JP3751853B2 - 軽量盛土工法における壁面材の固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量盛土工法における壁面材の固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟弱地盤や地滑り地などでの盛土工法の一つとしてEPS工法のような軽量盛土材を用いた軽量盛土工法が知られている。この工法は、地盤改良にかかる経費の節減、工期の短縮、耐震性の向上などにおいて優れた効果を発揮することから、種々の土木工事において広く採用されている。図8は、軽量盛土工法を道路の拡幅工事に用いる場合の一例を示す断面図であり、軽量盛土材として発泡スチロールブロック(EPSブロック)を使用している。
【0003】
図示するように、中腹部に既存の道路1が作られている既存地山の斜面側にH形鋼2を建て込み、H形鋼2と支持地盤3との間にEPSブロック4を積み上げて所定高さの盛土部を形成する。その後、積み上げたEPSブロック4の全面にわたり所定厚さにコンクリートを打設し、コンクリート床版5を形成する。そして、コンクリート床版5およびEPSブロック4が水平方向の位置ズレを起こさないように、支持地盤3に埋設固定したアンカー6の先端をコンクリート床版5に一体に形成したアンカーヘッド51に固定する。それにより、コンクリート床版5は既存地山側に一体的に固定され、地震などにより支持地盤3が動いたときにも、コンクリート床版5およびEPSブロック4が支持地盤3から剥離すること、すなわち滑動や転倒することを回避する。また、H形鋼2を利用して軽量コンクリート板のような耐候性を備えた壁面保護材7が取り付けられる。さらに、コンクリート床版5の谷側縁に地覆コンクリート10が作られ、通常の土木工事のように、路盤8、アスファルト舗装9などの仕上げのための工事が施されて、道路の拡幅工事は終了する。
【0004】
ところで、EPSブロックのような樹脂発泡体ブロックは弾塑性体である。従って、コンクリート床版5の上に仕上げ施工として路盤8やアスファルト舗装9を積み上げるとEPSブロック4がわずかに沈下する。工事終了後にも、大型車両が通過する場合などに一時的な沈下が生じる。そのために、図8に示すようにH型鋼2を垂直に建て込み、谷側がほぼ垂直壁となるように軽量盛土材4を積み上げていく工法において、H型鋼2および該H型鋼を利用して利用して取り付けた壁面保護材7と樹脂発泡体ブロック4とを相互に非拘束状態とし、樹脂発泡体ブロック4の下方への沈み込みを許容している。
【0005】
前記した樹脂発泡体ブロックの沈み込みに対する他の対策として、特開平1−209999号公報には、コンクリート床版内に一部を埋設した挟持部材をH型鋼のフランジ部にスライド可能に挟持させるようにしたものが記載されている。この構造の場合には、樹脂発泡体ブロックの沈み込み時に発生する側圧によりH型鋼である支柱が倒れ込むのを防止でき、安定した壁面保護材の施工が可能となる。
【0006】
一方、H型鋼を構造支持材として建て込むことは、施工に大型機械を必要としコスト面でも高くつくことから、特開平11−241343号公報には、H型鋼の建て込みに代えて、傾斜地の底部に形成したコンクリート基礎にコンクリート板のような前面パネルを固着自立させ、積み上げた樹脂発泡体ブロックの上面に形成したコンクリート床版を、前面パネルの上部に対して、止め金具などを用いて固定するようにした傾斜地における軽量盛土工法が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平11−241343号公報に記載される工法は、H型鋼の建て込みを行わないことから、施工コストの低減は期待できる。しかし、前面パネルに対してコンクリート床版が止め金具などにより固定される態様であり、前記樹脂発泡体ブロックの沈み込みに対する対処が十分でないことから、前面パネルとコンクリート床版との固定部に集中荷重が発生して、破壊する恐れがある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、軽量盛土工法において、H型鋼の建て込みを省略することにより施工コストを大幅に低減しながら、耐候性確保のために樹脂発泡体ブロックの側面に取り付けることがどうしても必要となる壁面保護材を安定して取り付けることを可能とする軽量盛土工法における改良された壁面材の固定構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明では、樹脂発泡体ブロックを軽量盛土材として少なくとも一側面がほぼ垂直面となるように多段に積み上げ、その上面に路盤などの仕上げ構造材を、また、側面に多段に壁面材を配置するようにした軽量盛土工法における前記壁面材の固定構造において、壁面材は裏面に上下方向に走る縦溝を有しており、先端を該縦溝内に摺動可能な状態で係着した止着材を段積みされる軽量盛土材の積層面間に挿入することにより、壁面材が多段に積み上げた軽量盛土材のほぼ垂直となる側面に固定されるようにした。
【0010】
本発明の固定構造は、本発明者らが多くの経験から得た知見、すなわち、本来EPSブロックのような樹脂発泡体ブロックは、少なくとも一側面がほぼ垂直面となるようにして多段に積み上げても、十分な自立性を備えており崩れることはない、という知見を基礎としている。すなわち、樹脂発泡体ブロックを軽量盛土材として少なくとも一側面がほぼ垂直面となるように多段に積み上げ、その上面に路盤などの仕上げ構造材を配置するようにした軽量盛土工法において、ほぼ垂直面となる側面に支持構造材としてのH型鋼などの支柱を立設することは、本来不必要であったとの認識をベースとしている。
【0011】
本発明によれば、耐候性の付与などの目的で配置される壁面材は、段積みされる軽量盛土材の積層面間に挿入される止着材により、樹脂発泡体ブロック側(軽量盛土材側)にしっかりと取り付けられ、自由に離脱することはない。さらに、壁面材は裏面に上下方向に走る縦溝を有しており、止着材の先端は該縦溝内に摺動可能な状態で係着しているので、樹脂発泡体ブロックの上下方向の沈み込みによって、側面に多段に配置された壁面材が影響を受けることもない。
【0012】
段積みされた樹脂発泡体ブロックの沈み込みにより、樹脂発泡体ブロックが側方に膨らんで壁面材に側圧を与えることが考えられる。しかし、その移動量はわずかであり、各壁面材相互の側方向の移動により十分に吸収可能である。また、そのことは、各壁面材に構造材としての強度を持たせる必要がないことを意味しており、壁面材そのものを安価なものとすることができる。
【0013】
上記のようであり、本発明によれば、多段に積み上げた軽量盛土材の安定性およびその側面に多段に配置する壁面材の安定性の双方を、樹脂発泡体ブロックの沈み込みが生じる場合であっても、H型鋼のような構造部材としての支柱を建て込むことなく確保することができるので、軽量盛土工法にかかるトータルな施工コストを大幅に低減することができる。
【0014】
好ましい態様において、上下に連接する壁面材の位置決めのために、双方の縦溝内に挿入できかつその状態で係止可能な位置決め材が、全部または一部の連接部に用いられる。このような位置決め材を用いることにより、施工時での壁面材の積み上げ作業は大きく省力化される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態を説明する。図1は、本発明による軽量盛土工法における壁面材の固定構造を適用した盛土工事部の要部を示す断面図であり、図2は、そこで用いられる壁面材と該壁面材を軽量盛土材である樹脂発泡体ブロックに固定するための止着具の一実施の形態を斜視図により示している。
【0016】
この例において、施工に際して従来工法と同様にして支持地盤3が整備され、そこに、支持部材としてのH型鋼の建て込みを行うことなく、傾斜面とは反対側の面がほぼ垂直な面となるように、軽量盛土材としての樹脂発泡体ブロック(例えば、EPSブロック)4を多段に積み上げ、所定の高さの盛土部を形成する。その際に、後記するようにして、樹脂発泡体ブロック4のほぼ垂直な面側に止着具30を用いて壁面材20を固定していく。その後、コンクリート床版5を形成し、該コンクリート床版5を一端を地中に埋設したアンカー6に固定し、さらに、コンクリート床版5の路肩に地覆コンクリート10を作り、路盤8、アスファルト舗装9などの仕上げのための工事が施されることは、通常の軽量盛土工法の場合と同様である。
【0017】
樹脂発泡体ブロック4の垂直面側に壁面材20を固定する方法を説明する。図2に示すように、壁面材20は矩形状のものであり、横幅は任意であるが、高さは好ましくは一個の樹脂発泡体ブロック4の高さと同じとされる。壁面材20の素材は耐候性を有することを条件に任意であり、コンクリート製であってもよく、木材(間伐材)、樹脂材料などであってもよい。壁面材20の裏面には、例えば金属や樹脂の成形品であり、裏面側に上下方向に走る開口22を持つガイドレール21が、所要本数(図示の例では2本)一体に埋め込まれている。開口22の内側はより幅の広い縦溝23とされている。
【0018】
止着具30は金属や樹脂の一体成形品であり、扁平かつ長尺状である留め付け片31と、該留め付け片31の先端に一体成形された係止体33とからなる。留め付け片31の横幅は、ガイドレール21に形成された開口22の幅よりも狭くされており、好ましくは、その表裏には滑り止めの凸条32が形成される。係止体33は、ガイドレール21の前記縦溝23内に入り込むことができるが、開口22からは抜け出ることのない形状と大きさとされる。従って、止着具30をその係止体33部分をガイドレール21の縦溝23内に入り込ませた状態とすることにより、止着具30はガイドレール21から横方向には抜け出ることはなく、上下方向には自由に移動(摺動)することができる状態となる。
【0019】
壁面材20の固定は次のようにして行う。前記のように支持地盤3を整備した後、樹脂発泡体ブロック4の垂直面となる位置に、樹脂発泡体ブロック4と壁面材20の双方のためのをコンクリート基礎12を形成する。その際に、好ましくは、図1に示すように、壁面材20の基礎となる部分13のレベルを最下段の樹脂発泡体ブロック4aのための基礎となる部分14よりも高くしておく。
【0020】
形成した基礎12の上に最下段の樹脂発泡体ブロック4aを載置し、該樹脂発泡体ブロック4aの前面に沿って、図2に示した壁面材20aを張り付ける。前記のように基礎12は段差を有しているので、樹脂発泡体ブロック4aの上面の位置よりも壁面材20aの上端面は上位の位置となる。その状態で、壁面材20aの裏面に埋め込んであるガイドレール21に、当該ガイドレール21の縦溝23内に係止体33部分を入り込ませるようにして止着具30を取り付ける。止着具30を押し下げて、留め付け片31部分を樹脂発泡体ブロック4aの上面に衝接させた姿勢とし、その上に、二段目の樹脂発泡体ブロック4bを積み上げることにより、壁面材20aは樹脂発泡体ブロック4aの垂直面側にしっかりと固
定される。以下、同様な施工手順を積み上げるべき樹脂発泡体ブロック4のすべての段について行うことにより、多段に積み上げた樹脂発泡体ブロック4の垂直な側面に対しての壁面材20の固定作業は終了する。なお、最上段での止着具30a(の留め付け片31)の固定は、樹脂発泡体ブロック4とコンクリート床版5との間で行われる。また、図1に示すように、最上段に位置するの壁面材20の上端面は、最上段の樹脂発泡体ブロック4の上面位置よりも上位の位置となる。そのために、地覆コンクリート10や路盤8、アスファルト舗装9などの仕上げ施工を、最上段に位置するの壁面材20に載らないようにして施工することは容易であり、壁面材20が押し潰されるような事態は生じない。
【0021】
上記のようであり、本発明による軽量盛土工法における壁面材の固定構造によれば、仕上げ施工後に樹脂発泡体ブロック4が沈下する場合でも、その挙動は、壁面材20の裏面に形成した縦溝23内を止着具30が摺動することにより吸収され、壁面材20に影響を与えない。そのために、従来のようにH型鋼のような支柱を建て込むことなく、軽量盛土材の側面に耐候性付与のための壁面材を安定的に固定することが可能となり、施工コストは大幅に低減する。
【0022】
図3は、止着具の他の形態を示している。図3aに示す止着具30aは、前記した止着具30におけると同様な係止体33を2個、壁面材20の裏面に形成した複数本のガイドレール21の間隔と同じ間隔で有しており、各係止体33は、適宜の連結具34を介して平板状である留め付け板35に連接している。この態様の止着具30aは、壁面材20への取り付け作業が簡素化されるとともに、留め付け板35が平板状であることから、樹脂発泡体ブロック4との間の摩擦力が増大し、固定は一層安定する。図示のように、留め付け板35の表裏面に凸条36を形成する場合には、さらに安定した固定状態が確保される。図3bに示す止着具30bは、前記した止着具30における留め付け片31の先端に留め付け穴37を設けている点で相違している。この留め付け穴37を利用して、適宜の固定具38を樹脂発泡体ブロック4に打ち込むことにより、より堅固に固定状態を得ることができる。なお、固定具38を用いての取り付けであり、留め付け片31の表裏面は平坦であってよい。
【0023】
図4は、上下に連接する壁面材20、20の位置決めのために、好ましくは用いられる位置決め材40をその使用態様とともに示している。位置決め材40は、ガイドレール21の縦溝23の水平断面寸法とほぼ等しい水平断面寸法である上下の差込部41、41と、その間に位置する水平板42とからなり、水平板42は前記縦溝23の水平断面寸法よりも大きな面積とされている。このような位置決め材40を壁面材20、20同士の連接部に用いることにより、施工時での壁面材20の縦断方向の位置決めが容易となり、積み上げ作業は大きく省力化される。特に、図示のように、縦断方向の位置をずらして複数枚の壁面材20を配置することが容易となり、軽量盛土工法における垂直側壁面に高い意匠性を付与することが可能となる。もちろん、裏面に上下方向に走る2本以上の縦溝23を有している壁面材20を用いる場合には、このような位置決め材40を用いることなく、縦断方向に位置をずらしながら複数枚の壁面材20を配置していくことも可能である。
【0024】
図5〜図7は、他の実施の形態を示す、図1に相当する図である。図5〜図7において、同じ機能を奏する部材には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図5の形態は、軽量盛土材である樹脂発泡体ブロック4を、一側面ではなく、両側面が垂直面となるように多段に積み上げている点で、図1に示した形態と相違している。この形態は、平坦な地表面に軽量盛土工法により道路を形成するような場合に用いられるものであり、アンカー6は通常用いられない。
【0025】
図6の形態は、軽量盛土材である樹脂発泡体ブロック4を、側面が垂直面にではなく、ほぼ垂直面、すなわちわずかに傾斜した面として階段状に多段に積み上げている点で、図1に示した形態と相違している。この形態では、壁面材20として、その裏面上縁25が該傾斜に相当する量だけ内側に突出したものが用いられる。図7の形態は、壁面材20の表面側が、図6の場合のように階段状ではなく、連続した傾斜面となるように積み上げられている点で、図6に示した形態のものと相違している。この形態では、壁面材20として、裏面上縁25が内側に突出していることに加えて、その表面側も該傾斜に相当する角度で傾斜した面26とされたものが用いられる。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、仕上げ施工後に樹脂発泡体ブロックが沈下する場合でも、その挙動を、壁面材の裏面に形成した縦溝内で止着材を摺動させることにより吸収することが可能となり、樹脂発泡体ブロックの沈下が壁面材になんの影響も与えない。そのために、従来のようにH型鋼のような支柱を建て込むことなく、軽量盛土材である樹脂発泡体ブロックの側面に耐候性付与のための壁面材を直接かつ安定的に固定することが可能となり、軽量盛土工法の施工コストは大幅に低減する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による軽量盛土工法における壁面材の固定構造を適用した盛土工事部の要部を示す断面図。
【図2】壁面材と該壁面材を軽量盛土材である樹脂発泡体ブロックに固定するための止着具の一実施の形態を示す斜視図。
【図3】止着具の他の形態を示す図。
【図4】位置決め材をその使用態様とともに示す図。
【図5】本発明による軽量盛土工法における壁面材の固定構造を適用した盛土工事部の他の実施の形態を示す断面図。
【図6】本発明による軽量盛土工法における壁面材の固定構造を適用した盛土工事部のさらに他の実施の形態を示す断面図。
【図7】本発明による軽量盛土工法における壁面材の固定構造を適用した盛土工事部のさらに他の実施の形態を示す断面図。
【図8】軽量盛土工法を道路の拡幅工事に用いる場合の一例を示す断面図。
【符号の説明】
3…支持地盤、4…軽量盛土材としての樹脂発泡体ブロック、5…コンクリート床版、20…壁面材、21…ガイドレール、22…開口、23…縦溝、30…止着具、31…留め付け片、33…係止体、40…位置決め材
Claims (2)
- 樹脂発泡体ブロックを軽量盛土材として少なくとも一側面がほぼ垂直面となるように多段に積み上げ、その上面に路盤などの仕上げ構造材を、また、側面に多段に矩形状の壁面材を配置するようにした軽量盛土工法における前記壁面材の固定構造であって、前記矩形状の壁面材は裏面にその上縁から下縁にわたって連続して上下方向に走る縦溝を有していて、先端を該縦溝内に摺動可能な状態で係着した止着材を段積みされる軽量盛土材の積層面間に挿入することにより、該矩形状の壁面材が多段に積み上げた軽量盛土材のほぼ垂直となる側面に固定されていることを特徴とする固定構造。
- 上下に連接する壁面材同士の位置決めのために、双方の縦溝内に挿入できかつその状態で係止可能な位置決め材が、全部または一部の連接部に用いられることを特徴とする請求項1記載の固定構造。
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