JP3791293B2 - 車両用制御器の冷却装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子機器の冷却装置に係り、特に、車両用制御器の冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用のモータの制御器として半導体スイッチング素子で電源電流を直流から交流に変換する装置(インバータ)、あるいは逆に交流から直流に変換する装置(コンバータ)があるが、それらの半導体素子は電流の変換の際の損失で熱を発生するため、冷却装置が必要である。この冷却装置としては、装置の発熱量に応じて自然対流型,強制対流型、あるいはヒートパイプを利用したヒートシンクなどが用いられている。
【0003】
例えば、特開平6−165524号公報には、ヒートパイプを利用したヒートシンクによって冷却を行うインバータ装置について構造が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようなコンバータないしインバータの冷却装置は、いずれも半導体素子で発生した熱を空冷で除去するものであり、冷却風の温度が車両の走行する周囲の状況によって変動するため、冷却性能が変動してしまう。
【0005】
例えば、気候や高度の変化による気温の変化、あるいはトンネルやプラットホームなどの構造物によって風が遮られることにより、風速ないし気温の変化などの原因によって冷却に使用される空気の温度が変動し、通常走行時に比べて異常に温度が上昇する場合があり得る。
【0006】
空冷タイプの冷却装置を使う場合には冷却できる熱量は半導体素子と冷却風の温度差に比例する。つまり、ある冷却能力を持った冷却器を用いた場合に、半導体素子の発熱量が一定ならば冷却空気温度が上昇すると、半導体素子の温度はその分上昇してしまう。従って、冷却風温が上昇する状況が想定される場合には、冷却風が最高温度になった時にも、半導体の温度が許容限界以下になるように冷却器を設計しなければならない。
【0007】
しかし、通常走行条件では冷却風の温度は比較的低いため、その場合に冷却器に要求される性能は環境温度の異常上昇時の要求性能よりも小さい。要求性能の差は空気温度の上昇幅によるが、通常走行時と環境温度異常上昇時で冷却器の要求性能が数倍異なる場合も考えられる。その場合には、通常走行時の要求性能の数倍の性能を持った冷却器を搭載する必要がある。
【0008】
冷却器の性能を大きくするためには、ヒートシンクのサイズを大きくしたり、冷却風を送るためのブロアの容量を大きくしなければならないので、コストが高くなる。つまり、環境温度の異常上昇が想定される場合に、温度上昇時の要求冷却性能に合わせて冷却器を設計すると、通常走行時の要求性能で冷却器を設計した場合に比べて冷却器の製造コストが高くなってしまう。
【0009】
本発明の目的は、車両の制御器用の冷却装置を冷却風の温度が変動する環境で用いた場合に、制御器の冷却を行うための空冷装置の要求仕様を、環境温度が高くなった状況下での要求性能よりも緩和し、より小型の空冷ヒートシンクと送風ブロアで空冷装置を構成する方法を提供することであり、それによって空冷装置のコストを下げることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、熱伝導の良好なブロックに半導体スイッチング素子を含んで成る発熱体と、空冷放熱器、および水を作動流体とする熱サイホンを取付けた冷却装置において、通常運転時には前記空冷放熱器によって冷却を行い、冷却空気の一時的な温度上昇によって前記ブロックの温度が水の沸点を越えた場合に、前記ブロックの上方に設けた水の入ったタンクに前記熱サイホンによって熱を輸送し、前記ブロックを一定温度以下に保つことにより達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図を用いて説明する。図1は本発明の第一実施例を示す斜視図である。図では、ディーゼルエンジンを搭載してエンジンの動力で発電し、その電流でモータを駆動して走行する構造の機関車のモータ制御装置を示す。コンバータあるいはインバータを構成するゲート絶縁型バイポーラトランジスタ(IGBT)などの半導体素子1は基板2に実装される。基板2には容器がかぶせられて絶縁材を充填され、密閉型のモジュール3を構成する。さらに、モジュール3はアルミニウムなどの金属製のブロック4上に実装される。
【0013】
IGBTモジュール3は、車両の運行状況に応じてモータの電源電流の制御を行うが、その際に、コンバータ又はインバータの動作を論理制御部5でコントロールする。コンバータ又はインバータが制御を行う際に電流の損失によって熱が発生するが、通常走行時にはその熱はブロック4の裏面に取付けられたヒートシンク6によって冷却空気中に発散される。本実施例ではIGBTモジュールの発熱量が比較的大きい場合を考えているのでヒートシンク6に冷却風を送り込むためにブロア7を備えている。ブロア7は冷却空気を側面の下部から取り入れてヒートシンクに送り込み、冷却を行った後の暖まった空気は天井部から外部に放出される。
【0014】
本実施例では、機関車のモータ制御装置を対象としており、客車と違って図2に示したように、エンジン17の前方に制御装置18を設置することができるため、図1に示した制御装置のサイズとしてはおよそ2m×2m×3m程度のスペースを占有できる。
【0015】
図3に第一実施例における温度条件の例を示す。通常走行時には制御器の冷却空気温度は外気温に等しいと考えられるので最高でも40℃程度である。また、環境温度が異常に上昇する場合として、図3に示したように冷却空気温度が一時的に非常に高くなる状況を考える。
【0016】
このとき、図に示したように半導体素子の許容限界からブロック4やヒートシンク6のベース部分などの熱伝導抵抗を差し引いた温度と冷却空気温度との差がヒートシンク6の冷却で使える温度差である。つまり、ここに示した例では環境温度の異常上昇時にはヒートシンク6の冷却で使える温度差が通常走行時の1/5程度になってしまう。
【0017】
強制対流冷却装置において、冷却に使える温度差が上述のように1/5程度になった場合に、同じ熱量を除去しようとすると、冷却空気の温度上昇量とヒートシンクの熱伝達抵抗を共に1/5まで下げる必要がある。温度上昇を下げるためには風量を5倍に増やさなければならない。そのとき熱伝達の抵抗も風速の増加に伴って下がるが、線形には下がらないのでヒートシンクのフィン枚数を増やす必要もある。また、風量を5倍にすると圧力損失は風量のおよそ2乗で増えるので25倍の吐出圧力を持ったブロアを用意しなければならない。すなわち、環境温度上昇時にヒートシンクとブロアだけで冷却能力をカバーしようとすると冷却器のコストがかなり高くなると思われる。
【0018】
そこで、本発明では図1に示したようにブロック4の内部に複数の水の流路8を設け、IGBTモジュール3の上部に設置した水タンク9にそれぞれ接続する。また、それぞれの流路8の下端側は水タンク9からのパイプ14が接続され、ループを形成するように配管してある。
【0019】
IGBTモジュール3とブロック4およびヒートシンク6の詳細を図4に示す。図4は水平方向の断面図である。IGBTモジュール3はボルト10等でブロック4に固定してある。ブロック4の裏面にはフィン11が取付けられてヒートシンク6を構成している。また、基板2とブロック4の間隙には熱伝導の抵抗を小さくするために、熱伝導グリス12を充填するとよい。本実施例ではフィン11としてアルミニウムなどの平板フィンを用い、固定方法としては、ブロック4の裏面に直接ブレージング等の方法で固着する構造を示した。フィンの形状としては、スリットの入ったものを用いてもよいし、ベースとフィンが一体となったヒートシンクをボルトでブロックに固定することもできる。
【0020】
この構造を採った場合のブロック4の温度の変化の一例を図5に示す。通常走行時にはブロック温度を80℃程度に冷却できるようにヒートシンクを設計する。このとき、必要とされる冷却能力は図3で示した環境温度の異常上昇時よりも大きなヒートシンク放熱温度差を基準に決められるので、冷却器のコストを下げられる。
【0021】
図6にヒートシンク6の縦断面図を示す。図6はブロック温度が100℃を越えた場合の状態を示してある。通常走行時には、ブロック4内で水が暖められて浮力によって緩やかに循環するが、冷却にはほとんど寄与しない。環境温度が異常上昇したときには、冷却器の流入空気温度が上昇し、それに伴ってブロック温度も上昇するが、ブロック温度が水の沸点100℃を越えると水流路8内部で沸騰が始まり、それ以上のブロックの温度上昇が抑えられる。ブロック4の内部に形成されている水の流路8の内面は、図4に示したような溝つきの形状とすれば、沸騰の限界熱流束の向上に効果的である。管内の溝はブロックに直接加工して作ってもよいし、ブロックに円筒状の穴を空けておいて、その中に溝付き管を挿入して半田などで固着してもよい。流路8内部の沸騰によって発生した蒸気は配管を通じて水タンク9の内部に放出され、水中で凝縮する。また、水タンク9からの配管を通じてブロック内流路8に水が供給されるので沸騰が継続して起こり、いわゆる熱サイホンが形成される。この熱サイホンによってブロック4から水タンク9に熱が輸送されるので、水タンク9内部の水が100℃に達するまではブロック4の温度を一定に保つことができる。
【0022】
タンク内の水の容量は(水の容量)×(水の比熱)×(水の沸点−通常走行時の水温)>(半導体の発熱量)×(環境温度が異常上昇する時間)となるように決めればよい。例えば、モジュールの発熱量が5kW、環境温度が異常上昇する時間が10分間、通常走行時の水温が50℃以下と考えられるときには、タンクの容量は1モジュール当たり18l以上必要である。従って、半導体モジュールの上方に10cm程度のスペースが必要であるが、本実施例として示した機関車の場合であれば、空間的に余裕があるのでタンクを設置するスペースは問題なく確保できる。
【0023】
本実施例では、水タンク9を積極的に冷却していないが、通常走行時の水温が高い場合は上述のように必要なタンク容量が増加してしまう。そこで、周囲構造との間の熱抵抗はある程度小さく、水温が外気温+10℃程度以内に収まるように熱が逃げる方が効率が良い。ところで、先に述べたように通常走行時にもブロック4と水タンク9との間で水が緩やかに循環すると思われる。しかし、循環の駆動力である浮力は、流路8で沸騰が起った場合に比べると遥かに小さく、熱の輸送量は小さい。そこで、通常走行時に水タンク9側に漏洩する熱と、タンクから周囲の部材への熱伝導抵抗のバランスから、10℃以下程度の温度差で熱を周囲に逃がせるようにタンクと周囲部材の接続方法を決めればよい。
【0024】
流路8内部で沸騰が起った場合にブロック4の温度が上昇しないようにするためには、水タンク9及び配管系の内部の圧力が上昇しないようにする必要がある。配管のために伸縮性を備えたフレキシブルチューブを使用すれば、水温上昇時にも蒸気による体積増加分をある程度逃がすことができる。それでも不十分な場合には、水タンク9にベローズなどを用いた圧力調整機構や圧力調整弁を装備すればよい。また、水の体積の増加を抑制するためには、水タンク9内部で水蒸気を速やかに凝縮させる必要がある。このために、流路8側から流入した蒸気を水タンク9内でできるだけ細かい気泡にすることが有効である。そこで、図6に示したように蒸気配管13から水タンク9への入口に金網15をかぶせてやり、蒸気が金網の穴を抜けて細かい気泡になってから水中に出るように構成すると効果的である。
【0025】
本発明の第二実施例を図7に示す。図7は第二実施例の部分的な垂直断面図である。第二実施例はモジュールの冷却のためにヒートパイプ式のヒートシンクを用いたものである。このとき、ブロック4はモジュール側と冷却空気流路側に半分ずつ突出するように設置し、冷却空気流路側にはヒートパイプ16を、モジュール側には水流路8を備える。この水流路8とヒートパイプ16は図6と同様下端部で連通している。ヒートパイプ16の先端近傍にはフィン10が取付けられており、冷却風によって冷やされる。熱輸送能力を高めるためにはヒートパイプ16の作動液体として水を使うと効果的である。この場合、通常走行時にはヒートパイプ内部での沸騰によって熱が輸送され、冷却空気温度が異常に上昇した場合には主に水流路8内部の沸騰によって熱が輸送されるが、この切り替えは以下のような原理で自動的に行われる。すなわち、ヒートパイプの内容積は一定であるため、内部の圧力が変化することによって、水の沸点が周囲温度に合わせて変化する。これに対して、流路8側の熱サイホン系では内部の圧力が大気圧と等しくなっているため、動作温度が大気圧中の水の沸点で固定される。従って、ブロック温度が低い間はヒートパイプだけが作動しており、100℃を越えた時点で熱サイホンが作動し始め、熱を水タンク9に向かって輸送する。
【0026】
このように、本実施例では、低温時はヒートパイプ動作し高温時は熱サイホン動作をする構成とすることで、小型で、効率よく冷却できる冷却装置を実現できる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の構造をとって、冷却空気温度が異常に上昇した場合にのみ熱サイホンにより半導体の冷却を行うことによって、空冷ヒートシンクの冷却性能としては通常走行時の外気温度を基準として設計できるので、ヒートシンクのサイズを小さく、フィン枚数も少なくできる。また、冷却空気の送風用のブロアの容量も小さいものが選択できるので冷却装置の製造コストを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施例を使用した機関車を示す図である。
【図3】冷却空気温度の時間変化の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例を示す水平断面図である。
【図5】冷却空気温度とブロック温度の時間変化の例を示す図である。
【図6】本発明の一実施例を示す垂直断面図である。
【図7】本発明の第二実施例を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
1…半導体素子、2…基板、3…IGBTモジュール、4…アルミブロック、5…論理制御部、6…ヒートシンク、7…ブロア、8…流路、9…水タンク、10…ボルト、11…フィン、12…熱伝導グリス、13…蒸気配管、14…液戻り配管、15…金網、16…ヒートパイプ、17…エンジン、18…制御装置。
Claims (1)
- 熱伝導の良好なブロックに半導体スイッチング素子を含んで成る発熱体と、空冷放熱器、および水を作動流体とする熱サイホンを取付けた冷却装置において、
通常運転時には前記空冷放熱器によって冷却を行い、冷却空気の一時的な温度上昇によって前記ブロックの温度が水の沸点を越えた場合に、前記ブロックの上方に設けた水の入ったタンクに前記熱サイホンによって熱を輸送し、前記ブロックを一定温度以下に保つことを特徴とする発熱体の冷却装置。
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