JP3811540B2 - 炭化珪素成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度で緻密性、耐蝕性等に優れ、反りや亀裂のない炭化珪素成形体、例えばダミーウエハやサセプター等の半導体製造に用いられる各種部材として有用な炭化珪素成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭化珪素は耐熱性、高温強度、耐熱衝撃性、耐摩耗性、耐蝕性等の材質特性に優れており、半導体製造用の部材をはじめ各種工業用の部材として有用されている。炭化珪素成形体の製造方法としては古くから炭化珪素粉末を焼結する方法があるが、炭化珪素は難焼結性材料であり、緻密で表面平滑な成形体を得ることが困難である。そのため、焼結法で製造される炭化珪素成形体は、特に高純度が要求される半導体分野での使用には適さない欠点がある。
【0003】
この点、CVD法(化学的気相蒸着法)を利用する炭化珪素成形体の製造方法は、原料ガスを気相反応させて基体面上に炭化珪素生成物を析出させて被膜を生成したのち基体を除去するもので、緻密で高純度の炭化珪素成形体を得ることができる。また、基体は切削や研磨等により除去されるが、基体に炭素材を用いると空気中で熱処理することにより容易に除去できるのでプロセスを簡易化できる利点がある。
【0004】
CVD法による炭化珪素成形体として、例えば特開平7−188927号公報にはSiC、Si3 N4 等の耐熱セラミック材料からなるCVD自立膜構造体において、結晶粒の配向がランダムになっていることを特徴とするCVD自立膜構造体が開示されている。この発明は、CVD自立膜構造体を再結晶温度以上の温度で更に熱処理して結晶粒の配向をランダムにするもので、機械的強度の異方性の減少を図るものである。
【0005】
また、CVD法による炭化珪素成形体の製造方法として、基体の表面に化学蒸着法により炭化珪素膜を形成し、前記基体を除去して得られた炭化珪素基板の両面に、更に炭化珪素膜を形成することを特徴とする化学蒸着法による炭化珪素成形体の製造方法(特開平8−188408号公報)、基体の表面に化学蒸着法により炭化珪素膜を形成し、前記基体を除去することにより、炭化珪素成形体を製造する方法において、化学蒸着法により炭化珪素層を形成し、次いで該炭化珪素層の表面を平坦化する工程を複数回繰り返すことにより、各層の厚みが100μm 以下の炭化珪素層を所望厚み以上に積層した後、基体を除去することを特徴とする化学蒸着法による炭化珪素成形体の製造方法(特開平8−188468号公報)が提案されている。
【0006】
上記の特開平8−188408号公報および特開平8−188468号公報の発明は、炭化珪素成形体に発生する亀裂や反りの抑制を目的として、SiC膜を所望厚みまで一気に形成せずに途中で止め、SiC膜に蓄積される内部応力を最小限に抑えることにより結晶粒の大きさがそろい、膜表面の凹凸度合いを減少させたSiC膜を基板として、その上面と下面の両面にSiC膜を形成する、あるいはSiC層形成を初期段階で止めて、層表面を平坦化する工程を複数回繰り返すものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この特開平8−188408号公報、同8−188468号公報の製造方法は、CVD法で形成するSiC膜を所望の膜厚にまで一気に形成することなく途中で止め、また平坦化処理するなど工程が煩雑化し、製造効率が低下する問題点がある。
【0008】
本発明者らは、基体となる黒鉛材を特殊な形状とすることにより、CVD法により形成するSiC膜に発生する亀裂や反りを抑制することが可能であることを見い出した。
【0009】
本発明は上記の知見に基づいて開発されたものであり、その目的は煩雑な工程を必要とすることなく、CVD法により亀裂および反りが少なく、表面平滑な炭化珪素成形体を能率よく製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するたの本発明による炭化珪素成形体の製造方法は、上面および下面が曲率半径2000〜12000mmの凸形状の曲面からなり、側面部に円周方向に沿って溝を形成した円盤形状の黒鉛材を基体とし、該基体表面にCVD法により炭化珪素を析出被着させた後、基体を除去することを構成上の特徴とする。また、基体となる黒鉛材は熱膨張係数が3〜5×10−6/℃(室温〜450℃)、曲面の曲率半径が4000〜10000mmの円盤形状であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては基体の材質として空気中で熱処理することにより容易に除去することのできる炭素系、特に黒鉛材が好適に用いられる。CVD法により黒鉛材表面に炭化珪素を気相析出させてSiC膜を被着する場合、黒鉛材とSiC膜の熱膨張係数の相違から黒鉛材部およびSiC膜部には押し広げようとする引っ張り応力や押し縮めようとする圧縮応力が働き、これらの内部応力が蓄積されていく。したがって、SiC膜形成時の加熱時やSiC膜形成後の冷却時に、これら内部応力によってSiC膜に亀裂が生じたり、反りが発生することとなる。
【0012】
例えば、基体として平板形状の黒鉛材を用い、黒鉛材の熱膨張係数をα1 、CVD法で析出したSiC膜の熱膨張係数をα2 として、α1 >α2 の場合は、SiC膜形成時には黒鉛材には引っ張り応力が働き、一方SiC膜には圧縮応力が作用するので、全体として凸形状に反りが発生する。
【0013】
また、CVD法により析出するSiC膜の形成過程は、基体上でまずSiCの核が生成してアモルファス質あるいは微粒多結晶に成長し、更に柱状組織の結晶組織に成長を続けてSiC膜が析出被着する。この基体と接するアモルファス質あるいは微粒多結晶のSiC膜の熱膨張係数は柱状組織の結晶組織の熱膨張係数に比べて小さいために、基体である黒鉛材を空気中で加熱して燃焼除去する場合にはアモルファス質あるいは微粒多結晶部では圧縮応力が、柱状組織の結晶組織部では引っ張り応力がそれぞれ作用するので、SiC膜形成時とは逆に全体として凹形状に反りが発生することとなる。
【0014】
逆に、α1 <α2 の場合には内部応力は反対方向に作用することになるので、SiC膜形成時には全体として凹形状に反りが発生し、更に黒鉛材の基体を燃焼除去する際に、凹形状の反りは一層増大することになる。このように黒鉛材を基体としてCVD法によりSiC膜を形成し、次いで黒鉛基体を燃焼除去すると熱膨張係数の値に係わらず蓄積された内部応力により全体として凹方向の力が作用することとなる。更に、この内部応力の作用により基体の表面上に一体的に析出被着したSiC膜には亀裂が生じ易くなる。
【0015】
本発明は、黒鉛基体の形状を図1に示すように上面および下面を凸形状の曲面状とすることにより、内部応力によりSiC膜に凹方向の力が作用しても凹形状の反りの程度を緩和することができる。図1において、1は円盤形状の黒鉛基体で、その上面2および下面3は曲率半径rの凸形状の曲面に形成されている。4は黒鉛基体の側面部で、側面部には円周方向に沿って幅w、深さdの溝5が形成されている。
【0016】
この黒鉛基体1をCVD反応装置にセットしてSiC膜を形成すると、図2に示すように上面2および下面3の曲面部および側面部4にはSiC膜6が均一に析出被着するが溝5にはCVD反応ガスの拡散が少ないので、溝の奥部にはSiC膜が析出され難い。図3、図4にSiC膜が析出被着した黒鉛基体1の側面部4の部分拡大図を示した。溝5のない黒鉛基体1には図3に示すように黒鉛基体1の表面には全面に均一にSiC膜6が析出するが、溝5を形成することにより図4に示すように溝5の奥部にはSiC膜6は析出され難くなる。すなわち、基体側面部に円周方向に沿って溝を設けることによりSiC膜を黒鉛基体の全表面に一体的に析出被着することが抑止され、その結果内部応力によるSiC膜の亀裂発生を抑制することができる。この場合、溝部への反応ガスの拡散を効果的に防止するためには、溝の幅wは0.5〜5mm、深さdは5mm以上に設定することが好ましい。
【0017】
黒鉛基体の上面および下面の凸形状の曲面は、凹方向の反りを効果的に緩和するために熱膨張係数との関係において適度の曲率半径に設定される。黒鉛材の熱膨張係数は原料コークスや製造条件等により異なるが、本発明においては基体として熱膨張係数が3〜5×10-6/℃(室温〜450℃)の範囲にある汎用の黒鉛材が用いられ、黒鉛材は図1に示すように上面および下面が凸形状の曲面に加工される。この場合、炭化珪素成形体の凹形状の反りを小さく抑えるためには、曲面の曲率半径を4000〜10000mmの範囲に設定することが望ましい。
【0018】
このように上面および下面が凸形状の曲面からなり、側面部に円周方向に沿って溝を形成した円盤形状の黒鉛材を基体として、CVD法によりその表面に炭化珪素を析出被着させてSiC膜を形成する。CVD法によるSiC膜の形成はCVD反応装置内に黒鉛基体をセットし、水素ガスをキャリアガスとし、トリクロロメチルシラン、トリクロロフェニルシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシランなどの原料ガスを送入して反応させることにより行われる。CVD反応は大気圧下に、原料ガスと水素ガスとの混合ガスを1200〜1500℃の温度に加熱し、適宜時間反応させることによって所定厚さのSiC膜が形成される。
【0019】
SiC膜を形成した黒鉛基体は、図5に示すように側面端部を切断して黒鉛基体を露出させたのち、横断方向に切断して上下に2つ割りにしたのち、黒鉛基体を除去することにより炭化珪素成形体を得ることができる。黒鉛基体の除去は黒鉛材を切削除去する方法、空気中で加熱して黒鉛材を燃焼除去する方法等適宜な方法で行われるが、燃焼除去の操作が簡便であり好ましい。なお、黒鉛基体を除去した後、研磨処理して面を平滑化することが望ましい。
【0020】
本発明の炭化珪素成形体の製造方法によれば、上面および下面を凸形状の曲面とし、その側面部に円周方向に沿って溝を形成した円盤形状の黒鉛材を基体としてCVD反応により基体表面に炭化珪素を析出被着させた後、黒鉛基体を除去するものであるから、凹方向に作用する内部応力を巧みに緩和することができ、更に基体表面に析出被着するSiC膜が一体的に形成することを防止できるので、反りおよび亀裂の少ない炭化珪素成形体を製造することが可能となる。更に、窒化珪素などCVD法により形成可能な自立性の膜を製造する場合においても本発明の製造方法を適用することが有効である。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0022】
実施例1〜14
熱膨張係数が異なる黒鉛材を用いて上下両面を凸形状の曲面状に加工し、直径202.0mm、側面部の厚さ6.0mmの円盤形状に作製した。また、側面部の中央部を切削加工して、円周方向に沿って幅2.0mm、深さ30.0mmの溝を形成した。このようにして作製した曲面部の曲率半径の異なる円盤形状の黒鉛材を基体としてCVD反応を行った。CVD反応は基体をCVD装置の石英反応管内にセットし、大気圧下に反応温度1400℃で、トリクロロメチルシランと水素との混合ガス(トリクロロメチルシランの濃度7.5 vol%)を190l/min の流量で送入し、25時間CVD反応を行って炭化珪素を析出被着させて厚さ1.1mmのSiC膜を形成した。このSiC膜の熱膨張係数は3.5×10-6/℃であった。次いで、基体の側面端部を切断して黒鉛材を露出させたのち、基体を横断方向に切断して2分割した。その後、空気中で加熱して黒鉛基体を燃焼除去し、更に両面を研磨加工して、直径200 mm、厚さ0.5mmの平板状の炭化珪素成形体を製造した。
【0023】
比較例1〜8
実施例と同一の黒鉛材を用いて、上下両面を凸形状の曲面状に加工せずに平板状として側面部に実施例と同一の円周方向に沿って溝部を形成した黒鉛材、溝部を形成せずに上下両面を凸形状の曲面状に加工した黒鉛材、および上下両面を凸形状の曲面状に加工せずに平板状とし側面部に溝を形成しない黒鉛材、をそれぞれ基体として実施例と同一の方法ならびに同一の条件によりCVD反応により炭化珪素を析出被着した。形成されたSiC膜の厚さは1.1mm、熱膨張係数は3.5×10-6/℃であった。次いで、実施例と同一の方法により平板状の炭化珪素成形体を製造した。
【0024】
このようにして得られた炭化珪素成形体について、三次元形状測定機を用いて反り量を測定し、また顕微鏡により表面の亀裂発生状況を観察した。得られた結果を曲面の曲率半径、溝形成の有無などとともに表1に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
表1の結果から、上面および下面を凸形状の曲面状に加工し、また側面部に円周方向に沿って溝を形成した円盤形状の黒鉛材を基体として、CVD法により基体上に炭化珪素を析出被着させた後、黒鉛基体を除去して製造された実施例の炭化珪素成形体は、いずれも反りが少なく、また亀裂の発生も認められない。更に、熱膨張係数と曲率半径を望ましい最適な条件に選択した実施例1、4、8では反り量が0.3mm以内の平坦な成形体を製造できる。これに対して、側面部に溝を形成しない基体を用いた比較例1〜4の方法で得られた炭化珪素成形体は亀裂が発生しており、また基体の上面および下面を凸形状の曲面状に加工しない比較例5〜7では炭化珪素成形体の反り量が大きいことが判る。更に、上下両面を凸形状の曲面に加工せず、側面部に溝を形成しない比較例8では反り量および亀裂の発生ともに大きいことが認められる。なお、実施例においても曲率半径が4000〜10000mmの範囲を外れる実施例9〜14では反り量が若干増大する傾向が認められる。
【0027】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、反り量が少ない平坦性に優れ、かつ亀裂発生のない炭化珪素成形体を製造することが可能となる。したがって、ダミーウエハやサセプター等の半導体製造に用いられる各種部材をはじめ耐熱性、耐蝕性等が要求される工業用材料の製造方法として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いる円盤形状の黒鉛基体の断面図である。
【図2】円盤形状の黒鉛基体の表面に析出被着したSiC膜の状態を模式的に示した断面図である。
【図3】円周方向に沿って溝を形成しない黒鉛基体にSiC膜を析出被着した基体側面部の部分拡大図である。
【図4】円周方向に沿って溝を形成した黒鉛基体にSiC膜を析出被着した基体側面部の部分拡大図である。
【図5】SiC膜を形成した黒鉛基体を横断方向に切断して上下に2分割した状態を模式的に例示した断面図である。
【符号の説明】
1 円盤形状の黒鉛基体
2 黒鉛基体上面の凸形状の曲面
3 黒鉛基体下面の凸形状の曲面
4 黒鉛基体の側面部
5 黒鉛基体の側面部に円周方向に沿って形成した溝
6 SiC膜
Claims (2)
- 上面および下面が曲率半径2000〜12000mmの凸形状の曲面からなり、側面部に円周方向に沿って溝を形成した円盤形状の黒鉛材を基体とし、該基体表面にCVD法により炭化珪素を析出被着させた後、基体を除去することを特徴とする炭化珪素成形体の製造方法。
- 熱膨張係数が3〜5×10−6/℃(室温〜450℃)、曲面の曲率半径が4000〜10000mmの円盤形状の黒鉛材を基体とする請求項1記載の炭化珪素成形体の製造方法。
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