JP3750443B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両などに採用されるトロイダル型無段変速機の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から車両の変速機として、トロイダル型の無段変速機が知られており、例えば、特開平11−63139号公報などが知られている。
【0003】
これは、2組のトロイダル変速部を同軸上に配置したダブルキャビティ式で構成されており、軸方向の両側にトロイド状の溝をそれぞれ形成するとともに、出力ディスクの外周に出力ギアを形成することで、2組の出力ディスクを一体的に形成し、この出力ディスクと2つの入力ディスクとの間で、それぞれパワーローラを挟持、押圧して駆動力の伝達を行っている。
【0004】
これら入力ディスクはCVTシャフトの両端部に支持されており、一方の入力ディスクはCVTシャフトに結合されるが、他方の入力ディスクは軸方向へ変位可能に支持されて、CVTシャフト内周を貫通した入力軸に連結されたローディングカムを介して、入力トルクに応じて軸方向推力が付与される。
【0005】
そして、2つの入力ディスクの間に配設された出力ディスクは、CVTシャフトと相対回転自在かつ軸方向変位可能に支持されており、出力ディスクが軸方向へ変位することで、ローディングカム側の入力ディスクが付与した軸方向推力を、CVTシャフトに結合された入力ディスク側へ伝達し、2つのトロイダル変速部に加わる軸方向推力を均等に配分して、トルク伝達容量を確保しようとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のトロイダル型無段変速機では、軸方向変位可能な出力ディスクの外周に形成した出力ギアにより、駆動力の伝達を行う構成となっているため、出力ギアをハスバ歯車等で構成した場合には、伝達する駆動力に応じてスラスト力が生じ、このスラスト力がローディングカムからの軸方向推力と対抗あるいは協調することにより、2つのトロイダル変速部に加わる軸方向推力が不均一になってしまう。
【0007】
つまり、一方のトロイダル変速部には過大な軸方向推力が加わって、変速機の耐久性を低下させてしまい、また、他方のトロイダル変速部は軸方向推力が不足して、トルクの伝達容量が低下するという問題があった。
【0008】
さらに、上記従来例では、CVTシャフトの内周に入力軸を挿通する必要があるため、CVTシャフトの外径が大きくなるという問題もあった。
【0009】
一方、2つのトロイダル変速部へ、均等な軸方向推力を与えることが可能なものとしては、特許第2638896号公報が知られており、これは、CVTシャフトの両端に配置した一対の入力ディスクを軸方向へ変位に支持する一方、中央に配置される一対の出力ディスクを、出力ギアを介して結合し、この出力ギアを中間壁に収装してケーシング内周へ固定することで、ローディングカム装置からの軸方向推力を均等に分配している。
【0010】
しかし、この従来例では、2つの出力ディスクの間に出力ギアと中間壁を介装しなければならず、上記従来例に比してCVTシャフトの軸方向寸法が増大して、変速機が大型化するという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、2組の出力ディスクを一体的に形成して軸方向寸法の増大を防ぎながらも、2つのトロイダル変速部に加わる軸方向推力を均一にして、トロイダル型無段変速機の耐久性とトルクの伝達容量を向上させることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、入力軸の両端部にそれぞれ配設された一対の入力ディスクと、これら入力ディスクの間で同軸的かつ相対回転自在に配設されるとともに、軸方向へ変位可能な出力ディスクと、前記入力ディスクと対向する出力ディスクの両側に一体的に形成された一対のキャビティを介して、これら入力ディスクと出力ディスクに挟持される一対のパワーローラと、前記一対のパワーローラを対向する位置で支持する一対のトラニオンと、前記対向するトラニオンに巻き付けられてトラニオンの傾転角を同期させるワイヤと、前記出力ディスクの外周に形成されてトルクの伝達を行う出力ギアと、入力トルクに応じた軸方向推力を前記入力ディスクにそれぞれ付与する押圧力発生手段とを備えたトロイダル型無段変速機において、前記一対の入力ディスクは、入力軸と回転方向で結合する一方、軸方向へ変位可能に連結され、前記出力ディスクには、軸方向変位を規制する位置決め手段を備え、前記位置決め手段は、パワーローラを軸支するトラニオン同士を連結したアッパーリンクとロアリンクを、それぞれ揺動自在に支持するアッパーリンクポストとロアリンクポストの間に配設するとともに、前記入力軸を挿通する貫通孔と、この貫通孔周縁と出力ディスクの端面との間に介装したスラストベアリングと、前記ロアリンクポストに形成されて前記ワイヤを挿通する空間と、を備える。
【0015】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記位置決め手段は、ロアリンクポストと一体的に構成されるとともに、アッパーリンクポスト側へ嵌合する。
【0016】
また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記位置決め手段は、ロアリンクポストに突設した突起部材と嵌合するとともに、アッパーリンクポスト側へ嵌合する。
【0017】
また、第4の発明は、前記第1の発明において、前記位置決め手段は、少なくともロアリンクポスト側で、前記入力軸の軸方向へオフセットする。
【0019】
また、第5の発明は、前記第1の発明において、前記位置決め手段は、前記貫通孔周縁から出力ディスクの端部内周へ向けて突設した円筒部を形成し、この円筒部外周に設けた軸受を介して前記出力ディスクを軸支する。
【0020】
【発明の効果】
第1の発明は、一対の入力ディスクと対向する出力ディスクの両側に設けたキャビティにより、2つのトロイダル変速部が形成され、パワーローラの傾転角に応じた変速比で出力ギアからトルクの伝達が行われるが、出力ギアをハスバ歯車等で構成してトルクの伝達を行うとスラスト力が発生して出力ディスクを軸方向へ変位させようとするが、出力ディスクは位置決め手段によって軸方向変位を規制されるため、所定の位置を保持することができる。
【0021】
押圧力発生手段が入力トルクに応じて発生した軸方向推力は、入力軸の両側に設けた一対の入力ディスクへ伝達され、出力ギアから出力ディスクに作用するスラスト力の影響を受けることなく、2つのトロイダル変速部は均等な軸方向推力でパワーローラを挟持、押圧することができ、前記従来例のように2つのトロイダル変速部の軸方向推力が不均一となって、耐久性やトルク伝達容量が低下するのを確実に防いで、一体に形成した出力ディスクにより軸方向寸法を短縮しながら、トロイダル型無段変速機の信頼性と性能を向上させることが可能となる。
【0023】
また、位置決め手段は、各トロイダル変速部のアッパーリンクポストとロアリンクポストの間に配設されて、出力ディスクを挟むように配置され、位置決め手段の貫通孔周縁と出力ディスクの端面との間に介装したスラストベアリングにより、出力ディスクに生じるスラスト力、換言すれば、出力ギアからのスラスト力を支持することができ、出力ディスクの軸方向変位を確実に防止できる。さらに、対向するトラニオンの傾転角を同期させるワイヤを挿通する空間を設けることで、ワイヤと位置決め手段の干渉を回避できる。
【0024】
また、第2の発明は、位置決め手段の一端をロアリンクポストと一体的に構成するとともに、他端をアッパーリンクポスト側へ嵌合するようにしたため、位置決め手段の組み付けを容易に行うことができる。
【0025】
また、第3の発明は、位置決め手段の両端を、ロアリンクポストに突設した突起部材と、アッパーリンクポスト側へそれぞれ嵌合するようにしたため、組み付け性をさらに向上させながら、出力ディスクのスラスト力を確実に支持することができる。
【0026】
また、第4の発明は、位置決め手段は、少なくともロアリンクポスト側で、入力軸の軸方向へオフセットするようにしたため、例えば、対向するトラニオン同士を連結してパワーローラの傾転角を同期させるワイヤー等の部材と位置決め手段が干渉するのを回避できる。
【0028】
また、第5の発明は、各トロイダル変速部に配設された位置決め手段は、貫通孔周縁から突設した円筒部の軸受で出力ディスクを挟むように軸支でき、位置決め手段と出力ディスクをサブアッセンブリとすることができ、生産性を向上させることが可能となり、また、出力ディスクのギアからのスラスト力は軸受で支持することができ、出力ディスクの軸方向変位の規制と位置決めを確実に行うことが可能となる。
【0029】
【実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
図1、図2は、2組のトロイダル変速部を備えたダブルキャビティのトロイダル型無段変速機を、変速比無限大無段変速機へ適用した一例を示す。
【0031】
図1、図2に示すように、エンジンのクランクシャフト13に連結される変速比無限大無段変速機のユニット入力軸1aに、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型無段変速機2と、ギア3a、カウンタギア3d及びギア3bから構成された一定変速機3(減速機)を並列的に配設するとともに、これらの出力軸4、3cをユニット出力軸6側に配設し、これら出力軸4、3cを遊星歯車機構5で連結したもので、トロイダル型無段変速機2の無段変速機出力軸4は、遊星歯車機構5のサンギア5aに、一定変速機3の出力軸3cは動力循環モードクラッチ9を介して遊星歯車機構5のキャリア5bに連結される。
【0032】
無段変速機出力軸4は、ユニット出力軸6と同軸的かつ、相対回転自在に支持され、ギア4aを介して無段変速機2の出力ギア24と連結されており、無段変速機出力軸4の一端を遊星歯車機構5のサンギア5aに結合し、他端を直結モードクラッチ10に結合する。
【0033】
ギア3bと結合した一定変速機3の出力軸3cも、ユニット出力軸6と同軸的かつ、相対回転自在に支持され、動力循環モードクラッチ9を介して遊星歯車機構5のキャリア5bに連結されており、遊星歯車機構5のリングギア5cは、変速比無限大無段変速機の出力軸であるユニット出力軸6に結合される。
【0034】
ユニット出力軸6の図中左側の端部近傍には、変速機出力ギア7が設けられ、この変速機出力ギア7は、カウンタギア15を介してディファレンシャルギア8のファイナルギア12と歯合し、ディファレンシャルギア8に結合した駆動軸11には、所定の総減速比で駆動力が伝達される。
【0035】
この変速比無限大無段変速機では、動力循環モードクラッチ9を解放する一方、直結モードクラッチ10を締結してトロイダル型無段変速機2の変速比に応じて駆動力を伝達する直結モードと、動力循環モードクラッチ9を締結する一方、直結モードクラッチ10を解放することにより、トロイダル型無段変速機2と一定変速機3の変速比の差に応じて、変速比無限大無段変速機全体のユニット変速比(ユニット入力軸1aとユニット出力軸6の変速比)を負の値(後進)から正の値(前進)まで無限大(停止状態)を含んでほぼ連続的に制御を行う動力循環モードとを選択的に使用することができる。
【0036】
トロイダル型無段変速機2は、図1、図2に示すように、CVTシャフト1b(入力軸)上に同軸的に配置した2組の入力ディスク21と1つの出力ディスク22で、パワーローラ20、20をそれぞれ挟持、押圧するダブルキャビティのハーフトロイダル型で構成され、一定変速機3側に第1トロイダル変速部2Aが、この反対側に第2トロイダル変速部2Bが配置される。
【0037】
なお、出力ディスク22は、前記従来例と同様に、軸方向の両側にトロイド状の溝で構成されたキャビティ22A、22Bを一体的に形成するとともに、外周に出力ギア24を結合したもので、内周はCVTシャフト1bに挿通されるとともに、ニードルベアリング25を介して相対回転自在かつ軸方向へ変位可能に軸支される。
【0038】
そして、第1及び第2トロイダル変速部2A、2Bの入力ディスク21、21は同軸上で対向して配置され、これら入力ディスク21、21、出力ディスク22がCVTシャフト1bに対して相対回転自在かつ軸方向変位可能に支持される。なお、入力ディスク21とCVTシャフト1bは、例えば、ボールスプライン等によって連結されて、相対的な軸方向変位を許容する一方、回転方向で結合している。
【0039】
また、図2に示すように、ユニット入力軸1a、CVTシャフト1bは、同軸的に配設されるとともに、トロイダル型無段変速機2のローディングカム機構23(押圧力発生手段)を介して、回転方向で結合しており、ユニット入力軸1aはエンジンのクランクシャフト13に結合されるとともに、一定変速機3のギア3aを形成している。
【0040】
ローディングカム装置23は、図2に示すように、回転方向でユニット入力軸1aと係合したカムディスク23bと、第1トロイダル変速部2Aの入力ディスク21の背面と、このカムディスク23bとの間に介装された複数のカムローラ23aから構成されており、カムディスク23bは、スラスト荷重を支持可能なアンギュラボールベアリング26等を介してCVTシャフト1bと相対回転可能に支持される。
【0041】
そして、ローディングカム装置23は、ユニット入力軸1aからのトルクに応じてカムディスク23bが回動すると、カムローラ23も回動して軸方向へ押圧力を生じ、第1トロイダル変速部2Aの入力ディスク21を、出力ディスク22側へ押圧する。
【0042】
ここで、CVTシャフト1bは、アンギュラボールベアリング26を介してカムディスク23bと軸方向で係合しているため、カムローラ23aが発生した軸方向推力の反力により、図2の左側へ変位し、CVTシャフト1bの右側端部に設けたロックナット16、皿バネ17を介して第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21を出力ディスク22へ向けて押圧する。
【0043】
こうして、一対の入力ディスク21、21を、CVTシャフト1bを介して軸方向へ変位可能に支持しておくことで、ローディングカム装置23からの入力トルクに応じた軸方向推力を分配することができる。
【0044】
なお、皿バネ17は、無負荷時にパワーローラ20を挟持、押圧するためのプリロードを付与するものである。
【0045】
次に、上記入出力ディスク21、22に挟持、押圧されるパワーローラ20は、図4に示すように、CVTシャフト1bを挟んで対向配置されるとともに、揺動可能なピボットシャフト31、31を介してトラニオン30、30にそれぞれ軸支される。
【0046】
そして、トラニオン30、30はそれぞれ下端に設けたロッド30A、30Aの軸方向及び軸回りで変位可能にシリンダボディ34、アッパーリンク40及びロアリンク50で支持され、中央部を揺動自在に支持されたアッパーリンク40及びロアリンク50によって、対向するトラニオン30、30は、相互に逆の軸方向へ変位する。
【0047】
トラニオン30のロッド30Aにそれぞれ連結した油圧シリンダ35、35が、トラニオン30、30を軸方向へ駆動することで、パワーローラ20、20はロッド30A、30Aの軸回り(すなわち、トラニオン30の軸回り)に回動(傾転という)し、入力ディスク21と出力ディスク22との接触半径を変化することで変速比が連続的に変更される。
【0048】
第1及び第2トロイダル変速部2A、2Bで、それぞれ対向配置されたトラニオン30、30は、その上端をアッパーリンク40によって、下端をロアリンク50によって相互に連結されており、入出力ディスクで挟持、押圧されたパワーローラ20、20に加わるスラスト力に抗して、アッパーリンク40、ロアリンク50はトラニオン30、30間の軸間距離をほぼ一定に保持しながら、トラニオン30、30の軸方向変位を同期させるとともに、軸回り変位を許容する。
【0049】
なお、トラニオン30の下部には、対向するトラニオン30との間にワイヤ80が8の字状に巻き付けられて、牽引時などでもパワーローラ20の傾転角を同期させる。
【0050】
ここで、アッパーリンク40は、図4に示すように、中央に設けた貫通孔40Aを介して連結したアッパーリンクポスト41により、揺動自在に支持されるとともに、両端部に設けた貫通孔及び球面継手を介して対向する各トラニオン30、30と揺動自在に連結して、かつトラニオン30の回動を許容する。
【0051】
アッパーリンクポスト41は、揺動軸となるピン43を介して予め中央の貫通孔40Aに組み付けられる。
【0052】
そして、アッパーリンクポスト41はボルト44を介して、ケーシング14の内周に結合されたアッパーリンク支持部材42に締結される。なお、ボルト44の頭部は、6角レンチやトルクスレンチ等と係合可能な孔部を備えるとともに、円形断面などで構成される。
【0053】
一方、ロアリンク50は、中央に設けた貫通孔50Aが、出力ディスク22の軸方向の位置決めを行う後述の位置決め部材60と一体的に形成されたロアリンクポスト51によって揺動自在に支持され、ロアリンク50の両端部に設けた貫通孔を介してトラニオン30、30と連結し、トラニオン30、30の相反する軸方向変位に応じて、ロアリンクポスト51を中心に揺動するとともに、トラニオン30、30の軸回りの変位を許容する。
【0054】
ロアリンクポスト51は、揺動軸となるピン53を介して予め中央の貫通孔50Aに組み付けられ、ロアリンクポスト51はボルト54を介して、シリンダボディ34に突設されたロアリンク支持部52へ締結される。
【0055】
ここで、ロアリンクポスト51と一体的に形成された位置決め部材60は、図2に示すように、L字状の断面で形成されて、上端でアッパーリンクポスト41のボルト44と係合する一方、ロアリンクポスト51で構成する下端部が、シリンダボディ34に締結される。
【0056】
ロアリンクポスト51から立ち上がった位置決め部材60は板状に形成されており、対向するトラニオン30に巻き付けられたワイヤ80との干渉を回避するオフセット部62で屈曲した後、出力ディスク22の端面との間に介装したスラストベアリング70と当接する円環状の位置決め面63が図3に示すように形成される。なお、オフセット部62は対向するトラニオン30、30を結ぶ線からCVTシャフト1bの軸方向へ所定量だけ離れるように設定される。
【0057】
位置決め面63の内周は、CVTシャフト1bを挿通する貫通孔60Aが形成される。
【0058】
そして、位置決め面63の上部には、アッパーリンクポスト41のボルト44の頭部外周に嵌合する袋状の係合部61が形成される。
【0059】
この、位置決め部材60、60(第1及び第2の位置決め部材)は、図2に示すように、各トロイダル変速部2A、2Bにそれぞれ配設されており、出力ディスク22の両端面は、位置決め面63、63との間に介装されたスラストベアリング70、70によって軸方向で挟持される。
【0060】
以上のように構成されて、次に作用について説明する。
【0061】
ユニット入力軸1aにトルクが加わると、ローディングカム装置23が作動して、上記したように、CVTシャフト1bの両端部に設けた一対の入力ディスク21、21が中央の出力ディスク22へ向けて変位することで、各トロイダル変速部2A、2Bのパワーローラ20、20が挟持、押圧され、パワーローラ20の傾転角に応じた変速比で出力ディスク22が駆動され、出力ギア24からギア4aを介してユニット出力軸6側へ動力が伝達される。
【0062】
この動力の伝達に際して、ハスバ歯車で構成された出力ギア24、ギア4aにはそれぞれスラスト力が発生し、ニードルベアリング25でCVTシャフト1bに軸支された出力ディスク22は、出力ギア24に生じるスラスト力によって、軸方向へ変位しようとする。
【0063】
しかし、出力ディスク22は、軸方向の両端面がスラストベアリング70、70を介して位置決め部材60、60に挟持されているため、外周に設けた出力ギア24からのスラスト力は、第1トロイダル変速部2Aまたは第2トロイダル変速部2Bの位置決め部材60によって支持される。
【0064】
ここで、位置決め部材60、60は、従来空いていた第1トロイダル変速部2A及び第2トロイダル変速部2Bにおける空間に配置されているため、空間を有効に利用することができる。
【0065】
また、位置決め部材60、60は、出力ギア24とは軸方向に位置がずれている。このため、トロイダル型無段変速機2は、軸方向の寸法のみならず径方向についても、大型化することがない。
【0066】
そして、位置決め部材60は、下端をロアリンクポスト51と一体的に形成してシリンダボディ34に締結されるため、確実にスラスト力を支持することができるのに加え、上端部は係合部61がアッパーリンクポスト41のボルト44に嵌合しているため、位置決め部材60の変形を確実に防止して、出力ディスク22の軸方向変位を規制することができる。
【0067】
こうして、第1及び第2トロイダル変速部2A、2Bの出力ディスクを一体的に形成した出力ディスク22を、CVTシャフト1bで相対回転自在に支持してトロイダル型無段変速機2の軸方向寸法を短縮しながら、一対の位置決め部材60、60によって、出力ギア24からのスラスト力に抗して出力ディスク22の軸方向変位を規制することで、ローディングカム装置23が入力トルクに応じて発生した軸方向推力を、第1及び第2トロイダル変速部2A、2Bへ均等に分配することが可能となり、前記従来例(特開平11−63139号公報)のように2つのトロイダル変速部の軸方向推力が不均一となって、耐久性やトルク伝達容量が低下するのを確実に防いで、トロイダル型無段変速機2の信頼性と性能を向上させることが可能となる。
【0068】
さらに、CVTシャフト1bは、前記従来例のようにユニット入力軸1aを貫通する必要がないため、外径の大型化を防いで、トロイダル型無段変速機2の小型化を推進することができるとともに、CVTシャフト1bの強度を容易に確保することができ、一体に形成した出力ディスク22により軸方向寸法を短縮したことで、耐久性及び性能に優れたトロイダル型無段変速機2の小型化を、さらに推進することができるのである。
【0069】
また、位置決め部材60は、基端に設けたロアリンクポスト51からオフセット部62で屈曲して立ち上がるように構成したため、対向するトラニオン30を連結するワイヤ80等と干渉することがなく、トロイダル型無段変速機2の構成をほとんど変更せずに配置することができるのである。
【0070】
加えて、出力ディスク22は位置決め部材60、60によって軸方向位置が決定されるため、一対の入力ディスク21、21を軸方向へ変位可能に構成しても、出力ディスク22を基準として各部の配置を容易に行うことができ、設計または製造時の効率化を図ることができる。
【0071】
図4、図5は第2の実施形態を示し、前記第1実施形態の位置決め部材60を、ロアリンクポストと出力ディスク22を支持する部材に分割形成したもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0072】
位置決め部材160は、L字状断面の板部材で形成され、アッパーリンクポスト41のボルト44に嵌合する係合部161は、前記第1実施形態の係合部61と同様に形成され、CVTシャフト1bを貫通する貫通孔160A、位置決め面163も前記第1実施形態と同様に構成される。
【0073】
そして、位置決め部材160の下端には、CVTシャフト1bの軸線方向に張り出した結合部164が形成され、結合部164に形成された4つの孔部165にロアリンクポスト51からアッパーリンク側へ突設されたピン55(突起部材)が嵌合することで、位置決め部材160はアッパーリンクポスト41とロアリンクポスト51に挟持されて固定される。
【0074】
さらに、ピン55を突設したロアリンクポスト51の上面と、結合部164の下面との間には、対向するトラニオン30を連結したワイヤ80を挿通する空間170が形成される。
【0075】
この場合では、ロアリンクポスト51に設けたピン55と、アッパーリンクポスト41のボルト44へ位置決め部材160を嵌合させるだけで良いため、位置決め部材160の組み立てを容易かつ迅速に行いながら、出力ディスク22の軸方向変位を確実に規制することができる。
【0076】
図6〜図8は第3の実施形態を示し、一対の位置決め部材260を、中空軸270で連結するとともに、この中空軸270で出力ディスク22を軸支するようにしたもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0077】
第1及び第2トロイダル変速部2A、2Bに位置決め部材260は、ロアリンクポスト51とともにシリンダボディ34へ締結される二股状の脚部262と、中空軸270と嵌合する貫通孔260Aを備えた平板状の支持部261から構成される。
【0078】
まず、二股状の脚部262には、4つのネジ穴262Aが形成され、図7に示すように、シリンダボディ34、ロアリンクポスト51を貫通したボルト54が螺合して、ロアリンクポスト51とともにシリンダボディ34へ締結される。
【0079】
また、ロアリンクポスト51と脚部262の間には、トラニオン30同士を連結するワイヤ80を挿通するトンネル状の空間263が形成される。
【0080】
そして、支持部261に形成された貫通孔260Aには、円筒状の中空軸270が嵌合する。
【0081】
図8に示すように、中空軸270の外周には、予めニードルベアリング25、2を介して出力ディスク22が端部内周で軸支され、出力ディスク22の両端面と、一対の支持部261、261の間にスラストベアリング70、70を介装してから、スナップリング271、271などで、位置決め部材260と中空軸270を連結することで、位置決め部材260、中空軸270及び出力ディスク22をサブアッセンブリとして構成することができる。
【0082】
そして、二股状の脚部262を、上記したように、ロアリンクポスト51とともにシリンダボディ34へ締結することで、出力ディスク22の組み付けと位置決めを行うことができる。なお、CVTシャフト1bは、出力ディスク22のサブアッセンブリをケーシング14内へ固定した後に、中空軸270へ挿通される。
【0083】
この場合も、出力ディスク22の出力ギア24に生じたスラスト力は、スラストベアリング70を介してシリンダボディ34へ締結された位置決め部材260に支持されるため、出力ディスク22の軸方向変位を規制して、軸方向推力を均等に分配することができるとともに、出力ディスク22と位置決め部材260をサブアッセンブリとすることができるため、生産性を向上させることが可能となる。
【0084】
なお、位置決め部材260をロアリンクポスト51に締結したが、アッパーリンクポスト41側に締結しても良い。
【0085】
図9は第4の実施形態を示し、前記第2実施形態の位置決め部材160に円筒部を形成し、この円筒部外周に出力ディスク22のラジアル荷重とスラスト力を支持するテーパーローラベアリングを設けたもので、その他の構成は前記第2実施形態と同様である。
【0086】
位置決め部材160に形成された貫通孔160Aの周縁からは、出力ディスク22側へ向けて所定の長さの円筒部165が突設される。
【0087】
そして、この円筒部165の外周と、出力ディスク22の端部内周との間には、出力ディスク22のラジアル荷重とスラスト力を支持するテーパーローラベアリング71が介装される。
【0088】
こうして、第1及び第2トロイダル変速部2A、2Bに固設された位置決め部材160、160は、突設した円筒部165に設けたテーパーローラベアリング71によって、軸方向で出力ディスク22を挟持しながら、ラジアル荷重とスラスト力を同時に支持し、前記従来例のような軸方向推力の不均一を解消するとともに、出力ディスク22と位置決め部材160のサブアッセンブリ化を推進して、組み立て作業の効率化を図ることができるのである。
【0089】
なお、上記実施形態では、変速比無限大無段変速機に採用したトロイダル型無段変速機の一例について述べたが、通常の自動変速機に採用されるトロイダル型無段変速機の場合でも、上記と同様の作用、効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示し、トロイダル型無段変速機を用いた変速比無限大無段変速機の概略構成図。
【図2】同じくトロイダル型無段変速機を用いた変速比無限大無段変速機の要部縦断面図。
【図3】図2のA矢示図で、第2トロイダル変速部の断面図。
【図4】第2の実施形態を示し、トロイダル型無段変速機を用いた変速比無限大無段変速機の要部縦断面図。
【図5】図4のB矢示図で、第2トロイダル変速部の断面図。
【図6】第3の実施形態を示し、トロイダル型無段変速機を用いた変速比無限大無段変速機の要部縦断面図。
【図7】図6のC矢示図で、第2トロイダル変速部の断面図。
【図8】出力ディスクと位置決め部材の断面図。
【図9】第4の実施形態を示し、トロイダル型無段変速機を用いた変速比無限大無段変速機の要部縦断面図。
【符号の説明】
1b CVTシャフト
2 トロイダル型無段変速機
14 ケーシング
20 パワーローラ
21 入力ディスク
22 出力ディスク
23 ローディングカム機構
24 出力ギア
25 ニードルベアリング
30 トラニオン
34 シリンダボディ
35 油圧シリンダ
40 アッパーリンク
41 アッパーリンクポスト
44 ボルト
50 ロアリンク
51 ロアリンクポスト
54 ボルト
55 ピン
60 位置決め部材
60A 貫通孔
61 係合部
62 オフセット部
63 位置決め面
70 スラスト軸受
71 テーパーローラベアリング
80 ワイヤ
160 位置決め部材
160A 貫通孔
161 係合部
163 位置決め面
164 支持部
Claims (5)
- 入力軸の両端部にそれぞれ配設された一対の入力ディスクと、
これら入力ディスクの間で同軸的かつ相対回転自在に配設されるとともに、軸方向へ変位可能な出力ディスクと、
前記入力ディスクと対向する出力ディスクの両側に一体的に形成された一対のキャビティを介して、これら入力ディスクと出力ディスクに挟持される一対のパワーローラと、
前記一対のパワーローラを対向する位置で支持する一対のトラニオンと、
前記対向するトラニオンに巻き付けられてトラニオンの傾転角を同期させるワイヤと、
前記出力ディスクの外周に形成されてトルクの伝達を行う出力ギアと、
入力トルクに応じた軸方向推力を前記入力ディスクにそれぞれ付与する押圧力発生手段とを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記一対の入力ディスクは、入力軸と回転方向で結合する一方、軸方向へ変位可能に連結され、前記出力ディスクには、軸方向変位を規制する位置決め手段を備え、
前記位置決め手段は、
パワーローラを軸支するトラニオン同士を連結したアッパーリンクとロアリンクを、それぞれ揺動自在に支持するアッパーリンクポストとロアリンクポストの間に配設するとともに、前記入力軸を挿通する貫通孔と、
この貫通孔周縁と出力ディスクの端面との間に介装したスラストベアリングと、
前記ロアリンクポストに形成されて前記ワイヤを挿通する空間と、
を備えたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 前記位置決め手段は、ロアリンクポストと一体的に構成されるとともに、アッパーリンクポスト側へ嵌合することを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
- 前記位置決め手段は、ロアリンクポストに突設した突起部材と嵌合するとともに、アッパーリンクポスト側へ嵌合することを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
- 前記位置決め手段は、ロアリンクポスト側で前記入力軸の軸方向へオフセットし、前記ワイヤを挿通する空間を形成したことを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
- 前記位置決め手段は、前記貫通孔周縁から出力ディスクの端部内周へ向けて突設した円筒部を形成し、この円筒部外周に設けた軸受を介して前記出力ディスクを軸支することを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
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