JP3771900B2 - 鋼鋳片の表層改質装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼鋳片の表層の溶融改質装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋳片表面の欠陥を修復する目的で鋳片表面を溶融させる技術として、例えば、特許文献1には、鋳片の表層部を高周波誘導加熱溶融する鋳片の溶融手入れ法が開示されている。この技術では、鋳片に近接して設置された誘導コイルに高周波電流を印加し、鋳片表面に誘導電流を発生させ、そのジュール熱によって鋳片表面を溶融させるというものである。
【0003】
【特許文献1】
特開昭53−100928号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の特許文献1について、発明者らは鋳片サンプルを鉛直に立てた場合と水平に置いた場合に、鋳片を周回するコイルを用いて表層を溶融する試験を行った結果、鉛直に立てた場合には溶融部の特に下側において溶融部表面の乱れが発生し溶融後の再凝固表面性状が悪くなること、また、水平に置いた場合には、側面と下面において、同様に表面性状が悪くなること、また場合によっては、重力の作用に抗することができず、液滴が生成して漏れ落ちるような現象があるということ等の問題があることが判明した。
これは、図3に示すような、電磁力により溶融部を保持しようとする力が作用するものの、力学的に十分に安定していないことからこのような現象が起こったものと考えられる。
本発明は、鋼鋳片表層を安定して溶融し、添加元素を添加することにより鋼鋳片表層を改質する装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 鋼鋳片を周回するように配置された誘導加熱コイルと、該コイルの内側に設置された冷却機能を有する導電性セグメント容器と、添加元素供給装置からなる鋼鋳片の表層改質装置であって、該導電性セグメント間に間隙を有することを特徴とする鋼鋳片の表層改質装置。
(2) 導電性セグメント容器が鋳片長手方向に一対に配置されたことを特徴とする(1)に記載の鋼鋳片の表層改質装置。
(3) 添加元素供給装置が一対に配置された導電性セグメント容器間に設置されたことを特徴とする(2)に記載の鋼鋳片の表層改質装置。
(4) 導電性セグメントを移動させる機能を有することを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の鋼鋳片の表層改質装置。
(5) 添加元素供給装置に替えて、添加元素供給可能なプラズマ加熱装置を設置したことを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の鋼鋳片の表層改質装置。
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、鋼の鋳片表層に添加元素を溶着させる装置として、誘導加熱を用いて鋼の鋳片表層を溶融し、そこへ添加元素供給装置により添加元素を供給する際に、該コイルの内側に冷却機能を有する導電性セグメント容器を設置することで、液滴が生成して漏れ落ちることなく、安定して確実に複合鋼材を製造できる装置を見出した。以下に詳細に説明する。
【0007】
本発明では、鋼の鋳片表層を溶融させる装置として、鋼鋳片を周回できるように配置された誘導加熱コイルを用いる。この誘導加熱コイルにより鋳片の表層部は溶融する。この溶融部へ添加元素を供給する装置を用いて、添加元素を供給する。添加元素供給装置としては、ワイヤーやシート等が用いられる。ここで、添加元素として純金属やその合金を用いても良く、以降はこれらをまとめて添加元素と記載する。
【0008】
例えば連続鋳造機で得られた鋳片は、切断後、溶融処理場に輸送され、鋳片を周回するように配置された誘導コイルにより加熱され、鋳片表層溶融部にワイヤーやシートを用いて添加元素もしくはその合金を添加して溶着される。誘導コイルは鋳片表層溶融部で電磁力により溶融部分を内面に向かって電磁力によって押さえつけることにより安定した溶融部表面を作り、その後再度冷却され凝固する。
【0009】
また、鋳片表層溶融部に添加元素を添加して溶着させる場合、鋳片の酸化を防止することが好ましいため、図1に示す如く、誘導コイル3はチャンバー内で不活性ガス雰囲気(例えばアルゴン、窒素等)に仕切られた装置6であることが好ましく、さらにより確実に酸化を防止するためには、不活性ガス雰囲気中に約2容量%程度の水素を含んで溶融改質できる様な、水素供給設備等を備えていることが好ましい。
ここで、誘導コイルによる電磁力の力の発生原理を図3に示す。誘導コイル3が発生する磁場15と、導体14である鋳片に誘導した電流の相互作用により、溶融部には電磁力が作用する。この電磁力はピンチ力と呼ばれる溶融部を圧縮する作用があり、溶融部表面の安定化に寄与する。
【0010】
しかし、このような静的な平衡保持だけでは必ずしも十分とは言えないため、さらに溶融部表面の安定化に寄与するために、本発明では図4(b)に示す様な冷却機能を有する導電性セグメント容器が、図1、2のように誘導加熱コイル3の内側に設置され、さらに各セグメント間に間隙を有するものを使用している。ここで、導電性セグメントの原理について説明すると、図4(a)の様に各セグメント間に間隙がない場合は、コイル電流22に対して誘導電流23が発生するため、磁場がほとんど打ち消されてしまうのに対し、図4(b)の場合は各セグメント20間に間隙(スリット)24を有するため、各セグメント内の誘導電流23が閉ループで発生するため、各セグメント内の磁場は打ち消され、コイル電流22による磁場を発生させることができる。
【0011】
この様な間隙は、単一のセグメントを複数並列に連接したもので、各セグメント間に、マイカ板等を挟んで構成したものを用いても良く、またセグメントに1つ以上の貫通スリットを有するものを用いても良い。セグメント間の間隙は特に規定するものではないが、通常0.3mm〜3mmである。下限は絶縁材を用いる際の絶縁材厚さの限界から決まり、上限は3mm超の場合は磁場を均一に保持しにくくなることから、それぞれ決まる値である。
【0012】
冷却機能を有する導電性セグメント容器の作用は、高周波磁場を鋳片表層に効果的に付与すると同時に、鋳片組織や温度の操業変動によるバラツキによって発生する溶融部表面の乱れが出た際に、冷却機能を有する導電性セグメント容器が溶融部溶湯と接触した際の接触部の瞬間的な凝固を発生させ、直後に強くなった電磁力により再度押し戻されることで再溶融が起こり、その結果安定な溶融状態を継続できるというものである。
冷却機能を有する導電性セグメント容器は水冷式のものが通常使用され、また材質は銅や銅合金で作られたものが一般的である。
【0013】
また、鋼鋳片は、通常連続鋳造により製造されることが多い。以下に連続鋳造を用いる際に、本発明装置を適用した場合について説明する。
まず、連続鋳造機端、すなわち連続鋳造後の鋳片が水平に移動している際に、本発明装置を設置する場合について説明する。この場合、鋳片は一般の湾曲型もしくは垂直部を鋳型下数mにわたって有する垂直曲げ型連鋳機において、一般には曲げ戻しを受けたあと、ガスカットされる前に水平部を有することから、この部分に配置する。誘導コイルは鋳片を周回するように配置されている。この方式の場合、鋳片上部は誘導コイルによる加熱により鋳片表層部が溶融しても、重力による滴下が起こらないため、容易に処理される。また鋳片下部の溶融部は、図3に示す原理に基づいた電磁力の作用により保持され、重力による滴下や再凝固後の表面形状が悪化することを防止できる。この処理は、鋳片反転装置を用いて180度反転させることで、片面ずつ処理することもできる。鋳片端部については、上記鋳片反転装置を用いて±90度反転させることで、処理することができる。
【0014】
さらに連続鋳造機内、すなわち鋳片が垂直に移動している際に、本発明装置を適用する場合について説明する。連続鋳造機内において、鋳型を出た鋳片は、2次冷却帯内において、誘導コイルにより加熱される。誘導コイルは溶融部の電磁力による保持を受けて、溶融部分が重力により滴下することなく、下部の誘導コイルを通過後に再度冷却され凝固する。ここで、鋳片溶融部分は溶融部の下部側が重力の作用によってより滴下しやすくなるため、誘導コイルは上部コイルよりは下部コイルを鋳片近くに設置することで、溶融部の下部側がより強い電磁力を発生して溶融部が漏れることを防止できるため好ましい。
【0015】
次に、導電性セグメント容器の配置は、通常鋳片長手方向に一対に配置される。この様な配置にすることで、導電性セグメント容器間の鋳片の溶融部は、安定した表層部となっており、ここへ添加元素を添加することで、良好な品質の表層改質鋳片を製造することができる。
従って、添加元素供給装置2を一対に配置された導電性セグメント容器間に設置することで、添加元素である純金属もしくは合金の添加を、安定した表層部に行うことができるため、効果的である。
【0016】
また、導電性セグメントは移動できる機能を有するものが好ましい。すなわち、コイルは通常固定寸法であり、鋳片は幅が随時変わることから、幅が変わった場合でも前記の安定保持効果を享受するためには、導電性セグメントを移動させることで、鋳片とのクリアランスを所望の値に設定することができる。この具体的な例を図5に示しているが、鋳片5の幅が変わった場合に、鋳片とのクリアランスが一定になるように、矩形鋳片の1対の辺の導電性セグメント20を移動させることで、安定保持効果を享受できる。また、鋼種や処理条件により、任意のクリアランスにも設定可能である。
導電性セグメントを移動させる機能を有する装置としては、例えば油圧シリンダーで該短辺を一括して移動する様な構造のもの等が挙げられる。
【0017】
また、誘導加熱とプラズマ加熱を併用して行う場合について説明する。連続鋳造機1で連続鋳造を完了した鋳片5は、切断後、溶融処理場に輸送され、図1のように誘導コイル3により加熱され、さらに添加元素供給装置2に替えてプラズマ装置を設置し、添加元素もしくはその合金をプラズマに供給することで、鋳片表層溶融部に添加元素もしくはその合金を添加して溶着させる。
誘導コイル単独でも鋳片の表層部分を溶融させることはできるが、プラズマを併用することでプラズマによる加熱でも鋳片の表層部分を溶融できるため、誘導コイルの負荷を低減できる効果がある。例えば、誘導コイルを予熱機能およびピンチ力の発生による溶融部の圧縮機能として用いて、プラズマを鋳片表層の溶融機能および添加元素供給機能として用いることもできる。
【0018】
プラズマ装置で加熱溶融するには添加元素もしくはその合金の形状がパウダー状であり、プラズマ内に吹き込むのが一般的であるのに対し、誘導加熱装置とプラズマ加熱装置を併用して用いた場合には、添加元素もしくはその合金の形状にかかわらず実施できるという利点がある。
なお、添加元素の成分としては、鋼材の特性を変化させるために用いられるものとして、炭素、シリコン、マンガン、リン、硫黄、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、レアアースメタル等が挙げられる。
【0019】
上記添加元素は純金属として添加しても良いし、合金として添加しても良い。また、目的に応じて複数を混合して添加しても良い。
添加元素の合金としては、上記添加元素の複数成分の合金に加え、添加元素成分と酸素あるいは窒素との化合物なども含まれる。
添加元素の合金については、上記添加元素の複数成分の合金であれば特に規定するものではないが、通常はフェロマンガン、フェロニッケル、フェロリンその他合金鉄等が用いられる。
さらに、添加元素成分と窒素との化合物については例えば窒化鉄が、また添加元素成分と酸素との化合物については例えばマグネシウム酸化物が挙げられる。
【0020】
以上の様に、本発明装置を用いることで、表層と内部の性質が異なる鋼の特性を併せ持つ、低コスト鋼材の表層改質複合鋼材鋳片が得られる。
また、上記の表層改質複合鋼材鋳片を加工することにより、薄板、厚板の鋼板、形鋼、鋼管等の、表層と内部の性質が異なる鋼の特性を併せ持つ低コスト製品が得られる。
【0021】
【実施例】
(実施例1)
図1に示すような装置を用いて、内寸1510mm×260mmで幅1500mm、厚さ250mmの連続鋳造鋳片の表層部を溶融改質を行った。
連続鋳造鋳片と水冷導電性セグメント容器とのクリアランスは5mmであった。ここで、水冷導電性セグメント容器は、厚み20mm、周方向20mmのセグメントを複数並列に連接したもので、各セグメント間距離が1mmになるように、マイカ板を各セグメント間に挟んで構成した、長さ10cmのものを用いた。
上記セグメント容器は、長手方向に1cmのクリアランスで一対に配置し固定した。またセグメント容器の外側にクリアランス1cmで、長さ5cmの誘導コイルを設置した。コイルには40kHzの高周波電源を接続した。
【0022】
本装置を用いて、低炭アルミキルド鋳片を予め加熱炉で800℃に保持した後、電源に2MWの電力を印加しつつ、移動速度1m/分で処理し、800℃に予熱したニッケルを1質量%添加を目標として添加した。その結果、鋳片表層3mmがほぼ均一に溶融処理され、0.95〜1.05質量%のニッケルの溶着が実施できることを確認した。
【0023】
(実施例2)
図5に示すような装置において、内寸1510mm×260mmで幅1000mm、厚さ250mmの連続鋳造鋳片の表層部を溶融改質を行った。
連続鋳造鋳片と水冷導電性セグメント容器とのクリアランスは、鋳片厚み方向には5mmであった。また、幅方向には移動式の短辺水冷導電性セグメントブロックが配されており、クリアランスが片側5mmになるように移動させて設定した。
長辺側の水冷導電性セグメント容器は実施例1と同様に、厚み20mm、周方向20mmのセグメントを複数並列に連接したもので、各セグメント間距離が1mmになるように、マイカ板を各セグメント間に挟んで構成した、長さ10cmのものを用いた。
上記セグメント容器は、長手方向に1cmのクリアランスで一対に配置し固定した。またセグメント容器の外側にクリアランス1cmで、長さ5cmの誘導コイルを設置した。コイルには16kHzの高周波電源を接続した。
【0024】
本装置を用いて、低炭アルミキルド鋳片を予め加熱炉で800℃に保持した後、電源に3MWの電力を印加しつつ、移動速度1m/分で処理し、800℃に予熱したニッケルを1質量%添加を目標として添加した。その結果、鋳片表層5mmがほぼ均一に溶融処理され、0.95〜1.05質量%のニッケルの溶着が実施できることを確認した。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の装置を用いれば、鋼鋳片の表層溶融改質を安定して行うことができ、良好な品質の表層改質鋳片やその加工製品を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の構成。
【図2】本発明の装置の構成(溶融部の詳細図)。
【図3】原理の説明図。
【図4】導電性セグメントの原理。
【図5】幅変更を伴う場合の、本発明の装置の構成。
【符号の説明】
1:連続鋳造機
2:元素添加装置
3:電磁誘導コイル
4:サポートロール
5:鋳片
6:アルゴンと2%程度の水素を含む雰囲気をつくる容器
7:凝固部
8:溶融した部分
9:未凝固部
10:連続引抜もしくは移動
11:コイル電流
12:交流電流
13:時間
14:電気伝導体
15:磁場
16:未溶融の加熱部
17:特定成分が富化された部分
18:電磁力の方向と強さ
19:重力による静鉄圧
20:導電性セグメント
21:導電体
22:コイル電流
23:誘導電流
24:スリット
Claims (5)
- 鋼鋳片を周回するように配置された誘導加熱コイルと、該コイルの内側に設置された冷却機能を有する導電性セグメント容器と、添加元素供給装置からなる鋼鋳片の表層改質装置であって、該導電性セグメント間に間隙を有することを特徴とする鋼鋳片の表層改質装置。
- 導電性セグメント容器が鋳片長手方向に一対に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の鋼鋳片の表層改質装置。
- 添加元素供給装置が一対に配置された導電性セグメント容器間に設置されたことを特徴とする請求項2に記載の鋼鋳片の表層改質装置。
- 導電性セグメントを移動させる機能を有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の鋼鋳片の表層改質装置。
- 添加元素供給装置に替えて、添加元素供給可能なプラズマ加熱装置を設置したことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の鋼鋳片の表層改質装置。
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