JP3766601B2 - フローセンサ及び流量計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フローセンサ及び該フローセンサを用いる流量計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9及び図10は、それぞれ、出願人が先に提案した(特願2000−94437号参照)フローセンサの構成を説明する略図及び構成図である。このフローセンサは、ガスの流量及び種類を検知可能なセンサとして流量計測装置に用いることができるマイクロフローセンサである。
【0003】
図9において、マイクロフローセンサ1´は、図中断面で示すガス流路10の内壁に配設される。マイクロフローセンサ1´は、Si基板2上に形成された、マイクロヒータ4´と、マイクロヒータ4´の下流側に形成され、下流側温度センサとして働く下流側サーモパイル5´と、マイクロヒータ4´の上流側に形成され、上流側温度センサとして働く上流側サーモパイル8´と、マイクロヒータ4´の両側にガスの流れ方向(X方向)と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出して温度検出信号を出力する、横側温度センサとして働く右側及び左側サーモパイル11´,13´とを備えている。
【0004】
図10において、マイクロフローセンサ1´は、Si基板2、ダイアフラム3、ダイアフラム3上に形成された白金等からなるマイクロヒータ4´、マイクロヒータ4´の下流側でダイアフラム3上に形成された下流側サーモパイル5´、マイクロヒータ4´に図示しない電源から駆動電流を供給する電源端子6´A,6´B、マイクロヒータ4´の上流側でダイアフラム3上に形成された上流側サーモパイル8´、上流側サーモパイル8´から出力される第1温度検出信号を出力する第1出力端子9´A,9´B、下流側サーモパイル5´から出力される第2温度検出信号を出力する第2出力端子7´A,7´B、を備える。
【0005】
また、マイクロフローセンサ1´は、マイクロヒータ4´に対してガスの流れ方向(図10における矢印Pから矢印Qへの方向)と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出し、右側温度検出信号(第3温度検出信号に対応)を出力する右側サーモパイル11´と、この右側サーモパイル11´から出力される右側温度検出信号を出力する第3出力端子12´A,12´Bと、マイクロヒータ4´に対してガスの流れ方向と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出し、左側温度検出信号(第3温度検出信号に対応)を出力する左側サーモパイル13´と、この左側サーモパイル13´から出力される左側温度検出信号を出力する第4出力端子14´A,14´Bと、ガス温度を得るための抵抗15,16と、この抵抗15,16からのガス温度信号を出力する出力端子17A,17Bとを備える。
【0006】
上流側サーモパイル8´、下流側サーモパイル5´、右側サーモパイル11´及び左側サーモパイル13´は、熱電対から構成されている。この熱電対は、p++−Si及びAlにより構成され、冷接点と温接点とを有し、熱を検出し、冷接点と温接点との温度差から熱起電力が発生することにより、温度検出信号を出力するようになっている。
【0007】
そして、下流側サーモパイル5´及び上流側サーモパイル8´は、ガスの流速の検知に役立ち、右側サーモパイル11´及び左側サーモパイル13´は、ガス種の検知に役立つ。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のマイクロフローセンサ1´では、マイクロヒータ4´は、ガスの流れ方向に垂直な方向に細長く、すなわち、ガスの流れ方向に垂直な外形寸法D2 がガスの流れ方向に平行な外形寸法D1 より大きくなるように形成されている。そして、マイクロヒータ4´の外形寸法D2 に対応して接点数の多い下流側サーモパイル5´及び上流側サーモパイル8´でガスの流速したがってガス流量を検知し、マイクロヒータ4´の外形寸法D1 に対応して、下流側サーモパイル5´及び上流側サーモパイル8´の接点数より少ない接点数を有する右側サーモパイル11´及び左側サーモパイル13´でガス種を検知している。
【0009】
このように、従来のフローセンサでは、流量検出のセンサ出力を優先してサーモパイルの接点数を多くとるため、マイクロヒータ4´の寸法をガスの流れ方向に垂直な方向に細長くなるように設計している。このため、ガス種を検知するための下流側サーモパイル5´及び上流側サーモパイル8´の接点数が多くとれず、ガス種の検知感度が悪い。
【0010】
一方、マイクロヒータ4´の寸法をガスの流れ方向に垂直な方向に細長くしているので、ガスがマイクロヒータ4´上を通過する時間が短く、ガスの流速が速くなった時、すなわち大流量時には、マイクロヒータ4´の熱がガスに充分には伝わらなくなる。このため、マイクロヒータ4´で検知できる流速範囲が制限され、したがって、マイクロフローセンサ1´を用いた流量計測装置においても、測定できる流量範囲が制限される。
【0011】
上述のフローセンサおよびこのフローセンサを用いる流量計測装置では、高流速すなわち高流量を測定できるようにするためには、たとえば、ガス流路10の断面積を大きくしたり、マイクロヒータ4´の駆動方法を工夫したりする必要がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上述の課題に鑑みて、広範囲にわたる流速検知が可能なフローセンサと該フローセンサを用いて広範囲にわたる流量計測が可能な流量計測装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記した目的に鑑みて、請求項1記載の発明のフローセンサは、
ガス流路を流れるガスを加熱するヒータと、上記ヒータに対してガスの上流側に配置され、ガスの温度を検出して第1温度検出信号を出力する上流側温度センサと、上記ヒータに対してガスの下流側に配置され、ガスの温度を検出して第2温度検出信号を出力する下流側温度センサと、上記ヒータ、上記上流側温度センサ及び上記下流側温度センサを支持する支持基板とを有するフローセンサであって、
上記ヒータは、上記ガスの流れ方向に平行な寸法が上記ガスの流れ方向に垂直な寸法より大きくなるように形成されている
ことを特徴とする。
【0014】
請求項1記載の発明のフローセンサによれば、ガス流路を流れるガスを加熱するヒータと、ヒータに対してガスの上流側に配置され、ガスの温度を検出して第1温度検出信号を出力する上流側温度センサと、ヒータに対してガスの下流側に配置され、ガスの温度を検出して第2温度検出信号を出力する下流側温度センサと、ヒータ、上流側温度センサ及び下流側温度センサを支持する支持基板とを有する。ヒータは、ガスの流れ方向に平行な寸法がガスの流れ方向に垂直な寸法より大きくなるように形成されている。それにより、ガスがヒータ上を通過する時間が長くなり、流速が速くなってもヒータの熱が十分にガスに伝わるため、測定できる流速範囲が広くなる。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のフローセンサにおいて、
前記ヒータに対してガスの流れ方向と略直交方向に配置され、ガスの温度を検出して第3温度検出信号を出力する横側温度センサを含む
ことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、フローセンサは、ヒータに対してガスの流れ方向と略直交方向に配置され、ガスの温度を検出して第3温度検出信号を出力する横側温度センサを含む。それにより、ガスの流速及びガス種を検知する検知することができる。
【0017】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載のフローセンサにおいて、
前記ガスの流れ方向と略直交方向における前記ヒータの両側に前記横側温度センサを各々配置した
ことを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、フローセンサは、ガスの流れ方向と略直交方向におけるヒータの両側に横側温度センサを各々配置している。それにより、ガスの流れにばらつきがあっても、両横側温度センサからの温度検出信号に基づき、ガスの物性値を正確に算出することができる。
【0019】
また、請求項4記載の発明の流量計測装置は、
請求項1乃至3のいずれか1項記載のフローセンサを用いて、前記ガス流路を流れるガスの流量を計測する流量計測装置であって、
前記フローセンサの前記上流側温度センサからの前記第1温度検出信号と前記下流側温度センサからの前記第2温度検出信号との差信号に基づきガスの流量を算出する流量算出手段
を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1項記載のフローセンサの上流側温度センサからの第1温度検出信号と下流側温度センサからの第2温度検出信号との差信号に基づきガスの流量を算出する流量算出手段を備えている。それにより、広範囲にわたるガスの流量を計測することができる。
【0021】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の流量計測装置において、
前記フローセンサの前記横側温度センサからの前記第3温度検出信号に基づきガスの物性値を算出する流体物性値算出手段と、
前記流体物性値算出手段で算出されたガスの物性値に基づき前記流量算出手段で算出されたガスの流量を補正する流量補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、流量計測装置は、フローセンサの横側温度センサからの第3温度検出信号に基づきガスの物性値を算出する流体物性値算出手段と、流体物性値算出手段で算出されたガスの物性値に基づき流量算出手段で算出されたガスの流量を補正する流量補正手段とを備えている。それにより、ガスの種類や組成が変化した場合であっても、精度の良い流量計測が行える。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図8を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明によるフローセンサの実施の形態を示す略図である。図1において、マイクロフローセンサ1は、図中断面で示すガス流路10の内壁に配設される。マイクロフローセンサ1は、Si基板2上に形成された、マイクロヒータ4と、マイクロヒータ4の下流側に形成され、下流側温度センサとして働く下流側サーモパイル11と、マイクロヒータ4の上流側に形成され、上流側温度センサとして働く上流側サーモパイル13と、マイクロヒータ4の両側にガスの流れ方向(X方向)と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出して温度検出信号を出力する、横側温度センサとして働く右側及び左側サーモパイル5,8とを備えている。
【0025】
図2は、図1のマイクロフローセンサ1の構成図を示す。図2において、マイクロフローセンサ1は、Si基板2、ダイアフラム3、ダイアフラム3上に形成された白金等からなるマイクロヒータ4、マイクロヒータ4の下流側でダイアフラム3上に形成された下流側サーモパイル11、マイクロヒータ4に図示しない電源から駆動電流を供給する電源端子6A,6B、マイクロヒータ4の上流側でダイアフラム3上に形成された上流側サーモパイル13、上流側サーモパイル13から出力される第1温度検出信号を出力する第1出力端子14A,14B、下流側サーモパイル11から出力される第2温度検出信号を出力する第2出力端子12A,12B、を備える。
【0026】
また、マイクロフローセンサ1は、マイクロヒータ4に対してガスの流れ方向(図2における矢印Pから矢印Qへの方向)と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出し、右側温度検出信号(第3温度検出信号に対応)を出力する右側サーモパイル8と、この右側サーモパイル8から出力される右側温度検出信号を出力する第3出力端子9A,9Bと、マイクロヒータ4に対してガスの流れ方向と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出し、左側温度検出信号(第3温度検出信号に対応)を出力する左側サーモパイル5と、この左側サーモパイル5から出力される左側温度検出信号を出力する第4出力端子7A,7Bと、ガス温度を得るための抵抗15,16と、この抵抗15,16からのガス温度信号を出力する出力端子17A,17Bとを備える。
【0027】
上流側サーモパイル13、下流側サーモパイル11、右側サーモパイル8及び左側サーモパイル5は、熱電対から構成されている。この熱電対は、p++−Si及びAlにより構成され、冷接点と温接点とを有し、熱を検出し、冷接点と温接点との温度差から熱起電力が発生することにより、温度検出信号を出力するようになっている。
【0028】
また、図3に示すように、Si基板2には、ダイアフラム3が形成されており、このダイアフラム3には、マイクロヒータ4、上流側サーモパイル13、下流側サーモパイル11、右側サーモパイル8及び左側サーモパイル5のそれぞれの温接点が形成されている。
【0029】
マイクロヒータ4は、ガスの流れ方向に平行な方向に細長く、すなわち、ガスの流れ方向に平行な外形寸法D1 がガスの流れ方向に垂直な外形寸法D2 より大きくなるように形成されている。そして、マイクロヒータ4の外形寸法D2 に対応して、下流側サーモパイル11及び上流側サーモパイル13の接点数は少なく設けられ、マイクロヒータ4の外形寸法D1 に対応して、右側サーモパイル5及び左側サーモパイル8の接点数は、下流側サーモパイル11及び上流側サーモパイル13の接点数より多く設けられている。
【0030】
このように構成されたマイクロフローセンサ1によれば、マイクロヒータ4が、外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ4から発生した熱は、ガスを媒体として、下流側サーモパイル11と上流側サーモパイル13のそれぞれの温接点に伝達される。それぞれのサーモパイルの冷接点は、Si基体(Si基板2)上にあるので、基体温度になっており、それぞれの温接点は、ダイアフラム3上にあるので、伝達された熱により加熱され、Si基体温度より温度が上昇する。そして、それぞれのサーモパイルは、温接点と冷接点の温度差より熱起電カを発生し、温度検出信号を出力する。
【0031】
ガスを媒体として伝達される熱は、ガスの熱拡散効果とPからQに向かって流れるガスの流速との相乗効果によって、それぞれのサーモパイルに伝達される。すなわち、流速がない場合には、熱拡散によって上流側サーモパイル13と下流側サーモパイル11に均等に伝達され、上流側サーモパイル13からの第1温度検出信号と下流側サーモパイル11からの第2温度検出信号の差信号は、零になる。
【0032】
一方、ガスに流速が発生すると、流速によって上流側サーモパイル13の温接点に伝達される熱量が減少し、反対に下流側サーモパイル11の温接点に伝達される熱量が多くなり、したがって、前記第2温度検出信号と前記第1温度検出信号との差信号は流速に応じた正値になる。このとき、マイクロヒータ4の寸法をガスの流れ方向に平行な方向に細長くしているので、ガスがマイクロヒータ4上を通過する時間が長くなり、ガスの流速が速くなっても、マイクロヒータ4の熱がガスに充分に伝わる。このため、マイクロフローセンサ1の測定できる流速範囲が広くなる。
【0033】
一方、マイクロヒータ4が外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ4から発生した熱は、ガスの流速の影響を受けずにガスの熱拡散効果のみによって、マイクロヒータ4に対してガスの流れ方向と略直交方向に配置された右側サーモパイル8に伝達される。また、マイクロヒータ4に対してガスの流れ方向と略直交方向に配置された左側サーモパイル5にも、同様な熱が伝達される。
【0034】
このため、右側サーモパイル8の起電力により第3出力端子9A,9Bから出力される右側温度検出信号、及び/または左側サーモパイル5の起電力により第4出力端子7A,7Bから出力される左側温度検出信号に基づき、熱伝導と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数等のガスの物性値を算出することができるようになる。
【0035】
さらに、左側サーモパイル5及び右側サーモパイル8の接点数は、上流側サーモパイル13及び下流側サーモパイル11の接点数よりも多くなっているので、左側温度検出信号及び右側温度検出信号が大きくなり、ガス種ごとの出力差が大きくなり、ガス種判別の感度が良くなる。
【0036】
さらに、マイクロフローセンサ1によれば、ダイアフラム3上に、マイクロヒータ4、上流側サーモパイル13、下流側サーモパイル11、右側サーモパイル8及び左側サーモパイル5を形成したので、これらの熱容量を小さくして、消費電力を低減することができる。また、マイクロフローセンサ1の構成が簡単であるので、安価に作製することができるという効果がある。
【0037】
次に、前述したマイクロフローセンサ1を用い、ガスの種類や組成が変化した場合であっても、これに関係なく常にガスの流量を精度良く計測することができる流量計測装置について説明する。
【0038】
図4は、図1乃至図3のマイクロフローセンサ1を用いた流量計測装置の構成ブロック図である。この流量計測装置は、マイクロフローセンサ1内の下流側サーモパイル11からの第2温度検出信号と、マイクロフローセンサ1内の上流側サーモパイル13からの第1温度検出信号との差信号を増幅する差動アンプ33と、マイクロフローセンサ1内の右側サーモパイル8からの右側温度検出信号を増幅するアンプ35aと、マイクロフローセンサ1内の左側サーモパイル5からの左側温度検出信号を増幅するアンプ35bと、マイクロコンピュータ40とを備えて構成される。
【0039】
マイクロコンピュータ40は、アンプ35aからの右側温度検出信号とアンプ35bからの左側温度検出信号とを加算する加算部(流体物性値算出手段の一部;流量補正手段の一部)45と、差動アンプ33で得られた第2温度検出信号と第1温度検出信号との差信号を加算部45の出力する加算信号により除する除算部(流量算出手段の一部;流量補正手段の一部)47と、この除算部47の出力する除算信号に基づきガスの流量を算出する流量算出部(流量算出手段)41と、加算部45の出力する加算信号に基づきガスの熱伝導率や比熱、粘性、密度等の物性値を算出する流体物性値算出部(流体物性値算出手段)43とを備えて構成される。
【0040】
次に、図5に示すフローチャートを参照して、図4の流量計測装置により実現される流量計測方法を説明する。
【0041】
まず、外部からのパルス信号による駆動電流によりマイクロヒータ4を加熱すると(ステップS11)、下流側サーモパイル11から第2温度検出信号が出力され、上流側サーモパイル13から第1温度検出信号が出力される(ステップS13)。第2温度検出信号は差動アンプ33に出力され、第1温度検出信号は差動アンプ33に出力される。なお、図6に第1温度検出信号及び第2温度検出信号のパルス信号に対する応答を示した。
【0042】
次に、差動アンプ33は、下流側サーモパイル11からの第2温度検出信号と上流側サーモパイル13からの第1温度検出信号との差信号を増幅する(ステップS15)。
【0043】
そして、加算部45は、アンプ35aからの右側温度検出信号とアンプ35bからの左側温度検出信号とを加算して加算信号を得る(ステップS17)。図7に右側温度検出信号、左側温度検出信号及び加算信号のタイミングチャートを示した。次に、除算部47は、ステップS15で得られた増幅後の差信号をステップS17で得られた加算信号で除して除算信号を得る(ステップS19)。
【0044】
続いて、流量算出部41は、ステップS19で得られた除算信号に基づきガスの正確な流量を算出する(ステップS21)。さらに、流体物性値算出部43は、ステップS17で得られた加算信号とステップS21で算出したガスの正確な流量に基づき、ガスの熱伝導率や比熱、粘性、密度等のガスの物性値を算出する(ステップS23)。
【0045】
このように、ガスの流れ方向に対して直交する方向に配置された右側サーモパイル8及び左側サーモパイル5が、ガスの物性値を検出することにより、ガスの熱伝導性を計測することになる。ガスの流速が零であるときには、ガスにより熱の伝わる速度は、熱伝導率と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数(ガスの物性値の一つ)による。流速が零であるときには、右側サーモパイル8、左側サーモパイル5とマイクロヒータ4との温度差によって熱拡散定数が求められる。この温度差が大きいほど熱拡散定数が小さい。
【0046】
これに対して流量が零でないときには、ガスの流れによって熱は下流に運ばれて、右側サーモパイル8及び左側サーモパイル5に到達する熱量は、それに伴って減少する。即ち、右側サーモパイル8及び左側サーモパイル5の回りの熱拡散が、ガスの流れによって大きくなる。ここで、その熱拡散の増加率はガスの流速の平方根に比例することが一般に知られているため、原理的には、ガスの熱拡散定数は、そのガスの流量が何らかの方法で解りさえすれば、いかなる流量のときでも見積もることができることになる。
【0047】
一方で、上流側サーモパイル13及び下流側サーモパイル11の回りでも、ガスの流れがない状態ででも存在する拡散による熱分布と、マイクロヒータ4で加熱されたガスの流れによって移動する熱分布とがある。したがって、下流側サーモパイル11の回りのガスの温度と上流側サーモパイル13の回りのガスの温度との差は、ガスの流れがない状態からガスの流れが大きくなるにつれて、次第に大きくなるが、ある程度以上ガスの流れが大きくなると、ガスの流れのよる熱分布の移動に起因して、再び小さくなる。
【0048】
このため、本来ならば、ガスの流速の増加に比例して大きくなるはずの、下流側サーモパイル11からの第2温度検出信号と上流側サーモパイル13からの第1温度検出信号との差信号が、ガスの流量があまりに大きくなると、流量が増加しているにも拘わらず減少してしまうこともある。
【0049】
そこで、流量が零であるときの、右側サーモパイル8が出力する右側温度検出信号と左側サーモパイル5が出力する左側温度検出信号との加算値を「1」と考えて、これに対する、流量がある場合の右側温度検出信号と左側温度検出信号との加算値の比を、移動する熱量の変化率を表す係数と見倣し、この係数を、下流側サーモパイル11からの第2温度検出信号と上流側サーモパイル13からの第1温度検出信号との差信号に乗じる操作をする。
【0050】
つまり、第2温度検出信号と第1温度検出信号との差信号を右側温度検出信号と左側温度検出信号との加算値で除することで、熱拡散の変化の影響を排除した流量算出が可能となり、正確で分解能の高い流量を求めることができるようになる。
【0051】
なお、上述した実施形態では、差動アンプ33から得られる下流側サーモパイル11からの第2温度検出信号と上流側サーモパイル13からの第1温度検出信号との増幅後の差信号を、除算部47において、アンプ35aからの右側温度検出信号とアンプ35bからの左側温度検出信号とを加算部45で加算して得られる加算信号により除することで、熱拡散の変化の影響を排除した流量算出を可能としている。
【0052】
そして、上述した実施形態では、除算部47における除算信号の取得を流量算出部41による流量の算出よりも先に行っているが、これは、第2温度検出信号と第1温度検出信号との増幅後の差信号に現れる熱拡散の変化の影響を排除するためには、ガスの物性値を熱伝導率や比熱、粘性、密度といった厳密な精度の値として把握する必要がないためである。
【0053】
即ち、上述した実施形態では、熱拡散の状態を高精度で把握しないと特定できないガスの熱伝導率や比熱、粘性、密度を、物性値として流体物性値算出部43で算出するために、熱拡散の変化の影響を排除したガスの正確な流量を流量算出部41により事前に算出しておいて、これを、流体物性値算出部43による物性値の算出に反映させている。
【0054】
しかし、物性値として流体物性値算出部43で算出するファクタの種類によっては、流体物性値算出部43による物性値の算出を事前に行っておいて、これと、差動アンプ33からの、下流側サーモパイル11からの第2温度検出信号と上流側サーモパイル13からの第1温度検出信号との増幅された差信号とに基づいて、熱拡散の変化の影響を排除したガスの正確な流量を後から算出するようにしてもよい。
【0055】
このように、上述の流量計測装置によれば、小流量から大流量まで広範囲にわたるガスの流量を計測することができる。この場合、ガスの流量を計測するための上流側サーモパイル13及び下流側サーモパイル11の接点数は、左側サーモパイル5及び右側サーモパイル8の接点数よりも少なくなっているので、第1温度検出信号及び第2温度検出信号が、左側温度検出信号及び右側温度検出信号よりも小さくなるが、差動アンプ33の増幅率を調整することにより、第2温度検出信号と第1温度検出信号の差信号のレベルを大きくすることができるので、流量計測の感度を維持することができる。
【0056】
また、上述の流量計測装置によれば、マイクロヒータ4に対してガスの流れ方向と略直交方向に右側サーモパイル11及び左側サーモパイル13を配置し、右側温度検出信号及び左側温度検出信号を出力するように構成したので、ガスの流れ方向の影響を受けずに、右側温度検出信号及び左側温度検出信号に基づき熱拡散定数等のガスの物性値を正確に算出することができ、したがってガスの種類を特定することができる。
【0057】
さらに、左側サーモパイル5及び右側サーモパイル8の接点数は、上流側サーモパイル13及び下流側サーモパイル11の接点数よりも多くなっているので、左側温度検出信号及び右側温度検出信号が大きくなり、ガス種ごとの出力差が大きくなり、ガス種判別の感度が良くなる。
【0058】
そして、算出されたガスの物性値に基づき、流量算出部41で算出されたガスの流量を補正するようにしたので、特別な工夫をせずに、ガスの種類や組成が変化した場合であっても、正確に流量を計測することができる。
【0059】
以上の通り、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0060】
たとえば、上述の実施の形態におけるフローセンサでは、ガスの流速の検知に役立つ下流側サーモパイル11及び上流側サーモパイル13と、ガス種の検知に役立つ左側サーモパイル5及び右側サーモパイル8を備えているが、ガス種の判別を必要としない場合は、左側サーモパイル5及び右側サーモパイル8を除去した構成としても良い。この場合は、マイクロヒータ4を、ガスの流れ方向に平行な寸法を長くしかつガスの流れ方向に垂直な寸法を太くなるように作成し、それに対応して下流側サーモパイル11及び上流側サーモパイル13を多くすれば、低流速域の感度も良くかつ高流速域まで検知可能なフローセンサを得ることができる。
【0061】
また、ガス種の判別をする、しないに関わらず、測定した流速(流量)範囲に合わせて、マイクロヒータ4の寸法D1 ,D2 (ただし、D1 >D2 )を設定することができる。
【0062】
さらに、図2に示した本発明のフローセンサを、90度回転させてガス流路10に取り付け、左側サーモパイル5及び右側サーモパイル8のいずれか一方を上流側サーモパイルとして使用しかつ他方を下流側サーモパイルとしてガス流速の検知に使用し、上流側サーモパイル13及び下流側サーモパイル11をガス種の検知に使用しても良い。図1及び図2に示したフローセンサに対して、流速検知感度は良くなるが検知できる流速範囲が狭くなり、ガス種検知感度は悪くなる。
【0063】
一例として、図2の本発明のフローセンサにおける上流側サーモパイル13及び下流側サーモパイル11の接点数を23個、左側サーモパイル5及び右側サーモパイル8の接点数を9個とした場合、図1に示す取り付け時と、上述の90度回転取り付け時におけるセンサ出力(流量計測装置の差動アンプ33の差信号出力)特性を比較すると(図8参照)、マイクロヒータ4を定電圧(たとえば、1.5V)で駆動させたとき、90度回転取り付けした場合の特性曲線Bでは、ガス圧4kgf/m2 で流速L1 (=10m/sec)でマイクロヒータ4の加熱が追いつかなくなり、センサ出力が減少し始めるのに対し、図1に示す取り付けによる特性曲線Aでは、流速L1 より大きい流速L2 (=20m/sec)でもセンサ出力が減少しておらず、広範囲の流速に対応できている。特性Aのセンサ出力は、サーモパイルの接点数が少ないため、特性Bのセンサ出力よりも小さくなるが、たとえば、接点数の比(たとえば、23:9)で差動アンプ33の増幅率を補正するように構成すれば、特性Aは補正後特性Cとして表され、充分大きなセンサ出力を得ることができる。
【0064】
【発明の効果】
請求項1記載の発明のフローセンサによれば、ガスがヒータ上を通過する時間が長くなり、流速が速くなってもヒータの熱が十分にガスに伝わるため、測定できる流速範囲が広くなる。
【0065】
請求項2記載の発明のフローセンサによれば、ガスの流速及びガス種を検知する検知することができる。
【0066】
請求項3記載の発明のフローセンサによれば、ガスの流れにばらつきがあっても、両横側温度センサからの温度検出信号に基づき、ガスの物性値を正確に算出することができる。
【0067】
請求項4記載の発明の流量計測装置によれば、広範囲にわたるガスの流量を計測することができる。
【0068】
請求項5記載の発明の流量計測装置によれば、ガスの種類や組成が変化した場合であっても、精度の良い流量計測が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフローセンサの実施の形態を示す略図である。
【図2】図1のフローセンサの構成図である。
【図3】図2のマイクロフローセンサの断面図である。
【図4】図2のマイクロフローセンサを用いた流量計測装置の構成プロック図である。
【図5】図5の流量計測装置により実現される流量計測方法を示すフローチャートである。
【図6】第1温度検出信号及び第2温度検出信号を示す図である。
【図7】右側温度検出信号及び左側温度検出信号を示す図である。
【図8】本発明のフローセンサのセンサ出力特性の一例を示す特性図である。
【図9】従来のフローセンサの一例を示す略図である。
【図10】図9のフローセンサの構成図である。
【符号の説明】
1 マイクロフローセンサ
2 Si基板(支持基板)
3 ダイアフラム
4 マイクロヒータ(ヒータ)
5 左側サーモパイル(横側温度センサ)
8 右側サーモパイル(横側温度センサ)
11 下流側サーモパイル(下流側温度センサ)
13 上流側サーモパイル(上流温度センサ)
41 流量算出部(流量算出手段)
43 流体物性値算出部(流体物性値算出手段)
45 加算部(流体物性値算出手段の一部;流量補正手段の一部)
47 除算部(流量算出手段の一部;流量補正手段の一部)
Claims (5)
- ガス流路を流れるガスを加熱するヒータと、上記ヒータに対してガスの上流側に配置され、ガスの温度を検出して第1温度検出信号を出力する上流側温度センサと、上記ヒータに対してガスの下流側に配置され、ガスの温度を検出して第2温度検出信号を出力する下流側温度センサと、上記ヒータ、上記上流側温度センサ及び上記下流側温度センサを支持する支持基板とを有するフローセンサであって、
上記ヒータは、上記ガスの流れ方向に平行な寸法が上記ガスの流れ方向に垂直な寸法より大きくなるように形成されている
ことを特徴とするフローセンサ。 - 前記ヒータに対してガスの流れ方向と略直交方向に配置され、ガスの温度を検出して第3温度検出信号を出力する横側温度センサを含む
ことを特徴とする請求項1記載のフローセンサ。 - 前記ガスの流れ方向と略直交方向における前記ヒータの両側に前記横側温度センサを各々配置した
ことを特徴とする請求項2記載のフローセンサ。 - 請求項1乃至3のいずれか1項記載のフローセンサを用いて、前記ガス流路を流れるガスの流量を計測する流量計測装置であって、
前記フローセンサの前記上流側温度センサからの前記第1温度検出信号と前記下流側温度センサからの前記第2温度検出信号との差信号に基づきガスの流量を算出する流量算出手段
を備えることを特徴とする流量計測装置。 - 前記フローセンサの前記横側温度センサからの前記第3温度検出信号に基づきガスの物性値を算出する流体物性値算出手段と、
前記流体物性値算出手段で算出されたガスの物性値に基づき前記流量算出手段で算出されたガスの流量を補正する流量補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項4記載のガス供給装置。
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