以下、図面を参照して、本発明に係るスイッチング電源装置用制御装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係るスイッチング電源装置用制御装置を、二つのコンバータ回路を並列接続したマルチフェーズ方式のスイッチング電源装置のコントローラICに適用する。本実施の形態に係るコンバータ回路は、降圧型のDC/DCコンバータである。本実施の形態に係るコントローラICは、高速で処理を行うデジタル制御式であり、電圧モード制御により二つのコンバータ回路をフィードバック制御する。本実施の形態に係るコントローラICには、位相補償を行うための構成の違いにより4つの実施の形態があり、第1の実施の形態が請求項2に対応し、第2の実施の形態が請求項3に対応し、第3の実施の形態が請求項4に対応し、第4の実施の形態が請求項5に対応し、特に、第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係るコントローラICには電流バランス(時比率バランス)を行うための構成も付加している。
図1を参照して、本実施の形態に係るスイッチング電源装置1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成図である。
スイッチング電源装置1は、電源Pの直流の入力電圧VIを直流の出力電圧VO(<VI)に変換する電源回路であり、様々な用途で使用でき、例えば、VRM[Voltage Regulator Module]で使用される。また、スイッチング電源装置1は、PWM制御によりスイッチング素子をオン/オフするスイッチングレギュレータである。入力電圧VIは、可変であり、入力電圧範囲(例えば、5〜12V)が設定されている。出力電圧VOは、負荷Lに応じて一定の目標電圧(例えば、1V)が設定されている。負荷Lは、例えば、コンピュータやルータ等の通信機器などのCPU、MPU、DSPが相当し、処理負荷に応じて負荷電流が大きく変動する負荷である。
また、スイッチング電源装置1は、出力電圧のリップルを抑制するために、マルチフェーズ方式である。そのため、スイッチング電源装置1は、第1コンバータ回路2と第2コンバータ回路3とが並列に接続されている。そして、スイッチング電源装置1では、この二つのコンバータ回路2,3のスイッチング素子を、一つのコントローラIC4によって各コンバータ回路2,3のスイッチング素子のオンするタイミングをずらしてスイッチング制御している。
各コンバータ回路2,3は、同一の構成であり、主な構成として、FET等の2個のスイッチング素子10,11又はスイッチング素子12,13、インダクタ14又はインダクタ15、二つの回路で共有されるコンデンサ16を備えている。第1コンバータ回路2では、第1スイッチング素子10がコントローラIC4からの第1PWM信号PS1がハイ信号(オン期間)のときにオンし、第2スイッチング素子11が第1PWM信号PS1がロー信号(オフ期間)のときにオンする。また、第2コンバータ回路3では、第1スイッチング素子12がコントローラIC4からの第2PWM信号PS2がハイ信号(オン期間)のときにオンし、第2スイッチング素子13が第2PWM信号PS2がロー信号(オフ期間)のときにオンする。インダクタ14(15)及びコンデンサ16は、平滑回路を構成する。スイッチング素子10,11(12,13)のスイッチング動作によって振幅が入力電圧VIに等しいパルス状電圧が平滑回路に出力され、平滑回路においてそのパルス状電圧を平均化する。コントローラIC4では、出力電圧VOが目標電圧となるようにデジタルの出力電圧VOに基づいて電圧モード制御によりPWM信号PS1,PS2を生成し、スイッチング素子10〜13のオン/オフを制御する。
図2、図13及び図14を参照して、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aの構成について説明する。図2は、第1の実施の形態に係るコントローラICの構成図である。図13は、図2のコントローラICにおける時比率検出及びPWM信号生成のタイミングチャートであり、(a)がマスタクロックであり、(b)が第1カウンタ信号及び第2カウンタ信号と補正制御信号であり、(c)が第1PWM信号であり、(d)が第1オンタイミング信号であり、(e)が第2PWM信号であり、(f)が第2オンタイミング信号であり、(g)が保持される第1パルス幅であり、(h)が保持される第2パルス幅である。図14は、図2のコントローラICにおける時比率バランスのタイミングチャートであり、(a)が第1カウンタ信号及び第2カウンタ信号と補正制御信号であり、(b)が第1PWM信号であり、(c)が第2PWM信号であり、(d)が保持される第1パルス幅であり、(e)が保持される第2パルス幅であり、(f)が第1カウンタ信号に対する第1初期値であり、(g)が第2カウンタ信号に対する第2初期値である。
コントローラIC4Aは、マスタクロック(例えば、10MHz〜100MHz)に基づいて動作するデジタル回路であり、二つのコンバータ回路2,3を電圧モード制御する。コントローラIC4Aでは、P制御によるフィードバック制御により、A/D変換されたデジタルの出力電圧VOと目標電圧VRから制御信号CSを生成し、制御信号CSと第1カウンタ信号(ランプ信号)CT1とに基づいて第1PWM信号PS1を生成するとともに制御信号CSと第2カウンタ信号(ランプ信号)CT2とに基づいて第2PWM信号PS2を生成する。特に、コントローラIC4Aでは、位相補償と直流利得確保を実現するために、生成したPWM信号PS1、PS2をマイナループによって各々フィードバックし、PWM信号PS1,PS2のパルス幅(時比率)D1,D2に所定の演算を各々施した位相補償信号IE1,IE2の平均化信号AVにより制御信号CSを補正する。さらに、コントローラIC4Aでは、PWM信号PS1,PS2の時比率のバランス(ひいては、コンバータ回路2,3間での出力電流のバランス)をとるために、PWM信号PS1,PS2のパルス幅D1,D2に基づいてカウンタ信号(ランプ信号)CT1,CT2の初期値CI1,CI2を生成する。そのために、コントローラIC4Aは、カウンタ20,20、演算回路21,21、平均化回路22、減算器23、乗算器24、減算器25、コンパレータ26,26、RSフリップフロップ27,27及び初期値生成回路28を備えている。コントローラIC4Aは、二つのコンバータ回路2,3に対してPWM信号PS1,PS2を各々生成するために、各コンバータ回路2,3に対応してカウンタ20、演算回路21、コンパレータ26、RSフリップフロップ27が各々設けられている。なお、以下の説明におけるハイ信号はコントローラIC4Aを電源電圧(例えば、5V)等が設定され、ロー信号は0Vが設定される。
第1の実施の形態では、カウンタ20,20が特許請求の範囲に記載する複数の時比率生成手段に相当し、演算回路21,21が特許請求の範囲に記載する複数の演算手段に相当し、平均化回路22が特許請求の範囲に記載する平均化手段に相当し、減算器23及び乗算器24が特許請求の範囲に記載する制御信号生成手段に相当し、減算器25が特許請求の範囲に記載する差分手段に相当し、コンパレータ26,26及びRSフリップフロップ27,27が特許請求の範囲に記載する複数の駆動信号生成手段に相当し、初期値生成回路28が特許請求の範囲に記載する初期値生成手段に相当する。
カウンタ20は、第1PWM信号PS1の時比率である第1パルス幅D1又は第2PWM信号PS2の時比率である第2パルス幅D2を検出するとともに、コンパレータ26に入力させるランプ信号である第1カウンタ信号CT1又は第2カウンタ信号CT2を生成する。そのために、カウンタ20には、コントローラIC4Aで生成している第1PWM信号PS1又は第2PWM信号PS2、第1オンタイミング信号OT1又は第2オンタイミング信号OT2、初期値生成回路28で生成した第1初期値CI1又は第2初期値CI2及びマスタクロックMCが入力される。
カウンタ20では、オンタイミング信号OT1,OT2がハイ信号のときにカウンタ信号CT1,CT2を初期値CI1,CI2にリセットし、PWM信号PS1,PS2がハイ信号のときにはマスタクロックMCの一周期毎にカウントアップする(図13(a)〜(f)及び図14(a)〜(c)参照)。そして、カウンタ20では、PWM信号PS1,PS2がハイ信号からロー信号に立ち下がるとカウントアップを停止し、PWM信号PS1,PS2がロー信号のときにはカウントアップ値をホールドする(図13(a)〜(f)及び図14(a)〜(c)参照)。カウンタ20では、カウントアップ値を各レジスタ(図示せず)にパルス幅D1,D2として保持する(図13(b),(g),(h)及び図14(a),(d),(e)参照)。この各レジスタに保持しているパルス幅D1,D2は、演算回路21,21及び初期値生成回路28に各々読み出される。ちなみに、パルス幅D1,D2は、PWM信号PS1,PS2の周期が一定であるので、PWM信号PS1,PS2の一周期に占める第1スイッチング素子10,12をオンさせる期間の割合を示し、時比率に相当する。なお、図13は第1初期値CI1及び第2初期値CI2が共に0の場合であり、図14は第1初期値CI1が所定の値を有し、第2初期値CI2が0の場合である。
第1オンタイミング信号OT1は、分周器(図示せず)によってマスタクロックMCを分周した信号であり、第1PWM信号PS1の一周期(第1コンバータ回路2のスイッチング周期)を規定する信号であり、第1PWM信号PS1のロー信号からハイ信号への立ち上りを規定するパルスをハイ信号(マスタクロックMCの一周期分)で出力する(図13(d)参照)。第2オンタイミング信号OT2は、分周器によってマスタクロックMCを分周した信号であり、第2PWM信号PS2の一周期(第2コンバータ回路3のスイッチング周期)を規定する信号であり、第2PWM信号PS2のロー信号からハイ信号への立ち上りを規定するパルスをハイ信号(マスタクロックMCの一周期分)で出力する(図13(f)参照)。第1PWM信号PS1と第2PWM信号PS2とは、同一周期であり、オンするタイミングの位相が180°ずれている。PWM信号PS1,PS2の周波数は、例えば、100kHz〜1MHzであり、コンバータ回路2,3におけるスイッチング周波数に相当する。
演算回路21は、位相進みと直流利得確保を実現するために、二次のハイパスフィルタと積分器とを融合させた演算回路となっている。演算回路21では、各レジスタから時比率である第1パルス幅D1又は第2パルス幅D2を読み出し、第1パルス幅D1又は第2パルス幅D2に対して低周波成分を遮断するとともに積分を施し、第1位相補償信号IE1又は第2位相補償信号IE2を平均化回路22に出力する。このように、演算回路21において積分器を備えることによって、コントローラIC4Aの伝達関数が位相進みとなり、スイッチング電源装置1全体の位相補償を実現することができる。さらに、演算回路21において二次のハイパスフィルタで低周波成分を遮断することによって、積分された値が飽和(無限大に発散)することを防止することができる。
演算回路21は、図3に示すように、遅延器であるDフリップフロップ21a〜21c、乗算係数が(b1+b2)の乗算器21d、乗算係数が(b1*b2)の乗算器21e、加算器21fを有している。演算回路21の回路構成は、以下の式(1)により表される伝達関数H(Z)に基づいて構成されている。図3は、図2の演算回路の詳細回路構成図である。
なお、演算回路21は、図3に示す回路構成以外でも、式(1)の伝達関数を満たす回路であればよい。
平均化回路22は、演算回路21,21から第1位相補償信号IE1と第2位相補償信号IE2が入力され、その二つの位相補償信号IE1,IE2を平均化し、平均化信号AVを減算器25に出力する。そのために、平均化回路22は、二つの乗算器22a,22a及び加算器22bを備えている。各乗算器22aは、各演算回路21からの第1位相補償信号IE1又は第2位相補償信号IE2に利得1/2を乗算し、その乗算値を加算器22bに出力する。加算器22bは、二つの乗算器22a,22aからの各乗算値を加算し、その加算値を平均化信号AVとして出力する。
減算器23は、目標電圧VRと出力電圧VOが入力され、目標電圧VRから出力電圧VOを減算し、その減算値(VR−VO)を減算信号VSとして乗算器24に出力する。
乗算器24は、減算信号VSが入力され、その減算信号VSにP制御の利得Gを乗算し、その乗算値G(VR−VO)を制御信号CSとして減算器25に出力する。
減算器25は、制御信号CSと平均化信号AVとが入力され、制御信号CSから平均化信号AVを減算し、その減算値(CS−AV)を補正制御信号RCSとして各コンパレータ26,26に各々出力する。
コンパレータ26は、ランプ信号である第1カウンタ信号CT1又は第2カウンタ信号CT2が補正制御信号RCSに達するか否かを判定する。そのために、コンパレータ26には、反転入力端子に補正制御信号RCSが入力され、非反転入力端子に第1カウンタ信号CT1又は第2カウンタ信号CT2が入力される。コンパレータ26では、補正制御信号RCSとカウンタ信号CT1,CT2とを比較し、カウンタ信号CT1、CT2が補正制御信号RCSに達するまではロー信号とし、カウンタ信号CT1,CT2が補正制御信号RCSに達するとハイ信号とする(図13(a)参照)。そして、コンパレータ26では、その出力信号を第1コンパレータ信号CO1又は第2コンパレータ信号CO2としてRSフリップフロップ27,27に各々出力する。
RSフリップフロップ27は、第1PWM信号PS1又は第2PWM信号PS2を生成する。そのために、RSフリップフロップ27には、第1コンパレータ信号CO1又は第2コンパレータ信号CO2と第1オンタイミング信号OT1又は第2オンタイミング信号OT2が入力される。第1PWM信号PS1を生成するRSフリップフロップ27では、第1オンタイミング信号OT1がハイ信号になるとロー信号からハイ信号に切り換えてハイ信号を保持し、第1コンパレータ信号CO1がハイ信号になるとハイ信号からロー信号に切り換えてロー信号を保持し、その所定のパルス幅を有する第1PWM信号PS1を出力する(図13(c),(d)参照)。第2PWM信号PS2を生成するRSフリップフロップ27では、第2オンタイミング信号OT2がハイ信号になるとロー信号からハイ信号に切り換えてハイ信号を保持し、第2コンパレータ信号CO2がハイ信号になるとハイ信号からロー信号に切り換えてロー信号を保持し、その所定のパルス幅を有する第2PWM信号PS2を出力する(図13(e),(f)参照)。
初期値生成回路28は、第1PWM信号PS1と第2PWM信号PS2とにおける時比率のバランス(ひいては、コンバータ回路2,3間の出力電流のバランス)をとるために、第1カウンタ信号CT1及び第2カウンタ信号CT2をリセットする際の第1初期値CI1及び第2初期値CI2を生成する。そのために、初期値生成回路28は、二つのローパスフィルタ28a,28a及び演算部28bを備えている。
なお、本実施の形態では、ローパスフィルタ28aが特許請求の範囲に記載する時間平均化手段に相当し、演算部28bが特許請求の範囲に記載する初期値演算手段に相当する。
各ローパスフィルタ28aでは、各レジスタに保持されている時比率である第1パルス幅D1又は第2パルス幅D2を読み出し、第1パルス幅D1又は第2パルス幅D2を時間平均する(図14(d)、(e)参照)。そして、演算部28bでは、第1パルス幅D1の時間平均値と第2パルス幅D2の時間平均値から小さい値の時間平均値を選択する。さらに、演算部28bでは、第1パルス幅D1の時間平均値から選択した小さい時間平均値を減算し、第1初期値CI1を算出する(図14(f)参照)。この第1初期値CI1は、レジスタに保持され、第1カウンタ信号CT1をリセットする際のリセット値となる。また、演算部28bでは、第2パルス幅D2の時間平均値から選択した小さい時間平均値を減算し、第2初期値CI2を算出する(図14(g)参照)。この第2初期値CI2は、レジスタに保持され、第2カウンタ信号CT2をリセットする際のリセット値となる。ちなみに、時間平均値が小さいパルス幅(時比率)に対応するカウンタ信号のリセット値は0なり、時間平均値が大きいパルス幅(時比率)に対応するカウンタ信号のリセット値は所定の値(プラス値)を有することになり、二つの時間平均値が等しい場合には二つのカウンタ信号のリセット値は共に0になる。
ここで、図4を参照して、コントローラIC4Aにおいて位相進みが実現される原理について説明しておく。図5は、帰還ループで帰還する制御回路の一例を示す図である。なお、他の実施の形態に係るコントローラIC4B,4C,4Dでも、この原理によって位相進みが実現される。
図4に示す制御回路30は、コントローラIC4Aと同様に構成されており、PWM信号PS1、PS2の時比率の積分値を帰還ループでフィードバックする制御回路の一例を示すものである。制御回路30は、伝達関数が−Gである乗算器31、伝達関数がGdである積分器32、伝達関数がkdである乗算器33及び加算器34を備える。この制御回路30の伝達関数Gc(Z)は、制御回路30に入力されるスイッチング電源装置1の出力電圧の変化量ΔVと制御回路30から出力される時比率の変化量ΔDの比として求められ、以下に示す式(2)によって表される。また、積分器32の伝達関数Gd(Z)は、以下に示す式(3)によって表される。
式(3)を式(2)に代入すると、制御回路30の伝達関数Gc(Z)は、以下に示す式(4)で求まる。
ここで、一次のハイパスフィルタの伝達関数H(Z)は、(1−Z
-1)/(1−b*Z
-1);(bは係数)により表される。したがって、式(4)の伝達関数Gc(Z)は、一次のハイパスフィルタの伝達関数で表されることが判る。すなわち、図4に示す帰還ループに積分器32を有する制御回路30の伝達関数Gc(Z)は、一次のハイパスフィルタの伝達関数で表されることになる。一般に、一次のハイパスフィルタの伝達関数は、90°の位相進みとなる。したがって、図4に示す帰還ループに積分器32を有する制御回路30の伝達関数Gc(Z)も90°の位相進みとなる。
このことは、図5及び図6に示す制御回路30における伝達関数Gcのゲイン特性及び位相特性からも判る。ここでは、制御回路30における伝達関数Gcを、乗算器31の伝達関数であるGを1として算出している。図5は、図4の制御回路における伝達関数のゲイン特性を示す図である。図6は、図4の制御回路における伝達関数の位相特性を示す図である。なお、ゲイン特性を示す図では、縦軸がゲイン[dB]であり、横軸は周波数[Hz]である。また、位相特性を示す図では、縦軸が位相[°]であり、横軸は周波数[Hz]である。
図5に示すように、制御回路30における伝達関数Gcのゲインは、−20[dB/dec]の割合で減少している。これは、制御回路30の伝達関数Gcが、周波数に比例していることに起因している。
図6に示すように、制御回路30における伝達関数Gcの位相は、所定の周波数(図6では、10kHz付近)よりも低い周波数帯域で90°となる。これは、制御回路30における伝達関数Gcの位相が、90°の位相進みであることを示す。
以上のことから、コントローラIC4Aは、帰還ループにある演算回路21に積分器を融合しているため、制御回路30と同様に、その伝達関数が一次のハイパスフィルタの伝達関数として表され、90°の位相進みを実現することが可能となる。
ところで、制御回路30における伝達関数Gcのゲインは、−20dB/decの割合で減少している。このことは、制御回路30における伝達関数Gcの直流利得は、理論上−∞dBになることを示している。直流利得は、周波数を限りなく0に近づけたときの伝達関数のゲインの値である。一般に、制御回路を含む系全体の直流利得は、20〜60dB程度は必要であるとされている。したがって、系全体の直流利得が、20〜60dB程度になるように回路を設計する必要がある。そこで、コントローラIC4Aでは、演算回路21に二次のハイパスフィルタを融合させることによって、帰還ループによる帰還信号の低周波成分を遮断してゲインの低下を防止している。なお、他の実施の形態に係るコントローラIC4B,4C,4Dでも、演算回路の二次のハイパスフィルタによって直流利得を確保している。
図7〜図12を参照して、コントローラIC4A及びコンバータ回路2,3並びにスイッチング電源装置1における伝達関数のゲイン特性及び位相特性について説明する。スイッチング電源装置1の入力電圧VIは、10Vに設定されていることとする。また、コントローラIC4Aにおける伝達関数を、乗算器24の伝達関数であるGが1として算出している。図7は、図1のコンバータ回路における伝達関数のゲイン特性を示す図である。図8は、図1のコンバータ回路における伝達関数の位相特性を示す図である。図9は、図1のコントローラICにおける伝達関数のゲイン特性を示す図である。図10は、図1のコントローラICにおける伝達関数の位相特性を示す図である。図11は、図1のスイッチング電源装置全体における伝達関数のゲイン特性を示す図である。図12は、図1のスイッチング電源装置全体における伝達関数の位相特性を示す図である。なお、他の実施の形態に係るコントローラIC4B,4C,4D及びこれらコントローラICに制御されるコンバータ回路2,3並びにスイッチング電源装置1についても、ここで説明する伝達関数のゲイン特性及び位相特性と同様の特性が得られる。
図7及び図8を参照して、コントローラIC4Aを含まないコンバータ回路2,3における伝達関数のゲイン特性及び位相特性を説明する。図7に示すように、コンバータ回路2,3における伝達関数のゲインの最大値(共振値)は、コンバータ回路2,3のLC共振周波数である15kHzに現れる。また、ゲインが0dBとなるゼロクロス周波数は、55kHzである。また、図8に示すように、コンバータ回路2,3における伝達関数の位相は、ゼロクロス周波数である55kHzにおいて−175°となる。したがって、コンバータ回路2,3の位相余裕は5°となり、位相余裕としては非常に小さな値である。そのため、出力電圧の検出系の遅れ等により位相が180°になり、出力電圧VOが発振してしまう可能性がある。そこで、コントローラIC4Aでは、演算回路21の積分機能によって位相を進ませている。
図9及び図10を参照して、コントローラIC4Aにおける伝達関数のゲイン特性及び位相特性について説明する。図9及び図10に示すように、コントローラIC4Aの伝達関数のゲイン特性及び位相特性は、図5及び図6に示す積分器のみの場合における各特性のうち、演算回路21に融合される二次のハイパスフィルタにより低周波成分が遮断される周波数領域において、ゲイン0dB、位相0°に各々戻ることになる。なお、直流利得が不足している場合には、乗算器24の伝達関数であるGを低周波数領域で高いゲインをもつ伝達関数とすることにより、必要な直流利得を得ることができる。
図11及び図12を参照して、コントローラIC4Aを含むスイッチング電源装置1全体における伝達関数のゲイン特性及び位相特性について説明する。図11、図12に示す各特性は、図7、図8に示すコンバータ回路2,3における伝達関数と図9、図10に示すコントローラIC4Aにおける伝達関数とを掛け合わせた伝達関数のゲイン特性及び位相特性である。図11に示すように、スイッチング電源装置1全体における伝達関数のゲインが0dBとなるゼロクロス周波数は、35kHzである。また、図12に示すように、スイッチング電源装置1全体における伝達関数の位相は、ゼロクロス周波数である35kHzにおいて−130°となる。したがって、スイッチング電源装置1全体の位相余裕は50°となり、スイッチング電源装置1は全体として安定な制御系となる。また、図11に示すように、直流利得が20dBであるので、スイッチング電源装置1全体としての定常偏差も減少する。
このように、コントローラIC4Aの帰還ループに含まれる演算回路21,21に積分器と二次のハイパスフィルタを融合することによって、コントローラIC4Aの伝達関数が位相進みとなり、さらに、直流利得も確保される。そのため、スイッチング電源装置1における位相を補償することができる。
ここで、カウンタ信号CT1,CT2をリセットする際に共に0でリセットするのではなく、初期値CI1,CI2でリセットすると二つのコンバータ回路2,3間の出力電流のバランスをとることができる原理について説明しておく。二つのコンバータ回路2,3間の出力電流のバランス(第1PWM信号PS1と第2PWM信号PS2との時比率のバランス)が不均衡になるのは、コンバータ回路2,3自身のスイッチング等の影響により出力電圧VOがPWM信号PS1,PS2の周期に対応して変動することに起因する。というのは、出力電圧VOが周期的に変動すると、制御信号CSも周期的に変動する。そのため、二つのコンパレータのうちの一方のコンパレータではランプ信号が制御信号CSの小さい値のときに到達するので、その小さい値に到達するまでの時間が短く、PWM信号の時比率が常に小さくなる。また、他方のコンパレータではランプ信号が制御信号CSの大きい値のときに到達するので、その大きな値に到達するまでの時間が長くなり、PWM信号の時比率が常に大きくなる。したがって、PWM信号PS1、PS2の各時比率が常に小さい値と大きい値となり、コンバータ回路2,3間の出力電流のバランスが不均衡になる。
そこで、コントローラIC4Aでは、二つのPWM信号PS1、PS2の時比率(パルス幅D1,D2)の時間平均値を求め、その時間平均値の大きい方のコンパレータ回路のPWM信号を生成するためのカウンタ信号(ランプ信号)のリセット値(初期値)を0より大きい所定の値とする。時比率の時間平均値が大きいということは、カウンタ信号が制御信号CS(実際には、補正制御信号RCS)が大きな値になるまで到達していないことに相当する。そこで、時比率の時間平均値の大きい方のコンバータ回路に対するPWM信号の生成おいて、カウンタ信号のリセット値を0より大きくし、カウンタ信号が補正制御信号RCSの大きな値に到達するまでの時間を短くし、PWM信号の時比率を小さくする。このように、一方のコンバータ回路における時比率を小さくすることによって、他方のコンバータ回路における時比率と均衡がとれ、コンバータ回路2,3間の出力電流のバランスがとれる。
なお、コントローラIC4Aでは時比率の時間平均値の大きい方のコンバータ回路に対するPWM信号の生成おいてカウンタ信号のリセット値を0より大きな値にしたが、時比率の時間平均値の小さい方のコンバータ回路に対するPWM信号の生成おいてカウンタ信号のリセット値を0より小さな値にしてもよいし、あるいは、二つのPWM信号の生成において一方のカウンタ信号のリセット値を0より大きな値にするとともに他方のカウンタ信号のリセット値を0より小さな値にしてもよい。
図1、図2、図13、図14を参照して、コントローラIC4A及びコンバータ回路2,3並びにスイッチング電源装置1の動作を説明する。
スイッチング電源装置1には、入力電圧VIが入力される。すると、各コンバータ回路2,3では、コントローラIC4AからのPWM信号PS1、PS2に基づいて第1スイッチング素子10,12が交互にオンし、第1スイッチング素子10がオンのときに第2スイッチング素子11がオフし、第1スイッチング素子12がオンのときに第2スイッチング素子13がオフする。さらに、各コンバータ回路2,3では、インダクタ14又はインダクタ15及びコンデンサ16で第1スイッチング素子10又は第1スイッチング素子12のオン期間にパルスとなって出力する入力電圧VIを平均化し、電圧VOを出力する。このように、スイッチング電源装置1では、二つのコンバータ回路2,3をマルチフェーズ方式で制御しているので、各コンバータ回路2,3における電流のリップルが小さくなり、出力電圧VOのリップルが小さくなる。
コントローラIC4Aでは、目標電圧VRから出力電圧VOを減算し、その減算値に利得Gを乗算して制御信号CSを生成する。また、コントローラIC4Aでは、生成した二つのPWM信号PS1、PS2のパルス幅D1,D2を各々検出し、その各パルス幅D1,D2に対して積分と低周波成分の遮断の演算を施し、位相補償信号IE1,IE2を各々求める。さらに、コントローラIC4Aでは、二つの位相補償信号IE1,IE2を平均化し、平均化信号AVを求める。そして、コントローラIC4Aでは、制御信号CSから平均化信号AVを減算し、補正制御信号RCSを生成する。また、コントローラIC4Aでは、パルス幅D1,D2を検出する際のカウントアップを利用して、ランプ信号であるカウンタ信号CT1、CT2を各々生成する。そして、コントローラIC4Aでは、補正制御信号RCSと第1カウンタ信号CT1とを比較し、第1カウンタ信号CT1が補正制御信号RCSを超えない期間をハイ信号とする第1PWM信号PS1を生成する(図13(b)、(c)参照)。また、コントローラIC4Aでは、補正制御信号RCSと第2カウンタ信号CT2とを比較し、第2カウンタ信号CT2が補正制御信号RCSを超えない期間をハイ信号とする第2PWM信号PS2を生成する(図13(b)、(e)参照)。第1PWM信号PS1と第2PWM信号PS2とは、そのハイ信号の立ち上りが第1オンタイミング信号OT1、第2オンタイミング信号OT2によって各々規定され、その位相が180°ずれている。このように、コントローラIC4Aでは、帰還ループにおいて各コンバータ回路2,3の各時比率(パルス幅D1,D2)に対して積分及び低周波成分遮断を施し、その各演算値の平均値によって制御信号CSを補正することによって、位相を90°進ませ、直流利得も確保している。
また、コントローラIC4Aでは、レジスタに保持されているパルス幅D1,D2を各々時間平均し、その二つの時間平均値の小さい時間平均値を選択する(図14(d)、(e)参照)。そして、コントローラIC4Aでは、第1パルス幅D1の時間平均値から選択した小さい時間平均値を減算して第1初期値CI1を求め、第2パルス幅D2の時間平均値から選択した小さい時間平均値を減算して第2初期値CI2を求める(図14(f)、(g)参照)。そして、コントローラIC4Aでは、第1オンタイミング信号OT1のハイ信号のときに第1カウンタ信号CT1を第1初期値CI1でリセットし、第2オンタイミング信号OT2のハイ信号のときに第2カウンタ信号CT2を第2初期値CI2でリセットする(図14(a)参照)。図14(a)の例では、第1初期値CI1が所定の値を有し、第2初期値が0である。このように、コントローラIC4Aでは、各コンバータ回路2,3の各時比率(パルス幅D1,D2)の時間平均値の差によってカウンタ信号CT1,CT2を初期化することによって、PWM信号PS1,PS2の各時比率の差を抑制し、コンバータ回路2,3間の出力電流の不均衡を防止している。
コントローラIC4Aによれば、帰還ループにある演算回路21,21における積分機能及びハイパスフィルタ機能によって、90°の位相進みを実現するとともに、直流利得も確保することができる。その結果、各コンバータ回路2,3において位相が補償されるとともに直流利得も確保され、スイッチング電源装置1全体としての位相も補償されるとともに直流利得も確保される。そのため、スイッチング電源装置1では、位相遅れが180°に達することはなく、出力電圧VOが発振しない。特に、コントローラIC4Aでは、各時比率(パルス幅D1,D2)から求めた位相補償信号IE1,IE2を平均化し、その平均化信号AVによって制御信号CSを補正する構成とすることにより、高い周波数領域まで位相補償が可能である。
また、コントローラIC4Aでは、初期値生成回路28で生成した初期値CI1,CI2で各カウンタ信号CT1,CT2をリセットすることによって、時比率のバランスをとることができる。その結果、コンバータ回路2,3間の出力電流の不均衡が抑制され、スイッチング電源装置1における出力電流のバランスをとることができる。そのため、出力電流の不均衡によって素子が破壊する等の素子異常がなくなり、出力電流を検出する手段無しで出力電流のバランスをとることができる。
また、コントローラIC4Aでは、カウンタ20において検出した時比率(パルス幅D1,D2)を各レジスタで保持するので、時比率を検出してから読み出すまでに所定の時間差があっても時比率の値としては変わらない。したがって、コントローラIC4Aでは、演算回路21や初期値生成回路28で時比率を利用して演算を行うが、常に正確な時比率により、高精度な演算を行うことができる。ちなみに、時比率に相当する値としてPWM信号の立ち下がりのときの制御信号の値を用いる場合、出力電圧の変動によって制御信号が変動するので、所定の時間差により時比率の値が変わることになる。
また、コントローラIC4Aでは、時比率(パルス幅D1,D2)を検出するためのカウンタ20によってランプ信号(カウンタ信号CT1,CT2)も生成するので、ランプ信号を生成する手段を別に必要とせず、構成が簡素化する。さらに、コントローラIC4Aでは、演算回路21において積分器とハイパスフィルタとを融合させているので、積分器とハイパスフィルタとを別体で構成する必要がなく、構成が簡素化する。
図15を参照して、第2の実施の形態に係るコントローラIC4Bの構成について説明する。図15は、第2の実施の形態に係るコントローラICの構成図である。なお、第2の実施の形態に係るコントローラIC4Bでは、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aと同様の構成要素について同一の符号を付し、その説明を省略する。
コントローラIC4Bは、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aとほぼ同様のコントローラICであるが、コントローラIC4Aより構成を簡素化するために、位相補償信号IE1,IE2による制御信号CSの補正方法が異なる。つまり、コントローラIC4Bでは、位相補償信号IE1,IE2の平均化信号AVで制御信号CSを補正するのではなく、各位相補償信号IE1,IE2によって制御信号CSを各々補正する。そのために、コントローラIC4Bは、カウンタ20,20、演算回路21,21、減算器23、乗算器24、減算器40,40、コンパレータ26,26、RSフリップフロップ27,27及び初期値生成回路28を備えている。コントローラIC4Bでは、二つのコンバータ回路2,3に対してPWM信号PS1,PS2を各々生成するために、各コンバータ回路2,3に対応してカウンタ20、演算回路21、コンパレータ26、RSフリップフロップ27及び減算器40が各々設けられている。
第2の実施の形態では、カウンタ20,20が特許請求の範囲に記載する複数の時比率生成手段に相当し、演算回路21,21が特許請求の範囲に記載する複数の演算手段に相当し、減算器23及び乗算器24が特許請求の範囲に記載する制御信号生成手段に相当し、減算器40,40が特許請求の範囲に記載する複数の差分手段に相当し、コンパレータ26,26及びRSフリップフロップ27,27が特許請求の範囲に記載する複数の駆動信号生成手段に相当し、初期値生成回路28が特許請求の範囲に記載する初期値生成手段に相当する。
減算器40は、制御信号CSと各演算回路21からの第1位相補償信号IE1又は第2位相補償信号IE2とが入力され、制御信号CSから第1位相補償信号IE1又は第2位相補償信号IE2を減算し、その減算値(CS−IE1)を第1補正制御信号RCS1として又は減算値(CS−IE2)を第2補正制御信号RCS2として各コンパレータ26に出力する。
したがって、各コンパレータ26,26では、ランプ信号である第1カウンタ信号CT1が第1補正制御信号RCS1に達するか否か判定するか、あるいは、ランプ信号である第2カウンタ信号CT2が第2補正制御信号RCS2に達するか否か判定する。
図15を参照して、コントローラIC4Bの動作を説明する。ここでは、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aと異なる動作についてのみ説明する。
コントローラIC4Bでは、制御信号CSから第1位相補償信号IE1を減算し、第1補正制御信号RCS1を生成する。また、コントローラIC4Bでは、制御信号CSから第2位相補償信号IE2を減算し、第2補正制御信号RCS2を生成する。そして、コントローラIC4Bでは、第1補正制御信号RCS1と第1カウンタ信号CT1とを比較し、第1カウンタ信号CT1が第1補正制御信号RCS1を超えない期間をハイ信号とする第1PWM信号PS1を生成する。また、コントローラIC4Bでは、第2補正制御信号RCS2と第2カウンタ信号CT2とを比較し、第2カウンタ信号CT2が第2補正制御信号RCS2を超えない期間をハイ信号とする第2PWM信号PS2を生成する。
コントローラIC4Bによれば、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aの効果を有するほかに、二つの乗算器及び加算器からなる平均化回路を必要としないので、構成が簡素化する。
図16を参照して、第3の実施の形態に係るコントローラIC4Cの構成について説明する。図16は、第3の実施の形態に係るコントローラICの構成図である。なお、第3の実施の形態に係るコントローラIC4Cでは、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aと同様の構成要素について同一の符号を付し、その説明を省略する。
コントローラIC4Cは、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aと比較すると、コントローラIC4Aより構成を簡素化するために、第1コンバータ回路2に対応する第1位相補償信号IE1のみで制御信号CSを補正する点及び時比率のバランスをとるための構成(すなわち、初期値生成回路及びそれに関する構成)を有しない点が異なる。つまり、コントローラIC4Cでは、二つの位相補償信号IE1,IE2の平均化信号AVで制御信号CSを補正するのではなく、第1位相補償信号IE1によって制御信号CSを補正し、この補正制御信号RCSを二つのコンパレータ26,26で用いる。また、コントローラIC4Cでは、第1カウンタ信号CT1、第2カウンタ信号CT2共に0でリセットする。そのために、コントローラIC4Cは、第1カウンタ50、第2カウンタ51、演算回路21、減算器23、乗算器24、減算器52、コンパレータ26,26、RSフリップフロップ27,27を備えている。コントローラIC4Cでは、二つのコンバータ回路2,3に対してPWM信号PS1,PS2を各々生成するために、各コンバータ回路2,3に対応して第1カウンタ50又は第2カウンタ51、コンパレータ26、RSフリップフロップ27が各々設けられている。
第3の実施の形態では、第1カウンタ50が特許請求の範囲に記載する時比率生成手段に相当し、演算回路21が特許請求の範囲に記載する演算手段に相当し、減算器23及び乗算器24が特許請求の範囲に記載する制御信号生成手段に相当し、減算器52が特許請求の範囲に記載する差分手段に相当し、コンパレータ26,26及びRSフリップフロップ27,27が特許請求の範囲に記載する複数の駆動信号生成手段に相当する。
第1カウンタ50は、第1の実施の形態に係るカウンタ20とほぼ同様の構成を有するカウンタであるが、第1カウンタ信号CT1のリセットする点が異なる。第1カウンタ50では、第1オンタイミング信号OT1がハイ信号のときに第1カウンタ信号CT1を常に0でリセットし、第1PWM信号PS1がハイ信号のときにはマスタクロックMCの一周期毎にカウントアップする。そして、第1カウンタ50では、第1PWM信号PS1がハイ信号からロー信号に立ち下がるとカウントアップを停止し、第1PWM信号PS1がロー信号のときにはカウントアップ値をホールドする。第1カウンタ50では、カウントアップ値をレジスタに第1パルス幅D1として保持する。ちなみに、第1カウンタ50では、ランプ信号である第1カウンタ信号CT1を生成するとともに、時比率である第1パルス幅D1を検出する。
第2カウンタ51は、第1カウンタ50とほぼ同様の構成を有するカウンタであるが、時比率を検出しない点のみ異なる。つまり、第2カウンタ51では、カウントアップ値をレジスタに第2パルス幅D2として保持しない。したがって、第2カウンタ51では、ランプ信号である第2カウンタ信号CT2のみ生成する。
ちなみに、第2カウンタ51によって時比率である第2パルス幅D2を検出する構成としてもよい。この場合、二つのパルス幅D1,D2によりランプ信号の初期値CI1,CI2を求めることができるので、コントローラIC4Cの構成に初期値生成回路を加えて、時比率のバランスをとるようにしてもよい。
減算器52は、制御信号CSと演算回路21からの第1位相補償信号IE1とが入力され、制御信号CSから第1位相補償信号IE1を減算し、その減算値(CS−IE1)を補正制御信号RCSとして二つのコンパレータ26,26に各々出力する。
したがって、各コンパレータ26,26では、ランプ信号である第1カウンタ信号CT1又は第2カウンタ信号CT2が補正制御信号RCSに達するか否か判定する。
図16を参照して、コントローラIC4Cの動作を説明する。ここでは、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aと異なる動作についてのみ説明する。
コントローラIC4Cでは、生成した第1PWM信号PS1の第1パルス幅D1のみを検出し、その第1パルス幅D1に対して積分と低周波成分の遮断の演算を施し、第1位相補償信号IE1のみを求める。そして、コントローラIC4Cでは、制御信号CSから第1位相補償信号IE1を減算し、補正制御信号RCSを生成する。また、コントローラIC4Cでは、オンタイミング信号OT1,OT2のハイ信号のときにカウンタ信号CT1,CT2を0で各々リセットし、リセット後にマスタクロックに基づいてカウントアップし、ランプ信号となるカウンタ信号CT1、CT2を各々生成する。そして、コントローラIC4Cでは、補正制御信号RCSと第1カウンタ信号CT1とを比較し、第1カウンタ信号CT1が補正制御信号RCSを超えない期間をハイ信号とする第1PWM信号PS1を生成する。また、コントローラIC4Cでは、補正制御信号RCSと第2カウンタ信号CT2とを比較し、第2カウンタ信号CT2が補正制御信号RCSを超えない期間をハイ信号とする第2PWM信号PS2を生成する。
コントローラIC4Cによれば、第1の実施の形態に係るコントローラIC4Aの効果を有するほかに、二つの乗算器及び加算器からなる平均化回路を必要としないので、構成が簡素化する。特に、コントローラIC4Cでは、第1コンバータ回路2に対応する側しか位相補償信号を生成しないので、第2コンバータ回路3に対応する側には演算回路や時比率を検出する構成を必要とせず、構成がより簡素化する。
図17を参照して、第4の実施の形態に係るコントローラIC4Dの構成について説明する。図17は、第4の実施の形態に係るコントローラICの構成図である。なお、第4の実施の形態に係るコントローラIC4Dでは、第3の実施の形態に係るコントローラIC4Cと同様の構成要素について同一の符号を付し、その説明を省略する。
コントローラIC4Dは、第3の実施の形態に係るコントローラIC4Cと比較すると、コントローラIC4Cより構成を簡素化するために、第1PWM信号PS1のみを電圧モード制御によって生成し、第2PWM信号PS2を第1PWM信号PS1に基づいて生成する。つまり、コントローラIC4Dでは、第1PWM信号PS1を生成後、第2PWM信号PS2を第1PWM信号PS1のハイ信号の位相を180°ずらして生成する。そのために、コントローラIC4Dは、第1カウンタ50、演算回路21、減算器23、乗算器24、減算器52、コンパレータ26、RSフリップフロップ27及びディレイ回路60を備えている。コントローラIC4Dでは、第1コンバータ回路2に対してのみ電圧モード制御で第1PWM信号PS1を生成するために、第1コンバータ回路2に対応して第1カウンタ50、演算回路21、コンパレータ26、RSフリップフロップ27が設けられ、第2コンバータ回路3に対応してディレイ回路60のみが設けられる。
第4の実施の形態では、第1カウンタ50が特許請求の範囲に記載する時比率生成手段に相当し、演算回路21が特許請求の範囲に記載する演算手段に相当し、減算器23及び乗算器24が特許請求の範囲に記載する制御信号生成手段に相当し、減算器52が特許請求の範囲に記載する差分手段に相当し、コンパレータ26及びRSフリップフロップ27が特許請求の範囲に記載する駆動信号生成手段に相当し、ディレイ回路60が特許請求の範囲に記載する遅延手段に相当する。
ディレイ回路60は、PWM信号のパルスの位相を遅延させる遅延回路である。具体的には、ディレイ回路60では、第1PWM信号PS1のハイ信号の位相を180°遅延させ(つまり、ハイ信号の立ち上がり時点をPWM信号の半周期分遅らせ)、第2PWM信号PS2を生成する。ディレイ回路60では、パルスの位相を遅延させるだけであり、パルス幅は変えない。したがって、コントローラIC4Dでは、第1PWM信号PS1と第2PWM信号PS2とのパルス幅は同じ幅となる。
図17を参照して、コントローラIC4Dの動作を説明する。ここでは、第3の実施の形態に係るコントローラIC4Cと異なる動作についてのみ説明する。
コントローラIC4Dでは、第1オンタイミング信号OT1のハイ信号のときにカウンタ信号CT1を0でリセットし、リセット後にマスタクロックに基づいてカウントアップし、ランプ信号となる第1カウンタ信号CT1のみを生成する。そして、コントローラIC4Dでは、補正制御信号RCSと第1カウンタ信号CT1とを比較し、第1カウンタ信号CT1が補正制御信号RCSを超えない期間をハイ信号とする第1PWM信号PS1を生成する。さらに、コントローラIC4Dでは、第1PWM信号PS1のハイ信号の位相を180°遅延させ、第2PWM信号PS2を生成する。
コントローラIC4Dによれば、第3の実施の形態に係るコントローラIC4Cの効果を有するほかに、第2コンバータ回路3に対応するカウンタ、コンバータ、RSフリップフロップを必要としないので、構成が簡素化する。さらに、コントローラIC4Dでは、第1PWM信号PS1と第2PWM信号PS2とのパルス幅が常に同じ幅になので、時比率のバランスをとることができる。その結果、コンバータ回路2,3間の出力電流の不均衡が抑制され、スイッチング電源装置1における出力電流のバランスをとることができる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では制御装置をデジタル回路で構成したが、アナログ回路で構成してもよい。また、本実施の形態ではコントローラICのデジタル回路(ハードウエア)によって制御装置の各手段を構成したが、マイコン等のコンピュータに組み込むプログラム(ソフトウエア)によって制御装置の各手段を構成してもよい。この各手段を実現するプログラムは、CD−ROM等の記憶媒体やインターネット等による配信によって流通する場合あるいはコンピュータに組み込まれた状態で制御装置として流通する場合もある。
また、本実施の形態ではDC/DCコンバータに適用したが、AC/DCコンバータやDC/ACコンバータにも適用可能である。また、本実施の形態ではトランスを有しない非絶縁型かつ降圧型のコンバータに適用したが、トランスを有する絶縁型のコンバータにも適用可能であり、昇圧型又は昇降圧型のコンバータにも適用可能である。
また、本実施の形態では二つのコンバータ回路を並列接続したマルチフェーズ方式のスイッチング電源装置に適用したが、3つ以上のコンバータ回路を並列接続したマルチフェーズ方式のスイッチング電源装置にも適用可能である。
また、本実施の形態では時比率を検出する手段とランプ信号を生成する手段とを同一のカウンタで構成したが、時比率を検出するカウンタとは別にランプ回路を設ける構成でもよいし、あるいは、Dフリップフロップ等を用いて制御信号から時比率を検出する構成でもよい。
また、本実施の形態では演算手段としてハイパスフィルタ機能と積分機能とを融合させた演算回路で構成したが、図3に示す回路とは異なる回路構成の演算回路でもよいし、あるいは、ハイパスフィルタと積分回路とを別体で構成してもよい。
また、本実施の形態ではオンタイミング信号によりPWM信号のオン信号の立ち上りを一定周期毎に固定する構成としたが、オフタイミング信号によりPWM信号のオフ信号の立ち下がりを一定周期毎に固定する構成としてもよい。
また、本実施の形態ではP制御に適用したが、PI制御やPID制御等の他の制御にも適用可能である。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では電流バランス(時比率バランス)を行うために初期値生成回路を含む構成としたが、電流検出器等を用いて電流バランスを行う場合には初期値生成回路を含まない構成としてもよい。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では二つの時間平均した時比率から最小の時間平均した時比率を選択し、各時間平均した時比率からその選択した時間平均した時比率を減算することによってランプ信号の初期値を求める構成としたが、二つの時間平均した時比率から最大の時間平均した時比率を選択する構成でもよいし、二つの時間平均した時比率の平均を求める構成でもよいし、あるいは、二つの時比率の差分をとり、その差分値を時間平均して初期値を求める構成としてもよい。
1…スイッチング電源装置、2…第1コンバータ回路、3…第2コンバータ回路、4,4A,4B,4C,4D…コントローラIC、10,12…第1スイッチング素子、11,13…第2スイッチング素子、14,15…インダクタ、16…コンデンサ、20…カウンタ、21…演算回路、21a〜21c…Dフリップフロップ、21d,21e…乗算器、21f…加算器、22…平均化回路、22a…乗算器、22b…加算器、23…減算器、24…乗算器、25…減算器、26…コンパレータ、27…RSフリップフロップ、28…初期値生成回路、28a…ローパスフィルタ、28b…演算部、30…制御回路、31…乗算器、32…積分器、33…乗算器、34…加算器、40…減算器、50…第1カウンタ、51…第2カウンタ、52…減算器、60…ディレイ回路