JP3751514B2 - 脳機図センサー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体の脳活動に伴う頭皮の微小変形および微小振動の計測を行う脳機図センサーに関する。
【0002】
【従来の技術】
脳活動は、睡眠や光、音などの外的刺激に対する反射のほか、過去の悲しい思い出や未来への成功希求の想像などの高度な感情や情動などの脳活動も包括するものである。脳に関する研究は、現在欧米で先行し、日本においても戦略研究として1990年代に開始された。脳機能を総合的に解明する研究も脳研究の重要事項であり、種々の計測手段が使用されている。
【0003】
この脳機能の総合的計測には、長年脳波計が使用されている。脳波計は、1929年のドイツのベルガーの脳電図の発見以来発展し、長年に渡って最も普及している計測装置であるが、これは頭皮に電極を貼り付けて固定し、脳活動に伴うマイクロボルトレベルの微小電圧を検出するものである。
【0004】
電極の取付け方には、耳たぶなどを基準電位とする単極導出法と、対の電極を接近して設置する双極導出法の2種類がある。脳波の種類は、安静時のα波(約10Hz)、覚醒・興奮時のβ波(17〜30Hz)、意識障害等の脳疾患時のδ波(1〜2Hzの不規則波)、θ波(4〜8Hz)などが知られている。睡眠脳波の研究も広く行われており、初期睡眠脳波(13〜15Hzの群波)、熟睡中脳波(0.5〜3Hzのδ波)などが知られている。
【0005】
また、外的刺激による誘発電位は、知覚刺激に特有な場所に現れ、視覚刺激には後頭部の視覚領に、聴覚刺激には側頭部の聴覚領に現れる。病的脳波としては、てんかんの大発作波、ウェーブアンドスパイク波、梯形波などが知られている。脳波の起源は不明であるが視知覚との関連が強いと考えられる。
【0006】
これに対して、最近脳磁波計測が広く研究されている。これは脳活動に伴う磁界を超伝導磁界センサー(超伝導量子干渉デバイス;SQUID)で検出するものである。この脳磁界は、頭部の皮膚表面近くでピコテスラ(pT,10nG)の超微弱磁界として検出されるが、地磁気の1億分の1の大きさであるため、厳重な磁気シールドルームの中で、絶対温度4Kを液体ヘリウムで実現しながら、大掛かりで高価な超伝導装置で測定しなければならない。
【0007】
脳波(脳電図)および脳磁波(脳磁図)は、ともに脳活動に伴う電磁気量であり、起源は同一と考えられている。したがって、これらから得られる生体情報や医療情報には共通点が多い。脳磁図では、誘発部位がより詳しく測定できるとの報告があるが、研究は始まったばかりである。測定技術は、脳波測定がより簡単である。
【0008】
一方、皮膚表面の微細振動が脳波と相関があることが1966年に稲永によって報告され〔稲永和豊:「Microvibrationと脳波」、精神医学,8(3),22〜27(1966)〕、また、1993年に日本の生体工学研究所から、脳活動に伴って頭部皮膚面で微小振動が検出されたとの報告がなされた〔土子健朗:「生体表面微細振動の周波数変動と覚醒水準との関係」、人間工学,vol.30,No.3,165−170(1994)〕。被験者のこめかみに圧電素子による加速度センサーを貼り付けて測定したところ、安静時に約7Hzの周期的振幅変調波状の振動が現れ、覚醒興奮時に5〜15Hzの種々の周波数の振動が現れたとの報告である。しかし、これらのマイクロバイブレーションの信号は雑音と区別し難く、明解な脳機能を弁別することは容易ではない。
【0009】
この信号は、脳波や脳磁波とは異なり、電磁気量でなく力学量(機械的量)であるので、脳機能の計測や脳疾患の診断には脳波と互いに補完する情報と考えられる。この関係は、循環器系の心臓機能計測における心電図、心磁図と心機図(拍動図、心音図、動脈脈波図)の関係に対応し、疾患診断の精度を高める関係である。
【0010】
この頭部皮膚振動の計測は、脳電図や脳磁図という電磁気信号とは異なる力学量信号であり、脳疾患の診断などに重要な情報を与えるものと考えられるが、皮膚振動の信号と雑音との区別が容易ではないので、より明解な皮膚の運動の計測法を開発する必要がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記状況に鑑みて、本願発明者によって既に提案されたアモルファス磁歪ワイヤの応力インピーダンス効果素子(特開平10−170355号)による高感度の加速度センサー(特願平11−366602号)をマイクロ化して、頭部皮膚に簡単に固定し、脳活動に伴う振動およびより大きな皮膚の変位を検出する、携帯性に富む脳機図センサーを提供することを目的とするものである。
【0012】
ここで、「脳機図」(mechanoencephalogram)という言葉はまだ存在しないと思われるが、これは本願発明者がこれまで心機図を研究してきた経緯から、心電図(electrocaodiogram)と心機図(mechanocardiogram)との対比の関係を脳電図(electroencephalogram)との対比に相似させて提案する便利な言葉であり、脳活動に伴う機械的運動(振動)の時系列という意味である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために
〔1〕脳機図センサーにおいて、固定片と、この固定片に固定されるガラス基板と、このガラス基板に形成される直線溝に接着されて実装される磁性体と、前記ガラス基板の先端に固定される慣性質量とを有する加速度形センサーを用意し、前記固定片を人体頭部の皮膚に固定して、前記磁性体に表皮効果を生じさせる電流を通電した状態で応力に対して前記磁性体のインピーダンスを変化させ脳の活動に伴う時系列情報を検出することを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記〔1〕記載の脳機図センサーにおいて、前記表皮効果を生じさせる電流は交流電流又はパルス電流であることを特徴とする。
【0015】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の脳機図センサーにおいて、前記加速度形センサーがアモルファス磁性体の応力インピーダンス効果を用いた加速度形センサーであることを特徴とする。
【0016】
〔4〕上記〔3〕記載の脳機図センサーにおいて、前記アモルファス磁性体が負磁歪アモルファスワイヤであることを特徴とする。
【0017】
〔5〕上記〔4〕記載の脳機図センサーにおいて、前記負磁歪アモルファスワイヤの直径が30μm以下であることを特徴とする。
【0018】
〔6〕上記〔4〕又は〔5〕記載の脳機図センサーにおいて、前記アモルファスワイヤを基板の片面に配置することを特徴とする。
【0019】
〔7〕上記〔4〕又は〔5〕記載の脳機図センサーにおいて、前記アモルファスワイヤを基板の両面にそれぞれ配置し、前記アモルファスワイヤに互いに逆の応力が印加されるようにすることを特徴とする。
【0020】
アモルファス磁歪ワイヤ(CoSiB)は、直径が20μmの強靱弾性体でありかつ耐食性に優れた材料であるため、応力やひずみの検出に適している。このセンサーヘッドに応力インピーダンス効果(SI効果)を発生させてひずみゲージ率約4000の超高感度応力検出特性を発生させるための、CMOSインバータマルチバイブレータによるパルス通電方式センサー電子回路を既に開発しているので、高感度・高速応答・低消費電力形のマイクロ加速度形センサーによる携帯の容易な脳機図センサーを実現することができた。
【0021】
脳機図は、脳電図と補完し合って、癲癇や脳腫瘍などの脳疾患の診断に有効であるとともに、過去の悲しい思い出や明るい未来への希求など心の動揺や興奮による精神的緊張や躍動、弛緩(眠気)などの精神状態を反映することから、ウソ発見器や自動車運転の居眠り検出による交通事故の防止システム、心理療法などへの種々の応用が考えられる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示すSI効果加速度形センサーのヘッドの概観図、図2はそのSI効果加速度形センサーの回路図、図3はそのSI効果加速度形センサーのヘッドの被験者への取付け状態を示す模式図である。
【0024】
これらの図に示すように、1は固定片、2はその固定片1に固定される厚さ0.1mm、幅3mm、長さ8mmのガラス基板であり、このガラス基板2に、幅約100μm、長さ5mmの直線溝3をダイヤモンドカッターで形成し、この直線溝3内に20μm径、長さ4mmのCoSiBアモルファス負磁歪ワイヤ4を埋め、セラミクスボンド5で接着した。ガラス基板2の先端には0.1グラムの慣性質量6を固定し、他端部の固定片1を被験者Aの頭部皮膚に両面テープ7で接着させた。ヘッドの全重量は0.3グラムである。10はSI効果加速度形センサーを示している。
【0025】
図2に示すように、センサーヘッドを組み込んだ加速度形センサー10の回路は以下のように構成されている。
【0026】
6個のCMOSインバータを内蔵するICチップを用い2個のインバータQ1 とQ2 と抵抗R,コンデンサCによりマルチバイブレータ発振回路11を構成する。その出力電圧を抵抗RD ,コンデンサCD からなる微分回路12によりパルス電圧に変換し、インバータQ3 (13)によって整形・増幅してアモルファスワイヤ(SIエレメント)14に通電してSI効果を発生させる。
【0027】
アモルファスワイヤ14の誘起パルス電圧は、ワイヤに印加される応力によってその高さが変化するので、パルス高さ変調(PHM)回路である。このパルス電圧はショットキーバリアダイオードSBDを通して抵抗RH ,コンデンサCH からなるピークホールド回路15を通して直流電圧に変換されて、零点調整差動アンプ16で加速度形センサー10の出力電圧に変換される。
【0028】
図4は23才健常男性を安楽椅子に頭部を固定して休ませ、図3に示すように眉間に図1のセンサーヘッドを貼り付けて、脳活動に伴う皮膚の変位や振動を測定した結果である。なお、図示しないが、センサーヘッドにはワイヤで接続される回路を有する部分を、例えば被験者の耳などに装着することができる。
【0029】
図4(a)は、閉瞼で安静状態にあり、約5Hzの微小振動に約0.2Hzのアーチ形の波形が重畳している。その変化幅は、約5mG(Gal)である。前者はマイクロバイブレーションであり、後者は今回はじめて検出された波形である。このゆっくりした波形は従来の加速度センサーでは検出されないものであり、皮膚の変形によりセンサーヘッドが傾斜したためと考えられる。この安静時の波形は数人の被験者の場合にも現れた。
【0030】
図4(b)は、閉瞼で安静中に暗算(割り算)をさせた場合であり、20秒間内に数箇所、大きな躍動的変化が現れた。暗算中に眼筋が緊張し眼球が動いた可能性がある。
【0031】
図4(c)は、安静後仮眠状態に入った場合であり、5Hz程度の微小振動のみが平坦に持続した。
【0032】
図5は、34才女性の脳機図の測定結果である。閉瞼で安楽椅子に休んだ状態である。
【0033】
図5(a)は、安静状態であり、約0.3Hzの波が現れている。図5(b)は、過去の悲しい出来事を思い出している場合であり、約2Galの大きな山が現れ、跳躍的で階段状に減少した。小さなパルス状波形も多数現れた。悲しい思い出に眼筋が緊張し、眉間の皮膚も動いたようである。
【0034】
図5(c)は、明るい楽しい未来を思い描いた場合であり、安静時の約0.3Hzの波が躍動的に現れた。明るい未来の想像と安静状態は共通した感情と考えられる。
【0035】
図5(d)は、与えられた仕事を期日までに遂行する焦燥感を感じている場合であり、積極的な緊張を感じて眼筋が緊張したものと考えられる。
【0036】
図5(a)〜図5(d)の波形はマイクロバイブレーションも含んでいるが、微小であるため判別し難い。
【0037】
これらの測定波形は、閉瞼安楽状態であり外見は同一であるが、明確に脳の活動状態を区別して表示しており、本発明のSI効果による高感度センサーは、マイクロバイブレーション(5〜15Hz)は加速度として検出し、1Hz以下の大きなゆっくりした波形は皮膚の変形に伴ってセンサーヘッドが傾斜し、SI効果が変化して検出するので、脳機図の測定に適し、心理の情動も測定できることが分かった。
【0038】
このことから、本センサーを加速度センサーと呼ばず加速度形センサーと呼んでいる。
【0039】
なお、被験者に開瞼で瞬きをするように指示したところ、躍動的なパルス状の波形が現れた。したがって、脳機図の発生原因に眼球制御筋が関与していると考えられる。図4(b)に示すように、被験者は暗算中に、閉瞼状態で割り算の演算の数字をイメージし、眼筋を緊張させたようである。
【0040】
図6は本発明の第2実施例を示すSI効果加速度形センサーのヘッドの概観図、図7はそのSI効果加速度形センサーの回路図である。
【0041】
図6は、図1に示した加速度形センサーヘッドのガラス基板2の両面に、それぞれ20μm径、5mm長のアモルファス磁歪ワイヤ8,9を接着した構成のセンサーヘッドの回路図である。そのアモルファス磁歪ワイヤ8,9は30μm以下の極細径とし、人体頭部に装着しやすいセンサーを構成することができる。
【0042】
図7は図6に示した2本のアモルファスワイヤSI素子を差動させる加速度形センサー回路図である。図2に示したCMOSマルチバイブレータ回路からのパルス電流を2本のアモルファスワイヤに同時に通電する。
【0043】
センサーヘッドの基板2が応力によって彎曲すると、2本のワイヤ8,9には互いに逆の応力が印加されるので、2本のワイヤ8,9の誘起パルス電圧の増減も互いに逆になる。そこで、2本のワイヤ8,9の誘起パルス電圧のピークホールド電圧を差動アンプ20に入力すると、この加速度形センサーの出力電圧は図2に示した回路の2倍の感度になる。
【0044】
また、この実施例によれば、平行形回路構成のために、電源ラインから混入するコモンモードノイズを相殺するので、より安定な回路動作を行うことができる。
【0045】
図8は、図6に示した加速度形センサーを、図3に示すように24才健常男性の眉間に貼り付け、開瞼状態の脳機図を測定した結果であり、図8(a)は、安静状態で遠方を眼球を静止させてぼんやり見た状態である。図8(b)は、市街地の自動車運転を想定して、視線を素早く多数箇所に移動させた場合であるが、大きな階段状波形が現れており、眼筋と眼球の運動による加速度が計測されたと考えられる。
【0046】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0047】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、頭部皮膚にマイクロヘッドを簡単に固定し、脳活動に伴う微小振動および情感によって皮膚が変形して現れる波形を検出する、携帯性に富む脳機図センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示すSI効果加速度形センサーのヘッドの概観拡大図である。
【図2】 本発明の第1実施例を示すSI効果加速度形センサーの回路図である。
【図3】 本発明の第1実施例を示すSI効果加速度形センサーのヘッドの被験者への取付け状態を示す模式図である。
【図4】 本発明の第1実施例を示すSI効果加速度形センサーを23才健常男性の眉間に貼り付け脳機図を測定した脳活動に伴う加速度を測定した結果を示す図である。
【図5】 本発明の第1実施例を示すSI効果加速度形センサーを34才女性の眉間に貼り付け脳機図の測定結果を示す図である。
【図6】 本発明の第2実施例を示すSI効果加速度形センサーのヘッドの概観拡大図である。
【図7】 本発明の第2実施例を示すSI効果加速度形センサーの回路図である。
【図8】 本発明の第2実施例を示すSI効果加速度形センサーを24才健常男性の眉間に貼り付け、開瞼状態の脳機図を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 固定片
2 ガラス基板
3 直線溝
4 CoSiBアモルファス負磁歪ワイヤ
5 セラミクスボンド
6 慣性質量
7 両面テープ
8,9 アモルファス磁歪ワイヤ
10 加速度形センサー
11 マルチバイブレータ発振回路
12 微分回路
13 インバータQ3
14 アモルファスワイヤ(SIエレメント)
15 ピークホールド回路
16 零点調整差動アンプ
20 差動アンプ
A 被験者
Claims (7)
- (a)固定片と、
(b)該固定片に固定されるガラス基板と、
(c)該ガラス基板に形成される直線溝に接着されて実装される磁性体と、
(d)前記ガラス基板の先端に固定される慣性質量とを有する加速度形センサーを用意し、
(e)前記固定片を人体頭部の皮膚に固定して、前記磁性体に表皮効果を生じさせる電流を通電した状態で応力に対して前記磁性体のインピーダンスを変化させ脳の活動に伴う時系列情報を検出することを特徴とする脳機図センサー。 - 請求項1記載の脳機図センサーにおいて、前記表皮効果を生じさせる電流は交流電流又はパルス電流であることを特徴とする脳機図センサー。
- 請求項1又は2記載の脳機図センサーにおいて、前記加速度形センサーがアモルファス磁性体の応力インピーダンス効果を用いた加速度形センサーであることを特徴とする脳機図センサー。
- 請求項3記載の脳機図センサーにおいて、前記アモルファス磁性体が負磁歪アモルファスワイヤであることを特徴とする脳機図センサー。
- 請求項4記載の脳機図センサーにおいて、前記負磁歪アモルファスワイヤの直径が30ミクロン以下であることを特徴とする脳機図センサー。
- 請求項4又は5記載の脳機図センサーにおいて、前記アモルファスワイヤを基板の片面に配置することを特徴とする脳機図センサー。
- 請求項4又は5記載の脳機図センサーにおいて、前記アモルファスワイヤを基板の両面にそれぞれ配置し、前記アモルファスワイヤに互いに逆の応力が印加されるようにすることを特徴とする脳機図センサー。
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