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JP3785940B2 - ウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板及びその製造方法 - Google Patents
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JP3785940B2 - ウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板及びその製造方法 - Google Patents

ウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川や港湾の構造部材として用いられる鋼矢板及びその製造方法に係り、特に優れたHAZ靱性および母材靱性を有するウェブ厚が15mm以上の鋼矢板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼矢板は、土木工事、港湾の護岸工事等に欠かせない部材であり、護岸岸壁に利用されるときには電気防食用の電極が溶接によって取り付けられて使用されることが多い。この溶接は、鋼矢板の立て込み後に主として水中溶接によって行われるため、溶接部は非常に過酷な熱履歴を受けてHAZが硬化し、そのため溶接割れを生じたり、あるいはその割れを起点として鋼矢板が脆性破壊するに至ることがある。事実1993年の北海道釧路沖地震の際には、護岸岸壁に用いられていた鋼矢板が電気防食取付け治具溶接部から脆性破壊する被害が発生した。
【0003】
これを受けて、耐震性の観点から鋼矢板の性能改善が見直され、2000年11月に新しいJIS(溶接用鋼矢板)が公示された。この新しいJISでは、溶接低温割れ性の観点から、C,Si,Mnおよび炭素当量の上限が規制され、母材の脆性破壊を抑制するために母材の靱性下限値が設けられている。また、地震の際に受ける繰返し歪みによる靱性低下を抑制するために固溶N量の上限が設けられている。具体的には、表1に示すとおりである。
【0004】
【表1】
Figure 0003785940
【0005】
この新JISにおいては、母材の強度及び靭性の確保を組織の微細化や第2相の組織制御によって図る必要がある。そのような考え方は、例えば、特開平8-269622号公報や特開平10-1721号公報にも示されており、これらの提案にしたがえば溶接特性に優れた鋼矢板や水中溶接性と靱性に優れた鋼矢板の製造が可能とされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、厚肉の鋼矢板、特にウェブ厚が15mmを超えるような厚肉鋼矢板では、その製造工程上の問題、特に中間圧延が比較的高温で完了するという問題に起因して母材の靱性が十分な値に達しないという問題があった。本発明は、水中溶接など極めて厳しい条件下で溶接を行っても溶接割れを発生することなく、かつ母材靭性が高く、容易に脆性破壊を起こさない厚肉の鋼矢板及びその製造方法を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、C,Si,Mnおよび炭素当量の上限が規制された成分系とし、かつ鋼矢板のウェブ肉厚を15mm以上と大きくしたときでも、母材に高い靭性を付与しうる手段について検討を行い、鋼矢板製造工程中のブレークダウン圧延及び中間圧延においてオーステナイト結晶粒の再結晶を完全に行わせ、かつ該オーステナイト結晶粒から微細フェライト−パーライト組織が得られるようにすることが重要であることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
本発明のウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板は、質量比でC:0.05〜0.18%、Si:0.05〜0.55%、Mn:0.6〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.005〜0.025%、N:0.0060%以下、残部:Feおよび不可避的不純物からなるとともに該不可避的不純物としての Nb 0.003% 以下に制限されている鋼組成を有し、かつ微細なフェライト−パーライトからなる組織を有する。
【0009】
上記の鋼組成は、さらに質量比で(1) Cu:0.1〜0.6%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、V:0.010〜0.10%から選んだ1種若しくは2種以上及び/又は(2) Ca:0.0010〜0.0050%、REM:0.003〜0.015%の1種若しくは2種を含有することが好ましい。
【0010】
上記本発明のウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板を製造するに当たっては、鋼素材を1200〜1320℃に加熱後、ブレークダウン圧延、中間圧延、及び爪曲げ成形を含む仕上げ圧延を行う過程において、鋼素材を質量比でC:0.05〜0.18%、Si:0.05〜0.55%、Mn:0.6〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.005〜0.025%、N:0.0060%以下、残部:Feおよび不可避的不純物からなるものとするとともに該不可避的不純物としての Nb 0.003% 以下に制限されているものとし、かつ前記中間圧延の終了温度を950℃以上とする。
【0011】
上記において鋼素材は、さらに質量比で、(1) Cu:0.1〜0.6%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、V:0.010〜0.10%の群から選んだ1種若しくは2種以上及び/又は(2) Ca:0.0010〜0.0050%、REM:0.003〜0.015%の1種若しくは2種を含有することとするのが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板の実施形態を、その化学組成、圧延条件さらにその製造方法について具体的に説明する。
【0013】
(化学組成)
C:0.05〜0.18%、(質量比、mass%、以下特に断らない限り同じ)
Cは強度確保の観点から0.05%以上必要であるが、0.18%を超えると溶接割れを惹起し、またHAZ靱性を低下させるのでその範囲を0.05〜0.18%に限定する。
【0014】
Si:0.05〜0.55%
Siは固溶強化に有効な元素であり、脱酸剤としても有効であるが、0.05%未満では効果がない。一方0.55%を超えて合金しても、HAZの靱性を低下させるだけであるから、その合金量は0.05〜0.55%の範囲とする。
【0015】
Mn:0.6〜1.5%
Mnも強度を上昇させるのに有効な元素であるが、0.6%未満ではその効果が小さく、逆に1.5%を超えると溶接割れを生ずる危険があるので0.6〜1.5%の範囲とする。
【0016】
P:0.030%以下、S:0.020%以下
Pはその含有量が多いと、粒界に偏析し、脆化を促進させるので極力少ないことが望ましい。また、Sは主にMnと結合してMnSを形成し、母材の延性を低下させる。さらにHAZ靱性にも有害であるので極力少ないことが望ましい。これらの元素の含有量は、Pについては0.030%以下、Sについては0.020%以下に制限する。
【0017】
Al:0.1%以下
Alは脱酸剤として有効であるのでAl脱酸を行うときには、0.1%の範囲で含有させる。しかし、Al脱酸に代えて、Si脱酸やTi,REM,Ca脱酸を行う場合は積極的に含有させる必要はない。
【0018】
Ti:0.005〜0.025% 、N:0.0060%以下
TiはNをTiNとして固定し、鋼矢板が繰り返し歪みを受けたときに生ずる靱性の低下を抑制する効果があるので0.005%以上含有させる。しかし0.025%を超えて含有させてもその効果は飽和する。したがってTiは0.005〜0.025%の範囲で含有させる。また、Nは、鋼矢板が繰返し歪を受けたとき靱性を低下させる有害元素であるので極力低い方が望ましい。具体的にはその上限を0.0060%とする。
【0019】
(残部:Fe及び不可避的不純物)
上記成分を除いた残部はFe及び不可避的不純物である。通常添加されるNbは添加しない。不可避的不純物としての存在は許容できるが、0.005%以下に留めるのが望ましい。本発明の適用されるウェブ厚の大きい鋼矢板においてNbが存在すると、その中間圧延時においてオーステナイトの再結晶を遅延し、その再結晶細粒化が抑制されて鋼組織が粗大化し、さらに上部ベイナイトの生成が促進されて母材の靱性が大きく低下するが、その制限により高靭性の付与が可能になる。そのことは次の実験結果から明かである。
【0020】
0.14%C−0.3%Si−1.4%Mnを基本合金成分組成とし、これにNbを0.002%、0.015%および0.038%を含み、残部実質的にFeからなる鋼を溶製した。これらに対し厚肉鋼矢板のウェブ部の圧延に相当するラボ圧延を行い27mm厚の鋼板を製造した。なお、加熱温度は1300℃であり、中間圧延の圧下率/パスは10%以上とした。また、最終パス圧下量は10%、圧延仕上げ温度は1020℃とし、圧延終了後は空冷した。図1、図2に、得られた製品の強度と靱性のバランスをNb含有量をパラメータとして示す。図1、図2から分かるように実質的にNbを含有しない鋼ではvTrsが低く靭性が高いのに対して、Nbを添加した鋼では靱性が大きく低下している。
【0021】
本発明では上記の成分バランスを保つことが必要であるが、さらに以下の諸元素を含有させることができる。
【0022】
Cu:0.6%以下,Ni:0.5%以下,Cr:0.5%以上,Mo:0.5%以下,V:0.10%以下の1種又は2種以上
これらの元素は実質的にAr3温度を低温化することにより強度上昇に寄与するので適量含有させることができる。しかし、過度に含有させてもコストが上昇するのでCuは0.6%以下、Niは0.5%以下、Crは0.5%以下、Moは0.5%以下、Vは0.10%以下の範囲とする。
【0023】
Ca:0.0010〜0.0050%,REM:0.003〜0.015%の1種又は2
これらの元素は、HAZの靱性を一層向上させる。しかし過度の含有は鋼の清浄性を極端に低下させ、母材靱性を低下させる。したがって上限をCaについては0.0050%、REMについては0.015%とし、それらの効果が認められる範囲で含有させることができる。
【0024】
Ceq:0.46%以下
低温溶接割れ抑制の観点から0.46%以下が望ましい。
【0025】
(組織)
本発明鋼は、微細なフェライト−パーライトからなる組織を有する。これにより母材の靭性が確保される。上部ベーナイトの生成は母材の靭性を著しく低下させるので避けなければならない。なお、鋼矢板として必要な強度及び靭性を得るためには金属組織は微細であることが好ましく、フェライト結晶粒度番号6以上とするのがよい。なお、パーライトについては生成すれば十分であるので、その大きさについては特に限定しない。
【0026】
(製造方法)
本発明のウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板は、図3に示すようにブレークダウン圧延、中間圧延、及び爪曲げ成形を含む仕上げ圧延によって製造されるが、その際以下の点に留意するのが望ましい。まず、素材の加熱温度は1200〜1320℃とするのがよい。これはブレークダウン圧延および中間圧延時の圧下量を10%/パス以上確保し、オーステナイト結晶粒の再結晶とその細粒化を図るためである。加熱温度を1200℃以上でないと変形抵抗が大きくなりすぎ、一方、1320℃を超えると、スケールロスや加熱炉原単位の増加を招く。
【0027】
中間圧延を950℃以上で完了させ、その後爪曲げ成形圧延を行う。爪曲げ成形前の中間圧延温度が950℃未満となると、Nbを実質的に含有しない鋼であってもオーステナイトの完全再結晶化が抑制され、靱性が低下する。したがって中間圧延温度を950℃以上とする。中間圧延温度の上限は特に設ける必要はないが、オーステナイトの粒成長を抑制させる観点から1100℃以下とすることが好ましい。なお、ブレークダウン圧延は中間圧延に先行するので、上記中間圧延条件を遵守すれば十分である。また、上記中間圧延時の最終パス圧下量は10%以上とするのがよい。これにより母材の靭性の確保が一層確実になる。
【0028】
上記中間圧延後、爪曲げ圧延が行われる。その工程は常法に従えばよいが、その終了後空冷することが望ましい。これにより微細なフェライト+パーライト組織の形成が行われ、母材靱性が高められる。なお、爪曲げ成形圧延の際に、ウェブを水冷することも可能であり、これにより母材の強度上昇を図り得る。ただし靱性に有害な上部ベーナイトの生成を抑える条件の選定が必要で、冷却停止温度500℃以上として靱性および延性の確保を図らなければならない。
【0029】
【実施例】
表2に示す組成を有する素材を表3に示す条件で処理してウェブ厚24.3mm、5Lサイズの厚肉鋼矢板を製造した。得られた製品鋼矢板のウェブ高さ1/4部より全厚引張試験片および1/4部よりシャルピー衝撃試験片を採取し、その機械的性質を調査した。その結果は表4に示すとおりである。ここに示すように、発明例(A〜E)では、0℃での吸収エネルギー(vE0)が100J以上と高く、靱性に優れた鋼矢板となっている。たとえば、発明例はCおよび炭素当量が低く、溶接性やHAZ靱性を向上させた成分系となっている。これに対し比較例(F,G)及び従来例(H)ではともにvE0が低く、護岸用厚肉鋼矢板としては性能が不十分であった。
【0030】
【表2】
Figure 0003785940
【0031】
【表3】
Figure 0003785940
【0032】
【表4】
Figure 0003785940
【0033】
【発明の効果】
本発明の厚肉鋼矢板は水中溶接など極めて厳しい条件下で溶接を行っても溶接割れを発生することなく、かつ母材靭性が高く、容易に脆性破壊を起こさないののであるので、これを利用して地震等の災害時によく耐える岸壁の護岸工事をより確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 厚肉鋼矢板の靭性(vTrs)と強度(TS)に及ぼすNb含有量の影響を示すグラフである。
【図2】 厚肉鋼矢板の靭性(vTrs)と強度(YP)に及ぼすNb含有量の影響を示すグラフである。
【図3】 本発明による鋼矢板の製造工程の概略模式図である。

Claims (4)

  1. 質量比でC:0.05〜0.18%、Si:0.05〜0.55%、Mn:0.6〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.005〜0.025%、N:0.0060%以下、残部:Feおよび不可避的不純物からなるとともに該不可避的不純物としての Nb 0.003% 以下に制限されている鋼組成を有し、かつ微細なフェライト−パーライトからなる組織を有することを特徴とするウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板。
  2. 鋼組成は、さらに質量比で(1) Cu:0.1〜0.6%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、V:0.010〜0.10%から選んだ1種若しくは2種以上及び/又は(2) Ca:0.0010〜0.0050%、REM:0.003〜0.015%の1種若しくは2種を含有することを特徴とする請求項1のウェブ厚が15mm以上の高靭性鋼矢板。
  3. 鋼素材を1200〜1320℃に加熱後、ブレークダウン圧延、中間圧延、及び爪曲げ成形を含む仕上げ圧延によりウェブ厚15mm以上の鋼矢板を製造するにあたって、
    前記鋼素材を質量比でC:0.05〜0.18%、Si:0.05〜0.55%、Mn:0.6〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.005〜0.025%、N:0.0060%以下、残部:Feおよび不可避的不純物からなるものとするとともに該不可避的不純物としての Nb 0.003% 以下に制限されているものとし、かつ前記中間圧延の終了温度を950℃以上とすることを特徴とするウェブ厚が15mm以上の高靱性鋼矢板の製造方法。
  4. 鋼素材は、さらに質量比で、(1) Cu:0.1〜0.6%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%、V 0.010 0.10% から選んだ1種若しくは2種以上及び/又は(2) Ca:0.0010〜0.0050%、REM:0.003〜0.015%の1種若しくは2種を含有することを特徴とする請求項記載のウェブ厚が15mm以上の高靱性鋼矢板の製造方法。
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