する図である。なお、図4の歯科用エアータービンハンドピースの構造は、対応する前記図2より明らかであるため説明を省略する。
また、図5は、保持器(44)の形状構造を説明する図であり、前記図3に対応する図である。図5において、(44a)は保持器本体を示し、(44b)は穴部(気孔部)を示している。
【0041】
本発明の保持器(リテーナ)の第二実施態様は、次の通りである。
本発明の保持器(リテーナ)の第二実施態様は、多孔質のPI樹脂成形体で構成される。
【0042】
前記多孔質のPI樹脂成形体からなる保持器は、前記PAI樹脂の粉末の焼結成形と同様にして製造することができる。即ち、平均粒径が、15〜50μmに分級整粒したPI樹脂樹脂粉末を加圧焼結することにより、体積比5〜20%の連通気孔の多孔質PI樹脂成形体を製造することができる。
【0043】
前記多孔質PI樹脂製の保持器は、前記多孔質PAI樹脂のものと比較して、潤滑油が切れた場合、溶融することがなく、軸受が使用不能とならないこと、またPI樹脂は吸湿速度が遅く原料粉や成形品の管理が容易であること、などというメリットを有している。なお、前記した理由により後者のPAI樹脂は、溶融型樹脂として位置づけられるものである。
また、滅菌処理(オートクレーブ処理)においても、近年、特にHIVの感染予防が求められ、従来の処理条件よりも更にきびしい条件下での処理(例えば、蒸気圧2.4kgf/cm2(235Pa)、温度135℃、時間5分)が求められているが、前記多孔質PI樹脂製の保持器は、200℃程度まで耐えることができる。
【0044】
本発明の保持器(リテーナ)の第三実施態様は、次の通りである。
本発明の保持器(リテーナ)の第三実施態様は、連通気孔層とみなされる繊維層を有するフェノール樹脂成形体で構成される。この種の繊維層を有するフェノール樹脂成形体は、前記繊維層を利用して潤滑油を含浸させることができるものである。
本発明において、前記繊維層入りのフェノール樹脂成形体(以下、多孔質P・Rということがある。)は、前記多孔質PI/PAI樹脂成形体(以下、多孔質PI/PAI・Rということがある。)の場合の連通気孔による潤滑油の含浸機能とは異なるものの、繊維層(布)を介しての潤滑油の含浸機能を有する。このため、本発明において、用語の正確さは欠けるが前記繊維層(布)入りのフェノール樹脂成形体を気孔部(連通気孔部)を有する樹脂成形体であると位置づけしている。
【0045】
この種の繊維層を有するフェノール樹脂系の保持器は、特開平6−165790号に示される方式などにより製造すればよい。
例えば、前記布入りフェノール樹脂成形体は、
(i).布を多重合巻きにしてパイプ状とし、これを真空状態に維持して布の間にフェノール樹脂を充填、硬化させて多孔質の筒状体とする方法、
(ii).フェノール樹脂を含浸した布を多重巻きにし、これを加熱圧縮して多孔質の筒状体とする方法、
などにより製造することができる。
前記布入りフェノール樹脂成形体の気孔率は、前記PI樹脂と同様のものでよく、体積比5〜20%の多孔質のものを使用すればよい。
【0046】
次に、本発明の第二の特徴点である潤滑油成分、即ち前記した保持器(リテーナ)の本体部を構成する多孔質成形体に含浸される特定の潤滑油について説明する。
【0047】
前記したように、本発明の潤滑油は、基油成分と吸油性樹脂粒子からなる吸油剤成分とから構成されるものである。
このため、まず、基油成分について説明し、次いで、吸油剤成分について説明する。
また、本発明の潤滑油は、基油成分として、パラフィン油やフッ素化油に加えて従来技術にはみられらない植物性の不乾性油を採用するものである。このため、本発明の理解を助けるために、まず植物性不乾性油から説明する。
【0048】
植物油は、大別すると下記の三種に分類することができる。
(i).不乾性油(Nondrying oil)
これは、薄層にして空気中で乾燥(酸化)しても膜状物(樹脂状固体)を形成しない油である。
この種の不乾性油は、分子中の二重結合が二以上(以下、多価という。)の不飽和脂肪酸の量が少なく、オレイン酸(1分子当り二重結合一個)のグリセリド(グリセリンエステル)が主成分であり、従って、ヨウ素価(油の不飽和度を示す尺度。Iodine value) は100以下である。
この種の不乾性油の代表例は、オリーブ油、落花生油、オレイソル油などがある。
【0049】
(ii).半乾性油(Semidrying oil)
これは、前記した不乾性油と後述する乾性油の中間的性質を示す油である。なお、ヨウ素価は100〜130のものである。
この種の半乾性油の代表例は、菜種油、ゴマ油、綿実油などがある。
【0050】
(iii).乾性油(Drying oil)
これは、薄層にして空気中で乾燥(酸化)すると膜(樹脂状固体)を形成する油である。この種の乾性油は、不飽和度の高い脂肪酸(例えば、リノール酸は二重結合が二個、リノレン酸は二重結合が三個ある。)のグリセリドからなり、これが空気中の酸素を吸収して、酸化重合して膜状物を容易に形成する。なお、前記乾性油のヨウ素価は、130以上のものである。
この種の乾性油の代表例は、アマニ油、桐油などがある。
【0051】
前記した各種の植物油のうち、不乾性油は、薄層にして乾燥(酸化)しても膜状物(樹脂状固体)を生成しない油脂(高級脂肪酸のグリセリンエステル)であり、耐熱性(オートクレーブ処理により滅菌消毒が可能なこと)や耐久性に優れているため、歯科用エアータービンハンドピースなどの高速回転機器の転がりの軸受装置用潤滑油として好適なものである。
【0052】
本発明は、歯科用エアータービンハンドピースなどの高速回転機器の転がりの軸受装置用潤滑油として、植物油のうちの不乾性油を採用するものである。
以下、前記植物油の不乾性油として代表例であるオリーブ油(Olive Oil)について詳しく説明する。
【0053】
オリーブ油は、オリーブ(Olea Europaea)の果実から製造される油脂(グリセリンエステル)であり、その成分は大別すると下記の3種に分類することができる。
(i).不飽和樹脂酸、
(ii).飽和樹脂酸、
(iii).各種の微量成分。
【0054】
オリーブ油の不飽和樹脂酸は、一般に一価及び二価以上(多価)のもので構成される。
以下、オリーブ油の不飽和樹脂酸の種類と含有量を示す。
1).オレイン酸(一価)…………………56.0〜83.0%
CH3(CH27CH=CH(CH27COOH
2).リノール酸(多価)………………… 3.5〜20.0%
CH3(CH24CH=CHCH2CH=CH(CH27COOH
3).パルミトオレイン酸(一価)……… 0.3〜3.5%
CH3(CH25CH=CH(CH27COOH
4).リノレン酸(多価)………………… 0.0〜1.5%
CH3CH2CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH(CH27COOH
5).ガドレイン酸(一価)……………… 0.0〜0.05%
CH3(CH29CH=CH(CH27COOH
【0055】
前記したように、オリーブ油は、一価の不飽和脂肪酸であるオレイン酸を多く含有するものである。また、オリーブ油は、リノール酸などの多価の不飽和脂肪酸を少量、含有している。
前記したように、多価の不飽和脂肪酸は酸化しやすいものであるが、オリーブ油は、後述するように微量成分としてトコフェロール類(ビタミンE)を含有しているため、前記トコフェロール類(ビタミンE)の抗酸化作用によりリノール酸などの多価不飽和脂肪酸の酸化劣化が防止され、オリーブ油全体は、耐酸化性に優れている。
【0056】
次に、オリーブ油の飽和脂肪酸成分について説明する。
以下、オリーブ油の飽和脂肪酸の種類と含有量を示す。
(1).パルミチン酸 CH3(CH214COOH ……7.5〜20.0%
(2).ステアリン酸 CH3(CH216COOH ……0.5〜 3.5%
(3).ミリスチン酸 CH3(CH212COOH ……0.0〜0.05%
(4).アラキジン酸 CH3(CH218COOH ……0.0〜0.05%
(5).ベヘニン酸 CH3(CH220COOH ……0.0〜0.05%
(6).リグノセリン酸 CH3(CH222COOH ……0.0〜0.05%
前記したことから判るように、オリーブ油は高コレステロール血症の原因となる飽和脂肪酸の含有量が少ないものであるということができる。
【0057】
次に、オリーブ油の各種微量成分について説明する。
以下、オリーブ油の各種微量成分の種類と前記成分の特性や機能について説明する。
▲1▼.不ケン化物
(a).ステロール類、
(b).炭化水素類
・スクアレン
・芳香族炭化水素(これは、固有の感覚的特性、即ち香りや風味を与える。)
(c).トコフェロール類(酸化防止機能)
・α−トコフェロール(ビタミンE)(黒変と重合防止)
・β、γ、δ−トコフェロール(重金属の存在によって起こる酸敗の防止)
(d).トリテルペン・アルコール類
・シクロ・アルテノール
・エルトロ・ジオール
(e).脂溶性のビタミン類
・ビタミンA、D(抗酸化作用)
▲2▼.燐脂質、葉緑素及び誘導体
(a).燐脂質
(b).葉緑素(抗酸化作用)
▲3▼.フェノール化合物
(a).フェノール化合物(抗酸化作用)
(b).ポリフェノール(抗酸化作用)
前記したことから判るように、オリーブ油は、他の不乾性や乾性油と比較して、油脂の酸化に抗して作用する各種の微量成分の含有量が高く、耐熱性(オートクレーブ処理による滅菌消毒が可能である。)や耐久性に優れた潤滑油となるのである。
【0058】
次に、本発明の歯科用エアータービンハンドピースなどの高速回転機器の転がり軸受装置用の潤滑油を構成し得る他の植物性不乾性油について、説明する。
(i).前記したオリーブ油以外の植物性不乾性油として、落花生油(Arachis Oil)がある。
落花生油は、落花生(Arachis Hypogaea)の種子に40〜50%含まれており、その種子から搾られて製造される。
(ii).前記したオリーブ油以外の植物性不乾性油として、オレイソル油がある。
オレイソル油は、不乾性油ではないリノール酸(多価)を多く含有するヒマワリの突然変異種から製造される。今日、農業化学者の努力によりオレイン酸(一価の不飽和脂肪酸)を多く含む突然変異種のヒマワリを育てることに成功しており、この突然変異種からオレイソルと命名された油が製造されている。オレイソル油は、前記したオリーブ油と同様の不乾性油である。
【0059】
本発明の歯科用エアータービンハンドピースなどの高速回転機器の転がり軸受装置用の潤滑油を構成し得る植物性不乾性油と植物性半乾性油及び他の食用油との違いを下記の表1に示す。表1において、オリーブ油、落花生油、及びオレイソル油は本発明の転がり軸受装置に有用な植物性不乾性油であり、他のものは比較対照例の植物性半乾性油及び乾性油を示している。
なお、表1の注釈は、次の通りである。
(1).オレイン酸を主とし、パルミトオレイン酸を含む。
(2).リノール酸。
(3).リノレン酸。
(4).パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸から成る。
表1中、(*)印は、比較対照例の植物油である。
【0060】
【表1】
Figure 0003742885
【0061】
表1から、次の点が明らかである。
(i).植物性不乾性油は、酸化しにくい1価の不飽和脂肪酸が多い。
(ii).植物性不乾性油は、酸化しやすい2価〜3価の不飽和脂肪酸、即ち多価
の不飽和脂肪酸が少ない。
(iii).植物性不乾性油は、抗酸化作用を有するトコフェロール類(ビタミンE
など)の対多価不飽和脂肪酸比が高い。
【0062】
本発明の歯科用エアータービンハンドピースなどの高速回転機器の転がり軸受装置用の潤滑油を構成し得る植物性不乾性油(オリーブ油、落花生油、オレイソル油など)において、遊離の脂肪酸(飽和、不飽和)の合計含有量が少ないほど、潤滑特性に優れている。
この点は、本発明者らの植物性不乾性油の潤滑特性の改善を検討している過程で見い出されたものであり、後述するように実証データにより裏付けされている。
【0063】
前記した植物性不乾性油中の遊離した脂肪酸(以下、遊離脂肪酸ということがある。)について、以下に説明を加える。
一般に、油脂(牛脂、豚脂、バターなどの脂肪、及び菜種油、桐油、アマニ油などの脂肪油)は、高級脂肪酸のグリセリンエステルで構成されている。
即ち、本発明の転がり軸受装置に有用な植物性不乾性油において、各種の脂肪酸(飽和、不飽和)は、下式(1)で示されるエステルとして存在するものである。
脂肪酸の3分子+グリセリンの1分子→トリグリセリドの1分子(エステル)
…………(1)
【0064】
しかしながら、前記植物性不乾性油中にはグリセリン(Grycerol, CH2OH-CHOH-CH2OH)と結合していない各種の脂肪酸(遊離脂肪酸)も含まれている。前記した遊離脂肪酸の合計含有量の度合を遊離酸度で示すと、この値が低いほど酸度が低くなり、かつ粘度も高粘度側にシフトするため、遊離酸度の低い植物性不乾性油は転がり軸受装置用潤滑油として耐久性に優れたものとなる。
前記した遊離酸度に基づいて、オリーブ油の品質を分類したのが下記の表2である。表2より高級なオリーブ油ほど遊離酸度が低く、後述するように優れた潤滑特性を示す(表3参照)。
なお、オリーブ油などの植物性不乾性油の遊離酸度を低くする方法としては、
例えば、以下の方法を採用すればよい。即ち、オリーブ油に5〜10%の水酸化ナトリウムを加えて加熱すると、けん化されてグリセリンと脂肪酸ナトリウム塩を生成し、生成したグリセリンは遊離脂肪酸とエステル結合する。その後、遠心分離などによって油脂分を分離除去すれば、遊離酸度の低いオリーブ油が得られる。
また、表2中、オリーブ油の各種グレード名は、アメリカのゴールデンイーグルオリーブプロダクツ社製のオリーブ油の商品名である。
【0065】
【表2】
Figure 0003742885
【0066】
本発明の潤滑油の基油成分として、前記した植物性不乾性油のほかに、従来公知の鉱油系(天然系)または合成系の各種の基油成分を使用することができる。
この種の鉱油系または合成等の基油成分としては、鉱油(パラフィン油)、オレフィンオリゴマー、リン酸エステル、有機酸エステル、シリコーン油、ポリアルキレングリコールなどを例示することができる。
これらの基油成分は、前記した植物性不乾性油と比較して、生体安全性(生体為害性)や環境保全性(安全性)に劣るものの、機器の用途においては十分に使用することができるものである。
【0067】
次ぎに、本発明の潤滑油を構成する吸油性樹脂粒子からなる吸油剤成分について説明する。
【0068】
本発明者らは、高速回転機器、例えば歯科用エアータービンハンドピースの高速回転下の潤滑系において、前記した基油成分の特性を損ねることなく軸受用潤滑油の保持力を向上させるうえで、アクリル酸エステル系の架橋化した重合体(以下、単に架橋重合体という。)などの吸油性のある合成樹脂体(吸油性架橋重合体)粒子は極めて有効である、という知見を得ている。
【0069】
前記した高速回転機器の潤滑系、例えば回転数が20〜40万rpm、更には、より高速回転の環境下にある歯科用エアータービンハンドピースの潤滑系において、吸油剤成分の添加効果は後述されるように顕著なものであり、このような高速回転下の潤滑系における効果は、本発明者らによってはじめて見い出されたものである。
【0070】
以下、前記した本発明の実施に有用な植物性不乾性油などの基油成分の特性改善に好ましい吸油性の架橋重合体について説明する。
なお、前記した吸油性の架橋重合体それ自体は、特開平5−337367号あるいは特公平3−143996号などにより当業界において公知のものである。しかしながら、前記したように、前記吸油性の架橋重合体が高速回転系の転がり軸受装置において、優れた特性を付与することができることは、本発明者らによってはじめて見い出されたものである。
【0071】
前記した吸油性架橋重合体は、潤滑油の主剤である植物性不乾性油などの基油成分の溶解度パラメーター(Solubility Parameter,SP 値)が6〜9であり、相溶性の観点から同程度のSP値を有するものを使用することが好ましい。例えば、本発明の植物性不乾性油を主剤とした潤滑油において、SP値が9以下の吸油性架橋重合体を添加配合することが好ましい。
【0072】
前記した吸油性架橋重合体は、一般的には、
(i).SP値=9以下の重合体を調製することができる分子中に1個の重合性不飽和基を有する単量体(A) …………90〜99.9重量%、
(ii).分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する架橋性単量体(B)……………0.1〜10重量%、
を共重合させることにより、調製することができる。
【0073】
前記した単量体(A)は、
(1).少なくとも1個のC2〜C30の脂肪酸炭化水素基を有し、かつ、
(2).アルキル(メタ)アクリレート、アルキルアリール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルアリール(メタ)アクリルアミド、脂肪酸ビニルエステル、アルキルスチレン、及びα−オレフィンの残基、
からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和単量体で構成されるものである。
【0074】
前記した架橋性単量体(B)は、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N´−メチレンビスアクリルアミド、N,N´−プロピレンビスアクリルアミド、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、
などが例示される。
【0075】
前記した吸油性架橋重合体は、分子中に2個の重合性不飽和基を有する単量体、具体的には、ジエン系単量体を採用することによっても調製することができる。
この種のジエン系単量体を採用した吸油性架橋重合体として、ブタジエン、イソプレン、シクロベンタジエン、1.3−ベンタジエンの重合体及びその水素化物、あるいは、前記したジエン類とスチレン類やブチレンなどのα−オレフィン類などの他の重合性単量体との共重合体及びその水素化物などを例示することができる。
なお、重合性単量体としては前記したものを使用すればよい。
また、前記した吸油性架橋重合体は、エチレンと他のオレフィンとの架橋化した共重合物により構成されたものであってもよいものである。エチレンと共重合される他のオレフィンとしては、プロピレン、ブチレン、ペンテンなどがあり、また架橋性単量体としては前記したものを使用すればよい。
【0076】
前記した吸油性架橋重合体は、平均粒径が0.5〜2000μmの粒状物であり、植物性不乾性油に対し所望の配合量で配合される。この種の吸油性架橋化重合体として、日本触媒社製のアクリル酸エステル系のオレオソープPW−190、PW−170(商品名)を使用することができる。
【0077】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
特に、歯科用エアータービンハンドピースの転がり軸受装置において、本発明の多孔質の樹脂成形体で構成される保持器(リテーナ)と吸油剤を含有した潤滑油とからなる潤滑系と、従来公知の他の潤滑油を使用した潤滑系を比較し、本発明の潤滑系の優位性を検討した。
【0078】
(i).保持器(リテーナ)の全体構造:
本発明の実施例において試験に供した歯科用エアータービンハンドピース(図1〜図2参照)の転がり軸受装置の構成は次の通りである。
(i).外輪外径 …………… 6.350mm
(ii).内輪内径 …………… 3.175mm
(iii).幅 …………………… 2.380mm
の寸法を有する開放型ミニアチュア型玉軸受で冠型リテーナを有するものである。
【0079】
(ii).保持器(リテーナ)の種類:
▲1▼.バルクPI/PAI・R ……… これは、ポリイミド(PI)系または、ポリアミドイミド(PAI)系の無孔性(バルク状)のリテーナを意味する。
なお、前記バルクPI・Rは、デュポン社製のベスペルSP−1をリテーナ形状に加工したものである。
また、前記バルクPI・R、帝人アコモエンジニアリングプラスチックス社製のトーロン4203をリテーナ形状に加工したものである。
【0080】
▲2▼.多孔質P・R ……… これはフェノール樹脂系のリテーナを意味する。なお、前記多孔質P・Rは、パイプ状に多重巻きされた織布に対して真空状態で織布の間にフェノール樹脂を含浸し、加熱成形し、その後リテーナ形状に加工したものである。
【0081】
▲3▼.多孔質PI/PAI・R ……… これは、ポリイミド(PI)系または、ポリアミドイミド(PAI)系の粉末の焼結体からなる多孔質リテーナを意味する。
なお、前記多孔質PI・Rは、宇部興産社製UIP−Sを成形圧力4000kgf/cm2 で圧縮成形し、窒素雰囲気中で400℃にて焼結し、これをリテーナ形状に加工したものである(気孔率:体積比約13%)。
また、前記多孔質PAI・Rは、米国アモコ社製トーロン4000TFを平均粒径20μmに分級整粒し、予備成形圧2800kgf/cm2 で圧縮成形し、次いで300℃で焼結し、これをリテーナ形状に加工したものである(気孔率:体積比約14%)。
【0082】
歯科用エアータービンハンドピース(図1〜図2参照)の転がり軸受装置で試験した本発明の多孔質の樹脂成形体で構成される保持器(リテーナ)と植物性不乾性油などの基油成分と吸油性架橋重合体成分(吸油剤成分)とからなる潤滑油を使用した潤滑系と、従来公知の潤滑油を使用した潤滑系の試験結果を下記の表3に示す。
【0083】
表3における注釈は、次の通りである。
(1)<耐熱性試験(耐オートクレーブ;回)>
(株)モリタ製作所製のオートクレーブ装置「アルフィー」を使用し、耐オートクレーブ性を歯科用エアータービンハンドピースの回転が不安定になり回転効率が1割(10%、約4万rpm)低下する時点までの回数で示す。
なお、オートクレーブ装置「アルフィー」での処理条件は、蒸気圧2.4 kgf/cm2(235Pa)、温度135℃、時間5分である。
(2)<軸受耐久性(連続運転;hrs)>
歯科用エアーハンドピースの潤滑系に最初に潤滑油を適用し、その後は無給油かつ約40万rpmの条件で連続運転を行い、軸受耐久性を回転が不安定になり回転数が1割(10%、約4万rpm)低下するまでの時間で示す。
【0084】
表3において、
(i).パラフィン油(流動パラフィン)は、既存歯科治療関連メーカー製スプレー剤を使用した。
(ii).フッ素化オイルは、イタリアのAusimontu S.P.A社製FOMBLINを使用した。
(iii).アクリル酸エステル系吸油性重合体は、日本触媒社製PW−170を使用した。
【0085】
【表3】
Figure 0003742885
【0086】
【発明の効果】
表3に示されるように、高速回転系の歯科用切削器(エアータービンハンドピース)などの高速切削器に適用される本発明の多孔質の樹脂成形体と植物性不乾性油の基油成分と吸油剤成分(吸油性架橋重合体)とからなる潤滑系は、生体安全性(生体為害性)、環境保全性(安全性)、耐熱性(耐オートクレーブ)、及び軸受耐久性の点で総合的に優れていることがわかる。
また、フッ素化オイル系より安価であるため、経済的にも優れたものである。
更に、植物油として不乾性油以外の半乾性油や乾性油、及びパラフィン油(流動パラフィン)は、空気中135℃、175時間放置するテストにおいて、激しい色調変化が見られる。別言すれば、これら各種の油は、耐酸化性に劣るものである。なお、前記テストにおいて、オリーブ油や落花生油などの不乾性油は色調変化を示さなかった。
【0087】
更に、本発明の多孔質の樹脂成形体と植物性不乾性油の基油成分と吸油剤成分とからなる潤滑系は、微生物による分解が速く、排水の暫定水質基準(総理府令)から評価してみても従来の鉱油類より好ましいものである。なお、前記排水の暫定水質基準によれば、排水の許容限度は、従来の鉱油類は、5mg/リットルであるのに対し、植物油脂類は、30mg/リットルである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の潤滑油含浸タイプの保持器(リテーナ)が適用される歯科用エアータービンハンドピースの斜視図である。
【図2】 図1の歯科用エアータービンハンドピースのヘッド部(H)とネック部(N)の断面図であり、前記ヘッド部(H)及びネック部(N)の構造を説明する図である。
【図3】 本発明の多孔質樹脂成形体で構成された第一実施態様の保持器(リテーナ)の斜視図である。
【図4】 本発明の潤滑油含浸タイプの保持器(リテーナ)が適用される他の歯科用エアータービンハンドピースの断面図であり、図2に対応する図である。
【図5】 図4の潤滑油含浸タイプの保持器(リテーナ)(44)の断面図である。
【符号の説明】
A ………… 歯科用エアータービンハンドピース
H ………… ヘッド部
G ………… グリップ部
N ………… グリップ部(G)のネック部
B ………… 切削工具
1 ………… ヘッド
11 ………… チャンバー
12 ………… ヘッド本体部
13 ………… キャップ部
2 ………… タービンブレード
3 ………… タービンロータ軸
4 ………… 軸受部
41 ………… 内輪
42 ………… 外輪
43 ………… 転動体(ボール)
44 ………… 保持器(リテーナ)
44a ………… 保持器本体
44b ………… 穴部(気孔部)
5 ………… 切削工具
6 ………… ネック部(N)の本体部
7 ………… 給気路
71 ………… 給気口
8、9 ………… 排気路
81、91 ………… 排気口

Claims (11)

  1. 外輪、内輪、転動体、及び保持器(リテーナ)からなる転がり軸受要素を有する高速回転機器用の転がり軸受装置において、
    (i).前記保持器(リテーナ)が、少なくとも一部に連通構造の気孔部(連通気孔部)を有する合成樹脂成形体で構成され、かつ、
    (ii).前記保持器(リテーナ)の連通気孔部が、吸油性樹脂粒子からなる吸油剤を含有した植物性不乾性油で含浸処理されて構成されたものであって、
    iii). 前記植物性不乾性油が
    iii) 11分子当たり1個の不飽和結合を有する少なくとも一種の1価の不飽和脂肪酸、60重量%以上と
    iii) 2. 1分子当たり少なくとも2個の不飽和結合を有する多価の不飽和脂肪酸、30重量%以下、
    とから成るものであること
    を特徴とする高速回転機器用の転がり軸受装置。
  2. 連通気孔部を有する合成樹脂成形体が、
    (1).気孔率が体積比5〜20%の連通気孔部を有するポリイミド樹脂成形体、又は、
    (2).連通気孔部として気孔率が体積比5〜20%の繊維層を有するフェノール樹脂成形体、
    から選ばれたものである請求項第1項に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  3. 連通気孔部を有するポリイミド樹脂成形体が、樹脂粉末体を焼結成形して調製されたものである請求項2に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  4. 植物性不乾性油が、トコフェロール類の含有量が10重量%以下のもので構成される請求項第項に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  5. 植物性不乾性油が、オリーブ油、落花生油、及びオレイソル油からなる群より選ばれた少なくとも1種のものである請求項第項に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  6. 植物性不乾性油が、グリセリンと結合していない飽和及び不飽和の脂肪酸(遊離脂肪酸)の含有量が5重量%以下のもので構成される請求項第項に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  7. 吸油剤が、
    (A).溶解度パラメータ(SP値)を9以下とする単量体を主成分としてなる分子中に1個の重合性不飽和基を有する単量体…………90〜90.9重量%、
    (B).分子中に少なくとも2個の重合製不飽和基を有する架橋性単量体…………0.1〜10重量%、
    からなる単量体混合物を重合して得られる架橋重合体で構成される請求項第1項に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  8. 単量体(A)が、少なくとも1個の C3〜C30の脂肪族炭化水素基を有し、かつアルキル(メタ)アクリレート、アルキルアリール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルアリール(メタ)アクリルアミド、脂肪酸ビニルエステル、アルキルスチレン、及びα−オレフィンの残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和基を有するものである請求項第項に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  9. 吸油剤が、ジエン系単量体を重合して得られるジエン系架橋重合体で構成される請求項第1項に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  10. 高速回転機器が、エアータービン翼が固定された回転軸を回動自在に支承するための外輪、内輪、転動体、及び耐熱樹脂製の保持器(リテーナ)からなる転がり軸受要素を有するものである請求項第1項に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
  11. 高速回転機器が、ボールベアリング式の医療歯科用のエアータービンハンドピースである請求項10に記載の高速回転機器用の転がり軸受装置。
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