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JP3743566B2 - 人工硬膜 - Google Patents
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JP3743566B2 - 人工硬膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脳外科分野における硬膜欠損の補填に用いる人工硬膜の改良に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
硬膜は脳と頭蓋骨との間に介在し、脳の保護、脳脊髄液の保護等の機能を担う。脳外科における開頭手術においては必ず硬膜を切開する。これにより生じた硬膜の欠損あるいは収縮は補填する必要がある。従来はこの補填にヒト乾燥硬膜が使用されてきたが、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となる恐れがあるとし、1997年厚生省により使用が禁止された。
【0003】
ヒト乾燥硬膜に代わる人工硬膜として延伸テフロンやシリコーンを素材とする人工硬膜も開発されたが、非分解性であるため体内に永続的に残留し、周辺組織へ慢性的に刺激を与えることから肉芽組織の肥大化、皮膜内出血の原因となると報告された。生体内分解吸収性高分子を用いた人工硬膜も開発されているが、これら人工硬膜は収縮性がないため縫合糸の針穴から脳脊髄液が漏出するという大きな問題がある。その他コラーゲンやゼラチンを材料とする人工硬膜の作製も試みられたが縫合強度の不足、硬膜再生まで必要とされる膜強度を保持できない等の問題がある。また、特開平9−140785号には、単一膜の性状を補うため分解性が遅く柔軟性の低い層とその両側に分解性が早く柔軟な層を積層する医療用フィルムが開示されている。以上のことから現在では必ずしも性能的に充分とはいえない延伸テフロン製人工硬膜を使用せざるを得ない状況にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、従来の人工硬膜がかつて成しえなかった(a)人工硬膜に要求される機能である液漏れが無いこと、特に問題となる縫合糸周囲の針穴からの液漏れが無いこと、(b)手術時における縫合スパンが従来の人工硬膜よりも広くとれること、(c)生体硬膜に近い柔らかさ、弾性率を有すること、(d)組織の修復に伴い分解吸収されること、(e)十分な縫合強度を有すること等の性能を全て有する人工硬膜の発明に到達した。
【0005】
[1]本発明は、生体内分解性高分子を二層以上積層することにより構成され、
少なくとも一層は、針穴からの脳髄液の漏出を防止することを目的とした漏水防止層(3)より構成され、
当該漏水防止層(3)は、(A)37°Cにおける粘度が5,000mPa・s〜500,000Pa・s、数平均分子量が4,000から100,000の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトン三元共重合体もしくはグリコール酸/ε−カプロラクトン共重合体からなる高粘度生体内分解性高分子、または(B)37°Cにおける粘度が5,000mPa・s〜500,000Pa・sのヒアルロン酸を主成分とするもしくはアテロコラーゲンよりなる高粘度生体内分解性高分子、より構成され、
他の少なくとも一層は、形状保持を目的とする形状保持層(1)より構成され、当該形状保持層(1)は、乳酸を主成分とする生体内分解性高分子または合成セルロースからなり、かつ引っ張り強度8〜20MPa、ヤング率2〜40MPaであり、
全体のヤング率が2〜40MPaである人工硬膜を提供する。
[2]本発明は、漏水防止層(3)が、前記高粘度生体内分解性高分子に代えて、粘度が5,000mPa・s〜500,000Pa・s、膨潤率が5〜500%の含水膨潤する生体内分解性高分子より構成される[1]に記載の人工硬膜を提供する。
[3]本発明は、二層以上積層することにより構成された人工硬膜において、針穴からの脳髄液の漏出を防止することを目的とした漏水防止層(3)と、形状保持を目的とする形状保持層(1)と、ゴム的弾性を有することで針穴を収縮させることを目的とする弾性層(2)とを含み、弾性層(2)はε−カプロラクトン単位を含有する生体内分解性高分子からなり、かつ引っ張り強度8〜20MPa、ヤング率2〜40MPaである[1]または[2]に記載の人工硬膜を提供する。
[4]本発明は、引っ張り強度が8〜20MPaであり、かつ全体の厚さが100〜1000μmである[1]、[2]または[3]に記載の人工硬膜を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の人工硬膜は、生体内分解性高分子を二層以上積層することにより構成され、少なくとも一層は漏水防止層(3)より構成される。漏水防止層(3)は縫合時に脳硬膜との密着性を上げること、針穴からの脳髄液の漏出を防止することを目的とするための層である。
漏水防止層(3)は、形状保持層(1)と共に積層して使用される。また漏水防止層(3)は形状保持層(1)と弾性層(2)の中間に配置して使用される。
漏水防止層(3)は、生体硬膜と縫合した際に脊髄液が滲み出る程度の小さな針穴を生じる場合には(a)粘度5,000〜500,000mPa・s、好ましくは20,000〜300,000mPa・s、より好ましくは50,000〜200,000mPa・sの高粘度生体内分解性高分子、もしくは生体硬膜と縫合した際に脊髄液が明らかに漏れ出すような大きな針穴を生じる場合には粘度5,000〜500,000Pa・s、好ましくは10,000〜300,000Pa・s、より好ましくは20,000〜100,000Pa・sの高粘度生体内分解性高分子、または(b)含水することで膨潤する生体内分解性高分子より構成される。含水膨潤する高分子には、水溶性のものと非水溶性のものがあるが、本発明では非水溶性が好ましい。
なお漏水防止層(3)は、生体硬膜と縫合した際に前記小さな針穴と大きな針穴との中間の大きさの針穴を生じる場合は、粘度500,000mPa・s〜5,000Pa・sの高粘度生体内分解性高分子が好適である。
本発明で、前記粘度5000mPa・s〜500,000Pa・sの高粘度生体内分解性高分子としては、例えば乳酸、ヒアルロン酸を主成分とする生体内分解性高分子、アテロコラーゲン等が好適に使用される。
前記乳酸を主成分とする生体内分解性高分子としては、ポリ乳酸単体、乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体等が好例として挙げられる。
前記ヒアルロン酸を主成分とする生体内分解性高分子としては、ヒアルロン酸単体、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの共重合体等が好例として挙げられる。
漏水防止層(3)は、生体硬膜と縫合した際に小さな針穴を生じる場合には粘度が5000mPa・s未満では頭内圧力により針穴から脳脊髄液等が押出される可能性があり、粘度が500000mPa・sを超えると流動性が低すぎ、小さな針穴を効率よく塞ぐことが出来ないため好ましくない。また、生体硬膜と縫合した際に大きな針穴を生じる場合には粘度が5000Pa・s未満では頭内圧力により針穴から脳脊髄液等が押出される可能性があり、粘度が500000Pa・sを超えると流動性が低すぎ、大きな針穴を効率よく塞ぐことが出来ないため好ましくない。
また前記含水膨潤する生体内分解性高分子としては、膨潤率が5〜500%、好ましくは20〜200%の生体内分解性高分子が使用される。これらの生体内分解性高分子としては、例えばヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの共重合体、アルギン酸の架橋物あるいは構成成分としてPEGを含有するヒドロキシカルボン酸共重合体等が好適に使用される。
含水膨潤する生体内分解性高分子は膨潤率が5%未満では膨潤により針穴を十分に防ぐことが出来ず、500%を超えると膜形状を維持することが出来ないため好ましくない。
【0007】
本発明の人工硬膜1、11の全体のヤング率は2〜40MPa、好ましくは2〜15MPaに設定される。ヤング率が2MPa未満では柔軟すぎ、硬膜としての形状を保てないため好ましくない。ヤング率が40MPaを超えると柔軟性が損なわれ、脳組織を傷つける可能性があるため好ましくない。
また本発明の人工硬膜1、11は全体の引っ張り強度が8〜20MPa、好ましくは8〜15MPaに設定される。引っ張り強度が8MPa未満では人工硬膜にかかりうる脳内圧力に耐えられないため好ましくない。20MPaを超えると不測の力が加わった際に周囲の脳硬膜に過度の負担がかかるため好ましくない。
また本発明の人工硬膜1、11は、全体の厚さを脳脊髄液の漏出を防止することができる厚さに形成され、全体の厚さは100〜1000μm、好ましくは200〜800μmに形成される。100μm未満では人工硬膜に必要とされる強度が保持できないため好ましくない。1000μmを超えると柔軟性が損なわれ、脳組織を傷つける可能性があるため好ましくない。
【0008】
本発明の人工硬膜1、11は、漏水防止層(3)と少なくとも形状保持層(1)を含み、必要により弾性層(2)を含む。
形状保持を目的とする形状保持層(1)は乳酸を主成分とする生体内分解性高分子、合成セルロース等でかつ、引っ張り強度8〜20MPa、ヤング率2〜40Mpaのものが好適に使用される。
前記乳酸を主成分とする生体内分解性高分子としては、ポリ乳酸、乳酸/グリコール酸の共重合体、乳酸/ε−カプロラクトンの共重合体、乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体等が好例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンからなる三元共重合体の乳酸の含有量は65〜99モル%のものが使用される。乳酸が65%未満では人工硬膜に要求される強度を下廻るため好ましくない。99%を超えると柔軟性が損なわれるため好ましくない。
【0009】
またゴム的弾性を有することで針穴を収縮させることを目的とする前記弾性層(2)はε−カプロラクトンを含有する生体内分解性高分子等でかつ、引っ張り強度8〜20MPa、ヤング率2〜40Mpaのものが好適に使用される。
前記ε−カプロラクトンを含有する生体内分解性高分子としては、乳酸/ε-カプロラクトンの共重合体、乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体等が例示される。
これらの内でも乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンからなる三元共重合体が特に好ましく、とりわけε−カプロラクトンの含有量10〜40モル%のものが好ましい。
ε−カプロラクトンが10モル%未満では水漏れを十分に防ぐことが可能なゴム的弾性が寄与できないため好ましくない。また40モル%を超えると強度が極度に下がるため好ましくない。
【0010】
図1は本発明の人工硬膜の一例を示す概略図で、図2は本発明の人工硬膜のその他の実施例を示す概略図である。
図1に例示した人工硬膜1は、生体内分解性高分子材料からなるシートを少なくとも二層以上、好ましくは三層以上積層することにより構成される。
前記積層のうち少なくとも一層は、(A)形状保持を目的とする生体内分解性高分子(例えば、乳酸を主成分とする乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体、合成セルロース等)より形成される形状保持層(1)である。
また前記積層のうち少なくとも一層は、(C)縫合時に脳硬膜との密着性を上げること、針穴からの脳髄液の漏出を防止することを目的とする高粘度生体内分解性高分子(例えばグリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体、ヒアルロン酸を主成分とする生体内分解性高分子、コラーゲン、あるいは乳酸を主成分とする非水溶性生体内分解性高分子等)または含水膨潤する生体内分解性高分子(例えばヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの共重合体、アルギン酸架橋物等)からなる漏水防止層(3)である。二層の場合、形状保持層(1)が外層O、漏水防止層(3)が内層Iとして配置される。
また、さらに望ましくは(B)ゴム的弾性を有することで針穴を収縮させることを目的とする生体内分解性高分子(例えば乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体等のε−カプロラクトンを含有する生体内分解性高分子)からなる弾性層(2)と形状保持層(1)の間に漏水防止層(3)を配置して、三層以上積層される。三層の場合、漏水防止層(3)は中間層Mとして配置される。
【0011】
図2に例示した人工硬膜11は(A)形状保持を目的とする例えば乳酸を主成分とする三元共重合体からなる形状保持層(1)と、(B)ゴム的弾性を有することで針穴を収縮させることを目的とする、例えば、ε−カプロラクトンを含有する生体内分解性高分子からなる弾性層(2)を積層した層L((1)+(2))から形成され、これらの積層L((1)+(2))の間に、(C)縫合時に脳硬膜との密着性を上げること、針穴からの脳髄液の漏出を防止することを目的とする高粘度生分解性高分子(例えばグリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体、ヒアルロン酸を主成分とする生体内分解性高分子、コラーゲンあるいは乳酸を主成分とする生体内分解性高分子等)、あるいは含水することで膨潤する非水溶性生体内分解性高分子(例えばヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの共重合体、アルギン酸架橋物等)からなる漏水防止層(3)を中間層Mとして配置したものである。さらに詳述すれば、図2に例示した人工硬膜11は、弾性層(2)と(2)の間に漏水防止層(3)を配置し、形状保持層(1)をそれぞれ最外層Oと最内層Iとして配置している。
【0012】
図3に例示した人工硬膜21は(A)形状保持を目的とする例えば乳酸とグリコール酸の共重合体からなる形状保持層(1)の両面に、(B)ゴム的弾性を有することで針穴を収縮させることを目的とする、例えば、ε−カプロラクトンを含有する生体内分解性高分子からなる弾性層(2)を積層接着した層K((2)+(1)+(2))から形成され、この積層K((2)+(1)+(2))とさらにもう1枚の(B)弾性層(2)との間に、(C)縫合時に脳硬膜との密着性を上げること、針穴からの脳髄液の漏出を防止することを目的とする高粘度生分解性高分子(例えばグリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体、ヒアルロン酸を主成分とする生体内分解性高分子、コラーゲンあるいは乳酸を主成分とする生体内分解性高分子等)、あるいは含水することで膨潤する非水溶性生体内分解性高分子(例えばヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの共重合体、アルギン酸架橋物等)からなる漏水防止層(3)を中間層Mとして配置したものである。
【0013】
本発明に使用される乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体の製法は、一般的な方法により製造するものであれば何れの方法によるものであってもよい。その一例を挙げれば、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトンをオクタン酸スズ、塩化スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、アルミニウムイソプロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、トリエチル亜鉛等の触媒存在下で加熱して、100〜250℃で開環重合を行うことによって製造することができる。
前記乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体の数平均分子量は形状保持層及び弾性層においては7万〜50万のものが使用される。7万未満では硬膜組織が修復するまで強度を維持することが出来ず、50万を超えると硬膜組織が修復後も長期にわたり頭蓋骨内に残存するからである。また、漏水防止層に用いる前記乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体の数平均分子量は4,000〜10万のものが使用される。4,000未満では分解速度が早すぎ、硬膜周囲のpHが過度に低下するため好ましくなく、10万を超えると流動性が低下しすぎ、効率よく針穴を塞ぐことが出来ないからである。
【0014】
【実施例】
実施例1
重量平均分子量が40万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(モル比72:5:23)粉末を180℃、20kg/cm2でプレスした後、25℃冷却プレスによって冷却し、ゴム的弾性を有する厚さ100μmのフィルム状シート(弾性層(2))を得た。重量平均分子量30万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(モル比79:12:9)から成る10デニールの糸を編んで、形状保持を目的とする厚さ100μmの生地(形状保持層(1))を作製した。これら形状保持層(1)と弾性層(2)の間に、重量平均分子量8,100の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(モル比70:18:12)から成る高粘度流体(漏水防止層(3))を配置(充填)し、ヒートプレスすることで一体化し、積層した全体の厚さ400μmの人工硬膜1(図1参照)を得た。
【0015】
実施例2
重量平均分子量が40万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(モル比72:5:23)を180℃、20kg/cm2でプレスした後、25℃冷却プレスによって冷却し、ゴム的弾性を有する厚さ100μmのフィルム状シート(弾性層(2))を得た。実施例1で使用した乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(モル比79:12:9)から成る10デニールの糸を編んで、形状保持を目的とする厚さ100μmの生地(形状保持層(1))を作製した。生地(形状保持層(1))と前記フィルム状シート(弾性層(2))を重ね、120℃、20kg/cm2でプレスして、180μmの一体化シート(積層L((1)+(2)))を得た。
この180μmの一体化シート(積層L((1)+(2)))を二枚、生地(形状保持層(1))がそれぞれ外側になるように重ね、その間に重量平均分子量7,500の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(モル比52:8:40)から成る高粘度流体(漏水防止層(3))を配置(充填)し、ヒートプレスすることで一体化し、積層した全体の厚さ500μmの人工硬膜11(図2参照)を得た。
【0016】
実施例3
重量平均分子量が10万の乳酸/グリコール酸の共重合体(モル比78:22)を180℃、20kg/cm2でプレスした後、15℃冷却プレスによって冷却し、形状維持を目的とする厚さ60μmのフィルム状シート(形状維持層(1))を得た。重量平均分子量が30万の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトンの三元共重合体(モル比67:6:27)を180℃、20kg/cm2でプレスした後、15℃冷却プレスによって冷却し、ゴム的弾性を有する厚さ75μmのフィルム状シート(弾性層(2))を得た。前記形状保持層(1)の両面に前記弾性層(2)を重ね、120℃、1kg/cm2でプレスして、厚さ210μmの一体化シート(積層K((2)+(1)+(2)))を得た。
この210μmの一体化シート(積層K((2)+(1)+(2)))と更にもう一枚の弾性層(2)を重ね、その間に重量平均分子量3万のグリコール酸/ε−カプロラクトンの共重合体(モル比34:66)から成る高粘度流体(漏水防止層(3))を配置(充填)し、ヒートプレスすることで一体化し、積層した全体の厚さ350μmの人工硬膜21(図3参照)を得た。
比較例
比較例1として手術時に人体より切除したヒト生体硬膜を使用した。比較例2として延伸テフロン製人工硬膜(ゴアテックス(登録商標)EPTFEパッチII)を使用した。
【0017】
〈性能評価試験〉
前記実施例に記載した本発明の実施例1の人工硬膜1、実施例2の人工硬膜11及び実施例3の人工硬膜21と前記比較例1に記載したヒト生体硬膜、比較例2に記載した延伸テフロン製人工硬膜(ゴアテックス(登録商標)EPTFEパッチII)を用いて、以下の各性能評価試験を行った。
物性評価試験
各試験n数は5で行い、その平均を求めた。
(1)引張り強度試験試験片を6.35mm×45mmに切断し、37℃の恒温条件でチャック間距離10mm、引張速度5mm/minで引張試験を行った。
(2)縫合強度試験試験片を6.35mm×45mmに切断した。上片及び右左辺からそれぞれ2.5mmの位置に縫合糸(ゴアテックス(登録商標)スーチャーCV-5)を通して円周100mmの輪状に結節した。この縫合糸を双方から37℃の恒温条件で引張速度5mm/minで引張り、その破断強度を測定した。
(3)クラッシュバーグ用ダンベルを利用してそれぞれ6.35mm×64mmの曲げ硬さ試験試験片を切断作製し、クラッシュバーグ試験機(TOYO
SEKI)により37℃の恒温条件で曲げ硬さを測定した。以上の結果を表1に示す。本実施例1の人工硬膜1、本実施例2の人工硬膜11及び本実施例3の人工硬膜21は比較例1のヒト生体硬膜と比較しても十分な引張り強度と縫合強度を有し、また人工硬膜として満足できる柔らかさであることが確認できた。
【0018】
【表1】
【0019】
分解性試験
実施例1の人工硬膜1、実施例2の人工硬膜11及び実施例3の人工硬膜21についてIn vitroにおける分解性試験を行った。それぞれ6.35mm×64mmに切断した分解性試験試験片を、ダルベッコリン酸緩衝液に浸漬し、37℃に保温した。これを4、7、15、21、30日後に取り出し、引張り強度試験を行った。以上の結果を表2に示す。実施例1の人工硬膜1及び実施例2の人工硬膜11はダルベッコリン酸緩衝液中において15日程度で、実施例3の人工硬膜21はダルベッコリン酸緩衝液中において30日程度でともに初期の半分程度の強度となることから、生体内でも加水分解されると考えられる。しかし、生体内では通常約1ヶ月で皮膜形成が起こり、これらが液漏れを防止し、更には硬膜が再生されるため前記分解速度は、実用上充分なものである。
【0020】
【表2】
【0021】
水漏れ試験
実施例1の人工硬膜1、実施例2の人工硬膜11及び実施例3の人工硬膜21と延伸テフロン製人工硬膜(比較例2)を用いて、水漏れ試験を行った。それぞれ縦47mm、横26mmの人工硬膜二枚を、重なり幅5mm、縫合間隔2mmになるように縫合糸(ゴアテックス(登録商標)スーチャーCV-5)によって結紮縫合し、47mm四方の水漏試験試験片を作製した。この試験片を47mmインラインフィルターホルダー(MILLIPORE)にセットし、インラインフィルターホルダーの上口部に37℃の生理食塩水バッグをセットして、60mmHgに加圧し、下口部から出る生理食塩水を回収し、1分間に縫合部より漏れ出す水の量を測定した。試験n数は5で行い、その平均を求めた。以上の結果を表3に示す。実施例1の人工硬膜1、実施例2の人工硬膜11及び実施例3の人工硬膜21は、それぞれ水漏れ速度が0で、延伸テフロン製人工硬膜(比較例2)と比較して格段に耐液漏れ性が向上したことが確認できた。
【0022】
【表3】
【0023】
漏水防止層の粘度と水漏れ防止効果の相関性
実施例3の人工硬膜21における漏水防止層の粘度を変化させ、水漏れ試験を行い、粘度と水漏れ防止効果の相関性を調査した。なお漏水防止層の粘度は回転粘度計(Rheopolym@粘弾性測定装置(REOLOGICA社製))により、37℃の温度条件で、各ポリマーの固有粘度を測定することにより得られた。
それぞれ縦47mm、横26mmの二枚の人工硬膜を、重なり幅3mm、縫合間隔2mmになるように縫合糸(VICRYL縫合糸5-0)によって連続縫合し、47mm四方の水漏れ試験試験片を作製した。この試験片を47mmインラインフィルターホルダー(MILLIPORE)にセットし、インラインフィルターホルダーの上口部に37℃の生理食塩水バッグをセットして、60mmHgに加圧し、下口部から出る生理食塩水を回収し、1分間に縫合部より漏れ出す水の量を測定した。試験n数は3で行い、その平均を求めた。以上の結果から漏水防止層の粘度と水漏れ速度をグラフ化し、図4に示す。VICRYL縫合糸のように針の外径と縫合糸の外形が大きく異なる縫合糸で人工硬膜を縫合すると、比較的大きな針穴が生じる。この様な大きな針穴を生じる場合には粘度5,000〜500,000Pa・s、好ましくは10,000〜300,000Pa・s、より好ましくは20,000〜100,000Pa・sの高粘度生体内分解性高分子を漏水防止層に用いることで、非常に効率よくに液漏れを防止できることが確認できた。
【0024】
また形状保持層1にポリ乳酸、漏水防止層3に乳酸とグリコール酸とε−カプロラクトンの共重合体、弾性層2にグリコール酸とε−カプロラクトンの共重合体を用いて、図1と同形態の人工硬膜を作成し、前記と同様の性能評価試験を行ったところ、引張り強度、縫合強度、曲げ硬さが若干増したものの、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0025】
【発明の作用効果】
以上各性能評価結果からも明らかなように、本発明の人工硬膜は従来の延伸テフロンから成る人工硬膜に代わるものとして、(a)人工硬膜に要求される機能である液漏れが無いこと、特に問題となる縫合糸周囲の針穴からの液漏れが無いこと、(b)手術時における縫合スパンが従来の人工硬膜よりも広くとれること、(c)生体硬膜に近い柔らかさ、弾性率を有すること、(d)組織の修復に伴い分解吸収されること、(e)十分な縫合強度を有すること等の機能を全て満たすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人工硬膜の一例を示す概略図
【図2】本発明の人工硬膜の一例を示す概略図
【図3】本発明の人工硬膜の一例を示す概略図
【図4】本発明の人工硬膜に用いる漏水防止層の粘度と水漏れ防止効果の相関性を示すグラフ
【符号の説明】
1 人工硬膜
11 人工硬膜
21 人工硬膜
(1) 形状保持層
(2) 弾性層
(3) 漏水防止層
L((1)+(2)) 積層
K((2)+(1)+(2)) 積層
O 外層
M 中間層
I 内層

Claims (4)

  1. 生体内分解性高分子を二層以上積層することにより構成され、
    少なくとも一層は、針穴からの脳髄液の漏出を防止することを目的とした漏水防止層(3)より構成され、
    当該漏水防止層(3)は、(A)37°Cにおける粘度が5,000mPa・s〜500,000Pa・s、数平均分子量が4,000から100,000の乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトン三元共重合体もしくはグリコール酸/ε−カプロラクトン共重合体からなる高粘度生体内分解性高分子、または(B)37°Cにおける粘度が5,000mPa・s〜500,000Pa・sのヒアルロン酸を主成分とするもしくはアテロコラーゲンよりなる高粘度生体内分解性高分子、より構成され、
    他の少なくとも一層は、形状保持を目的とする形状保持層(1)より構成され、当該形状保持層(1)は、乳酸を主成分とする生体内分解性高分子または合成セルロースからなり、かつ引っ張り強度8〜20MPa、ヤング率2〜40MPaであり、
    全体のヤング率が2〜40MPaであることを特徴とする人工硬膜。
  2. 漏水防止層(3)が、前記高粘度生体内分解性高分子に代えて、粘度が 5,000mPa s 500,000Pa s 、膨潤率が 5 500 %の含水膨潤する生体内分解性高分子より構成されることを特徴とする請求項1に記載の人工硬膜。
  3. 二層以上積層することにより構成された人工硬膜において、針穴からの脳髄液の漏出を防止することを目的とした漏水防止層(3)と、形状保持を目的とする形状保持層(1)と、ゴム的弾性を有することで針穴を収縮させることを目的とする弾性層(2)とを含み、弾性層(2)はε−カプロラクトン単位を含有する生体内分解性高分子からなり、かつ引っ張り強度8〜20MPa、ヤング率2〜40MPaであることを特徴とする請求項1または2に記載の人工硬膜。
  4. 引っ張り強度が8〜20MPaであり、かつ全体の厚さが100〜1000μmであることを特徴とする請求項1、2または3に記載の人工硬膜。
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