JP3764779B2 - 凸状領域を用いた分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板の分析部上で分析対象物と該分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質とを反応させ、その反応に由来する信号を検出することにより定性分析又は定量分析を行うに際し、基板の分析部上での反応に由来する信号が、非分析部上での由来する信号に対して強く検出されるようにし、それにより分析対象物の高精度な分析を可能とする分析方法に関する。更に詳しくは、本発明は、化学センサ、酵素センサなどのバイオセンサ、特異結合分析センサなどを用いる分析方法において、分析対象物を基板上の凸状分析部に担持させること等により、簡素な装置構成で精密分析を可能とする分析方法であり、微小で高精度なマイクロセンサの製造を可能とする分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラムクロマト分析法、酵素化学反応法、免疫測定法などの液相中あるいは気相中の分析対象物を定量する従来の分析方法には、分析に大量の試料を必要とする、分析に大型の装置を要する、分析に時間がかかる、などの問題点があった。特に、多くの試料について同時に分析する必要性がある場合(多試料同時分析)や、1つの試料について多項目の分析を行う必要性がある場合(多項目同時分析)には、これらの問題点は重大な障害となっていた。
【0003】
これに対し、最近、化学センサ、バイオセンサあるいは特異結合分析センサなどの多くのセンサ技術が開発され、分析手法の簡素化と小型化が図られている。しかし、未だ十分とは言い難い。特に、微小なセンサで多試料同時分析あるいは多項目同時分析を可能とし、かつ高精度の分析も可能とする技術は開発されていない。
【0004】
例えば、S.P.Fodor らは、Science,Vol.251,p767-773 (1991) で、フォトリソグラフィーの手法と光感受性保護基とを組み合わせて、微小な複数領域(二次元平面上のマトリクス)に異なる配列のぺプチドあるいはオリゴヌクレオチドを合成して分析に用いる手法を紹介している。また、P.Connollyは、Trends Biotechnol.,Vol.12,p123-127 (1994) の総説で、リフトオフの手法を用いて基板表面に親水性領域と疎水性領域をパターニングするフォトファブリケーションを紹介している。C.R.Loweら(USP4562157号明細書)、S.Nakamotoら(Sensors and Actuators,vol.13,165-172(1988))、C.S.Dulceyら(Science,Vol.252,551-554,1991)、S.K.Bhatiaら(Anal.Biochem.,Vol.208,197-205(1993) )も同様の表面加工技術及び分析方法を報告している。
【0005】
また、W.T.Mullerらは、Science,Vol.268,p272-273 (1995) で、基板上に自己会合させた単分子層の表面官能基を走査型プローブ装置で微小加工して、基板上の微小領域に物質を共有結合させる手法を紹介している。
【0006】
走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いた表面加工技術は、Y.Utsugi(NATURE,Vol.347,747-749(1990))や、P.Connolly(Nanotechnology,Vol.2,160-163(1991))も報告している。
【0007】
D.J.Pritchard らは、Anal.Chim.Acta.Vol.310,p251-256 (1995)でシリコンウェハ基板の複数のアビジン不溶化金電極部にフォトマスクをかけながら光感受性フォトビオチンと2種類の抗体をそれぞれ反応させ、多項目同時測定用の特異結合センサを作製する方法を報告している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
これらの微小加工技術は、いずれも基板上の所定の領域に異なる物質を固定することを可能としている。しかしながら、その製造工程は数段階以上から構成され複雑である。また、加工領域が微小であるにも関わらず、各センサ部の特性を決める特異結合物質(抗体)などの高価な試薬類あるいは貴重な分子識別素子を基板全体に反応させることを前提としており、必ずしも経済的ではない。また、電極などの検出部領域と固定化領域とを正確に一致させる必要があり、微小なセンサを製造するには高精度の位置決め技術が必須となる。さらに、検出部である電極などは、同一平面上の周囲の非特異的結合などに起因する信号も同時に検出してしまうため、高精度な分析には不向きとなっている。
【0009】
また、化学センサ、酵素センサなどのバイオセンサ、免疫センサなどの特異結合分析に代表される分析方法においては、化学感応物質、生体触媒物質、分子識別素子、特異結合物質などの分析試薬成分を担持する分析部と、担持物質が関与して発生する信号を検出する検出部とが必要である。そして分析精度を向上させるには、分析部に担持させる物質量の精度と検出部での信号検出精度の両方を向上させる必要がある。ここで、分析部に担持させる物質量の精度は、担持方法(化学的に結合せず遊離状態のまま担持させる、共有結合で担持させる、非共有結合で担持させる、特異結合物質を介して担持させるなど)や、担持させるための反応液量精度、点着液量精度、分析部の担持面積精度などに依存する。特に、微量な試料の分析を可能とするために分析装置のサイズを小さくすると、反応液量精度あるいは分析部担持面積精度を保証することが困難となる。従来、このような課題を解決するために、フォトリソグラフィー的手法により基板上の微小な領域に物質結合能を付与し、基板全体を担持物質と接触させるという手法が採用されている。しかし、このような方法は、製造工程が複雑化し、担持させる試薬類も余分に必要となり、経済的でないという問題があり、しかも、担持すべきでない領域あるいは結合すべきでない領域への非特異的吸着の影響も免れない。
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題を解決しようとするものであり、基板の分析部上で分析対象物と該分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質とを反応させ、その反応に由来する信号を検出することにより、試料中の分析対象物の定性分析又は定量分析を行うに際し、基板の分析部上での反応に由来する信号が、非分析部上での由来する信号に対して強く検出されるようにし、それにより試料中の分析対象物の高精度な分析を可能とすることを目的とする。
【0011】
また、本発明は、簡素な装置構成で精密分析を可能とすることにより、微小で高精度なマイクロセンサの製造を容易にし、また、微量の試料で多試料同時分析あるいは多項目同時分析を可能とすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、分析対象とする試薬成分を微小な領域に固定化し、その領域に固定化されている成分を精密に分析できるようにする手法について鋭意検討した結果、基板の分析部上に、分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質を固定化し、その上に分析対象物の分析を行う試料を導入してそれらを反応させるか、あるいは基板の分析部上に分析対象物を固定化し、その上に分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質を導入してそれらを反応させ、この反応に由来する信号を検出することにより分析対象物の分析を行う場合であって、この反応が、反応物質の供給あるいは反応エネルギーの供給という点から、基板に対向する位置に配設した対向部が密接に関与する場合に、基板の分析部と対向部との距離を、基板の非分析部と対向部との距離に比して短くすることにより、分析部上での反応に由来する信号を特異的に強い強度で検出できること、そしてこのように分析部上での反応を特異的に強い信号強度で検出するためには、基板及び対向部の少なくとも一方に凹凸を形成することが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、基板の分析部上で、分析対象物と、該分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質とを反応させ、この反応に由来して発生する光、電流及び電位から選ばれる信号を検出する分析方法であって、少なくとも信号検出段階において、基板に対向する位置としての対向部に、前記信号の発生に関与する信号発生関与部及び前記信号の検出器の少なくとも一方を設け、基板の分析部と対向部との距離が、基板の非分析部と対向部との距離に比して短くなるように、基板及び対向部の少なくとも一方に凹凸を形成し、基板の分析部上での前記反応に由来する信号が基板の非分析部上での反応に由来する信号に比して強い信号強度で検出されるようにしたことを特徴とする分析方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、このような分析方法の実施に有用な分析用基板として、表面に複数の凸状分析部が形成されていることを特徴とする分析用基板を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の分析方法は、基板の分析部上で、分析対象物と、該分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質とを反応させ、この反応に由来して発生する信号を検出する分析方法であって、少なくとも信号検出段階において、基板に対向する位置としての対向部に、前記信号の発生に関与する信号発生関与部及び前記信号の検出器の少なくとも一方が設けられていることを前提としている。この分析方法において、分析対象物の種類や、該分析対象物に対する反応物質の種類については、以下に詳述するように種々の物質が含まれ、これらの反応に由来して発生する信号の発生機序、信号の種類、信号の発生に対する信号発生関与部の関与態様、信号を検出する検出器の種類や部位などについても、この前記反応に由来して発生する信号が、対向部と分析部との距離に応じて特異的に強まるようにする限り特に制限はなく、種々の態様が包含される。
【0017】
すなわち、本発明において分析対象物と反応させる物質のうち、分析対象物と直接的に反応する反応物質としては、(i) 分析対象物と直接的に結合し、それ自体は化学的変化を起こさない物質と、(ii)分析対象物と直接的に結合し、分析対象物、当該反応物自体あるいはその他の物質に化学的変化を引き起こす物質との双方が含まれる。
【0018】
より具体的には、(i) の物質として、分析対象物が抗原である場合に、その分析対象物に対する抗体をあげることができる。分析対象物が抗原であれば、抗分析対象物抗体は、直接的に分析対象物と結合できるからである。
【0019】
また、分析対象物が特定の配列を有する核酸である場合に、そのDNAあるいはRNAと相補的にハイブリダイゼーションするポリ又はオリゴヌクレオチドなどや、後述する分析対象物に対する特異結合物質や、分析対象物をインヒビターなどとする酵素分子等を例示することができる。また、カルボン酸基、アミノ基等の解離基を有するイオン結合性物質、シリコン等の疎水結合性物質も例示することができる。
【0020】
(ii)の物質としては、共有結合形成性あるいは架橋形成性の物質、例えば、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、N−Hydroxysuccinimid(NHS)、Disuccinidyl tartarate(DST)、N−Succinimidyl−3−(2−pyridylditio)propionate(SPDP)など、あるいはS−S結合交換反応を引き起こすスルフヒドリル基を有する物質などを例示することができる。さらに、分析対象物を酵素基質、補酵素、補因子、インヒビター等とする酵素分子も例示することができる。例えば、分析対象物が、酵素基質であるグルコースのとき、グルコースオキシダーゼ(GOD)などの酵素は、グルコースと直接的に結合し、別の酵素基質である酸素の存在下、D−グルコノ−δ−ラクトンと過酸化水素を生成する。
【0021】
一方、本発明において、分析対象物と間接的に反応する反応物質とは、分析対象物が関与する反応と間接的に関係した反応を生起する物質をいう。このような物質には、(a) 分析対象物に対する直接的結合物質を介して分析対象物に間接的に結合する物質や、(b) 分析対象物とは間接的にも結合しないが、分析対象物が結合する物質と結合する物質が含まれる。
【0022】
このうち(a) の物質としては、分析対象物の直接的結合物質に対する特異結合物質、例えば、抗分析対象物抗体に対する抗体をあげることができ、より具体的には、抗分析対象物抗体がビオチン標識されている場合に、これと特異結合するアビジンなどをあげることができる。
【0023】
また、(b) の物質としては、分析対象物と同一の物質あるいは分析対象物の類縁体を例示することができる。この場合、抗分析対象物抗体が、分析対象物と(b) の物質との双方と結合し得るため、(b) の物質は抗分析対象物抗体に対して分析対象物と競合反応することとなる。他の(b) の物質の例としては、分析対象物と直接的に反応し得る酵素が触媒する反応と連鎖する別の反応を触媒する酵素等をあげることができる。より具体的には、分析対象物がグルコースで、直接的に反応し得る酵素がGODである場合に、GOD反応で生成する過酸化水素を基質とするパーオキシダーゼ(POD)などを例示することができる。
【0024】
本発明においては、以上のような分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質と分析対象物とを基板の分析部上で反応させるが、その際、一方を予め基板の分析部に担持させ、他方をその上に導入することができる。この場合、分析対象物と該分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質とのいずれを予め基板に担持させてもよいが、特に、基板の分析部上に、分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質を担持させ、分析対象物の定量又は定性分析を行う試料を基板の分析部上に導入し、これらを反応させることが多試料同時分析あるいは多項目同時分析の実際的な分析手法として有用となる。
【0025】
ここで、反応物質を担持させるとは、反応が生じる様式で分析部に保持されていればその態様に限定はない。したがって、例えば多試料同時分析の場合のように、微小なキャピラリーなどの分注手段あるいは吸引手段で各分析部に対して個々に試料液あるいは試薬液が導入され、基板上の各分析部の試料液あるいは試薬液同士が連通していない場合には、反応物質は各分析部に遊離状態で担持させることができる。一方、多項目同時分析の場合のように、一つの試料液を複数の分析部に同時に導入して異なる複数の分析を行う場合には、一般的に反応物質を分析部に不溶化することが好ましい。このような不溶化の態様としては、反応物質を分析部表面へ物理吸着させる、あるいは分析部表面の吸着物質に共有結合させるなどして反応物質を不溶化する態様をあげることができる。また、不溶化のための手法としては、ガラス試験管、プラスチック試験管、多孔質メンブレイン、マイクロプレート、ポリスチレンビーズ、ラテックス粒子、磁性粒子等の各種固相単体を用いた特異結合分析に用いられている手法を好適に利用することができる。
【0026】
本発明において、分析対象物と該分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質との反応に由来して発生する信号とは、分析対象物と該分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質との直接的又は間接的反応の結果として発生する信号であって、試料中の分析対象物の量あるいは濃度に依存して変化する信号を意味する。例えば、反応物質が特異結合物質であり、標識特異結合物質が信号発生に関与する場合に、その標識から発生する信号;反応物質がDNAあるいはRNAなどの核酸とハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド配列の特異結合物質であり、ハイブリダイゼーション反応の産物に結合する標識特異結合物質、あるいはインターカレート物質が発生する信号;反応物質が酵素の場合に、酵素反応生成物が発生する信号等をあげることができる。
【0027】
また、ここで信号とは、酵素反応法、光学的あるいは電気化学的酵素センサ法、蛍光免疫測定法、酵素免疫測定法、化学発光あるいは生物発光免疫測定法等に代表され、均質法あるいは不均質法として知られる各種免疫分析法、標識抗2本鎖抗体あるいは蛍光インターカレーターを用いた核酸ハイブリダイゼーション定量法に代表される核酸増幅分析法等の各種分析法における検出信号として当業者が利用している呈色、蛍光等の発光、電流、電位等の各種信号である。これらの各種分析法における信号発生機序は、本発明においても好ましいものとして利用することができる。また、本発明においても、前述した各種測定方法と同様に、信号強度は試料中の分析対象物の量あるいは濃度に依存する。したがって、検出器で検出される信号強度から未知検体中の分析対象物量あるいは濃度を定性あるいは定量分析することが可能となる。
【0028】
本発明において、上述のような信号を検出する検出器としては、その信号が電気化学反応による場合に、例えば、基板上に蒸着により形成した金電極を使用することができるが、この他、スクリーン印刷などで形成したカーボンインクあるいは銀ペースト電極、カーボンファイバー電極、白金電極などを好適なものとして例示できる。このような電極としては、露出させたくない部分をレジストパターン等で覆ったものも使用することができる。
【0029】
これらの電極は、基板上の分析部側又は分析部に対向する対向部側に配置して、電流又は電位の検出器として使用できるが、補助電極としても使用できる。なお、電極を対向部に設ける場合、基板と電極との距離を一定に維持するためにスペーサーなどを挿入し、スぺーサーを介して基板と電極とを対向させ、それらを貼り合わせればよい。
【0030】
また、本発明において信号の検出器としては、後述する実施例で詳述するような極細い白金フィラメントからなるプローブ電極を使用してもよい。この場合、プローブ電極が、分析部が配置された基板に対して一定距離を維持したまま基板上を走査するように、プローブ電極を精密なモーター駆動で動かして信号検出する方法が好ましい。この走査はプローブ電極に対して基板側を動かすことにより行ってもよい。
【0031】
このようにプローブ電極を使用する電気化学的検出方法は、走査型電気化学顕微鏡(SECM)として知られており(C.Lee,Proc.Natl.Acad.Sci.USA. Vol.87,p1740-1743 (1990) 、A.J.Bard et al,Science. Vol.254,p68-74 (1991) 、H.Shiku et al.Anal.Chem.,Vol.67,p312-317 (1995) など)、本発明の分析方法に好適に応用できる。
【0032】
また、本発明において信号の検出器としては、信号が、蛍光、化学発光、生物発光等による光である場合に、CCD、光電子増倍管等の光検出器を使用することができる。
【0033】
以上説明した信号の検出器は、本発明の態様の例示であり、本発明における信号の検出方法が電気化学的検出や光学的検出に限定されることを意味するものではない。分析部あるいは分析部に対向する反応関与部の少なくとも一方の凹凸により、分析部の特異的な信号とその周囲の非特異的な信号との間に信号強度差をつけて信号を検出することができる限り、種々の信号検出法を本発明は利用できる。
【0034】
一方、本発明において信号発生関与部とは、分析対象物と該分析対象物と直接的又は間接的に反応する物質との反応を進行させ、その反応に由来する信号を発生させるにあたり、何等かの寄与を行う物質の供給を制御する部位あるいは、そのような信号の発生に関与するエネルギーの供給を制御する部位を含む。
【0035】
ここで、エネルギーの供給を制御するとは、信号発生に必要な外部エネルギーの供給、あるいは信号発生を促進又は抑制する外部エネルギーの供給を制御的に行うことを意味する。そして信号発生に関与するエネルギーとしては、光エネルギーや熱エネルギーを例示することができる。
【0036】
また、信号発生関与部からエネルギーを供給するに際しては、これらのエネルギーが、基板上の分析部には十分に到達するが、非分析部には反応の促進に有効な量が到達しないようにエネルギーの供給領域を信号発生関与部の表面近傍に制御できることが好ましい。このように供給領域を制御できるエネルギーの例としては、光エネルギーについては、例えば、プリズム板あるいは光ファイバー等の光導波路の表面に生じるエバネッセント波をあげることができる。エバネッセント波を用いると薄層領域内の蛍光物質の検出を行なうことができる。さらに光エネルギーを使用すると、金属蒸着光導波路表面での誘導率変化による表面プラズモン共鳴(SPR)分析を行うこともできる。
【0037】
したがって、本発明においてエバネッセント波を利用する場合、信号発生関与部を構成する対向部は、平面プリズム板等の光導波路からなり、分析部あるいは対向部の少なくとも一方を凸状領域とし、分析部は光エネルギーが供給される領域に入るが、非分析部は光エネルギーが供給される領域から外れるようにする。そして、基板側あるいは対向部側に集光器を設置し、これと光電増幅器あるいはCCD等の検出器を組み合わせて使用することにより、分析部に起因する信号を精度よく分析することが可能となる。
【0038】
また、本発明において信号発生関与部からの供給領域を制御できるエネルギーとしては、サーマルサイクラー(例えば、DNA増幅装置等で使用されているもの)で制御された熱エネルギーもあげることができる。サーマルサイクラーを本発明に使用すると、熱源近傍は所定の温度に温度制御できるが、離れた領域までは温度制御できない状況を作り出すことができる。一方、ポリメラーゼチェイン反応(PCR)などの核酸増幅反応は、サーマルサイクラーによる温度循環によって引き起こされる。したがって、本発明においてサーマルサイクラーを利用する場合、分析部だけが必要な温度制御を受ける領域に入るように凸状領域を形成し、PCRが引き起こされるようにすればよい。なお、この領域の内外の温度差を増強するために、基板側を一定温度に維持してもよい。
【0039】
サーマルサイクラーを利用した本発明の態様をより具体的に説明すると、例えは、分析部に配列特異的な核酸プローブを担持し、試料とプライマー及びポリメラーゼ等のPCRに必要な試薬を分析部と対向部との間に導入し、対向部からサーマルサイクラーで温度制御する。すると、試料中に分析対象物である核酸配列が存在する場合、分析部に限局して核酸増幅が引き起こされる。そこで、例えば、2本鎖核酸にインターカレートする蛍光標識物質、あるいは電気化学標識モノヌクレオチド等を共存させることにより核酸増幅産物に標識を取り込ませることができる。そしてその結果、核酸増幅反応の産物量に応じた蛍光信号あるいは電気化学信号を検出器で検出することが可能となる。この場合、核酸プローブなどの成分が凸状の分析部以外に担持されていても温度制御されない限りは核酸増幅反応自体が生じない。したがって、分析部での測定を精度よく行うことが可能となる。
【0040】
本発明においては、前述したように、分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質と分析対象物とを基板の分析部上で反応させるにあたり、それらのいずれか一方を予め基板の分析部に担持させ、他方をその上に導入することができるが、基板の分析部にいずれを予め担持させておく場合であっても、信号発生関与部の関与態様や、検出器の種類や配設部位については種々の態様が含まれる。すなわち、基板に対向する対向部には信号発生関与部を設け、検出器は基板側に設けてもよく、あるいは対向部に信号発生関与部を設けることなく検出器を設けてもよく、対向部に信号発生関与部と検出器との双方を設けてもよい。また、信号発生関与部を対向部に設ける場合に、信号発生関与部は、信号の発生に関与する物質を供給するものでもよく、エネルギーを供給するものでもよい。以下、これらの点を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0041】
図1(a)は、本発明の分析方法の一態様の説明図である。同図に示した態様においては、表面に凹凸を有するシリコンウェハ、ガラスなどの絶縁性基板1の凸状領域に、半導体、金属、カーボンインク等で形成された複数の導電層からなる信号検出電極部2が形成されている。この分析方法の態様においては、絶縁性基板1の凸状領域に形成された信号検出電極部2上が分析部Aとなり、絶縁性基板1の凹状領域が非分析部Bとなる。そこで、分析部Aとなる信号検出電極部2上には、分析対象物と反応する反応物質3が担持されている。
【0042】
また、絶縁性基板1と対向する位置には信号発生関与部4xが配されている。信号発生関与部4xは、分析対象物と反応物質3との反応に由来する信号発生に関与する分析試薬を基材5に担持させたものとしてもよく、あるいは信号発生関与部4xが電極として機能し、分析対象物と反応物質3との反応に由来する信号発生に関与する物質が信号発生関与部4xにおける電極反応で生成されるようにしてもよく、あるいはまた分析対象物と反応物質3との反応に由来する信号発生に関与するエネルギーを供給するものとしてもよい。
【0043】
反応物質3を担持している信号検出電極部2は、ポテンシオスタットなどの外部検出器に接続されており、各信号検出電極部2の上に担持されている物質の酸化電流あるいは還元電流を検出する電極として機能している。このような信号検出電極部2は、例えば、金等の金属の蒸着や、カーボンインクなどのスクリーン印刷等により構成することができる。
【0044】
この図1の態様の具体的な分析方法としては、例えば、凸状分析部Aに予め反応物質3として特異結合物質を担持させておき、ついで試料液と西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識特異結合物質とを反応させ、試料液中の分析対象物の量に応じて分析部A上に特異結合物質−分析対象物−HRP標識特異結合物質からなる三元複合体を形成する。そしてこの三元複合体のHRP活性を、検出電極として機能する信号検出電極部2とHRPとの直接的な電子移動で、あるいは、電子メディエータを媒介にして、信号検出電極部2で検出する。この場合、信号発生関与部4xでは、HRPの酵素基質である過酸化水素が生成されるようにする。信号発生関与部4xで過酸化水素を生成させる方法としては、例えば、グルコースオキシダーゼ(GOD)のようなオキシダーゼ酵素を分析試薬成分として反応関与部4xに担持し、GODの酵素基質であるグルコースと溶存酸素を導入する方法をあげることができる。あるいは、信号発生関与部4xを電極として機能させ、信号発生関与部4xにおける電気化学反応で過酸化水素を発生させる方法を用いてもよい。
【0045】
このように構成することにより、試料中の分析対象物の量に応じて分析部Aに生成した三元複合体中のHRP活性に起因する信号(即ち、信号検出電極2で検出される還元電流)は、信号発生関与部4xから供給されるHRPの酵素基質の拡散に依存することになり、信号発生関与部4xから離れるに従い信号強度は小さくなる。従って、信号発生関与部4xへの距離が短い分析部Aに担持されている分析対象物に由来する検出信号強度が、分析部以外の領域、例えば、非分析部BへのHRPの非特異吸着などから受ける影響を小さくでき、精度の高い特異結合分析が可能となる。
【0046】
図1(a)の態様は、絶縁性基板1の表面に凹凸を付与して、その凸部に信号検出電極部2を設け、その信号検出電極部2上を凸状の分析部Aとし、その周囲の凹状領域を非分析部Bとしたが、本発明の態様としては、図1(b)に示したように、信号発生関与部4xに凹凸を付与し、分析部Aに対向する部位の信号発生関与部4xが分析部Aに近付くようにしてもよい。
【0047】
図1(a)あるいは図1(b)に示した態様の分析基板を用いた分析手順は、例えば、次のように行うことができる。
【0048】
まず、反応物質3として、抗分析対象物抗体を担持させた分析部Aに未知濃度の分析対象物を含有する試料と、HRP標識抗分析対象物抗体を導入し、特異結合反応を行わせて前述の三元複合体を形成させる。この場合、試料とHRP標識抗分析対象物抗体の導入は、同時であっても別々でもよい。また、試料の導入とHRP標識抗分析対象物抗体の導入の間に、あるいは三元複合体の形成後に、必要に応じて、基板1上に、例えば界面活性剤を含有する緩衝液等の洗浄液を導入し、排出するという洗浄操作を加えてもよい。
【0049】
次いで、信号発生に必要な試薬液、例えば、信号発生関与部4xにGODを担持させている場合に必要とされる溶存酸素とグルコースとを含む電解質溶液等を基板1と信号発生関与部4xとの間に導入し、電解質溶液で液絡した対極あるいは参照極に対して還元電位を印加した信号検出電極部2で標識酵素HRPが発生する還元電流を信号として検出する。こうして検出される信号強度は、試薬中の分析対象物の量に応じて分析部A上に形成された三元複合体中のHRP量に依存する。したがって、分析対象物濃度既知の試料に対する信号強度から求められる標準応答から、試料中の分析対象物濃度を分析することが可能となる。
【0050】
以上の分析手順において、試料、洗浄液あるいは試薬液を導入する際の具体的態様は、試料、洗浄液あるいは試薬液が基板1上の分析部Aに接する限り特に限定はない。例えば、基板1をこれらの液中に浸漬してもよく、互いに対向部する信号発生関与部4xと基板1との間隙にポンプあるいは毛細管現象等で液を注入してもよい。ただし、多試料同時分析等の場合には、後述するキャピラリーなどの分注手段を用いて所定の分析部Aに液を滴下あるいは点着することが好ましい。
【0051】
また、以上の分析手順において、分析開始時に信号発生関与部4xが分析部Aに対向している必要なない。信号発生関与部4xは、信号発生段階で分析部Aに対向していればよい。したがって、信号発生関与部4xあるいは分注手段がモーター駆動などで基板1上をX、Y、Zあるいはφ軸方向に移動可能としたり、試薬液等の導入及び排出を、シリンジ制御機構で行えるようにすることができる。これにより、試薬液等の導入を外部のコンピュータ等で制御して行うことができ、分析の自由度と精度とを高めることができるので、分析の自動化を図ることができるので好ましい。
【0052】
図2は、さらに異なる本発明の態様を表したものである。同図においては、表面に凹凸を有するシリコンウェハ、ガラスなどの絶縁性基板1の凸状領域に分析試薬成分6を担持し、その部分が分析部Aとされている。また分析部Aの周囲の凹状領域に非分析部Bがあり、基板1に対向する対向部に、分析対象物に由来する信号の検出電極部4yが設けられている。
【0053】
この図2の態様の具体的分析手順としては、例えば、特異結合物質を分析部Aに担持させておき、分析対象物を分析する試料液と西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識特異結合物質とを反応させ、試料液中の分析対象物の量に応じた、特異結合物質−分析対象物−HRP標識特異結合物質から成る三元複合体を分析部A上に形成させる特異結合反応を行なわせる。そしてこの分析部Aの三元複合体中のHRP活性を、対向部の信号検出電極部4yで検出する。
【0054】
図1に示した態様と同様に、この場合もHRPの酵素基質である過酸化水素は、電気化学的に発生させてもよく、グルコースオキシダーゼ(GOD)のようなオキシダーゼを用いて発生させてもよく、単に反応溶液中に存在させてもかまわない。なお、分析部AのHRP活性と、検出部電極として機能させる対向部4yとを媒介する電子メディエータが反応溶液中に必要である。
【0055】
このように構成することにより、試料中の分析対象物の量に応じて分析部Aに生成した三元複合体中のHRP活性に起因する信号(例えば、信号検出部電極で観測される還元電流値)は、電子メディエータの拡散距離が大きくなるに従って小さくなり、それ故に、対向部にある信号検出電極部4yでの信号強度は、分析部Aと信号検出電極部4yとの距離が離れるに従い小さくなる。したがって、凸状領域となっている分析部Aに形成された三元複合体中のHRP活性の信号の検出に際して、分析部A以外の領域、即ち、分析部Aの周辺の凹状の非分析部Bへ非特異吸着したHRPの影響を小さくでき、分析部Aにおける精度の高い特異結合分析が可能となる。
【0056】
図2の態様は、絶縁性基板1に凹凸を付与して、凸状の分析部Aとその周囲の凹状の非分析部Bとを形成したが、本発明の態様としては、対向部に凹凸を付与し、信号検出電極部4yとして機能する部位の対向部を分析部Aに近付けてもよい。さらに本発明の態様としては、図2の態様において、分析部Aを電極から構成してもよく、対向部に信号の発生に関与する試薬成分を担持させてもよい。
【0057】
図3はさらに異なる本発明の態様を表したものである。同図においては、表面に凹凸を有する透明基板1の凸状領域である分析部Aに、分析対象物に対する特異結合物質等の反応物質3を担持させ、基板1の対向部4zには、光エネルギーを供給する信号発生関与部として、エバネッセント波を発生する光導波路を設け、また基板1の裏面にはCCDを配したものである。
【0058】
この態様の分析手順としては、まず、分析対象物を分析する試料と蛍光物質標識抗分析対象物抗体とを分析部Aに導入し、分析部A上に三元複合体を形成する。ここで、蛍光物質としては、フルオレセイン、テキサスレッド、フィコビリプロテインなどを例示することができる。次いで、対向部4zからエバネッセント波を発生させる。このエバネッセント波の及ぶ範囲は、波長、屈折率、光の入射角に依存するが、通常100nm以下程度である。したがって、図3の態様においては、エバネッセント波の進行方向の分析部Aと非分析部Bとの距離を100nm以上離すことにより、分析部Aの表面に結合している標識蛍光物質にはエバネッセント波が到達し、その標識蛍光物質は蛍光を発するが、非分析部Bの表面に結合している標識蛍光物質には、エバネッセント波が及ばず、蛍光も発しない。したがって、CCDでは、分析部Aの表面に結合している標識蛍光物質からの蛍光を特異的に検出することが可能となる。
【0059】
なお、図3には、基板の対向部に光エネルギー供給する信号発生関与部を設け、基板の裏面に検出器としてCCDを設けた例を示したが、発明においては、対向部の信号発生関与部からエネルギーを供給する場合でも、検出器を対向部側に設けることができる。例えば、基板の対向部に設けた光導波路が光エネルギーを供給すると共に分析部からの蛍光を検出器に導光するようにしてもよい。また、基板の対向部にサーマルサイクラーを設けた場合に、そのサーマルサイクラーに接する電極を検出器として対向部に設けることができる。
【0060】
以上、本発明の態様を図面に基づいて具体的に説明したが、本発明の分析方法は、上述した特定の分析手法に限定されるものではない。例えば、図1及び図2の具体的態様として説明したような、三元複合体中のHRP活性を利用する分析法は(所謂サンドイッチ型特異結合分析法)は、本発明が使用することのできる分析手法の一例であり、この他、本発明は、競合型特異結合反応にも好適に応用可能である。また、洗浄分離操作の必要な非均質法のみならず、均質法にも好適に応用できる。さらに、特異結合分析のみならず、化学センサ、酵素センサなどのバイオセンサにも応用可能である。
【0061】
ここで、化学センサとしては、イオン選択性電極、ガスセンサ、固体電解質センサ、半導体センサ、湿度センサ、臭いセンサ、その他の試料中の化学物質に感応するセンサ類をあげることができ、化学物質に感応する物質を担持した分析部と、電極、光電素子などのトランスジューサーから構成される検出部を組み合わせて、分析部に担持した物質が感応する化学物質を検出する分析方法が含まれる。
【0062】
バイオセンサとしては、生体組織、微生物、細胞、細胞内小器官などの生物体、あるいは、酵素などの生体触媒物質などを分子識別素子として担持させた分析部と、電極、光電素子などのトランスジューサーから構成される検出部を組み合わせたセンサ等が含まれる。代表的なバイオセンサは酵素センサであり、酵素としてグルコースオキシダーゼ(GOD)を用いたグルコースセンサなどが知られる。
【0063】
本発明が利用できる特異結合分析についても、図1及び図2であげた例に限られず、種々の態様をあげることができる。したがって、特異結合物質としては、抗体、抗原、オリゴヌクレオチドなどの核酸類などの特異結合物質を分析部に担持させ、電極、光電素子などのトランスジューサーから構成される検出部を組み合わせて、分析部に担持した特異結合物質に関連する特異結合反応を検出する分析方法が含まれる。
【0064】
すなわち、特異結合分析は、分析対象物と、それに特異的に結合する特異結合物質との少なくとも1つの特異結合反応に関連して試料中の分析対象物を定性もしくは定量する分析方法である。この特異結合分析としては、抗原抗体反応を応用したイムノアッセイ、受容体を用いたレセプターアッセイ、相補的核酸配列のハイブリダイゼーションを用いた核酸プローブアッセイなどの多くの方法が知られており、その特異性の高さから、臨床検査をはじめとする広い分野で繁用されている。
【0065】
そして特異結合分析における分析対象物としては、具体的には抗体分子や抗原として機能する各種蛋白質、ポリぺプチド、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、低分子化合物など、あるいは核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒビター等が例示される。さらに具体的には、α−フェトプロテイン、癌胎児性抗原(CEA)、CA125、CA19−9等の腫瘍マーカーや、β2 −ミクログロブリン(β2 m)、フェリチンなどの各種蛋白質;エストラジオール(E2 )、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)などの各種ホルモン;カビ、細菌などの各種微生物あるいは微生物生産物質;HBs 抗原、HBs 抗体、HBe 抗原、HBe 抗体、HBc 抗体、HCV抗体、HIV抗体などの各種ウイルス関連抗原あるいはウイルス関連抗体;各種アレルゲンおよびこれに特異的なIg E抗体;麻薬性薬物、医療用薬物およびこれらの代謝産物;環境汚染物質、有害物質、危険物質などの環境指標物質;ウイルスおよび疾患関連ポリヌクレオチド配列の核酸等が例示される。
【0066】
また、特異結合分析における特異結合物質としては、分析対象物等のある特定の物質に特異的に結合する、すなわち、特定の物質に特異結合反応しうる物質が包含される。
【0067】
したがって、分析対象物とそれに対する特異結合物質との組み合わせとしては、抗原とそれに対する抗体、相補的核酸配列、エフェクター分子とレセプター分子、酵素とインヒビター、酵素と補因子、酵素と基質、糖鎖を有する化合物とレクチン、ある抗体とその抗体に対する抗体、レセプター分子とそれに対する抗体等が例示される。また、これらの組み合わせにおいて、どちらの物質も相手方の物質に対する特異結合物質となりうる。
【0068】
また、特異結合物質として、特異結合活性が消失しない程度に化学修飾されたもの、あるいは、他の成分と結合してなる複合性物質もあげられる。このような特異結合物質としては、ビオチンで化学修飾された抗体もしくはポリヌクレオチド、アビジン共有結合抗体等が例示される。また、遺伝子組換え法で作成した抗体と酵素、あるいは抗体とレセプターとの融合蛋白質なども例示される。
【0069】
特異結合分析を実施するセンサの一例として、液体試料中の分析対象物と特異結合物質との特異結合反応によって標識剤の電極部からの距離分布を形成させ、電子伝達物質の拡散に律速された液体試料中の分析対象物の濃度に対応する電流値を計測し、これによって分析対象物濃度を測定するMEDIA法(Mediator Diffusion-Controlled Immunoassay) として知られる特異結合分析方法(特開平5−264552号公報(欧州特許公開公報0525 723 A2 号)参照)があるが、本発明においては、このMEDIA法も好ましく利用することができる。
【0070】
以上のような本発明の分析方法において、分析対象物を担持する基板側に凹凸を設けておく態様を実施する場合、使用する基板としては、表面に複数の凸状分析部と各凸状分析部の周囲に凹状の非分析部を形成したものが有用である。特に、その凸状分析部に、分析対象物に対する特異結合物質を担持させたものは、本発明で特異結合分析を利用する場合に有用である。
【0071】
このような基板において、凸状分析部の表面積や、凸状分析部の非分析部からの高さや、隣接する凸状分析部の間隔は、分析対象物の種類等に応じて適宜定めることができるが、例えば、凸状分析部の非分析部からの高さ0.1μm〜1mmとし、隣接する凸状分析部の間隔を2μm〜20mmとすることにより、通常の多項目同時分析や多試料同時分析を、高い分析精度で行うことが可能となる。
【0072】
また、このような凹凸を有する基板は、フォトリソグラフィー法、エッチング法、切削法、蒸着法、貼合わせ法、印刷法などの表面加工法あるいは表面処理法を用いて容易に作製することができる。したがって、本発明の方法によれば、それを実施する装置も容易に製造できるようになる。
【0073】
一方、本発明の方法を実施するにあたり、基板上の分析部等の所定の領域に分析試薬を担持させる場合には、分析精度を向上させるため、所定の領域に正確な量を担持させることが好ましいが、従来の微量分析装置に比して担持量や位置精度に許容範囲をもたせることができる。即ち、分析試薬成分の担持時の反応液が所定領域をはみ出しても、前述のように基板上の分析部上の分析対象物に由来する信号強度は、その周辺部からの信号強度に比して強いので、分析試薬成分の担持量や担持位置の測定精度への影響を小さくできる。したがって、本発明の方法を実施する分析装置は、精密なマイクロセンサとして製造することが可能となる。
【0074】
また、本発明の方法によれば、従来例のように分析試薬成分を基板全体に反応させて、基板上の特定領域(結合官能基を導入した領域など)に分析試薬成分を担持させる方法を採用する必要がなくなる。したがって、マイクロキャピラリーで凸状分析部に分析試薬成分を点着して担持させることが可能となり、それゆえに、分析試薬の無駄を抑制することができる。また、マイクロキャピラリーを用いて分析試薬成分を点着させる場合には、プローブ電極を用いて信号を検出する場合と同様に、マイクロキャピラリーを、基板上を走査させることでき、これにより効率的に点着作業を行えるようになるので好ましい。
【0075】
さらに、マイクロキャピラリーによる点着方式は、多項目同時分析や多試料同時分析のための微小な分析部の形成を可能にするため、本発明によれば多項目同時分析や多試料同時分析も容易に行えるようになる。即ち、多項目同時分析や多試料同時分析を行うためには、基板上の微量な領域に、複数の異なる分析試薬を担持させた分析部を形成したり、多試料あるいは標準試料(濃度既知の試料、陽性試料、陰性試料、対照試料等)を点着させるための複数の分析部を形成することが必要となるが、本発明によればこのような分析部の形成をマイクロキャピラリーを用いて容易に行うことが可能となる。また、点着する内容に応じて、使用するマイクロキャピラリーを交換する、あるいは複数のマイクロキャピラリーを用いて点着する等の操作も容易となる。
【0076】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0077】
実施例1:特異結合基板を用いたhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)及びhPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)の多項目同時特異結合分析
【0078】
(1) 溶液の調製
10%HF溶液は、46%フッ化水素酸(森田化学工業社製)を蒸留水で希釈して調製した。オクタデシルトリクロロシラン(関東化学社製)は、ベンゼン(和光純薬工業社製)で希釈して10mM濃度に調製した。
【0079】
フェロセニルメタノ−ル(FMA)は、フェロセニルアルデヒド(アルドリッチ社)を還元して合成した。すなわち、フェロセニルアルデヒド(アルドリッチ社)のエタノール溶液20mLと、0.1gNaOH、1.0gNaBH4 を含有するエタノール溶液30mLとを混合し、1日間還流した。その後、50mLのクロロホルムで抽出し、溶媒のクロロホルムをエバポレートして粗FMAを得、これをn−ヘキサンで3回再結晶させて精製した。
【0080】
マウス単クローン性抗ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)抗体、および、マウス単クローン性抗ヒト胎盤性ラクトゲン(hPL)抗体は、持田製薬株式会社製を用いた。抗体溶液は、いずれも0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して調製した。
【0081】
(2) 凸状分析部を有する分析用基板の作製
図4(同図(a)上面図、同図(b)断面図)に示すように、方形(50μm×50μm)の凸状分析部1aを2カ所に内包する長方形(150μm×300μm)の凹状非分析部1b、及び、その位置決めのための凹状位置決め部7を有する分析用基板10を次のように作製した。
【0082】
まず、レジスト(OFPR−5000、東京応化社製)をスライドガラス基板(長さ76mm×幅26mm×厚さ0.8〜1.0mm、松浪社製)上にスピンコートした。次いで、オーブン中で60℃30分間プリベークし、その上に予め作製したマスクパターンを密着させ、Hgランプ(500W)で3秒間光照射した。現像液に30秒間浸漬した後、よく水洗することによりレジストマスクがパターニングされたガラス基板を得た。次のこの基板を10%HF溶液に5分間浸すことによってマスクされていない露出ガラス部分を深さ2μmエッチングした。このエッチングにより、深さ2μmの凹状非分析部1bと凹状位置決め部7を形成すると共に、凹状非分析部1b内に凸状分析部1aを残存させた。次に、この基板を蒸留水で洗浄後、メタノールで洗浄してレジストを除去し、再度蒸留水で洗浄して乾燥し、凸状分析部1aを有する分析用基板10を得た。
【0083】
(3) 分析用基板の走査型電気化学顕微鏡(SECM)による観察
基板10に形成した凸状分析部1aのパターンを確認すると共に、後述するようにこの基板10で行う特異結合反応の位置決めのために、走査型電気化学顕微鏡(SECM)で基板10の観察を行った。
【0084】
この場合、走査型電気化学顕微鏡の観察系の構成は、図5に示すように二電極法とし、探針20として、微小プローブ電極(白金電極部の直径5μm,ガラス絶縁部を含むプローブ全体の直径60μm)を使用し、対極21として、飽和塩化カリウム中に浸されたAg/AgC1からなる電極を使用した。
【0085】
ここで、微小プローブ電極は、次のように作製したものを用いた。即ち、直径15μmの白金線をHaNO3 飽和溶液中でエッチングして白金フィラメントを得、これを軟ガラスキャピラリーに挿入し、真空中320℃に加熱封入してガラスコートした。その先端をターンテーブル(成茂科学器械研究所、モデルEG−6)で研磨し、さらに0.05μmアルミナ粒子で研磨することにより、円形断面を有する微小ブローブ電極(白金電極部直径5μm,ガラス絶縁部を含むプローブ全体の直径60μm)を得た。
【0086】
図5の走査型電気化学顕微鏡による観察方法としては、SECMステ−ジ22上に上記(2) で作製した凸状分折部1を有する基板10を載置し、その凸状分折部1a側表面に以下の組成のSECM測定溶液23を滴下することにより、この凸状分折部1a側表面をSECM測定溶液に浸した。
【0087】
[SECM測定溶液組成]
1.0mM フェロセニルメタノール(FMA)
0.1M 塩化カリウム
0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)
そして、微小プローブ電極20に+400mV vs.Ag/AgC1の電位を印加し、微小プローブ電極と基板10との距離dを7μmに保持し、9.8μm/秒の走査速度でSECM観察を行った。
【0088】
なお、微小プローブ電極の走査は、サーボモーター駆動のXYZ自動ステ−ジ(以下、モーター駆動アクチュエータと称する)上で行った。自動ステ−ジのサーボモーターを制御するサーボモーターコントローラー(中央精機株式会社製、M9103)は、GPIBバス接続を通じてコンピュータからプログラム制御した。電流は、電流増幅器24(Keithley社製、モデル427)で増幅し、デジタル変換してコンピュータ25に取り込み計測した。
【0089】
観察されたSECM像、即ち、SECM測定溶液中のFMAの酸化電流の二次元プロファイルを図6に示した。このSECM像は、ドットの濃淡で観測された電流を表現しており、ドットの濃い領域が、観測された電流の大きい部分である。この基板10では分析部1aが凸状に突き出しているため、その上を電極が走査するときに電極と分析部との間の距離が狭くなり、FMAの電極への供給が妨げられるので、図示したようにこの部分の電流が小さくなっている。したがって、この図6のSECM像から、基板10には所期の凸状分析部1aと凹状非分析部1bとが形成されていることが確認でき、さらに走査の位置決めをすることができた。
【0090】
(4) 特異結合基板の作製
凸状分折部1を有する分析用基板10を用いて、特異結合分析に使用する特異結合基板を次のように作製した。まず、基板10をオクタデシルトリクロロシランのベンゼン溶液中に1日間浸漬して疎水化処理した。乾燥後、モーター駆動アクチュエータ装置に接続されたガラスキャピラリーにより基板10上の2つの凸状分析部1aのそれぞれに、760μg/mLの抗hCG抗体溶液、あるいは、540μg/mLの抗hPL抗体溶液を約17pLずつ点着した。基板は一晩静置して乾燥後、0.1%Tween20(関東化学社製)水溶液で洗浄後、さらに蒸留水で洗浄した。次に、基板10を10mg/mLウシ血清アルブミン(和光純薬工業社製)水溶液に2時間浸漬してブロッキングを行った後、蒸留水で洗浄した。このようにして凸状分折部1に抗hCG抗体8又は抗hPL抗体9を不溶化した基板10を特異結合基板10aとし、後述する特異結合分析に用いた。この特異結合基板10aの断面模式図を図7に示す。
【0091】
なお、特異結合基板10aを保存する場合、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に浸漬して冷蔵保存した。
【0092】
(5) 特異結合基板を用いたhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)およびhPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)の多項目同時特異結合分析
【0093】
(5-1) 溶液の調製
西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識マウス単クローン性抗hCG抗体、HRP標識マウス単クローン性抗hPL抗体は、持田製薬株式会社製を用いた。また、hCG試料液とhPL試料液は、それぞれ0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して調製した。
【0094】
(5-2) 特異結合反応
上記(4) で作製した特異結合基板10aに、20IU/mL濃度のhCG試料液あるいは1.0μg/mL濃度のhPL試料液を5μLずつ点着することにより、特異結合基板10aの凸状分析部1aおよび凹状非分析部1bを上記(5-1) の試料液中に浸漬した。蒸留水で洗浄後、20μg/mLのHRP標識杭hCG抗体および7μg/mLのHRP標識杭hPL抗体を含有する標識杭体溶液に20分間浸漬し、その後、蒸留水で洗浄した。
【0095】
(6) 特異結合基板の走査型電気化学顕微鏡(SECM)測定
走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いて、上記(5-2) の特異結合反応をさせた後の特異結合基板10aの観察を行った。この観察は、上記(3) の分析用基板10の走査型電気化学顕微鏡による観察と略同様に行ったが、SECM測定溶液としては、HRP酵素基質であるH2 O2 を添加した下記の組成の溶液を使用し、プローブ電極に印加する電位は+50mV vs.Ag/AgCIに変更した以外は、上記(3) の方法と同様とした。
【0096】
[SECM測定溶液組成]
1.0mM フェロセニルメタノール(FMA)
0.5mM H2O2
0.1M 塩化カリウム
0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)
【0097】
上記(5-1) の試料液として、hPL試料液を用いて特異結合分析を行った場合のSECM像を図8(a)に、また、hCG試料液を用いて特異結合分析を行った場合のSECM像を図9(a)に示した。さらに、図8(a)及び図9(a)のそれぞれのx−x線の切片での電流プロファイルを図8(b)と図9(b)に示した。
【0098】
この結果、抗hCG抗体を不溶化した凸状分析部1aではhCG試料液の場合にのみ標識酵素HRPに起因する酵素触媒還元電流が観測され、逆に、抗hPL抗体を不溶化した凸状分析部ではhPL試料液の場合にのみ標識酵素HRPに起因する酵素触媒還元電流が観測された。したがって、特異結合基板10aにおいて、凹状非分析部1bの微小領域内で、凸状分析部に抗hCG抗体8を不溶化した部分と抗hPL抗体9を不溶化した部分とで交差反応がおきていないことがわかる。
【0099】
また、hPL試料液とhCG試料液について、それぞれhPL又はhCG濃度を変える以外は同様に特異結合分析を行い、hPL濃度又はhCG濃度の凸状分析部での電流との関係を求めた。これらの結果を図10及び図11に示す。これにより、試料液中の抗原濃度に対応した電流値が得られることがわかる。したがって、本発明の特異結合基板を用いると、試料中の分析対象物を高精度に定量分析できることがわかる。
【0100】
実施例2:特異結合基板を用いたCEA(ヒト癌胎児性抗原)およびAFP(ヒトαフェトプロテイン)の多項目同時特異結合分析
(1) 溶液の調製
マウス単クローン性抗ヒト癌胎児性抗原(CEA)抗体、マウス単クローン性抗ヒトαフェトプロテイン(AFP)抗体、HRP標識マウス単クローン性抗CEA抗体、HRP標識マウス単クローン性抗AFP抗体は、持田製薬株式会社製を用いた。
【0101】
CEA試料液とAFP試料液は、いずれも0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して調製した。
【0102】
(2) 特異結合基板の作製
実施例1(2) で作製した凸状分析部を有する分析用基板を用いて特異結合基板を次のように作製した。まず、凸状分析部を有する分析用基板をn−オクタデジルトリクロロシランのベンゼン溶液中に1日間浸漬して疎水化処理した。乾燥後、モーター駆動アクチュエータ装置に接続されたガラスキャピラリーにより基板上の2つの方形の凸状分析部のそれぞれに、635μg/mLの抗AFP抗体溶液、あるいは、512μg/mLの抗CEA抗体溶液を20pLずつ点着した。基板は一晩静置して乾燥後、0.1%Tween20(関東化学社製)水溶液で洗浄後、さらに蒸留水で洗浄した。次に、基板を10mg/mLウシ血清アルブミン(和光純薬工業社製)水溶液に2時間浸漬してブロッキングを行った後、蒸留水で洗浄した。この凸状分析部に抗AFP抗体あるいは抗CEA抗体を不溶化した基板を特異結合基板として、後述する特異結合分析に用いた。
【0103】
特異結合基板を保存する場合は、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に浸漬して冷蔵保存した。
【0104】
(3) 特異結合反応
上記(2) で、作製した特異結合基板に50μg/mL濃度のAFP試料液あるいは2×10-9、2×10-8、2×10-7、2×10-6、2×10-5、2×10-4g/mL濃度のCEA試料液を10μLずつ点着し、特異結合基板の凸状分析部および凹状非分析部を試料液中に1時間浸漬した。蒸留水で洗浄後、3.5μg/mLのHRP標識抗AFP抗体および51μg/mLのHRP標識抗CEA抗体を含有する標識抗体溶液に20分間浸漬し、蒸留水で洗浄した。
【0105】
(4) 特異結合基板の走査型電気化学顕微鏡(SECM)測定
実施例1と同一の走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いて、上記(3) で特異結合反応させた特異結合基板の観察を行った。この場合、SECM測定溶液としては、HRP酵素基質であるH2O2 を添加した下記の組成の溶液を使用し、プローブ電極に印加する電位は+50mV vs.Ag/AgCIに変更した以外は、実施例1(3) の方法と同様とした。
【0106】
[SECM測定溶液組成]
1.0mM フェロセニルメタノール(FMA)
0.5mM H2O2
0.1M 塩化カリウム
0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)
【0107】
上記(3) の試料液としてAFP試料液を用いて特異結合分析を行った場合のSECM像を図12に示した。また、各種濃度のCEA試料液を用いて特異結合分析を行った場合の還元電流と試料液中のCEA濃度の関係を、図13に示した。
【0108】
この結果から、抗AFP抗体を不溶化した凸状分析部ではAFP試料液の場合にのみ標識酵素HRPに起因する酵素触媒還元電流が観測されたことがわかる(図12)。また、試料液中のCEA濃度に対応した還元電流強度変化が得られた(図13)。したがって、本発明の特異結合基板を用いると、試料中の分析対象物を高精度に定量分析できることが確認できた。
【0109】
比較例1:凸状分析部を有さない特異結合基板を用いたCEA(ヒト癌胎児性抗原)特異結合分析
(1) 溶液の調製
抗体およびHRP標識抗体は、実施例2と同様のものを用いた。
【0110】
CEA試料液は、それぞれ0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して調製した。
【0111】
(2) 凸状分析部を有さない基板の作製
スライドガラス基板を10mM濃度のn−オクタデシルトリクロロシランのベンゼン溶液中に8時間浸漬して疎水化処理した。次いで、500μg/mL濃度の単クローン性抗CEA抗体を含有する0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に2時間浸漬して、スライドガラス表面全体に抗体を不溶化した。蒸留水で洗浄し乾燥して、凸状分析部を有さない分析用基板を作製した。そしてこの基板の表面全体に抗体を不溶化し、比較例の特異結合基板とした。
【0112】
(3) 特異結合反応
モーター駆動アクチュエータ装置に接続したガラスキャピラリーにより、上記(2) で作製した特異結合基板上に100μmの間隔で,2×10-7、2×10-6、5×10-6、1×10-5g/mL濃度のCEA試料液を点着した。その点着スポットのサイズは光学顕微鏡下の観察でほぼ均一(半径約20μm、スポット液量約17pL)であることを確認した。試料液を点着した基板は一晩静置して乾燥後、蒸留水で洗浄した。洗浄後、15μg/mLのHRP標識抗CEA抗体を含有する標識抗体溶液に20分間浸漬し、蒸留水で洗浄した。
【0113】
(4) 特異結合基板の走査型電気化学顕微鏡(SECM)測定
実施例1と同一の走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いて、上記(3) で特異結合反応させた特異結合基板の観察を行った。この場合、SECM測定溶液としては、HRP酵素基質であるH2O2 を添加した下記の組成の溶液を使用し、プロープ電極に印加する電位は+50mV vs.Ag/AgCIに変更した以外は、実施例1(3) の方法と同様とした。
【0114】
[SECM測定溶液組成]
1.0mM フェロセニルメタノール(FMA)
0.5mM H2O2
0.1M 塩化カリウム
0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)
【0115】
試料液として、各種濃度のCEA試料液を用いて特異結合分析を行った場合のSECM像を図14に示した。さらに、SECMにおける還元電流と試料液中のCEA濃度との関係を図15に示した。
【0116】
この結果、試料液が点着された部分でのみ、標識酵素HRPに起因するSECM像が観測された(図14)。さらに、試料液中のCEA濃度に対応した還元電流強度変化が得られた(図15)。しかし、図14に示したように、各CEA濃度のSECM像の径が異なり、また各像が完全には分離されていなかった。これは、比較例では、検出部である微小プローブ電極が同一平面上の全ての標識酵素活性を検出してしまうため、分析部の位置及び境界が不鮮明となり、キャピラリーでの試料点着部の面積の誤差の影響などが現れるためと考えられる。したがって、比較例の基板では分析精度を高められないことがわかる。
【0117】
以上により、凸状分析部を有する実施例の特異結合基板を用いると、凸状分析部をもたない比較例の特異結合基板に比して、より精度の高い分析を容易に行えること、特に隣接する凸状分析部で異なる抗体を同時に分析する多項目同時分析を高精度で行えることがわかる。また、実施例の特異結合基板は、基板上の微小領域に微量の抗体を不溶化させることにより作製できるので、分析に使用する抗体量を減少させられることがわかる。
【0118】
【発明の効果】
本発明の分析方法によれば、基板の分析部上で分析対象物と、その分析対象物に直接的又は間接的に反応する反応物質とを反応させ、この反応に由来して発生する信号を検出することにより分析対象物の定性又は定量分析を行うに当たり、分析部上に担持されている物質に由来する信号が、非分析部に担持されている物質に由来する信号に比して強く検出されるので、試料中の分析対象物の高精度な分析が可能となる。
【0119】
また、簡素な装置構成で精密分析を行うことが可能となり、さらに微量の試料で多試料同時分析あるいは多項目同時分析を行うことも可能なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分析方法の一態様の説明図である。
【図2】本発明の分析方法の他の態様の説明図である。
【図3】本発明の分析方法の他の態様の説明図である。
【図4】実施例で使用した基板の上面図(同図(a))及び断面図(同図(b))である。
【図5】実施例の分析方法の説明図である。
【図6】基板のSECM像を表した図である。
【図7】実施例で使用した特異結合基板の断面図である。
【図8】特異結合基板を用いてhPL試料液を分析した場合のSECM像を表した図(同図(a))及びその電流プロファイル(同図(b))である。
【図9】特異結合基板を用いてhCG試料液を分析した場合のSECM像を表した図(同図(a))及びその電流プロファイル(同図(b))である。
【図10】特異結合基板を用いてhPL試料液を分析した場合の試料液中のhPL濃度と還元電流値との関係図である。
【図11】特異結合基板を用いてhCG試料液を分析した場合の試料液中のhCG濃度と還元電流値との関係図である。
【図12】特異結合基板を用いてAFP試料液を分析した場合のSECM像を表した図である。
【図13】CEA濃度とSECM還元電流との関係図である。
【図14】平坦な基板を用いた比較例のSECM像を表した図である。
【図15】平坦な基板を用いた比較例におけるCEA濃度とSECM還元電流との関係図である。
【符号の説明】
1 基板
1a 分析部
1b 非分析部
2 信号検出電極部
3 分析対象物
4x 信号発生関与部(対向部)
4y 信号検出電極部(対向部)
4z 対向部
6 分析試薬成分
8 抗hCG抗体
9 抗hPL抗体
10 分析用基板
10a 特異結合基板
Claims (16)
- 基板の分析部上で、分析対象物と、該分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質とを反応させ、この反応に由来して発生する光、電流及び電位から選ばれる信号を検出する分析方法であって、少なくとも信号検出段階において、基板に対向する位置としての対向部に、前記信号の発生に関与する信号発生関与部及び前記信号の検出器の少なくとも一方を設け、基板の分析部と対向部との距離が、基板の非分析部と対向部との距離に比して短くなるように、基板及び対向部の少なくとも一方に凹凸を形成し、基板の分析部上での前記反応に由来する信号が基板の非分析部上での反応に由来する信号に比して強い信号強度で検出されるようにしたことを特徴とする分析方法。
- 反応に由来して発生する信号が電流又は電位であり、検出器がプローブ電極であり、分析方法が走査型電気化学顕微鏡を用いる分析方法である請求項1記載の分析方法。
- 基板の分析部上に、分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質を担持させ、分析対象物の定量又は定性分析を行う試料を基板の分析部上に導入し、前記反応物質と反応させる請求項1又は2記載の分析方法。
- 分析対象物と直接的又は間接的に反応する反応物質が、特異結合物質である請求項1〜3のいずれかに記載の分析方法。
- 対向部が、検出器と、前記信号の発生に関与する信号発生関与物質の供給を制御する信号発生関与部とからなる請求項1〜4のいずれかに記載の分析方法。
- 対向部が、検出器と、前記信号の発生に関与するエネルギーの供給を制御する信号発生関与部とからなる請求項1〜4のいずれかに記載の分析方法。
- 信号発生関与部が、該信号発生関与部の表面近傍に光エネルギーを供給する請求項6記載の分析方法。
- 信号発生関与部が、該信号発生関与部の表面近傍に熱エネルギーを供給する請求項6記載の分析方法。
- 検出器が光検出器からなり、光検出器が前記反応に由来して発生する蛍光、化学発光又は生物発光を検出する請求項1、3〜7のいずれかに記載の分析方法。
- 検出器が電極板又はプローブ電極からなり、電極板又はプローブ電極が前記反応に由来して発生する電流又は電位を検出する請求項1、3〜7のいずれかに記載の分析方法。
- プローブ電極を、基板表面に走査させて信号を検出する請求項10記載の分析方法。
- 基板の分析部上への反応物質の担持操作、分析対象物の定量又は定性分析を行う試料の導入操作、前記反応に関与する物質の導入操作、基板上の洗浄操作及び基板上に結合していない物質の除去操作の少なくとも1つを、基板表面上を走査する分注手段又は吸引手段によって行う請求項1〜11のいずれかに記載の分析方法。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の分析方法に使用する基板であって、表面に複数の凸状分析部が形成され、凸状分析部の周囲に凹状領域が非分析部として形成されていることを特徴とする分析用基板。
- 凸状分析部に、特異結合物質が担持されている請求項13記載の分析用基板。
- 凸状分析部に酸化還元酵素が担持されている請求項13又は14に記載の分析用基板。
- 各凸状分析部の非分析部からの高さが0.1μm〜1mmであり、隣接する凸状分析部の間隔が2μm〜20mmである請求項13〜15のいずれかに記載の分析用基板。
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