JP3750599B2 - ディーゼルエンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピストンクーリング用のオイルジェットと、オイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁とを備えたディーゼルエンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンにおいては、オイルジェットを用いてピストン裏面にエンジンオイルを噴射させてピストンの冷却を行っているのが一般的である。ピストンの内部には、円環状にクーリングチャンネルが形成され、クーリングチャンネルからピストン裏面に向けて二つのオイル導入孔及びオイル排出口が形成されている。オイルジェットによってピストン裏面に噴射されたエンジンオイルは、オイル導入孔からクーリングチャンネルの内部を通った後でオイル排出口から排出される。この過程でエンジンオイルはピストンから熱を奪ってピストンを冷却する。
【0003】
オイルジェットからのエンジンオイルの噴射は、オイルジェットに内蔵された圧力検知型の切替弁(調圧弁)で開閉されるのが一般的である。オイルジェットに供給される油圧が所定値以上となると切替弁が開き、所定値未満となると切替弁が閉じる。また、冷間始動時や軽負荷時の燃料未燃焼に起因する白煙の発生などを抑止するため、上述した切替弁に電磁コイルを内蔵させ、油圧によらずにエンジン冷却水の温度に応じて切替弁の開閉を積極的に行うものも考えられている(実開昭64-36521号公報・実開昭58-142312号公報・実開昭56-20026号公報など)。オイルジェットからのエンジンオイルの噴射を停止させてピストンの温度を上昇させ、燃焼室内での燃料の蒸発を促進させることで白煙の発生を抑止できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した公報に記載されているようなディーゼルエンジンにおいては、白煙防止のためにオイルジェットからのエンジンオイルの噴射を停止させてピストン温度を上昇させた状態から、高負荷状態に移行してオイルジェットからエンジンオイルが噴射される状態に移行した場合に(あるいは、オイルジェットからのエンジンオイルの噴射が停止された状態のまま負荷が上がった場合に)、ピストンが冷え切らずに黒煙の原因となってしまう場合があった。このような状況も踏まえ、上述した白煙の発生の抑止と共に黒煙の発生をも抑止し得る改良が要望されている。
【0005】
従って、本発明の目的は、冷間始動時又は軽負荷時の白煙防止と高負荷時の黒煙防止とを高次元に両立することのできるディーゼルエンジンを提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、このようなディーゼルエンジンのオイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁の故障を確実に判定することのできるディーゼルエンジンを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかるディーゼルエンジンは、ピストンクーリング用のオイルジェットと、オイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁と、切替弁の開閉を制御する切替弁制御手段とを備えたディーゼルエンジンに関するものである。上述したように、オイルジェットによってシリンダに対してエンジンオイルの噴射を行ってピストンを冷却する機構を有しているディーゼルエンジンであり、エンジンオイルの噴射を制御し得るものである。
【0007】
請求項1に記載のディーゼルエンジンは、排気ガスを吸気通路上に還流させるEGR通路、EGR通路上に配設されたEGRバルブ、及び、EGRバルブの開度を調節して排気ガスの還流量を制御するEGR制御手段をさらに備えており、オイルジェットからのエンジンオイルの噴射が所定時間以上停止されている状況、あるいは、所定時間停止された後にエンジンオイルの噴射が開始されてからの経過時間が所定時間以下である状況で、かつ、高負荷運転に移行する際には、EGR制御手段が排気ガスの還流量が少なくなる側にEGRバルブの開度を変更することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載のディーゼルエンジンは、燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段をさらに備えており、オイルジェットからのエンジンオイルの噴射が所定時間以上停止されている状況、あるいは、所定時間停止された後にエンジンオイルの噴射が開始されてからの経過時間が所定時間以下である状況で、かつ、高負荷運転に移行する際には、燃料噴射制御手段がパイロット噴射量を少ない側に変更することを特徴としている。
【0009】
また、請求項3〜6に記載のディーゼルエンジンは、切替弁の下流側に配設されたエンジンオイルの圧力を検出する油圧検出手段と、油圧検出手段の検出結果に基づいて切替弁が故障しているか否かを判定する切替弁故障判定手段とをさらに備えているものである。
【0010】
このうち、請求項3に記載のディーゼルエンジンは、燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段をさらに備えており、切替弁故障検出手段が切替弁が正常に開かない故障であると判定した場合に、燃料噴射制御手段が最大噴射許容量を少ない側に変更することを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載のディーゼルエンジンは、排気ガスを吸気通路上に還流させるEGR通路、EGR通路上に配設されたEGRバルブ、及び、EGRバルブの開度を調節して排気ガスの還流量を制御するEGR制御手段をさらに備えており、切替弁故障検出手段が切替弁が正常に閉まらない故障であると判定した場合に、EGR制御手段が排気ガスの還流量が少なくなる側にEGRバルブの開度を変更することを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載のディーゼルエンジンは、燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段をさらに備えており、切替弁故障検出手段が切替弁が正常に閉まらない故障であると判定した場合に、燃料噴射制御手段がパイロット噴射量を増やす側に変更することを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載のディーゼルエンジンは、燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段をさらに備えており、切替弁故障検出手段が切替弁が正常に閉まらない故障であると判定した場合に、燃料噴射制御手段が噴射時期を進角側に変更することを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のディーゼルエンジンの一実施形態について以下に説明する。本実施形態のディーゼルエンジン1を図1に示す。本実施形態のディーゼルエンジンはいわゆる低圧縮比ディーゼルエンジンである。
【0015】
近年、高出力化及び低燃費化を考慮して低圧縮比型のディーゼルエンジンが重要視されている。低圧縮比型のディーゼルエンジンは、圧縮比を従来型のものより低く設定して燃焼によって生じる圧力上昇分をより多く確保し、より多くの出力を得ようとするものである。このような低圧縮比型ディーゼルエンジンでは、冷間始動時や軽負荷時の燃焼が従来の高圧縮比型のディーゼルエンジンよりも不十分となりやすい傾向があり、冷間始動時や軽負荷時の白煙が発生しやすい。このため、冷間始動時や軽負荷時にピストン冷却を停止することがより積極的に行われることが考えられ、低圧縮比ディーゼルエンジンは本発明を適用した場合にその効果を顕著に享受し得るエンジンである。
【0016】
本実施形態のディーゼルエンジン1(以下単にエンジン1とも言う)は、多気筒エンジンであるが、ここではそのうちの一気筒のみを断面図として示す。エンジン1は、インジェクタ3によってシリンダ5内のピストン6の上面に燃料を噴射するタイプのディーゼルエンジンである。エンジン1は、吸気通路4を介してシリンダ5内に吸入した空気をピストン6によって圧縮し、ピストン6の上面に形成された窪みの内部に燃料を噴射して自然着火させて燃焼させることによって駆動力を発生させている。シリンダ5の内部と吸気通路4との間は、吸気バルブ2によって開閉される。燃焼後の排気ガスは排気通路7に排気される。シリンダ5の内部と排気通路7との間は、排気バルブ8によって開閉される。
【0017】
吸気通路4上には、シリンダ5内に吸入される吸入空気量を調節するスロットルバルブ9が配設されている。本実施形態のスロットルバルブ9は、メインバルブとサブバルブとからなるダブルバルブ機構を採用している(詳細は図示せず)。メインバルブは電子制御によってその開度が制御されおり、その動きはスロットルポジションセンサ10によって検出される。メインバルブの開度を決定するに際して、アクセルペダルの動きはアクセルポジションセンサ11によって検出される。なお、サブバルブは、アクセルペダルが踏み込まれている状態では全開とされており、アクセルペダルが踏み込まれていないときは、冷間アイドル回転時には全開・温間アイドル時には半開とされる。なお、エンジン停止時はサブバルブは全閉とされる。
【0018】
メインバルブの開閉は負圧を利用するアクチュエータ12によって行われ、アクチュエータ12への負圧の供給は負圧制御バルブ13によって行われる。同様に、サブバルブの三段階の開閉も負圧を利用するアクチュエータ14によって行われ、アクチュエータ14への負圧の供給は負圧制御バルブ15によって行われる。負圧制御バルブ13,15は、図示されないバキュームポンプに接続されている。また、メインバルブ側のアクチュエータ12と負圧制御バルブ13との間にはバキュームダンパ16が配設されている。
【0019】
また、吸気通路4上には吸入空気の温度を検出する吸気温センサ17や吸気管内圧力を検出する圧力センサ18なども取り付けられている。一方、排気通路7上には、排気ガスを浄化する排気浄化触媒19が取り付けられている。そして、排気通路7から吸気通路4にかけて排気ガスを還流させるためのEGR(Exhaust Gas Recirculation)通路20が配設されている。EGR通路20上には、排気ガス還流量を調節するEGRバルブ21が取り付けられている。EGRバルブ21も負圧を利用して開閉され、EGRバルブ21への負圧の供給は負圧制御バルブ22によって行われる。負圧制御バルブ22も、図示されないバキュームポンプに接続されている。
【0020】
エンジン1のクランクシャフト近傍には、クランクシャフトの回転基準位置を検出するクランクポジションセンサ23が取り付けられている。エンジン1には、冷却水温度を検出する水温センサ24も取り付けられている。シリンダ5の下端には、シリンダ裏面に対してエンジンオイルを噴射するオイルジェット25が配設されている。オイルジェット25に付随して、オイルジェット25へのオイル流路を開放・遮断する電磁弁(切替弁)26が取り付けられている。さらに、電磁弁26の下流側のエンジンオイルの油圧を検出する油圧センサ27がオイル流路上に取り付けられている。ピストン6の内部には、オイルジェット25から噴射されたエンジンオイルを導入させる円環状のオイルギャラリ28が形成されている。
【0021】
オイルジェット25から噴射されたエンジンオイルは、オイルジェット25のジェットパイプのほぼ延長線上に形成されたオイル導入孔からオイルギャラリ28の内部に導入され、オイル導入孔とは反対側に形成されたオイル排出口から排出される。オイルジェット25からのエンジンオイルの噴射を停止させると、オイルギャラリ28の内部は空気が満たされることとなり、オイルギャラリ28は断熱層として機能する。この結果、ピストン6の温度が上昇し、燃焼室内での燃料の蒸発が促進され、燃料の未燃焼による白煙の発生を抑止することができる。
【0022】
エンジン1のインジェクタ3には、燃料タンク29に貯蔵された燃料がインジェクションポンプ30によって送出される。インジェクションポンプ30には燃料の温度を検出する燃温センサ31や、エンジン1の回転数を検出する回転数センサ32も付随している。インジェクションポンプ30はエンジン1の出力に基づいて駆動されており、インジェクションポンプ30への入力軸の回転からエンジン1の回転数を検出している。
【0023】
上述したセンサ類やアクチュエータ類はエンジン1を総合的に制御する電子制御ユニット(ECU)32に接続されている。これらのアクチュエータ類・センサ類は、ECU33からの信号に基づいて制御され、あるいは、検出結果をECU33に対して送出している。ECU33は、内部に演算を行うCPUや演算結果などの各種情報量を記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、各制御プログラムを格納したROM等を有している。ECU33は、吸気通路内圧力や空燃比などの各種情報量に基づいてエンジン1を制御する。
【0024】
ECU33は、上述した電磁弁26の開閉を切り替える切替弁制御手段として機能している。また、ECU33は、EGR通路20やEGRバルブ21と共に排気ガス還流量を制御するEGR制御手段としても機能している。さらに、ECU33は、インジェクタ3やインジェクションポンプ30などと共に燃料噴射量や燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段としても機能している。また、ECU33は、オイル圧検出手段として機能する油圧センサ27の検出結果に基づいて電磁弁26のが故障しているか否かを判定する切替弁故障判定手段としても機能する。
【0025】
ここで、燃料噴射量制御と燃料噴射時期制御とについて簡単に説明する。
【0026】
まず、燃料噴射量制御であるが、ECU33によって、エンジン1の運転状態に最適な基本噴射量と、そのエンジン状態において最も多く噴射し得る噴射量として最大噴射許容量(以下単に最大噴射量とも言う)とを算出し、両者を比較して少ない方を選択する。最終的には、選択された少ない方の噴射量にインジェクタ毎の特性を反映させるための補正を施して最終噴射量を決定する。
【0027】
基本噴射量は、アクセル開度とエンジン回転数とに基づいて決定される。基本噴射量は、その時点で車両に対して要求されている出力を得るために必要な燃料噴射量を反映させたものである。アクセル開度はアクセルポジションセンサ11によって検出され、エンジン回転数は回転数センサ32によって検出される。一方、最大噴射量に関しては、まず、エンジン回転数に基づいて理論上噴射可能な噴射量として基本最大噴射量を算出し、これを各種センサの検出結果に基づいて補正し、最大噴射量を得る。最大噴射量は、エンジン各部の強度や燃焼可能な燃料量や排出される排気ガス成分等を考慮して決定される。
【0028】
基本最大噴射量に対する補正としては、以下のようなものがある。圧力センサ18によって検出される吸気圧力に基づいて行われる吸気圧補正。吸気圧が高いと吸入空気量が多くなるので噴射量を増量側に補正する。吸気温センサ17によって検出される吸気温に基づいて行われる吸気温補正。空気密度の差で生じる空燃比のズレを補正するために、吸気温度が低いと吸気密度が高くなるので噴射量を増量側に補正する。燃温センサ31によって検出される燃料温度に基づいて行われる燃温補正。燃料密度の差で生じる噴射量のズレを補正するために、燃料温度が高いと燃料密度が低くなるので噴射量を増量側に補正する。水温センサ24によって検出されるエンジン冷却水の温度に基づいて行われる水温補正。冷却水の温度が低いほど噴射量を増量側に補正し、冷間始動直後の運転性を確保する。
【0029】
基本噴射量と最大噴射量とを比較して基本噴射量の方が小さければ、その状態のエンジン1に求められている噴射量が理論上の許容量(最大噴射量)以下であるので基本噴射量が最終噴射量となる。一方、最大噴射量の方が小さい場合は、その状態のエンジン1に求められている噴射量はより多いが、噴射量を理論上の許容量に制限するために最大噴射量が最終噴射量となる。次に、燃料噴射時期制御について説明する。
【0030】
燃料噴射量時期については、ECU33によって、エンジン1の運転状態に最適な目標噴射時期を算出すると共に実噴射時期を算出し、実噴射時期を目標噴射時期にフィードバックすることによって最終噴射時期を決定する。目標噴射時期は、ベースとなる基本噴射時期に対して、各種センサからの検出結果に基づく補正を施すことによって得られる。基本噴射時期は、アクセル開度とエンジン回転数とに基づいて決定される。アクセル開度はアクセルポジションセンサ11によって検出され、エンジン回転数は回転数センサ32によって検出される。
【0031】
基本噴射時期に対する補正としては、以下のようなものがある。圧力センサ18によって検出される吸気圧力に基づいて行われる吸気圧補正。高地などのように吸気圧が低い場合は噴射時期を進角側に補正する。水温センサ24によって検出されるエンジン冷却水の温度に基づいて行われる水温補正。冷却水の温度が低いほど噴射時期を進角側に補正する。
【0032】
また、クランクポジションセンサ23によって検出されるクランク角度基準位置からピストン6の上死点位置が検出され、これとインジェクションポンプ30での噴射タイミング情報を回転数センサ32の出力から得ることによって実噴射時期を検出している。この実噴射時期に各インジェクタ3毎の特性を補正として加えたものと上述した目標噴射時期とを比較し、各インジェクタ3毎の実噴射時期が目標噴射時期となるようにフィードバック制御を行っている。
【0033】
次に、第一実施形態について説明する。本実施形態においては、図2に示されるように、エンジン回転数とその出力トルクとから、オイルジェット25からのエンジンオイルの噴射を行う状況(図2中のON領域:高負荷時)と行わない状況(同OFF領域:軽負荷時)とが分けられている。出力トルクは、燃料噴射量や燃料噴射時期などから推定できる。なお、冷間始動直後に、図2に示されるマップによらずに常にオイルジェット25からのエンジンオイルの噴射を行うようにされていてもよい。この場合は、水温センサ24の検出結果などで冷間始動直後か否かを判定する。
【0034】
図3に本実施形態における制御のフローチャートを示す。図3に示されるフローチャートの制御は所定時間毎に実行されている。まず、エンジン1の状態がオイルジェット25からのエンジンオイルの噴射を行う状態にあるか否か、即ち、高負荷時であるか否かを判定する(ステップS300)。ステップS300が否定される場合は、軽負荷時であり、オイルジェット25からのエンジンオイルの噴射が行われており、ピストン6の温度を上昇させて白煙の発生を抑止しており、かつ、軽負荷運転時であるので黒煙発生のおそれがないと判断できる。この場合は、図3のフローチャートによって示される制御を一旦抜ける。
【0035】
一方、ステップS300が肯定される場合は、高負荷時であると判定できる。この場合は、オイルジェット25からのエンジンオイル噴射の前回実行時の継続時間が所定継続時間Aを超えているか否かを判定する(ステップS310)。この所定継続時間Aは、その後に高負荷時に移行した場合には、ピストン6の温度が高く黒煙を発生させるおそれが生じる時間である。ステップS310が否定されるようであれば、エンジンオイル噴射の前回実行によるピストン6の温度上昇は顕著なものではなく、そのまま高負荷時に移行しても黒煙の発生はない(あるいは許容範囲内)であると判断できる。この場合も、図3のフローチャートによって示される制御を一旦抜ける。
【0036】
これに対して、ステップS310が肯定される場合は、次に、現在行っているオイルジェット25からのエンジンオイル噴射の継続時間が所定継続時間B以下であるか否かを判定する(ステップS320)。ステップS320が否定される場合、即ち、現在行っているオイルジェット25からのエンジンオイル噴射の継続時間が既に所定継続時間Bを超えているようであれば、ピストン6の温度は既に低下しており黒煙の発生はない(あるいは許容範囲内)であると判断できる。この場合も、図3のフローチャートによって示される制御を一旦抜ける。
【0037】
しかし、ステップS320が肯定されるような場合は、前回のエンジンオイル噴射の停止によって高温化したピストン6の温度がまだ十分に低下しておらず、黒煙を発生させるおそれがあると判断できる。この場合は、排気ガス還流量(EGR量)を減らして酸素量を増加させ、酸素不足に起因する黒煙の発生を抑止する(ステップS330)。ステップS330の後、図3のフローチャートによって示される制御を抜ける。
【0038】
なお、ここでは、黒煙の発生を抑止する制御として、排気ガス還流量を少なくした。しかし、同様の効果を得る制御として、パイロット噴射量を減らす制御を上述したステップS330の代わりに行っても良い。パイロット噴射は、ディーゼルエンジンにおいて主として騒音低減を目的行われる燃料噴射制御である。シリンダ5内への燃料噴射を二段階とし、メインとなる燃料噴射の直前に少量の燃料噴射を行い、シリンダ5内部での圧力の立ち上がりなどを多少緩やかにするのがパイロット噴射である。このパイロット噴射量を少なくすることによって、メイン噴射開始時の筒内温度を(パイロット噴射が通常通りなされた場合よりも)下げ、着火までの時間を長くして吸入空気と噴射された燃料とを十分に混合させて黒煙の発生を抑止することができる。あるいは、黒煙の発生を抑止する制御として、燃料噴射時期を適正化する制御を上述したステップS330の代わりに行っても良い。
【0039】
また、上述した排気ガス還流量減・パイロット噴射量減・燃料噴射時期適正化の各制御は、任意の組み合わせで同時に行っても良い。なお、図2に示されるフローチャートの制御においては、高負荷時にはオイルジェット25からのエンジンオイルの噴射が必ず行われているような制御で説明した。しかし、オイルジェット25からのエンジンオイルの噴射が停止された状態で高負荷に移行する場合も考えられる。このような場合は、単にその時点でのオイルジェット25からのエンジンオイルの噴射停止が所定時間継続されているか否か、即ち、ピストン6の温度が高くなっているか否かを判定し、高い場合(所定時間経過している場合)に上述したステップS330の制御(及びこれと同じ効果を実現する上述した制御)を行うようにすればよい。
【0040】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。本実施形態では、上述したオイルジェット25からのエンジンオイルの噴射をオン-オフ制御する電磁弁26の故障を検出し、その検出結果によって各種制御を行うものである。図4に本実施形態における制御のフローチャートを示す。なお、本実施形態においても、図2に示されるように、オイルジェット25からのエンジンオイルの噴射を行う状況(図2中のON領域:高負荷時)と行わない状況(同OFF領域:軽負荷時)とが分けられている。図4に示されるフローチャートの制御は所定時間毎に実行されている。
【0041】
まず、エンジン1がオイルジェット25からのエンジンオイルの噴射を行う状態にあるか否かを判定する(ステップS400)。ステップS400が肯定される場合は、オイルジェット25からのエンジンオイルの噴射が行われているはずである。そこで、ステップS400が肯定された場合は、次に電磁弁26が実際に正常に開いているか否かを判定する(ステップS410)。この判定は、電磁弁26の下流側に設けられた油圧センサ27によって検出できる。電磁弁26が開状態でエンジンオイルが噴射されていれば油圧は高くなっており、電磁弁26が閉状態でエンジンオイルが噴射されていなければ油圧は低いままである。また、開状態であってもその開度が足りない場合などは油圧は低めとなるし、目標開度よりも大きく開いてしまっているような場合は油圧は高めになる。
【0042】
ステップS410が肯定される場合は、エンジンオイルが噴射されるべき状態下で電磁弁26が正常な開状態にある。この場合は、特に何もする必要はなく、図4のフローチャートによって示される制御を抜ける。一方、ステップS410が否定される場合は、エンジンオイルが噴射されるべき状態下で電磁弁26が正常に開いていない故障状態(特に、閉固着や開度不足)にあると判断できる。この場合は、上述した最大噴射量を減らす(ステップS420)。ピストン6に対してエンジンオイルを噴射されるべき状態であるのに電磁弁26が正常に開かない状態にあるということは、ピストン6をより冷却したい状況であるにもかかわらず冷却が行われていないということである。このようなときは、最大噴射量を減じて熱の発生を抑制する方向に制御し、エンジン1自体の故障(例えば、ピストン6の焼き付きなど)を防止する。
【0043】
なお、ここでは、電磁弁26が正常に開かない3つの状況(閉固着・開度不足・開度オーバー)の全てでステップS420を行う。このうち開度オーバーでは、ピストン6の冷却が過度となる事例であり、最大噴射量を減じる制御とは逆の事例である。しかし、開度オーバーのような状況では電磁弁26の開度が変わって閉固着となったり開度不足となる可能性が高いので、本実施形態では、エンジン1自体の故障を防止すべくステップS420を行うこととしてある。ただし、閉固着と開度不足のときだけ(油圧センサ27によって検出可能)ステップS420を行うようにしても良い。
【0044】
一方、ステップS400が否定される場合は、オイルジェット25からのエンジンオイルの噴射が行われていないはずである。そこで、ステップS400が否定された場合は、次に電磁弁26が実際に正常に閉じているか否かを判定する(ステップS430)。この判定も、電磁弁26の下流側に設けられた油圧センサ27によって検出できる。電磁弁26が開状態でエンジンオイルが噴射されていれば油圧は高くなっており、電磁弁26が閉状態でエンジンオイルが噴射されていなければ油圧は低いままである。閉状態であるはずなのに僅かに開いてしまっているような状況では、油圧センサ27が電磁弁26の全閉状態より僅かに高い油圧を示す。
【0045】
ステップS430が否定される場合は、エンジンオイルの噴射が停止されるべき状態下で電磁弁26が閉状態にあるので正常である。この場合は、特に何もする必要はなく、図4のフローチャートによって示される制御を抜ける。一方、ステップS430が肯定される場合は、エンジンオイルの噴射が停止されるべき状態下で電磁弁26が正常に閉じていない故障状態(特に、閉不良)にあると判断できる。この場合は、排気ガス還流量を減らす(ステップS440)。ピストン6に対するエンジンオイルの噴射を停止するべき状態であるのに電磁弁26が正常に閉じられていない状態にあるということは、ピストン6温度を上昇させたい状況であるにもかかわらず冷却が行われているということである。
【0046】
このようなときは、ステップS400が否定されているので軽負荷時でもあり、燃焼が不完全となって白煙が発生しやすくなったり、失火しやすくなる。そこで、ここでは、排気ガス還流量を減らして酸素量を増加させ、燃料を完全に燃焼させるようにして白煙の発生や失火を抑止している。ステップS440の後、図4のフローチャートによって示される制御を抜ける。なお、ここでは、白煙発生や失火を抑止する制御として、排気ガス還流量を少なくした。しかし、同様の効果を得る制御として、パイロット噴射量を増やす制御を上述したステップS440の代わりに行っても良い。このパイロット噴射量を増やすことによって、メイン噴射開始時の筒内温度をより高温化させてメイン噴射による燃料をより確実に燃焼させることができ、白煙発生や失火を抑止することができる。
【0047】
あるいは、白煙発生や失火を抑止する制御として、燃料噴射時期を進角する制御を上述したステップS440の代わりに行っても良い。なお、最終的な燃料噴射時期が進角側に変更されるのであれば、上述した燃料噴射時期制御の何れの部分で遅角制御を反映させても良い。燃料噴射時期を進角させることで筒内温度を高くでき、噴射された燃料(特に後の方に噴射された燃料)がさらされる温度が高くなり、燃料をより確実に燃焼させることができ、白煙発生や失火を抑止することができる。上述した排気ガス還流量減・パイロット噴射量増・燃料噴射時期進角の各制御は、任意の組み合わせで同時に行っても良い。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、ディーゼルターボエンジンや副室式のディーゼルエンジンに対しても適用が可能である。
【0049】
【発明の効果】
請求項1及び2に記載のディーゼルエンジンによれば、ピストンへのオイルジェットによるエンジンオイルの噴射を制御することによって、ピストンの冷却を一時停止して白煙の発生を抑止することができると共に、ピストン冷却の停止中あるいは停止後のピストン温度が高い間の高負荷時における黒煙の発生をも抑止することができる。
【0050】
請求項3〜6に記載の発明によれば、ピストンへのオイルジェットによるエンジンオイルの噴射を制御する切替弁の故障を確実に検出することができる。特に、請求項3に記載の発明によれば、切替弁が正常に開かない場合にエンジン自体が故障してしまうのを防止することができる。あるいは、請求項4〜6に記載の発明によれば、切替弁が正常に開かない場合に白煙の発生や失火を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のディーゼルエンジンの構成を示す構成図である。
【図2】切替弁(電磁弁)の開閉状況を示すマップである。
【図3】第一実施形態における制御のフローチャートである。
【図4】第二実施形態における制御のフローチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、3…インジェクタ、4…吸気通路、5…シリンダ、6…ピストン、7…排気通路、20…EGR通路、21…EGRバルブ、25…オイルジェット、26…電磁弁(切替弁)、27…油圧センサ(オイル圧検出手段)、28…オイルギャラリ、33…ECU(切替弁制御手段、EGR制御手段、燃料噴射制御手段、切替弁故障判定手段)。
Claims (6)
- ピストンクーリング用のオイルジェットと、前記オイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁と、前記切替弁の開閉を制御する切替弁制御手段とを備えたディーゼルエンジンにおいて、排気ガスを吸気通路上に還流させるEGR通路、前記EGR通路上に配設されたEGRバルブ、及び、前記EGRバルブの開度を調節して排気ガスの還流量を制御するEGR制御手段をさらに備えており、前記オイルジェットからのエンジンオイルの噴射が所定時間以上停止されている状況、あるいは、所定時間停止された後にエンジンオイルの噴射が開始されてからの経過時間が所定時間以下である状況で、かつ、高負荷運転に移行する際には、前記EGR制御手段が排気ガスの還流量が少なくなる側に前記EGRバルブの開度を変更することを特徴とするディーゼルエンジン。
- ピストンクーリング用のオイルジェットと、前記オイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁と、前記切替弁の開閉を制御する切替弁制御手段とを備えたディーゼルエンジンにおいて、燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段をさらに備えており、前記オイルジェットからのエンジンオイルの噴射が所定時間以上停止されている状況、あるいは、所定時間停止された後にエンジンオイルの噴射が開始されてからの経過時間が所定時間以下である状況で、かつ、高負荷運転に移行する際には、前記燃料噴射制御手段がパイロット噴射量を少ない側に変更することを特徴とするディーゼルエンジン。
- ピストンクーリング用のオイルジェットと、前記オイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁と、前記切替弁の開閉を制御する切替弁制御手段と、前記切替弁の下流側に配設されたエンジンオイルの圧力を検出する油圧検出手段と、前記油圧検出手段の検出結果に基づいて前記切替弁が故障しているか否かを判定する切替弁故障判定手段とを備えたディーゼルエンジンにおいて、
燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段をさらに備えており、前記切替弁故障検出手段が前記切替弁が正常に開かない故障であると判定した場合に、前記燃料噴射制御手段が最大噴射許容量を少ない側に変更することを特徴とするディーゼルエンジン。 - ピストンクーリング用のオイルジェットと、前記オイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁と、前記切替弁の開閉を制御する切替弁制御手段と、前記切替弁の下流側に配設されたエンジンオイルの圧力を検出する油圧検出手段と、前記油圧検出手段の検出結果に基づいて前記切替弁が故障しているか否かを判定する切替弁故障判定手段とを備えたディーゼルエンジンにおいて、
排気ガスを吸気通路上に還流させるEGR通路、前記EGR通路上に配設されたEGRバルブ、及び、前記EGRバルブの開度を調節して排気ガスの還流量を制御するEGR制御手段をさらに備えており、前記切替弁故障検出手段が前記切替弁が正常に閉まらない故障であると判定した場合に、前記EGR制御手段が排気ガスの還流量が少なくなる側に前記EGRバルブの開度を変更することを特徴とするディーゼルエンジン。 - ピストンクーリング用のオイルジェットと、前記オイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁と、前記切替弁の開閉を制御する切替弁制御手段と、前記切替弁の下流側に配設されたエンジンオイルの圧力を検出する油圧検出手段と、前記油圧検出手段の検出結果に基づいて前記切替弁が故障しているか否かを判定する切替弁故障判定手段とを備えたディーゼルエンジンにおいて、
燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段をさらに備えており、前記切替弁故障検出手段が前記切替弁が正常に閉まらない故障であると判定した場合に、前記燃料噴射制御手段がパイロット噴射量を増やす側に変更することを特徴とするディーゼルエンジン。 - ピストンクーリング用のオイルジェットと、前記オイルジェットからピストンへのエンジンオイルの噴射・非噴射を切り替える切替弁と、前記切替弁の開閉を制御する切替弁制御手段と、前記切替弁の下流側に配設されたエンジンオイルの圧力を検 出する油圧検出手段と、前記油圧検出手段の検出結果に基づいて前記切替弁が故障しているか否かを判定する切替弁故障判定手段とを備えたディーゼルエンジンにおいて、
燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御手段をさらに備えており、前記切替弁故障検出手段が前記切替弁が正常に閉まらない故障であると判定した場合に、前記燃料噴射制御手段が噴射時期を進角側に変更することを特徴とするディーゼルエンジン。
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