JP3744006B2 - α−アルミナ粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、α−アルミナ粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
α−アルミナ粉末は、研磨材用原料、焼結材用原料、プラズマ溶射材用原料、充填材用原料等に広く用いられている。従来の一般的な製造方法により得られるα−アルミナ粉末は、形状が不均一な多結晶体で、凝集粒子を多く含み、粒度分布が広い、また用途によってはアルミナ純度が低い等の問題があった。これらの問題点を克服するために、また、特定の用途においては一次粒子の粒子径や形状を制御するために、後述する特殊な製造方法によるα−アルミナ粉末が用いられてきた。しかしながら、このような方法によっても一次粒子の粒子径や形状が制御された、均質なα−アルミナ粒子からなる一次粒子の粒度分布の狭いα−アルミナ粉末を製造することは困難であった。また、これまでの方法によって得られるα−アルミナ粉末は、厚みの薄い板状かあるいは一次粒子の粒度分布が広いもので、これまで配向(粒子が充填、あるいは一層以上の厚みで積層される場合、特定方向に各粒子が配置されること)が容易な形状である柱状や繭状、あるいは厚みのある板状の、α−アルミナ粒子からなる一次粒子の粒度分布が狭いα−アルミナ粉末を製造することは困難であった。
【0003】
α−アルミナ粉末の一般的でかつ最も安価な製造方法はバイヤー法である。バイヤー法においては、原料であるボーキサイトからα−アルミナ粉末を製造する中間段階で水酸化アルミニウムまたは遷移アルミナが得られる。水酸化アルミニウムまたは遷移アルミナを大気中で焼成することにより、α−アルミナ粉末が製造されている。
【0004】
中間段階において工業的に安価に得られる水酸化アルミニウムまたは遷移アルミナは、通常、粒子径が10μmより大きな凝集粒子であり、これらの水酸化アルミニウムまたは遷移アルミナを大気中で焼成して得られる従来のα−アルミナ粉末は、強固に凝集した粗粒子を多く含み、一次粒子の形状が不均一な粉末であった。この凝集した粗粒子を含むα−アルミナ粉末は、それぞれの用途に応じてボールミルや振動ミルを使用して粉砕工程を経て製品とされるが、粉砕は必ずしも容易ではなく、そのために粉砕コストもかかり、また、粉砕が困難なα−アルミナ粉末は長時間にわたる粉砕のために微粉末が発生するという問題を有していた。
【0005】
このような問題を解決するために幾つかの提案がなされてきた。例えば、α−アルミナ粒子の形状を改良する方法として、特開昭59−97528号公報には、原料にバイヤー法による水酸化アルミニウムを用い、アンモニウムを含むホウ素およびホウ素系鉱化剤の存在下に仮焼することにより、平均一次粒子径が1〜10μmであり、前記したD/H比が1に近いα−アルミナ粉末を製造する方法が開示されている。しかし、この方法は粒子径が数十μm以上の水酸化アルミニウムを原料に用いロータリーキルンで焼成しているので、一次粒子の粒子形状が不均一であり、粒度分布が広い。また、一次粒子の粒子径や形状を任意に制御することは困難である。
【0006】
α−アルミナ粉末の特殊な製造方法としては、水酸化アルミニウムの水熱処理による方法(以下、水熱処理法という)、水酸化アルミニウムにフラックスを添加して溶融して析出させる方法(以下、フラックス法という)および水酸化アルミニウムを鉱化剤の存在下で焼成する方法等が知られている。
【0007】
まず、水熱処理法としては、特公昭57−22886号公報にはコランダムを種晶として添加し粒子径を制御する方法が開示されているが、高温、高圧下での合成であり、得られるα−アルミナ粉末が高価になるという問題があった。
【0008】
次に、フラックス法は、α−アルミナ粉末を研磨材、充填材等に用いる目的でその一次粒子の形状や粒子径を制御する方法として提案されてきた。例えば、特開平3−131517号公報には、融点が800℃以下のフッ素系フラックスの存在下に水酸化アルミニウムを仮焼することにより、平均一次粒子径が2〜20μmであり、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比が5〜40の六角板状のα−アルミナ粉末を製造する方法が開示されている。しかし、この方法では、一次粒子の粒子径が2μm以下の微細なα−アルミナ粉末ができず、また形状はすべて板状であり、形状や粒子径を任意に制御することは不可能であった。
【0009】
ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサイアティ(Journal of American Ceramic Society)68(9)、500〜505(1985)には、ベーマイトへのα−アルミナ粉末の添加によるα化温度の低下が報告されているが、目的は微粒子の焼結体を得ることであり、この方法からでは一次粒子の粒子径や形状が制御されたα−アルミナ粉末を得ることはできない。
【0010】
米国特許第4657754号には、α−アルミナプレカーサーにα−アルミナを種晶として添加、焼成し、粉砕することにより、1μmより小さいα−アルミナ粉末を得る方法が開示されている。しかしこの方法では1μm以下の一次粒子が凝集した粉末しか得られず、したがって粉砕が必要なことから、得られる粉末は粒度分布が広い。また、数十μmの粒子は合成することができない。
【0011】
したがって、これまでα−アルミナ粉末の製造方法において、粒子径をサブミクロンから数十ミクロンまで任意に制御できる製造方法、あるいは六角板状から柱状にいたる諸形状の製造方法、さらに、A面{11−20}、C面{0001}、N面{22−43}およびR面{10−12}の晶癖については任意に制御することができる粒度分布の狭い粉末を得る製造方法は未だ確立されておらず、その開発が強く望まれていた。
【0012】
また、これまでα−アルミナ粉末で厚みがあり、配向が容易で粒度分布が狭い、特に研磨材、充填材、スペーサーあるいは焼結体用原料等に最適な粉末は未だに得られていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記した問題を解決して、種々なアルミナ原料から出発して、α−アルミナ粒子の一次粒子径や形状を任意に制御でき、一次粒子の粒度分布が狭いα−アルミナ粉末の製造方法を提供することにある。
【0014】
さらに、研磨材、充填材、スペーサーあるいは焼結体用原料等に最適で、形状が実質的に8面または20面から構成されたα−アルミナ粒子からなる粒度分布が狭いα−アルミナ粉末を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明はつぎの発明からなる。
(1)遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、塩化水素ガスを20体積%以上含有した雰囲気ガス中にて、種晶(種晶としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)および/または形状制御剤(形状制御剤としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの単体およびそれらの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)の存在下で、500℃以上1400℃以下の温度範囲で焼成することを特徴とするα−アルミナ粉末の製造方法。
(2)遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、塩素ガス30体積%以上および水蒸気5体積%以上を導入した雰囲気ガス中にて、種晶(種晶としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)および/または形状制御剤(形状制御剤としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの単体およびそれらの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)の存在下で、500℃以上1400℃以下の温度範囲で焼成することを特徴とするα−アルミナ粉末の製造方法。
【0016】
(3)遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、塩素ガスを5体積%以上含有した雰囲気ガス中にて種晶(種晶としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)および/または形状制御剤(形状制御剤としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの単体およびそれらの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)の存在下で、950℃以上1500℃以下の温度範囲で焼成することを特徴とするα−アルミナ粉末の製造方法。
【0017】
(4)種晶として用いられる、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの各化合物が、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ホウ化物から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
(5)形状制御剤として用いられるマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの各化合物が、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ハロゲン化物、ホウ化物から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする前項(1)〜(4)のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
【0018】
(6)α−アルミナ粒子が、均質で、8面以上の多面体形状を有し、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比が0.3以上30以下であるα−アルミナ粒子からなるα−アルミナ粉末である前項(1)〜(5)のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
(7)熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料が、水酸化アルミニウム、明バンまたは硫バンであることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
(8)実質的に8面または20面から構成された、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比が0.3以上3.0以下であり、かつ六方格子面に垂直な軸に対して回転次数が6で、回転対称形状の粒子からなり、α−アルミナ粒子の累積粒度分布の微粒側から累積10%、累積90%の粒径をそれぞれD10、D90としたとき、D90/D10が10以下である粒度分布を有することを特徴とするα−アルミナ粉末。
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のα−アルミナ粉末の製造においては、原料として遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料が用いられる。遷移アルミナとは、Al2 O3 として表される多形を有するアルミナのうち、α形以外の全てのアルミナを意味する。具体的には、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ等を例示することができる。
【0020】
熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料とは、本発明の製造方法の焼成工程において、遷移アルミナを経由して目的とするα−アルミナ粉末を与える遷移アルミナの前駆体を意味する。具体的には、水酸化アルミニウム、硫バン(硫酸アルミニウム)、硫酸アルミニウムカリウムおよび硫酸アルミニウムアンモニウム等のいわゆる明バン類、アンモニウムアルミニウム炭酸塩の他、アルミナゲル、例えば、アルミニウムの水中放電法によるアルミナゲル等を挙げることができる。
【0021】
遷移アルミナおよび熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料の合成方法は特に限定されない。例えば、水酸化アルミニウムは、バイヤー法、有機アルミニウム化合物の加水分解法あるいはコンデンサー等のエッチング廃液から得られるアルミニウム化合物を出発原料として合成する方法等により得ることができる。
【0022】
本発明の方法によれば、バイヤー法のような工業的に安価な方法で得られる粒子径が10μm以上の水酸化アルミニウムや遷移アルミナを原料として用いて、目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。遷移アルミナは、水酸化アルミニウムを熱処理する方法、硫酸アルミニウムの分解法、明バン分解法、塩化アルミニウムの気相分解法あるいはアンモニウムアルミニウム炭酸塩の分解法等により得られる。
【0023】
本発明に用いられる種晶とは、α−アルミナ粒子の結晶成長の核となるものを意味し、該種晶を核としてそのまわりにα−アルミナ粒子が成長する。この機能を有するものであれば種晶は限定されずどのようなものでも用いることができるが、本発明において好ましい種晶は、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケル等の各化合物から選ばれる一種または二種以上のものである。ここで化合物としてはそれらの金属の酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ホウ化物等が挙げられる。好ましくは酸化物、窒化物である。ここでバナジウムは形状制御剤としても用いることができる。
【0024】
本発明においては、種晶の添加量は原料をアルミナに換算して100重量部として、これに対し10-3〜50重量部、好ましくは10-3〜30重量部、さらに好ましくは10-3〜10重量部である。得られるα−アルミナ粉末の一次粒子の粒子径は、種晶の数で制御でき、種晶の数が多いと粒子径は小さくなる。
【0025】
本発明に用いられる形状制御剤とは、その作用機構は明らかではないが、結晶の成長の過程で作用し、後述するD/H比および晶癖を変化させる働きをするものを言う。このような機能を有するものであれば必ずしも限定されないが、本発明において好ましい形状制御剤は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの金属単体およびそれらの各化合物から選ばれる一種または二種以上のものである。ここで化合物としてはそれらの金属の酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ハロゲン化物、ホウ化物等が挙げられる。好ましくは酸化物である。
【0026】
本発明においては、形状制御剤の添加量は原料をアルミナに換算して100重量部として、これに対し10-3〜50重量部、好ましくは10-3〜30重量部、さらに好ましくは10-3〜10重量部である。その効果は、たとえばD/H比を大きくする形状制御剤の場合、添加量を多くすることにより、より大きいD/H比を有するα−アルミナ粉末を得ることができる。また、晶癖を制御する形状制御剤では、たとえばN面{22−43}を出さしめる形状制御剤では、添加量を多くすることにより、N面の面積を大きくすることができる。
【0027】
種晶と形状制御剤を併用することもできる。また、形状制御剤を選ぶことにより用途に適した一次粒子の粒子径および形状を有するα−アルミナ粉末を製造することが可能である。
【0028】
種晶と形状制御剤を同時に用いる場合は、それらの添加量は原料をアルミナに換算して100重量部として、これに対し10-3〜50重量部、好ましくは10-3〜30重量部、さらに好ましくは10-3〜10重量部である。
【0029】
遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料と種晶または形状制御剤の混合方法は特に限定されず、例えば、湿式の場合には溶媒として水系、有機溶媒系のいずれも使用することができる。また、ボールミル、超音波分散、攪拌混合、バーチカルグラニュレーター等の方法を用いることができる。また、混合用メディア等の混合装置材料の混合時の磨耗物を種晶または形状制御剤として用いることもできる。例えば、α−アルミナ製のボールでボールミル混合することによりα−アルミナの磨耗粉を種晶として原料に混合して用いることができる。
【0030】
本発明においては、上記の遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、ハロゲン化水素ガスを含有した雰囲気ガス中であって、雰囲気ガスの全体積に対して塩化水素ガス20体積%以上の雰囲気ガス中にて焼成する。雰囲気ガスであるハロゲン化水素ガスの希釈ガスとしては、窒素、水素あるいはアルゴン等の不活性ガスおよび空気を用いることができる。ハロゲン化水素ガスを含む雰囲気ガスの圧力は特に限定されず、工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中で焼成することにより、後述するように比較的に低い焼成温度で、目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
【0031】
ハロゲン化水素ガスの代わりにハロゲンガスおよび水蒸気の混合ガスを用いることもできる。遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料をハロゲンガスおよび水蒸気を導入した雰囲気ガス中であって、雰囲気ガスの全体積に対して、塩素ガス30体積%以上および水蒸気5体積%以上を導入して焼成する。導入するハロゲンガスおよび水蒸気の希釈ガスとしては、窒素、水素あるいはアルゴン等の不活性ガスおよび空気を用いることができる。ハロゲンガスおよび水蒸気を含む雰囲気ガスの圧力は特に限定されず、工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中で焼成することにより、後述するように比較的に低い焼成温度で、目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
【0032】
ハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスおよび水蒸気の混合ガスを用いる場合の焼成温度範囲は、500℃以上1400℃以下、より好ましくは600℃以上1300℃以下、さらに好ましくは700℃以上1200℃以下である。この温度範囲に制御して焼成することにより、工業的に有利な生成速度で、生成するα−アルミナ粉末の一次粒子同士の凝集が起こりにくく、焼成直後でも粒度分布の狭いα−アルミナ粉末を得ることができる。原料として用いる遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料の粒子径が大きい場合、例えば、凝集粒子であってその平均粒子径が10μmを越えるような場合には、焼成温度は相対的に高い方が好ましく、700℃以上が特に好ましい。
【0033】
本発明においては、上記の遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、ハロゲンガスを含有する雰囲気ガス中であって、雰囲気ガスの全体積に対して塩素ガス5体積%以上の雰囲気ガス中にて焼成する。導入するハロゲンガスの希釈ガスとしては、窒素、水素あるいはアルゴン等の不活性ガスおよび空気を用いることができる。ハロゲンガスを含む雰囲気ガスの圧力は特に限定されず、工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。このような雰囲気ガス中で焼成することにより、目的とするα−アルミナ粉末を得ることができる。
【0034】
ハロゲンガスを用いる場合の焼成温度範囲は、950℃以上1500℃以下、より好ましくは1050℃以上1400℃以下、さらに好ましくは1100℃以上1300℃以下である。この温度範囲に制御して焼成することにより、工業的に有利な生成速度で、生成するα−アルミナ粉末の一次粒子同士の凝集が起こりにくく、焼成直後でも粒度分布の狭いα−アルミナ粉末を得ることができる。原料として用いる遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料の粒子径が大きい場合、例えば、凝集粒子であってその平均粒子径が10μmを越えるような場合には、焼成温度は相対的に高い方が好ましく、1100℃以上が特に好ましい。
【0035】
適切な焼成の時間は雰囲気ガスの濃度や焼成の温度にも依存するので必ずしも限定されないが、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上である。アルミナ原料がα−アルミナ粒子に結晶成長するまで焼成すれば十分である。
【0036】
本発明において、ハロゲンとしては塩素を用いることができる。
【0037】
雰囲気ガスの供給源や供給方法は特に限定されない。遷移アルミナ等の原料が存在する反応系に上記の雰囲気ガスを導入することができればよい。供給源としては通常はボンベガスを用いることができるが、ハロゲン化水素の水溶液やハロゲン化アンモニウム等のハロゲン化合物あるいはハロゲン含有高分子化合物等をハロゲンガス等の原料として用いる場合には、それらの蒸気圧または分解により上記した所定のガス組成になるようにして用いることもできる。ガスの供給方法としては連続方式または回分方式のいずれでも用いることができる。
【0038】
焼成装置は必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。焼成炉はハロゲン化水素ガス、ハロゲンガス等に腐食されない材質で構成されていることが望ましく、さらには雰囲気を調整できる機構を備えていることが望ましい。また、ハロゲン化水素ガスやハロゲンガス等の酸性ガスを用いるので、焼成炉には気密性があることが好ましい。工業的には連続方式で焼成することが好ましく、例えば、トンネル炉、ロータリーキルンあるいはプッシャー炉等を用いることができる。
【0039】
製造工程の中で用いられる装置の材質としては、酸性の雰囲気中で反応が進行するので、アルミナ製、石英製、耐酸レンガあるいはグラファイト製のルツボやボート等を用いることが望ましい。
【0040】
本発明の製造方法によれば、一次粒子の粒子径や形状を任意に制御できるが、形状制御剤を選ぶことにより、実質的に8面以上から構成されたα−アルミナ粒子で、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比が0.3以上30以下の範囲のものを得ることができる。また、本発明で得られるα−アルミナ粒子は、内部に欠陥が少なく、粒子の圧壊強度が高いものである。
【0041】
本発明で得られる実質的に8面または20面から構成されたα−アルミナ粒子は、六方格子面に垂直な軸に対して回転次数が6で、回転対称形状のものである。ここで、2π/n(nは正の整数)の回転で全く同じ図形がくりかえされる性質を回転対称といい、nを回転対称の次数、その回転軸をn回の回転軸という。本発明によれば、nが6の回転軸を有するα−アルミナ粒子が得られる。
【0042】
粒度分布は、α−アルミナ粉末の累積粒度分布の微粒側から累積10%、累積90%の粒子径をそれぞれD10、D90としたとき、D90/D10で表すことができる。本発明のα−アルミナ粉末においては、D90/D10は10以下、好ましくは5以下である。
【0043】
上記の製造方法により、実質的に8面または20面から構成された図12、13に例示した本発明のα−アルミナ粉末は、粒度分布が狭く、特に研磨材、充填材、スペーサーあるいは焼結体用原料等に最適なものである。
【0044】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
なお、本発明における各種の測定はつぎのようにして行った。
1.α−アルミナ粉末の一次粒子の粒子径と粒度分布(D90/D10)の測定。
(1)一次粒子の粒子径は、α−アルミナ粉末のSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製:T−300)写真を写し、その写真から80ないし100個の粒子を選び出して画像解析を行い、円相当径の平均値とその分布を求めた。円相当径とは、面積が等しい真円の直径に換算した値をいう。
(2)粒度分布(D90/D10)は、レーザー散乱法を測定原理とするマスターサイザー(マルバーン社製)を用いて測定した。
【0046】
2.結晶形状(D/H比)の測定。
本発明におけるα−アルミナ粒子の形状とは、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比をいう。D/H比は、α−アルミナ粉末のSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製:T−300)写真を写し、その写真から5ないし10個の粒子を選び出して画像解析を行い、その平均値として求めた。
【0047】
3.晶癖の評価。
本発明におけるα−アルミナ粒子の形状の評価として、結晶の晶癖を観察した。本発明により得られた多面体形状を有するα−アルミナ粒子の晶癖(AからIで表す)を図16に示す。α−アルミナの結晶は六方晶であり、晶癖とはA面{11−20}、C面{0001}、N面{22−43}およびR面{10−12}からなる結晶面の現れ方で特徴づけられる結晶の形態をいう。図16に結晶面A(a)、C(c)、N(n)およびR(r)を記した。
【0048】
4.結晶面の数。
α−アルミナ粉末のSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製:T−300)写真の画像解析により求めた。
5.回転対象形状。
粒子が回転対象であることの判断はα−アルミナ粉末のSEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製:T−300)写真観察により行った。
6.粒子の圧壊強度。
ダイナミック超微小硬度計(株式会社島津製作所製)により測定した。
7.重装密度。
JIS−H−1902により、α−アルミナ粉末の重装密度を測定した。
8.透過型電子顕微鏡(TEM)によるα−アルミナ粒子の内部微細構造の観察。
超高圧透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、加速電圧:1200KVA)により、α−アルミナ粒子の内部微細構造を観察した。
【0049】
実施例において使用した遷移アルミナ等の原料はつぎに示すとおりである。
1.遷移アルミナA(各表中で遷アルAと略す)。
アルミニウムイソプロポキシドの加水分解法により得た水酸化アルミニウムを焼成した遷移アルミナ(商品名:AKP−G15、住友化学工業(株)製、粒子径:約4μm)
2.遷移アルミナB(各表中で遷アルBと略す)。
明バン法による遷移アルミナ(商品名:CR125、バイコウスキー社製、粒子径:約4μm)
【0050】
3.水酸化アルミニウムA(各表中で水アルAと略す)。
アルミニウムイソプロポキシドの加水分解により合成して得た粉末であり、2次粒子径は約8μmである。
4.水酸化アルミニウムB(各表中で水アルBと略す)。
バイヤー法による粉末(商品名:C301、住友化学工業(株)製、2次粒子径は約4μmである。
5.水酸化アルミニウムC(各表中で水アルCと略す)。
バイヤー法による粉末(商品名:C12、住友化学工業(株)製、2次粒子径は約30μmである。
【0051】
6.明バン〔AlNH4 (SO4 )・12H2 O〕
熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料。和光純薬(株)製の試薬を用いた。
7.硫バン〔Al2 (SO4 )3 ・16H2 O〕
熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料。住友化学工業(株)製の硫バンを用いた。
【0052】
実施例において用いた種晶はつぎに示すとおりである。
1.α−アルミナA(各表中でαアルAと略す)。
住友化学工業(株)製のα−アルミナ粉末。商品名:AKP−50、平均粒子径は約0.3μmである。
2.α−アルミナB(各表中でαアルBと略す)。
住友化学工業(株)製のα−アルミナ粉末。商品名:AKP−15、平均粒子径は約0.8μmである。
3.α−アルミナC(各表中でαアルCと略す)。
アルミナボールを用いてボールミル混合を行い、アルミナボールからの磨耗物を結晶種として混入させた。
4.α−アルミナD(各表中でαアルDと略す)。
本発明で合成された3μmのα−アルミナ粉末。
【0053】
5.酸化チタン(富士チタン工業(株)製の試薬:TiO2 )。
6.酸化クロム(和光純薬(株)製の試薬:Cr2 O3 )。
7.酸化鉄(バイエルジャパン(株)製の試薬:Fe2 O3 )。
8.酸化ニッケル(半井化学薬品(株)製の試薬:Ni2 O3 )。
9.酸化バナジウム(半井化学薬品(株)製の試薬:V2 O5 )。
10.窒化アルミニウム(徳山曹達(株)製の試薬:AlN)。
【0054】
実施例において用いた形状制御剤はつぎに示すとおりである。
1.酸化マグネシウム(和光純薬(株)製の試薬:MgO)。
2.酸化ホウ素(和光純薬(株)製の試薬:B2 O3 )。
2.水酸化マグネシウム(和光純薬(株)製の試薬:Mg(OH)2 )。
3.酸化珪素(日本アエロジル(株)製:SiO2 )。
4.酸化ジルコニウム(半井化学薬品(株)製のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 )を加水分解して得られたジルコニアゲル:ZrO2 )。
5.酸化銅(半井化学薬品(株)製の試薬:CuO)。
6.酸化ストロンチウム(半井化学薬品(株)製の試薬:SrO)。
【0055】
7.酸化亜鉛(半井化学薬品(株)製の試薬:ZnO)。
8.酸化モリブデン(半井化学薬品(株)製の試薬:MoO3 )。
9.酸化ニオブ(半井化学薬品(株)製の試薬:Nb2 O5 )。
10.酸化カルシウム(和光純薬(株)製の試薬:CaO)。
11.酸化ホウ素(和光純薬(株)製の試薬:B2 O3 )。
12.酸化イットリウム(日本イットリウム(株)製:Y2 O3 )。
【0056】
13.酸化ランタン(半井化学薬品(株)製の試薬:La2 O3 )。
14.酸化セリウム(三徳金属工業(株)製:CeO2 )。
15.酸化ネオジム(日本イットリウム(株)製:Nd2 O3 )。
【0057】
アルミナボールを用いる場合以外の原料の混合は、溶媒としてイソプロピルアルコールを用い超音波分散により行った。混合後の乾燥はロータリーエバポレーターと乾燥器により行った。
【0058】
塩化水素ガスは鶴見ソーダ(株)製のボンベ塩化水素ガス(純度99.9%)を用いた。また、塩素ガスは藤本産業(株)製のボンベ塩素ガス(純度99.4%)を用いた。
【0059】
フッ化水素ガスはフッ化アンモニウムの分解ガスを用いた。フッ化アンモニウムをその昇華温度220℃に加熱して得られた分解ガスを炉芯管内に導入することにより雰囲気を調整した。フッ化アンモニウムは保持温度1100℃では完全に分解し、体積%でそれぞれフッ化水素ガス33体積%、水素ガス17体積%、窒素ガス50体積%の雰囲気となった。
【0060】
臭化水素ガスは臭化アンモニウムの分解ガスを用いた。臭化アンモニウムをその昇華温度420℃に加熱して得られた分解ガスを炉芯管内に導入することにより雰囲気を調整した。臭化アンモニウムは保持温度1100℃では完全に分解し、体積%でそれぞれ臭化水素ガス33体積%、水素ガス17体積%、窒素ガス50体積%の雰囲気となった。
【0061】
ヨウ化水素ガスはヨウ化アンモニウムの分解ガスを用いた。ヨウ化アンモニウムをその昇華温度380℃に加熱して得られた分解ガスを炉芯管内に導入することにより雰囲気を調整した。ヨウ化アンモニウムは保持温度1100℃では完全に分解し、体積%でそれぞれヨウ化水素ガス33体積%、水素ガス17体積%、窒素ガス50体積%の雰囲気となった。
【0062】
遷移アルミナまたは水酸化アルミニウム等のアルミナ原料に種晶および/または形状制御剤を添加してこれをアルミナボートに充填した。充填量は0.4g、充填深さは5mmとした。焼成は石英製炉芯管(直径27mm、長さ1000mm)を用いた管状炉(株式会社モトヤマ製、DSPSH−28)で行った。窒素ガスを流通させつつ、昇温速度500℃/時間にて昇温し、雰囲気導入温度(雰囲気ガスを管状炉に導入する温度)になったときあらかじめ濃度を調整した雰囲気ガスを管状炉内に導入した。
なお、水蒸気分圧は水の温度による飽和水蒸気圧変化により制御し、水蒸気は窒素ガスにより焼成炉内へ導入した。
雰囲気ガス濃度の調整は、流量計によりガス流量の調整により行った。雰囲気ガスの流量は、線流速を20mm/分に調整した。この方式をガスフロー方式と称することにする。但し、参考例9については塩化水素ガス濃度が低いため上記のガスフロー方式の焼成ではなく雰囲気ガスの導入の後、雰囲気ガスを停止して行った。雰囲気ガスの全圧はすべて大気圧であった。
【0063】
所定の温度に到った後はその温度にて所定の時間保持した。これをそれぞれ保持温度(焼成温度)および保持時間(焼成時間)と称する。所定の保持時間の経過後、自然放冷して目的とするα−アルミナ粉末を得た。
【0064】
参考例1
アルミナ原料として遷移アルミナAを用い、種晶としてα−アルミナAを3重量部(添加量は、アルミナ原料から得られるアルミナ量100重量部に対するもの、以下同様)添加し、雰囲気ガスとしてフッ化アンモニウムの分解ガスから得たフッ化水素ガスを管状炉内に導入して実験した。雰囲気ガスの導入温度は800℃、保持温度(焼成温度)は1100℃であり、保持時間(焼成時間)は30分間であった。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図1に示す。実験条件および実験結果を表1、2に示す。
【0065】
参考例2
参考例1において、種晶の代わりに形状制御剤として酸化ジルコニウム(半井化学薬品(株)製のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 )を加水分解して得られたジルコニアゲル:ZrO2 )を添加する以外は全て参考例1と同様にして実験を行った。形状制御剤の添加量は、アルミナ原料から得られるアルミナ量100重量部に対する重量部で表すものとする。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図2に示す。実験条件および実験結果を表1、2に示す。
【0066】
参考例3
参考例1において、アルミナ原料として遷移アルミナA(γ−アルミナ)の代わりに水酸化アルミニウムを用いる以外は全て参考例1と同様にして実験を行う。その結果、参考例1で得られたものと同様のα−アルミナ粉末を得ることができる。実験条件を表1、2に示す。
【0067】
参考例4
フッ化水素ガスの代わりに雰囲気ガスにフッ素ガスと水蒸気を導入する以外は全て参考例1と同様にして実験を行う。その結果、参考例1で得られたものと同様のα−アルミナ粉末を得ることができる。実験条件を表1、2に示す。
【0068】
実施例5〜7、参考例8〜9
アルミナ原料として水酸化アルミニウムAを用い、種晶としてα−アルミナAを0.1重量部添加した場合の雰囲気ガス中の塩化水素ガス濃度の体積%を変化させた実施例、参考例である。雰囲気導入温度は800℃、焼成温度(保持温度)は1100℃であり、塩化水素ガス濃度の体積%に対応させて焼成時間(保持時間)も変化させている。また、実施例6においては、得られたα−アルミナ粒子の内部微細構造をTEMにより観察した結果、欠陥は見られなかった。また、重装密度を測定した結果1.52g/cm3 で、同じ粒子径の電融アルミナの値(比較例4)1.30g/cm3 より高い値であった。実験条件および実験結果を表1、2に示す。
【0069】
実施例10〜11
実施例6において、雰囲気導入温度、焼成温度および焼成時間を変化させた実施例である。実験条件および実験結果を表1、2に示す。
【0070】
実施例12
実施例6において、雰囲気導入温度のみを変化させた実施例である。実験条件および実験結果を表1、2に示す。
【0071】
実施例13〜18
実施例6において、遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなる種々のアルミナ原料を用いた場合の実施例である。実験条件および実験結果を表1、2に示す。
【0072】
実施例19〜30
実施例6において、種晶として種々の化合物を用いた場合およびその添加量を変化させた場合の実施例である。また、実施例25においては、得られたα−アルミナ粒子の内部微細構造をTEMにより観察した結果、欠陥は見られなかった。実験条件および実験結果を表1、2、3、4に示す。
実施例19で得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図3に、粒度分布の測定結果を図4に示した。また、重装密度を測定した結果1.13g/cm3 で、同じ粒子径の電融アルミナの値(比較例5)0.80g/cm3 より高い値であった。
実施例29の結晶種として酸化バナジウムを用いた系では、他の結晶種を用いた場合に比してD/H比が2.0と大きく特異な結晶形状を示した。
実施例22および26で得られたα−アルミナ粉末の粒子について、その圧壊強度を測定した。
また、実施例22で重装密度を測定した結果2.24g/cm3 で、同じ粒子径の電融アルミナの値(比較例6)1.50g/cm3 より高い値であった。
【0073】
実施例31
雰囲気ガスとして塩素ガスと水蒸気を管状炉内に導入して用いた以外は実施例6と同様にして実験を行った。実験条件および実験結果を表3、4に示す。
【0074】
実施例32、33
実施例6において、種晶の他に形状制御剤も添加した実施例である。形状制御剤として実施例32では酸化マグネシウムを、実施例33では酸化ホウ素をそれぞれ用いた。実験条件および実験結果を表3、4に示す。
【0075】
実施例34〜49
アルミナ原料として水酸化アルミニウムAを用い、形状制御剤として種々の金属酸化物を添加した場合の実施例である。実験条件および実験結果を表3、4に示す。
実施例35で得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図5に、粒度分布の測定結果を図6に示す。
【0076】
実施例50、51
実施例38および35において、雰囲気ガスの導入温度を変化させた実施例である。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0077】
実施例52
アルミナ原料として遷移アルミナAを用いる以外は実施例45と同様にして実験を行った。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0078】
実施例53
雰囲気ガスとして塩素ガスおよび水蒸気を管状炉内に導入して用いた以外は実施例35と同様にして実験を行う。その結果、実施例35と同様のα−アルミナ粉末を得ることができる。実験条件を表5、6に示す。
【0079】
実施例54
アルミナ原料として明バンを用いる以外は実施例35と同様にして実験を行う。その結果、実施例35とほぼ同様のα−アルミナ粉末を得ることができる。実験条件を表5、6に示す。
【0080】
参考例55
アルミナ原料として遷移アルミナAを用い、種晶としてα−アルミナAを用いて、雰囲気ガスとして臭化アンモニウムの分解ガスから得た臭化水素を管状炉内に導入して実験した。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図7に示す。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0081】
参考例56
参考例55において、種晶の代わりに形状制御剤として、酸化ジルコニウム(半井化学薬品(株)製のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 )を加水分解して得られたジルコニアゲル:ZrO2 )を添加する以外は全て参考例55と同様にして実験を行った。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図8に示す。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0082】
参考例57
アルミナ原料として水酸化アルミニウムを用いる以外は参考例55と同様にして実験を行う。その結果、参考例55で得られたものと同様のα−アルミナ粉末を得ることができる。実験条件を表5、6に示す。
【0083】
参考例58
雰囲気ガスに臭素ガスと水蒸気を導入する以外は参考例55と同様にして実験を行う。その結果、参考例55で得られたものと同様のα−アルミナ粉末を得ることができる。実験条件を表5、6に示す。
【0084】
参考例59
アルミナ原料として遷移アルミナAを用い、種晶としてα−アルミナAを用いて、雰囲気ガスとしてヨウ化アンモニウムの分解ガスから得たヨウ化水素を管状炉内に導入して実験した。得られたα−アルミナのSEM写真を図9に示す。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0085】
参考例60
参考例1において、種晶としてα−アルミナBを用い、形状制御剤として酸化ジルコニウム(半井化学薬品(株)製のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 )を加水分解して得られたジルコニアゲル:ZrO2 )を添加する以外は全て参考例1と同様にして実験を行った。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図10に示す。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0086】
参考例61
アルミナ原料として水酸化アルミニウムを用いる以外は参考例59と同様にして実験を行う。その結果、参考例59で得られたものと同様のα−アルミナ粉末を得ることができる。実験条件を表5、6に示す。
【0087】
参考例62
雰囲気ガスにヨウ素ガスと水蒸気を導入する以外は参考例59と同様にして実験を行う。その結果、参考例59で得られたものと同様のα−アルミナ粉末を得ることができる。実験条件を表5、6に示す。
【0088】
実施例63
アルミナ原料として遷移アルミナAを用い、種晶としてα−アルミナAを用い、雰囲気ガスとして塩素ガスを管状炉内に導入して実験を行った。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図11に示す。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0089】
実施例64
実施例63において、雰囲気ガスと保持温度を変化させて実験を行った。その結果、実施例63で得られたものと同様のα−アルミナ粉末を得ることができた。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0090】
実施例65
実施例63で種晶の代わりに形状制御剤として、酸化カルシウム(和光純薬(株)製、試薬CaO)を添加した以外はすべて実施例63と同様にして実験を行なった。その結果、D/H比が3であるα−アルミナ粉末を得ることができた。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0091】
実施例66
アルミナ原料としてアルミニウムイソプロポキシドの加水分解法により合成して得た水酸化アルミニウム13gを用い、形状制御剤として酸化ホウ素(和光純薬株式会社製の試薬、B2 O3 )を0.1重量部添加混合した。混合は、溶媒としてイソプロピルアルコールを用い超音波分散により行った。混合後の乾燥はロータリーエバポレーターと乾燥器により行った。この混合原料0.4gをアルミナボートに充填し、石英炉芯管を用いた管状炉で焼成を行った。鶴見ソーダ(株)製のボンベ塩化水素ガス(純度99.9%)30体積%と窒素ガス70体積%の混合ガスを800℃になったとき、雰囲気ガスとして線流速20mm/分にて反応系内に導入した。昇温速度500℃/時間にて昇温し、1100℃にて30分保持した後、自然放令してα−アルミナ粉末を得た。得られたα−アルミナ粉末は8面体で、D90/D10の値は2.0であった。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図12に示す。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0092】
実施例67
アルミナ原料としてアルミニウムイソプロポキシドの加水分解法により合成して得た水酸化アルミニウム13gを用い、形状制御剤として酸化ジルコニウム(半井化学薬品株式会社製)のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2 )を加水分解して得られたジルコニアゲル(ZrO2 )を酸化ジルコニウム換算で1重量部添加した混合原料を用い実施例66と同じ条件にて焼成を行った。雰囲気ガスは実施例66と同じ混合ガスを用いた。得られたα−アルミナ粉末は20面体で、D90/D10の値は2.0であった。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図13に示す。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0093】
比較例1
アルミナ原料として水酸化アルミニウムAを用い、従来のように空気中で1300〜1400℃にて1〜4時間焼成したところ、得られたα−アルミナ粉末は、D90/D10の値が4.0で、その平均粒子径が約0.7μmで形状は不均一なものであった。得られたα−アルミナ粉末のSEM写真を図14に、粒度分布の測定結果を図15に示す。実験条件および実験結果を表5、6に示す。
【0094】
比較例2
水熱法により得られたα−アルミナ粒子の圧壊強度(kg/mm2 )を測定した。
【0095】
比較例3
水熱法により得られたα−アルミナ粒子の内部微細構造をTEMにより観察した結果、粒子の内部に多数の欠陥が見られた。
【0096】
比較例4〜6
電融法によりα−アルミナ粒子を得た。比較例4においては、得られたα−アルミナ粒子の内部微細構造をTEMにより観察した結果、粒子の内部に多数の欠陥が見られた。また、比較例4〜6においては、得られたα−アルミナ粒子の重装密度(g/cm3 )を測定した。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
【発明の効果】
本発明のα−アルミナ粉末の製造方法によれば、種々な種類、形状、粒子サイズおよび組成のアルミナ原料から、一次粒子の粒子径、形状が制御されたα−アルミナ粒子からなるα−アルミナ粉末を得ることができる。
種晶の種類や添加量を選ぶことにより、任意の一次粒子径の特定の多面体形状のα−アルミナ粒子からなるα−アルミナ粉末を得ることができる。また、形状制御剤を用いることにより、D/H比および晶癖を変化させることができるので、形状制御剤を選ぶことにより用途に適した形状のα−アルミナ粉末を製造することが可能である。
さらに、結晶種に形状制御剤を併用することにより、任意の一次粒子径、D/H比および晶癖を有する目的に応じた形状のα−アルミナ粉末を製造することができる。
本発明の方法で得られるα−アルミナ粉末は、その平均粒子径が0.1〜30μmで、D/H比が0.3以上30以下、かつ、D90/D10の値が小さく粒度分布が狭いという優れた特徴を有している。また、粒子の圧壊強度が高く、重装密度も高いという優れた特徴も有している。
本発明の方法で得られるα−アルミナ粉末は粒度分布が狭く、粒径が数μmに制御されているので封止材用原料に適している。また上記の特性に加えて、嵩密度が大きいため単結晶用原料として充填量を増加させることができる。また、粒径を任意に制御できるので、いろいろな空孔径を有するセラミックフィルター用の原料として利用することができる。また、晶癖を制御することにより粒子のエッジ形状を変え研磨能力を制御することができる。
本発明の方法で得られるα−アルミナ粉末は、研磨材、焼結材、プラズマ溶射材、充填材、単結晶用原料、触媒担体、蛍光体用原料、封止材用原料、セラミックフィルター用原料等に適しており、特に、実質的に8面または20面から構成されるα−アルミナ粉末は研磨材、充填材、スペーサーあるいは焼結体用原料として最適なものであるから、工業的に極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率9000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図2】参考例2で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率900倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図3】実施例19で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率10000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図4】実施例19のα−アルミナ粉末の粒度分布を示す。
【図5】実施例35で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率1000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図6】実施例35のα−アルミナ粉末の粒度分布を示す。
【図7】参考例55で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率9000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図8】参考例56で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率900倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図9】参考例59で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率9000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図10】参考例60で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率4300倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図11】実施例63で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率9000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図12】実施例66で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率1710倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図13】実施例67で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率1280倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図14】比較例1で観察されたα−アルミナ粉末の粒子構造を示す。図面に代わる写真。倍率10000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図15】比較例1のα−アルミナ粉末の粒度分布を示す。
【図16】α−アルミナ粒子の晶癖を示す。
Claims (8)
- 遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、塩化水素ガスを20体積%以上含有した雰囲気ガス中にて、種晶(種晶としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)および/または形状制御剤(形状制御剤としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの単体およびそれらの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)の存在下で、500℃以上1400℃以下の温度範囲で焼成することを特徴とするα−アルミナ粉末の製造方法。
- 遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、塩素ガス30体積%以上および水蒸気5体積%以上を導入した雰囲気ガス中にて、種晶(種晶としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)および/または形状制御剤(形状制御剤としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの単体およびそれらの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)の存在下で、500℃以上1400℃以下の温度範囲で焼成することを特徴とするα−アルミナ粉末の製造方法。
- 遷移アルミナおよび/または熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料を、塩素ガスを5体積%以上含有した雰囲気ガス中にて種晶(種晶としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)および/または形状制御剤(形状制御剤としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの単体およびそれらの各化合物から選ばれる一種または二種以上を用いる。)の存在下で、950℃以上1500℃以下の温度範囲で焼成することを特徴とするα−アルミナ粉末の製造方法。
- 種晶として用いられる、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケルの各化合物が、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ホウ化物から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 形状制御剤として用いられるマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、銅、亜鉛、ホウ素、珪素、ランタン、セリウム、ネオジムの各化合物が、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、ハロゲン化物、ホウ化物から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- α−アルミナ粒子が、均質で、8面以上の多面体形状を有し、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比が0.3以上30以下であるα−アルミナ粒子からなるα−アルミナ粉末である請求項1〜5のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ原料が、水酸化アルミニウム、明バンまたは硫バンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のα−アルミナ粉末の製造方法。
- 実質的に8面または20面から構成された、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比が0.3以上3.0以下であり、かつ六方格子面に垂直な軸に対して回転次数が6で、回転対称形状の粒子からなり、α−アルミナ粒子の累積粒度分布の微粒側から累積10%、累積90%の粒径をそれぞれD10、D90としたとき、D90/D10が10以下である粒度分布を有することを特徴とするα−アルミナ粉末。
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