JP3752866B2 - 接合金属部材の接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1の金属部材と第2の金属部材とが接合されてなる接合金属部材の接合方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばエンジンのシリンダヘッドにおいてバルブシートをシリンダヘッド本体の吸気及び排気用ポートの開口周縁部に接合する場合のように、金属部材同士を接合する方法としては種々の方法が知られている。
【0003】
その方法として、例えば特開平8−100701号公報に示されているように、バルブシートとAl系シリンダヘッド本体とをAl−Zn系ろう材及びフッ化物系フラックスによりろう付け接合するようにすることが提案されている。
【0004】
また、例えば特開昭58−13481号公報に示されているように、両部材の接合面部における接触抵抗加熱を利用した抵抗溶接により金属部材同士を接合する方法が知られている。そして、この抵抗溶接では、例えば特開平6−58116号公報に示されているように、焼結材で構成されたバルブシートの空孔に金属を溶浸することによって、焼結材内部の発熱量を低減して接合面部での発熱量を増大させるようにすることや、例えば特開平8−270499号公報に示されているように、バルブシートの表面に皮膜を形成し、その皮膜をシリンダヘッド本体との結合時に溶融させるようにすることが提案されている。また、例えば特開平7−103070号公報に示されているように、予めバルブシートの接合面部を、バルブシートの押圧方向(上下方向)と垂直な水平面と、この水平面に垂直な(バルブシートの押圧方向に沿う)垂直面と、該水平面及び垂直面を繋ぐ傾斜面とで構成しておき、このバルブシートとシリンダヘッド本体とを、点接触させた状態で両部材間の通電及び加圧によりバルブシートをシリンダヘッド本体側に押圧移動させることでシリンダヘッド本体を塑性変形させながら接合することが提案されている。
【0005】
さらに、例えば特開平8−200148号公報に示されているように、バルブシートとシリンダヘッド本体とを、シリンダヘッド本体の接合面部に塑性変形層を形成しつつ溶融反応層を形成することなく固相拡散接合(圧接接合)するようにすることが提案されている。また、この公報では、予めバルブシートの接合面部を、バルブシートの押圧方向に対して傾斜角が互いに異なる2つの傾斜面と該両傾斜面間に円弧状に形成された凸面とで構成しておくことが示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記抵抗溶接による接合方法や固相拡散接合方法のように、第1の金属部材と第2の金属部材とを、該両金属部材間の加熱及び加圧により接合しようとする場合、上記提案例(特開平7−103070号公報及び特開平8−200148号公報)のように、第1の金属部材を第2の金属部材側に押圧移動させることで第2の金属部材を塑性流動させながら接合するようにすることが望ましい。すなわち、このようにすることで、両金属部材の接合面部に形成された酸化被膜を効果的に破壊させることができ、両金属部材の接合強度の向上化が期待できる。
【0007】
しかし、上記特開平7−103070号公報のように、第1の金属部材の接合面部に、該第1の金属部材の押圧方向に沿う垂直面を形成していると、第2の金属部材におけるこの垂直面に対応する部分では、上記第1の金属部材が第2の金属部材に押し付けられる力が作用しないため、酸化被膜の破壊作用や未反応ろう材の排出作用が有効に機能せず、この部分での接合強度は低くなってしまう。
【0008】
また、上記特開平8−200148号公報のように、第1の金属部材の接合面部を、該第1の金属部材の押圧方向に対して傾斜角が互いに異なる2つの傾斜面と円弧状の凸面とで構成すれば、第2の金属部材の材料を凸面から2つの傾斜面に沿って流動させるようにすることはできるものの、第2の金属部材において特に第1の金属部材の押圧方向に対する傾斜角が小さい側の傾斜面に対応する部分では、材料の流れが凸面から離れるに連れて次第にその傾斜面から剥離していき、このように材料の流れが剥離した部分においては酸化皮膜の破壊効果が不十分となり、十分な接合強度が得られないという問題がある。このことは、円弧状の凸面の代わりに2つの傾斜面を直接繋げて角部を形成するようにしても同じことである。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1の金属部材と第2の金属部材とを、上述の如く第2の金属部材を塑性流動させながら接合する場合に、第1の金属部材の接合面部の形状に工夫を凝らすことによって、第2の金属部材の材料が第1の金属部材の接合面部に沿って確実に流れるようにして、両金属部材の接合強度を向上させようとすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、予め、第1の金属部材の接合面部を、第1の金属部材の押圧方向に対して傾斜しかつ2つ以上の角部を有するように該傾斜方向に連続的に繋げられた3つ以上の傾斜面で構成しておくと共に、この接合面部に、第1の金属部材及び第2の金属部材よりも融点が低くかつ第2の金属部材との共晶組成ないしその近傍組成からなるろう材と第1の金属部材との拡散層を介して上記ろう材層を形成しておき(ろう材浴中の第1の金属部材の表面部に超音波振動の付与によりろう材をコーティングすることで、ろう材と第1の金属部材との拡散層における厚さが1μm以下となるように第1の金属部材に上記ろう材層及び該拡散層を形成する)、上記第1の金属部材と第2の金属部材とを、該両金属部材間の通電に伴う発熱による上記ろう材の融点以上の温度への加熱及び加圧により、ろう材における第2の金属部材成分の割合が多くなることでろう材が高融点化するようにろう材及び第2の金属部材の拡散層を形成しかつ溶融したろう材を両金属部材の接合面部間から排出しながら、上記両拡散層を介した液相拡散接合を行うことで、該両拡散層間の少なくとも一部に、該両拡散層同士の合金部を形成するようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、第1の金属部材と第2の金属部材とを、該両金属部材間の加熱及び加圧により第1の金属部材を第2の金属部材側に押圧移動させることで第2の金属部材を塑性流動させながら接合する接合方法を対象とする。
【0012】
そして、上記両金属部材の接合前に予め第1の金属部材の接合面部を、第1の金属部材の押圧方向に対して傾斜しかつ2つ以上の角部を有するように該傾斜方向に連続的に繋げられた3つ以上の傾斜面で構成しておく工程と、上記第1の金属部材における傾斜面で構成した接合面部に、該第1の金属部材及び第2の金属部材よりも融点が低くかつ第2の金属部材との共晶組成ないしその近傍組成からなるろう材と第1の金属部材との拡散層を介して上記ろう材層を形成する工程と、上記ろう材層を形成する工程後に、上記第1の金属部材と第2の金属部材とを、該両金属部材間の通電に伴う発熱による上記ろう材の融点以上の温度への加熱及び加圧により、ろう材における第2の金属部材成分の割合が多くなることでろう材が高融点化するようにろう材及び第2の金属部材の拡散層を形成しかつ溶融したろう材を両金属部材の接合面部間から排出しながら、上記両拡散層を介した液相拡散接合を行うことで、該両拡散層間の少なくとも一部に、該両拡散層同士の合金部を形成する工程とを含み、上記ろう材層を形成する工程は、ろう材浴中の第1の金属部材の表面部に超音波振動の付与によりろう材をコーティングすることで、上記ろう材と第1の金属部材との拡散層における厚さが1μm以下となるように第1の金属部材に上記ろう材層及び該拡散層を形成する工程であるものとする。
【0013】
このことにより、複数の角部により第2の金属部材における材料の流れが各傾斜面から剥離し難くなり、第1及び第2の金属部材間のどの部分においても酸化皮膜が効果的に破壊されて第1の金属部材と第2の金属部材とが確実に接合される。この結果、簡単な方法で両金属部材の接合強度を向上させることができる。
【0014】
しかも、ろう材を排出して両拡散層を介した状態で第1の金属部材と第2の金属部材とを液相拡散接合するので、第2の金属部材表面部の酸化被膜や汚れ等がろう材と共に排出されると共に、ろう材層を介さずに両拡散層が直接的に接合される。また、通常、ろう材の融点は低くて接合部の耐熱性が低くなるが、本発明ではろう材と第2の金属部材との合金化によりろう材の成分の割合が高融点化するように変化するので、接合層の融点を高くすることができる。このため、使用したろう材以上の強度と耐熱性とを付与させることができる。そして、このように従来にない利点を有する液相拡散接合方法では、酸化被膜の破壊及びろう材の排出を確実に行う必要がある。しかし、この発明では、塑性流動を良好に行わせて酸化被膜を破壊させることができ、その酸化被膜及び溶融したろう材を排出させることができるので、全く問題は生じない。よって、両金属部材の接合強度を確実に向上させることができる。
【0015】
また、拡散層の厚さを1μm以下とすることで、ろう材と第1の金属部材とが拡散し過ぎるのを抑えることができ、その拡散層において第1の金属部材の割合が多くなってろう材の組成が共晶組成から大きく外れるのを防止することができる。また、このように共晶組成から外れたろう材が多くなるのを防止することができる。このため、ろう材の組成を共晶組成ないしその近傍組成に維持しておくことができる。この結果、ろう材を溶融させるための入熱量を低く抑えることができ、第1又は第2の金属部材が軟化して変形するのを防止することができる。よって、酸化被膜の破壊効果やろう材の排出効果が確実に得られ、両金属部材の接合強度をより一層向上させることができる。
【0016】
さらに、ろう材浴中の第1の金属部材の表面部に超音波振動の付与によりろう材をコーティングすることで、第1の金属部材にろう材層及び拡散層を形成することによって、超音波によるキャビテーション作用により第1の金属部材の表面部の酸化被膜やメッキ層が破壊されるので、ろう材を第1の金属部材の表面部に擦りつけるという機械的な摩擦を利用する方法よりも確実にろう材を第1の金属部材側に拡散させることができる。また、ろう材浴中に浸漬するだけの溶融メッキ方法では、第1の金属部材に確実にろう材層及び拡散層を形成するには長時間を必要とし、拡散層の厚さを1μm以下にすることが容易ではないのに対し、この発明では、短時間でろう材層及び拡散層を確実に形成することができると共に、厚さを1μm以下の拡散層を容易かつ確実に実現することができる。さらに、フラックスを用いたろう付けを行う場合のようなフラックス除去のための後工程が不要である。よって、簡単な方法で、接合強度のより高い接合金属部材が得られる。
【0017】
さらにまた、第1及び第2の金属部材間の通電に伴う発熱により、ろう材の融点以上の温度への加熱を行うので、両金属部材間の抵抗発熱により容易に加熱することができ、ろう材を容易にかつ確実に溶融させることができる。よって、簡単な具体的加熱方法が容易に得られる。
【0018】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、傾斜面は3つであるものとする。
【0019】
この発明により、第1の金属部材の接合面部を形成するための加工(焼結等により製造する場合にはその金型の加工)が最も容易であり、加工コストを低減することができる。一方、接合面部に2つの角部を形成するだけで、第2の金属部材における材料の流れが各傾斜面から剥離するのを有効に防止することができる。
【0020】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、第1の金属部材の押圧方向に対する傾斜角が最も小さい傾斜面の傾斜角を、30〜40°に設定し、第1の金属部材の押圧方向に対する傾斜角が最も大きい傾斜面の傾斜角を、60〜70°に設定するようにする。
【0021】
すなわち、傾斜角が最も小さい傾斜面の傾斜角は、30°(約0.52rad)よりも小さいと、酸化皮膜の破壊効果が低下する一方、40°(約0.70rad)よりも大きいと、第2の金属部材を塑性流動させることが困難になると共に、第1の金属部材がその押圧方向と垂直な方向に大きくなりすぎるので、30〜40°(約0.52〜0.70rad)に設定している。また、傾斜角が最も大きい傾斜面の傾斜角は、60°(約1.05rad)よりも小さいと、傾斜角が最も小さい傾斜面の傾斜角を上記範囲に設定することが困難になる反面、70°(約1.22rad)よりも大きいと、第2の金属部材を塑性流動させることが困難になるので、60〜70°(約1.05〜1.22rad)に設定している。よって、酸化被膜の破壊により接合強度を向上させるための最良の形態が得られる。
【0022】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、第1の金属部材は、Fe系材料からなり、第2の金属部材は、Al系材料からなり、ろう材は、Zn系材料からなるものとする。
【0023】
こうすることで、Zn系のろう材はFe系の第1の金属部材とFe−Znの拡散層を、またAl系の第2の金属部材とAl−Znの拡散層をそれぞれ容易に形成する。また、両拡散層を介した接合であるので、Fe−Alという脆い金属間化合物が生成するのを有効に防止することができる。よって、請求項1の発明における接合方法に最適な材料の組合せが得られる。
【0024】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、ろう材は、Znが92〜98重量%のZn−Al系合金からなるものとする。
【0025】
このことで、ろう材を400℃以下で溶融させることができ、Fe系の第1の金属部材が変形するのを防止することができると共に、Al系の第2の金属部材が溶融したり軟化したりするのを確実に防止することができる。よって、Fe系金属部材とAl系金属部材とを接合する場合に、融点が低くて取り扱いの簡単なろう材の具体的材料が容易に得られる。
【0026】
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか1つの発明において、第1の金属部材は、高電気伝導率元素であるCuが分散された粉末材料を焼結してなる焼結材であるものとする。
【0027】
このことで、第1の金属部材を所定の形状に簡単に製造することができる。また、第1の金属部材の内部には、Cu等を溶浸した溶浸材とは異なり空孔がそのまま存在しているが、予め高電気伝導率元素が分散されて焼結されているので、第1の金属部材内部の抵抗値は、溶浸材と殆ど同程度に低く抑えることができる。このため、第1の金属部材が内部に空孔を有していても、溶浸材と同様に、通電時の内部発熱を抑制して接合を良好に行わせることができる。一方、空孔の断熱作用により熱伝導率は溶浸材よりも小さくなるので、第1の金属部材が高温下で使用するバルブシート等の場合は、その使用時に熱引けが適度に抑えられて酸化被膜が形成される。よって、接合を良好に行いつつ、溶浸工程を省略して製造コストを低減させることができると共に、接合後に高温下で使用する際に第1の金属部材の耐摩耗性を向上させることができる。尚、ここでいう「高電気伝導率元素」とは、電気抵抗率が3×10-8Ω・m以下の元素をいう。さらに、上記高電気伝導率元素がCuであることで、コストを低く抑えつつ、第1の金属部材内部の抵抗値を有効に低減することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。但し、最初に本発明の適用対象となる接合金属部材及び該部材の接合方法についての基本形態を説明し、その後に、本発明の実施形態をその基本形態と異なる点を中心に説明する。
【0029】
(基本形態1)
図1は、基本形態1に係る接合金属部材としてのエンジンのシリンダヘッド1の要部を示し、このシリンダヘッド1は、第2の金属部材としてのシリンダヘッド本体2における4つの吸気及び排気用ポート2b,2b,…の開口周縁部つまりバルブが当接する位置に略リング状のバルブシート3,3,…(第1の金属部材)が後述の如く接合されてなるものである。上記各ポート2bの開口周縁部はシリンダヘッド1の下側から見て略正方形状に並べられており、その各開口周縁部は各バルブシート3との接合面部2aとされている。
【0030】
上記各バルブシート3の内周面部はバルブ当接面部3cとされて、バルブ上面の形状に沿うように上方に向かって径が小さくなるテーパ状に形成されている。また、各バルブシート3の外周面部は、シリンダヘッド本体2との第1接合面部3aであって、上記シリンダヘッド本体2の接合面部2aにより包囲されかつ内周面と同様にテーパ状に形成されている。さらに、各バルブシート3の上面部は、シリンダヘッド本体2との第2接合面部3bであって、内周側に向かって上方に傾斜している。
【0031】
上記各バルブシート3はFe系材料からなる焼結材であり、その内部には高電気伝導率材料としてのCu系材料が溶浸されている。この各バルブシート3のシリンダヘッド本体2との第1及び第2接合面部3a,3bには、図2に模式的に示すように、Zn−Al共晶合金(約95重量%のZn成分と約5重量%のAl成分(後述するシリンダヘッド本体2の材料成分)との共晶組成)からなるろう材と該バルブシート3との拡散層である鉄側溶融反応層5が形成されている。すなわち、この鉄側溶融反応層5は、上記ろう材のZn成分がバルブシート3側に拡散することにより形成されたFe−Znからなっている。
【0032】
一方、上記シリンダヘッド本体2はAl系材料からなり、このシリンダヘッド本体2の各バルブシート3との接合面部2aには上記ろう材と該シリンダヘッド本体2との拡散層であるアルミ側溶融反応層6が形成されている。すなわち、このアルミ側溶融反応層6は、上記ろう材のZn成分が溶融状態でシリンダヘッド本体2側に液相拡散することにより形成されたAl−Znからなっている。尚、上記ろう材の融点は、各バルブシート3及びシリンダヘッド本体2よりも低い。
【0033】
そして、上記各バルブシート3とシリンダヘッド本体2とは、上記鉄側溶融反応層5及びアルミ側溶融反応層6を介して液相拡散接合されており、この鉄側溶融反応層5の厚さは1μm以下に設定されている。上記鉄側溶融反応層5及びアルミ側溶融反応層6のトータルの厚さとしては、0.3〜1.0μm程度が好ましい。また、鉄側溶融反応層5及びアルミ側溶融反応層6間の少なくとも一部(実際には、略全ての部分)には、該両溶融反応層5,6同士の合金部が形成されている。この合金部の組成は、Al:5〜10%、Zn:約10%、Fe:残部、となっており、両溶融反応層5,6及び合金部の組成は全体に亘ってなだらかに傾斜している。
【0034】
以上の構成からなるシリンダヘッド1において各バルブシート3をシリンダヘッド本体2の各ポート2b開口周縁部(接合面部2a)に接合してシリンダヘッド1を製造する方法を説明する(尚、以下の製造工程では、シリンダヘッド本体2及びバルブシート3の天地は逆になっている)。
【0035】
先ず、Fe系材料の粉末を焼結することによってバルブシート3を作製する。このとき、バルブシート3は、図3に示すように、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2の接合時の加圧力に耐え得るように、その内周側及び上側(図1では下側)に肉厚が厚くなるように形成されている。すなわち、この段階ではバルブ当接面部3cは形成せず、内周面は真っ直ぐに上方に延びるように、また上面は略水平状となるようにそれぞれ形成する。さらに、シリンダヘッド本体2との第1接合面部3aのテーパ角(図3のθ1)は30°(約0.52rad)に、また第2接合面部3bの傾斜角(図3のθ2)は20°(約0.35rad)にそれぞれ形成する。
【0036】
そして、Cu系材料の粉末を焼結することによって上記バルブシート3と略同径のリングを作製した後、このリングを上記焼結したバルブシート3の上面に載せた状態で加熱炉に入れて溶融させることによりバルブシート3の内部にCu系材料を溶浸させる。この後、バルブシート3の上記第1及び第2接合面部3a,3bを含む表面部全体に、酸化被膜形成防止等の観点からCuメッキ層(2μm程度)を施しておく。
【0037】
続いて、図5(a)に模式的に示すように、上記バルブシート3の第1及び第2接合面部3a,3bに鉄側溶融反応層5を介してろう材層7を形成する。このとき、バルブシート3に、鉄側溶融反応層5の厚さが1μm以下となるようにする。このようにバルブシート3に鉄側溶融反応層5及びろう材層7を形成するには、ろう材浴中のバルブシート3の表面部に超音波振動の付与によりろう材をコーティング(超音波メッキ)する。すなわち、図6に示すように、振動板11の一端部を超音波発振機12に取り付け、上記バルブシート3をこの振動板11の他端部の上面に載せた状態で有底状容器13内のろう材浴14に浸漬する。この状態で上記超音波発振機12から振動板11を介して超音波振動をバルブシート3に付与すると、超音波によるキャビテーション作用によりバルブシート3の表面部のCuメッキ層や僅かに形成されていた酸化被膜が破壊され、ろう材のZn成分がバルブシート3側に拡散してFe−Znからなる鉄側溶融反応層5が形成されると共に、この鉄側溶融反応層5の表面側にろう材層7が形成される。このことで、ろう材をバルブシート3の表面部に擦りつけるという機械的な摩擦を利用する方法(摩擦ハンダ法)よりも確実かつ容易に鉄側溶融反応層5を形成することができる。ここで、上記超音波メッキの条件としては、例えば、ろう材浴温度を400℃、超音波出力を400W、超音波振動付与時間を20秒にそれぞれ設定すればよい。尚、フラックス等の酸化被膜を破壊する手段を用いて、バルブシート3をろう材浴14に浸漬するだけの溶融メッキ方法でも鉄側溶融反応層5及びろう材層7を形成することはできるが、超音波メッキの方がより簡単かつ確実に鉄側溶融反応層5の厚さを1μm以下にすることができる。
【0038】
次に、上記バルブシート3を、予め鋳造等により作製しておいたシリンダヘッド本体2のポート2b開口周縁部つまりバルブシート3との接合面部2aに接合する。このとき、シリンダヘッド本体2の接合面部2aは、図4(a)に示すように、接合完了時の形状(バルブシート3の第1及び第2接合面部3a,3bと同じ形状)とは異なり、45°(約0.79rad)のテーパ角を有している。
【0039】
そして、バルブシート3をシリンダヘッド本体2の接合面部2aに接合するには、図7に示すように、市販のプロジェクション溶接機を改良した接合装置20を用いて行う。この接合装置20は、略コ字状の支持本体21を有しており、この支持本体21の上下水平部21a,21bは片側の鉛直部21cのみに支持された片持ち状とされて、鉛直部21cと反対側は開口状とされている。上記支持本体21の上側水平部21aの下部には加圧シリンダ22が設けられ、この加圧シリンダ22の下側には、加圧シリンダ22のシリンダロッド23に取り付けられかつこのシリンダロッド23と同一軸上を上下移動可能な略円筒状のCu製上側電極24が設けられている。一方、上記下側水平部21bの上側には、移動台27を介してCu製下側電極25が上側電極24に対向した状態で設けられ、この下側電極25の斜めに傾いた上面にシリンダヘッド本体2を、その接合面部2aがシリンダヘッド本体2の上側となるように載せることが可能とされている。上記移動台27の下側水平部21bに対する水平方向位置と下側電極25の上面の傾きとは調整可能とされており、バルブシート3を接合する接合面部2aの中心軸が鉛直方向となりかつ上側電極24の中心軸に略一致するように調整する。
【0040】
上記上側及び下側電極24,25は、支持本体21の鉛直部21c内に収納された溶接電源26にそれぞれ接続され、下側電極25上面におけるシリンダヘッド本体2の接合面部2aにバルブシート3を載せた状態でそのバルブシート3の上面部に上側電極24を当接させてバルブシート3及びシリンダヘッド本体2を加圧シリンダ22により加圧しつつ上記溶接電源26をONすると、電流がバルブシート3からシリンダヘッド本体2へと流れるようになっている。そして、上記上側電極24のバルブシート3上面部に当接する下面部には、図8(a)及び(b)に拡大して示すように、支持本体21の鉛直部21cと反対側(支持本体21の開口側)に非通電部としての切欠部28が形成されている。
【0041】
上記シリンダヘッド本体2を上記接合装置20の下側電極25上面に載せ、バルブシート3を接合する接合面部2aの中心軸が上側電極24と略一致するように移動台26の水平方向位置と下側電極24上面の傾きとを調整した後、その接合面部2a上にバルブシート3を載せる。このとき、図4(a)に示すように、バルブシート3の第1及び第2接合面部3a,3bの角部のみがシリンダヘッド本体2の接合面部2aに当接している状態(線接触している状態)にある。
【0042】
次いで、加圧シリンダ22の作動により上側電極24を下側に移動させて上記バルブシート3の上面に当接させ、この状態からバルブシート3及びシリンダヘッド本体2の加圧を開始する。この加圧力は29420N(3000kgf)程度が望ましい。そして、図9に示すように、この加圧力を保持しながら、加圧開始から約1.5秒経過後に溶接電源26をONしてバルブシート3及びシリンダヘッド本体2間の通電に伴う抵抗発熱によりろう材層7におけるろう材の融点以上の温度への加熱を行い、そのろう材を溶融させる。この電流値は70kA程度が望ましい。
【0043】
このとき、ろう材は約95重量%のZn成分と約5重量%のAl成分との共晶組成からなるので、その融点は、図11に示すように、約380℃と極めて低く、通電開始から直ぐに共晶線に達して一斉に溶融する。一方、加圧により、図4(b)に示すように、バルブシート3の第1接合面部3aと第2接合面部3bとの角部がシリンダヘッド本体2の接合面部2aを塑性流動させながらバルブシート3がシリンダヘッド本体2に埋め込まれていく。このことで、シリンダヘッド本体2の接合面部2aの酸化被膜が破壊され、溶融したろう材のZn成分がシリンダヘッド本体2側に液相拡散してAl−Znからなるアルミ側溶融反応層6を形成する(図5(b)参照)。この拡散により、ろう材はZn成分の割合が低下(Al成分の割合が増加)するので、500℃程度以上まで高融点化(図11参照)して凝固すると共に、溶融状態にある未反応のろう材は、図5(c)に示すように、バルブシート3の第1及び第2接合面部3a,3bとシリンダヘッド本体2の接合面部2aとの間から上記酸化被膜や汚れと共に加圧により排出される。このため、ろう材層7を介さずに鉄側溶融反応層5及びアルミ側溶融反応層6が直接的に接合され、その両溶融反応層5,6間で拡散がより一層促進される。しかも、両溶融反応層5,6を介することでFe−Alという脆い金属間化合物が生成するのを有効に防止することができる。また、鉄側溶融反応層5及びアルミ側溶融反応層6間の殆ど全ての部分に両溶融反応層5,6同士の合金部が形成される。
【0044】
したがって、バルブシート3とシリンダヘッド本体2とは、短時間で鉄側溶融反応層5及びアルミ側溶融反応層6を介して液相拡散接合され、ろう材を溶融するための入熱量は最小限で済む。また、超音波メッキによりバルブシート3に、鉄側溶融反応層5の厚さが1μm以下となるように鉄側溶融反応層5及びろう材層7を形成しているので、鉄側溶融反応層5においてFe成分の割合が多くなってろう材の組成が共晶組成ないしその近傍組成から大きく外れるのを防止することができると共に、このように共晶組成ないしその近傍組成から外れたろう材が多くなるのを防止することができる。このため、ろう材の組成を共晶組成ないしその近傍組成のまま維持しておくことができる。この結果、少ない入熱量で接合することができるため、バルブシート3の変形やシリンダヘッド本体2の軟化を抑制することができ、酸化被膜の破壊効果やろう材の排出効果を有効に高めることができる。よって、バルブシート3とシリンダヘッド本体2との結合強度を非常に高くすることができる。また、ろう材がシリンダヘッド本体2側に拡散することにより、そのろう材の融点は500℃程度以上まで高くなっているので、接合後は使用したろう材の融点以上の耐熱性を有することになる。
【0045】
さらに、バルブシート3の内部に、高電気伝導率のCu系材料が溶浸されているので、焼結材内部の空孔がCu系材料で満たされ、加圧力の一部が上記空孔を潰すのに使われるということはなく、加圧力の全てが直接的にシリンダヘッド本体2の接合面部2aを塑性流動させかつろう材を排出するのに使用されると共に、通電時にバルブシート3内部の発熱を抑制してろう材を有効に溶融させることができる。
【0046】
また、支持本体21の上下水平部21a,21bは片持ち状とされて、その上下水平部21a,21bの撓みにより加圧力は支持本体21開口側が低くなり、その分だけ各接合面部2a、3a,3bにおける支持本体21開口側に相当する部分の接触抵抗が高くなっているので、開口側の発熱量が過大となり、シリンダヘッド本体2が局部的に溶融してバルブシート3との隙間が生じることがある。これを防止するため、上述の如く、上側電極24の下面部において支持本体21開口側に切欠部28を形成してもよい。この場合、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2の支持本体21開口側に相当する部分では電流値が小さくなる。このため、シリンダヘッド本体2における支持本体21の開口側が局所的に溶融してバルブシート3との間に隙間が生じるということはない。また、加圧シリンダ22のシリンダロッド23と上側電極24との中心軸が一致しているので、それらが一致していない装置に比べて上側電極24全体における加圧力の差や上側電極24の水平方向位置の変化を小さくすることができ、切欠部28の切欠きの程度は少なくて済むと共に、シリンダヘッド本体2の接合面部2aに対するバルブシート3の芯ずれを防止することができる。尚、上記切欠部28を設ける代わりに上側電極24の下面部に絶縁部材を貼り付けることでも、シリンダヘッド本体2の局所的な溶融を防止することができる。
【0047】
続いて、通電の開始から1.5〜2.5秒経過後に溶接電源26をOFFして通電を停止すると、バルブシート3はシリンダヘッド本体2の接合面部2aに完全に埋め込まれた状態となる(図4(c)参照)。このとき、加圧は停止しないでそのまま継続させる。すなわち、アルミ側溶融反応層6が完全に凝固冷却するまで加圧力を保持して、バルブシート3とシリンダヘッド本体2との熱膨張率が異なることによる各接合面部2a、3a,3bでの剥離や割れを防止する。
【0048】
尚、図10に示すように、通電の停止と略同時に加圧力を低下させるのがより望ましい。すなわち、大きな加圧力では変形能が小さくなる凝固直後において加圧により各接合面部2a、3a,3bで割れが生じる可能性が高いので、収縮変形に追従させ得る程度の加圧力まで低下させて、加圧による凝固後の各接合面部2a、3a,3bでの割れを確実に防止する。
【0049】
その後、通電の停止から約1.5秒経過後に加圧を停止することによりバルブシート3とシリンダヘッド本体2との接合が完了する。続いて、同じシリンダヘッド本体2において同様の作業を繰り返して残り3つの接合面部2a,2a,…に各バルブシート3を接合する。
【0050】
最後に、各バルブシート3の内周面部や上面部等を切削加工することでバルブ当接面部3cを形成する等して所定の形状に仕上げる。このことにより、シリンダヘッド本体2の各ポート2b開口周縁部に各バルブシート3が接合されたシリンダヘッド1が完成する。
【0051】
したがって、上記基本形態1では、バルブシート3とシリンダヘッド本体2とを、通電に伴う発熱及び加圧により、鉄側溶融反応層5及びアルミ側溶融反応層6を介して液相拡散接合するようにしたので、接合強度が高くかつ使用したろう材以上の耐熱性を有するシリンダヘッド1を短時間で得ることができる。また、ろう材を溶融しかつ排出することが可能なように加圧力や電流値を設定するだけで済むので、高い接合強度が得られる条件範囲が広い。しかも、焼ばめによる接合方法よりもバルブシート3を格段に小形化することができるので、2つのポート2b,2bの間隔を狭くしたりスロート径を大きくしたりすることができる。さらに、断熱層が生じることはなくてバルブ近傍の熱伝導率を向上させることができ、しかも、ポート2b,2b間に設けた冷却水通路をバルブシート側により近づけることが可能であるので、バルブ近傍の温度を有効に低下させることができる。さらに、グロープラグやインジェクタをポート2b,2b間に配設したとしても、その間の肉厚を十分に確保することができる。よって、エンジンの性能、信頼性及び設計の自由度を向上させることができる。
【0052】
尚、上記基本形態1では、各バルブシート3を焼結により製造してその内部にCu系材料を溶浸するようにしたが、各バルブシート3内部の密度がある程度確保されていれば、必ずしも溶浸する必要はない。また、各バルブシート3を、焼結した後に鍛造を行って得られる焼結鍛造材とすることにより、溶浸するのと同様に、バルブシート3内部の空孔をなくすことができるので、ろう材を効果的に排出することができる。
【0053】
(基本形態2)
図12は基本形態2を示し、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2の接合時における通電の制御方法が上記基本形態1と異なる。
【0054】
すなわち、この基本形態では、一定の電流値で連続して電流を流すのではなく、大小の電流値の繰り返しからなるパルス通電としたものである。このパルス通電の大きい側の電流値は約70kAで一定であり、小さい側の電流値は0に設定している。また、大電流値パルスの通電時間は0.25〜1秒であり、小電流値パルスの通電時間(電流を流していない時間)は0.1〜0.5秒程度である。さらに、大電流値パルス数は3〜9パルス(図12では4パルス)が望ましい。尚、加圧開始から最初の大電流値パルスの通電開始までの時間及び最後の大電流値パルスの通電停止から加圧停止までの時間は上記基本形態1と同じ1.5秒である。
【0055】
このようなパルス通電を行ったときのバルブシート3の温度変化を図13に示す。つまり、Fe系材料からなるバルブシート3の熱容量はかなり小さいために、バルブシート3の抵抗発熱による温度上昇が激しく、特にその上下方向中央部では、上側電極24やシリンダヘッド本体2への放熱が容易な上下端部に比べて放熱し難く、最初の大電流値パルスの通電時には、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2間の接触抵抗が高いので、抵抗発熱量も大きくてバルブシート3の上下方向中央部の温度は、その最初の大電流値パルスの通電停止時にはA1変態点以上となっている。この段階で、バルブシート3はシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め込まれた状態となっているので、通電を完全に停止することも可能であるが、バルブシート3はA1変態点以上の温度から急激に冷却されるので、その上下方向中央部には焼きが入って硬さが上昇してしまうことになる。
【0056】
そこで、温度が少し低下した時点で2回目の大電流値パルスの通電を行う。このとき、最初の大電流値パルスの通電時とは異なり、冶金的接合により接触抵抗が小さくなって抵抗発熱量は減少し、放熱も行われるので、最初と同じ電流値であってもそれ程温度上昇はせず、このことを繰り返すことにより、徐冷されるため、バルブシート3の硬さは殆ど上昇しない。
【0057】
したがって、上記基本形態2では、パルス通電によりバルブシート3の上下方向中央部の温度を徐々に低下させるようにしたので、バルブシート3の硬さが大きく上昇することはなく、その内周面部を切削加工するときの加工性の悪化を防止することができる。また、バルブ当接面部3cが硬くなりすぎることによってバルブが摩耗し易くなるのを有効に抑制することができる。
【0058】
尚、上記基本形態2では、パルス通電の大電流値を一定とし、小電流値を0としたが、これに限らず、例えば、図14(a)に示すように、大電流値を段階的に低下させていってもよく、図14(b)に示すように、小電流値を0とせずに大電流値と0との中間値に設定してもよい。また、図14(c)に示すように、最初の大電流値パルスの通電に続いて小電流値パルス(図14(c)では0)を通電した後、電流値を時間に対して比例して減少させる連続通電に切り替えてもよく、最初の大電流値パルスの通電停止後は、バルブシート3を徐冷可能であれば、どのような通電制御を行ってもよい。
【0059】
また、バルブシート3の上側電極24への放熱を向上させるために、その上側電極24内に冷却水を通して水冷するようにすることが望ましい。さらに、図15に示すように、上側電極24の下部に、バルブシート3の内周面部に対向する円筒状の突起部31を設け、この突起部31の外周部に円周方向に略等間隔に設けた複数のノズル32,32,…から上側電極24内の冷却水をバルブシート3の内周面部に噴霧するようにしてもよい。このことで、バルブシート3の上下方向中央部を有効に冷却し、バルブシート3がA1変態点以上に過熱されるのを防止することができる。
【0060】
(基本形態3)
図16は基本形態3を示し、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2の接合時における通電の制御方法を上記基本形態1,2と異ならせたものである。
【0061】
すなわち、この基本形態では、接合装置20が、バルブシート3の高さ方向の位置を検出するシート位置検出手段としてのリミットスイッチ(図示せず)を有し、バルブシート3がシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め込まれた状態となる接合位置で上記リミットスイッチが作動するように構成されている。そして、通電を開始した後、このリミットスイッチが作動すると、通電開始時の初期電流値(約70kA)よりも小さい一定の電流値に切り替えて通電するようになっている。そして、切り替え後の通電の停止は時間で行われ、初期電流値の通電開始から1.5〜5秒で停止するようになっている。
【0062】
このようにバルブシート3がシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め込まれた状態で小さい電流値に切り替えるという通電制御を行った場合の挙動について説明する。
【0063】
先ず、通電開始時には、上記基本形態2で説明したように、バルブシート3はAl系材料からなるシリンダヘッド本体2よりも格段に温度が上昇するので、熱膨張率(線膨張係数)がシリンダヘッド本体2よりも小さいにも拘らず、熱膨張量は大きい。このため、バルブシート3がシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め込まれた状態で通電を完全に停止すると、バルブシート3の収縮量がシリンダヘッド本体2よりも大きいので、バルブシート3に引張の熱応力が生じる。
【0064】
そこで、初期電流値よりも小さい電流値に切り替えて通電を行うと、上記基本形態2と同様に、バルブシート3の温度は徐々に低下していく。一方、シリンダヘッド本体2の温度はバルブシート3からの熱により上昇するので、バルブシート3とシリンダヘッド本体2との温度差は小さくなる。この状態で、通電を停止すれば、収縮量の差は小さくなり、バルブシート3に生じる熱応力を低減することができる。
【0065】
したがって、上記基本形態3では、バルブシート3がシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め込まれた状態で初期電流値よりも小さい電流値に切り替えるようにしたので、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2の熱容量及び熱膨張率の差に起因して生じる熱膨張量(収縮量)の差を小さくすることができる。よって、バルブシート3に生じる引張の熱応力を低減し、その内周面部に縦クラックが発生するのを防止することができる。
【0066】
尚、上記基本形態3では、リミットスイッチの作動による切替後の電流値を一定としたが、これに限らず、例えば、図17(a)に示すように、切替後の電流値を時間に対して比例するように低下させていってもよく、図17(b)に示すように、上記基本形態2と同様に、リミットスイッチの作動後は大電流値が初期電流値よりも小さいパルス通電としてもよい。さらに、上記基本形態2と同じ通電制御方法であっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
また、上記基本形態3では、リミットスイッチによりバルブシート3の高さ方向の位置を検出して電流値を切り替えるようにしたが、光センサ等の位置検出手段を用いてもよく、位置を検出する代わりに時間で電流値を切り替えるタイミングを制御してもよい。この場合、通電開始から0.25〜1秒(より望ましくは0.25〜0.5秒)で電流値を切り替えるのが望ましく、この時間であればバルブシート3がシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め込まれた状態で切り替わることになる。
【0068】
さらに、バルブシート3をシリンダヘッド本体2に接合する前に、シリンダヘッド本体2を200℃程度まで予熱しておくことが望ましい。このようにすれば、それらの温度差はより一層小さくなって、熱応力を低く抑えることができる。この結果、バルブシート3の縦クラックの発生を確実に防止することができ、リミットスイッチの作動後における電流値の切替を不要にすることもできる。このようにシリンダヘッド本体2を予熱するには、上記接合装置20を用いればよい。すなわち、接合装置20の上側及び下側電極24,25をカーボン製のものと交換し、その両電極24,25でシリンダヘッド本体2を挟んだ状態にして溶接電源をONすることにより予熱を行う。このとき、両電極24,25がカーボン製であるので、自己発熱が大きく、シリンダヘッド本体2を効率良く予熱することができる。このようにすれば、インライン化対応も可能となる。
【0069】
また、図18に示すように、バルブシート3の上部には内周面側に向かって高さが高くなる上面テーパ部3dを設ける一方、上側電極24の下部には上記バルブシート3の上面テーパ部3dが略嵌合する円錐状の凹部34を形成しておき、バルブシート3の上面テーパ部3dを上側電極24の凹部34に略嵌合した状態で加圧するようにしてもよい。すなわち、このように加圧すれば、バルブシート3の縮径方向にも加圧力が作用するので、バルブシート3の温度が上昇してもその膨張を防止することができ、シリンダヘッド本体2との温度差が大きくても収縮量の差は小さくなる。よって、この場合でも、バルブシート3に縦クラックが発生するのを防止することができる。
【0070】
さらに、図19に示すように、バルブシート3の内周面側の応力集中を緩和すべく、内周面部と上面部及び下面部との角部に面取り部3e,3eを形成することが望ましい。
【0071】
また、バルブシート3の内周面側は最終的には削り取る部分であるので、その削り取る部分のみを安価な材料として焼結するようにすることもできる。
【0072】
(基本形態4)
図20は、基本形態4に係る接合装置20の要部を示し(尚、図7と同じ部分についてはその詳細な説明は省略し、異なる箇所のみを説明する)、通電経路を上記基本形態1〜3とは異ならせたものである。
【0073】
すなわち、この基本形態では、接合装置20は、上記基本形態1〜3と同様に下側電極25を有するが、この下側電極25は溶接電源26には接続されておらず、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2を加圧するためにのみ用いられている。そして、上側電極24は2つの第1及び第2電極24a,24bからなり、この第1電極24aは上記基本形態1〜3と同じものである。一方、上記第2電極24bは、第1電極24aを上下移動させる加圧シリンダ22と同様の別の加圧シリンダにより独立して上下移動可能とされている。また、上記第2電極24bは、第1電極24aとは異なり、カーボン製であり、この両電極24a,24bがそれぞれ溶接電源26に接続されている。
【0074】
上記第1及び第2電極24a,24bは、同じシリンダヘッド本体2において新たに接合する未接合バルブシート3及び前回接合した既接合バルブシート3の上面にそれぞれ当接するようになっている。そして、溶接電源26をONすると、電流は、順に第1電極24a、未接合バルブシート3、シリンダヘッド本体2、既接合バルブシート3及び第2電極24bを流れ、溶接電源26に戻るようになっている。このことで、既接合バルブシート3は、未接合バルブシート3の接合時の戻り側の通電経路とされている。
【0075】
したがって、上記基本形態4では、未接合バルブシート3を接合するときに、既接合バルブシート3側では抵抗発熱量が小さく既接合バルブシート3の内部温度が未接合バルブシート3のように上昇することはないが、カーボン製の第2電極24bが自己発熱するので、上記基本形態2で説明したように、既接合バルブシート3に焼きが入って硬さが上昇していたとしても、適度に焼戻しを行うことが可能となる。しかも、インラインで工程を増やすことなく既接合バルブシート3の焼戻しを行うことができる。よって、接合時におけるバルブシート3の硬さの上昇という熱影響を効果的に抑えることができる。
【0076】
尚、上記基本形態4では、第2電極24bをカーボン製としたが、これは最も自己発熱量が大きい材料であるので、既接合バルブシート3の温度が高くなりすぎる場合には、第2電極24bを、例えば鉄製又は黄銅製として焼戻しを有効に行えるものを選択すればよい。
【0077】
また、上記基本形態1〜4では、シリンダヘッド本体2の接合面部2aを、接合前に45°(約0.79rad)のテーパ形状としたが、このテーパをなくすようにしてもよい。この場合、図21(a)に示すように、予めバルブシート3を上側電極24に保持させておく。すなわち、上側電極24の下部に、下方に向かって外径が僅かに小さくなる突出部33を形成しておき、この突出部33の外周面にバルブシート3の内周面を若干の締り嵌め状態で嵌合させておく。次いで、上記基本形態1〜4と同様に、上側電極24を下側に移動させてバルブシート3及びシリンダヘッド本体2間の通電及び加圧により両者を接合する(図21(b)参照)。このとき、バルブシート3の第1接合面部3aと第2接合面部3bとによりシリンダヘッド本体2を塑性流動させながらバルブシート3がシリンダヘッド本体2に埋め込まれていく。こうして接合が完了すると、図21(c)に示すように、バルブシート3がシリンダヘッド本体2に完全に埋め込まれた状態となり、シリンダヘッド本体2には接合面部2aが形成されることになる。そして、上側電極24を上昇させると、その突出部33はバルブシート3の内周面から容易に外れる。このようにシリンダヘッド本体2に予めテーパ状の接合面部2aを形成しなくても、シリンダヘッド本体2とバルブシート3との接合状態は、上記基本形態1〜4と殆ど同じとなる。また、バルブシート3を予め上側電極24の突出部33に保持しておくことで、バルブシート3のシリンダヘッド本体2に対する位置決めを正確に行うことができ、しかも、シリンダヘッド本体2に対する機械加工を省略することができるので、シリンダヘッド本体2のテーパ状の接合面部2a上にバルブシート3を供給しかつ位置決めして接合する場合よりも生産性を向上させることができる。
【0078】
さらに、上記基本形態1〜4では、ろう材をZnが95重量%のZn−Al共晶合金(共晶組成)としたが、共晶組成ないしその近傍組成(例えばZnが92〜98重量%)からなるZn−Al系合金であってもよく、この場合、Znの割合が92〜98重量%であればろう材の融点を400℃以下にすることができ、バルブシート3の変形又はシリンダヘッド本体2の溶融若しくは軟化を確実に防止することができ、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2の接合強度を有効に向上させることができる。
【0079】
(基本形態5)
図22は、基本形態5に係る接合金属部材としてのディーゼルエンジンのピストン41を示し、このピストン41は、上記基本形態1と同様に、Al系材料からなるピストン本体42(第2の金属部材)の上部外周部にFe系材料からなる耐摩環43(第1の金属部材)が、またピストン本体42の上部中央部に設けた燃焼室42a内のリップ部にFe系(例えばオーステナイト系ステンレス鋼等)の強化部材44(第1の金属部材)がそれぞれ接合されてなる。
【0080】
すなわち、従来は、耐摩環43を鋳ぐるんでピストン本体42を鋳造しているが、ピストン本体42をT6熱処理してその強度を向上させようとしても、耐摩環43を鋳ぐるんだ状態ではFe−Alという脆い金属間化合物が生じるので、T6熱処理を行うことは不可能である。しかし、この基本形態では、予めピストン本体42をT6熱処理しておき、そのピストン本体42に耐摩環43を接合することができる。また、たとえピストン本体42に耐摩環43を接合した後にT6熱処理したとしてもその耐熱性は良好であり、Fe−Alは生じ難いので、問題はない。このため、ピストン41の耐摩耗性及び強度の両方を向上させることができる。
【0081】
一方、ピストン本体42の燃焼室42a内の壁部には、特に角隅部にクラックが生じ易いという問題がある。しかし、この基本形態では、燃焼室42a内のリップ部に強化部材44が接合されているので、燃焼室42a内の壁部にクラックが発生するのを防止することができる。
【0082】
(基本形態6)
図23は、基本形態6に係る接合金属部材としてのエンジンのシリンダブロック51の要部を示し、このシリンダブロック51は、上記基本形態1と同様に、Al系材料からなるシリンダブロック本体52(第2の金属部材)のウォータージャケット52aの上部にFe系材料からなるリブ部材53(第1の金属部材)が接合されてなる。尚、54は気筒内周面部に嵌め込まれた鋳鉄製のライナである。
【0083】
すなわち、従来は、シリンダブロック51の剛性を向上させるために、そのシリンダブロック本体52の鋳造時に砂中子を使用してウォータージャケット部の上部にリブを一体で形成しているが、この方法では、鋳造時のサイクルタイムが長くなり、生産性が悪いという問題がある。しかし、この基本形態では、シリンダブロック本体52の鋳造を容易にしつつ、リブ部材53を短時間でシリンダブロック本体52のウォータージャケット52aの上部に接合することができ、シリンダブロックの剛性を向上させることができる。このため、気筒内周面部のライナ54の変形を防止することができ、LOCやNVH等のエンジン性能を向上させることができる。また、ライナレスシリンダブロックへの適用も可能となる。
【0084】
(実施形態)
ここで、本発明の実施形態について図24により説明する。尚、この実施形態では、上記基本形態1〜4のようにシリンダヘッド本体2とバルブシート3とを接合する場合について説明するが、上記基本形態5,6のようにピストン本体42と耐摩環43とを接合する場合やシリンダブロック本体52とリブ部材53とを接合する場合にも同様に本発明を適用することができる。
【0085】
この実施形態では、第1に、バルブシート3の形状が上記基本形態と異なる。すなわち、バルブシート3の第1接合面部3aと第2接合面部3bとの間に第3接合面部3fが形成され、このことで、バルブシート3の接合面部は、バルブシート3の押圧方向に対して傾斜しかつ2つ以上の角部を有するように該傾斜方向に連続的に繋げられた3つの傾斜面(第1〜第3接合面部3a,3b,3f)で構成されていることになる。そして、バルブシート3の押圧方向(上下方向)に対する傾斜角が最も小さい(最も上側に位置する)第1接合面部3aの傾斜角(図3のθ1に相当)は上記基本形態1と同じ30°(約0.52rad)に設定され、バルブシート3の押圧方向に対する傾斜角が最も大きい(最も下側に位置する)第2接合面部3bの傾斜角(90°−θ2(図3参照)に相当)は上記基本形態1と同じ70°(約1.22rad)に設定され、第3接合面部3fの傾斜角は45°に設定されている。尚、第1接合面部3aの傾斜角(θ1)は30〜40°(約0.52〜0.70rad)に、また第2接合面部3bの傾斜角(90°−θ2)は60〜70°(約1.05〜1.22rad)にそれぞれ設定してもよい。つまり、第1接合面部3aの傾斜角は、30°(約0.52rad)よりも小さいと、酸化皮膜の破壊効果が低下する一方、40°(約0.70rad)よりも大きいと、シリンダヘッド本体2の接合面部2aを塑性流動させてバルブシート3をシリンダヘッド本体2に埋め込むのが困難になると共に、バルブシート3の外径が大きくなりすぎて2つのポート2b,2bの間隔を狭くすることができなくなるので、30〜40°(約0.52〜0.70rad)に設定している。また、第2接合面部3bの傾斜角は、60°(約1.05rad)よりも小さいと、第1接合面部3aの傾斜角を上記範囲に設定することが困難になる反面、70°(約1.22rad)よりも大きいと、バルブシート3をリンダヘッド本体2に埋め込み難くなるので、60〜70°(約1.05〜1.22rad)に設定している。尚、上記バルブシートの第1〜第3接合面部3a,3b,3fは、バルブシート3の表面部にろう材をコーティングする前に形成しておく(焼結後に切削してもよく、焼結時に形成してもよい)。
【0086】
第2に上記基本形態と異なる点は、バルブシート3の材料である。すなわち、このバルブシート3は、高電気伝導率元素としてのCuが全体に略均一に分散されたFe系粉末原料を焼結してなる焼結材であって、上記基本形態のようにその内部の空孔にCu系材料を溶浸しないで接合するものである。
【0087】
第3に上記基本形態と異なる点は、シリンダヘッド本体2におけるバルブシート3接合前の接合面部2aのテーパ角であり、45°(約0.79rad)ではなく、バルブシート3の第2接合面部3bのテーパ角θ1と同じ20°(約0.35rad)に設定されている。すなわち、上記基本形態1〜4では予めバルブシート3とシリンダヘッド本体2とを線接触させた状態で通電及び加圧を行って接合の途中から面接触となっていくのに対し、予めバルブシート3の第2接合面部3bとシリンダヘッド本体2の接合面部2aとを面接触させた状態で通電及び加圧を行うようにしている。尚、ここでいう面接触とは、接触面積が40〜200mm2 (望ましくは40〜100mm2 )であることをいう。
【0088】
第4に、上側電極24の構成が異なり、この上側電極24は、電極本体35とこの電極本体35の先端部に螺合により取り付けられた略円筒状の電極チップ36とからなっている。この電極チップ36の内部には、上側電極24内部を冷却する冷却水(冷却媒体)を流す冷却通路37が上下方向に延びるように形成されている。この冷却通路37の上端部は、電極本体35に上下方向に延びるように設けた図外の冷却通路の下端部に接続され、この電極本体35の冷却通路の上端部には、上記冷却水の流入口が設けられている。一方、電極チップ36の冷却通路37の下端部には、電極チップ36の側周面に開口する冷却水の流出口37aが設けられている。すなわち、上側電極24のバルブシート3との当接部と反対側に冷却水の流入口が、またバルブシート3との当接部側に冷却水の流出口37aがそれぞれ設けられ、その流入口から流出口37aに冷却水を一方向に流して上側電極24(特に高温となる電極チップ36)を冷却しながら通電を行うようになっている。尚、上記流出口37aには、冷却水を排出するための排出管38が螺合により接続されている。
【0089】
したがって、上記実施形態では、バルブシート3の接合面部が、バルブシート3の押圧方向に対して傾斜しかつ2つの角部を有するように該傾斜方向に連続的に繋げられた3つの傾斜面(第1〜第3接合面部3a,3b,3f)で構成されているので、バルブシート3を押圧してシリンダヘッド本体2を塑性流動させるときに、そのシリンダヘッド本体2の材料が各接合面部3a,3b,3fから剥離せずに各接合面部3a,3b,3fに沿って流動する。このため、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2間のどの部分においても酸化被膜の破壊やろう材の排出が確実になされ、接合強度を向上させることができる。
【0090】
また、バルブシート3の材料を、高電気伝導率元素としてのCuが分散されたFe系粉末原料を焼結してなる焼結材とし、その内部の空孔にCu系材料を溶浸しないで接合するようにしたので、空孔が存在していても予め分散されたCuによりバルブシート3の抵抗値を、Cu系材料を溶浸したものと殆ど同程度に低く抑えることができる。このため、上記基本形態と同様に、通電時の内部発熱を抑制して接合を良好に行わせることができる。一方、空孔の断熱作用により熱伝導率は溶浸したものよりも小さくなっているので、エンジンの作動中にバルブシート3の熱引けが適度に抑えられて酸化被膜が形成され、バルブシート3の耐摩耗性を向上させることができる。
【0091】
そして、上記バルブシート3は、上述の如く熱伝導率が低いので、上記基本形態のように予め線接触させた状態で通電及び加圧を行うと、通電初期における各接合面部2a,3a,3b,3fでの発熱量がかなり大きくなり、バルブシート3が過熱され易くなる。しかも、空孔の存在により強度も比較的小さいので、バルブシート3の第1〜第3接合面部3a,3b,3fが変形し易くなる。このため、シリンダヘッド本体2の接合面部2aにおける塑性流動が十分になされず、酸化皮膜の破壊効果が十分に得られなくなる可能性がある。しかし、この実施形態では、予めバルブシート3の第2接合面部3bとシリンダヘッド本体2の接合面部2aとを面接触させた状態で通電及び加圧を行うようにしたので、各接合面部2a,3a,3b,3fでの発熱量を適切な値にして過熱を防止することができる。よって、バルブシート3が通電の停止に伴って急冷されても硬化し過ぎるのを抑制することができると共に、バルブシート3の第1〜第3接合面部3a,3b,3fの変形を防止することができ、接合をより一層良好に行わせることができる。
【0092】
さらに、上側電極24のバルブシート3との当接部と反対側に冷却水の流入口を、またバルブシート3との当接部側にその冷却水の流出口37aをそれぞれ設け、その流入口から流出口37aに冷却水を一方向に流して上側電極24を冷却するようにしたので、従来のように冷却水を上下方向に往復させて流すスペースは必要なく、上側電極24の電極チップ36の径が小さくても、十分な量の冷却水を滞留させることなくスムーズに流すことができる。よって、簡単な方法で確実に上側電極24を冷却することができ、上側電極24の軟化を抑制して寿命を向上させることができる。また、バルブシート3の過熱を抑えてその第1〜第3接合面部3a,3b,3fの変形を防止することができ、接合強度を向上させることができる。
【0093】
尚、上記実施形態では、バルブシート3の接合面部を3つの傾斜面(第1〜第3接合面部3a,3b,3f)で構成したが、3つ以上の角部を有するように4つ以上の傾斜面で構成するようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、焼結前の粉末原料にCuを分散させるようにしたが、高電気伝導率元素はCuに限らず、Cuよりも電気伝導率が高いAgや電気抵抗率が3×10-8Ω・m以下の元素を粉末原料に分散して焼結するようにしてもよい。この場合、その元素の熱伝導率は2J/cm・s・K以上であることが望ましい。
【0095】
さらに、上記実施形態では、予めバルブシート3の第2接合面部3bとシリンダヘッド本体2の接合面部2aとを面接触させた状態で通電及び加圧を行うようにしたが、バルブシート3の第1接合面部3a又は第3接合面部3fとシリンダヘッド本体2の接合面部2aとを面接触させるようにしてもよい。また、上記基本形態のように線接触させるようにしてもよく、上記基本形態4の終わりの部分で尚書きとして記載したように、シリンダヘッド本体2の接合面部2aにおいて接合前におけるテーパをなくすようにしてもよい(この場合は線接触となる)。
【0096】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。但し、最初に上記基本形態に対応する基本例から説明し、その後に上記実施形態に対応する実施例について説明する。
【0097】
先ず、第2の金属部材として、図25に示すように、Al合金鋳物(JIS規格H5202に規定されているAC4D)で試験片61を鋳造した。そして、この試験片61に対してT6熱処理を施した。
【0098】
続いて、表1に示すように、ろう材コーティング方法、シート形状及び第1接合面部のテーパ角θ1を異ならせて5種類のFe系バルブシートを作製した(基本例1〜5)。
【0099】
【表1】
【0100】
この表1において、ろう材コーティング方法の欄における「Friction」とは、バルブシートの表面部に拡散接合層及びろう材層を形成する際、ろう材を擦りつけることによりコーティングを行う方法のことである。一方、「超音波」とは、上記基本形態1で説明したように、超音波メッキによりろう材のコーティングを行う方法のことである。また、シート形状の欄における「薄肉」とは、図26に示すように、バルブシートが最終形状に近い形状をして肉厚が薄いことをいう。一方、「厚肉」とは、図27に示すように、上記基本形態と同様の形状をして肉厚が厚いことをいう。
【0101】
尚、バルブシートは、表2に示す各元素(Cuを除く)が分散された粉末原料を焼結してなる焼結材を使用した。この表2において、数値は重量%であり、TCとは、総炭素量(遊離炭素(黒鉛)とセメンタイトの炭素との合計量)のことである。そして、この各バルブシートのCu割合は、後述の如くCu系材料を溶浸した後の値であって、溶浸前はCuは全く含有されていない。
【0102】
【表2】
【0103】
また、ろう材には、95重量%のZn成分、4.95重量%のAl成分及び0.05重量%のMg成分(Zn−Al共晶合金)からなるものを使用した。
【0104】
さらに、各バルブシートの内部にはCu系材料を溶浸し、表面にはCuメッキを施した。
【0105】
上記基本例1〜5の各バルブシートを、上記基本形態1と同様にして、接合装置により上記試験片61に接合した。この接合時における加圧力及び電流値は、表1に示す値に設定した。尚、電流値については、加圧力の変化等によりバルブシート及び試験片61間の接触抵抗が変化してバルブシートの埋め込み深さが変わるので、略同一埋め込み深さとなるように設定している。
【0106】
また、比較のために、厚肉形状でかつθ1=30°(0.52rad)のバルブシート(表面にCuメッキしたもの)を、加圧力及び電流値をそれぞれ29420N(3000kgf)及び70kAとして固相拡散接合(圧接接合)した(従来例)。
【0107】
次に、上記基本例1〜5及び従来例のバルブシートの接合強度を測定した。すなわち、図28に示すように、試験片61を、バルブシート62の接合した側が下側となるように治具台63の上面に置き、このとき、バルブシート62がその治具台63に接触しないように、治具台63の略中央部に設けた貫通孔63aの上側に位置させる。そして、試験片61の貫通孔61aの上側から円筒状の加圧治具64を挿入してバルブシート62を押し、バルブシート62が試験片61から抜けたときの抜き荷重を測定する。この抜き荷重が接合強度に相当する。
【0108】
上記抜き荷重測定試験の結果を図29に示す。この結果、基本例1と基本例2とを比較することで、超音波メッキによりバルブシートの表面部に拡散接合層及びろう材層を形成する方が、ろう材を擦りつけることによりコーティングを行う方法よりも接合強度が向上することが判る。これは、試験後のバルブシートの表面には、基本例2においては後述の如く拡散接合層が残っていたのに対し、基本例1においてはろう材層や拡散接合層の痕跡が殆ど認められなかったことから、基本例1では拡散接合層が完全に形成されていないためと推定することができる。
【0109】
また、基本例2と基本例3とを比較することにより、厚肉形状のバルブシートの方が薄肉形状よりも抜き荷重が大きくなることが判る。これは、基本例2のものは、バルブシートの各角部等に変形が生じていることから、変形によって接合面部に作用する実際の加圧力が低下したためと推定することができる。
【0110】
そして、基本例3と基本例4とを比較することにより、第1接合面部のテーパ角θ1が大きい基本例4の方が、上記基本形態1で説明したように、酸化皮膜破壊作用効果が優れていて、接合強度は大きくなることが判る。
【0111】
さらに、基本例4と基本例5とを比較すると、加圧力が大きい基本例5の方が接合強度は高くなることが判る。しかも、加圧力を29420N(3000kgf)とすることで、従来例のものよりも接合強度が格段に向上することが判る。
【0112】
上記加圧力の影響に関してさらに詳細に調べるために、ろう材コーティング方法、シート形状及び第1接合面部のテーパ角θ1を上記基本例4,5と同じにして加圧力を9807N(1000kgf)、14710N(1500kgf)及び29420N(3000kgf)にそれぞれ設定してバルブシートを試験片61に接合し、上記最初に行った抜き荷重測定試験と同様に、その抜き荷重を測定した。
【0113】
また、加圧力が9807N(1000kgf)のものと29420N(3000kgf)のものとで接合後の試験片61の硬さを測定した。この硬さの測定は、バルブシートの第1接合面部と第2接合面部との角部(図31において接合面部からの距離=0の点)から試験片61の外周側に向かってバルブシートが接合された側と反対側に45°(約0.79rad)傾いた方向に沿って所定の距離ごとに行った。
【0114】
上記抜き荷重測定試験の結果を図30に、また硬さ測定試験の結果を図31にそれぞれ示す。このことで、加圧力が大きいほど接合強度は高く、高加圧力の方が試験片61の接合面部近傍の硬さが高いことが判る。これは、高加圧力の方が接触抵抗が低くて発熱量が小さい分、試験片61の軟化が抑制されているからであり、軟化が抑えられると、塑性流動が確実に行われて酸化皮膜の破壊作用効果が高まると共に、ろう材の排出も確実に行われるためである。
【0115】
次いで、パルス通電の効果を調べるために、パルス通電を行うことによりバルブシートを試験片61に接合した。このパルス通電の大電流値及び小電流値はそれぞれ70kA及び0とした。また、大電流値パルスの通電時間は0.5秒とし、小電流値パルスの通電時間は0.1秒とした。さらに、大電流値パルス数は6パルスとした。一方、比較のために、連続通電(60kAの電流値で2秒間通電)によりバルブシートを試験片61に接合した。尚、加圧力はどちらも29420N(3000kgf)とした。
【0116】
そして、パルス通電及び連続通電により接合したものについて、各々、バルブシートの上下両端部(A部)及び上下方向中央部(B部)における接合前及び接合後の硬さ、試験片61においてバルブシートの第1接合面部と第2接合面部との角部から該試験片61の外周側に向かってバルブシートが接合された側と反対側に45°(約0.79rad)傾いた方向に沿った所定距離ごとの硬さ並びに抜き荷重を測定した。
【0117】
上記接合前及び接合後の硬さ測定試験の結果を図32に示す。このことで、連続通電により接合したものは、特に上下方向中央部(B部)の硬さが接合後に非常に高くなるのに対し、パルス通電により接合したものは、徐冷により焼きが入らず、硬さが殆ど上昇していないことが判る。
【0118】
また、接合面部からの距離による硬さ測定試験の結果を図33に示す。この結果、パルス通電により接合したものでは、バルブシートからの熱を受けることにより試験片61の硬さが低くなっていることが判る。
【0119】
さらに、抜き荷重測定結果を図34に示す。以上のことから、パルス通電により、バルブシート内部の徐冷を行って硬さが上昇するのを抑えつつ、試験片61への放熱によりバルブシート及び試験片61の温度差を低減して収縮量の差を小さくすることができ、しかも、接合強度を向上させることができる。
【0120】
続いて、パルス通電においてバルブシートが試験片61にどのように埋め込まれていくかを調べるために、加圧開始からの時間に応じてその埋め込み量y(図35参照)を測定した。このとき、パルス通電の大電流値は68kAとし、小電流値は0とした。また、大電流値パルスの通電時間(H)、小電流値パルスの通電時間(C)及び大電流値パルス数(N)は可変とし、基本条件では、それぞれ0.5秒、0.1秒及び6パルスとした。そして、この基本条件に対していずれか1つのみを変えて試験を行った(変更条件については図36参照)。
【0121】
上記埋め込み量測定試験の結果を図36に示す。このことより、最初の大電流値パルスの通電により殆ど埋め込みが完了し、後の通電では埋め込みは進行していないことが判る。また、この試験の設定条件の範囲では、埋め込み量は殆ど変わらない。但し、大電流値パルスの通電時間が1秒と長い場合は、他の場合よりも最初の大電流値パルスの通電のときから埋め込み量が僅かに大きく、パルス数が9パルスと多い場合は、途中から試験片61が軟化して埋め込みが進行することが判る。したがって、最初の大電流値パルスの通電ではバルブシートの埋め込みが行える条件に、また2回目以降の大電流値パルスの通電ではバルブシート内部の徐冷及びシリンダヘッド本体への放熱が行える条件にそれぞれ設定すればよい。
【0122】
次いで、バルブシートを焼結鍛造材とし、これを29420N(3000kgf)の加圧力でパルス通電により試験片61に接合した。このとき、パルス通電の大電流値は60kAとし、小電流値は0とした。また、大電流値パルスの通電時間、小電流値パルスの通電時間及び大電流値パルス数を、それぞれ0.5秒、0.1秒及び4パルスとした。尚、比較のために、Cu系材料で溶浸した焼結材からなるバルブシートを同様に試験片61に接合した。但し、パルス通電の大電流値は53kAとした。そして、バルブシートが焼結鍛造材のものと溶浸した焼結材のものとについて、試験片61においてバルブシートの第1接合面部と第2接合面部との角部から該試験片61の外周側に向かってバルブシートが接合された側と反対側に45°(約0.79rad)傾いた方向に沿った所定距離ごとの硬さを測定した。
【0123】
この結果を図37に示す。このことより、溶浸した焼結材の方が試験片61内部の硬さが低いことが判る。これは、Cu系材料の溶浸によりバルブシート内部の発熱が抑制されて接合面部において発熱が有効に行われたために、試験片61が軟化したからである。しかし、バルブシートが焼結鍛造材であっても接合は良好に行われている。これは、鍛造によりバルブシート内部の空孔が潰されて、溶浸したのと同様の効果を有するからである。
【0124】
次に、上記実施形態に対応する実施例について説明すると、表3に示すように、シート材料、シート形状、上側電極及び試験片を異ならせて7種類の接合金属部材を作製した(実施例1〜3及び比較例1〜4)。この表3において、シート材料A,B,C,Dは、表4に示すような成分のものをそれぞれ使用した。このシート材料Aは、Cuが全体に略均一に分散されたFe系粉末原料を焼結したものであり、シート材料B,C,Dは、上記基本例と同様に、焼結材にCu系材料を溶浸したものである(表4のCuの割合は溶浸後の値)。
【0125】
【表3】
【0126】
上記シート形状は、実施例1〜3では、図38のようにした。つまり、第1接合面部と第2接合面部との間に第3接合面部を有する形状とし、上記実施形態と同様に、バルブシートの接合面部を2つの角部を有するように3つの傾斜面で構成している。一方、比較例1〜4では、図39のように、第1接合面部及び第2接合面部のみを有する形状としている(上記基本形態1〜4と同じように1つの角部のみを有している)。尚、これらのバルブシートの外周部には、上記基本形態1〜4及び実施形態と異なって、本来設けるべきではない鉛直方向に沿った鉛直面を設けているが、この鉛直面までバルブシートを後述の試験片71に埋め込んではいないので、この鉛直面の影響は無視することができる。
【0127】
また、表3における上側電極の欄において「従来電極」とは、図41(a)に示すように、上側電極75の電極本体76上部に冷却水の流入口78と流出口79とを設けていて、電極本体76の下端部に取り付けた電極チップ77内に設けた冷却通路が袋小路状となっているものをいい、「改善電極」とは、図41(b)に示すように、電極本体76上部に冷却水の流入口78を設けると共に、電極チップ77の側周面に冷却水の流出口79を設けたもの(上記実施形態と同様)をいう。
【0128】
そして、表3において試験片面取りの欄が有りの場合には、バルブシートを図40に示す試験片71に接合したことを示している。この試験片71は、上記試験片61と同じ材料からなっていて、貫通孔71aの上部に面取り部71bを有している。この面取り部71bの鉛直方向に対する傾斜角は70°(約1.22rad)であり、このことで、バルブシートの第2接合面部を試験片71に予め面接触させた状態で通電及び加圧を行うようにしている。一方、試験片面取りの欄が無しの場合には、試験片71の上部に面取り部71bがない状態でバルブシートを接合したことを示している。
【0129】
上記各バルブシートは、29420N(3000kgf)の加圧力でパルス通電により接合した。このとき、パルス通電の大電流値は55kA(但し、試験片面取り無しのときは60kA)とし、小電流値は0とした。また、大電流値パルスの通電時間、小電流値パルスの通電時間及び大電流値パルス数を、それぞれ0.5秒、0.1秒及び3パルスとした。
【0130】
ここで、上記シート材料A,B,C,Dについての熱伝導率及び密度を測定した。この結果を表4に示す。このことより、シート材料Aのものはシート材料B,C,Dに比べて密度が小さいことが判る。つまり、空孔を有している。一方、熱伝導率は、空孔の断熱作用によりシート材料B,C,Dの溶浸材に比べると小さくなっていることが判る。
【0131】
【表4】
【0132】
続いて、上記実施例1〜3及び比較例1〜4のバルブシートの抜き荷重を測定した。この抜き荷重測定試験の結果を図42に示す。この結果、実施例1と比較例1とを比較することにより、バルブシートの接合面部を3つの傾斜面で構成した方が接合強度が向上していることが判る。これは、比較例1では、図44に示すように、試験片71の材料の流動が上側ほど第1接合面部から大きく剥離しているのに対し、実施例1では、図43に示すように、試験片71の材料の流れが各接合面部から剥離していないことから、酸化皮膜破壊とろう材の排出が十分になされたためと推定することができる。尚、図43及び図44の各顕微鏡写真の倍率は共に約20倍である。
【0133】
また、実施例1と実施例2とを比較することにより、改善電極にすることで接合強度が向上することが判る。これは、改善電極により上側電極24が確実に冷却され、このため、バルブシート3の過熱が抑えられてその接合面部が変形せず、酸化皮膜破壊とろう材の排出がより一層良好に行われたからである。
【0134】
さらに、実施例3のように試験片71の面取り部71bをなくすと、接合強度は比較例2〜4の溶浸材と同等以上になることが判る。この場合、面接触ではなく線接触となるためバルブシートの接合面部が少し変形するものの、加圧後直ぐに面接触となると共に、塑性流動が大きくなされるので、酸化皮膜破壊及びろう材排出が略完全になされると推定することができる。尚、この実施例3の抜き荷重測定試験後における顕微鏡写真(倍率約10倍)を図45に示す。このことより、試験片71が破壊されており、接合部での強度が高いことが判る。
【0135】
次に、図46に示すように、第1及び第2接合面部間に円弧状の凸面を形成したバルブシートを作製し、このバルブシートを試験片71に面取りが無い状態で接合した。このときのバルブシートの材料は上記シート材料Aとし、上側電極は従来電極とした。この接合後の顕微鏡写真(倍率約10倍)を図47に示す。このことより、凸面が完全に変形していることが判る。また、試験片71の接合部が白くなっているのは、熱影響を受けてシリコンが消失したためと考えられる。したがって、円弧状の凸面を設けても、酸化皮膜の破壊効果は不十分であって、接合強度の向上は困難であることが判る。
【0136】
最後に、上記基本例の厚肉形状と同じバルブシート(銅溶浸したもの)に鉄側溶融反応層及びろう材層を形成する際に溶融メッキで行う場合と超音波メッキで行う場合とで抜き荷重にどのような差が生じるかを調べた。このとき、溶融メッキ及び超音波メッキを施した各バルブシートを、それぞれ29420N(3000kgf)の加圧力でパルス通電により上記試験片61に接合した。このパルス通電の大電流値は70kAとし、小電流値は0とした。また、大電流値パルスの通電時間、小電流値パルスの通電時間及び大電流値パルス数を、それぞれ0.5秒、0.1秒及び3パルスとした。
【0137】
この抜き荷重測定結果を図48に示す。尚、参考のために固相拡散接合した場合の抜き荷重も併せて示す。この結果、超音波メッキの場合の方が溶融メッキの場合よりも接合強度が向上することが判る。但し、溶融メッキの場合でも固相拡散接合の場合よりも接合強度は向上している。
【0138】
そして、表5に、溶融メッキを施した直後におけるバルブシートの鉄側溶融反応層及びろう材層の化学成分と、超音波メッキを施した直後におけるバルブシートのろう材層の化学成分とを測定した結果を示す(数値は重量%)。尚、超音波メッキの場合は上述の如く鉄側溶融反応層が極めて薄いため、化学成分の測定は不可能であった。但し、線分析の結果では、鉄側溶融反応層が存在することが認められる。
【0139】
【表5】
【0140】
このことより、溶融メッキの場合には、超音波メッキの場合よりも鉄側溶融反応層がかなり厚くなると共に、鉄側溶融反応層におけるZn成分の割合が少なくなって(Fe成分及びAl成分の割合は多くなる)、ろう材の組成が共晶組成から大きく外れることも判る。したがって、溶融メッキの場合、ろう材層は共晶組成を維持しているものの、鉄側溶融反応層に非共晶組成のろう材が多く存在するため、ろう材を溶融させるための入熱量が多くなって試験片61が軟化し、このことで酸化被膜の破壊効果やろう材の排出効果が不十分となって、上記測定結果のように接合強度が超音波メッキの場合よりも小さくなったと考えられる。このことより、ろう材として最初から共晶組成から大きく外れた組成のものを使用すると、ろう材層も共晶組成から大きく外れた組成となって、酸化被膜の破壊効果やろう材の排出効果が大幅に低下すると推定することができる。一方、超音波メッキの場合には、ろう材の組成を共晶組成ないしその近傍組成に維持して、酸化被膜の破壊効果やろう材の排出効果が確実に得られ、両金属部材の接合強度をより一層向上させることができる。
【0141】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明では、第1の金属部材と第2の金属部材とを、該両金属部材間の加熱及び加圧により第1の金属部材を第2の金属部材側に押圧移動させることで第2の金属部材を塑性流動させながら接合する接合方法として、両金属部材の接合前に予め第1の金属部材の接合面部を、第1の金属部材の押圧方向に対して傾斜しかつ2つ以上の角部を有するように該傾斜方向に連続的に繋げられた3つ以上の傾斜面で構成しておく工程と、上記第1の金属部材における傾斜面で構成した接合面部に、該第1の金属部材及び第2の金属部材よりも融点が低くかつ第2の金属部材との共晶組成ないしその近傍組成からなるろう材と第1の金属部材との拡散層を介して上記ろう材層を形成する工程と、上記ろう材層を形成する工程後に、上記第1の金属部材と第2の金属部材とを、該両金属部材間の通電に伴う発熱による上記ろう材の融点以上の温度への加熱及び加圧により、ろう材における第2の金属部材成分の割合が多くなることでろう材が高融点化するようにろう材及び第2の金属部材の拡散層を形成しかつ溶融したろう材を両金属部材の接合面部間から排出しながら、上記両拡散層を介した液相拡散接合を行うことで、該両拡散層間の少なくとも一部に、該両拡散層同士の合金部を形成する工程とを含み、上記ろう材層を形成する工程を、ろう材浴中の第1の金属部材の表面部に超音波振動の付与によりろう材をコーティングすることで、上記ろう材と第1の金属部材との拡散層における厚さが1μm以下となるように第1の金属部材に上記ろう材層及び該拡散層を形成する工程としたことにより、複数の角部により第2の金属部材における材料の流れが各傾斜面から剥離するのを防止することができ、簡単な方法で両金属部材の接合強度を向上させることができる。また、第2の金属部材表面部における酸化被膜の破壊効果やろう材の排出効果が確実に得られ、接合強度のより高い接合金属部材が得られる。
【0142】
請求項2の発明によると、傾斜面を3つにしたことにより、低コストで第2の金属部材における材料の流れが各傾斜面から剥離するのを有効に防止することができる。
【0143】
請求項3の発明によると、第1の金属部材の押圧方向に対する傾斜角が最も小さい傾斜面の傾斜角を30〜40°に設定し、第1の金属部材の押圧方向に対する傾斜角が最も大きい傾斜面の傾斜角を60〜70°に設定したことにより、酸化被膜の破壊により接合強度を向上させるための最良の形態が得られる。
【0144】
請求項4の発明によると、第1の金属部材をFe系材料とし、第2の金属部材をAl系材料とし、ろう材をZn系材料としたことにより、請求項1の発明における接合方法として、材料の組合せの最適化を図ることができる。
【0145】
請求項5の発明によると、ろう材をZnが92〜98重量%のZn−Al系合金としたことにより、Fe系金属部材とAl系金属部材とを接合する場合に、融点が低くて取り扱いの簡単なろう材の具体的材料が容易に得られる。
【0146】
請求項6の発明によると、第1の金属部材を、高電気伝導率元素であるCuが分散された粉末材料を焼結してなる焼結材としたことにより、第1の金属部材を所定の形状に簡単に製造することができる。また、接合を良好に行いつつ、溶浸工程を省略して製造コストを低減させることができると共に、接合後に高温下で使用する際に第1の金属部材の耐摩耗性を向上させることができる。さらに、低コストで第1の金属部材内部の抵抗値を有効に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基本形態1に係る接合金属部材としてのエンジンのシリンダヘッドの要部を示す断面図である。
【図2】 バルブシート及びシリンダヘッド本体の接合状態を模式的に示す断面図である。
【図3】 バルブシートの接合前の形状を示す断面図である。
【図4】 バルブシートのシリンダヘッド本体への接合手順を示す説明図である。
【図5】 バルブシート及びシリンダヘッド本体の接合過程を模式的に示す説明図である。
【図6】 ろう材浴中のバルブシートの表面部に超音波振動の付与によりろう材をコーティングしている状態を示す説明図である。
【図7】 接合装置を示す側面図である。
【図8】 (a)は図7のVIII方向矢示図であり、(b)は上側電極の下面図である。
【図9】 加圧及び通電の制御方法を示すタイミングチャートである。
【図10】 加圧制御方法の他の例を示す図9相当図である。
【図11】 Al−Zn合金の状態図である。
【図12】 基本形態2を示す図9相当図である。
【図13】 パルス通電によるバルブシート内部の温度変化を示すグラフである。
【図14】 通電制御方法の他の例を示す図9相当図である。
【図15】 バルブシート内周面部に冷却水を噴霧している状態を示す断面図である。
【図16】 基本形態3を示す図9相当図である。
【図17】 通電制御方法の他の例を示す図9相当図である。
【図18】 バルブシートを縮径方向にも加圧してその熱膨張を抑えるようにしている状態を示す断面図である。
【図19】 バルブシートの他の形状例を示す図3相当図である。
【図20】 基本形態4に係る接合装置によりバルブシート及びシリンダヘッド本体を接合している状態を示す要部断面図である。
【図21】 シリンダヘッド本体の接合前の形状を基本形態1〜4と異ならせた変形例を示す図4相当図である。
【図22】 基本形態5に係る接合金属部材としてのエンジンのピストンを示す断面図である。
【図23】 基本形態6に係る接合金属部材としてのエンジンのシリンダブロックの要部を示す断面図である。
【図24】 本発明の実施形態においてバルブシートとシリンダヘッド本体とを接合している状態を示す要部断面図である。
【図25】 基本例及び従来例の接合に用いた試験片を示す断面図である。
【図26】 薄肉形状のバルブシートを示す断面図である。
【図27】 厚肉形状のバルブシートを示す断面図である。
【図28】 抜き荷重測定試験の要領を示す概略断面図である。
【図29】 基本例1〜5及び従来例のバルブシートにおいて抜き荷重測定試験の結果を示すグラフである。
【図30】 接合時加圧力と抜き荷重との関係を示すグラフである。
【図31】 試験片の接合面部からの距離による硬さの変化を示すグラフである。
【図32】 連続通電及びパルス通電においてバルブシートの接合前後の硬さの変化を示すグラフである。
【図33】 連続通電及びパルス通電において試験片の接合面部からの距離による硬さの変化を示すグラフである。
【図34】 連続通電及びパルス通電において抜き荷重測定試験の結果を示すグラフである。
【図35】 埋め込み量測定試験における埋め込み量yを示す説明図である。
【図36】 加圧開始からの時間と埋め込み量yとの関係を示すグラフである。
【図37】 バルブシートが焼結鍛造材のものと溶浸した焼結材のものとにおいて試験片の接合面部からの距離による硬さの変化を示すグラフである。
【図38】 実施例1〜3のシート形状を示す断面図である。
【図39】 比較例1〜4のシート形状を示す断面図である。
【図40】 実施例1,2及び比較例1〜4の接合に用いた試験片の要部断面図である。
【図41】 (a)は従来電極を示し、(b)は改善電極を示す。
【図42】 実施例及び比較例のバルブシートにおいて抜き荷重測定試験の結果を示すグラフである。
【図43】 実施例1におけるバルブシートと試験片との接合状態を示す顕微鏡写真である。
【図44】 比較例1におけるバルブシートと試験片との接合状態を示す顕微鏡写真である。
【図45】 実施例3の抜き荷重測定試験後の状態を示す顕微鏡写真である。
【図46】 第1及び第2接合面部間に円弧状の凸面を有するバルブシートを示す断面図である。
【図47】 図46のバルブシートと試験片との接合状態を示す顕微鏡写真である。
【図48】 バルブシートに鉄側溶融反応層及びろう材層を形成する際に溶融メッキで行う場合と超音波メッキで行う場合との抜き荷重測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 シリンダヘッド(接合金属部材)
2 シリンダヘッド本体(第2の金属部材)
2a 接合面部
2b ポート
3 バルブシート(第1の金属部材)
3a 第1接合面部(傾斜面)
3b 第2接合面部(傾斜面)
3f 第3接合面部(傾斜面)
5 鉄側溶融反応層(ろう材とバルブシートとの拡散層)
6 アルミ側溶融反応層(ろう材とシリンダヘッド本体との拡散層)
7 ろう材層
14 ろう材浴
Claims (6)
- 第1の金属部材と第2の金属部材とを、該両金属部材間の加熱及び加圧により第1の金属部材を第2の金属部材側に押圧移動させることで第2の金属部材を塑性流動させながら接合する接合方法であって、
上記両金属部材の接合前に予め第1の金属部材の接合面部を、第1の金属部材の押圧方向に対して傾斜しかつ2つ以上の角部を有するように該傾斜方向に連続的に繋げられた3つ以上の傾斜面で構成しておく工程と、
上記第1の金属部材における傾斜面で構成した接合面部に、該第1の金属部材及び第2の金属部材よりも融点が低くかつ第2の金属部材との共晶組成ないしその近傍組成からなるろう材と第1の金属部材との拡散層を介して上記ろう材層を形成する工程と、
上記ろう材層を形成する工程後に、上記第1の金属部材と第2の金属部材とを、該両金属部材間の通電に伴う発熱による上記ろう材の融点以上の温度への加熱及び加圧により、ろう材における第2の金属部材成分の割合が多くなることでろう材が高融点化するようにろう材及び第2の金属部材の拡散層を形成しかつ溶融したろう材を両金属部材の接合面部間から排出しながら、上記両拡散層を介した液相拡散接合を行うことで、該両拡散層間の少なくとも一部に、該両拡散層同士の合金部を形成する工程とを含み、
上記ろう材層を形成する工程は、ろう材浴中の第1の金属部材の表面部に超音波振動の付与によりろう材をコーティングすることで、上記ろう材と第1の金属部材との拡散層における厚さが1μm以下となるように第1の金属部材に上記ろう材層及び該拡散層を形成する工程であることを特徴とする接合金属部材の接合方法。 - 請求項1記載の接合金属部材の接合方法において、
傾斜面は3つであることを特徴とする接合金属部材の接合方法。 - 請求項2記載の接合金属部材の接合方法において、
第1の金属部材の押圧方向に対する傾斜角が最も小さい傾斜面の傾斜角を、30〜40°に設定し、
第1の金属部材の押圧方向に対する傾斜角が最も大きい傾斜面の傾斜角を、60〜70°に設定することを特徴とする接合金属部材の接合方法。 - 請求項1記載の接合金属部材の接合方法において、
第1の金属部材は、Fe系材料からなり、
第2の金属部材は、Al系材料からなり、
ろう材は、Zn系材料からなることを特徴とする接合金属部材の接合方法。 - 請求項4記載の接合金属部材の接合方法において、
ろう材は、Znが92〜98重量%のZn−Al系合金からなることを特徴とする接合金属部材の接合方法。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載の接合金属部材の接合方法において、
第1の金属部材は、高電気伝導率元素であるCuが分散された粉末材料を焼結してなる焼結材であることを特徴とする接合金属部材の接合方法。
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