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JP3789176B2 - 円筒状複層摺動部材およびその製造方法 - Google Patents
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JP3789176B2 - 円筒状複層摺動部材およびその製造方法 - Google Patents

円筒状複層摺動部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状複層摺動部材およびその製造方法に関するものであり、表面に熱可塑性樹脂のすべり層を具備し、特に、高荷重用途の使用に適した円筒状複層摺動部材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特に耐摩耗性、耐荷重性を向上させることを目的とした熱可塑性樹脂摺動部材としては、金属裏金に熱可塑性樹脂を薄層として被着させた複層構成の摺動部材が知られており、例えば、鋼板上に多孔質焼結金属層を形成し、当該多孔質焼結金属層に熱可塑性樹脂を含浸被着させた摺動部材(特公昭31−2452号公報)、金属金網に熱可塑性樹脂を充填被覆し、これを軸受台片に結合させた摺動部材(実公昭48−4411号公報)、更には、鋼板上に接着層を形成し、当該接着層に熱可塑性樹脂を被着させた摺動部材などが挙げられる。
【0003】
上記の複層構成の摺動部材においては、熱可塑性樹脂が比較的軟質であっても、それが鋼などの裏金上に薄層として被着されていると、樹脂自体の撓みやへたりを生ずることがないから、結果として、摺動部材としての耐摩耗性、耐荷重性が向上する。また、摺動面において生じた摩擦熱が薄い樹脂層を介して裏金に容易に伝わり、そして、摺動部材から放熱されるため、温度上昇を低く抑えることができ、上述した性能が一層助長される。さらに、樹脂の膨張、収縮あるいは経年変化も受け難いから、摺動部材としての寸法安定性が著しく向上する。
【0004】
そして、特公昭31−2452号公報に開示された摺動部材、および、鋼板上に接着層を介して合成樹脂が被着された摺動部材においては、平板状の複層構造体を作製した後、これを円筒状に捲回することにより、円筒状複層摺動部材を得ることが出来る。また、実公昭48−4411号公報に開示された摺動部材においては、金属金網に合成樹脂を充填被覆したライナーを円筒状裏金の内周面に結合することによって円筒状複層摺動部材を得ることが出来る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の各円筒状複層摺動部材においては、次のような問題も残される。すなわち、特公昭31−2452号公報などの構造を利用した前者の円筒状複層摺動部材の場合には、円筒状に捲回するのに曲げ加工を必要とするため、裏金を構成する鋼板の厚みが制限される。従って、厚い裏金が必要とされる場合には、薄い裏金を使用した摺動部材を円筒状に捲回した後、更に、円筒状のハウジングに圧入しなければならないと言う製造上の煩雑さがある。他方、実公昭48−4411号公報の構造を利用した後者の円筒状複層摺動部材の場合には、合成樹脂を充填被覆した金属金網を接着剤等によりハウジングの内周面に結合させるため、摩擦条件によっては結合力が不充分である。
【0006】
また、上記の各円筒状複層摺動部材においては、突き合わせ部が生じるため、すなわち、摺動面に不連続部分が生じるため、この部分に荷重点が作用すると、そこからすべり層にヘタリ等の損傷を生ずる恐れがある。さらに、苛酷な摩擦条件下では樹脂層が摺動面において溶融流動したり、裏金から剥離するという問題を生じる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、その目的は、裏金との充分な結合力を得ることができ、苛酷な摩擦条件下でも樹脂層が摺動面において溶融流動したり、裏金から剥離することがなく、かつ、製造を簡略化でき、しかも、摺動面に不連続部分を生ずることのない円筒状複層摺動部材及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記の課題は、鋼管から成る裏金と、当該裏金の内周面に接合された銅合金から成るエキスパンドメタルと、当該エキスパンドメタルと共に裏金の表面を被覆する熱可塑性樹脂から成るすべり層とから構成された円筒状複層摺動部材であって、前記エキスパンドメタルは、その網の各結合部の表面側および裏面側が平坦面に形成され且つ各結合部が前記裏金に対して拡散接合されてクサビ状の樹脂係合部を形成し、前記エキスパンドメタルの網目は、網の各辺と前記裏金の内周面との間に形成された微小間隙を介して連続し、しかも、前記すべり層を形成する熱可塑性樹脂は、前記エキスパンドメタルの前記網目、前記クサビ状の樹脂係合部および前記微小間隙に充填されていることを特徴とする円筒状複層摺動部材によって達成される。
【0009】
また、本発明の上記の課題は、鋼管から成る裏金と、当該裏金の内周面に接合された銅合金から成るエキスパンドメタルと、当該エキスパンドメタルと共に裏金の表面を被覆する熱可塑性樹脂から成るすべり層とから構成される円筒状複層摺動部材の製造方法であって、次の(イ)〜(ニ)の工程、すなわち、
(イ)エキスパンドメタルをその肉厚方向に加圧することにより、当該エキスパンドメタルの各結合部の表面側および裏面側を平坦面に形成する工程、
(ロ)裏金の内周面に沿って前記エキスパンドメタルを挿入し、当該エキスパンドメタルのスプリングバック力により前記裏金の内周面に前記各結合部の平坦面を圧接保持する工程、
(ハ)前記エキスパンドメタルが挿入された前記裏金を不活性雰囲気、還元性雰囲気または真空雰囲気に調整された800〜1000℃の温度の加熱炉内で20〜60分間加熱して前記エキスパンドメタルの前記各結合部を前記裏金の内周面に拡散接合することにより、前記各結合部と前記裏金の内周面との間にクサビ状の樹脂係合部が形成され且つ前記エキスパンドメタルの網の各辺と前記裏金の内周面との間の微小隙間を介して前記エキスパンドメタルの網目が連続する摺動部材基体を得る工程、
(ニ)前記摺動部材基体の内側に中子を挿入し、これを射出成形機の金型内にセットした後、前記摺動部材基体の内面と前記中子との隙間に熱可塑性樹脂を射出成形することにより、前記エキスパンドメタルの表面が熱可塑性樹脂によって被覆され、かつ、熱可塑性樹脂が前記エキスパンドメタルの網目、前記クサビ状の樹脂係合部および前記微小間隙に充填されたすべり層を形成する工程から成ることを特徴とする円筒状複層摺動部材の製造方法によって達成される。
【0010】
さらに、上記の製造方法では、(ロ)の工程において、挿入されたエキスパンドメタルの内周側に微小隙間を介在させてステンレス鋼から成るパイプを挿入し、(ハ)の工程において、前記パイプと裏金を熱膨張させつつ前記エキスパンドメタルの各結合部を前記裏金の内周面に拡散接合した後、前記パイプを除去すようにしてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る円筒状複層摺動部材およびその製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る円筒状複層摺動部材を示す外観斜視図である。図2は、図1に示す円筒状複層摺動部材を展開した状態を示す一部破断の平面図である。図3は、図2におけるIII −III 矢視断面図である。
【0012】
本発明の円筒状複層摺動部材は、図1及び図2に示すように、鋼管から成る裏金1と、当該裏金の内周面に接合された銅合金から成るエキスパンドメタル2と、当該エキスパンドメタルと共に裏金1の表面を被覆する熱可塑性樹脂から成るすべり層3とから構成されている。エキスパンドメタル2は、図3に示すように、その網の各結合部22が裏金1に対して一体的に拡散接合されてクサビ状の樹脂係合部4を形成し、しかも、エキスパンドメタル2の網の各辺23と裏金1の内周面との間には微小隙間5が形成されており、エキスパンドメタル2の網目は微小隙間5を介して連続している。そして、すべり層3を形成する熱可塑性樹脂は、エキスパンドメタル2の網目21、クサビ状の樹脂係合部4及び微小間隙5に充填されている。なお、クサビ状の樹脂係合部4とは、裏金1とエキスパンドメタル2の網の各結合部22との間に形成されるクサビ状の隙間を言う。
【0013】
本発明において、裏金1を構成する鋼管とは、いわゆる丸又は角断面の素材を用いて継目無く製造された鋼管に加え、鋼板又は鋼帯を管状に成形しその継目を電気抵抗溶接、鍛接、アーク溶接等により接合して製造された鋼管を含む。
【0014】
エキスパンドメタル2は、周知のとおり、金属薄板に対し、所定ピッチで直線的に連続させ且つ各列毎に位相差を設けて一定の長さの切り込み加工を行なうと共に当該切り込みを拡開することにより、略矩形(ダイヤ形)等の規則正しい網目列を形成した金網状の金属薄板である。このエキスパンドメタル2は、熱可塑性樹脂のすべり層3を補強し、摺動部材の荷重支持部としての役割を果たすものである。
【0015】
エキスパンドメタル2の材料としては、リン青銅、黄銅、ベリリウム銅、洋白、アルミニウム青銅等の銅合金が使用される。エキスパンドメタル2の厚さ(エキスパンド加工前の原板の厚さ)は0.1〜1.5mm程度、その刻み幅は0.5〜1.2mm程度、網目21の長手の対角線長さは1.0〜12.0mm程度、網目21の短手の対角線長さは1.0〜10.0mm程度である。斯かる具体的な寸法および網目21における形状のバリエーションは種々採用し得るが、本発明においては、1つの網目21の開口面積が1〜60mm2であり、かつ、全網目21の開口率が30〜70%のエキスパンドメタルを例示することができる。
【0016】
エキスパンドメタル2は、その各結合部22において裏金1の内周面に拡散接合されて裏金1の内周面との間にクサビ状の樹脂係合部4を形成し、かつ、エキスパンドメタル2の網目21は、網の各辺23と裏金1の内周面との間に形成された微小隙間5を介して連続しているため、裏金1の内周面に対する剥離強度が高められ、後述する熱可塑性樹脂との結合が高められる。
【0017】
裏金1の内周面に拡散接合されたエキスパンドメタル2の各結合部22はその先端部が平坦面24とされているのが好ましい。エキスパンドメタル2の各結合部22に平坦面24を形成した場合には、結合部が先鋭な通常のエキスパンドメタルを使用した場合に比べ、相手材との摺動において、結合部22の平坦面24全面で均等に荷重を支持するため、熱可塑性樹脂のすべり層3を破壊することがない。また、万一、すべり層3が摩耗し、エキスパンドメタル2が直接摺動状態となった場合でも、エキスパンドメタル2の結合部22によって相手材の表面を損傷させることがない。
【0018】
すべり層3を形成する熱可塑性樹脂は、ナイロン12、ナイロン66、高分子量のナイロン11などのポリアミド樹脂、アセタールコポリマー、アセタールホモポリマーなどのポリオキシメチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択される。
【0019】
また、すべり層3の摺動特性の向上を目的として、これらの熱可塑性樹脂には、潤滑油、グリース、ワックス、脂肪酸、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、鉛、鉛合金、リン酸塩などの潤滑油剤が配合されていてもよい。斯かる潤滑油剤の配合量は、0.5〜10重量%程度である。
【0020】
さらに、すべり層3の耐摩耗性を向上させることを目的とし、上記の熱可塑性樹脂、または、潤滑油剤が配合された熱可塑性樹脂には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカ、金属繊維などの繊維補強材が配合されていてもよい。斯かる繊維補強材の配合量は、5〜40重量%程度である。
【0021】
上記の熱可塑性樹脂は、エキスパンドメタル2の各結合部22を被覆しており、さらに、エキスパンドメタル2の網目21、クサビ状の樹脂係合部4、および、網の各辺23と裏金1の内周面との間の微小隙間5に充填されている。その結果、熱可塑性樹脂は、エキスパンドメタル2に強固に一体化されたすべり層3を形成している。このように、クサビ状の樹脂係合部4と共に微小隙間5を充填して構成されたすべり層3は、エキスパンドメタル2に強固に一体化されるため、すべり層3が摩耗してエキスパンドメタル2が露出した場合でも、エキスパンドメタル2の網目21に充填された熱可塑性樹脂によって良好な摩擦特性を維持することができる。
【0022】
本発明の円筒状複層摺動部材は、次のようにして製造される。第一の製造方法は、内径が比較的小さい場合、具体的には内径が約40mm以下の場合の円筒状複層摺動部材の製造方法である。先ず、裏金1として所定寸法の鋼管を用意する。次いで、銅合金から成るエキスパンドメタル2を用意し、これを肉厚方向に加圧することにより、エキスパンドメタル2の各結合部22の先端先鋭部を潰し、各結合部22の表面側および裏面側を平坦面に形成する。エキスパンドメタル2の加圧方法としては、例えば、圧延ロールによって圧延する方法が挙げられる。
【0023】
続いて、各結合部22に平坦面を形成したエキスパンドメタル2を裏金1の内周面に沿って挿入し、エキスパンドメタル2のスプリングバック力により、裏金1の内周面に対して各結合部22の平坦面を圧接してエキスパンドメタル2を保持させる。
【0024】
次いで、エキスパンドメタル2を圧接保持した裏金1を不活性雰囲気、還元性雰囲気または真空雰囲気に調整された加熱炉に装入して800〜1000℃の温度で20〜60分間加熱し、エキスパンドメタル2の各結合部22を裏金1の内周面に拡散接合する。これにより、裏金1の内周面にエキスパンドメタル2を接合一体化させた摺動部材基体が得られる。
【0025】
上記の工程によって得られた摺動部材基体においては、各結合部22と裏金1の内周面との間にクサビ状の樹脂係合部4が形成されており、しかも、エキスパンドメタル2の網の各辺23と裏金1の内周面との間の微小隙間5を介してエキスパンドメタル2の網目21が連続している。
【0026】
次いで、上記の摺動部材基体の内側に中子を挿入し、これを射出成形機の金型内にセットした後、摺動部材基体の内面と中子との隙間に熱可塑性樹脂を射出成形する。この工程により、エキスパンドメタル2の表面が熱可塑性樹脂によって被覆され、かつ、熱可塑性樹脂がエキスパンドメタル2の網目21、クサビ状の樹脂係合部および微小間隙に充填されたすべり層3を形成し、そして、円筒状複層摺動部材を得る。
【0027】
次に、本発明の第二の製造方法を説明する。第二の製造方法は内径が比較的大きい場合、具体的には内径が約40mm以上の場合の円筒状複層摺動部材の製造方法である。先ず、第一の製造方法と同様に、裏金1としての鋼管および銅合金から成るエキスパンドメタル2を用意し、エキスパンドメタル2を加圧してその各結合部22の表面側および裏面側を平坦面に形成する。
【0028】
次いで、各結合部22に平坦面を形成したエキスパンドメタル2を円筒状に捲回し、これを裏金1の内周面に沿って挿入する。その際、結合部22で画定されるエキスパンドメタル2の外径面が接触するように挿入すると、第一の製造方法と同様に、エキスパンドメタル2はそのスプリングバック力により裏金1の内周面に保持することができる。そして、裏金1に保持されたエキスパンドメタル2の内周側に微小隙間を介在させてステンレス鋼から成るパイプを挿入する。
【0029】
続いて、エキスパンドメタル2及びパイプが挿入された裏金1を第一の製造方法と同様の条件下で加熱する。この工程においては、ステンレス鋼から成るパイプと裏金1の双方を熱膨張させ、同時に、パイプと裏金1との間に介在するエキスパンドメタル2の裏金1の内周面側に対する接触圧力を一層高めることにより、エキスパンドメタル2の各結合部22を裏金1の内周面に拡散接合し、裏金1の内周面に各結合部22を一体化させる。そして、エキスパンドメタル2を接合した後、パイプを取り外して摺動部材基体を得る。
【0030】
上記の工程によって得られた摺動部材基体においては、第一の製造方法によって得られた基体と同様に、各結合部22と裏金1の内周面との間にクサビ状の樹脂係合部4が形成されており、かつ、エキスパンドメタル2の網の各辺23と裏金1の内周面との間の微小隙間5を介してエキスパンドメタル2の網目21が連続している。しかも、エキスパンドメタル2を裏金1に接合する際にパイプの膨張力を作用させるため、エキスパンドメタル2と裏金1が一層強固に接合されている。
【0031】
次いで、第一の製造方法と同様に、摺動部材基体の内側に中子を挿入して射出成形機にセットした後、摺動部材基体の内面と中子との隙間に熱可塑性樹脂を射出成形する。そして、この工程により、エキスパンドメタル2の表面が熱可塑性樹脂によって被覆され、かつ、熱可塑性樹脂がエキスパンドメタル2の網目21、クサビ状の樹脂係合部および微小間隙に充填されたすべり層3を形成し、円筒状複層摺動部材を得る。
【0032】
上記の第二の製造方法は、ステンレス鋼から成るパイプの膨張力を利用することにより、エキスパンドメタル2と裏金1との接合力を一層高めたものであり、エキスパンドメタル2を裏金1の内周面へ強固に拡散接合させるための寸法関係(条件)は次の通りである。
【0033】
上述の接合工程では、不活性雰囲気中、還元性雰囲気中あるいは真空雰囲気中において、温度T℃に加熱した際、鋼管からなる裏金1に挿入されたエキスパンドメタル2とステンレス製パイプとが接触し、両者の間の隙間が0の場合に以下の式が成り立つ。
【0034】
【数1】
裏金内径×〔1+1.2×10-5×(T−室温)〕−エキスパンドメタル厚×2=ステンレス製パイプ外径×〔1+1.78×10-5×(T−室温)〕
【0035】
上式中、1.2×10-5は裏金の熱膨張係数、1.78×10-5はステンレス製パイプの熱膨張係数である。なお、エキスパンドメタルは熱応力が分散しやすいため、エキスパンドメタル自体の熱膨張量は無視できる。
【0036】
一例を示すと、裏金の内径を61.5mm、エキスパンドメタルの厚さを0.75mm、加熱温度を900℃、室温を20℃としたとき、上式から60.65=1.016×ステンレス製パイプ外径となり、ステンレス製パイプ外径は59.69mmとなる。内径が60mmのエキスパンドメタル2に対し、外径が59.69mmのステンレス製パイプを使用した場合、エキスパンドメタル2とステンレス製パイプは接触するが、両者の間には接触圧力は発生していない。したがって、外径が59.69mmを超え、60mm未満の寸法のステンレス製パイプを使用することにより、両者の間に高い接触圧力を発生させることができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
裏金として、内径が32.2mm、外径が50mm、長さが40mmの継目無鋼管(機械構造用炭素鋼鋼管STKM13C)を使用した。エキスパンドメタルは、0.64mmの板厚のリン青銅板にエキスパンド加工を施して作製し、その網目は、短手方向長さが3.0mm、長手方向長さが4.4mmのダイヤ形状の網目とした。そして、斯かるエキスパンドメタルを圧延ロールにて押圧し、エキスパンドメタルの各結合部に平坦面を形成した。加工後のエキスパンドメタルは、厚さが0.75mm、幅が39.5mm、長さが101.2mmである。
【0038】
次いで、裏金の内周面に沿ってエキスパンドメタルを挿入し、エキスパンドメタルのスプリングバック力により、裏金の内周面にエキスパンドメタル各結合部を圧接させた。このときのエキスパンドメタルの内径は30.7mmである。
【0039】
エキスパンドメタルを圧接保持した裏金を不活性雰囲気に調整した加熱炉内において900℃の温度で60分間加熱することにより、裏金の内周面にエキスパンドメタルを拡散接合して摺動部材基体を作製した。斯かる摺動部材基体においては、エキスパンドメタルの各結合部と裏金の内周面との間にクサビ状の樹脂係合部が形成され、かつ、エキスパンドメタルの網の各辺と裏金内周面との間に微小隙間が形成され、そして、斯かる微小隙間を介してエキスパンドメタルの網目が連続していることを確認した。また、エキスパンドメタルの裏金内周面への接合強度は200kgf/cm2であった。
【0040】
続いて、摺動部材基体のエキスパンドメタルの内面に29.1mmの直径の中子を挿入し、これをスクリュー型射出成形機の金型内にセットした後、ポリアミド樹脂(ダイセル社製12ナイロン、商品名「ダイアミド」)粉末に固体潤滑剤として二硫化モリブデンを3重量%配合したポリアミド樹脂組成物をエキスパンドメタルの内面と中子との隙間に射出成形した。成形後、内周面に機械加工を施してエキスパンドメタルの表面に0.3mmの厚さのすべり層を有する円筒状複層摺動部材を得た。
【0041】
得られた円筒状複層摺動部材において、すべり層を形成するポリアミド樹脂組成物は、エキスパンドメタルの表面に被覆されており、しかも、エキスパンドメタルの網目、エキスパンドメタルの各結合部と裏金の内周面との間のクサビ状の樹脂係合部、および、エキスパンドメタルの各辺と裏金内周面との間の微小隙間に流動状態で充填され、エキスパンドメタルに強固に一体化されていた。
【0042】
実施例2
裏金として、内径が62.25mm、外径が75mm、長さが40mmの継目無鋼管(機械構造用炭素鋼鋼管STKM13C)を使用し、また、エキスパンドメタルとして、実施例1と同様のものを使用した。実施例1と同様に圧延加工したエキスパンドメタルは、厚さが0.75mm、幅が39.5mm、長さが195.6mmであった。そして、斯かるエキスパンドメタルを円筒状に捲回し、エキスパンドメタルの外面を裏金の内周面に接触させて挿入した。なお、挿入されたエキスパンドメタルの内径は60.75mmであった。
【0043】
次いで、裏金に挿入した円筒状エキスパンドメタルの内周側にオーステナイト系のステンレス製パイプを挿入した。ステンレス製パイプとしては、内径が54.9mm、外径が60.5mm、長さが40mmのパイプを使用した。また、その際、エキスパンドメタルの内周面とステンレス製パイプの外周との隙間は0.125mmであった。
【0044】
エキスパンドメタル及びステンレス製パイプを挿入した裏金を実施例1と同条件で加熱し、裏金の内周面にエキスパンドメタルを拡散接合した。そして、ステンレス製パイプを取り外して摺動部材基体を作製した。斯かる摺動部材基体においては、実施例1と同様に、クサビ状の樹脂係合部および微小隙間が形成され、そして、微小隙間を介してエキスパンドメタルの網目が連続していることを確認した。また、エキスパンドメタルの裏金内周面への接合強度は500kgf/cm2であった。
【0045】
続いて、摺動部材基体のエキスパンドメタルの内面に59.15mmの直径の中子を挿入し、摺動部材基体の内面と中子との隙間に実施例1と同条件で同様のポリアミド樹脂組成物を射出成形した。そして、成形後、内周面に機械加工を施してエキスパンドメタルの表面に0.3mmの厚さのすべり層を有する円筒状複層摺動部材を得た。得られた円筒状複層摺動部材において、すべり層を形成するポリアミド樹脂組成物は、実施例1と同様に、エキスパンドメタルの表面に被覆され、しかも、エキスパンドメタルの網目、クサビ状の樹脂係合部および微小隙間に流動状態で充填され、エキスパンドメタルに強固に一体化されていた。
【0046】
実施例3
裏金として実施例2と同様の機械構造用炭素鋼鋼管を使用し、エキスパンドメタルとして実施例2と同様に加工されたものを使用し、そして、エキスパンドメタルを円筒状に捲回してその外面を裏金の内周面に接触させて挿入した。挿入されたエキスパンドメタルの内径は60.75mmであった。次いで、裏金に挿入した円筒状エキスパンドメタルの内周側にオーステナイト系のステンレス製パイプを挿入した。その際、ステンレス製パイプは、内径が54.9mm、外径が60.65mm、長さが40mmのパイプであり、エキスパンドメタルの内周面とステンレス製パイプの外周との隙間は0.05mmであった。
【0047】
エキスパンドメタル及びステンレス製パイプを挿入した裏金を実施例1と同条件で加熱し、裏金の内周面にエキスパンドメタルを拡散接合した。そして、ステンレス製パイプを取り外して摺動部材基体を作製した。斯かる摺動部材基体においては、実施例1と同様に、クサビ状の樹脂係合部および微小隙間が形成され、そして、微小隙間を介してエキスパンドメタルの網目が連続していることを確認した。また、エキスパンドメタルの裏金内周面への接合強度は600kgf/cm2であった。
【0048】
続いて、実施例2と同様の中子を挿入し、これをスクリュー型射出成形機の金型内にセットした後、実施例1と同条件で且つ実施例1と同様のポリアミド樹脂組成物を射出成形した。そして、成形後、内周面に機械加工を施してエキスパンドメタルの表面に0.3mmの厚さのすべり層を有する円筒状複層摺動部材を得た。得られた円筒状複層摺動部材において、ポリアミド樹脂組成物は、実施例1と同様に、エキスパンドメタルの表面に被覆され、しかも、エキスパンドメタルの網目、クサビ状の樹脂係合部および微小隙間に流動状態で充填され、エキスパンドメタルに強固に一体化されていた。
【0049】
実施例4
すべり層の射出成形工程において、樹脂組成物として、12ナイロン59重量%、66ナイロン24重量%、二硫化モリブデン3重量%、潤滑油1重量%およびガラス繊維13重量%(長さ10mmのガラス長繊維35重量%入り66ナイロンを原料とする)よりなるポリアミド樹脂組成物を用いた以外は、実施例3と同様の方法によって円筒状複層摺動部材を得た。ポリアミド樹脂組成物は、実施例1と同様に、エキスパンドメタルの表面に被覆され、しかも、エキスパンドメタルの網目、クサビ状の樹脂係合部および微小隙間に流動状態で充填され、エキスパンドメタルに強固に一体化されていた。
【0050】
比較例1
金属裏金として、厚さ1.6mmの冷間圧延鋼板を用意し、この鋼板上に平均粒度が50メッシュの銅合金(Cu90−Sn10)粉末を散布した後、還元性雰囲気中820〜830℃の温度で40分間焼結し、鋼板上に厚さ0.4mmの多孔質焼結層を形成した。次いで、多孔質焼結層に実施例1と同様のポリアミド樹脂組成物の粉末を散布し、粉末の厚さを一定に且つその表面を平にした後、215〜230℃の温度の電気炉内で90秒間加熱した。そして、ロール圧延した後に冷却し、多孔質焼結層の表面に0.3mmの厚さのすべり層を有する複層摺動部材を作製した。
【0051】
次いで、すべり層を内側にして複層摺動部材に曲げ加工を施し、内径が60.15mm、外径が64.75mm、長さが40mmの円筒状に捲回した後、これを内径が64.75mm、外径が75mm、長さが40mmの継目無鋼管(機械構造用炭素鋼鋼管:STKM13C)に圧入し、円筒状複層摺動部材を得た。
【0052】
比較例2
金属裏金として、厚さ1.6mmの冷間圧延鋼板を用意し、当該鋼板にショットブラストを施した後、溶剤洗浄によって脱脂した。次いで、鋼板の表面にフェノール変性アルキッド樹脂プライマーを塗布し、250〜300℃の温度で0.03mmの厚さに焼付けた。このプライマー処理を施した鋼板の表面に実施例1と同様のポリアミド樹脂組成物粉末を散布し、粉末の厚さを一定に且つその表面を平にならして215〜230℃の温度の電気炉内で90秒間加熱した。そして、ロール圧延した後に冷却し、プライマー層の表面に0.3mmの厚さのすべり層を有する複層摺動部材を作製した。
【0053】
次いで、すべり層を内側にして複層摺動部材に曲げ加工を施し、内径が60.15mm、外径が63.95mm、長さが40mmの円筒状に捲回した後、これを内径が63.95mm、外径が75mm、長さが40mmの継目無鋼管(機械構造用炭素鋼鋼管:STKM13C)に圧入し、円筒状複層摺動部材を得た。
【0054】
次に、上述した実施例および比較例で得た円筒状複層摺動部材の摺動特性について行なった試験およびその結果について述べる。摺動特性については、表1に示すジャーナル試験によって耐久性を評価した。
【0055】
【表1】
Figure 0003789176
【0056】
上記試験条件により行なった試験結果は表2のとおりである。
【0057】
【表2】
Figure 0003789176
【0058】
以上のジャーナル揺動試験においては、実施例1〜4の円筒状複層摺動部材は750kgf/cm2という極めて厳しい荷重条件においても低い摩擦係数で安定した性能を発揮し、摩耗量においても20μm以下という極めて低い値を示した。これに対し、比較例1の円筒状複層摺動部材は、15,000サイクル位からすべり層に摩耗を生じ、多孔質焼結層が摺動状態となっため、摩擦係数の急激な上昇が認められた。また、比較例2の円筒状複層摺動部材においては、すべり層と裏金との間に剥離を生じたため、試験を中止した。表中の摩擦係数は試験開始直後の値を示し、摩耗量は測定できなかった。
【0059】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の円筒状複層摺動部材によれば、エキスパンドメタルの各結合部が裏金に対して拡散接合されて裏金の内周面との間にクサビ状の樹脂係合部を形成し、かつ、エキスパンドメタルの網目は、網の各辺と裏金内周面との間の微小隙間を介して連続しており、しかも、エキスパンドメタルの表面を被覆してすべり層を形成する熱可塑性樹脂は、エキスパンドメタルの網目、エキスパンドメタルの各結合部と裏金内周面との間のクサビ状の樹脂係合部および各辺と裏金内周面との間の微小隙間に充填されている。すなわち、裏金、エキスパンドメタルおよび熱可塑性樹脂の三者が強固に固着されているため、裏金に対する剥離強度が高められ、苛酷な荷重条件下においても、エキスパンドメタルからのすべり層の剥離、溶融流動等を生じることなく、優れた摺動特性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る円筒状複層摺動部材を示す外観斜視図である。
【図2】本発明に係る円筒状複層摺動部材を展開した状態を示す一部破断の平面図である。
【図3】図2におけるIII −III 矢視断面図である。
【符号の説明】
1:裏金
2:エキスパンドメタル
21:網目
22:結合部
23:辺
24:平面部
3:すべり層
4:クサビ状の樹脂係合部
5:微小隙間

Claims (11)

  1. 鋼管から成る裏金と、当該裏金の内周面に接合された銅合金から成るエキスパンドメタルと、当該エキスパンドメタルと共に裏金の表面を被覆する熱可塑性樹脂から成るすべり層とから構成された円筒状複層摺動部材であって、前記エキスパンドメタルは、その網の各結合部の表面側および裏面側が平坦面に形成され且つ各結合部が前記裏金に対して拡散接合されてクサビ状の樹脂係合部を形成し、前記エキスパンドメタルの網目は、網の各辺と前記裏金の内周面との間に形成された微小間隙を介して連続し、しかも、前記すべり層を形成する熱可塑性樹脂は、前記エキスパンドメタルの前記網目、前記クサビ状の樹脂係合部および前記微小間隙に充填されていることを特徴とする円筒状複層摺動部材。
  2. エキスパンドメタルの1つの網目の開口面積が1〜60mmであり、かつ、前記エキスパンドメタルの全網目の開口率が30〜70%である請求項1に記載の円筒状複層摺動部材。
  3. すべり層を形成する熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の群から選択される樹脂である請求項1又は2に記載の円筒状複層摺動部材。
  4. 熱可塑性樹脂のすべり層は、潤滑油、グリース、ワックス、脂肪酸、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、鉛、鉛合金、リン酸塩から選択される1種又は2種以上の潤滑油剤を0.5〜10重量%の割合で含有している請求項に記載の円筒状複層摺動部材。
  5. 熱可塑性樹脂のすべり層は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカ、金属繊維から選択される1種又は2種以上の繊維補強材を5〜40重量%の割合で含有している請求項3又は4に記載の円筒状複層摺動部材。
  6. 鋼管から成る裏金と、当該裏金の内周面に接合された銅合金から成るエキスパンドメタルと、当該エキスパンドメタルと共に裏金の表面を被覆する熱可塑性樹脂から成るすべり層とから構成される円筒状複層摺動部材の製造方法であって、次の(イ)〜(ニ)の工程、すなわち、(イ)エキスパンドメタルをその肉厚方向に加圧することにより、当該エキスパンドメタルの各結合部の表面側および裏面側を平坦面に形成する工程、(ロ)裏金の内周面に沿って前記エキスパンドメタルを挿入し、当該エキスパンドメタルのスプリングバック力により前記裏金の内周面に前記各結合部の平坦面を圧接保持する工程、(ハ)前記エキスパンドメタルが挿入された前記裏金を不活性雰囲気、還元性雰囲気または真空雰囲気に調整された800〜1000℃の温度の加熱炉内で20〜60分間加熱して前記エキスパンドメタルの前記各結合部を前記裏金の内周面に拡散接合することにより、前記各結合部と前記裏金の内周面との間にクサビ状の樹脂係合部が形成され且つ前記エキスパンドメタルの網の各辺と前記裏金の内周面との間の微小隙間を介して前記エキスパンドメタルの網目が連続する摺動部材基体を得る工程、(ニ)前記摺動部材基体の内側に中子を挿入し、これを射出成形機の金型内にセットした後、前記摺動部材基体の内面と前記中子との隙間に熱可塑性樹脂を射出成形することにより、前記エキスパンドメタルの表面が熱可塑性樹脂によって被覆され、かつ、熱可塑性樹脂が前記エキスパンドメタルの網目、前記クサビ状の樹脂係合部および前記微小間隙に充填されたすべり層を形成する工程から成ることを特徴とする円筒状複層摺動部材の製造方法。
  7. (ロ)の工程において、挿入されたエキスパンドメタルの内周側に微小隙間を介在させてステンレス鋼から成るパイプを挿入し、(ハ)の工程において、前記パイプと裏金を熱膨張させつつ前記エキスパンドメタルの各結合部を前記裏金の内周面に拡散接合した後、前記パイプを除去する請求項に記載の円筒状複層摺動部材の製造方法。
  8. エキスパンドメタルの1つの網目の開口面積が1〜60mmであり、かつ、前記エキスパンドメタルの全網目の開口率が30〜70%である請求項6又は7に記載の円筒状複層摺動部材の製造方法。
  9. すべり層を形成する熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の群から選択される樹脂である請求項6〜8の何れかに記載の円筒状複層摺動部材の製造方法。
  10. 熱可塑性樹脂のすべり層は、潤滑油、グリース、ワックス、脂肪酸、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、鉛、鉛合金、リン酸塩から選択される1種又は2種以上の潤滑油剤を0.5〜10重量%の割合で含有している請求項に記載の円筒状複層摺動部材の製造方法。
  11. 熱可塑性樹脂のすべり層は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカ、金属繊維から選択される1種又は2種以上の繊維補強材を5〜40重量%の割合で含有している請求項9又は10に記載の円筒状複層摺動部材の製造方法。
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