JP3752776B2 - ポリ乳酸組成物およびその製造方法ならびに該組成物の成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、衣料用、日用生活用、医薬品材料用、医療材料用、および農業、漁業、工業、建築土木等の産業資材用に利用できる、粉末、繊維、フィルム、および成形材料として好適なポリ乳酸組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
化石原料由来の合成ポリマーに対して、ポリ乳酸は穀物を発酵させて得られる乳酸を原料とするため、地球資源保護の観点から注目されている。また、ポリ乳酸は土中、水中および生体内で容易に加水分解され、自然界に広く存在し動植物に対して無害な乳酸となり、最終的には代謝あるいは微生物分解によって二酸化炭素と水とに分解されるため、生分解性材料としても注目されている。更に近年は、特に生体に対する安全性が高いことから、医薬、医療分野への応用が盛んに行われている。
【0003】
ポリ乳酸の合成法としては、乳酸をオリゴマー化した後、これを解重合して環状二量体であるラクチドを単離し、このラクチドを溶融開環重合させて得る方法が知られている。この方法は、ラクチドの精製を充分に行いさえすれば比較的容易に高分子量のポリ乳酸が得られるため、非常に有用な方法である。
【0004】
このラクチド溶融開環重合の触媒としては種々の金属化合物が報告されているが、中でもスズ化合物、特にオクチル酸スズ(以下、Sn(Oct)2 と略記する)がその触媒活性の高さから、短い重合時間で高分子量のポリ乳酸が得られるため好ましく用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、第一にポリ乳酸の熱安定性の改善であり、第二に成形加工時の揮発成分による周辺環境汚染の防止を目的とするポリ乳酸中の残存ラクチドの低減である。
【0006】
まず、第一の課題について詳述する。ポリ乳酸は他の熱可塑性プラスチックと同様、加熱溶融による成形加工が可能である。しかし、Sn(Oct)2 を触媒として製造されたポリ乳酸は成型加工工程にて著しく分子量が低下し、充分な強度を持つ成形品が得られないという問題点がある。その原因は加水分解、解重合および環状オリゴマー化並びに分子内および分子間エステル交換によるもので、このような反応にポリ乳酸中に残存するスズ化合物が関与していることが知られている。
【0007】
この解決策として幾つかの方法が提案されている。例えば、ポリ乳酸重合生成物を水に対して不混和性の有機溶媒に溶解し、次いで無機酸、水溶性有機酸又は水溶性錯化剤を含む水性相又は水と接触させ、該有機相を分離した後ポリ乳酸を公知の方法で単離することで触媒を除去する方法(特開昭63−145327号)、該重合生成物を親水性有機溶媒の存在下、酸性物質と接触させることにより触媒を除去する方法(特開平7−102053号)、あるいは該重合生成物にホウ素化合物を添加し、触媒を失活させることで熱安定性を改善する方法(特開平7−62213号)等が挙げられる。
【0008】
しかし、第1、第2の方法は多量の溶媒と労力、設備を必要とするためコスト面で不利となり、またポリ乳酸中に浸透した溶媒の完全な除去が難しい等のため、品質面での問題点も多い。また、第3の方法は重合生成物であるポリマーチップに微量の添加剤を均一に分散させることは非常に難しく、この分散に溶媒を使用した場合はその除去に関して問題が生じることは前記第1、第2の方法と同様である。
【0009】
すなわち、重合生成物を後処理を加えずにそのまま次の成型加工工程に用いることが工業的には理想であるが、Sn(Oct)2 触媒を用いたラクチド溶融開環重合でこれを達成するのは困難である。
【0010】
一方、Sn(Oct)2 以外の触媒によるポリ乳酸重合の研究は数多くなされているが、得られた重合生成物の熱安定性の観点から触媒を検討した例は無い。
【0011】
本発明にて用いたトリスアセチルアセトナトアルミニウム(以下、Al(Acac)3 と略記する)がラクチドの溶融開環重合に際して触媒作用を有することはMakromol.Chem.、1991、2287〜2296、(1996)に記載されている。同文献によれば、ラクチドに対して0.1モル%のAl(Acac)3 を用い150℃で50時問重合させることにより重量平均分子量(Mw)17.1万(数平均分子量(Mn)9万、Mw/Mn=1.9より算出)のポリ乳酸が得られている。
【0012】
上記の例を工業化する場合に問題となる点は、まず第一に重合時間がかかりすぎることである。この問題点を解消する手段として容易に考えられる方法は、重合温度を上げることと触媒量を増やすことである。ところが、ラクチド溶融開環重合によるポリ乳酸重合の場合、ラクチドとポリ乳酸の間に重合平衡が存在し、その温度が高いほど平衡はラクチド側になることから、重合温度を高くするほど重合度が上がりにくくなることが知られている。また、触媒量に関してもスズ化合物その他の触媒研究の結果、その量を増やせば増やすほど重合度は低下することが当業者間での常識となっている。よって、前記の例の重合条件に対して、重合温度をあげる、あるいは触媒量を増やす等の操作を行った場合、得られるポリ乳酸の分子量は前記例の値よりもさらに低いものになると考えられていた。これらがAl(Acac)3 が高分子量のポリ乳酸を得るためのラクチド溶融開環重合触媒として工業的使用に適さないと判断されていた所以である。
【0013】
次に第二の課題について詳述する。ポリ乳酸をラクチドの溶融開環重合で製造した場合、重合生成物中にラクチドが残存するのを避けることはできない。この残存ラクチドは成形加工時に気化し、周辺環境の汚染、成形金型の汚染、成形品中のボイド形成による強度低下等の原因となる。ポリ乳酸にラクチドが残存する原因は、モノマー(ラクチド)/ポリマー間の重合平衡により150℃以上ではモノマーは0にはならないからである。
【0014】
このラクチドを重合生成物から除く方法として提案されているものとして、特開平3−14829号公報に記載の方法が挙げられる。同方法はラクチドの開環重合による生体吸収性ポリエステル製造の後半あるいは反応終了後に重合生成物を溶融状態に保ちながら減圧し、残存ラクチドを系外に除くというものである。
【0015】
上記公報には開環重合に使用する触媒および触媒量に関する特定はないが、実施例に記載されているのは前と同様にSn(Oct)2 でその使用量はラクチドに対して0.00086〜0.0032モル%の範囲である。しかし上記範囲の触媒量では工業的に妥当な時間で重合を完了させることは難しい。例えば、該公報の実施例9にはL−ラクチドに対して0.0024モル%のSn(Oct)2 を用いた例が開示されているが、200℃で常圧下180時間、さらに減圧下で2時間と非常に長い重合時間を必要としている。
【0016】
一方、Sn(Oct)2 の量を増やすと重合速度は上昇するが、同時に解重合速度も大きくなり、減圧によってラクチドを除いてもすぐに再生産されるため残存ラクチド量は低下せず、又そのまま減圧を続ければポリマー収率が低下してしまう。
【0017】
従って、Sn(Oct)2 触媒によるポリ乳酸重合において、減圧によるラクチド除去を工業的に実施が可能な条件で行なうことは困難であった。
【0018】
本発明は上記の実情に鑑みなされたものであって、第一の課題に対しては高分子量でかつ熱安定性に優れるため成形加工時の分子量低下が小さく、高強度の成形品を与えるポリ乳酸組成物、ラクチド溶融開環重合において重合後の後処理を必要としない高分子量かつ熱安定性に優れたポリ乳酸組成物の新規な製造方法、および該ポリ乳酸組成物からなる成形品の提供を目的とするものである。
【0019】
また、第二の課題に対しては成形加工時の周辺環境汚染が無いポリ乳酸組成物、残存ラクチド量の少ないポリ乳酸組成物を短時間で効率よく製造する方法、および該ポリ乳酸組成物からなる成形品の提供を目的とするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記第一の目的を達成するための本発明は、乳酸の環状二量体であるラクチドを溶融開環重合してポリ乳酸を製造するに際し、触媒として該ラクチドに対して0.15〜4.0モル%のAl(Acac) 3 を用いることを特徴とするポリ乳酸組成物の製造方法である。
【0024】
又、第二の目的を達成するための本発明は、乳酸の環状二量体であるラクチドを溶融開環重合してポリ乳酸を製造するに際し、触媒として該ラクチドに対して0.15〜4.0モル%のAl(Acac)3 を用い、重合系中の残存ラクチド量が30〜5%となるまで重合反応を進行させる第一工程と、該工程の重合生成物を溶融状態で減圧下におき重合を完結させる第二工程とからなることを特徴とするポリ乳酸組成物の製造方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるラクチドは前述したように乳酸をオリゴマー化した後解重合することによって得られる乳酸の環状二量体である。乳酸にはL−乳酸とD−乳酸が存在し、それに伴ってラクチドにもL−ラクチド、D−ラクチド、D、L−ラクチド、ラセミラクチドが存在する。本発明に用いられるラクチドの光学純度は特に限定されるものではないが、得られる高分子量ポリ乳酸の融点はポリ乳酸の光学純度によって決定され、高純度のものほど高融点のポリ乳酸が得られるため、より耐熱性の高いポリ乳酸を望むならば高光学純度のラクチドを用いることが好ましい。
【0027】
ラクチドの溶融開環重合においては水酸基を有する化合物が重合の開始剤として働くため、生成するポリ乳酸の分子量は原料中の水酸基濃度によって決定される。例えば、ホモポリマーの場合、重量平均分子量20万以上のポリ乳酸を得るためには原料中の水分量は5ppm〜60ppmの範囲内にあることが必要である。
【0028】
本発明に用いられるAl(Acac)3 は前述したようにその使用量がラクチドに対して0.1モル%では十分な分子量のポリ乳酸は得られない。しかし、本発明者等は該Al(Acac)3 が当業者の常識に反して、その使用量を増やすことで得られるポリ乳酸の分子量が増大することを見出した。本発明におけるAl(Acac)3 の使用量は、ラクチドに対して0.15〜4.0モル%(ポリ乳酸の乳酸単位にたいしては0.075〜2.0モル%)である。0.15モル%未満では得られるポリ乳酸の分子量が充分ではなく、使用量が増えると得られるポリ乳酸の分子量は大きくなるが3.0モル%付近で分子量の増加が飽和し、それ以上ではむしろ分子量が低下する。また、Al(Acac)3 の使用量増加に伴って得られたポリ乳酸の熱安定性は低下する傾向にあり、4.0モル%より多く使用することは熱安定性の点からも不利である。
【0029】
本発明における重合温度は特に限定されるものではないが、180〜200℃であることが好ましい。180℃より低温では重合に長時間を要するとともに、得られたポリ乳酸の融点よりも低温であるため攪拌が不能となり好ましくない。また、200℃より高温ではラクチドとポリ乳酸の平衡がラクチド側に偏りすぎるため重合度が上がりにくくなり、またラクチドの生成量が増大するためポリ乳酸の収率が低下する。
【0030】
重合生成物中の残存ラクチドを低減させる手段として、重合をある程度まで進行させる第一工程と、その重合生成物から減圧によってラクチドを除去する第二工程とに分けて行なうことが望ましい。該第一工程の終点は重合生成物中の残存ラクチド量が30〜5%に達した時点である。残存ラクチド量が30%より多い時点で第一工程を終了させると、残ったラクチドは第二工程にて除かれるわけであるからポリマー収率は70%より小さくなり不経済である。また第一工程終了時の残存ラクチド量が5%未満であれば、第二工程にて十分ラクチドが除去されない。これは残存ラクチドが重合生成物中で可塑剤として作用し、減圧下での自身の揮発を助けていると考えられる。
【0031】
第一工程に要する時間は通常は60〜600分であるが使用した触媒の量、重合温度、系内の水分量などによって異なるため、系中の残存ラクチド量をチェックしてその時間を適宜選択すればよい。又、第一工程を実施するための重合装置は特に限定されるものではないが、例えば攪拌装置と加熱機構を備えたバッチ式反応容器、あるいはエクストルーダータイプの連続式反応装置等を挙げることができる。ただし、前述したように本反応は系中の水分量によって生成するポリ乳酸の重合度が左右されるため、反応系は無水雰囲気下であることが望ましく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合させることが望ましい。
【0032】
上記第一工程で得られる重合生成物を第二工程に移行させる方法は得に限定されるものではないが、その間も重合生成物は無水雰囲気下にあることが好ましい。従って、例えば不活性ガスでシールされたバッチ式反応容器中で第一工程を行なった場合には、重合生成物を反応容器外に取り出さず、そのまま系を減圧にして第二工程を行なうのが望ましい。また、連続反応装置で第一工程を行なった場合には、その取り出し口から第二工程へ無水雰囲気下で直接移送するか、あるいは取り出した後無水雰囲気下で貯蔵し、しかる後第二工程に移すという方法を挙げることができる。
【0033】
本発明の第二工程は、第一工程で得られた重合生成物中の残存ラクチドを低減させる工程であり、その終点とするところは残存ラクチドの量が1%未満となった時点が好適に選ばれる。第二工程の温度条件は重合生成物の融点以上であることが必須である。例えば、ポリL乳酸ホモポリマーの場合には180℃以上であることが必要である。また、その上限は前述のように200℃以下である事が好ましい。200℃より高温にするとポリ乳酸の解重合速度が上昇し、いくら減圧によってラクチドを除いてもラクチドが再生産することにより終点に達しない虞がある。また減圧の条件は特に限定されるものではないが、減圧度は低ければ低いほど終点に達するまでの時間が短縮されるため、好ましくは10mmHg以下、より好ましくは5mmHg以下である。
【0034】
本発明の製造方法で得られるポリ乳酸組成物を溶融成形して成形品を得ることができる。前記成形品の例としては射出、押し出し等の各種成形品、フィルム、シ−トまたは未延伸もしくは延伸配向された繊維、さらには前記繊維からの繊維構造物(編物、織物、不織布、紙、紐、テ−プ、ロ−プ、網など)、さらには合成皮革の様な前記フィルムやシートと繊維との複合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0035】
これら成形品の用途としては、防虫、保温、防霜、遮光、防草用フィルム、シ−ト、繊維構造物等の農業用用途、乗り物の内装や電気製品等の工業用用途、法面緑化保護用シ−トや繊維構造物等の土木用用途、床や壁材等の建築用途、使い捨て器具、使い捨て衣料、靴や鞄等も含めた日用生活用品、玩具やゲーム機等を含めた遊具、生理用品等を含めた衛生医療用途、漁網、釣り糸、各種養殖用ロ−プ、網などの漁業用用途等が挙げられるがこれらに限定される物ではない。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述する。なおその前に本明細書における種々の特性値の測定法を記述する。
【0037】
<重量平均分子量>
クロロホルムを溶離液としたGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によってポリ乳酸組成物中のポリマ−部の重量平均分子量(Mw)を測定した。なお、分子量較正曲線はポリスチレンを用いて作成した。
【0038】
<残存ラクチド量>
前述のGPC測定におけるポリマー部、及びモノマー(ラクチド)部の面積から、下記式にて求められる値を重合生成物中の残存ラクチド量とした。
【0039】
残存ラクチド量(%)=モノマー部の面積/(ポリマー部の面積+モノマー部の面積)×100
【0040】
<曲げ強度>
五酸化燐存在下、室温で24時間減圧乾燥したポリ乳酸組成物を200℃、5分の条件で圧縮成形し、厚さ約1.6mmの成形板を得た。これより、幅15mm、長さ80mmの試験片を切り出し、支点間距離26mm、試験速度0.8mm/分の条件で曲げ強度を測定した。
【0041】
<物性安定性>
成形品とした時の物性としての安定性を、次の様に成形安定性で調べた。すなわち、成形前のポリ乳酸組成物(重合後)を前述した圧縮成形法で成形した(成形後)。重合後および成形後のポリ乳酸組成物の重量平均分子量(Mw)を測定し、下記式にて成形安定性を求めた。
【0042】
成形安定性(%)=ポリ乳酸組成物Mw(成形後)/ポリ乳酸組成物Mw(重合後)×100
【0043】
また、成形品の安定性を成形作業を行う代わりに以下の方法による熱安定性で代表させた。すなわち、溶融処理前のポリ乳酸組成物(重合後)約3gを、試験管中窒素下で180℃、1時間加熱(溶融処理)し、得られたポリ乳酸組成物(溶融後)をえた。重合後と溶融後のポリ乳酸組成物の重量平均分子量(Mw)を前述の方法で測定し、下記式にて熱安定性を求めた。
【0044】
熱安定性(%)=ポリ乳酸組成物Mw(溶融後)/ポリ乳酸組成物Mw(重合後)×100
【0045】
<収率>
重合原料であるラクチドの重量と、重合生成物であるポリ乳酸組成物の重量から、重合反応の収率を下記式より求めた。
【0046】
収率(%)=ポリ乳酸組成の重量/原料の重量×100
【0047】
(実施例1)
L−ラクチド(水分率31ppm、PURAC社製)120g(833mmol)とAl(Acac)3 2.70g(8.33mmol)を、攪拌装置、窒素導入管を備えた反応容器に投入し、窒素置換の後、窒素気流下で180℃に加熱し溶融開環重合させた。このとき、触媒であるAl(Acac)3 の量は、原料のL−ラクチドに対して1.0モル%、生成したポリ乳酸組成物の乳酸単位に対しては0.5モル%であった。分子量の上昇が飽和した時点で反応を終了し重合生成物を系外に取り出した。得られたポリ乳酸組成物およびこれを成形して得られた成形板の特性は表1に示すとおりであった。
重合後のポリ乳酸組成物の重量平均分子量は43.2万と非常に大きく、また成形後も32.4万(成形安定性75.0%)の高分子量を保持しているため、成形板の曲げ強さも998kgf/cm2 と非常に大きなものであった。これは触媒としてSn(Oct)2 を用いて得られたポリ乳酸組成物成形板の曲げ強度(比較例1)の約1.6倍の値であった。
【0048】
(比較例1)
実施例1におけるAl(Acac)3 に代えて該ラクチドに対して0.1mol%のSn(Oct)2 を触媒として用いる以外は実施例1と同様にして溶融開環重合をおこなった。得られたポリ乳酸組成物およびこれを成形して得られた成形板の特性は表1に示すとおりであった。
重合後のポリ乳酸組成物の重量平均分子量は実施例1と同様に45.6万の高分子であったが、成形によって分子量が12.4万(成形安定性27.2%)まで大きく低下し、そのため成形板の曲げ強さも625kgf/cm2 しかなく実施例1に比べてはるかに小さい値であった。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1および比較例1によるポリ乳酸組成物の溶融処理した前後の重量平均分子量を表2に示す。成形品の安定性の場合と同様に実施例1によるものが36.5万の高分子量を保持し、熱安定性も84.5%と高値を示すのに対し、比較例1によるものは分子量が7.8万と著しく低下し、熱安定性が17.3%と低値を示した。この結果もAl(Acac)3 触媒によるポリ乳酸組成物の熱安定性の高さを示すものである。また、同処理が成形のシミュレ−ションとして妥当であることを示すものである。
【0051】
(実施例2〜6)
実施例1におけるAl(Acac)3 の触媒量を表2のとおりにする以外は実施例1と同様にして溶融開環重合をおこなった。得られたポリ乳酸組成物の特性値は表2に示すとおりである。いずれからも重量平均分子量の大きなポリ乳酸が得られ、溶融処理後も20万以上の重量平均分子量(熱安定性60%以上)を保持しており、熱安定性の高いポリ乳酸組成物が得られた。
【0052】
(比較例2)
Al(Acac)3 の触媒量を0.270g(0.833mmol)とする以外は実施例1と同様にして溶融開環重合をおこなった。このとき、Al(Acac)3 は、原料のL−ラクチドに対して0.1モル%、生成したポリ乳酸組成物の乳酸単位に対しては0.05モル%となる。得られた重合生成物の特性値は表2に示すとおりであり、重量平均分子量が20万以下と低値であり、本発明の方法(実施例1〜6)によって得られるものより小さかった。
【0053】
(比較例3)
Al(Acac)3 の触媒量を13.5g(41.6mmol)とする以外は実施例1と同様にして溶融開環重合をおこなった。このとき、Al(Acac)3 は、原料のL−ラクチドに対して5.0モル%、生成したポリ乳酸組成物の乳酸単位に対しては2.5モル%となる。得られた重合生成物の特性値は表2に示すとおりであり、溶融処理後の重量平均分子量が20万以下、熱安定性が51.9%と低値であり、本発明の方法(実施例1〜6)によって得られるものより小さかった。
【0054】
【表2】
【0055】
(実施例7)
L−ラクチド(水分率11ppm、PURAC社製)60g(416mmol)とAl(Acac)3 0.675g(2.08mmol)を、攪拌装置、窒素導入管を備えた反応容器に投入した。このとき、触媒であるAl(Acac)3 の量は、原料のL−ラクチドに対して0.5モル%であった。窒素置換の後、第一工程として窒素気流下で180℃に加熱し溶融開環重合させた。残存ラクチド量が約15%になった時点で第二工程として系を3mmHgまで減圧しさらに180℃で加熱、重合させた。分子量の上昇が飽和した時点で反応を終了し重合生成物を系外に取り出した。得られたポリ乳酸組成物の特性は表3に示す通りであり、Mwが36.2万で残存ラクチド量が0.1%と非常に少ないポリ乳酸組成物が48.2g(収率80.3%)得られた。また、180℃で1時間溶融処理した後のMwは32.4万と分子量保持率が高く、熱安定性は90%と優れたものであった。
【0056】
(実施例8)
実施例7において第一工程終了後に一旦窒素下で重合生成物を系外に取り出し、冷却、粉砕の後に再び反応容器に戻し、第二工程を行なった。得られた重合生成物の特性は表3に示す通りであり、実施例7と同様に高重合度で熱安定性は88%と優れたポリ乳酸組成物が得られた。
【0057】
(比較例4)
実施例7において第一工程をポリ乳酸組成物の分子量の上昇が飽和する時点までとし、第二工程を行なわなかった以外は実施例7と同様にして重合を行なった。得られた重合生成物の特性は表3に示す通りであり、残存ラクチド量が3.5%と非常に多いものであった。
【0058】
(比較例5)
実施例7におけるAl(Acac)3 に代えて、該ラクチドに対して0.1モル%のSn(Oct)2 を用いた以外は実施例7と同様にして重合を行なった。得られたポリ乳酸組成物の特性は表3に示す通りであり、残存ラクチド量が1.8%と非常に多く、熱安定性も21%と低いものであった。
【0059】
【表3】
【0060】
(実施例9、10)
実施例7における第一工程を残存ラクチドが28.3%および6.4%になるまでとした以外は実施例7と同様にして重合を行なった。得られた重合生成物の特性は表4に示す通りであり、いずれの場合も高重合度、低残存ラクチド量のポリ乳酸組成物が高収率で得られた。
【0061】
(比較例6)
実施例7における第一工程を残存ラクチド量が39.1%になるまでとした以外は実施例7と同様にして重合を行なった。得られた重合生成物の特性は表4に示す通りであり、第一工程終了後の残存ラクチド量が多かったため、高重合度、低残存ラクチド量の重合生成物が得られたがその収率は55.2%と低いものであった。
【0062】
(比較例7)
実施例7における第一工程を残存ラクチド量が4.3%になるまでとした以外は実施例7と同様にして重合を行なった。得られた重合生成物の特性は表4に示す通りであり、第一工程終了後の残存ラクチド量が少なくなりすぎたため、第二工程でのラクチド除去が十分に行われず、残存ラクチド量が2.3%となった
【0063】
【表4】
【0064】
【発明の効果】
本発明の製造方法で得られるポリ乳酸組成物は熱安定性が高いため成形加工の際の分子量が20万以上に保持され、高強度の成形品が得られる。また、本発明の方法はラクチド溶融開環重合後の後処理を必要とせず、高分子量で熱安定性に優れたポリ乳酸組成物を得ることができるため、工業的に非常に利用価値が高い。また、触媒として従来のスズ化合物に替わりより安全なアルミニウム化合物を用いているため、生体内材科、あるいは食品関係への使用に際しても安全性が高い。また、本発明のポリ乳酸組成物は残存ラクチド量が少ないため成形加工時にラクチドが揮発し周辺環境を汚染することがなく、成形品中に残存ラクチドに由来するボイドの形成とそれに起因する低強度部分が無い成形品を得ることができる。また、本発明の方法はポリ乳酸中の残存ラクチドの除去に、再沈や洗浄等の溶媒除去工程を要する方法を用いず、重合に要する時間も短いため工業的価値が非常に高い。さらに、本発明の成形品は高強度であるため、衣料用、日用生活用、医薬品材料用、医療材料用、および農業、漁業、工業、建築、土木などの産業資材用に用いる粉末、繊維、フイルム、および成形材料として極めて好適である。
Claims (3)
- 乳酸の環状二量体であるラクチドを溶融開環重合してポリ乳酸を製造するに際し、触媒として該ラクチドに対して0.15〜4.0モル%のトリスアセチルアセトナトアルミニウムを用いることを特徴とするポリ乳酸組成物の製造方法。
- 重合系中の残存ラクチド量が30〜5%となるまで重合反応を進行させる第一工程と、該工程の重合生成物を溶融状態で減圧下におき重合を完結させる第二工程とからなることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸組成物の製造方法。
- 第二工程の減圧度が10mmHg以下であることを特徴とする請求項2記載のポリ乳酸組成物の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP11016897A JP3752776B2 (ja) | 1996-10-18 | 1997-04-10 | ポリ乳酸組成物およびその製造方法ならびに該組成物の成形品 |
Applications Claiming Priority (3)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP29750796 | 1996-10-18 | ||
| JP8-297507 | 1996-10-18 | ||
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