JP3767066B2 - 新規遺伝子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コリネ型細菌の新規遺伝子に関し、詳しくは界面活性剤耐性遺伝子に類似した遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、L−リジン及びL−グルタミン酸は、これらのアミノ酸生産能を有するブレビバクテリウム属やコリネバクテリウム属に属するコリネ型細菌を用いて発酵法により工業生産されている。この方法では、コリネ型細菌は生育にビオチンを要求する一方、培地中に過剰量のビオチンが存在すると、L−グルタミン酸が蓄積しないことが知られている。従って、従来のL−グルタミン酸の製造法においては、ビオチン濃度を制限した培地で培養するか、あるいはビオチンを充分量含有する培地を用いる場合には、培養の初発または途上でビオチン作用抑制物質として界面活性剤またはラクタム系抗生物質を培地に含有させて培養するかのいずれかの方法が採用されている。しかしながら、特に培地の炭素源として廃糖蜜等の安価ではあるが過剰量のビオチンを含有する原料を使用する場合、培地に添加することが必要なビオチン作用抑制物質が製造コスト高の原因となっていた。
【0003】
これに対し、本発明者らは、コリネバクテリウム属細菌に由来し、該細菌に界面活性剤に対する耐性を付与する蛋白質(DTSR蛋白)をコードする遺伝子(dtsR遺伝子)の存在を突き止め、この遺伝子が破壊されたコリネ型L−グルタミン酸生産菌は、野生株がほとんどL−グルタミン酸を生成しない量のビオチンが存在する条件においても著量のL−グルタミン酸を生成すること、及び、L−リジン生産能を有するコリネ型L−グルタミン酸生産菌は、dtsR遺伝子を増幅すると著量のL−リジンを生産する能力が付与されることを見出している(WO95/23224号国際公開パンフレット)。
【0004】
また、本発明者らは、コリネ型L−グルタミン酸生産菌に、ビオチン作用抑制物質に対する温度感受性を付与することにより、ビオチン存在下でも安定してL−グルタミン酸を発酵生産することができること、及び、このようなビオチン作用抑制物質に対する温度感受性株にL−リジン生産性を付与することにより、ビオチン存在下でも、安定してL−リジンとL−グルタミン酸を同時に発酵生産することができることを見出している(WO96/06180号国際公開パンフレット)。
【0005】
このような、ビオチン作用抑制物質に対する温度感受性に関与する遺伝子として、上記dtsR遺伝子が挙げられるが、この遺伝子がコードするDTSR蛋白のアミノ酸配列は、当該蛋白質は Proc.Nati.Acad.Sci.USA vol.83 (1986) 8049-8053; Proc.Nati.Acad.Sci.USA vol.83 (1986) 4864-4868 ; Gene vol. 122 (1992) 199-202 において、プロピオニルコエー(CoA)カルボキシレース(PCC)蛋白質βサブユニットとして記載されている蛋白質と相同性があることが判明している。プロピオニルコエー カルボキシレースは、αケトグルタレートを2−ハイドロキシグルタレート、プロピオニルコエー、D−メチルマロニルコエー、L−メチルマロニルコエーを経てスクシニルコエーに変換する代謝経路のうちの1反応を触媒する酵素であり、同代謝経路はTCAサイクルにおいてαケトグルタレートデヒドロゲネースに触媒される反応をバイパスする経路のようである。また、プロピオニルコエー カルボキシレースはビオチンを補酵素とする酵素である。
【0006】
これらのことから、プロピオニルコエー カルボキシレースが触媒する反応、さらにはこの反応を含む上記代謝経路又はその一部が、界面活性剤耐性に関与していることが示唆される。したがって、界面活性剤耐性に関与する遺伝子には、dtsR遺伝子以外にも、プロピオニルコエー カルボキシレース αサブユニット、あるいは上記代謝経路の各反応を触媒する他の酵素もしくはそのサブユニットをコードする遺伝子が含まれる可能性が高いと考えられた。また、本発明者らはDTSRタンパク欠損株が培養にオレイン酸を必要とすることを見出しており、ビオチンを補酵素とするアセチルコエー カルボキシレースがプロピオニルコエー カルボキシレースに構造が類似していることから、脂肪酸代謝経路の各反応を触媒する酵素もしくはそのサブユニットをコードする遺伝子も、界面活性剤耐性に関与している可能性があると考えられた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたものであり、コリネ型細菌の界面活性剤等のビオチン作用抑制物質に対する耐性に関与する遺伝子を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、dtsR遺伝子をクローニングしたときに、DTSR蛋白質をコードするORF(オープンリーディングフレーム)のすぐ下流に別のORFが途中まで存在することを見出した。そして、このORF全長を含むクローンを取得することに成功し、このORFがコードする蛋白質がDTSR蛋白質と相同性を有することを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、下記(A)又は(B)に示す蛋白質をコードするDNAである。
(A)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質である。
(B)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有する蛋白質。
【0010】
上記DNAとして具体的には、下記(a)又は(b)に示すDNAが挙げられる。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号2331〜3941からなる塩基配列を含むDNA。
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号2331〜3941からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【0011】
以下、上記のいずれかのDNAを、「本発明の遺伝子」又は「dtsR2遺伝子」、これらのDNAがコードする蛋白質を「DTSR2蛋白質」ということがある。
【0012】
また、本発明にいうコリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bargey's Manual of Determinative Bacteriology)第8版599頁(1974)に定義されている一群の微生物であり、好気性、グラム陽性、非抗酸性、胞子形成能を有しない桿菌であり、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが現在コリネバクテリウム属細菌として統合されたブレビバクテリウム属細菌(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255 (1981))を含み、またコリネバクテリウム属細菌と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌及びミクロバテリウム属細菌を含む。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の遺伝子は、野生型コリネ型細菌の染色体DNAの各種断片を、コリネ型細菌で機能するベクターと連結して各種組換えDNAを作成し、この組換えDNAをコリネ型細菌の界面活性剤感受性変異株に導入して形質転換を行い、形質転換株の中から界面活性剤感受性が失われた株を選択し、界面活性剤感受性が失われた形質転換株より組換えDNAを回収し、ベクターに連結されている野生型コリネ型細菌の染色体DNA断片の構造を解析することによって、dtsR遺伝子のすぐ下流にあるORFとして得られたものである。このように、本発明の遺伝子は、WO95/23224号国際公開パンフレットに記載されているdtsR遺伝子の取得方法と同様にして取得することができる。以下に、コリネ型細菌の界面活性剤感受性変異株を利用して本発明の遺伝子を取得する方法を説明する。
【0014】
界面活性剤感受性変異株とは、野生型のコリネ型細菌の生育に影響を与えない濃度の界面活性剤が存在する培地中で生育が悪くなるコリネ型細菌の変異株をいう。例えば界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテートの場合、コリネ型細菌の界面活性剤感受性変異株は0.1〜1mg/dlの濃度の上記界面活性剤が培地中に添加されると生育が野生株と比較して悪くなる。一方、野生型のコリネ型細菌は0.1〜1mg/dlの濃度の上記界面活性剤が添加された培地中でも生育に大きな変化はみられない。このような界面活性剤感受性変異株としては、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム AJ11060が挙げられる。同株は通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されており、受託番号FERM P−3678が付与されている。
【0015】
上記のようなコリネ型細菌の界面活性剤感受性変異株から、例えば斎藤らの方法(H.Saito and K.Miura Biochem. Biophys. Acta 72, 619 (1963))に従い染色体DNAを回収する。回収した染色体DNAを制限酵素を用いて切断し、コリネ型細菌で機能するベクターに連結し、各種組換えDNAを得る。
【0016】
この各種組換えDNAをコリネ型細菌の界面活性剤感受性変異株に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリ K−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法( Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153 (1977))がある。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法( Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。本発明の実施例で用いた形質転換の方法は、電気パルス法(特開平2−207791号公報参照)である。
【0017】
次に、形質転換株を、一旦、界面活性剤を含まないM−CM2G寒天プレート(グルコース5g、ポリペプトン10g、酵母エキス10g、NaCl5g、DL−メチオニン0.2g、寒天15g及びクロラムフェニコール4mgを純水1Lに含む。pH7.2)に塗布して数万個のコロニーを形成させる。当該コロニーを30mg/Lの界面活性剤(Tween40)を含むM−CM2Gプレートにレプリカし、界面活性剤含有M−CM2Gプレート上で良好な生育を示すものを取得することにより、界面活性剤感受性を失った株を取得できる。
【0018】
界面活性剤感受性が失われた形質転換株より組換えDNAを、野生型コリネ型細菌の染色体DNAと同様にして調製し、ベクターに連結されている野生型コリネ型細菌の染色体DNA断片の塩基配列を決定する。
上記のようにして得られる本発明の遺伝子の例として、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869株から得られるdtsR2遺伝子を含むDNA断片の塩基配列を、配列表の配列番号1に示す。配列番号1に示す塩基配列において、dtsR2遺伝子は、塩基番号2331〜3941に相当する。また、配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号359〜1987は、dtsR遺伝子のコード配列である。また、dtsR2遺伝子がコードするDTSR2蛋白質のアミノ酸配列を配列番号3に、dtsR遺伝子がコードするDTSR蛋白質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0019】
尚、本発明の実施例では、上記のようにして得られたDNA断片は、本発明の遺伝子の3’末端側を一部欠いていた。そのため、配列番号4(配列番号1の塩基番号3624〜3653に相当する)および配列番号5(配列番号1の塩基番号3721〜3750に相当する)に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼチェインリアクション法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al ;Trends Genet. 5,185(1989)参照)により、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869株から、本発明の遺伝子の3’末端側部分を増幅することによって、この部分を取得し、塩基配列を決定した。
【0020】
本発明の遺伝子は、その塩基配列が明らかにされたので、配列番号1に示す塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプローブとするハイブリダイゼーションによってコリネ型細菌の染色体DNAライブラリーから選択することによって取得することができる。また、本発明の遺伝子は、配列番号1に示す塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCRにより、コリネ型細菌の染色体DNAから本発明の遺伝子全長を増幅することによっても取得することができる。なお、dtsR遺伝子を含むプラスミドpDTR6を保持するエシェリヒア・コリJM109/pDTR6(プライベートナンバーAJ12967)株は、1994年2月22日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P−14168として寄託され、1995年2月9日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−4994が付与されている。この菌株から調製されるpDTR6に含まれるd tsR遺伝子及びその下流の領域は、上記ハイブリダイゼーションのプローブに使用することができる。
【0021】
本発明の遺伝子は、配列番号1に示す塩基配列において塩基番号2331〜3941で表される塩基配列を有するDNAの他に、配列番号3に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAを含む。また、配列番号3に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有する蛋白質であっても、コリネ型細菌に界面活性剤に対する耐性を付与する機能を有する限り、そのような蛋白質をコードするDNAは、本発明の遺伝子に含まれる。
【0022】
配列番号3に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNAは、例えば、コリネ型細菌の野生株又は変異株から、配列表の配列番号1に示す塩基配列において塩基番号2331〜3941で表される塩基配列の少なくとも一部を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを単離することによって、取得され得る。ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは温度が完全にマッチしたハイブリッドのTm〜(Tm−30)℃、好ましくはTm〜(Tm−20)℃の範囲で、かつ1×SSC、好ましくは0.1×SSCに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。なお、配列表の配列番号1に示す塩基配列において塩基番号2331〜3941で表される塩基配列とdtsR遺伝子のコード配列とはストリンジェントな条件ではハイブリダイズしない。
【0023】
また、上記のような変異を有するDTSR2蛋白質をコードするDNAは、部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、不可又は逆位を起こすように塩基配列を改変することによって得られる。また、このような変異を有するdtsR2遺伝子は、従来知られている突然変異処理によっても取得され得る。突然変異処理としては、dtsR2遺伝子を含むDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及びdtsR2遺伝子を含むDNAを保持する微生物を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。変異処理した後、変異処理されたDNA又は変異処理された微生物から、これらがコードし又は産生するDTSR2蛋白質がコリネ型細菌に界面活性剤に対する耐性を付与する機能を保持し、かつ、DTSR2蛋白質のアミノ酸配列が変異したものを選択することによって、変異を導入することができる位置、又は変異が生じた位置を決定することができる。導入される変異の位置は、DTSR2蛋白質の機能に実質的に影響のない限り、特に制限されない。また、導入される変異の数は、蛋白質の立体構造における変異されるアミノ酸の位置や種類によっても異なり、DTSR2蛋白質の機能に実質的に影響のない限り、特に制限されないが、通常、1〜20個、好ましくは1〜10個である。
【0024】
dtsR2遺伝子がコードするDSTR蛋白質は、dtsR遺伝子がコードするDTSR蛋白質と相同性が高く、同様の機能を有すると推定される。したがって、dtsR2遺伝子は、dtsR遺伝子と同様に、L−グルタミン酸及びL−リジン等の製造に用いるコリネ型細菌の育種等に利用できることが期待される。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0026】
【実施例1】
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869(コリネバクテリウム属細菌の野生株)の染色体DNAの調製
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869をT−Y培地(Bacto−trypton(Difco)1%、Bacto−yeastextract(Difco)0.5%、NaCl0.5%(pH7.2))100mlに接種し、温度31.5℃で8時間培養し、培養物を得た。この培養物を3,000r.p.m.で15分間、遠心分離処理し湿潤菌体0.5gを得た後、該菌体から斎藤、三浦の方法(Biochem. Biophys. Acta., 72, 619 (1963))により染色体DNAを得た。次いで、この染色体DNA 60μg 及び制限酵素 Sau3AI、3ユニットを10mMトリス−塩酸緩衝液(50mM NaCl、10mMMgSO4及び1mM ジチオスレイトール含有(pH 7.4))におのおの混合し、温度37℃で30分間反応させた。反応終了液を常法により、フェノール抽出処理し、エタノール沈澱処理してSau3AIで消化されたブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869の染色体DNA断片 50μg を得た。
【0027】
【実施例2】
プラスミドベクターDNAを利用したブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869の遺伝子ライブラリーの作製
エシェリヒア・コリとコリネバクテリウム属細菌の双方の菌体内で自律複製可能なプラスミドベクターDNA(pSAC4)20μg 及び制限酵素BamHI200ユニットを50mMトリス−塩酸緩衝液(100mM NaCl及び10mM硫酸マグネシウム含有(pH7.4))に混合し、温度37℃で2時間反応させて消化液を得、該液を常法によりフェノール抽出及びエタノール沈澱処理した。この後、プラスミドベクター由来のDNAフラグメントが再結合することを防止するため、Molecular Cloning 2nd editon(J.Sambrook,E.F.Fritsch and T.Maniatis, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p1.56 (1989))の方法で バクテリアルアルカリホスファターゼ(Bacterial Alkaline Phosphatase)処理により、DNA断片の脱リン酸化を行い、常法によりフェノール抽出処理し、更にエタノール沈澱処理を行った。
【0028】
このBamHIで消化されたpSAC4を1μg、実施例1で得られたSau3AIで消化されたブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869の染色体DNA断片を1μg、及び2ユニットのT4DNAリガーゼ(宝酒造(株)製)を、66mM塩化マグネシウム、10mMジチオスレイトール及び10mM ATPを含有する66mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に添加し、温度16℃で16時間反応し、DNAを連結させた。次いで該DNA混合物で、常法によりエシェリヒア・コリ DH5を形質転換し、これを170μg/mlのクロラムフェニコールを含むL寒天培地上にまき、約20,000個のコロニーを得、遺伝子ライブラリーとした。
【0029】
【実施例3】
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ11060の形質転換
上記で述べた約20,000個のコロニーより、組換えDNAの回収を行なった。回収の方法は上記に示した斎藤、三浦の方法に従った。
【0030】
50のバッチに分けた組換えDNA混合物を電気パルス法を用いた形質転換の常法(特開平2−207791号公報)に従い、界面活性剤に対する感受性が上昇した変異株AJ11060株に導入した。形質転換体をグルコース添加寒天L培地上に接種し、31.5℃で静置培養を行ない、約20,000個の形質転換体を出現させた。次にこれらの形質転換体を界面活性剤30mg/lを含む同プレートにレプリカし、この中で界面活性剤に対して耐性を示し上記プレート上で生育可能であった株を数株得た。
【0031】
上記で得られた数株からそれぞれ組換えDNAを抽出し、同DNAを用いてAJ11060株を再形質転換した。ここでも界面活性剤に対して耐性を示した株を得た。これらの株の1株が保持していた組換えDNAをpDTR6、他の1株が保持していた組換えDNAをpDTR98と命名した。pDTR6を導入したAJ11060菌は、3g/Lの界面活性剤を添加した液体培地での生育阻害が抑制されていた(WO95/23224号国際公開パンフレット参照)。
【0032】
【実施例4】
DNAの調製
上記で得られた組換えDNAを含有するAJ11060/pDTR98から常法に従いプラスミドを調製し、エシェリヒア・コリ JM109に導入した。得られたエシェリヒア・コリJM109/pDTR98をトリプトン1%、酵母エキス0.5%及びNaCl 0.5%からなる培地20mlに温度37℃で24時間前培養し、得られた培養液20mlを上記と同じ組成の培地1lに接種し、温度37℃で3時間培養したのち、0.2gのクロラムフェニコールを添加し、更に同一温度で20時間培養を行い、培養液を得た。次いで、この培養液を3,000r.p.m.で10分間遠心処理して湿潤菌体2gを得、これを20mlの25%ショ糖を含有する350mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁したのち、更にこれにリゾチーム(シグマ社製)10mg、0.25M EDTA溶液(pH8.0)8ml及び20%ドデシル硫酸ナトリウム溶液8mlを各々添加し、温度60℃で30分間保温処理し、溶菌液を得た。この溶菌液に、5M NaCl溶液13mlを添加し、温度4℃で16時間処理した後、15,000r.p.m.で30分間遠心分離した。得られた上清液を、常法によりフェノール抽出処理及びエタノール沈澱処理を行いDNAを沈澱させた。
【0033】
この沈澱物を減圧乾燥処理した後、1mM EDTAを含有する10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)6mlに溶解し、さらにこれに塩化セシウム6g及びエチジウムブロマイド(19mg/ml)0.2mlを添加し、39,000r.p.m.で42時間超遠心分離機を用いて平衡密度勾配遠心分離処理を行い、DNAを単離した。又更に、n−ブタノールを使用してエチジウムブロマイドを除去した後、1mM EDTAを含有する10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に対して透析を行い純化された組換えDNA pDTR98を約500μgを得た。
【0034】
【実施例5】
クローン化DNAの塩基配列の解析
実施例4で得られた組換えDNA pDTR98を用い、クローン化DNA断片(約4.8kbp)のうち約3.8kbpの塩基配列の決定を行った。塩基配列の決定は、Taq DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオケミカル社製)を用い Sangerの方法に従って行った。その結果、pDTR98が有するクローン化DNA断片は、dtsR遺伝子のコード領域全長を含み、さらにその下流に、DTSR蛋白質と高い相同性を示す蛋白質をコードするORFを含む約1kbpの領域を含んでいた。このクローン化DNA断片の塩基配列は、配列表配列番号1の塩基番号1〜3869に相当する。
【0035】
上記のORFにはターミネーションコドンは検出されなかったので、この領域の下流の領域を、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869株の染色体DNAを鋳型とするPCR法により、増幅することによって取得した。PCRは、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いたキット(LA PCR in vitro cloning Kit、宝酒造社製)を用い、プライマーは、配列番号4(配列番号1の塩基番号3624〜3653に相当する)および配列番号5(配列番号1の塩基番号3721〜3750に相当する)に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用して行った。具体的にはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869株の染色体遺伝子を常法により取得し、このDNAの1μgを制限酵素EcoRIにて完全分解した。次に、このDNAと、上記キットに含まれているEcoRIカセットプライマー、及び配列番号4のプライマーとを用い、94℃、30秒;55℃、2分;72℃、1分からなるサイクルを30回繰り返した。次に、この反応液を100倍に希釈し、その1μlを鋳型として、配列番号5のプライマーとキットに含まれているカセットプライマーC2とを用いて、再びPCR反応を行った。PCR反応は上記と同じサイクルで行った。
【0036】
増幅された約1.2kbpのDNA断片の塩基配列を、上記と同様の方法で決定した。このDNA断片は、上記ORFを重複して含み、さらにターミネーションコドンを含んでいた。この遺伝子をdtsR2遺伝子、この遺伝子がコードする蛋白質をDTSR2蛋白質と命名した。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、新規遺伝子であるdtsR2遺伝子が提供される。この遺伝子は、コリネ型細菌のビオチン作用抑制物質に対する温度感受性に関与する遺伝子であるdtsR遺伝子に高い相同性を有しており、各種アミノ酸の生産等に利用できることが期待される。
【0038】
【配列表】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
Claims (2)
- 下記(A)又は(B)に示す蛋白質をコードするDNA。
(A)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質。
(B)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、コリネ型細菌に界面活性剤に対する耐性を付与する蛋白質。 - 下記(a)又は(b)に示すDNAである請求項1記載のDNA。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号2331〜3941からなる塩基配列を含むDNA。
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号2331〜3941からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、コリネ型細菌に界面活性剤に対する耐性を付与する蛋白質をコードするDNA。
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